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特開2019-206630筆記具用水性ボールペン用インキ組成物、それを用いたボールペン、および筆記具用水性ボールペン用インキ組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206630(P2019-206630A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】筆記具用水性ボールペン用インキ組成物、それを用いたボールペン、および筆記具用水性ボールペン用インキ組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20191108BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20191108BHJP
   B43K 1/08 20060101ALI20191108BHJP
   B43K 7/12 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   C09D11/18
   B43K7/00
   B43K1/08
   B43K7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-102070(P2018-102070)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】大越 あや
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA08
2C350NA21
4J039AB01
4J039AD03
4J039AD11
4J039BA35
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC54
4J039BC56
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE30
4J039CA05
4J039EA18
4J039EA19
4J039EA28
4J039EA33
4J039EA42
4J039GA27
(57)【要約】

【課題】筆跡の隠蔽性と透過性とを両立できる筆記具用水性インキ組成物とそれを用いたボールペン、ならびに組成物の製造方法の提供。
【解決手段】スチレン−アクリロニトリルを含んでなる樹脂粒子と、着色剤と、多糖類と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記白色顔料、前記樹脂粒子、および前記着色剤の含有率をそれぞれX%、Y%およびY%としたとき、
[1] 0.1≦X≦7、
[2] 0.5<(Y+Y)/X、
[3] 10≦2.5X+(Y+Y)≦40
を満たすことを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料と、
スチレン−アクリロニトリルを含んでなる樹脂粒子と、
着色剤と、
多糖類と、
を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、
前記組成物の総質量を基準とした、前記白色顔料、前記樹脂粒子、および前記着色剤の含有率をそれぞれX%、Y%およびY%としたとき、
[1] 0.1≦X≦7、
[2] 0.5<(Y+Y)/X、
[3] 10≦2.5X+(Y+Y)≦40
を満たすことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
さらに
[4] 8≦X+(Y+Y)≦30
を満たす、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに
[2’] 1<(Y+Y)/X≦10
を満たす、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記白色顔料が酸化チタンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記樹脂粒子の総質量を基準とした、スチレンアクリロニトリル樹脂含有率が80質量%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記多糖類がサクシノグリカンまたはデキストリンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
補助樹脂粒子をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
リン酸エステル界面活性剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
アルキル硫酸塩をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記着色剤が、蛍光着色剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
黒色分光濃度が0.4〜0.8である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を収容した収容筒と、前記収容筒の先端に配置された、ボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップとを具備し、前記ボールペンチップを前記軸筒の先端開口部から出没可能としたことを特徴とするボールペン。
【請求項13】
初期筆記時の、100mあたりのインキ消費量が250〜500mgである、請求項12に記載のボールペン。
【請求項14】
スチレン−アクリロニトリルを含んでなる樹脂粒子と、分散剤と、水と、着色剤とを含む混合物を分散処理して着色樹脂粒子含有分散体を調製し、前記分散体に、白色顔料と、多糖類とを混合することを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用水性インキ組成物に関するものである。より詳細には、隠蔽性と透過性という、相反する2つの特性を有する筆跡を形成することができる筆記具用水性インキ組成物、その組成物を用いた筆記具、およびその組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化チタンなどの隠蔽性が高い白色顔料を用いた白色系水性ボールペンはよく知られていた。このようなボールペンは、黒色の紙や写真などに筆記した場合に、筆跡が容易に視認できるように、下地の色を隠す隠蔽性が高いことが望ましいとされている。一方で、このような白色系水性ボールペンに対して、白色顔料にその他の色の着色剤を配合した、いわゆるパステルカラーのボールペンも用いられることがある。このようなパステルカラーのボールペンは、写真などの画像加工に用いた場合に特別な印象を持たせることができるので、好ましく用いられている。
【0003】
このパステルカラーのボールペンは、白以外の筆跡を形成させることができるので、白い紙などにも視認可能な筆跡を形成させることができる。このため、白色ボールペンよりも利用範囲が広い。このため、さらに色のバリエーションが望まれ、新しい色がさらに新たな用途を生み出している。このような用途の1つに、マーカーがある。マーカーとは、例えば白い紙に印字または筆記された文字の下にアンダーラインを施したり、文字の上から着色を施したりすることによって、特定の文字部分を目立たせるものである。筆記具をマーカーとして用いる場合には、その筆跡には透過性が望まれる。すなわち、筆跡の下に存在する筆跡が視認可能であることが必要である。
【0004】
このようなことから、従来なかった、隠蔽性と透過性という、2つの特性を両立するインキ組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−051630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
