特開2019-205613(P2019-205613A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-205613軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-205613(P2019-205613A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッド
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20191108BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   A47C27/15 A
   A47C27/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-102222(P2018-102222)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】江崎 寛太朗
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA04
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】厚み方向で発泡セルの大きさを異ならせ、剛性、硬度及び撓み量を改善し、座り心地が良好なシートを提供する。
【解決手段】発泡成形された軟質ポリウレタンフォーム成形品1であって、前記成形品1は連続発泡構造であり、厚み方向で発泡セルの大きさが異なり、表面(着座面)4から厚み方向に向かって少なくとも10mmまでは小径セル2aを主成分とする小径セル領域2であり、小径セル領域2を超える部分は、大径セル3aと小径セル2aが混在する混在セル領域3が存在する。本発明の車両シート用パッドは、車両に取り付けられ着座部として用いられる車両シート用パッドであって、前記軟質ポリウレタンフォーム成形品を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形された軟質ポリウレタンフォーム成形品であって、
前記成形品は連続発泡構造であり、
厚み方向で発泡セルの大きさが異なり、表面から厚み方向に向かって少なくとも10mmまでは小径セルを主成分とする小径セル領域であり、
前記小径セル領域を超える部分は、大径セルと小径セルが混在する混在セル領域を含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム成形品。
【請求項2】
前記混在セル領域の大径セル/小径セルの平均直径比は、5倍以上である請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム成形品。
【請求項3】
前記小径セル領域及び前記混在セル領域の小径セルの平均直径は10μm以上400μm未満である請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム成形品。
【請求項4】
前記混在セル領域の大径セルの平均直径は400μm以上4000μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム成形品。
【請求項5】
前記混在セル領域の大径セルの平均密度は1〜10個/インチである請求項1〜4のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム成形品。
【請求項6】
前記軟質ポリウレタンフォーム成形品のJIS K6400に準拠した硬度において、65%硬度/25%硬度比が2.3〜2.8の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム成形品。
【請求項7】
車両に取り付けられ着座部として用いられる車両シート用パッドであって、
請求項1〜6のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム成形品を含む車両シート用パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から軟質ポリウレタンフォームのモールド成形技術において、ポリウレタンフォームの硬度を部位によって変化させて、ポリウレタンフォームシートの座り心地を良好にする技術は知られている。特許文献1では、2種の発泡原液を成形型内に注入することによって、シートの部位ごとに硬度を変化させている。また、特許文献2では、発泡原液の成分を調整することによって、シートの載置面(着座面)に対し水平方向のセル径を制御し、載置面に対し深さ方向(厚み方向)に沿って硬度を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−149466号公報
【特許文献2】WO2015/190392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術は、発泡原液を最適に設計しなければならず、また、発泡原液そのものの調整や成形型への注入も難しい。