特開2019-206590(P2019-206590A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206590(P2019-206590A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】フッ化メタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/361 20060101AFI20191108BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20191108BHJP
   B01J 21/02 20060101ALI20191108BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191108BHJP
【FI】
   C07C17/361
   C07C19/08
   B01J21/02 Z
   C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-158759(P2019-158759)
(22)【出願日】2019年8月30日
(62)【分割の表示】特願2014-216551(P2014-216551)の分割
【原出願日】2014年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 友亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 新吾
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169CB35
4G169DA06
4G169EA02Y
4H006AA02
4H006AC26
4H006BA07
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA30
4H006BC10
4H006BC13
4H006BE01
4H006EA02
4H039CA50
4H039CE90
(57)【要約】
【課題】
従来知られている、触媒の存在下で含フッ素メチルエーテルを熱分解することによりフ
ッ化メタンを製造する方法において、触媒の寿命を延長させる。
【解決手段】
触媒の存在下において、一般式(1)で表される含フッ素メチルエーテルを気相熱分解
させることにより、フッ化メタンを製造する方法であって、
フッ化水素、塩素、塩化水素及び空気からなる群より選択される少なくとも一種のガスの
存在下で熱分解させることを特徴とする方法
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、置換されていてもよい、直鎖状若しくは分
岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基若しくは一価の環状脂肪族炭化
水素基;水素原子又はハロゲン原子である)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒(ただし、アルミナを除く)の存在下において、一般式(1)で表される含フッ素メチルエーテルを気相熱分解させることにより、フッ化メタンを製造する方法であって、
フッ化水素の存在下で熱分解させることを特徴とする方法
【化1】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、置換されていてもよい、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基若しくは一価の環状脂肪族炭化水素基;水素原子又はハロゲン原子である)。
【請求項2】
前記含フッ素メチルエーテル1に対して容量比で0.03以上の前記ガスの存在下で熱分解させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱分解の前又は同時に反応系にフッ化水素を添加する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程が、前記含フッ素メチルエーテル1に対して容量比で0.03以上の前記ガスを添加する工程である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、金属酸化物、フッ素化された金属酸化物、及び金属フッ化物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、フッ素化された酸化クロム、フッ素化された酸化チタン、フッ素化された酸化亜鉛、AlF、TiF、CrF及びZnFからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒の細孔容積が0.5ml/g以上である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
熱分解反応の反応温度が100〜400℃である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
熱分解反応時の圧力が、0.05〜1MPaである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱分解を、水分濃度100ppm以下で行う、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱分解の前又は同時に反応系の水分を除去する工程を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチングガスとして有用なフッ化メタンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロカーボンは、半導体、液晶などの微細加工用のエッチングガスとして
