【解決手段】少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級と二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級と二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含有し、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しないモデル材用組成物と、19〜80重量部の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体と、15〜75重量部の重量平均分子量が300以上のオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールを含有するサポート材用組成物と、を含む光造形用組成物セット。
インクジェット光造形法により光造形物を造形するために使用されるモデル材用組成物と、サポート材を造形するために使用されるサポート材用組成物とを組み合わせてなるインクジェット光造形用組成物セットであって、
前記モデル材用組成物は、エチレン重合性基を有する単官能モノマーと、少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーと、光開始剤とを含有するモデル材用組成物であって、
該多官能モノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含み、該モデル材用組成物は、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しない組成物であり、
前記サポート材用組成物は、前記サポート材用組成物全体100重量部に対して、
19重量部以上80重量部以下の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体と、
15重量部以上75重量部以下のオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールと、
光重合開始剤を含有し、
前記オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの重量平均分子量が300以上である、インクジェット光造形用組成物セット。
前記第1のモノマーの質量/前記第2のモノマーの質量で表される質量比率は、40/60以上80/20以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインクジェット光造形用組成物セット。
前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーが有する前記エチレン重合性基は、いずれも(メタ)アクリル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット光造形用組成物セット。
前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの少なくともいずれかは、前記エチレン重合性基として、ビニルエーテル基またはアリル基を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット光造形用組成物セット。
前記サポート材用組成物において、前記光重合開始剤の含有量は、前記サポート材用組成物全体100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下である、請求項1に記載のインクジェット光造形用組成物セット。
前記サポート材用組成物が、表面調整剤をさらに含有し、前記表面調整剤の含有量は、前記サポート材用組成物全体100重量部に対して、0.005重量部以上3重量部以下である、請求項1又は6に記載のインクジェット光造形用組成物セット。
前記サポート材用組成物が、水溶性有機溶剤をさらに含有し、前記水溶性有機溶剤の含有量は、前記サポート材用組成物全体100重量部に対して、30重量部以下である、請求項1又は6又は7に記載のインクジェット光造形用組成物セット。
インクジェット光造形法により、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光造形用インクセットを用いて光造形物を製造する方法であって、前記モデル材用組成物を光硬化させてモデル材を得るとともに、前記サポート材用組成物を光硬化させてサポート材を得る工程(I)と、前記サポート材を除去する工程(II)と、を有する、光造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
1.モデル材用組成物
本発明のモデル材用組成物は、エチレン重合性基を有する単官能モノマーと、少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーと、光開始剤とを含有するモデル材用組成物であって、前記多官能モノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれもを有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含み、前記組成物は、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しない、組成物である。
【0024】
1−1.エチレン重合性基を有する単官能モノマー
エチレン重合性基を有する単官能モノマー(以下、単に本発明の単官能モノマーともいう。)とは、1つのエチレン重合性基を有するモノマーである。
【0025】
エチレン重合性基には、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基およびビニルアミド基などが含まれる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかを意味する。
【0026】
これらのうち、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基および(メタ)アクリルアミド基が好ましく、(メタ)アクリル基がさらに好ましい。
【0027】
本発明の単官能モノマーは、単独で用いてもよいし、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の単官能モノマーの数平均分子量は、150〜1000とすることで、UV−IJ(ultraviolet-inkjet)法による立体造形物の製造時にインクジェット出射性を高めることができるほか、SLA(stereolithography)法による立体造形物の製造時に液体の対流を防いで硬化性を大きくし、破壊強度を高めることが可能となる。また、単官能モノマーの分子量を150〜600とすることで、インクジェット出射性および硬化性をさらに高めることができる。
【0029】
