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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-205603(P2019-205603A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】車椅子および車椅子の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20191108BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20191108BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   A61G5/04 708
   A61G5/10 707
   A47C7/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-102181(P2018-102181)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】氏原 大介
(57)【要約】
【課題】使用者が車椅子に着座した状態で上半身を動かした場合に、安定した姿勢でその動きをサポートする。
【解決手段】車椅子100は、車椅子100の周辺に位置する物体を検知するセンサ108aと、着座シート103と、センサ108aによって物体が検知された方向へ着座シート103が傾斜することを許容する傾斜機構112と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子であって、
前記車椅子の周辺に位置する物体を検知するセンサと、
着座シートと、
前記センサによって前記物体が検知された方向へ前記着座シートが傾斜することを許容する傾斜機構と、
を備えた、車椅子。
【請求項2】
前記車椅子は、
駆動部と、
前記駆動部による前記車椅子の移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記駆動部に対する前記車椅子の停止制御に応じて、前記物体が検知された方向へ前記着座シートが傾斜することを前記傾斜機構に許容する、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記停止制御は、
第1速度で移動する前記車椅子と前記物体との距離が第1停止距離となる位置で前記車椅子を一旦停止させる第1停止制御と、
前記第1停止制御の後に、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記車椅子を前記物体に向かって移動させ、前記車椅子と前記物体との距離が前記第1停止距離よりも短い第2停止距離となる位置で停止させる第2停止制御と、
を含み、
前記制御部は、
前記第2停止制御による前記車椅子の停止に応じて前記着座シートが傾斜することを前記傾斜機構に許容する、
請求項2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2停止制御によって前記車椅子が停止した状態において、前記着座シートの傾斜を指示する操作を示す入力情報に応じて、前記着座シートが傾斜することを前記傾斜機構に許容する、
請求項3に記載の車椅子。
【請求項5】
前記制御部は、前記センサによって前記物体が検知された方向へのみ前記着座シートが傾斜することを許容する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の車椅子。
【請求項6】
フットサポートを更に備え、
前記制御部は、前記着座シートが傾斜することを許容する際に、前記着座シートの傾斜方向と逆方向に前記フットサポートが傾斜することを許容する、
請求項2から5のいずれか1項に記載の車椅子。
【請求項7】
前記制御部は、
前記着座シートの傾斜を前記傾斜機構に許容する場合の前記着座シートの傾斜角を、前記車椅子と前記物体との距離に基づいて制御する、
請求項2から6のいずれか1項に記載の車椅子。
【請求項8】
車椅子の制御方法であって、
前記車椅子の周辺に位置する物体をセンサで検知し、
前記センサによって前記物体が検知された方向へ着座シートが傾斜することを許容する制御を行う、