有用であり、特にフッ化メタン(CHF)は、最先端の微細構造を形成するためのエッチ
ングガスとして注目されている。
【0003】
フッ化メタンの製造方法としては、触媒の存在下で含フッ素メチルエーテルを熱分解す
る方法が知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/102268号
【特許文献2】特開2014−114277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来知られている、触媒の存在下で含フッ素メチルエーテルを熱分解するこ
とによりフッ化メタンを製造する方法において、触媒の寿命を延長させることを課題とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねてきた。その結果、フッ化水素
、塩素、塩化水素及び空気からなる群より選択される少なくとも一種のガスの存在下で熱
分解させることにより、触媒の寿命を延長できることを見出した。本発明は、これらの知
見に基づいてさらに研究を重ねた結果、完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の態様を含む。
項1. 触媒の存在下において、一般式(1)で表される含フッ素メチルエーテルを気相
熱分解させることにより、フッ化メタンを製造する方法であって、
フッ化水素、塩素、塩化水素及び空気からなる群より選択される少なくとも一種のガスの
存在下で熱分解させることを特徴とする方法
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、置換されていてもよい、直鎖状若しくは分
岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基若しくは一価の環状脂肪族炭化
水素基;水素原子又はハロゲン原子である)。
項2. 前記含フッ素メチルエーテル1に対して容量比で0.03以上の前記ガスの存在
下で熱分解させる、項1に記載の方法。
項3. 熱分解の前又は同時に反応系にフッ化水素、塩素、塩化水素及び空気からなる群
より選択される少なくとも一種のガスを添加する工程を含む、項1又は2に記載の方法。
項4. 前記工程が、前記含フッ素メチルエーテル1に対して容量比で0.03以上の前
記ガスを添加する工程である、項3に記載の方法。
項5. 触媒が、金属酸化物、フッ素化された金属酸化物、及び金属フッ化物からなる群
から選ばれる少なくとも一種である、項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
項6. 触媒が、アルミナ、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、フッ素化されたアルミ
ナ、フッ素化された酸化クロム、フッ素化された酸化チタン、フッ素化された酸化亜鉛、
AlF、TiF、CrF及びZnFからなる群から選ばれる少なくとも一種であ
る、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
項7. 触媒が、アルミナである、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
項8. アルミナが、γ-アルミナである、項6又は項7に記載の方法。
項9. 触媒の細孔容積が0.5ml/g以上である、項5〜8のいずれか一項に記載の
方法。
項10. 熱分解反応の反応温度が100〜400℃である、項1〜9のいずれか一項に
記載の方法。
項11. 熱分解反応時の圧力が、0.05〜1MPaである、項1〜10のいずれか一
項に記載の方法。
項12. 前記熱分解を、水分濃度100ppm以下で行う、項1〜11のいずれか一項
に記載の方法。
項13. 前記熱分解の前又は同時に反応系の水分を除去する工程を含む、項1〜11の
いずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒の存在下で含フッ素メチルエーテルを熱分解することによりフッ
化メタンを製造する方法において、触媒の寿命を延長させることができる。言い換えれば
、従来の方法と比較して、同じ量のフッ化メタンをより少ない触媒使用量で得ることがで
き、有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1. 原料化合物
本発明では、原料としては、一般式(1)で表される含フッ素メチルエーテルを用いる
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、置換されていてもよい、直鎖状若しくは分
岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基若しくは一価の環状脂肪族炭化
水素基;水素原子又はハロゲン原子である)。
【0014】
原料として用いる含フッ素メチルエーテルの製造方法については特に限定はなく、任意
の方法で得られた化合物を用いることができる。
【0015】
上記一般式(1)において、好ましくはR及びRは、同一又は異なって、置換され
ていてもよい、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、炭素
数6〜12の一価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価の環状脂肪族炭化水素基
である。より好ましくは、R及びRは、同一又は異なって、置換されていてもよい、
炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の一
価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜10の一価の環状脂肪族炭化水素基である。
【0016】