モデル材用組成物中に含まれる本発明の単官能モノマーの比率は、特に限定されないが、組成物の全質量に対して50質量%〜95質量%であることが好ましく、65質量%〜90質量%であることがさらに好ましい。本発明の単官能モノマーの量を50質量%以上とすることで、柔軟性が生じて延びが付与され、本発明の単官能モノマーの量を90質量%以下とすることで、架橋ざれていない低分子物質が減るため剛性を高めることができる。
【0030】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる前記(メタ)アクリル基を有する本発明の単官能モノマーの例には、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、n-ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル−フタル酸、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート等が含まれる。
【0031】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる前記アリルエーテル基を有する本発明の単官能モノマーの例には、フェニルアリルエーテル、o−,m−,p−クレゾールモノアリルエーテル、ビフェニル−2−オールモノアリルエーテル、ビフェニル−4−オールモノアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、シクロヘキサンメタノールモノアリルエーテル等が含まれる。
【0032】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる前記ビニルエーテル基を有する本発明の単官能モノマーの例には、ブチルビニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、ブチルブテニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルエトキシビニルエーテル、アセチルエトキシエトキシビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アダマンチルビニルエーテルなどが含まれる。
【0033】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる前記マレイミド基を有する本発明の単官能モノマーの例には、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、n−ヘキシルマレイミドなどが含まれる。
【0034】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる前記(メタ)アクリルアミド基を有する本発明の単官能モノマーの例には、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド等が含まれる。
1−2.少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマー
少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマー(以下、単に本発明の多官能モノマーともいう。)とは、多官能モノマーであって、前記重合性基として、少なくとも一つのエチレン重合性基を有するものをいう。本発明のモデル材用組成物には、本発明の多官能モノマーとして、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー(以下、単に第1のモノマーともいう。)、ならびに芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマー(以下、単に第2のモノマーともいう。)を少なくとも含有する。
【0035】
本発明のモデル材用組成物は、組成物全体の質量に対して、5質量%以上50質量%以下の本発明の多官能モノマーを含有することができる。組成物全体量に対する本発明の多官能モノマーの含有量が5質量%以上であると、破壊強度を向上させるという効果がある。組成物全体の質量に対する本発明の多官能モノマーの含有量が50質量%以下であると、延びを向上させるという効果がある。本発明の多官能モノマーの含有量は、好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
【0036】
本発明のモデル材用組成物は、第1のモノマーおよび第2のモノマーを含むことで、これを硬化して製造する立体造形物の靱性を高めることができる。靱性が高いとは、応力を付与した際の、高分子鎖が変性せずに耐える弾性領域を経由して降伏点に達したときの降伏応力が高く、加えて、応力をさらに付与した際に、高分子鎖が変形を起こし伸びる延性領域を経由して、高分子鎖が耐え切れずに破断するときの、破壊伸度および破壊強度が大きいことをいう。
【0037】
破断は、変形された局所に応力が集中して生じるものであるから、複数の箇所に応力を分散させることで、破壊伸度および破壊強度を高めることができる。
【0038】
第1のモノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基を有しているので、水素結合、π−π結合、立体障害などの、分子間相互作用が大きい架橋部を形成することができる。この、第1のモノマーにより架橋された架橋部は、応力負荷により高分子鎖が引っ張られるときに、強い分子間相互作用により、強い抵抗として働くため、降伏応力を高めることができる。また、降伏後の高分子鎖がずれても、第1のモノマー同士が接近すると、この第1のモノマーによる架橋部は容易に再形成されるので、応力が分散されやすくなる。
【0039】
一方、第2のモノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基などの分子間相互作用を奏する官能基を有していないので、第2のモノマーにより架橋された架橋点では、応力を負荷された時に、高分子鎖のずれが生じやすくなる。第2のモノマーによる架橋部において、高分子鎖がずれることによっても、応力が分散されやすくなる。
【0040】
本発明では、以上のメカニズムにより、これら2つのモノマーを併用することによって応力が広く分散されるため、靱性を向上させることができると考えられる。
【0041】
このとき、第1のモノマーの数平均分子量が第2のモノマーの数平均分子量よりも小さくなるように、第1のモノマーおよび第2のモノマーを選択することにより、さらに靱性を向上させることができる。分子間相互作用が強い第1のモノマーの長さを、分子間相互作用が少ない第2のモノマーの長さよりも短くすることで、応力が負荷された際に、分子間相互作用が強い第1のモノマーによる架橋部が優先的に切れやすくなる。このとき、第1のモノマーによる架橋部が切れて降伏が生じた後に、分子間相互作用が弱いため良く伸びる第2のモノマーによる架橋部が残ることで、降伏後の延びが得られるために、靱性がより高くなったものと考えられる。
【0042】