完全な隠蔽性と完全な透過性とを同時に満たすことは不可能であるが、人間の目で視認した場合に、十分な隠蔽性と十分な透過性とを両立することは可能であることがわかった。そして、本発明者らの検討によって、隠蔽性や透過性は、筆跡の黒色分光濃度と相関があり、黒色分光濃度が特定の範囲にあるときに、隠蔽性と透過性とが両立できることがわかった。本発明者らは、さらに、そのような特定の黒色分光濃度を達成できる水性インキ組成物は、特性の成分を特定の割合で配合することによって得られることを見出した。本願発明はこのような十分な隠蔽性と十分な透過性とを兼ね備えた筆記具用水性インキ組成物、その組成物を用いた筆記具、およびその組成物の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による筆記具用水性インキ組成物は、
白色顔料と、
スチレン−アクリロニトリルを含んでなる樹脂粒子と、
着色剤と、
多糖類と、
を含んでなる組成物であって、
前記組成物の総質量を基準とした、前記白色顔料、前記樹脂粒子、および前記着色剤の含有率をそれぞれX%、Y%およびY%としたとき、
[1] 0.1≦X≦7、
[2] 0.5<(Y+Y)/X、
[3] 10≦2.5X+(Y+Y)≦40
を満たすことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明によるボールペンは、前記の筆記具用水性インキ組成物を収容した収容筒と、前記収容筒の先端に配置された、ボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップとを具備し、前記ボールペンチップを前記軸筒の先端開口部から出没可能としたことを特徴とするものである。
【0009】
さらに本発明による筆記具用水性インキ組成物の製造方法は、スチレン−アクリロニトリルを含んでなる樹脂粒子と、分散剤と、水と、着色剤とを含む混合物を分散処理して着色樹脂粒子含有分散体を調製し、前記分散体に、白色顔料と、多糖類とを混合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、黒などの光吸収の大きい媒体上には、下地の色を十分に隠蔽することができる筆跡を形成することができ、白などの光吸収の小さい媒体上には、下地の文字や模様を視認可能なレベルで視認できる筆跡を形成することができる、水性インキ組成物が提供される。この水性インキ組成物は、例えばボールペンに適用した場合に、ドライアップ性能に優れ、ボール座の摩耗も少ない。また、着色剤として、蛍光着色剤を用いることで、従来なかった印象を与える美麗な筆跡を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、単に組成物ということがある)は、白色顔料と、着色樹脂粒子と、多糖類と、を含んでなる。これらの各成分について説明すると以下の通りである。
【0012】
[白色顔料]
本発明による組成物は、着色成分の1つとして白色顔料を含む。この白色顔料は、筆跡の色彩を調整すると共に、筆跡に隠蔽性を与える機能を有する。このような白色顔料は一般に使用されているものから任意に選択することができる。具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、中空樹脂粒子などから選択することができ、これらのうち酸化チタンが好ましい。
【0013】
酸化チタンには、ルチル型、またはアナターゼ型等の種類があるが、これらのいずれを用いてもよい。また、酸化チタン粒子の表面が無機材料によって被覆されていてもよい。さらに、酸化チタンは一般には粉末状であるが、インキ組成物に用いる場合には組成物中に分散させることが必要となる。このため、インキ組成物に容易に適用できるように、酸化チタンを分散媒に分散させた分散体を用いることもできる。
【0014】
酸化チタンの粒子径は目的に応じて任意に選択できるが、粒子径が小さいとボールペンチップなどにおける詰まりが発生しにくくなる傾向にある。このため、隠蔽性を良好に維持しながら詰まりを防止するために、酸化チタンの平均粒子径は、0.01〜2.0μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましく、0.2〜0.5μmがより好ましい。なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社)を用いて、標準試料や他の測定方法を用いてキャリブレーションした数値を基にレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。
【0015】
本発明による組成物に用いることができる酸化チタンは、一般に市販されているものから選択することができる。そのようなものとしては、C.I.ピグメントホワイト6、C.I.ピグメントホワイト21(いずれも商品名、米国トロノックス社製)が挙げられる。この顔料は粉末性状で販売されているものであるが、ドライアップ性能の向上や分散安定性を改良する効果があり、好ましい。さらに、C.I.ピグメントホワイト6は、筆跡の隠蔽性が良好で、より分散安定性を保つ効果があるため、より好ましい。また、界面活性剤などで予め分散処理された酸化チタン分散体も挙げられる。具体的には、LIOFAST WHITE H201、EM WHITE H、EM WHITE FX9048(いずれも商品名、東洋インキ株式会社製)、ポルックスホワイトPC−CR(商品名、住友カラー株式会社製)、FUJISP WHITE 11、同1011、同1036、同1051(いずれも商品名、富士色素株式会社製)などが挙げられる。これらは、製造時の分散工程が省略でき、組成物の調製が容易になるので好ましい。
【0016】
白色顔料の配合量は、組成物に求められる性能に応じて調整することができるが、筆跡の隠蔽性と透過性とを両立するために、組成物の総質量を基準として、0.1〜7質量%であることが好ましく、1.5〜6質量%であることがより好ましく、2.5〜4.5質量%であることがより好ましい。さらに、ボールペンにとした場合は、白色顔料の配合量が多過ぎると、チップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときのドライアップによる書き出しへの影響(ドライアップ性能)や、ボールとチップ本体との間のボール座の摩耗が進行してしまうおそれがある、上記範囲であれば、ドライアップ性能や、ボール座の摩耗も抑制されやすく、より好ましい。
【0017】
[樹脂粒子および着色剤]
本発明に用いられる組成物は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子(以下、簡単にSA樹脂粒子ということがある)と、着色剤とを含む。これらと、前記した白色顔料とによって筆跡の色彩、隠蔽性、透過性がほとんど決定される。
【0018】
(i)樹脂粒子
本発明において用いられるSA樹脂粒子は、スチレン−アクリロニトリルを含んでなる。これは、スチレン−アクリロニトリルは、耐アルカリ性、耐酸性、耐熱性に優れていることから、各種の添加剤などが存在しても安定性が高く、熱環境にも影響を受けにくいためである。この樹脂粒子は、スチレン−アクリロニリルを含んでいることが必要であり、その他の樹脂を含んでいてもよいが、スチレン−アクリロニリルの含有率が高いことが好ましい。具体的には、樹脂粒子の総質量を基準として、スチレン−アクリロニリルの含有率が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。このようなSA樹脂粒子を用いることにより、発色性、経時安定性に優れた分散体を得ることができる。なお、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子自体も、分散体やそれを含んでなるインキ組成物に配合した場合に、白色性をもたらす着色効果も有している。また、SA樹脂粒子が、組成物中でネットワークを構成して安定に分散しており、前記白色顔料の分散を安定させる分散助剤としての効果も得られやすいため好ましい。特に白色顔料として、比重の高い酸化チタン(比重:約4.0)のような無機顔料を用いる場合は、白色顔料の分散を安定させる効果が得られやすいため効果的である。
【0019】
さらに、白色顔料として、酸化チタンのような無機顔料を用いた組成物をボールペンに組み合わせた場合では、ボールとチップ本体との間に白色顔料が入り込むためにボール座の摩耗が進みやすい傾向がある。このような場合、SA樹脂粒子を用いることで、酸化チタンがボールとチップ本体に接触することが抑制されるため、ボール座の摩耗が低減される。
【0020】