上記において、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基とし
ては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。
【0017】
具体的には、炭素数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基
、プロピル基、2−メチルエチル基、ヘキシル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0018】
炭素数1〜10のアルキル基の中では、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数
1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0019】
炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フ
ェニル基、メチルフェニル基及びエチルフェニル基等が挙げられる。
【0020】
炭素数6〜10の一価の環状脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば
、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びエチルシクロヘキシル基等が挙げられ
る。
【0021】
上記において、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪
族炭化水素基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子からなる群より選択される少なくとも一
種のヘテロ原子で、水素原子の少なくとも一つが置換されていてもよく、また全ての水素
原子が置換されていてもよい。
【0022】
上記において、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり
、より好ましくはフッ素原子である。
【0023】
特に理論に束縛されないが、上記含フッ素メチルエーテルを熱分解する際に生じる副生
成物が原因で触媒の劣化が進行している可能性が、本発明者らの検討の結果から示唆され
ている。具体的には、この副生成物が触媒表面で炭素化する結果、触媒活性の低下につな
がっている可能性が示唆されている。フッ化水素、塩素、塩化水素及び空気からなる群よ
り選択される少なくとも一種のガスの存在下で熱分解させることにより、この副生成物の
生成が抑制されているとみられる。このような副生成物は、特定の不飽和フッ化物であり
、一般式(1)で表される含フッ素メチルエーテルを原料として使用する限り共通して生
成するものであるとみられる。
【0024】
特に限定されないが、原料として用いることができる具体的な化合物の例として、1,1,
3,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0025】
特に、フッ素樹脂の原料として使用するヘキサフルオロプロペンを製造する際に副生す
るパーフルオロイソブチレン((CF)C=CF))は、従来不要物として廃棄さ
れていたが、これをメタノールと反応させることによって1,1,3,3,3−ペンタフルオ
ロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルを得ることができ、これを本発明方
法の原料として用いることによって、廃棄物の有効利用を図ることができ、低コストの原
料を用いて、安価に目的物を得ることが可能となる。なお、本発明において、原料とする
1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルが、
「パーフルオロイソブチレンとメタノールを反応させて得られるものである」というとき
は、その1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエー
テルが、かかる反応により得られたものに限定され、他の反応により得られたものではな
いことを意味する。パーフルオロイソブチレンとメタノールとを反応させて1,1,3,3,
3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルを得る方法は、公
知の方法であり、公知の反応条件に従えばよい。例えば、特表20011−506261
号公報に記載の方法に従って反応を行えばよい。
2. 熱分解反応方法
本発明の方法は、上記した含フッ素メチルエーテルを原料として、触媒の存在下で、気
相において熱分解反応を行う方法である。
【0026】
(1)触媒
触媒としては、気相における熱分解反応に対して活性を有する触媒であれば特に限定無
く用いることができる。この様な触媒としては、金属酸化物、フッ素化された金属酸化物
、金属フッ化物等を挙げることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いるこ
とができる。
【0027】
これらの内で、金属酸化物としては、アルミナ、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、
等が好ましい。また、これらの金属酸化物の一部をフッ素化したフッ素化金属酸化物を用
いることもできる。前記フッ素化金属酸化物触媒は、あらかじめ金属酸化物触媒をフッ化
水素などを用いてフッ素化したものであってもよく、本発明の製造方法の反応過程におい
て、その一部がフッ素化された金属酸化物触媒を使用してもよい。金属フッ化物としては
、AlF3,TiF4, CrF3、ZnF2等が好ましい。
【0028】
金属酸化物の中でも、アルミナが好ましく、α-アルミナ及び活性アルミナなどを使用
できる。活性アルミナとしては、ρ-アルミナ、χ-アルミナ、κ-アルミナ、η-アルミナ