また、本発明のモデル材用組成物に含まれる、前記第1のモノマーの質量と前記第2のモノマーの質量との質量比率(前記第1のモノマーの質量/前記第2のモノマーの質量)は、40/60以上80/20以下であることが好ましい。この質量比率を40/60以上とすることで、第1のモノマーの量を多くして降伏強度を高くすることができ、この質量比率を80/20以下とすることで、第2のモノマーの量を多くして延びを高くすることができる。
【0043】
1−2−1.第1のモノマー
第1のモノマーは、少なくとも一つの重合性基を有する多官能モノマーであって、前記重合性基として、少なくとも一つのエチレン重合性基を有し、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基をさらに有する、分子量が1000以下のモノマーである。なお、脂環式炭化水素基は飽和脂環式炭化水素基でも不飽和脂環式炭化水素基でもよい。
【0044】
エチレン重合性基には、前記本発明の単官能モノマーと同様に、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基およびビニルアミド基などが含まれる。これらのうち、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基および(メタ)アクリルアミド基が好ましい。第1のモノマーが有するエチレン重合性基は、本発明の単官能モノマーが有するエチレン重合性基と同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0045】
第1のモノマーは、上記したエチレン重合性基によって他のモノマー(本発明の単官能モノマー、第1のモノマー、第2のモノマーまたはその他の本発明のモデル材用組成物が含有するモノマー)と重合することができる。第1のモノマーが有する、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基または二級アミド基は、重合時に上記の第1のモノマーによる架橋部を形成する。
【0046】
また、第1のモノマーは、分子量を150以上1000以下とすることで、剛性を高めることができる。第1のモノマーの分子量は、好ましくは160以上600以下であり、さらに好ましくは160以上400以下である。
【0047】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、(メタ)アクリル基を有する第1のモノマーの例には、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレートおよびシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0048】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、アリルエーテル基を有する第1のモノマーの例には、フタル酸ジアリルエーテル、イソフタル酸ジアリルエーテル、ジメタノールトリシクロデカンジアリルエーテルおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル等が含まれる。
【0049】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、ビニルエーテル基を有する第1のモノマーの例には、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル。ビスフェノールAのEO付加物ジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ノルボルニルジメタノールジビニルエーテル、ジビニルレゾルシンおよびジビニルハイドロキノン等が含まれる。
【0050】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、(メタ)アクリルアミド基を有する第1のモノマーの例には、ビスメチレンアクリルアミド、ジ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミド、トリ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミドおよび以下に例示する特開2013−208890号公報に記載の重合性モノマー2等が含まれる。
【0052】
1−2−2.第2のモノマー
第2のモノマーは、少なくとも一つの重合性基を有する多官能モノマーであって、前記重合性基として、少なくとも一つのエチレン重合性基を有し、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下のモノマーである。
【0053】
エチレン重合性基には、前記本発明の単官能モノマーと同様に、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基およびアセチルビニル基などが含まれる。第2のモノマーが有するエチレン重合性基は、本発明の単官能モノマーが有するエチレン重合性基と同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。また、第2のモノマーが有するエチレン重合性基は、第1のモノマーが有するエチレン重合性基と同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0054】
第2のモノマーは、エチレン重合性基を2つ以上有することが好ましい。第2のモノマーは、1のエチレン重合性基によって他のモノマー(本発明の単官能モノマー、第1のモノマー、第2のモノマーまたはその他の本発明のモデル材用組成物が含有するモノマー)と重合することができる。第2のモノマーは、他のエチレン重合性基によって、重合時に上記の第2のモノマーによる架橋部を形成する。
【0055】
また、第2のモノマーは、分子量を150以上1000以下とすることで、弱い力でも伸びが発生することを防ぎ、靱性を高めることができる。分子量は、好ましくは160以上600以下であり、さらに好ましくは180以上500以下である。
【0056】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、(メタ)アクリル基を有する第2のモノマーの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能モノマー;ならびに
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能モノマー等が含まれる。
【0057】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、ビニルエーテル基を有する第2のモノマーの例には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、ブチレンジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、グリセリンエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数6)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリビニルエーテルエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数3)、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンヘキサビニルエーテルおよびそれらのオキシエチレン付加物等が含まれる。