そのため、成形条件が限定されることになり、シート硬度を容易に変化させることは難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、厚み方向で発泡セルの大きさを異ならせ、剛性、硬度及び撓み量を改善し、座り心地が良好なシートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品は、発泡成形された軟質ポリウレタンフォーム成形品であって、前記成形品は連続発泡構造であり、厚み方向で発泡セルの大きさが異なり、表面から厚み方向に向かって少なくとも10mmまでは小径セルを主成分とする小径セル領域であり、前記小径セル領域を超える部分は、大径セルと小径セルが混在する混在セル領域を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の車両シート用パッドは、車両に取り付けられ着座部として用いられる車両シート用パッドであって、前記軟質ポリウレタンフォーム成形品を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、厚み方向で発泡セルの大きさが異なり、表面(着座面)から厚み方向に向かって少なくとも10mmまでは小径セルを主成分とする小径セル領域であり、前記小径セル領域を超える部分は、大径セルと小径セルが混在する混在セル領域とすることにより、機械特性として、剛性(25%硬度)が着座面から厚み方向に向かって増加し、さらに元厚みの40%以上の厚みにおいての荷重−撓み曲線の傾きが小さくなる。そのため、シートに着席した時に、沈み込みながらもシートからの反発性を一定状態に維持することができ、良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施形態の軟質ポリウレタンフォーム成形品の斜視図である。
図2図2は本発明の実施例1の同成形品の断面写真である。
図3図3は本発明の実施例3の同成形品の断面写真である。
図4図4は本発明の実施例4の同成形品の断面写真である。
図5図5は本発明の一実施例の同成形品を横方向に厚さ20mmごとに切断する模式的説明図である。
図6A図6Aは比較例1品と実施例2,4品のヒステリシスロスを継時的にプロットしたグラフである。
図6B図6B図6Aを拡大した図である。
図7A図7Aは比較例1品のヒステリシスロスグラフである。
図7B図7Bは実施例2品のヒステリシスロスグラフである。
図7C図7Cは実施例4品のヒステリシスロスグラフである。
図8図8は本発明の実施例と比較例の各成形品をサイドより50mmと200mmの位置で観察することを説明する図面である。
図9図9は本発明の実施例と比較例の各成形品をサイドより50mmの位置で観察したときの大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率を示すグラフである。
図10図10は本発明の実施例と比較例の各成形品をサイドより200mmの位置で観察したときの大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一実施形態において、モールド成形によって発泡成形される軟質ポリウレタンフォーム成形品である。モールド成形は、求める製品形状の成形型(モールド)の空間にポリウレタンフォーム原料組成液(発泡原液)を注入し、発泡させて成形し、型から取り出す成形方法である。この成形品は連続発泡構造である。また、本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品は、厚み方向で発泡セルの大きさが異なり、表面から厚み方向に向かって少なくとも10mmまでは小径セルを主成分とする小径セル領域であり、小径セル領域を超える部分は、大径セルと小径セルが混在する混在セル領域を含む。
【0011】
混在セル領域の大径セル/小径セルの平均直径比は、5倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは7倍以上である。上限は60倍以下が好ましい。混在セル領域の大径セル/小径セルの平均直径比が前記であれば、さらに良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品となる。ここで大径セルとは平均直径400μm以上のセルをいい、小径セルとは平均直径400μm未満のセルをいう。
【0012】
小径セル領域及び混在セル領域の小径セルの平均直径は10μm以上400μm未満が好ましく、さらに好ましい平均直径は100μm以上250μm以下である。小径セル領域及び混在セル領域の小径セルの平均直径が前記であれば、さらに良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品となる。
【0013】
混在セル領域の大径セルの平均直径は400μm以上4000μm以下が好ましく、さらに好ましい平均直径は700μm以上2800μm以下である。混在セル領域の大径セルの平均直径が前記であれば、さらに良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品となる。大径セルは長円、楕円形等があるが、これらの場合は、(短径+長径)/2を直径とする。セルの直径は断面写真を観察し、平均を求めるセルの母数は少なくとも3とする。小径セルも同様である。
【0014】
混在セル領域の大径セルの平均密度は、1〜10個/インチが好ましく、より好ましくは1〜6個/インチ、さらに好ましくは3〜6個/インチである。混在セル領域の大径セルの平均密度は前記であれば、さらに良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品となる。また、本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品のJIS K6400に準拠した硬度において、65%硬度/25%硬度比は2.3〜2.8の範囲が好ましく、さらに好ましくは2.4〜2.7である。これにより、シートに着席した時に、沈み込みながらもシートからの反発性を一定状態に維持することができ、良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッドとすることができる。したがって、本発明は、一実施形態において、車両に取り付けられた着座部として用いられる車両シート用パッドであって、本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品を含む車両シート用パッドに関する。
