【解決手段】工具弾かれ体験装置は、操作者が把持可能な把持部を有する工具本体と、前記工具本体を回転軸の回りに回転可能に支持する支持部と、前記回転軸の回りに回転する前記工具本体の回転接線方向となる操作方向の一方側へ前記工具本体を動かす駆動力を発生させる駆動装置と、を備え、前記支持部は、前記工具本体が取り付けられて前記工具本体を前記回転軸の回りに回転可能に支持する第一軸部と、前記第一軸部に対して前記回転軸の回りに相対回転可能に連結された第二軸部と、を備え、前記第二軸部は、前記駆動力が伝達可能に前記駆動装置に連結された連結部と、前記操作方向の他方側から前記工具本体に対して離間可能に係合するアームと、を備える。
前記支持部は、前記第一軸部と前記第二軸部との間に設けられ、弾性変形することで前記第一軸部に対して前記第二軸部を前記回転軸の回りに相対回転可能とする弾性変形部を備える
請求項1に記載の工具弾かれ体験装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。実施形態においては、工具の一例としてグラインダを挙げ、工具弾かれ体験装置の一例としてグラインダ弾かれ体験装置を挙げて説明する。
【0014】
[グラインダ弾かれ体験装置1]
図1は、実施形態に係るグラインダ弾かれ体験装置1の使用状態の一例を示す図である。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、疑似加工面13aに平行な所定方向をX方向、疑似加工面13aに平行でX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれに直交する方向をZ方向とする。なお、本実施形態では、疑似加工面13aは水平面として構成されており、X方向及びY方向は互いに直交する水平方向を示し、Z方向は鉛直方向を示している。そして、グラインダ弾かれ体験装置1において各構成要素の+Z方向側を「上側」、−Z方向側を「下側」とする。
【0015】
図1に示すように、グラインダ弾かれ体験装置1は、作業台10に取り付けられている。グラインダ弾かれ体験装置1は、被研修者9(操作者)が把持可能な把持部20を有する工具本体2と、工具本体2に設けられた疑似回転刃3と、疑似回転刃3が接触可能な疑似加工面13aを有する疑似被加工物13と、工具本体2を回転軸CL(
図2参照)の回りに回転可能に支持する支持部4と、工具本体2を動かす駆動力を発生させる駆動装置5(
図2参照)と、を備える。
【0016】
作業台10は、被研修者9の腰の高さに水平に配置された天板11を備える。作業台10の脚部には、天板11の上下高さを調整可能な不図示のアジャスタが設けられている。天板11には、矩形板状のベースプレート12が取り付けられている。
【0017】
[疑似被加工物13]
疑似被加工物13は、X方向に長手を有する矩形板状をなす。疑似被加工物13は、ベースプレート12に取り付けられている。本実施形態では、疑似被加工物13の上面が疑似加工面13aとして構成されている。図中符号14は、疑似被加工物13の固定用のボルトを示す。
【0018】
疑似被加工物13の長手方向(疑似回転刃3を移動させるX方向)の両端部には、L字断面を有し且つY方向に長手を有するストッパ15が設けられている。ストッパ15は、疑似被加工物13上における工具本体2のX方向の操作範囲を画定する。図中符号16は、ストッパ15の固定用のボルトを示す。ストッパ15および疑似被加工物13は、ボルト16によって共締めされている。
【0019】
[工具本体2]
工具本体2は、被研修者9が把持可能な把持部20を有する。工具本体2は、回転軸CL(
図2参照)の回りに回転可能である。回転軸CLは、把持部20に対して疑似回転刃3が設けられた側とは反対側に設けられている。なお、工具本体2は、実物であってもよいし、実際のグラインダにおける持ち手部分の形態を模したものであってもよい。これにより、グラインダ作業の臨場感を高めることができる。
【0020】
図2は、実施形態に係るグラインダ弾かれ体験装置1の一例を示す平面図である。
図2に示すように、工具本体2は、Y方向に延在する円柱状の把持部20と、把持部20に取り付けられるとともに把持部20と直交するX方向に延在する円柱状のサポートロッド21と、グラインダの把持部20が固定されるとともにY方向に延在する固定アーム22と、を備える。