【0058】
本発明のモデル材用組成物が含有することのできる、アリルエーテル基を有する第2のモノマーの例には、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールジアリルエーテル、及びポリエチレングリコールジアリルエーテルなどが挙げられる。また、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度2〜5)ジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタンなどが含まれる。また、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテルおよびポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアリルエーテルなどが含まれる。
1−2−3.第1のモノマーと第2のモノマーとの組みあわせ
第1のモノマーおよび第2のモノマーの組み合わせは特に限定されず、いかなる組み合わせとしてもよい。
【0059】
前記第1のモノマーが有する前記エチレン重合性基および前記第2のモノマーが有する前記エチレン重合性基が、いずれも(メタ)アクリル基であると、光硬化感度が高く、少ないエネルギーで造形ができる。
【0060】
一方、前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの少なくともいずれかが、前記エチレン重合性基としてビニルエーテル基またはアリル基を含む化合物であると、製造した立体造形物の延びをさらに高めることができる。これは、ビニルエーテル基またはアリル基は重合が遅いために、単官能のモノマーの重合が進むため、架橋部間距離が長くなり、延びが大きくなるものと考えられる。
【0061】
<光重合開始剤>
本発明のモデル材用組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、紫外線、近紫外線または可視光領域の波長の光を照射するとラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。上記光重合開始剤としては、低エネルギーで重合を開始させることができれば特に限定されないが、アシルフォスフィンオキサイド化合物、α−アミノアルキルフェノン化合物、α−ヒドロキシキノン化合物、チオキサントン化合物、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物およびケタール化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0062】
上記アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば、BASF社製の“DAROCURE TPO”等が挙げられる。
【0063】
上記α−アミノアルキルフェノン化合物としては、具体的には、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なα−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、BASF社製の“IRGACURE 369”、“IRGACURE 907”等が挙げられる。
【0064】
上記α−ヒドロキシキノン化合物としては、具体的には、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2-メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2-ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ2−メチル−1−プロパン1−オン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なα−ヒドロキシキノン化合物としては“IRGACURE 184”“DAROCURE 1173”“IRGACURE 2959”“IRGACURE 127”等が挙げられる。
【0065】
上記チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なチオキサントン化合物としては、例えば、日本化薬社製の“MKAYACURE DETX−S”、ダブルボンドケミカル社製の“Chivacure ITX”等が挙げられる。
【0066】
上記ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等等が挙げられる。
【0067】
上記アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等が挙げられる。
【0068】
上記ケタール化合物としては、具体的には、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等〕、炭素数13〜21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0069】
上記光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物全体100重量部に対して、1〜15重量部である。上記成分の含有量が上記範囲であると、モデル材用組成物の硬化性が良好となり、光造形物の寸法精度が向上する。上記成分の含有量は、2重量部以上であることが好ましく、13重量部以下であることが好ましい。なお、上記成分が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各光重合開始剤の含有量の合計として定める。
【0070】
<表面調整剤>
表面調整剤は、樹脂組成物の表面張力を適切な範囲に調整するために含有させる。樹脂組成物の表面張力を適切な範囲に調整することにより、モデル材用組成物とサポート材用組成物とが界面で混ざり合うことを抑制することができる。その結果、これらの樹脂組成物を用いて、寸法精度が良好な光造形物を得ることができる。この効果を得るため、上記成分の含有量は、樹脂組成物全体100重量部に対して、0.005〜3.0重量部とする。
【0071】