【0015】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品は、特性の異なる複数種の整泡剤を含む発泡原料(発泡原液)を、発泡成形することで得ることができる。具体的な整泡剤は実施例で説明する。ポリウレタンの発泡原料は特に限定がなく、従来と同様なものを使用できる。小径のセルは成形品全体的に点在し、表面(着座面)から厚み方向に向かって粗大セル化する。その他の特徴は次のとおりである。
(1)ポリウレタン成形品の密度は現行品と本発明品とで変化はない。
(2)ポリウレタン成形品の弾性率は現行品と本発明品とで変化はない。
(3)ポリウレタン成形品の通気性は現行品と本発明品とで特徴に大きな変化はない。
(4)ポリウレタン成形品の剛性(25%硬度)は、現行品では外層(表面及び裏面に近い層)付近は高く内層は低くなる。本発明品の剛性(25%硬度)は表面(着座面)から厚み方向に向かって漸次に増加していく。
(5)ポリウレタン成形品のヒステリシスロスは、現行品は傾きが大きく、本発明品は傾きが小さい傾向となる(撓み量65mm時)。これは着席した時に起こる、反発が低いことを意味しており、良好な座り心地となる。
(6)用途として、車両用シートを含め、椅子や寝具等にも使用可能である。
【0016】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品の製造方法は、公知の製造方法で製造される。一般的にはポリオール、有機イソシアネート、発泡剤、整泡剤及び触媒等を含む発泡原料(発泡原液)を用いて製造する。前記ポリオール、有機イソシアネート、発泡剤、整泡剤および触媒としては、一般の軟質ポリウレタンフォーム成形品の製造に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、また発泡剤、整泡剤および触媒等の配合量も通常の配合量とすることができ、更に軟質ポリウレタンフォーム成形品の製造に通常用いられる他の成分を配合しても何ら差支えない。なお、主原料の一つであるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールのいずれも用いることができ、これらは混合して用いてもよい。ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルキレンオキシド付加物等が例示され、ポリエステルポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸或いはフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸又はそれらの混合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコール或いはトリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオールとから重合して得られる末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオール等が例示される。
【0017】
主原料の一つである有機イソシアネートとしては、軟質ポリウレタンフォーム成形品の製造に通常使用される公知のポリイソシアネートを使用できる。具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の公知のポリイソシアネート等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0018】
以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態の軟質ポリウレタンフォーム成形品1の斜視図である。この軟質ポリウレタンフォーム成形品1は、厚み方向で発泡セルの大きさが異なり、表面(着座面)4から厚み方向に向かって少なくとも10mmまでは小径セル2aを主成分とする小径セル領域2であり、小径セル領域2を超える部分は、大径セル3aと小径セル2aが混在する混在セル領域3が存在する。表面(着座面)4及び裏面5は表皮層(スキン層)であり、緻密になっている。成形品1の表面4から裏面5までの厚みは、本発明の効果が発揮される観点から、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、そして、好ましくは200mm以下、より好ましくは150mm以下、さらに好ましくは100mm以下である。成形品1の大きさは、例えば、縦が10〜1000mm、横が10〜2000mm、厚さが10〜200mmとすることができる。成形品1は、単独成形体でもよいし、外皮(表皮部材)と一体成形されていてもよい。
【実施例】
【0019】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0020】
<軟質ポリウレタンフォーム成形品の物性測定方法>
(1)空隙を含むフォームコアの見掛け密度(OA密度)(kg/m3):JIS K6400に記載の方法に準拠
(2)25%硬度(25%ILD)(N/314cm2) :JIS K6400に記載の方法に準拠
(3)65%硬度(65%ILD)(N/314cm2) :JIS K6400に記載の方法に準拠
(4)ヒステリシスロス率(%):JIS K6400 B法に記載の方法に準拠
(5)通気量(cc/ml/sec) :JIS K6400記載の方法に準拠
(6)反発弾性(%):JIS K6400記載の方法に準拠
【0021】
<発泡原料>