車椅子の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車椅子および車椅子の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子(介助車)において、使用者が斜め座りの着座姿勢となることを不快感なく安全かつ適切に矯正する技術がある。例えば、車椅子の使用者が右に傾いた着座姿勢(斜め座りの姿勢)をとる傾向がある場合、座面部を左下がりの傾斜とすることにより、右に傾いた着座姿勢を矯正して垂直な座位に近づける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−54181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、車椅子の使用者による斜め座りの矯正に着眼しているため、例えば、使用者が車椅子に着座した状態で特定の方向に身体を動かそうとした場合に、座面部が安定せず、使用者の姿勢が不安定になることがある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、例えば、使用者が車椅子に着座した状態で特定の方向に身体を動かそうとした場合に、安定した姿勢でその動きをサポートできる車椅子および車椅子の制御方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車椅子は、車椅子の周辺に位置する物体を検知するセンサと、着座シートと、前記センサによって前記物体が検知された方向へ前記着座シートが傾斜することを許容する傾斜機構と、を備える。
【0007】
また、本開示の一態様に係る車椅子の制御方法は、前記車椅子の周辺に位置する物体をセンサで検知し、前記センサによって前記物体が検知された方向へ着座シートが傾斜することを許容する制御を行う。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、使用者が車椅子に着座した状態で特定の方向に身体を動かそうとした場合に、安定した姿勢でその動きをサポートできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電動車椅子の外観を模式的に示す側面図
図2図1に例示した電動車椅子の機能的な構成に着目した構成の一例を示すブロック図
図3図1に例示した傾斜機構によるシートの傾斜の態様を示す図
図4図1に例示した電動車椅子の動作の一例を示すフローチャート
図5図1に例示した電動車椅子の動作の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
図1は、実施の形態に係る車椅子100の外観を模式的に示す側面図である。図2は、図1に例示した車椅子100の機能的な構成に着目した構成の一例を示すブロック図である。図1及び図2に示した車椅子100は、例示的に、電動車椅子である。電動車椅子100は、電動車両の一例である。電動車両は、移動体の一例である。
【0014】
電動車椅子100は、図1に示すように、例示的に、メインフレーム101、サイドフレーム102、着座シート(着座部又は座面)103、バックサポート(背もたれ)104、フットサポート105、及び、アームレスト(肘掛け)106を備えてよい。
【0015】
着座シート103及びバックサポート104には、それぞれ、クッション103a及び104aが設けられてよい。アームレスト106には、操作部107が備えられてよい。サイドフレーム102の例えばフロント部には、センサ108aが備えられてよい。
【0016】
メインフレーム101には、駆動部109、駆動輪110、補助輪111、傾斜機構112、及び、制御部113が備えられてよい。なお、補助輪111は、電動車椅子100の移動方向を変更する操舵輪であってもよい。
【0017】
操作部107は、例えば、電動車椅子100のユーザによって操作され、電動車椅子100の移動(例えば、移動方向及び移動速度の少なくとも1つ)を指示又は制御するために用いられる。電動車椅子100の移動を指示又は制御するために、操作部107には、例示的に、ジョイスティックが適用されてよい。
【0018】
センサ108aは、例えば、電動車椅子100の周辺環境をセンシングする。周辺環境のセンシングには、例えば、電動車椅子100の周辺に存在する物体(例えば図5に示した物体200)をセンシングすることが含まれてよい。
【0019】
センサ108aによってセンシングされる「物体」は、例えば、電動車椅子100の移動に対する障害物である場合もあるし、電動車椅子100のユーザが電動車椅子100に着座したまま手を伸ばして触れようとする「モノ」である場合もある。
【0020】
非限定的な一例として、ユーザが電動車椅子100に着座したまま手を伸ばして触れようとする「モノ」には、機器の操作用タッチパネル、又は、電話機が含まれてよい。なお、センサ108aによってセンシングされる「物体」には、人物が含まれてもよい。
【0021】
センシングには、例えば、電動車椅子100から物体への方向及び距離の少なくとも1つを検出することが含まれてよい。「検出」は、「検知」、「測定」、「計測」、又は「推定」といった他の用語に読み替えられてもよい。
【0022】
例えば、センサ108aは、レーザを照射して周囲との距離を計測することで、電動車椅子100の周辺に位置する物体200を検知する。非限定的な一例として、センサ108aは、赤外線レーザ光を用いて、半円状のフィールドを0.36度といった細かいピッチで約270度スキャンし、反射光が観測されるまでの時間に基づいて、電動車椅子100と物体200との間の距離を検知する。