【0021】
[サポートロッド21]
サポートロッド21は、把持部20からX方向に延出している。サポートロッド21は、把持部20よりも小さい直径を有する。
図1の例では、被研修者9が右手で把持部20を持つとともに左手でサポートロッド21を持った状態でグラインダ弾かれ体験装置1を使用している。
【0022】
[固定アーム22]
図2の平面視で、固定アーム22の幅(X方向の長さ)は、−Y方向側ほど小さくなっている。固定アーム22の−Y方向側部(先端部)には、把持部20が固定されている。把持部20は、環状をなす一対の取付具23によって、固定アーム22に脱着可能に取り付けられている。
【0023】
図3は、実施形態に係るグラインダ弾かれ体験装置1の一例を示す分解斜視図である。
図3においては、把持部20およびサポートロッド21等の図示を省略している。
図3に示すように、固定アーム22は、基部22aと、基部22aからY方向に沿って斜め下方に延出する傾斜部22bと、傾斜部22bの側縁から突出する複数の凸部22cと、を備える。
【0024】
図4は、
図2のIV−IV断面を含む側面図である。
図4に示すように、固定アーム22の基部22aは、水平に配置されている。
傾斜部22bは、基部22aから−Y方向側ほど下方に位置するように直線状に傾斜している。
複数の凸部22cは、把持部20を抱え込むように傾斜部22bから突出している。実施形態において、固定アーム22は、X方向両側計4つの凸部22cによって、把持部20を抱え込んでいる。
【0025】
図3に示すように、基部22aには、上下に開口する複数の貫通孔22h,22iが形成されている。実施形態において、複数の貫通孔22h,22iは、基部22aの中心において回転軸CLと同軸に開口する1つの第一貫通孔22hと、第一貫通孔22hよりも+Y方向側において第一貫通孔22hよりも小さい直径を有して開口する1つの第二貫通孔22iと、である。
【0026】
図3において、符号24は固定アーム22の固定用のナット、符号25は回り止め用のボルト、符号26は弾性変形部6の上部に連結された上部連結体、符号26aは上部連結体26から上方に突出する雄ネジ部、符号26bは上部連結体26に設けられた雌ネジ部、をそれぞれ示す。
【0027】
例えば、ナット24を、固定アーム22の第一貫通孔22hを介して、上方に突出する上部連結体26の雄ネジ部26aに螺着することによって、固定アーム22を上部連結体26に固定することができる。一方、ボルト25の軸部を、固定アーム22の第二貫通孔22iを介して、上部連結体26の雌ネジ部26bに螺着することによって、固定アーム22を上部連結体26に固定することができる。これにより、上部連結体26の雄ネジ部26aに対する固定アーム22の回り止めを行うことができる。
【0028】
傾斜部22bには、傾斜部22bの傾斜方向と直交する下方に突出する円柱状のピン27が取り付けられている。
図2の平面視で、ピン27は、振り出しアーム30(アーム)の先端部の+X方向側に配置されている。ピン27は、振り出しアーム30の+X方向側(回転軸CLに対し左回り側)への回転力を受ける部材である。例えば、工具本体2を回転軸CLの回りに右回り(時計回り)に回転させる場合、ピン27は振り出しアーム30の先端部に当接し、工具本体2と支持部4とは一体的に回転する。
【0029】
[疑似回転刃3]
図1に示すように、疑似回転刃3は、把持部20の側を基点とした工具本体2の先端側(−Y方向側)に設けられている。疑似回転刃3は、疑似被加工物13への回転刃の接触状態を再現する。なお、疑似回転刃3は、回転しない実物であってもよいし、実際のグラインダにおける回転刃の形態を模したものであってもよい。これにより、グラインダ作業の臨場感を高めることができる。
【0030】
[モータ28]
グラインダ弾かれ体験装置1は、疑似回転刃3に動力を伝達せずに回転可能なモータ28を更に備える。これにより、モータ28を回転させることによって、疑似回転刃3を回転させることなく、モータ28の回転音を疑似回転刃3の回転音として知覚させることができるため、グラインダ作業の臨場感を高めることができる。
【0031】