上記表面調整剤としては、例えば、シリコーン系化合物等が挙げられる。シリコーン系化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリアラルキル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらとして、商品名でBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570(以上、ビックケミー社製)、TEGO−Rad2100、TEGO−Rad2200N、TEGO−Rad2250、TEGO−Rad2300、TEGO−Rad2500、TEGO−Rad2600、TEGO−Rad2700(以上、デグサ社製)、グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B−1484、ポリフローATF−2、KL−600、UCR−L72、UCR−L93(共栄社化学社製)等を用いてもよい。また、シリコーン系化合物以外の(たとえばフッ素系表面調整剤、ノニオン系表面調整剤)を用いることもできる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記成分が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各表面調整剤の含有量の合計として定める。
【0072】
<保存安定化剤>
本実施形態に係るモデル材用組成物は、さらに、保存安定化剤を含有することが好ましい。保存安定化剤は、樹脂組成物の保存安定性を高めることができる。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することで生じるヘッド詰まりを防止することができる。これらの効果を得るため、上記成分の含有量は、樹脂組成物全体100重量部に対して、0.05〜3.0重量部であることが好ましい。
【0073】
上記成分としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ニトロソアミン系化合物等が挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、IRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST−1(ALBEMARLE社製)、t−ブチルカテコール、ピロガロール、BASF社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60、TINUVIN 400等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記(G)成分が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各保存安定化剤の含有量の合計として定める。
【0074】
モデル材用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤等が挙げられる。
【0075】
本発明のモデル材用組成物には、必要に応じて光開始助剤がさらに含まれていてもよい。光開始助剤の例には、たとえば第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。モデル材用組成物に、これらの化合物が、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
【0076】
本実施形態に係るモデル材用組成物は、特に限定されるものではないが、混合攪拌装置、分散機等を用いて均一に混合することにより、製造することができる。
【0077】
また、本発明のモデル材用組成物には、前記本発明の単官能モノマー、第1のモノマーまたは第2のモノマー以外の重合性化合物が含まれていてもよい。含まれていてもよい重合性化合物には、上記したもの以外のモノマー、重合度が2〜20であり重合性を有するオリゴマーおよび重合性を有するポリマー等が含まれる。
【0078】
なお、本発明のモデル材用組成物には、エポキシ基を有する化合物等の、カチオン重合性の化合物を実質的に含まないことが好ましい。なお、ビニルエーテル基はラジカル重合およびカチオン重合のいずれの重合もすることができるため、ここでいうカチオン重合性の化合物には含めない。カチオン重合性の化合物を実質的に含まないことで、光硬化感度の低下を防ぎ、紫外線でも組成物を硬化させることが可能となる。カチオン重合性の化合物を実質的に含まないとは、組成物の全質量に対して、カチオン重合性の化合物の含有比が1質量%以下であることを意味する。
【0079】
本発明のモデル材用組成物をインクジェットヘッドより出射する場合は、モデル材用組成物の粘度は100mPa.s以下であることが好ましい。
【0080】
2.サポート材用組成物
本発明において、水溶性のサポート材用組成物は、少なくとも1種の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)、少なくとも1種のポリアルキレングリコール(b)および光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0081】
本発明のサポート材用組成物に含まれる水溶性の単官能エチレン性不飽和単量体(a)としては、例えば、炭素数5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等〕、数平均分子量(Mn)200〜1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等〕、(メタ)アクリルアミド誘導体〔例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等〕、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
サポート材用組成物に含まれる水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量は、上記サポート材用組成物100質量部に対して、19〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは22質量部以上であり、さらに好ましくは25質量部以上であり、より好ましくは76質量部以下であり、さらに好ましくは73質量部以下である。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、水によるサポート材の除去性を向上させることができる。
【0083】
サポート材用組成物に含まれ得るポリアルキレングリコール(b)としては、直鎖型、多鎖型のいずれであってもよい。また、水に溶解するものであれば、末端にアルキル基を含んでいてもよく、例えば、好ましくは炭素数6以下のアルキル鎖を含んでいてもよい。このようなポリアルキレングリコール(b)として、具体的には、例えば、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
サポート材用組成物に含まれ得るポリアルキレングリコール(b)としては、特にそのアルキレン部分の構造は限定されず、例えば、オキシブチレン基(オキシテトラメチレン基)のみ有するポリブチレングリコール単体であってもよく、また、オキシブチレン基と他のオキシアルキレン基とを共に有するポリブチレンポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリブチレンポリエチレングリコール)であってもよい。例えば、上記ポリブチレングリコールは、下記化学式(2)で示され、上記ポリブチレンポリエチレングリコールは、下記化学式(3)で示される。