SA樹脂粒子は、スチレンとアクリロニトリルを単量体として共重合させて得られる樹脂粒子である。スチレンとアクリロニトリルの配合比は特に限定されないが、一般的にはスチレン10〜90モル%、アクリロニトリル90〜10モル%の割合で配合させる。なお、スチレンおよびアクリロニトリル以外の単量体は、本発明の効果を損なわない範囲で組み合わせることができる。
【0021】
本発明におけるSA樹脂粒子は、従来公知の任意の方法で得ることができるが、分散体の発色性、分散安定性、さらに筆記具に用いた場合のペン先からのインキ吐出性を考慮すると、均一な粒子が得られやすい、スチレンとアクリロニトリルとの乳化重合により得られる樹脂粒子であることが好ましく、さらには、予め水などの分散媒に分散された状態のSA樹脂粒子分散体として用いることが好ましい。SA樹脂粒子分散体は、市販品を用いることも可能である。
【0022】
また、着色剤に組み合わせる樹脂粒子の大きさは特に限定されないが、分散性を維持し、また筆記具に使用したときの線とびやカスレを防ぐためには、粒子径が小さいことが好ましく、高い発色性を得るためには平均粒子径が大きいことが好ましい。このような観点から、平均粒子径は0.05〜3μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。さらに、ボール座の摩耗を抑制が望まれる場合、白色顔料より樹脂粒子が大きいと酸化チタンのような硬い白色顔料がボールとチップ本体に接触することが抑制できてボール座の摩耗を低減することができるため好ましい。ここで、SA樹脂粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社)を用いて、標準試料や他の測定方法を用いてキャリブレーションした数値を基にレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。
【0023】
本発明の分散体における、SA樹脂粒子の含有率は、組成物の総質量を基準として、10〜60質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましい。SA樹脂粒子の含有率が上記数値範囲内であれば、分散体をインキ組成物に用いた場合に、良好な発色性をもたらすと同時に、良好な経時安定性をもたらすことができる。
【0024】
(ii)着色剤
本発明による組成物は着色剤を含んでなる。着色剤は、顔料であっても染料であってもよい。前記した通り、白色顔料も組成物に色彩を与える着色剤の機能を有するが、ここでいう着色剤は白色顔料とは異なる着色剤を意味し、一般に特定の波長の光を吸収して、彩度の高い色彩を実現できるものである。また、単に光を吸収するだけでなく、蛍光を放出することができる、蛍光着色剤、例えば蛍光染料や蛍光顔料を用いることもできる。
【0025】
このような着色剤としては、無機、有機、加工顔料などから任意に選択することができる。具体的な原料としては、群青、黄鉛、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。
【0026】
このような顔料としては、具体的には ピグメント・ブルー1、同15:1、同15:3、同17、ピグメン・トレッド3、同5、同22、同38、同48、同49、同53、同57、同81、同104、同146、同245、ピグメント・イエロー1、同3、同12、同13、同14、同42、同74、ピグメント・イエロー83、ピグメント・イエロー106 、同117、ピグメント・オレンジ5、同16、ピグメント・バイオレット1、同3、同19、同23、ピグメント・バイオレット27、ピグメント・グリーン7、同36等が挙げられる。
【0027】
また、着色剤として、染料を用いることもできる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。
【0028】
このような染料としては、各種のものが市販されており、それらから任意も選択して用いることができる。具体的には、(a)直接染料としては、ダイレクトエロー4、同26、同44、同50、同85、ダイレクトレッド1、同2、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、ダイレクトブルー1、同3、同15、同41、同71、同86、同106、同119、ダイレクトオレンジ6等、(b)酸性染料としては、アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、アシッドオレンジ56、アシッドイエロー3、同7、同17、同19、同23、同42、同49、同61、同92、アシッドレッド8、同9、同14、同18、同51、同52、同73、同87、同92、同94、アシッドブルー1、同7、同9、同22、同62、同90、同103、アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、アシッドバイオレット15、同17等、(c)塩基性染料としては、C.I.ベーシックイエロ−1、同2、同21、同7,同40、C.I.ベーシックオレンジ2、同14、同32、C.Iベーシックレッド1、同1:1、同2、同9、同14、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同11:1、C.I.ベーシックブル−3、同7、同26、ベーシックグリ−ン4、C.I.ベーシックブラウン12、C.I.ベーシックブラック2、メチルバイオレット、ビクトリアブルーFB、マラカイトグリーン、ローダミンのシリーズ等、(d)その他の染料としては、ディスパーズイエロー82、同121、ディスパーズブルー7などの分散染料などが挙げられる。
【0029】
本発明による組成物には、特に蛍光着色剤を用いることが好ましい。これは黒紙などに筆跡を形成させる場合に、視認性が高い上、特殊な美観を与えることができるからである。蛍光着色剤としては、蛍光染料または蛍光顔料などが挙げられる。蛍光着色剤の中でも、黒紙などに筆跡の視認性が高いことや、スチレン−アクリロニリルを含んでいる樹脂粒子との安定性が高いことから、蛍光染料を用いることが好ましい。このような蛍光染料は、具体的には、キサンテン骨格、トリアリール骨格、またはアゾ骨格を有する塩基性染料、または分散染料が挙げられる。これらのうち、より筆跡の視認性が高いことから、キサンテン骨格、またはアゾ骨格を有する塩基性染料が好ましい。このような蛍光染料としては、ダイレクトイエロー85、ベーシックイエロー1、同40、ベーシックレッド1、同1:1、ベーシックバイオレット10、同11:1、アシッドイエロー7、アシッドレッド92、アシッドブルー9、ディスパーズイエロー82、同121などが挙げられる。
【0030】
なお、本発明により組成物は、黒い紙などに記載したときに筆跡が視認可能であることが望ましいため、一般的な黒色顔料や黒色染料を単独で用いることは少ないが、色彩の調整などのために、それらを用いることもできる。このようなものとして、カーボンブラック、アニリンブラック、ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、同154、同168、同195、アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、C.I.ベーシックブラック2等などが挙げられる。
【0031】
これらの顔料および染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有率は、組成物全量に対し、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
【0032】
(iii)着色樹脂顔料
本発明による組成物は、上記したSA樹脂粒子と着色剤とを含むが、これらを組み合わせた着色樹脂粒子として組成物に配合することが好ましい。
【0033】
本発明による組成物において、SA樹脂粒子および着色剤は、組成物に対して、それぞれ単独で配合されても、それらを特定の方法で組み合わせた組み合わせとして配合されてもよい。このような組み合わせとしては、着色剤とSA樹脂粒子とを含む分散体、染料によって染色されたSA樹脂粒子、顔料が練り込まれたSA樹脂粒子、顔料が表面に付着または吸着したSA樹脂粒子などの着色樹脂粒子の形状としたものが挙げられる。これらのうち、着色剤とSA樹脂粒子とを含む分散体が好ましい。このような分散体を用いると、発色に優れ、また組成物の経時安定性も改良されるためである。