図2の平面視で、モータ28の出力軸28aは、疑似回転刃3の中心軸3CL寄りに配置されている。これにより、モータ28を回転させることによって、疑似回転刃3を回転させることなく、モータ28の遠心力を疑似回転刃3の遠心力として実感させることができるため、グラインダ作業の臨場感をより一層高めることができる。例えば、モータ28と疑似回転刃3との間には、疑似回転刃3に動力を伝達せずに、モータ28の回転を所定の減速比に減速する不図示の減速機構が設けられている。
【0032】
[支持部4]
図4に示すように、支持部4は、工具本体2が取り付けられて工具本体2を回転軸の回りに回転可能に支持する第一軸部4Aと、第一軸部4Aに対して回転軸の回りに相対回転可能に連結された第二軸部4Bと、を備える。回転軸CLには、第一軸C1及び第二軸C2が含まれる。
【0033】
第一軸部4Aは、自身の中心軸である第一軸C1を有する。第二軸部4Bは、自身の中心軸である第二軸C2を有する。第一軸C2は、第一軸C1と同軸かつ別に設けられている。実施形態において、第一軸C1と第二軸C2とは、鉛直方向において同軸に配置されている。これにより、工具本体2を水平方向に操作することができるため、グラインダ作業時における実際の把持部20の持ち方、作業姿勢などを体験することができる。
【0034】
図3に示すように、第一軸部4Aは、弾性変形部6の上部に連結された上部連結体26と、上部連結体26から上方に突出する雄ネジ部26aと、を備える。
第二軸部4Bは、第二軸部4Bの上側に位置するとともにY方向に延在する振り出しアーム30と、振り出しアーム30を下方から支持するシャフトホルダ31と、第二軸C2を有するとともにシャフトホルダ31に上端部が固定されるシャフト32と、シャフト32を回転可能に支持するベアリングホルダ33と、シャフト32の下端部に固定されるとともにY方向に延在するシリンダ弾きアーム34(連結部)と、を備える。
【0035】
[振り出しアーム30]
振り出しアーム30は、第二軸C2の側を基端側として−Y方向側に延出している。
図2の平面視で、振り出しアーム30の幅(X方向の長さ)は、−Y方向側ほど小さくなった後に、一定となっている。すなわち、振り出しアーム30の先端部は、一定の幅を有している。
【0036】
図3に示すように、振り出しアーム30の基端側には、上下に開口する複数の貫通孔30h,30iが形成されている。実施形態において、複数の貫通孔30h,30iは、第二軸C2と同軸に開口する1つの第一貫通孔30hと、第一貫通孔30hの周囲において第一貫通孔30hよりも小さい直径を有して開口する4つの第二貫通孔30iと、である。
【0037】
図3において、符号35は振り出しアーム30の固定用のボルト、符号36は弾性変形部6の下部に連結された下部連結体、符号36hは下部連結体36を上下に開口する貫通孔、符号36iは下部連結体36から上方に突出し弾性変形部6に埋設されたナット部、をそれぞれ示す。なお、下部連結体36およびナット部36iは、第二軸部4Bに含まれる。
【0038】
例えば、ボルト35の軸部を、振り出しアーム30の第一貫通孔30hおよび下部連結体36の貫通孔36hを介して、ナット部36iに螺着することによって、振り出しアーム30を下部連結体36に固定することができる。
【0039】
[シャフトホルダ31]
シャフトホルダ31は、第二軸C2と同軸に開口する円筒状のシャフトホルダ本体31aと、シャフトホルダ本体31aの上端において径方向外側に張り出す円環状のフランジ部31bと、を備える。
【0040】
シャフトホルダ本体31aの開口は、シャフト32の上端部を挿通可能な大きさを有する。シャフトホルダ本体31aには、第二軸C2と直交する方向に開口する上下一対の貫通孔31hが形成されている。
【0041】
フランジ部31bの開口は、ボルト35の頭部を収容可能な大きさを有する。フランジ部に31bは、上下に開口する4つの貫通孔31iが形成されている。フランジ部31bにおける各貫通孔31iは、振り出しアーム30における各第二貫通孔30iと上下方向で重なる位置に配置されている。
【0042】
図3において、符号37はシャフトホルダ31の固定用のボルトを示す。