【0087】
上記化学式(3)において、mは5〜300の整数であることが好ましく、nは2〜150の整数であることが好ましい。より好ましくは、mは6〜200、nは3〜100である。また、化学式(2)および化学式(3)中のオキシブチレン基は、直鎖であってもよいが、分岐していてもよい。
【0088】
サポート材用組成物が、ポリアルキレングリコール(b)を含むことにより、サポート材のサポート力を低下させずに水による除去性をより向上させることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ポリアルキレングリコール(b)成分の重量平均分子量は、300以上であり、3000より小さいことが好ましく、更に、800以上であり、2000より小さいことがより好ましい。(b)成分の重量平均分子量が300より小さいと、サポート材用組成物を硬化した際にサポート材のブリーディングが生じる。ブリーディングとは、硬化したサポート材内部から液体成分がサポート材表面に浸みだす現象である。また、ポリアルキレングリコールの重量平均分子量が3000より小さいことにより、サポート材用組成物の吐出安定性に優れる。
【0090】
ポリアルキレングリコール(b)成分は、2種類以上使用されてもよい。2種類以上のポリアルキレングリコールが使用される場合、重量平均分子量が300より小さい又は3000より大きいポリアルキレングリコールの含有量は、少量が好ましい。
【0091】
サポート材用組成物におけるポリアルキレングリコール(b)の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、15〜75質量部であることが好ましく、より好ましくは17質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは72質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以下である。ポリアルキレングリコール(b)の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
【0092】
サポート材用組成物は、水溶性有機溶剤(c)を含んでいてもよい。水溶性有機溶剤(c)は、サポート材用組成物を光硬化させて得られるサポート材の水への溶解性を向上させる成分である。また、サポート材用組成物を低粘度に調整する機能も有する。
【0093】
水溶性有機溶剤(c)としては、グリコール系溶剤を用いることが好ましく、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、テトラエチレングリコールモノアセテート、テトラプロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテートなどのグリコールエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールモノエーテルアセテート系溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
中でも、低粘度のサポート材組成物を調製しやすく、また、硬化して得られるサポート材が水溶解性に優れる点から、水溶性有機溶剤(c)としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0095】
サポート材用組成物における水溶性有機溶剤(c)の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは28質量部以下であり、さらに好ましくは25質量部以下である。水溶性有機溶剤(c)の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
【0096】
光重合開始剤としては、モデル材用組成物に含有され得る光重合開始剤として上記に述べた化合物を同様に使用することができる。サポート材用組成物における光重合開始剤の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部であり、より好ましくは2〜18質量部である。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、サポート材の硬化性を十分に高めやすい。
【0097】
上記各成分を上記範囲の含有量で含むことにより、優れた水溶解性とサポート力とを兼ね備えたサポート材用組成物を得ることができる。特に、サポート力に優れるため造形中に空気中の水分を取り込みサポート力が低下するという懸念がなく、寸法精度が良好な光造形品が得られる。
【0098】
上記サポート材用組成物には、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、表面調整剤、酸化防止剤、着色剤、顔料分散剤、保存安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤等が挙げられる。
【0099】
サポート材用組成物に、表面調整剤を配合することによりサポート材用組成物の表面張力を適当な範囲に制御することができ、モデル材用組成物とサポート材用組成物がその界面で混合することを抑制することができる。これにより、寸法精度の良好な光造形物を得ることができる。サポート材用組成物が含み得る表面調整剤としては、本発明のモデル材用組成物に用い得る表面調整剤として例示したものと同様のものを用いることができ、その含有量は、サポート材組成物100質量部に対して0.005〜3質量部であることが好ましい。
【0100】
また、サポート材用組成物に保存安定剤を配合することにより保存安定性を向上させることができる。サポート材用組成物が含み得る保存安定剤としては、本発明のモデル材用組成物に用い得る保存安定剤として例示したものと同様のものを用いることができ、その含有量は、サポート材組成物100質量部に対して0.05〜3質量部であることが好ましい。
【0101】
サポート材組成物をインクジェットヘッドより出射する場合は、サポート材組成物の粘度は25℃において30〜200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは35mPa・s以上、さらに好ましくは40mPa・s以上であり、より好ましくは170mPa・s以下、さらに好ましくは150mPa・s以下である。なお、上記粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
【0102】
本発明において、サポート材用組成物の表面張力は、好ましくは24〜30mN/mであり、より好ましくは24.5〜29.5mN/mであり、さらに好ましくは25〜29mN/mである。表面張力が上記範囲内であると、ノズルからの吐出液滴を正常に形成することができ、適切な液滴量や着弾精度を確保することやサテライトの発生を抑制することが可能であり、高い造形精度を確保しやすくなる。なお、サポート材用組成物の表面張力は、モデル材用組成物における表面張力の測定方法と同様の方法に従い測定することができる。