【0023】
センサ108aには、非限定的な一例として、TOF(Time-of-Flight)センサが用いられてもよい。センサ108aに、TOFセンサを用いることで、レーザセンサを用いる場合と比較して、電動車椅子100のコストを削減できる。
【0024】
代替的又は追加的に、センサ108aには、ステレオカメラが用いられてもよい。ステレオカメラを用いることで、奥行き情報に加えて色情報などを取得できるため、電動車椅子100のユーザ又は物体200について、より詳細な情報を取得できる。したがって、例えば、個人認識の精度、及び/又は、電動車椅子100が物体200に近づく際の移動制御の精度を向上できる。
【0025】
また、センサ108aには、電動車椅子100が移動可能な環境に設置されている監視カメラが利用されてもよい。監視カメラを利用することで、電動車椅子100のコスト削減を図ることができる。また、電動車椅子100からは検知が難しい物体200を制御部113において認識できる。
【0026】
センサ108aに加えて、電動車椅子100には、図2に示すように、速度センサ108bが備えられてよい。速度センサ108bは、例えば、電動車椅子100の移動速度及び移動方向の少なくとも1つをセンシングする。
【0027】
例えば、速度センサ108bは、駆動輪110及び/又は補助輪111の回転速度(又は、回転角度でもよい)を検知するロータリエンコーダであってよい。あるいは、速度センサ108bは、ホールセンサ又はレゾルバといった、駆動部109のモータ制御用に用いられるセンサであってもよい。
【0028】
制御部113は、電動車椅子100の各部を制御する。制御部113には、例示的に、後述するプロセッサが適用されてよい。
【0029】
例えば、制御部113は、操作部107に対する操作に応じて入力された情報又は信号(以下、「操作情報」又は「操作信号」と称することがある)に基づいて、電動車椅子100の移動を制御するための制御信号を生成して駆動部109に出力する。
【0030】
制御信号は、操作情報と、センサ108a及び速度センサ108bの少なくとも1つによってセンシングされた情報(以下「センサ情報」と称することがある)と、に基づいて生成されてもよい。
【0031】
また、制御部113は、例えば、操作部107からの操作情報に基づいて、着座シート(以下「シート」と略記することがある)103の傾斜を制御するための制御信号を傾斜機構112に出力してよい。
【0032】
追加的又は代替的に、制御部113は、例えば、シート103に着座したユーザの重心移動に応じて、シート103の傾斜を制御するための制御信号を傾斜機構112に出力してもよい。シート103に着座したユーザの重心移動は、例えば、シート103に備えられた感圧センサ108c(図2参照)によって検出されてよい。
【0033】
上述した制御のため、制御部113は、図2に例示したように、速度推定部131、速度制御部132、及び、傾斜制御部133を備えてよい。
【0034】
速度推定部131は、例えば、速度センサ108bによるセンシング結果に基づいて、電動車椅子100の移動方向と移動速度とを推定する。
【0035】
速度制御部132は、例えば、操作部107からの操作情報と、速度推定部131で推定された移動方向及び移動速度と、センサ108aでセンシングされた、電動車椅子100から物体200までの距離とに基づいて、電動車椅子100の移動を制御する。
【0036】
傾斜制御部133は、例えば、上述したように操作部107からの操作情報、及び/又は、感圧センサ108cのセンサ情報に基づいて、シート103の傾斜を制御するための制御信号を生成して傾斜機構112に出力する。
【0037】
なお、センサ108aによって得られる、電動車椅子100の周辺環境(例えば、壁の存在)を示す環境情報は、制御部113において、事前に登録された移動経路の環境を示す環境情報とのマッチングに用いられてよい。マッチングによって、電動車椅子100の現在位置が制御部113において推定されてよい。
【0038】
制御部113は、事前に登録された移動経路において、例えば、推定した現在位置と、電動車椅子100が検知した物体200と、との位置関係に基づいて、電動車椅子100の移動を制御するための制御信号を生成して駆動部109に出力してよい。
【0039】
電動車椅子100の停止制御に関して、制御部113(例えば、速度制御部132)は、例示的に、操作部107からの操作情報に基づいて、電動車椅子100を段階的に(例えば、2段階で)停止させる制御を駆動部109に対して行ってよい。
【0040】
「2段階停止」とは、例えば、電動車椅子100が、物体200の検出に応じて一旦停止した後、操作部107を通じて移動指示を示す操作情報が入力された場合に、物体200にゆっくりと接近して停止する動作である。