、擬γ-アルミナ、γ-アルミナ、δ-アルミナ及びθ-アルミナなどが使用される。これら
の中でもγ-アルミナ及びη-アルミナが好ましく、γ-アルミナが特に好ましい。また、
複合酸化物としてシリカアルミナ(SiO/Al)も触媒として用いることがで
きる。シリカアルミナのシリカSiOの組成は、20重量%〜90重量%が好ましく、
50重量%〜80重量%がより好ましい。
【0029】
触媒の細孔容積は大きいほど活性が高く、0.4 ml/g以上であることが好ましく、
0.5ml/g以上であることが特に好ましい。触媒の細孔容積の上限は特に限定されな
いが、通常、5ml/g以下であり、反応速度および触媒強度の点で、好ましくは2ml/
g以下である。細孔容積は、ガス吸着法、水銀圧入法などで測定できる。
【0030】
また、触媒にKF、NaF及びMgFなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の
フッ化物を担持してもよい。
【0031】
上記したフッ素化された金属酸化物を得る方法については特に限定はないが、例えば、
加熱下において、上記した金属酸化物を無水フッ化水素またはフロンと接触させることに
よって、フッ素化反応が進行してフッ素化された金属酸化物を得ることができる。金属酸
化物とフッ化水素とを接触させる方法については特に限定的ではなく、触媒を充填した反
応管中にフッ化水素を流通させる連続法でもよく、触媒を収容した容器にフッ化水素また
はフロンを封入するバッチ式でもよい。特に、流通方式は、処理時間が短い点で好ましい

フロンは、フッ素原子の数が多く、炭素原子の数が少ないものが好ましい。例えば、トリ
フルオロメタン、ジフルオロクロロメタン、オクタフルオロエタンなどがあげられる。
【0032】
金属酸化物のフッ素化の程度については、特に限定的ではないが、フッ素化された金属
酸化物全体の重量を基準として、フッ素含有率が5〜50重量%程度であることが好まし
い。
【0033】
金属酸化物のフッ素化処理の温度は、後述する熱分解反応より高温であることが好まし
く、例えば、150〜500℃程度が好ましく、200℃〜400℃程度がより好ましく
、250℃〜350℃程度が更に好ましい。フッ素化処理の温度が低すぎるとフッ素化が
不十分であるために触媒の効果が小さく、処理温度が高すぎると耐熱材料が特別に必要に
なるために実用的でない。
【0034】
(2)熱分解反応条件
含フッ素メチルエーテルの熱分解反応は、上記した触媒の存在下で、含フッ素メチルエ
ーテルを気相状態で触媒に接触させることによって進行させることができる具体的な方法
については特に限定的ではないが、例えば、管型の流通型反応器を用い、該反応器に上記
した触媒を充填し、原料として用いる含フッ素メチルエーテルを該反応器に導入して、気
相状態で触媒に接触させる方法を挙げることができる。
【0035】
熱分解反応の温度については、低すぎると原料の転化率が低下し、高すぎると不純物が
多くなる傾向がある。このため、100℃〜400℃程度とすることが好ましく、100
℃〜300℃程度とすることがさらに好ましく、120℃〜200℃程度とすることが特
に好ましい。
【0036】
熱分解反応時の反応管内の圧力は、低すぎると空気の混入の可能性などがあるので操作
上煩雑になり、高すぎると機器の耐圧を考慮する必要があり、漏えいの可能性も高くなる
。これらの点から、0.05〜1MPa程度とすることが好ましく、0.1〜0.5MP
a程度とすることが好ましく、特に、反応操作上、大気圧(約0.1MPa)程度の圧力
が好ましい。
【0037】
反応させるための接触時間については特に限定的ではないが、反応管に供給する原料ガ
スである含フッ素メチルエーテルの流量F (0度、一気圧(約0.1 MPa)での流量
:cc/sec)に対する触媒の充填量W (g)の比率:W/F (g・sec/cc)で表さ
れる接触時間を、1〜100g・sec/cc程度とすることが好ましく、1〜50g・
sec/cc程度とすることがより好ましく、5〜30g・sec/cc程度とすることが
更に好ましい。接触時間が長すぎると、生成物を得るのに長時間を要するので、生産量を
上げるためには接触時間を短くすることが好ましいが、接触時間が短すぎると、転化率が
下がる傾向がある。このため、使用する触媒の種類、触媒量、反応条件などに応じて、原
料の転化率と目的物の選択率の点から最も生産性が高くなる接触時間を選べばよい。通常
は、使用する触媒の種類、触媒量、反応条件などに応じて、転化率が100%になる接触
時間を選択して反応を行うことが望ましい。
【0038】
(3)フッ化水素、塩素、塩化水素及び空気からなる群より選択される少なくとも一種
のガス
本発明の効果を得るためには、フッ化水素、塩素、塩化水素及び空気からなる群より選
択される少なくとも一種のガスの存在下で熱分解させることが必要である。
【0039】
この目的で使用するフッ化水素は、好ましくは無水フッ化水素である。
【0040】
本発明の効果が得られればよく、特に限定されないが、好ましくは、含フッ素メチルエ
ーテル1に対して容量比で0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましく
は0.10以上の前記ガスの存在下で熱分解させる。
【0041】
また、本発明の効果は、所定要件下、含フッ素メチルエーテル1に対する前記ガスの容
量比がより高いほど向上する傾向がある。したがって、上記した最終的な容量比にかかわ
らず、その熱分解の前又は同時に反応系に前記ガスを添加することによって発明の効果が
得られると捉えることもできる。このとき、本発明の方法は、熱分解の前又は同時に反応
系に前記ガスを添加する工程を含む方法であると定義することができる。この工程は、好
ましくは含フッ素メチルエーテル1に対して容量比で0.03以上、より好ましくは0.