【0034】
このような分散体は、水などの分散媒に、SA樹脂粒子と着色剤とを配合して分散させることで調製できる。ここで分散性を改良するために分散剤を用いることもできる。分散剤としては、各種界面活性剤などを用いることができるが、特に分散性改良効果の高いアルキル硫酸塩を用いることが好ましい。アルキル硫酸塩は、白色顔料の表面に対する親和性が高いために分散性改良効果が高いと考えられる。ここでアルキル硫酸塩は、アルキル硫酸、またはアルキル硫酸を塩基で中和した塩である。本発明においては、アルキル硫酸も便宜的にアルキル硫酸塩のひとつとする。アルキル硫酸塩の炭素数は、SA樹脂粒子や必要に応じて用いるその他樹脂粒子の分散性、および白色顔料の分散性を改良できるため、一般的には6〜20であり、8〜18であることが好ましく、10〜14であることがより好ましく、12であることが特に好ましい。典型的にはアルキル硫酸塩はラウリル硫酸塩である。またアルキル硫酸塩を構成する塩基としてはアミン類、特にアルカノールアミンが好ましい。
分散体は、それ自体の安定性などを改良するために、防腐剤、pH調整剤、水溶性有機溶媒などをさらに含んでいてもよい。
【0035】
[白色顔料、樹脂粒子および着色剤の配合比]
本発明による組成物は、上記成分を含んでなるものであるが、その含有率が特定の関係を満たすことに特徴がある。すなわち、白色顔料等が、単に特定範囲の含有率を有するだけでは隠蔽性と透過性とを同時に満足することができない場合があり、白色顔料、樹脂粒子、および着色剤の含有率が特定の関係を満たした場合にのみ、隠蔽性と透過性とを同時に満足できるのである。具体的には、組成物の総質量を基準とした、白色顔料、SA樹脂粒子、および着色剤の含有率をそれぞれX%、Y%およびY%が、
[1] 0.1≦X≦7、
[2] 0.5<(Y+Y)/X、
[3] 10≦2.5X+(Y+Y)≦40
を満たす。
【0036】
[1]は、組成物の総質量に対する白色顔料の含有率であり、前記した通りである。
【0037】
[2]は、本発明による組成物が、高い隠蔽性を備えた一般的なインキ組成物に比較して、白色顔料の含有率が少ないことを示している。このような配合比にすることで、筆跡の視認性(隠蔽性)を維持しながら、透過性も改善している。また、組成物をボールペンに組み合わせた場合でも、ボールとチップ本体との間に白色顔料が入り込んだ場合でも、共存するSA樹脂粒子が、白色顔料がボールおよびチップ本体に接触することを抑制するため、ボール座の摩耗を抑制することができる。
【0038】
さらには、十分な隠蔽性を維持するために、
[2−1] 1<(Y+Y)/X≦10
を満たすことが好ましく、
[2−2] 1<(Y+Y)/X≦7
を満たすことがよりが好ましく、
[2−3]2≦(Y+Y)/X≦6
をみたすことが特に好ましい。
【0039】
[3]は、[2]に加えて、隠蔽性と透過性とを同時に満足するために必要な関係である。
[3−1] 15≦2.5X+(Y+Y)/X≦35
を満たすことが好ましく、
[3−2]20≦2.5X+(Y+Y)/X≦30
を満たすことがよりが好ましい。
【0040】
さらに、本発明において、[1]〜[3]に加えて、下記の関係[4]を満たすことで、隠蔽性および透過性がいずれも高くなるので好ましい。
[4] 8≦X+(Y+Y)≦30
[4−1]12≦X+(Y+Y)≦20
を満たすことがよりが好ましい。
【0041】
従来、隠蔽性と透過性とを同時に満たそうとする組成物に関する検討は見当たらず、組成物としてそのような特性を満たすための条件は知られていなかったため、そのような粗製物を得るためには、隠蔽性と透過性とを同時に満足するためには微妙な調整が必要であった。本発明によれば、これらの[1]〜[3]を満たすように材料を配合することによって、組成物を製造して試験する必要なしに、望ましい特性を実現できる組成物を得ることができる。
【0042】
[多糖類]
本発明による組成物は、多糖類を含んでなる。多糖類は、種々の効果をもたらすが、主に、組成物粘度の調整、剪断減粘性の付与、耐ドライアップ性能向上などの効果をもたらす。具体的には、デキストリン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガム等が挙げられる。これらのうち、サクシノグリカンまたはデキストリンが好ましい。サクシノグリカンはゲル化剤としても作用し、他の多糖類よりも、静止時の組成物粘度を高くし、筆記時の組成物粘度を低くすることが可能で、比較的少量で、書き味の向上やインキ漏れ抑制効果が得られやすく、粘度調整し易い。そのため、インキ中の固形分量をより少なくできるため、ドライアップ性能を改良しやすく、さらにSA樹脂粒子などの樹脂粒子や白色顔料の分散安定性に有利になりやすい。またデキストリンは、組成物を筆記具に適用した場合に、ペン先が乾燥して固化するのを抑制する、ドライアップによる書き出し性を改良効果を発揮する。
【0043】
サクシノグリカンはグルコース、ガラクトース、コハク酸、およびピルビン酸が重合した天然物であり、その分子量等は特定が困難であるが、一般に質量平均分子量は100万程度と考えられている。サクシノグリカンは種々の市販品があり、例えば、メイポリ(商品名、三晶株式会社製)等が例示できる。
【0044】
サクシノグリカンの含有率は、効果を十分に得るために、組成物の総質量に対し、0.01〜1質量%が好ましく0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0045】
また、デキストリンは、数個のα−グルコースが、グリコシド結合によって重合した物質の総称で、食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解により得られるものである。デキストリンの質量平均分子量は、小さいほうが筆記具先端が乾燥した場合に形成される被膜が硬くなりすぎず、書き出しにおけるカスレが抑制される傾向にあり、また大きい方が形成される被膜が組成物中の溶媒等の蒸発を抑制し、ペン先における被膜が過度に硬くなることを抑制できる。このような観点から、デキストリンの質量平均分子量は5,000〜120,000が好ましく、20,000〜120,000がより好ましく、20,000〜100,000が特に好ましい。なお、本発明において質量平均分子量とは、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
【0046】
デキストリンの含有率は、低い方が組成物に対する溶解が容易になり、高い方がドライアップ改善効果が大きい傾向がある。このような観点から、デキストリンの含有率は、組成物の総質量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましく、0.5〜3.0質量%が特に好ましい。
【0047】
[水]
本発明による組成物は、水性の組成物であるので、溶媒として水を含んでいる。水としては、特に制限なく、例えば、イオン交換水、蒸留水、および水道水などの慣用の水を用いることができる。
【0048】
[添加剤]
本発明による組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の添加剤を含むことができる。そのような添加剤について説明すると以下の通りである。
【0049】
(i)補助樹脂粒子
本発明による組成物は、SA樹脂粒子とは別の補助樹脂粒子を含むことができる。本発明による組成物は、必須成分としてSA樹脂粒子を含むが、補助樹脂粒子はSA樹脂粒子とは異なった作用をするものである、すなわち、SA樹脂粒子は、組成物により形成される筆跡の隠蔽性および透過性に大きな影響を与えるが、補助樹脂粒子はそれ以外の特性の改良に寄与するものである。具体的には、本発明による組成物をボールペンに組み合わせた場合、補助樹脂粒子によってボールとチップ先端の内壁との間の隙間における組成物の流動を制御して、インキ漏れを抑制することができる。このとき、補助樹脂粒子は、無機物と比較して硬度が低いことから、粒子同士が一部変形などして、お互い密着するので、比較的小さい樹脂粒子が相互に微弱な凝集構造を形成し、インキ漏れを抑制すると考えられる。