(1)イソシアネートインデックス値(INDEX):ポリオール中の全活性水素濃度に対する、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基濃度の当量比である。
(2)ポリマー原料
ポリエーテルポリオール:三井化学社製、商品名"EP330N"
ポリマーポリオール:三井化学社製、商品名"POP3623"
ポリイソシアネート:三井化学社製、商品名"TM20"
(3)発泡剤:H2O
(4)架橋剤
日油社製、商品名"GLY"
三井化学社製、商品名"KL210"
(5)触媒
東ソー社製、商品名"33LV"
東ソー社製、商品名"ET"
(6)破泡剤: 三井化学社製、商品名"EP505S"
(7)整泡剤
Evonik社製、商品名"B8742LF", シリコーン系界面活性剤
Evonik社製、商品名"B8715LF", シリコーン系界面活性剤
Evonik社製、商品名"DC6070", シリコーン系界面活性剤
Evonik社製、商品名"ORTEGOLCC1", 脂肪酸エステル化合物
【0022】
<フォーム成型>
[発泡条件]
金型温度:60〜70℃
金型形状:縦400mm,横400mm,厚さ100mm
金型材質:アルミニウム
キュアー条件:60〜70℃×5分
【0023】
(実施例1〜7、比較例1)
表1に示す組成の発泡原料を用いて、前記発泡条件で軟質ポリウレタンフォーム成形品(実施例1〜7、比較例1)を得た。表1内の数値は各重量のg数を示す。特徴的な点は、整泡剤として、商品名"B8742LF", "B8715LF"及び "DC6070"から選ばれる一つと、"ORTEGOLCC1"とを組み合わせて添加することである。成形品の評価試験の結果は、表2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1〜2から明らかなとおり、実施例1〜7では、上記の2種類の整泡剤を併用することで、表面付近の層はセル径が細かく、中心(中間層)付近から厚み方向に向かって粗いセルを形成できた。25%硬度はセル形状が大きくなることで上昇するが、65%ILD/25%ILD硬度比は減少した。そのため、シートに着席した時に、沈み込みながらもシートからの反発性を一定状態に維持することができ、良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッドとすることができた。
【0027】
次に、実施例1,3,4の軟質ポリウレタンフォーム成形品断面の観察を行った。図2は実施例1の成形品、図3は実施例3の成形品、図4は実施例4の成形品の断面である。観察は、前記成形品の側面から写真撮影して行った。各実施例の成形品の側面を観察したところ、表面(着座面)から厚み方向に向かって漸次にセル径が増大していた。また、2つの整泡剤の添加量によって、セル径を変えることができた。これに対して比較例1(現行品)の同成形品は小径セルのみであった。
【0028】
次に、成形品を横方向(着座面に対し水平方向)に厚さ20mmごとに切断し、評価試験を行った。図5に示すように、実施例4の成形品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、表面(着座面)側から順に各層をサンプルNo.1〜5とした。そして、各層の表面を写真撮影して確認したところ、サンプルNo.の数が大きいほどセル径が増大していた。また、セル径が大きくなるにつれて、セルが粗大化していた。表3にセル径の測定値を示す。セル径は、各層の表面をデジタルHFマイクロスコープ(VH8000、キーエンス社製)により観察して付属の画像解析ソフトを用いて測定し、20点の測定値の平均値をセル径(直径)平均値として求めた。また、表3には、セル径平均値について、サンプルNo.1の層のセル径平均値を100とした相対値も示した。
【0029】
【表3】
【0030】
以上の結果から、セル径は、表面(着座面)から厚み方向に向かって漸次に大きくなっていることが確認できた。なお、サンプルNo.3〜5の層には、大きいセル(粗大)の中に細かいセルが見られた。また、セル径の大きさとしては、サンプルNo.1の層と比較して、サンプルNo.5の層は1300%に達していた。
【0031】
次に、実施例2品,実施例4品及び比較例1品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、表面(着座面)側から順に各層をサンプルNo.1〜5とし、各層の機械特性を測定した。サンプルサイズは縦200mm、ヨコ200mm、厚さ20mmとした。実施例2品の機械特性を表4に、実施例4品の機械特性を表5に、比較例1品の機械特性を表6にそれぞれ示す。各表において、平均値Bは、各層の測定値Aの平均値を示し、各層の平均値Cは、各層の測定値Aを平均値Bで除した値を示す。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
表4〜6の各層の平均値Cを比較すると、密度と反発弾性率については、比較例1品と実施例2,4品の値は同等だった。
一方、25%硬度については、実施例2,4品の中間層(サンプルNo.2〜4の層)の値が比較例1品に比べて上昇しており、実施例2,4品の外層側(サンプルNo.1,5の層)の値が比較例1品に比べて低下していた。特に、サンプルNo.5の層の値は顕著に低下していた。
さらに、ヒステリシスロスについては、実施例2,4品の中間層(サンプルNo.2〜4の層)の値が比較例1品に比べて上昇しており、実施例2,4品の外層(サンプルNo.1,5の層)の値が比較例1品に比べて低下しており、全体的になだらかに変化していた。
【0036】
次に、ヒステリシスロスの特性評価を行った。比較例1品と実施例2,4品のヒステリシスロスを継時的に測定グラフにプロットしたグラフを図6A図6Bに示す。図6Aは、撓み量(80mm)を測定した図、図6B図6Aを拡大した図である。撓み量に対する荷重は、比較例1品より実施例2,4品の値の方が低く、なだらかな曲線となった。とくに撓み40%以降の傾きが緩やかになっている。これは高荷重になったときに沈みが大きいことを意味する。