【0041】
例えば、制御部113は、操作部107により指示された移動方向及び移動速度Vを基に、制動距離L(V)を算出し、算出した制動距離L(V)を基に、下記の式(1)によって第1停止距離L1を算出する。
【0042】
L1=L(V)+ΔL1 (1)
【0043】
なお、式(1)において、ΔL1は、電動車椅子100の移動速度に依存しないマージン(第1停止距離マージン)を表す。
【0044】
制御部113は、例えば、電動車椅子100とセンサ108aによって検知された物体との間の時刻tにおける距離l(t)、及び、第1停止距離L1を比較する。距離l(t)が第1停止距離L1よりも大きい場合、制御部113は、例えば、操作部107によって指示された方向及び速度Vで電動車椅子100を移動させるための制御信号を駆動部109に出力する。
【0045】
距離l(t)が第1停止距離L1以下である場合、制御部113は、駆動部109の駆動を停止させる制御信号を駆動部109に出力して、電動車椅子100を停止させる。
【0046】
その後、センサ108aで検知された物体の方向に、操作部107を通じて速度vでの移動指示が一定時間にわたって入力され、かつ、l(t)<ΔL1+L(v)が満たされる場合に、制御部113は、例えば、操作情報が示す速度vよりも遅い設定速度V2で電動車椅子100を移動させる制御を駆動部109に対して行ってよい。
【0047】
別言すると、制御部113は、操作部107を通じて指示された速度vに関わらず、設定速度V2で電動車椅子100を移動させる制御を駆動部109に対して行ってよい。
【0048】
電動車椅子100が設定速度V2で移動する場合、制御部113は、例えば、第2停止距離L2を下記の式(2)によって算出する。
【0049】
L2=L(V2)+ΔL2 (2)
【0050】
なお、式(2)において、ΔL2は、第2停止距離L2についての移動速度に依存しないマージン(第2停止距離マージン)ΔL2を表す。
【0051】
制御部113は、例えば、電動車椅子100とセンサ108aによって検知された物体との間の距離l(t)、及び、第2停止距離L2を比較し、比較結果に応じた制御信号を駆動部109に出力する。例えば、距離l(t)が第2停止距離L2以下である場合、制御部113は、駆動部109の駆動を停止させる制御信号を駆動部109に出力する。
【0052】
なお、非限定的な一例として、第1停止距離マージンΔL1は、0.3m≦ΔL1≦0.5mの範囲の値に設定されてよく、第2停止距離マージンΔL2は、0.05m≦ΔL2≦0.1mの範囲の値に設定されてよい。
【0053】
また、電動車椅子100の操作性と安全性との両立の観点から、例えば、第1停止距離L1は、0.5m≦L1≦3mの範囲内に設定されてよく、第2停止距離L2は、0.05≦L2≦1mの範囲内に設定されてよい。
【0054】
駆動部109は、例えば、制御部113から入力される制御信号に従って駆動輪110を駆動又は停止する。これにより、操作部107を通じて入力された操作情報に従って電動車椅子100が移動又は停止する。なお、駆動部109には、例示的に、駆動輪110のためのギア、モータ、及び、モータドライバといった駆動源が含まれてよい。
【0055】
傾斜機構112は、例えば、制御部113(例えば、傾斜制御部133)から入力された制御信号に応じて、シート103の傾斜(別言すると、座面の傾斜)を可変する機構である。別言すると、シート103は、傾斜機構112によって傾斜角が可変である。
【0056】
例えば、傾斜機構112は、図3の(A)〜(C)に示すように、シート103を基準面(例えば、水平面)に対して、電動車椅子100が前進する方向(前方又は正面方向)に対して斜め下、及び/又は、斜め上に傾斜させることができる。
【0057】
傾斜機構112には、非限定的な一例として、流体圧シリンダのようなアクチュエータ(図示省略)が用いられてよい。1又は複数のアクチュエータによってシート103の傾きが可変されてよい。
【0058】
なお、シート103の傾斜方向は、図3に例示した方向に限られない。例えば、シート103は、傾斜機構112によって、車椅子100が前進する方向(前方)に対して、左右の少なくとも一方の方向にシート103を傾斜してもよいし、斜め前方及び斜め後方の少なくも一方の方向に傾斜してもよい。あるいは、傾斜機構112は、基準面における360度のいずれの方向にもシート103を基準面に対して傾斜させることが可能な機構であってもよい。
【0059】
傾斜機構112によるシート103の傾斜は、既述のとおり、制御部113(例えば、傾斜制御部133)によって操作部107からの操作情報に応じて能動的に可変されてもよいし、電動車椅子100のユーザの重心移動によって受動的に可変されてもよい。
【0060】
(動作例)
次に、図4及び図5を参照して、電動車椅子100の動作例について説明する。