また、補助樹脂粒子の凝集体や比較的大きな樹補助脂粒子が、ボールとチップ先端の内壁との間に存在することによって、相対的に硬い白色顔料粒子がボールまたはボール座と接触することを抑制し、ボール座などが摩耗することを抑制することもできる。
【0050】
このような効果を得ることができる補助樹脂粒子としては、オレフィン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、スチレン−ブタジエン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、酢酸ビニル系樹脂粒子、アミノ基を有する樹脂粒子などが挙げられ、このうち、ペン先インキ漏れ抑制効果が高いので、オレフィン系樹脂粒子またはアミノ基を有する樹脂粒子が好ましい。
【0051】
オレフィン系樹脂粒子は、炭化水素化合物であり、無極性であるために水中で凝集が起こりやすく、インキ漏れを抑制しつつ、インキ量の不足などの不具合を起こさないような最適化された凝集構造を形成しやすいため、インキ消費量を保ちつつ、インキ漏れ抑制効果が得られるものと推定される。また、ポリオレフィン系樹脂粒子は、変形はしやすく変性はしにくいという特徴を持っており、ボールとボール座の間に挟まれても安定しているため、クッション効果が得られ、ボール座の摩耗抑制が得られやすいため、好ましい。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂粒子は、ポリオレフィンを主成分とする粒子を含んでいる。このポリオレフィンは特に限定されないが、インキ漏れ抑制効果が大きいことから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン−プロピレン)などが好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0053】
オレフィン系樹脂粒子としてポリエチレンを用いる場合には、低密度ポリエチレン、直鎖状低分子ポリエチレン、高密度ポリエチレン、変性高密度ポリエチレン、変性低密度ポリエチレンなどを用いることができる。これらのオレフィン系樹脂粒子の中でも、高密度ポリエチレンを用いることが好ましく、これは、高密度ポリエチレンは耐熱温度が90〜110℃と高く(低密度ポリエチレンは70〜90℃)、剛性に優れているため、筆記時にボールとボール座の間に挟まって一時的に高圧が掛かっても、クッション作用が働き、ボール座の摩耗抑制をしやすいためである。オレフィン系樹脂粒子の比重については、オレフィン系樹脂粒子の分散性や、白色顔料の分散安定性を向上させる分散助剤として効果が得られやすいため、比重は0.9〜0.99が好ましく、0.93〜0.97が好ましい。
【0054】
これらのオレフィン系樹脂粒子を構成するポリオレフィンの分子量は特に限定されないが、例えば質量平均分子量が500〜10,000であることが好ましく、3,000〜8,000であることがさらに好ましい。ポリオレフィンの質量平均分子量が上記数値範囲内であれば、この水性インキ組成物をマーカーなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。オレフィン系樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
【0055】
オレフィン系樹脂粒子に含まれる粒子の形状は、特に限定されず、球状、針状、板状、方形など任意の形状をとることができるが、球状形状であると、摩擦抵抗が小さくなる傾向にあることから、ボール座の摩耗抑制や、より高い滑性を筆記線に付与しやすいため、球状であることが好ましい。
【0056】
また、アミノ基を有する樹脂粒子として、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子などが挙げられる。これらのうち、特に効果の顕著なベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子を用いることが好ましい。アミノ基を有する樹脂粒子は、水素結合官能基があるため、微弱な水素結合により凝集構造を形成することにより、インキ漏れ抑制効果が得られやすいと推定される。
【0057】
補助樹脂粒子の平均粒子径は、0.1μm〜15μmであることが好ましく、1〜12μmであることがより好ましく、3μm〜10μmであることが特に好ましい。粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、お互い密着して、微弱な凝集構造をとりやすく、インキ漏れを抑制しやすく、さらに、この組成物をマーカーなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。さらに、ボール座の摩耗に関して、白色顔料より平均粒子径が大きい補助粒子を用いることで、白色顔料がボールとチップ本体に接触して、ボール座が摩耗することを抑制しやすい。このため、補助樹脂粒子は白色顔料よりも平均粒子径が大きいことが好ましい。具体的には補助樹脂粒子の平均粒子径は、5μm〜10μmであることが特に好ましい。
【0058】
なお補助樹脂粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法(コールター社製)を用いて、標準試料や他の測定方法を用いてキャリブレーションした数値を基に測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)を測定することができる。
【0059】
本発明による組成物における補助樹脂粒子の含有量は、組成物の総質量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましく、0.1〜1.5質量%であることがさらに好ましい。補助樹脂粒子の含有量が上記数値範囲内であれば、インキ吐出性を安定化させ、また非使用時のペン先からのインキ漏れを抑制することができる。また筆記時には筆跡により高い滑性を付与することができる。
【0060】
(ii)リン酸エステル系界面活性剤
また、本発明による組成物は、さらにリン酸エステル系界面活性剤を含むことができる。この界面活性剤は、インキ組成物の分散性などを改良する効果の他、組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤としても作用する。潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗を抑制し、書き味を向上するものである。本発明において用いられる、リン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基が金属に吸着しやすい性質にあることから、潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味を向上させやすい。このため、本発明による組成物をボールペンに適用する場合に、特に優れた書き味を実現できる。さらには、リン酸エステル系界面活性剤は、組成物がボールペンチップなどの金属部品と接触する場合には防錆剤としても作用する。
【0061】
リン酸エステル系界面活性剤としては、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系等のリン酸エステル系界面活性剤が挙げられるが、中でも、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。これらのうち、白色顔料やスSA樹脂粒子との親和性が高く、経時安定性の改良効果が高いことから、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤を用いることがより好ましい。
【0062】
リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬株式会社)などが挙げられ、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A215C、同A219B、同A208Nが挙げられ、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフALが挙げられ、ノニルフェノール系としては、プライサーフ207H、同A212E、同A217Eが挙げられ、オクチルフェノール系としては、プライサーフA210Gが挙げられる。