例えば、ボルト37の軸部を、シャフトホルダ31におけるフランジ部31bの各貫通孔31iおよび振り出しアーム30の各第二貫通孔30iを介して、下部連結体36に設けられた不図示の雌ネジ部に螺着することによって、シャフトホルダ31を振り出しアーム30と共に下部連結体36に固定することができる。
【0043】
[シャフト32]
シャフト32は、上下に延在する円柱状をなしている。シャフト32の上端部は、ベアリングホルダ33よりも上方に突出している。一方、シャフト32の下端部は、ベアリングホルダ33よりも下方に突出している。シャフト32の上端部には、第二軸C2と直交する方向に開口する上下一対の雌ネジ部32aが設けられている。各雌ネジ部32aは、シャフトホルダ本体31aにおける各貫通孔31hと第二軸C2と直交する方向で重なる位置に配置されている。
【0044】
図3において、符号38はシャフト32の上端部の固定用のボルトを示す。
例えば、ボルト38の軸部を、シャフトホルダ本体31aの各貫通孔31hを介して、シャフト32の上端部に設けられた各雌ネジ部32aに螺着することによって、シャフト32の上端部をシャフトホルダ31に固定することができる。
【0045】
[ベアリングホルダ33]
ベアリングホルダ33は、第二軸C2と同軸に開口する円筒状のベアリングホルダ本体33aと、ベアリングホルダ本体33aの下端において径方向外側に張り出す円環状のフランジ部33bと、を備える。
【0046】
ベアリングホルダ本体33aの開口は、シャフト32を挿通可能な大きさを有する。ベアリングホルダ本体33aには、シャフト32の上下方向の移動を規制する不図示の規制部材と、シャフト32の第二軸C2の回りの回転を許容する不図示のベアリングと、が設けられている。
【0047】
フランジ部33bには、上下に開口する4つの貫通孔33hが形成されている。
図3においては、2つの貫通孔33hを示す。
図4において、符号39はフランジ部33bの固定用のボルトを示す。例えば、ボルト39の軸部を、フランジ部33bの各貫通孔33hを介して、ベースプレート12に設けられた不図示の雌ネジ部に螺着することによって、ベアリングホルダ33をベースプレート12に固定することができる。
【0048】
[シリンダ弾きアーム34]
図4に示すように、シリンダ弾きアーム34は、ベースプレート12よりも下方に配置されている。
図3に示すように、シリンダ弾きアーム34は、第二軸C2の側を基端側として−Y方向側に延出した後、−X方向に屈曲して突出するL字状をなしている。具体的に、シリンダ弾きアーム34は、第二軸C2と同軸に開口する円筒状のボス部34aと、ボス部34aから−Y方向側に延出するアーム本体34bと、アーム本体34bの先端部から−X方向に突出する突出部34cと、を備える。
【0049】
ボス部34aは、ボルト等の不図示の固定具によって、シャフト32の下端部に固定されている。
図2の平面視で、アーム本体34bの幅(X方向の長さ)は、−Y方向側ほど小さくなっている。
図3に示すように、突出部34cには、上下に開口する貫通孔34hが形成されている。
図4において、符号34CLは貫通孔34hの中心軸を示す。
【0050】
[弾性変形部6]
図4に示すように、第一軸部4Aと第二軸部4Bとの間には、弾性変形可能な弾性変形部6が設けられている。弾性変形部6は、弾性変形することで第一軸部4Aに対して第二軸部4Bを回転軸CLの回りに相対回転可能とする。弾性変形部6は、上部連結体26と下部連結体36との間に挟まれている。弾性変形部6は、回転軸CLと同軸の円柱状をなす。弾性変形部6は、疑似被加工物13に対する工具本体2の傾動を許容する。例えば、弾性変形部6は、防振ゴムである。
【0051】
[駆動装置5]
図5は、実施形態に係るグラインダ弾かれ体験装置1の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、駆動装置5は、エアシリンダ40と、エアシリンダ40に圧縮空気(空気)を供給するエアコンプレッサ50と、エアシリンダ40への空気の供給を制御する電磁弁55と、を備える。
【0052】
グラインダ弾かれ体験装置1は、回転軸CL(
図2参照)の回りにおける工具本体2(
図2参照)の位置を検知するセンサ56と、センサ56の検知結果に基づいて駆動装置5によって駆動力を発生させる制御装置60と、駆動装置5の稼働信号を制御装置60に出力可能なリモートコントローラ70と、を更に備える。