図4に示すように、電動車椅子100は、ユーザによって操作部107が操作された場合、その操作に応じた操作情報が制御部113に入力される。制御部113は、例えば、操作情報が示す移動速度Vにおける制動距離L(V)を算出する(S11)。
【0061】
また、制御部113は、算出した制動距離L(V)を基に、前掲の式(1)によって、第1停止距離L1を算出する(S12)。また、制御部113は、センサ108aによって検知された物体200(図5参照)と電動車椅子100との間の時刻tにおける距離l(t)を算出する(S13)。なお、制動距離L(V)、第1停止距離マージンΔL1、及び、距離l(t)の関係は、図5の(A)に示されるとおりである。
【0062】
制御部113は、算出した距離l(t)と第1停止距離L1とを比較する(S14)。電動車椅子100と物体200との間の距離l(t)が第1停止距離L1よりも大きい場合(S14でYES)、制御部113は、操作情報が示す移動方向及び移動速度Vで電動車椅子100を移動させるための制御信号を駆動部109に出力する(S15)。制御信号が駆動部109へ出力された後、処理はS11に戻る。
【0063】
一方、電動車椅子100と物体200との間の距離l(t)が第1停止距離L1以下の場合(S14でNO)、制御部113は、駆動部109の駆動を停止するための制御信号を駆動部109に出力し、電動車椅子100を停止させる(S16)。なお、駆動部109の駆動を停止するための制御信号は、「駆動停止信号」と称されてもよい。
【0064】
電動車椅子100の停止後に、操作部107によって物体200に向かう方向への移動指示を示す操作情報が、一定時間継続して制御部113に入力された場合、制御部113は、l(t)<ΔL1+L(V)が満たされるか否かを確認する。「一定時間」は、例示的に、0.5秒から1秒の範囲に設定されてよい。
【0065】
l(t)<ΔL1+L(V)が満たされる場合(S17)、制御部113は、操作情報が示す移動速度Vに関わらず、電動車椅子100を設定速度V2で操作情報が示す移動方向へ移動させるための制御信号を駆動部109に出力する(S18)。これにより、電動車椅子100は、物体200に向かって設定速度V2で接近する。
【0066】
また、制御部113は、電動車椅子100が設定速度V2で移動する場合に、前掲の式(2)によって、第2停止距離L2(=L(V2)+ΔL2)を算出する(S19)。なお、制動距離L(V2)、第2停止距離マージンΔL2、及び、距離l(t)の関係は、図5の(B)に示されるとおりである。
【0067】
制御部113は、電動車椅子100とセンサ108aによって検知された物体200との間の距離l(t)を第2停止距離L2と比較する(S20)。
【0068】
距離l(t)が第2停止距離L2以下の場合(S20でYES)、制御部113は、駆動部109に駆動停止信号を出力する(S21)。これにより、電動車椅子100は、物体200に最接近した状態で停止する。
【0069】
距離l(t)が第2停止距離L2よりも大きい場合(S20でNO)、制御部113は、距離l(t)が第2停止距離L2以下になるまで、S18以降の処理を繰り返し実行する。
【0070】
制御部113は、電動車椅子100が物体200に最接近して停止した状態で、例えば、電動車椅子100のユーザが物体200に近づく方向にシート103を傾斜させることを指示する操作情報が入力されるか否かを判定する(S22)。
【0071】
シート103の傾斜を指示する操作情報が入力された場合(S22でYES)、傾斜制御部133は、例えば、操作情報が示す方向と物体200の検知方向とが一致するか否かを判定する(S23)。
【0072】
操作情報が示す方向と物体200の検知方向とが一致する場合(S23でYES)、制御部113は、例えば、物体200の検知方向へシート103を傾斜させるための制御信号を生成して傾斜機構112に出力する(S24)。
【0073】
傾斜機構112は、制御信号が示す方向へシート103を傾斜させる。その際、傾斜機構112は、制御信号が示す方向とは異なる他の方向へのシート103の傾斜を禁止してよい。別言すると、制御信号が示す方向とは異なる他の方向について、シート103の姿勢が、それまでの姿勢に維持されて固定されてよい。これは、一般的には、シート103が傾斜するとユーザがシート103から滑り落ちる可能性があるため、物体200が存在する方向に手を伸ばす場合など以外は、シート103が傾斜しない方がユーザにとって安全となるためである。
【0074】
シート103の傾斜を指示する操作情報が入力されない場合(S22でNO)、及び、操作情報が示す方向と物体200の検知方向とが不一致の場合(S23でNO)、制御部113は、例えば、シート103の姿勢を維持してよい(S25)。
【0075】
シート103の姿勢維持は、例えば、制御信号を傾斜機構112に出力しないことで行われてもよいし、シート103の姿勢を維持することを示す制御信号を傾斜機構112に出力することで行われてもよい。