【0063】
本発明においてリン酸エステル系界面活性剤は、HLB値が5〜15であることが好ましく、6〜13であることが好ましい。また、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤が有するアルキル基またはアルキルアリル基の炭素数が6〜30であることが好ましく、8〜18であることがより好ましく、10〜14であることが特に好ましい。これは、特定のHLB値および炭素数をもつ直鎖系のリン酸エステル系界面活性剤は、より潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味を向上させやすく、さらに線とびやかすれなどが改善された良好な筆跡が安定して得られるためである。
【0064】
なお、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤のHLB値とは、川上法から算出される値であり、下記式によって算出される。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)
【0065】
リン酸エステル系界面活性剤を添加する場合、その含有率は組成物の総質量を基準として0.1〜3.0質量%が好ましく、0.3〜2質量%であることがより好ましい。
【0066】
また、デキストリンを溶解安定するのに用いる溶剤としては、多価アルコール類を用いるのが良い。また、多価アルコール類は、吸湿効果もあるため、含有することで、チップ先端のインキが、乾燥時に、デキストリンやサクシノグリカンなどの多糖類によって形成される被膜の固化を和らげて、ドライアップ性能をより向上する効果が得られる。
【0067】
(iii)その他の添加剤
本発明による組成物は、目的に応じて、その他の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、水溶性有機溶剤、pH調整剤、防腐剤、剪断減粘性付与剤などが挙げられる。
【0068】
水溶性有機溶剤は、各種成分の溶解性を高めたり、組成物の経時安定性を改良することができることがある。また、着色樹脂粒子の分散体を用いる場合には、分散体の調製時に、水溶性有機溶剤による分散媒の比重調整や着色樹脂粒子表面の濡れ性改善により沈降防止や分散安定性改良される。用いることができる水溶性有機溶剤は、多価アルコール類、グリコールエーテル類などが挙げられるが、それらの中でも、組成物のドライアップを改善することができるエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類を選択して用いることが好ましい。
【0069】
pH調整剤は、組成物や、着色樹脂粒子の分散体のpHを調整し、安定性を改善したり、組成物が接触する金属部品の腐食を防ぐために用いられる。pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられる。これらのうち、塩基性有機化合物を用いることが好ましく、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。
【0070】
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0071】
剪断減粘性付与剤は、組成物の粘度を調整し、また白色顔料や着色樹脂粒子の分散安定性を改良することができる。上記した多糖類にもこのような作用をするものがあり、一部が重複するが、剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル酸重合体、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガム等が挙げられる。
【0072】
なお、組成物の粘度は、100〜 5000(mPa・s)であることが好ましく、1000〜3500(mPa・s)であることが好ましく、1500〜3000(mPa・s)であることがより好ましい。ここで、粘度は、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)を用いて、20℃環境下、剪断速度1.92(sec−1)で測定されたものである。組成物の粘度が低すぎると、インキ粘度が低過ぎて、白色顔料などの分散性に影響しやすく、高すぎると、ドライアップ性能やインキ追従性が劣化する傾向があるためである。
【0073】
また、組成物のpH値は、本発明のように白色顔料と、スチレン−アクリロニトリルを含んでなる樹脂粒子を用いる場合、分散体の発色性、分散安定性の向上を特に考慮すると、pH値は7〜9であることが好ましい。なお、本発明において、pH値は、IM−40S型pHメーターを用いて、20℃環境下、にて測定した値を示すものである。
【0074】
[水溶性インキ組成物の黒色分光濃度]
本発明による組成物は、主に白色顔料と、着色剤または着色樹脂粒子とによって、種々の色彩を表現することができる。そして、その組成物によって形成された筆跡の黒色分光濃度が特定の範囲にあるときに、隠蔽性と透過性とがより高いレベルで両立される。具体的には、濃度計によって測定される黒色分光濃度が、0.4以上であると十分な隠蔽性が得られ、一方で0.8以下であれば十分な透過性が得られる。したがって、本発明による組成物の黒色分光濃度は、0.4〜0.8であることが好ましく、0.5〜0.7であることがより好ましく、0.6〜0.7であることが好ましい。なお、黒色濃度の測定にはFD−7型蛍光分光濃度計(商品名、コニカミノルタ株式会社製)などを用いることができる。
【0075】
[筆記具]
本発明による組成物は、各種の筆記具に適用することができるが、ボールペン、特にノック式や回転繰り出し式などの出没式ボールペンに用いることが好ましい。このようなボールペンは、本発明による水性インキ組成物を収容した収容筒と、その収容筒の先端に配置された、ボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップとを具備したものである。そして、そのボールペンチップを軸筒の先端開口部から出没可能とされており、一般的に出没式ボールペンと呼ばれる構造を有する。一般に樹脂粒子や白色顔料を含むインキ組成物をペン先が密閉されない出没式ボールペンに用いた場合は、チップ先端部が定常的に大気中に放置されるため、チップ先端部が乾燥して(ドライアップ)、書き出し時にカスレなどが生じやすいが、本発明による組成物を用いると、そのような問題が改善される。
【0076】
本発明によるボールペンの構造は、一般的に知られているボールペンの構造を採用することができるが、そのうちボール径については0.5〜2.0mmであることが好ましく、より好ましくは、0.6〜1.2であることが好ましい本発明による組成物は、筆跡の隠蔽性および透過性が高いので、そのような特徴を有効に利用するためには、比較的幅の広い筆跡が形成できることが好ましい。
【0077】
また、本発明によるボールペンは、隠蔽性と透過性とを両立するために、初期筆記時の、初期筆記時の、100mあたりのインキ消費量が、250〜500mgであることが好ましく、280〜480mgであることがより好ましく、300〜450mgであることが好ましい。なお、最適なインキ消費量はボール径にも依存し、一般にボール径が小さい場合にはインキ消費量は少ない傾向にある。具体的には、ボール径が0.7mmの場合には300〜370mg程度、1mmの場合には350〜450mg程度である。本発明においては、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/分の速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
【0078】
また、ボールペンチップの仕様については、クリアランス(ボールペンチップ中のボールの縦軸方向の移動可能量)を、20〜50μmとするのが好ましく、30〜45μmとすることがより好ましく、35〜45μmとすることが特に好ましい。これは、上記範囲であれば、インキ吐出量を適切に調整し、線とびやカスレなどを抑制することで、良好な筆跡が得られやすいためである。
【0079】
クリアランスとは、ボールがボールペンチップ本体の縦軸方向への移動可能な距離を示す。
【0080】