【0103】
本発明のサポート材用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、混合攪拌装置、分散機等を用いて、サポート材用組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
3.光造形品およびその製造方法
本実施形態の光造形物の製造方法は、前述の実施形態で説明したインクジェット光造形用組成物セットを用いた光造形物の製造方法であり、インクジェット方式プリンタを用いてモデル材用組成物及びサポート材用組成物を吐出した後、モデル材用組成物を光硬化させてモデル材を得るとともに、水溶性サポート材用組成物を光硬化させて水溶性サポート材を得る工程と、前記水溶性サポート材を水に接触させることにより除去する工程とを備えている。
【0104】
本実施形態の光造形物の製造方法は、上記インクジェット光造形用組成物セットを用いているため、造形精度に優れた光造形物を形成することができる。
【0105】
以下、本実施形態の光造形物の製造方法について図面に基づき説明する。
図1は、インクジェット造形法によりサポート材用組成物及びモデル材用組成物を吐出してエネルギー線を照射している状態を示す模式側面図である。
図1において、三次元造形装置10は、インクジェットヘッドモジュール11と、造形テーブル12とを備えている。また、インクジェットヘッドモジュール11は、光造形用インクユニット11aと、ローラー11bと、光源11cとを備えている。更に、光造形用インクユニット11aは、モデル材用インク13が充填されたモデル材用インクジェットヘッド11aMと、サポート材用インク14が充填されたサポート材用インクジェットヘッド11aSとを備えている。
【0106】
モデル材用インクジェットヘッド11aMからは、モデル材用組成物13が吐出され、サポート材用インクジェットヘッド11aSからは、サポート材用組成物14が吐出され、光源11cからエネルギー線15が照射され、吐出されたモデル材用組成物13及びサポート材用組成物14を硬化させて、モデル材13PMとサポート材14PSを形成している。
図1では、一層目のモデル材13PM及びサポート材14PSを形成する状態を示している。
【0107】
次に、本実施形態の光造形物の製造方法について図面に基づき更に詳細に説明する。本実施形態の光造形物の製造方法では、先ず、
図2に示すように、インクジェットヘッドモジュール11を造形テーブル12に対してX方向(
図2では右方向)に走査させる共に、モデル材用インクジェットヘッド11aMからモデル材用組成物13を吐出し、サポート材用インクジェットヘッド11aSからサポート材用組成物14を吐出する。これにより、造形テーブル12の上に、モデル材前駆体13Mからなる層とサポート材前駆体14Sからなる層とを、それぞれの界面同士が接触するように隣接して配置する。
【0108】
次に、
図3に示すように、インクジェットヘッドモジュール11を造形テーブル12に対して逆X方向(
図3では左方向)に走査させると共に、ローラー11bでモデル材前駆体13M及びサポート材前駆体14Sからなる層の表面を平滑にした後、光源11cからエネルギー線15を照射し、モデル材前駆体13M及びサポート材前駆体14Sからなる層を硬化させて、一層目のモデル材13PM及びサポート材14PSからなる層を形成する。
【0109】
続いて、造形テーブル12をZ方向に一層分だけ下降させて、上記と同様の工程を行い、二層目のモデル材及びサポート材からなる層を形成する。その後、上記の工程を繰り返すことにより、
図4に示すように、モデル材13PMとサポート材14PSからなる光造形品前駆体16が形成される。
【0110】
最後に、
図4に示した光造形品前駆体16を水に接触させる、例えば、水に浸漬することによりサポート材14PSを溶解して除去し、
図5に示すような光造形品17が形成される。
【0111】
本実施形態の光造形物の製造方法において、光源として、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV-LED等を使用できる。三次元造形装置10の小型化が可能であり、消費電力が小さいという観点から、UV-LEDが好ましい。光量は、造形品の硬度および寸法精度の観点から、200〜500mJ/cm2が好ましい。光源としてUV-LEDを用いる場合、光が深層まで届きやすくなり、光造形品の硬度および寸法精度を向上させることができることから、中心波長が385〜415nmのものを用いることが好ましい。また、光源11cから照射するエネルギー線15についは、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線、電子線、α線、γ線およびエックス線等を使用することができるが、硬化作業の容易性及び効率性の観点から、紫外線又は近紫外線が好ましい。
【0112】
本発明のモデル材用組成物は、カチオン重合性の化合物の含有量を実質的に含まないため、最もエネルギー負荷、装置負荷が少ない紫外線でも十分に硬化させることができる。したがって、紫外線を用いることで、より安価で立体造形物を製造することができる。
【0113】
本発明の製造方法において、例えば、作製する物体の3次元CADデータをもとに、マテリアルジェット方式で積層して立体造形物を構成するモデル材用組成物のデータ、および、作製途上の立体造形物を支持するサポート材用組成物のデータを作製し、さらにマテリアルジェット方式の3Dプリンタで各組成物を吐出するスライスデータを作製し、作製したスライスデータに基づきモデル材用およびサポート材用の各組成物を吐出後、光硬化処理を層ごとに繰り返し、モデル材用組成物の硬化物(モデル材)およびサポート材用組成物の硬化物(サポート材)からなる光造形物を作製することができる。
【0114】
立体造形物を構成する各層の厚みは、造形精度の観点からは薄いほうが好ましいが、造形速度とのバランスからは5〜30μmが好ましい。
【0115】
得られた光造形物は、モデル材とサポート材とが組み合わされたものである。かかる光造形物からサポート材を除去してモデル材である光造形品を得る。サポート材の除去は、例えば、サポート材を溶解させる除去溶剤に得られた光造形物を浸漬し、サポート材を柔軟にした後、ブラシなどでモデル材表面からサポート材を除去して行うことが好ましい。サポート材の除去溶剤には水、水溶性溶剤、例えばグリコール系溶剤、アルコール系溶剤などを用いてもよい。これらは、単独で、あるいは複数用いてもよい。
【0116】
上記光造形品は、水に接触した場合の吸水及び膨潤が抑制されており、微細構造部分の破損及び変形を起こしにくいものである。また、上記光造形品は撥水撥油性に優れ、汚染されにくいものである。
【0117】
以上に記載した実施形態においては、モデル材組成物用のインクジェットヘッド数は1つに制限されない。例えばモデル材組成物用に2つのインクジェットヘッドを設け、各インクジェットヘッドのノズルから物性が異なるモデル材組成物を同時に吐出し、モデル材組成物を混合させて複合材料として造形することもできる。
【0118】