【0037】
次に、比較例1品と実施例2,4品の各層における、ヒステリシスロスを継時的に測定グラフにプロットした。図7Aは比較例1品、図7Bは実施例2品、図7Cは実施例4品のヒステリシスロスグラフである。図7Aにおいて、「比較例1−1」、「比較例1−2」、「比較例1−3」、「比較例1−4」、「比較例1−5」はそれぞれ比較例1品の1層目、2層目、3層目、4層目、5層目を示す。図7B及び図7Cの「実施例2−1」等も同様である。
ヒステリシスロスの値は、明らかに比較例1品よりも実施例2,4の方の値が低かった。特に中間層の値が低い結果となった。
【0038】
次に、比較例1品及び実施例2,4,5,6,7品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、各層の表面においてセルサイズが大きめのセルの平均直径を測定した。具体的には、各層において任意の3個のセルの長径及び短径を測定し、平均直径(平均セル径)を算出した。平均直径(平均セル径)は、[(長径の平均値+短径の平均値)/2]とした。結果を表7〜12に示す。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
【表10】
【0043】
【表11】
【0044】
【表12】
【0045】
表7に示すように、比較例1品では、各層の測定セルの平均直径はいずれも400μm未満であった。一方、表8〜12に示すように、実施例品では、1層目の測定セルの平均直径は400μm未満であったが、2層目以降の測定セルの平均直径は400μm以上と増大していた。
【0046】
次に、比較例1品及び実施例2,4,5,6,7品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、各層の表面において、平均直径400μm以上のセル(大径セル)の平均密度を測定した。具体的には、各層位置における1インチあたりの大径セルの個数を測定した。測定は任意の2箇所の直線100mm上における個数を測定し、1インチ当たりに換算した値の平均値を平均密度とした。結果を表13に示す。
【0047】
【表13】
【0048】
実施例品では、厚み方向の層位置が20mm以降(混在セル領域)において平均直径が400μm以上の大径セルが観測された。表13に示されるように、観測された混在セル領域における大径セルの平均密度は1.4〜5.3個/インチであった。
【0049】
次に、図8に示す縦400mm、横400mm、厚さ100mmの成形品(比較例1品、実施例2,4,5,6品)を、サイドより50mmと200mmの位置で、表面側から厚さ20mmごとの各層の表面の大径セル平均直径と小径セル平均直径を観察し、大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率を算出した。前記において、大径セルとは、平均直径400μm以上のセルをいい、小径セルとは平均直径400μm未満のセルである。各層の平均値は、測定数3個の平均とした。結果をまとめて表14〜18に示す。表14〜18において、セル径の倍率は、大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率(平均直径比)を示す。なお、比較例1品の各層、及び、各実施例品の1層目では、平均直径100μm以上400μm未満の小径セル(大きめ)と平均直径100μm未満の小径セル(小さめ)を測定し、その結果を表14〜18に示した。
【0050】
【表14】
【0051】
【表15】
【0052】
【表16】
【0053】
【表17】
【0054】
【表18】
【0055】
以上の結果を図9図10にまとめて示す。図9はサイドから50mmの大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率グラフであり、図10はサイドから200mmの大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率グラフである。
図9図10から明らかなとおり、1層目ではセル径の分布が、比較例1(現行品)と実施例品(粗大セル)とで同等程度となっている。一方、厚み方向の層位置が20mm付近(2層目以降)からセル径の倍率(大径セル/小径セルの割合)は、実施例品では増大しているのに対し、比較例1(現行品)ではほぼ横ばいの倍率となっている。本発明の実施例品では、セル径の倍率は2層目以降で最大50倍近くまで大きくすることが可能であった。
【0056】
以上の結果から、比較例品と比較して、本発明の実施例品は、各層における密度や弾性率は全く同等でありながら、表面及び裏面に近い層のヒステリシスロスの比率が小さく良化していることから、表面層、裏面層のへたりやすさを軽減し、フォームの追従性も良好となった。また、フォーム全体としてシート密度や剛性を従来と変えずに、高荷重時においてもなだらかな撓み曲線を描いていることから、シートからの反発性を一定状態に維持するため体圧負荷を軽減でき、良好な座り心地を得ることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム成形品は、車両用シートに好適であるほか、椅子や寝具等にも有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 軟質ポリウレタンフォーム成形品
2 小径セル領域
2a 小径セル
3 混在セル領域
3a 大径セル
4 表面(着座面)
5 裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10