なお、ボールペンの使用によって、ボールペンチップにおけるボールとボール抱持室との接触部分が摩耗して、クリアランスが変化し、それによってインキ消費量も変化することがある。このため、本発明においてクリアランスまたはインキ消費量は、そのボールペンの初期筆記時、すなわち使い始めにおけるクリランスまたはインキ消費量をいうこととする。
【0081】
また、本発明によるボールペンにおいては、ボール径をA(mm)、100mあたりのインキ消費量をB(mg)とした場合、AとBの関係が300≦B/A≦650であることが好ましく、350≦B/A≦550であることが好ましい。
【0082】
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化ケイ素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。ボールが腐食しないため、ボール座の摩耗や書き味に有利に働きやすいため、セラミックスボールとすることが好ましく、炭化ケイ素ボールを用いることがより好ましい。
【0083】
また、ボール座の摩耗抑制、および書き味向上のために、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)を0.1〜10nmとすることが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が、この範囲を越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きくなりやすいため、書き味やボール座の摩耗に影響が出やすく、また、この範囲を下まわると、ボールの表面に十分に金属顔料が載らないため、筆跡カスレなど筆記性に影響が出やすい。そのため、ボール座の摩耗抑制、および書き味を向上し、さらに十分な筆記性を得るためには、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.1〜10nmとすることが好ましく、0.1〜5nmとすることがより好ましく、0.1〜3nmとすることが特に好ましい。
【0084】
ボール表面の算術平均粗さについて、表面粗さ測定器(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)により測定された粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
【0085】
また、本発明によるボールペンのボールペンチップは、インキ漏れ抑制するために、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングなどの弾発部材により直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。特に、出没式のボールペンでは、インキ漏れの抑制のニーズが高く、このような弁機構を有することが好ましい。
【0086】
[水溶性インキ組成物の製造方法]
本発明による組成物は任意の方法により製造することができる。例えば、白色顔料と、SA樹脂粒子と、着色剤と、多糖類と、必要に応じてその他の成分と、を水中で混合し、均一に分散させることにより製造することができる。混合順序は特に限定されない。均一に分散された粗製物を得るために、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などを用いることができる。
【0087】
また、SA樹脂粒子と着色剤とに代えて、着色樹脂粒子の分散体を用いることもできる。このような方法で組成物を製造すると、組成物の経時安定性などが改良されるので好ましい。着色樹脂粒子の分散体は、例えば、以下のように調製することができる。SA樹脂粒子またはSA樹脂粒子分散液と、分散剤と、水と、必要に応じて任意の添加剤とを、均一に混合させ、混合液を作製する。ここで用いられるSA樹脂粒子は、乳化重合により得られたものであることが好ましい。上記混合液に、着色剤を添加し、分散処理をすることによって製造する。SA樹脂粒子の分散液は一般的に入手が容易であり、また分散処理が容易になるので粒子の分散液を用いることが好ましい。なお、粒子の分散液は、水性分散媒を含んでなるものが好ましい。
【0088】
分散処理は、加温条件下で行うことが好ましい。より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上の温度条件下で行うことが好ましい。温度は分散処理の進行に応じて変化させることもできる。温度の上限は特に限定されないが、例えば90℃以下で行うことにより、特別な設備なしに分散処理を行うことが可能となる。具体的にはSA樹脂粒子を含む混合液を、20〜30℃で、プロペラ撹拌機により撹拌しながら、着色剤、着色剤水溶液、または着色剤水性分散液を添加し、均一な混合液とする。その後、徐々に昇温させ、70〜80℃で1〜24時間攪拌してSA樹脂粒子を着色させ、分散体を作製することができる。なお、分散処理にはプロペラ攪拌機、高速剪断攪拌機、ホモジナイザーなどの各種撹拌機を用いることができる。
【0089】
このような分散体を用いて組成物を製造した場合、安定性の高いSA樹脂粒子の分散体に他成分を順次添加することで分散安定性を保ちつつ組成物を得ることができ、組成物の分散安定性はより向上し、筆跡の発色性、ペン先からのインキ吐出性をも向上させることができる
【0090】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
[調製例1 着色樹脂粒子分散体の調製]
下記成分を均一に混合し、混合液を作製する。
含有量(質量%) 成分
44.0 SA樹脂粒子(平均粒子径400nm、
スチレンアクリロニトリル樹脂含有率95質量%以上)
6.5 エチレングリコール
10.0 グリセリン
2.2 ラウリル硫酸トリエタノールアミン(炭素数12)
0.008 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン
0.4 ベーシックバイオレット11:1(キサンテン系塩基性染料
0.6 ベーシックレッド1:1(キサンテン系塩基性染料)
残部 水
【0091】
この混合液を、室温で、プロペラ撹拌機により撹拌して均一な混合液とした後、徐々に昇温させ、70℃で攪拌してSA樹脂粒子を着色させ、ピンク色蛍光色を呈する着色樹脂粒子分散体Pを調製した。
【0092】
[調製例2 着色樹脂粒子分散体の調製]
下記成分を均一に混合し、混合液を作製する。
含有量(質量%) 成分
44.0 SA樹脂粒子(平均粒子径400nm、
スチレンアクリロニトリル樹脂含有率95質量%)
6.5 エチレングリコール
10.0 グリセリン
2.2 ラウリル硫酸トリエタノールアミン(炭素数12)
0.008 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン
0.5 ベーシックバイオレット11:1(キサンテン系塩基性染料)
0.4 ベーシックレッド1:1(キサンテン系塩基性染料)
0.3 ベーシックイエロー40(アゾ系塩基性染料
残部 水
【0093】
この混合液を、室温で、プロペラ撹拌機により撹拌して均一な混合液とした後、徐々に昇温させ、70℃で攪拌してSA樹脂粒子を着色させ、レッド色蛍光色を呈する着色樹脂粒子分散体Rを調製した。
【0094】
[調製例3 着色樹脂粒子分散体の調製]
下記成分を均一に混合し、混合液を作製する。
含有量(質量%) 成分
44.0 SA樹脂粒子(平均粒子径400nm、
スチレンアクリロニトリル樹脂含有率95質量%)
6.5 エチレングリコール
10.0 グリセリン
2.2 ラウリル硫酸トリエタノールアミン(炭素数12)
0.008 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン
0.7 ベーシックイエロー40(アゾ系塩基性染料)%
0.3 ディスパーズイエロー82(分散染料)
残部 水
【0095】
この混合液を、室温で、プロペラ撹拌機により撹拌して均一な混合液とした後、徐々に昇温させ、70℃で攪拌してSA樹脂粒子を着色させ、イエロー色を呈する着色樹脂分散体Yを調製した。
【0096】
[実施例101]
調製例1で得た分散体Pを用いて、下記の各成分を含む水性インキ組成物を製造した。
35.0 着色樹脂粒子分散体P
