【実施例】
【0019】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0020】
<軟質ポリウレタンフォーム成形品の物性測定方法>
(1)空隙を含むフォームコアの見掛け密度(OA密度)(kg/m
3):JIS K6400に記載の方法に準拠
(2)25%硬度(25%ILD)(N/314cm
2) :JIS K6400に記載の方法に準拠
(3)65%硬度(65%ILD)(N/314cm
2) :JIS K6400に記載の方法に準拠
(4)ヒステリシスロス率(%):JIS K6400 B法に記載の方法に準拠
(5)通気量(cc/ml/sec) :JIS K6400記載の方法に準拠
(6)反発弾性(%):JIS K6400記載の方法に準拠
【0021】
<発泡原料>
(1)イソシアネートインデックス値(INDEX):ポリオール中の全活性水素濃度に対する、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基濃度の当量比である。
(2)ポリマー原料
ポリエーテルポリオール:三井化学社製、商品名"EP330N"
ポリマーポリオール:三井化学社製、商品名"POP3623"
ポリイソシアネート:三井化学社製、商品名"TM20"
(3)発泡剤:H
2O
(4)架橋剤
日油社製、商品名"GLY"
三井化学社製、商品名"KL210"
(5)触媒
東ソー社製、商品名"33LV"
東ソー社製、商品名"ET"
(6)破泡剤: 三井化学社製、商品名"EP505S"
(7)整泡剤
Evonik社製、商品名"B8742LF", シリコーン系界面活性剤
Evonik社製、商品名"B8715LF", シリコーン系界面活性剤
Evonik社製、商品名"DC6070", シリコーン系界面活性剤
Evonik社製、商品名"ORTEGOLCC1", 脂肪酸エステル化合物
【0022】
<フォーム成型>
[発泡条件]
金型温度:60〜70℃
金型形状:縦400mm,横400mm,厚さ100mm
金型材質:アルミニウム
キュアー条件:60〜70℃×5分
【0023】
(実施例1〜7、比較例1)
表1に示す組成の発泡原料を用いて、前記発泡条件で軟質ポリウレタンフォーム成形品(実施例1〜7、比較例1)を得た。表1内の数値は各重量のg数を示す。特徴的な点は、整泡剤として、商品名"B8742LF", "B8715LF"及び "DC6070"から選ばれる一つと、"ORTEGOLCC1"とを組み合わせて添加することである。成形品の評価試験の結果は、表2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1〜2から明らかなとおり、実施例1〜7では、上記の2種類の整泡剤を併用することで、表面付近の層はセル径が細かく、中心(中間層)付近から厚み方向に向かって粗いセルを形成できた。25%硬度はセル形状が大きくなることで上昇するが、65%ILD/25%ILD硬度比は減少した。そのため、シートに着席した時に、沈み込みながらもシートからの反発性を一定状態に維持することができ、良好な座り心地の軟質ポリウレタンフォーム成形品及びこれを用いた車両シート用パッドとすることができた。
【0027】
次に、実施例1,3,4の軟質ポリウレタンフォーム成形品断面の観察を行った。
図2は実施例1の成形品、
図3は実施例3の成形品、
図4は実施例4の成形品の断面である。観察は、前記成形品の側面から写真撮影して行った。各実施例の成形品の側面を観察したところ、表面(着座面)から厚み方向に向かって漸次にセル径が増大していた。また、2つの整泡剤の添加量によって、セル径を変えることができた。これに対して比較例1(現行品)の同成形品は小径セルのみであった。
【0028】
次に、成形品を横方向(着座面に対し水平方向)に厚さ20mmごとに切断し、評価試験を行った。
図5に示すように、実施例4の成形品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、表面(着座面)側から順に各層をサンプルNo.1〜5とした。そして、各層の表面を写真撮影して確認したところ、サンプルNo.の数が大きいほどセル径が増大していた。また、セル径が大きくなるにつれて、セルが粗大化していた。表3にセル径の測定値を示す。セル径は、各層の表面をデジタルHFマイクロスコープ(VH8000、キーエンス社製)により観察して付属の画像解析ソフトを用いて測定し、20点の測定値の平均値をセル径(直径)平均値として求めた。また、表3には、セル径平均値について、サンプルNo.1の層のセル径平均値を100とした相対値も示した。
【0029】
【表3】
【0030】
以上の結果から、セル径は、表面(着座面)から厚み方向に向かって漸次に大きくなっていることが確認できた。なお、サンプルNo.3〜5の層には、大きいセル(粗大)の中に細かいセルが見られた。また、セル径の大きさとしては、サンプルNo.1の層と比較して、サンプルNo.5の層は1300%に達していた。
【0031】
次に、実施例2品,実施例4品及び比較例1品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、表面(着座面)側から順に各層をサンプルNo.1〜5とし、各層の機械特性を測定した。サンプルサイズは縦200mm、ヨコ200mm、厚さ20mmとした。実施例2品の機械特性を表4に、実施例4品の機械特性を表5に、比較例1品の機械特性を表6にそれぞれ示す。各表において、平均値Bは、各層の測定値Aの平均値を示し、各層の平均値Cは、各層の測定値Aを平均値Bで除した値を示す。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
表4〜6の各層の平均値Cを比較すると、密度と反発弾性率については、比較例1品と実施例2,4品の値は同等だった。