【0053】
[エアシリンダ40]
図2に示すように、エアシリンダ40は、ベースプレート12よりも下側に配置されている。エアシリンダ40は、X方向に延在するシリンダ本体41と、X方向に延在するとともにシリンダ本体41に対してX方向に移動可能(進退移動可能)なロッド部42と、を備える。
【0054】
シリンダ本体41には、不図示のシリンダ室およびロッド室が設けられている。シリンダ室に空気が供給された場合には、ロッド部42が伸長する。ロッド室に空気が供給された場合には、ロッド部42が収縮する。ロッド部42が伸長する場合および収縮する場合の何れにおいても、空気が供給される室とは反対側の室は、大気開放される。
【0055】
シリンダ本体41の−X方向端は、第一ブラケット43を介してベースプレート12に固定されている。
ロッド部42は、工具本体2の回転軸CLの回りの回転操作に従動してX方向に移動する。ロッド部42の+X方向端(以下「ロッド部42先端」ともいう。)は、第二ブラケット44を介してシリンダ弾きアーム34の突出部34cに取り付けられている。シリンダ弾きアーム34の突出部34cは、中心軸34CLの回りに回転可能とされている。
【0056】
[エアコンプレッサ50]
エアシリンダ40のシリンダ室またはロッド室には、エアコンプレッサ50(
図5参照)によって空気が供給される。
図5に示すように、エアコンプレッサ50は、空気供給路51,52を介してエアシリンダ40に接続されている。
【0057】
[電磁弁55]
電磁弁55は、エアコンプレッサ50からエアシリンダ40への空気の供給を制御する。電磁弁55は、エアシリンダ40とエアコンプレッサ50との間に位置する空気供給路51,52に設けられている。以下、エアシリンダ40側の空気供給路51を「第一供給路51」、エアコンプレッサ50側の空気供給路52を「第二供給路52」ともいう。
【0058】
[センサ56]
図2に示すように、センサ56は、回転軸CLの回りにおける工具本体2の位置を検知する。実施形態において、センサ56は、シリンダ本体41に取り付けられている。センサ56がロッド部42のX方向における位置を検知することによって、回転軸CLの回りにおける工具本体2の位置を検知することができる。例えば、センサ56は、近接センサである。
【0059】
図5に示すように、センサ56の検知信号は、制御装置60に出力される。図中符号61は、センサ56と制御装置60との間の信号の伝送経路を示す。
【0060】
[リモートコントローラ70]
リモートコントローラ70は、被研修者9(
図1参照)が工具本体2(
図2参照)を操作する方向とは逆方向に動かす稼働信号を、制御装置60に出力可能である。例えば、リモートコントローラ70は、無線によって稼働信号を制御装置60に出力する。
【0061】
[制御装置60]
制御装置60は、センサ56の検知結果に基づいて駆動装置5を制御する。制御装置60は、センサ56の検知結果に基づいて駆動装置5に駆動力を発生させる。例えば、制御装置60は、駆動装置5を制御し、疑似回転刃3がストッパ15に当たる前の位置で工具本体2を停止させる(
図2参照)。
【0062】
制御装置60は、電磁弁55をオンまたはオフに制御する。制御装置60は、電磁弁55をオンに制御し、第一供給路51と第二供給路52とを接続する。一方、制御装置60は、電磁弁55をオフに制御し、第一供給路51を大気に開放し、第二供給路52を閉塞する。
図中符号62は、制御装置60と電磁弁55との間の信号の伝送経路を示す。
【0063】
制御装置60は、リモートコントローラ70からの稼働信号を受信する受信部63を備える。実施形態において、第一供給路51はシリンダ室に接続されており、ロッド室は常時開放されている。これにより、受信部63が稼働信号を受信していない状態では、エアシリンダ40のストローク範囲内において工具本体2を自由に操作することができる。
【0064】
制御装置60は、リモートコントローラ70から稼働信号を受けた場合、電磁弁55をオンにする。制御装置60は、リモートコントローラ70をオンにしている間、電磁弁55をオンにする。例えば、制御装置60は、電磁弁55を0.5秒程度の時間だけオンにする。エアシリンダ40は、リモートコントローラ70をオンにしている間だけ伸長した後、大気開放状態に戻る。