以下、本実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0120】
<モデル材用組成物>
実施例において用いたモデル材用組成物を構成する成分の詳細を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
<モデル材用組成物の製造>
表2に示す配合で、各成分を、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、実施例M1〜M7並びに比較例m1〜m3のモデル材用組成物を製造した。
【0123】
【表2】
【0124】
<立体造形物の製造>
ガラス板上に、縦100mm、横20mm、厚さ5mmの額縁状のシリコンゴムにより枠を形成し、その枠の中に各モデル材組成物を流し込み、メタルハライドランプにより積算光量400mJ/cm
2の紫外線を照射し、モデル材を得た。下記特性を、測定、評価した。結果を表3に示す。
【0125】
<降伏強度、破壊伸びおよび破壊強度の測定>
室温で、走査方向、および積層方向に引張速度20mm/minで一定荷重をかけて降伏強度、破壊時の破壊伸びおよび破壊強度を測定した。結果を表3に示す。
【0126】
<総合評価>
総合評価は以下の基準で行った。
○:降伏強度25MPa以上、かつ、0.85<=破壊強度/降伏強度<=1.2かつ破壊伸び5%以上
△:降伏強度15MPa以上、かつ、0.6<=破壊強度/降伏強度<=1.7かつ破壊伸び3%以上で、○以外のもの
×:降伏点までに破壊された場合、または、上記条件よりも悪い場合
【0127】
【表3】
【0128】
本発明のモデル材用組成物を用いて製造した立体造形物は、降伏強度、破壊強度および破壊伸びのバランスがよく、高い靱性を有していた。また、今回の実施例で検討したインクは、すべて出射性は良好であった。
【0129】
<サポート材用組成物>
表4に、下記の実施例及び比較例において、サポート材組成物に使用した成分をまとめた。
【0130】
【表4】
【0131】
(実施例S1〜S13及び比較例s1)
先ず、実施例S1〜13のサポート材組成物を次のようにして調製した。即ち、プラスチック製ビンに、表7に示す成分(a)〜(f)を表5に示す配合量(単位:質量部)で計り取り、これらを混合することにより各サポート材組成物を調製した。
【0132】
【表5】
【0133】
次に、上記実施例S1〜13のサポート材組成物について、下記に示す方法によって、サポート材組成物の低温安定性、サポート材組成物を硬化したサポート材硬化物の高温高湿条件安定性(サポート力)及び水除去性を評価した。
【0134】
<サポート材組成物の低温安定性>
低温でのサポート材組成物の安定性について評価した。各サポート材組成物をガラス瓶に入れ、そのサポート材組成物入りガラス瓶を温度10℃に設定した恒温槽中で24時間保管した。その後、保管後のサポート材組成物の状態を目視で確認して、下記基準でサポート材組成物の低温安定性を評価した。
【0135】
サポート材組成物が液体状を維持している場合:低温安定性A(優良)
サポート材組成物が一部凝固(固化)している場合:低温安定性B(良)
サポート材組成物が凝固(固化)している場合:低温安定性C(不良)
<サポート材硬化物のサポート力>
ガラス板上に、縦30mm、横30mm、厚さ5mmの額縁状のシリコンゴムにより枠を形成し、その枠の中に各サポート材組成物を流し込み、メタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射し、サポート材硬化物を作製した。続いて、上記硬化物をガラス製シャーレに入れ、その硬化物入りシャーレを温度40℃、相対湿度90%の恒温槽中に2時間放置した。その後、放置後の上記硬化物の状態を目視で確認して
、下記基準でサポート材硬化物のサポート力を評価した。
【0136】
硬化物の表面に液体状物質の発生がなく、硬化物の軟化も確認されない場合:サポート力A(優良)
硬化物の表面に液体状物質がわずかに発生し、硬化物の軟化が若干確認された場合:サポート力B(良)
硬化物の表面に液体状物質が発生し、硬化物の軟化が確認された場合:サポート力C(不良)
<サポート材硬化物の水除去性>
上記サポート材硬化物のサポート力の評価の場合と同様にして、サポート材硬化物を作製した。次に、上記硬化物を、50mLのイオン交換水を満たしたビーカーに入れ、水温を25℃に維持しながら超音波洗浄機で処理し、上記硬化物が溶解するまでの時間を測定し、下記基準でサポート材硬化物の水除去性を評価した。
【0137】
硬化物が完全に溶解するまでに30分を要した場合:水除去性A(優良)
硬化物が完全に溶解するまでに1時間を要した場合:水除去性B(良)
硬化物が完全に溶解するまでに2時間を要した場合:水除去性C(不良)
以上の結果を表6に示す。
【0138】
【表6】
【0139】
実施例S1〜S13のサポート材組成物は、全ての評価項目で満足できる結果を得たことが分かる。
【0140】
<インクジェット光造形用組成物セット>
表7に示す通りに上記モデル材用組成物及びサポート材用組成物を組み合わせることにより、実施例1〜4、比較例1,2を調製した。
【0141】
ガラス板(商品名「GLASS PLATE」、アズワン社製、200mm×200mm×厚さ5mm)の上面四辺に厚さ1mmのスペーサーを配し、10cm×10cmの正方形に仕切った。該正方形内にサポート材用組成物を注型した後、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させ、サポート材を得た。
【0142】
次に、上記サポート材の上面四辺に厚さ1mmのスペーサーを配し、10cm×10cmの正方形に仕切った。該正方形内にモデル材用組成物を注型した後、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500
mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させ、モデル材を得た。
【0143】
<密着性の評価>
この状態で30℃の恒温槽に12時間放置し、モデル材とサポート材との密着性の様子を目視にて確認し、下記の基準において評価した。結果を表7に示す。
○:モデル材とサポート材とは密着していた。
△:モデル材とサポート材とは密着していたが、モデル材とサポート材との界面を爪でひっかくと剥がれが生じた。
×:モデル材とサポート材との界面で剥がれが生じ、モデル材の硬化収縮でモデル材が反るように剥がれた。
【0144】
【表7】
【0145】
表7の結果から分かるように、モデル材用組成物およびサポート材用組成物の両方が本発明の要件を満たす実施例1〜4は、モデル材とサポート材との界面に剥がれが生じず、モデル材とサポート材とがより密着していた。このように、モデル材とサポート材とが密着していれば、寸法精度が良好な光造形品が得られる。
【0146】
一方、モデル材用組成物およびサポート材用組成物の一方又は両方が本発明の要件を満たしていない比較例1及び2は、モデル材とサポート材との界面で剥がれが生じた。このように、モデル材とサポート材との密着性が悪いと、光造形品の寸法精度が悪化する。