4.5 酸化チタン分散体(固形分67質量%、平均粒子径250nm)
1.0 デキストリン
0.3 サクシノグリカン
1.0 リン酸エステル系界面活性剤
0.5 ベンゾトリアゾール
0.1 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン
1.0 トリエタノールアミン
10.0 グリセリン
0.5 変性ポリエチレンワックス
残部 水
【0097】
ここで、酸化チタン分散体として、C.I.ピグメントホワイト6(平均粒子径250nm)を67質量%の濃度で水中に分散させたものを用いた。
【0098】
また、デキストリンとしてはサンデック#70(商品名、三和澱粉工業株式会社製)を、サクシノグリカンとしては、メイポリ(商品名、三晶株式会社製)を、変性ポリエチレンワックス(補助樹脂粒子)としては、CERAFLOUR950(商品名、BYK社製)(融点135℃、比重0.95、平均粒子径9μm、高密度ポリエチレン)を、リン酸エステル系界面活性剤として、プライサーフA208N(商品名、第一工業製薬株式会社製)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとしてプロキセルXL−2(S)(商品名、ゼネカ社製)を、それぞれ用いた。
[実施例102〜120および比較例101〜111]
実施例101に対して、各成分の種類と配合比を代えて、実施例102〜120、比較例101〜111の組成物を製造した。各例における各成分の配合比は、表1−1および1−2に示すとおりであった。
【0099】
【表1-1】
【0100】
【表1-2】
表中、
D−1: デキストリン、質量平均分子量100,000、サンデックシリーズ(三和デンプン工業株式会社)、
D−2: デキストリン、質量平均分子量20,000、サンデックシリーズ(三和デンプン工業株式会社)、
SG: サクシノグリカン、三晶株式会社
XG: キサンタンガム
S−1:ポリオキシエチレンアルキル(C12、C13)エーテルリン酸エステル「プライサーフA208N」(第一工業製薬株式会社)、HLB値7
S−2:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル「プライサーフA219B」(第一工業製薬株式会社)、HLB値16.2
OR: 変性ポリエチレンワックス「CERAFLOUR950」(商品名、BYK社製)、融点135℃、比重0.95、平均粒子径9μm、高密度ポリエチレン
BHR: ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物樹脂粒子「エポスターM05」(日本触媒株式会社製) 平均粒子径5μm
NR: ナイロン樹脂粒子:「ナイロンSP−500」(株式会社東レ製)、平均粒子径5μm
【0101】
実施例101〜120、比較例101〜1111で得られた各組成物を、ボールペンに充填して、隠蔽性、透過性、耐摩耗性、ドライアップ性能、分散安定性、およびインキ漏れ性能をそれぞれ下記の基準で評価した。
さらに、実施例101、114、および115のインキ組成物の粘度をE型回転粘度計(機種:DV−II+Pro、ローター:CPE−42、ブルックフィールド社製)により、20℃環境下にて剪断速度1.92sec−1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定したところ、それぞれ2250mPa・s、2200mPa・s、および2300mPa・sであった。また、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、これら組成物の20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は、それぞれ7.8、7.7および7.7であった。
【0102】
隠蔽性: 長門屋商店製の厚さ0.09(mm)の黒色紙にボールペンで筆記し、筆跡を目視にて観察した。
A:隠蔽性が良好で、筆跡視認性が非常に良好である
B:隠蔽性が良好で、筆跡視認性が良好である
C:隠蔽性がやや劣り、筆跡視認性が実用性に影響する
D:隠蔽性が劣り、筆跡視認性が悪い
【0103】
透過性: 筆記用紙JIS P3201の紙面上に予め印字し、ボールペンで塗りつぶして、紙面上の印字を目視にて観察した。
A:紙面上の印字が、明確に視認できる
B:紙面上の印字が、視認できる
C:紙面上の印字が、視認性が実用性に影響する
D:紙面上の印字が、視認性が悪い
【0104】
耐摩耗試験: ボールペン組立1ヶ月後に、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に、20℃で、荷重100gf、筆記角度65°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
A:ボール座の摩耗が10μm未満である
B:ボール座の摩耗が10μm以上、20未満μmである
C:ボール座の摩耗が20μm以上、40μm未満である
D:ボール座の摩耗が40μmを越えるもの
【0105】
ドライアップ性能試験:ペン先を出したまま、50℃で2週間放置した後、手書き筆記した際の筆跡の状態を評価した。
A:筆跡にカスレがなく、筆跡が良好である
B:筆跡に若干カスレが出るが、問題ないレベルである
C:筆跡にカスレが出る
D:筆跡にカスレがひどく、実用性に乏しい
【0106】
分散安定性試験: 実施例101〜120、比較例101〜111のインキ組成物を直径15mmの密開閉ガラス試験管に入れて、50℃、30日間放置した後、それぞれのインキ組成物をスライドガラスに採取し、光学顕微鏡を用いて観察し、下記評価基準でインキ組成物の分散安定性を評価した。評価は表2にまとめたとおりであった。
A:凝集体が確認されず、均一に分散されている良好な状態。
B:凝集体がわずかに確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
C:凝集体が確認され、実用上懸念の残るレベルであった。
D:凝集体の沈降が見られた。
【0107】
インキ漏れ試験: 40gの重りをゲルインキボールペンに付けて、ボールペンチップを突出させて下向きにし、ボールペンチップのボールの、ボールペン用陳列ケースの底部に当接させた状態を保ち、20℃、65%RHの環境下に1日放置し、ボールペンチップ先端からのインキ漏れ量を測定した。
A:インキ漏れ量が5mg未満であるもの
B:インキ漏れ量が5〜10mgであるもの
C:インキ漏れ量が10mgを越えて、20mg未満のもの
D:インキ漏れ量が20mg以上のもの
【0108】
黒色分光濃度の測定については、蛍光分光濃度計(コニカミノルタ(株)製:FD−7)を用いて、レコード式画線機(デイシー(株)製:PL−1000)、長門屋商店製の厚さ0.09(mm)の黒色紙を用いて測定を行った。
【0109】
詳細については、まず、実施例・比較例で配合して得られ各組成物の実施例101〜120、比較例101〜111を充填したボールペンを用いて、レコード式画線機(デイシー(株)製:PL−1000)で、20℃、筆記角度75°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度50mm/sec−1の速度で、ピッチを0.3mmに設定し、黒色紙に、10m、円書き筆記した。その後、蛍光分光濃度計の濃度測定モードに設定して、黒色紙のK値を測定し、この値をαとし基準として、レコード式画線機で、黒色紙に筆記した筆跡を、蛍光分光濃度計でK値を測定し、この値をβとして、α−βの絶対値を黒色分光濃度として算出した。
【0110】
得られた結果は表1に示したとおりであった。
実施例101〜120で得られた各組成物では、十分な隠蔽性と透過性とを両立できることが確認できた。さらに、写真への筆記も可能であった。
【0111】
なお、ボールペンは、クリアランスが40μm、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングによりチップ先端縁の内壁に押圧した弁機構を具備した機構で、ボール径が0.7mm、ボールの材質は炭化ケイ素ボール、ボール表面の算術平均粗(Ra)が1.0nmとした。これらの実施例101〜120ボールペンの初期筆記時の、100mのインキ消費量は320〜370mgであった。
【0112】
【表2】