【0065】
[駆動装置5の動作]
図6は、実施形態に係る駆動装置5の動作の一例を示す図である。
実施形態においては、被研修者9(
図1参照)が工具本体2を操作する方向(図中矢印V1方向)を回転軸CLに対し右回りとする。
図6に示すように、駆動装置5は、回転軸CLの回りに回転する工具本体2の回転接線方向となる操作方向の一方側(
図6の矢印K1方向側)へ工具本体2を動かす駆動力を発生させる。すなわち、駆動装置5は、被研修者9(
図1参照)が工具本体2を操作する方向(図中矢印V1方向)とは逆方向側(
図6の矢印V2方向側)へ工具本体2を動かすことが可能である。
図6においては、工具本体2を逆方向側へ動かしたときの位置を実線で示し、工具本体2の移動前の初期位置を二点鎖線で示している。
【0066】
例えば、ロッド部42がシリンダ本体41に対して矢印K1方向に伸張すると、ロッド部42先端に接続されたシリンダ弾きアーム34が回転軸CLに対し左回りに回転する。振り出しアーム30は、シリンダ弾きアーム34と共に回転軸CLに対し左回りに回転する。すなわち、振り出しアーム30は、操作方向の他方側(矢印K1方向側とは反対側)から工具本体2のピン27に係合する。振り出しアーム30が回転軸CLに対し左回りに回転すると、振り出しアーム30の先端部はピン27に当接し、振り出しアーム30と工具本体2とは一体的に回転する。したがって、ロッド部42の伸長動作によって、被研修者9(
図1参照)が工具本体2を操作する方向(図中矢印V1方向)とは逆方向側(
図6の矢印V2方向側)へ工具本体2を動かすことでキックバック現象を再現させることができる。
【0067】
以上説明したように、上記実施形態に係るグラインダ弾かれ体験装置1は、被研修者9が把持可能な把持部20を有する工具本体2と、工具本体2を回転軸CLの回りに回転可能に支持する支持部4と、回転軸CLの回りに回転する工具本体2の回転接線方向となる操作方向の一方側(矢印K1方向側)へ工具本体2を動かす駆動力を発生させる駆動装置5と、を備え、支持部4は、工具本体2が取り付けられて工具本体2を回転軸CLの回りに回転可能に支持する第一軸部4Aと、第一軸部4Aに対して回転軸CLの回りに相対回転可能に連結された第二軸部4Bと、を備え、第二軸部4Bは、駆動力が伝達可能に駆動装置5に連結されたシリンダ弾きアーム34と、操作方向の他方側(矢印K1方向側とは反対側)から工具本体2に対して離間可能に係合する振り出しアーム30と、を備える。
この構成によれば、支持部4が、工具本体2が取り付けられて工具本体2を回転軸CLの回りに回転可能に支持する第一軸部4Aと、第一軸部4Aに対して回転軸CLの回りに相対回転可能に連結された第二軸部4Bとを備えることで、工具本体2の操作方向と工具本体2へのキックバック現象の作用方向とを同一軌跡上に揃えることができる。加えて、第二軸部4Bが、駆動力が伝達可能に駆動装置5に連結されたシリンダ弾きアーム34と、操作方向の他方側(矢印K1方向側とは反対側)から工具本体2に対して離間可能に係合する振り出しアーム30とを備えることで、シリンダ弾きアーム34を介して駆動装置5の駆動力を第二軸部4Bに伝達させ、振り出しアーム30を操作方向の他方側(矢印K1方向側とは反対側)から工具本体2に係合させることによって、被研修者9(
図1参照)が工具本体2を操作する方向(図中矢印V1方向)とは逆方向側(
図6の矢印V2方向側)へ工具本体2を瞬時に動かすことができる。加えて、支持部4が、工具本体2が取り付けられて工具本体2を回転軸CLの回りに回転可能に支持する第一軸部4Aを備えることで、工具本体2は回転軸CLの回りに回転可能であるため、前記逆方向側への工具本体2の移動範囲を回転軸CLの回りで許容することができる。したがって、正確に工具の動作、特にキックバック現象を再現することができる。例えば、グラインダを使用して被研修者に災害の様子を体験させる場合、被研修者9がグラインダを操作する方向とは逆方向に工具本体2を動かすことで、所望のキックバック現象を体験することができる。したがって、グラインダを用いた作業において災害の回避に対して効果的な研修を行うことができる。