【0076】
以上のシート103の傾斜制御によって、電動車椅子100のユーザが、センサ108aによって検知された物体200に近づく方向にシート103を傾斜することが許可又は許容される。
【0077】
別言すると、制御部113は、電動車椅子100が停止した状態において、物体200が検知された方向に対する操作情報を受け付ける。
【0078】
したがって、例えば、電動車椅子100のユーザは、物体200が存在する方向とは異なる方向に姿勢がぶれたり崩れたりせずに、安定した姿勢で物体200に手を伸ばして触れることが容易になる。
【0079】
上述した例は、シート103の傾斜が、操作情報に応じて制御部113によって能動的に可変される例である。操作情報に応じたシート103の傾斜制御が行われることによって、電動車椅子100のユーザが意図しない傾斜制御が防止される。シート103の傾斜は、電動車椅子100のユーザの重心移動によって受動的に可変されてもよい。
【0080】
シート103の傾斜が許容される方向は、S21での2段階目の停止前にセンサ108aによって検知済みの第1の物体200とは異なる第2の物体(図示省略)が存在する方向であってもよい。例えば、傾斜制御部133は、S21での2段階目の停止後にセンサ108aによって検知された第2の物体の方向に、シート103が傾斜することを許容してもよい。
【0081】
シート103の傾斜を示す操作情報が入力されない場合(S22でNO)、制御部113は、傾斜機構112に対して制御信号は出力しない。したがって、傾斜機構112は、シート103の傾斜を制御せずにシート103の姿勢を、それまでの姿勢に固定して維持する。
【0082】
以上のように、電動車椅子100は、例えば、停止後に、センサ108aによって検知された物体200の方向(検知方向)に応じた方向に限ってシート103が傾斜することが許容される。
【0083】
例えば、電動車椅子100のユーザが、シート103に着座した状態であと少しだけ手を伸ばせば物体200に手が届くような場合に、ユーザ着座姿勢のまま物体200に近づく方向に限ってシート103が傾斜することが許容される。
【0084】
したがって、電動車椅子100のユーザがシート103に着座した状態で物体200に向かって手を伸ばそうとした時の姿勢安定性が低下することを抑止又は抑制できる。よって、ユーザがシート103に着座したまま物体200に近づくように身体を動かそうとした場合に、安定した姿勢でその動きをサポートできる。
【0085】
また、シート103の傾斜は、電動車椅子100の2段階停止における2段階目の停止後に行われるため、ユーザの安全性を更に高めることができる。例えば、電動車椅子100は、物体200に接近して一旦停止した後、停止前よりも遅い設定速度V2でゆっくりと物体200に更に近づいて停止するため、操作部107に対して誤操作があった場合でも、電動車椅子100を安全に停止できる。
【0086】
なお、シート103の傾斜角の可変範囲は、例えば、電動車椅子100のユーザの安全面(例えば、姿勢安定性)に配慮して、3度から10度程度の範囲に設定されてよい。
【0087】
また、シート103の傾斜角は、例えば、電動車椅子100と物体200との距離に応じて制御部113によって可変制御されてもよい。例えば、電動車椅子100と物体200との距離が短いほど、シート103の斜め下方向への傾斜(例えば図3の(B)を参照)が小さくなるように制御されてよい。これは、電動車椅子100と物体200との距離が短いほど、例えば、ユーザが物体200に向かって手を伸ばす距離が短くてよいと考えられるため、シート103の傾斜角も小さくてよいからである。
【0088】
また、シート傾斜時のユーザの姿勢安定性を高めるために、シート103の傾斜と連動して、例えば、バックサポート104、フットサポート105、及び、アームレスト106の少なくとも1つの姿勢が傾斜機構112及び/又は制御部113によって制御されてもよい。特にフットサポート105は、手を伸ばす際に足を置いて力をかける部分であるので、シート103の傾斜方向と逆方向に傾斜することで、ユーザの姿勢を安定させることができる。例えば、シート103が前方に傾斜した場合はフットサポート105は後方に、シート103が右側に傾斜した場合はフットサポート105は左側に傾斜するように制御することで、ユーザは姿勢を安定させることができる。
【0089】
また、電動車椅子100に、シートベルト又は転落防止用のセイフティバーといった安全器具(図示省略)が備わっている場合、シート103の傾斜と連動して安全器具の状態が傾斜機構112及び/又は制御部113によって制御されてもよい。
【0090】
なお、上述した実施の形態は、2段階停止における2段階目の停止において傾斜制御を適用した例であるが、シート103の傾斜制御は、2段階停止が前提でなくてもよい。
【0091】