一方、25%硬度については、実施例2,4品の中間層(サンプルNo.2〜4の層)の値が比較例1品に比べて上昇しており、実施例2,4品の外層側(サンプルNo.1,5の層)の値が比較例1品に比べて低下していた。特に、サンプルNo.5の層の値は顕著に低下していた。
さらに、ヒステリシスロスについては、実施例2,4品の中間層(サンプルNo.2〜4の層)の値が比較例1品に比べて上昇しており、実施例2,4品の外層(サンプルNo.1,5の層)の値が比較例1品に比べて低下しており、全体的になだらかに変化していた。
【0036】
次に、ヒステリシスロスの特性評価を行った。比較例1品と実施例2,4品のヒステリシスロスを継時的に測定グラフにプロットしたグラフを
図6A,
図6Bに示す。
図6Aは、撓み量(80mm)を測定した図、
図6Bは
図6Aを拡大した図である。撓み量に対する荷重は、比較例1品より実施例2,4品の値の方が低く、なだらかな曲線となった。とくに撓み40%以降の傾きが緩やかになっている。これは高荷重になったときに沈みが大きいことを意味する。
【0037】
次に、比較例1品と実施例2,4品の各層における、ヒステリシスロスを継時的に測定グラフにプロットした。
図7Aは比較例1品、
図7Bは実施例2品、
図7Cは実施例4品のヒステリシスロスグラフである。
図7Aにおいて、「比較例1−1」、「比較例1−2」、「比較例1−3」、「比較例1−4」、「比較例1−5」はそれぞれ比較例1品の1層目、2層目、3層目、4層目、5層目を示す。
図7B及び
図7Cの「実施例2−1」等も同様である。
ヒステリシスロスの値は、明らかに比較例1品よりも実施例2,4の方の値が低かった。特に中間層の値が低い結果となった。
【0038】
次に、比較例1品及び実施例2,4,5,6,7品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、各層の表面においてセルサイズが大きめのセルの平均直径を測定した。具体的には、各層において任意の3個のセルの長径及び短径を測定し、平均直径(平均セル径)を算出した。平均直径(平均セル径)は、[(長径の平均値+短径の平均値)/2]とした。結果を表7〜12に示す。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
【表10】
【0043】
【表11】
【0044】
【表12】
【0045】
表7に示すように、比較例1品では、各層の測定セルの平均直径はいずれも400μm未満であった。一方、表8〜12に示すように、実施例品では、1層目の測定セルの平均直径は400μm未満であったが、2層目以降の測定セルの平均直径は400μm以上と増大していた。
【0046】
次に、比較例1品及び実施例2,4,5,6,7品を横方向に厚さ20mmごとに切断し、各層の表面において、平均直径400μm以上のセル(大径セル)の平均密度を測定した。具体的には、各層位置における1インチあたりの大径セルの個数を測定した。測定は任意の2箇所の直線100mm上における個数を測定し、1インチ当たりに換算した値の平均値を平均密度とした。結果を表13に示す。
【0047】
【表13】
【0048】
実施例品では、厚み方向の層位置が20mm以降(混在セル領域)において平均直径が400μm以上の大径セルが観測された。表13に示されるように、観測された混在セル領域における大径セルの平均密度は1.4〜5.3個/インチであった。
【0049】
次に、
図8に示す縦400mm、横400mm、厚さ100mmの成形品(比較例1品、実施例2,4,5,6品)を、サイドより50mmと200mmの位置で、表面側から厚さ20mmごとの各層の表面の大径セル平均直径と小径セル平均直径を観察し、大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率を算出した。前記において、大径セルとは、平均直径400μm以上のセルをいい、小径セルとは平均直径400μm未満のセルである。各層の平均値は、測定数3個の平均とした。結果をまとめて表14〜18に示す。表14〜18において、セル径の倍率は、大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率(平均直径比)を示す。なお、比較例1品の各層、及び、各実施例品の1層目では、平均直径100μm以上400μm未満の小径セル(大きめ)と平均直径100μm未満の小径セル(小さめ)を測定し、その結果を表14〜18に示した。
【0050】
【表14】
【0051】
【表15】
【0052】
【表16】
【0053】
【表17】
【0054】
【表18】
【0055】
以上の結果を
図9〜
図10にまとめて示す。
図9はサイドから50mmの大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率グラフであり、
図10はサイドから200mmの大径セル平均直径値/小径セル平均直径値の倍率グラフである。
図9〜
図10から明らかなとおり、1層目ではセル径の分布が、比較例1(現行品)と実施例品(粗大セル)とで同等程度となっている。一方、厚み方向の層位置が20mm付近(2層目以降)からセル径の倍率(大径セル/小径セルの割合)は、実施例品では増大しているのに対し、比較例1(現行品)ではほぼ横ばいの倍率となっている。本発明の実施例品では、セル径の倍率は2層目以降で最大50倍近くまで大きくすることが可能であった。
【0056】
以上の結果から、比較例品と比較して、本発明の実施例品は、各層における密度や弾性率は全く同等でありながら、表面及び裏面に近い層のヒステリシスロスの比率が小さく良化していることから、表面層、裏面層のへたりやすさを軽減し、フォームの追従性も良好となった。また、フォーム全体としてシート密度や剛性を従来と変えずに、高荷重時においてもなだらかな撓み曲線を描いていることから、シートからの反発性を一定状態に維持するため体圧負荷を軽減でき、良好な座り心地を得ることを示している。