05以上、さらに好ましくは0.10以上の前記ガスを添加する工程である。
【0042】
上記において、厳密には反応系は閉鎖空間であり、反応容器等を意味する。
(4)水分濃度又は水分除去工程
本発明においてはさらに、水分濃度が低い条件、具体的には水分濃度100ppm以下
で、熱分解させてもよい。これによっても、触媒の寿命を延長させることができる。
【0043】
触媒寿命の延長効果が得られればよく、特に限定されないが、好ましくは、水分濃度が
50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下で熱
分解させる。
【0044】
また、触媒寿命の延長効果は、所定要件下、水分濃度がより低いほど向上する傾向があ
る。したがって、上記した最終的な水分濃度にかかわらず、その熱分解の前又は同時に反
応系から水分を除去することによって発明の効果が得られると捉えることもできる。この
とき、本発明の方法は、熱分解の前又は同時に反応系から水分を除去する工程を含む方法
であると定義することができる。この工程は、好ましくは反応系から水分を90%以上、
より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上除去する工程である。
【0045】
上記において、水分濃度を上記範囲内にまで抑制する方法、又は水分を除去する方法と
しては、特に限定されないが、例えば、脱水剤であるゼオライトを使用する方法、及び精
留して水分を除去する方法等が挙げられる。あるいは、水分濃度を上記範囲内にまで抑制
するために、最初から水分濃度が所定範囲内に調整されている(すなわち脱水されている
)原料化合物を使用してもよい。
【0046】
上記において、厳密には反応系は閉鎖空間であり、反応容器等を意味する。
【0047】
(5)触媒再生処理
本発明方法では、反応時間が経過すると、触媒活性が低下することがある。この場合に
は、原料の有機物が触媒表面で炭素化している可能性がある。触媒活性が低下した場合に
は、触媒を加熱した状態で反応管に酸素を含む気体を流通させて、触媒表面に付着した炭
素と酸素とを反応させて、二酸化炭素や一酸化炭素などのガス状にして除去することによ
って触媒を再生することができる。触媒再生時の反応管内の温度は、200℃〜500℃
程度とすることが好ましく、300℃〜400℃程度とすることがより好ましい。酸素を
含む気体としては、純度が高い気体を用いることが効率的であるが、酸素を含んでいれば
同様の効果を得ることができるので、経済的には空気を用いることが好ましい。
【0048】
触媒再生の時間については、触媒の種類や使用時間によって異なり、十分な触媒活性を
再現できる時間とすればよいが、通常は、1時間〜12時間程度とすればよい。
3. 生成物
上記した方法によって、上記含フッ素メチルエーテルの熱分解反応が生じて、目的とす
るフッ化メタン及び含フッ素化合物を得ることができる。
【0049】
得られた生成物に含まれるフッ化メタンと含フッ素化合物を分離する方法については特
に限定的ではないが、例えば、熱分解反応後の生成ガスを冷却することによって、フッ化
メタン(沸点−79℃)を主成分とする低沸点成分からなるガス成分と、前記含フッ素化合
物を主成分として、さらに未反応原料を含むことのある高沸点成分からなる液成分とに分
離できる場合がある。この場合、冷却温度については両者の沸点の違いに応じて適宜設定
すればよい。
【0050】
これにより、フッ化メタンを含む成分をガス成分として分離することができる。ガス成
分には、不純物として、プロペン(沸点−47.7℃)、五フッ化プロペン(沸点−21.
1℃)、プロパン(沸点−1.4℃)などが含まれることがあるが、フッ化メタンとは沸点
差が大きいため、蒸留によってこれらの不純物を容易に分離できる。
【0051】
また、液成分として得られる上記含フッ素化合物を主成分とする高沸点成分に未反応原
料等が含まれる場合にも、蒸留操作によって、未反応原料等を容易に分離することができ
る。
【0052】
また、フッ化メタンを選択的に得る方法としては、熱分解反応後の生成物を水またはア
ルカリ水溶液等と接触させて上記含フッ素化合物を水相中に溶解させて除去してもよい。
これによって、フッ化メタンを選択的に得ることができる。
【0053】
上記において、水およびアルカリ水溶液の代わりに、アルコールを用いてもよい。アル
コールは安価なものであればコスト面で好ましく、例えば、メタノール、エタノール及び
プロパノールなどを使用できる。これらの中でも特にメタノールが好ましい。アルコール
を接触させてエステルを生成させることにより、燃焼処理しやすくなる。
【0054】
また、熱分解生成物から選択的に上記含フッ素化合物を得る方法としては、熱分解によ
る生成物を直接蒸留操作に供して、塔頂成分としてフッ化メタンを除去すればよい。これ
によって、塔底成分として、上記含フッ素化合物を得ることができる場合がある。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
触媒として、フッ素化処理を行っていないγ-アルミナ(Al)を用い、これを
金属製管状反応器に充填した。この反応管を150℃に加熱して、原料である1,1,3,