例えば、電動車椅子100の周辺に存在する物体200の検知方向に対して、電動車椅子100が停止した後に、傾斜制御部133によって、シート103の傾斜が許可されてよい。別言すると、図4に示したS17〜S21の処理は、制御部113においてスキップされてもよい。
【0092】
また、図4のS16において駆動部109に出力される駆動停止信号は、操作部107から入力された操作情報において電動車椅子100の停止が示される場合に制御部113において生成されてもよい。
【0093】
また、物体200の検知は、電動車椅子100の移動中に行われてもよいし、電動車椅子100の停止後に行われてもよい。例えば図4において、物体200の検知は、S22の処理以前に行われてよい。
【0094】
また、上述した実施の形態においては、車椅子100が電動である例について説明したが、車椅子100は、ユーザが手動で移動を操作する構成でもよい。
【0095】
<コンピュータプログラム>
上述した制御部113の機能又は動作は、コンピュータプログラムにより実現され得る。上述した制御部113をプログラムにより実現するコンピュータは、例示的に、プロセッサ、出力装置、メモリ、ストレージ、及び、電源回路を備えてよい。これらの構成要素は、バスに接続されて相互に通信が可能である。
【0096】
プロセッサは、演算能力を備えた回路又はデバイスの一例である。プロセッサには、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、及び、GPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも1つが用いられてよい。
【0097】
出力装置は、例えば、ディスプレイ(又はモニタ)を含んでよい。
【0098】
メモリは、例えば、プロセッサによって実行されるプログラム、及び、プログラムの実行に応じて処理されるデータ又は情報を記憶する。メモリには、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)が含まれてよい。RAMは、プロセッサのワークメモリに用いられてよい。「プログラム」は、「ソフトウェア」あるいは「アプリケーション」と称されてもよい。
【0099】
ストレージは、プロセッサによって実行されるプログラム、及び、プログラムの実行に応じて処理されるデータ又は情報を記憶する。ストレージは、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、又は、ソリッドステートドライブ(SSD)といった半導体ドライブ装置を含んでよい。半導体ドライブ装置の追加で又は代替で、フラッシュメモリのような不揮発性メモリが、ストレージに含まれてもよい。
【0100】
プログラムには、例えば図4に示したフローチャートを実現するプログラムが含まれてよい。プログラムを成すプログラムコードの全部又は一部は、メモリ及び/又はストレージに記憶されてもよいし、オペレーティングシステム(OS)の一部に組み込まれてよい。
【0101】
プログラム及び/又はデータは、コンピュータ(プロセッサ)が読取可能な記録媒体に記録された形態で提供されてよい。記録媒体の一例としては、フレキシブルディスク、CD−ROM,CD−R,CD−RW,MO,DVD、ブルーレイディスク、ポータブルハードディスク等が上げられる。また、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の半導体メモリも記録媒体の一例である。
【0102】
また、プログラム及び/又はデータは、例えば、サーバから通信回線を介してコンピュータに提供(ダウンロード)されてもよい。例えば、通信装置を通じてプログラム及び/又はデータがコンピュータに提供されて、メモリ及び/又はストレージに記憶されてよい。また、プログラム及び/又はデータは、入力装置を通じてコンピュータに提供されて、メモリ及び/又はストレージに記憶されてもよい。
【0103】
<その他>
上記の実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0104】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0105】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示は、車椅子に好適である。
【符号の説明】
【0107】
100 電動車椅子
101 メインフレーム
102 サイドフレーム
103 シート(着座部又は座面)
103a クッション
104 バックサポート(背もたれ)
104a クッション
105 フットサポート
106 アームレスト(肘掛け)
107 操作部
108a センサ
108b 速度センサ
108c 感圧センサ
109 駆動部
110 駆動輪
111 補助輪
112 傾斜機構
113 制御部
131 速度推定部
132 速度制御部
133 傾斜制御部
200 物体
図1
図2
図3
図4
図5