加えて、災害の発生に至るプロセス、発生状況、原因について当事者の立場に立って考えさせることができる。そのため、グラインダを使用する作業現場に潜む危険を察知する能力、災害へつながる行動を阻止する能力、実行力を養うことができ、安全に対する意識を高めることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、支持部4が、第一軸部4Aと第二軸部4Bとの間に設けられ、弾性変形することで第一軸部4Aに対して第二軸部4Bを回転軸CLの回りに相対回転可能とする弾性変形部6を備えることで、以下の効果を奏する。弾性変形部6の弾性変形によって工具本体2を疑似被加工物13に向けて任意の角度で傾動させることができるため、グラインダ作業時における実際の把持部20の持ち方、作業姿勢などを体験することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、回転軸CLの回りにおける工具本体2の位置を検知するセンサ56と、センサ56の検知結果に基づいて駆動装置5によって駆動力を発生させる制御装置60と、を更に備えることで、以下の効果を奏する。回転軸CLの回りにおける工具本体2の位置に基づいて駆動装置5を制御することができるため、グラインダ作業時におけるキックバック現象を予め決められた範囲の位置で再現することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、工具本体2を操作方向の一方側(矢印K1方向側)へ動かす稼働信号を、制御装置60に出力可能なリモートコントローラ70を更に備えることで、以下の効果を奏する。リモートコントローラ70を用いた遠隔操作で工具本体2の稼働信号を制御装置60に出力することができるため、グラインダ作業時におけるキックバック現象を所望のタイミングで再現することができる。例えば、グラインダ作業時におけるキックバック現象を、当事者の意図しないタイミングで再現することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、駆動装置5は、エアシリンダ40と、エアシリンダ40に空気を供給するエアコンプレッサ50と、エアシリンダ40への空気の供給を制御する電磁弁55と、を備えることで、以下の効果を奏する。電磁弁55によってエアシリンダ40への空気の供給を瞬時に行うことができるため、グラインダ作業時におけるキックバック現象のリアルな感覚を体験することができる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0073】
上記実施形態では、工具の一例としてグラインダを挙げ、工具弾かれ体験装置の一例としてグラインダ弾かれ体験装置1を挙げたが、これに限らない。例えば、工具は、回転鋸などのグラインダ以外の回転刃を持った工具であってもよい。すなわち、工具弾かれ体験装置は、グラインダ以外の回転刃を持った工具を使用して被研修者に災害の様子を体験させる装置であってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、センサ56が回転軸CLの回りにおける工具本体2の位置を検知する近接センサ56である例を挙げたが、これに限らない。例えば、センサは、疑似被加工物13への疑似回転刃3の押し付け荷重を検知する荷重センサであってもよい。また、センサは、疑似回転刃3を疑似被加工物13へ押し付けたときの疑似回転刃3と工具本体2との接続部分の歪みを検知する歪みゲージであってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、弾性変形部6が防振ゴムである例を挙げたが、これに限らない。例えば、弾性変形部6は、スプリングであってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、エアシリンダ40の駆動速度を制御可能なスピードコントローラを更に備えていてもよい。スピードコントローラによってエアシリンダ40の駆動速度を制御することができるため、被研修者9にキックバック現象の動きを任意の速度で体験させることができる。
【0077】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。