3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル(OIME)
を15ccm/minの流速で、フッ化水素を3.9ccm/minの流速で反応管に供
給した(OIME/HFモル比=0.26)。
【0056】
表1に、触媒1gあたりのOIMEの処理量と転化率の推移を示す。
【0057】
反応管からの流出ガスをガスクロマトグラフィーで分析した結果を表1に示す。表1に
記載の数値は、ガスクロマトグラフィーで得られた各ピークの面積比率に、それぞれのガ
スの感度を補正する係数を乗じて得られた成分比率(%)である。
【0058】
尚、各記号は次の化合物を示す。
CH3F:フッ化メタン:
C3H6:プロペン
HFC-1225zc:CF2=CHCF
HFC-236fa:CF3CH2CF3
OIME:1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル
fluoride:3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパノイルフルオライド
表1において分析結果はCHFを含む低沸点成分とfluorideを含む高沸点成
分を別々に分析し、これらの全成分に対する割合を百分率で表したものである。また、表
1においてg−OIME/g−cat.は触媒1グラムあたりが処理したOIME量を、
conv.は転化率をそれぞれ表す。
【0059】
【表1】
【0060】
<実施例2>
実施例1と同じ方法で、原料である1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオ
ロメチルプロピルメチルエーテルを15ccm/minの流速で、フッ化水素を1.04
ccm/minの流速で反応管に供給した(OIME/HFモル比=0.07)。実施例
1と同じ方法で、反応管からの流出ガスをガスクロマトグラフィーで分析した結果を表2
に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
<比較例1>
実施例1と同じ方法で、原料である1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオ
ロメチルプロピルメチルエーテルを15ccm/minの流速で、フッ化水素を反応管に
供せずに、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエ
ーテルのみを反応管に供した。実施例1と同じ方法で、反応管からの流出ガスをガスクロ
マトグラフィーで分析した結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
以上の通り、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチ
ルエーテルにHFを同伴させると(表1及び2)、HFを同伴させなかった場合(表3)と
比較して、転化率の低下が緩やかになることが判った。この結果より、1,1,3,3,3−
ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルにHFを同伴させると
触媒の寿命を延長できることが明らかになった。
<実施例3>
1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル(
OIME)にモレキュラーシーブ4Aを500g加え攪拌して脱水を行った。適宜、OI
ME中の水分をカールフィッシャーにて測定し、水分量が100ppmまで減少するまで
脱水を行った。
【0065】
触媒として、フッ素化処理を行っていないγ-アルミナ(Al)Aを用い、これ
を金属製管状反応器に充填した。この反応管を150℃に加熱して、100ppmまで脱
水をしたOIMEを反応管に供給した。表1に、触媒1gあたりのOIMEの処理量と転
化率の推移を示す。
【0066】
反応管からの流出ガスをガスクロマトグラフィーで分析した結果を表3に示す。表3に
記載の数値は、ガスクロマトグラフィーで得られた各ピークの面積比率に、それぞれのガ
スの感度を補正する係数を乗じて得られた成分比率(%)である。また、表3において「
g−OIME/g−cat.」は触媒1グラムあたりが処理したOIME量を、「con
v.」は転化率をそれぞれ表す。
【0067】
表4において分析結果はCHFを含む低沸点成分とfluorideを含む高沸点成
分を別々に分析し、これらの全成分に対する割合を百分率で表したものである。
【0068】
【表4】
【0069】
<実施例4>
実施例3と同じ方法でOIMEを5ppmまで脱水した。この脱水したOIMEを用い
て実施例3と同じ方法で反応管に供給した。
【0070】
下記表5に、反応管からの流出ガスをガスクロマトグラフィーで分析した結果を示す。
【0071】
【表5】
【0072】
<比較例2>
実施例3と同じ方法でOIMEを500ppmまで脱水した。この脱水したOIMEを
用いて実施例3と同じ方法で反応管に供給した。
【0073】
下記表6に、反応管からの流出ガスをガスクロマトグラフィーで分析した結果を示す。
【0074】
【表6】
【0075】
以上の結果から、原料であるOIME中の水分量が少ないほど、触媒の劣化速度が遅く
なることが判った。