【解決手段】ドアロック装置10は、ケース14と、ケース14内に収容される電気部品と、電気部品と接続される導電性の第1ターミナル63aおよび第2ターミナル63bと、第1ターミナル63aおよび第2ターミナル63bとを保持するプレート38と、プレート38における2つのターミナルの間に設けられた孔62と、第1ターミナル63aから突出して孔62の縁で屈曲している折曲片66と、ケース14から突出して孔62に入り込み、折曲片66と2つの第2ターミナル63bとの間に介挿されているピン64と、を有する。折曲片66は孔62に入り込んでいる。折曲片66は第2ターミナル63bから切り離されたものであり、1か所の切欠61が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載のドアロック装置では、連結部を押圧することによりその一端を切断しているが、他端にも切欠が設けられているために深く折り曲げることができない。なぜなら、深く折り曲げると他端も切り離されてしまい、連結部がケース内に混入する懸念があるためである。連結部を深く折り曲げることができないため、その折曲片におけるターミナル間の離間距離は短く、被水時に通電して導通不良が発生する懸念がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、2本のターミナル間の絶縁性を高めることのできるドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるドアロック装置は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容される電気部品と、前記電気部品と接続される導電性の第1ターミナルおよび第2ターミナルと、前記第1ターミナルおよび前記第2ターミナルを保持するプレートと、前記プレートにおける前記第1ターミナルと前記第2ターミナルとの間に設けられた孔と、前記第1ターミナルから突出して前記孔の縁で屈曲している折曲片と、前記ハウジングから突出して前記孔に入り込み、前記折曲片と前記第2ターミナルとの間に介挿されている絶縁性のピンと、を有することを特徴とする。
【0008】
前記折曲片は前記孔に入り込んでいてもよい。
【0009】
前記折曲片は前記第2ターミナルから1か所の切欠で切り離されたものであって、1か所の切欠跡があってもよい。
【0010】
前記第1ターミナルは、前記第2ターミナルから離間する方向に凸の湾曲部を有し、前記折曲片は前記湾曲部から突出していてもよい。
【0011】
前記プレートは突出するバンパーを有し、前記バンパーは前記ハウジングに弾性変形しながら当接していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるドアロック装置では、第1ターミナルの折曲片が孔の縁で屈曲しており、ピンが折曲片と第2ターミナルとの間に介挿されていることにより2本のターミナル間の絶縁性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかるドアロック装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、カバーおよび防水カバーを取り外した状態でドアロック装置を車室内側から見た側面図である。
【
図3】
図3は、ケースおよび防水カバーを取り外した状態でドアロック装置を車室外側から見た側面図である。
【
図4】
図4は、プレートおよびプレートに取り付けられるターミナルの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、ケースの内側の一部拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、孔および連結部とその周辺の斜視図であり、(a)は切欠の切断前の斜視図であり、(b)は切欠の切断後の斜視図である。
【
図7】
図7は、ケースに取り付けられたプレートの一部拡大斜視図その1である。
【
図8】
図8は、孔、折曲片およびピンの断面図である。
【
図9】
図9は、ケースに取り付けられたプレートの一部拡大斜視図その2である。
【
図10】
図10は、プレートをケースに取り付ける組立工程を説明する斜視図である。
【
図11】
図11は、プレートおよびその他の部品が組み付けられたケースの斜視図である。
【
図12】
図12は、プレートに設けられたバンパーおよびその周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかるドアロック装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るドアロック装置10の斜視図である。ドアロック装置10は、車両のドア(例えばフロント側のサイドドア)の内部に取り付けられるものであり、ドアラッチ装置12と、ケース14およびカバー16とを備える。ここではケース14とカバー16とは名称を区別しているが、両者は一体的に組み合わされて内部部品を覆うハウジングである。ケース14は外側ハウジングとも呼び得る。カバー16は内側ハウジングとも呼び得る。
図1に示すドアロック装置10は車両の右側ドアに適用されるものを例示しているが、左側ドアに適用されるものは左右対称構造とすればよい。
【0016】
ドアロック装置10は、外部機器との電気的な接続のためのカプラー18と、防水カバー20と、防水シール22および24と、ケーブルカバー26とを備える。防水カバー20は、ドアロック装置10の上面および前面においてケース14とカバー16との境部を覆っている。防水シール22はカプラー18の周囲を覆っている。防水シール24はドアラッチ装置12の上部および両側方と、内面側のケーブルカバー26に至るまでの部分を覆っている。カバー16には縦方向に延在する膨出部16aが設けられている。
【0017】
ドアラッチ装置12は、車両本体に設けられたストライカと係脱して車両のドアを閉じた状態または開放可能な状態にする装置である。ドアラッチ装置12は、ケース14における車両後側の部分に固定されており、この状態でケース14によって支持される。このようなドアラッチ装置12は、ボディ12aと、カバープレート12bと、ラッチ機構12cとを備える。ラッチ機構12cは、ボディ12aに設けられ、カバープレート12bによって覆われている。カバープレート12bは、進入溝12dを有し、進入溝12dが車両内外方向にラッチ機構12cと通じる状態となるようボディ12aに取り付けられる。進入溝12dは、車両のドアが閉じられる際に当該車両のストライカが進入する溝である。
【0018】
図2は、カバー16および防水カバー20を取り外した状態でドアロック装置10を車室内側から見た側面図であり、
図3は、ケース14および防水カバー20を取り外した状態でドアロック装置10を車室外側から見た側面図である。
図2および
図3では煩雑とならないように一部の要素を省略している。
図2および
図3に示すように、ドアロック装置10は内部に、電気部品として2つのモータ28aおよび28bと、3つのスイッチ30a,30bおよび30cとを有する。モータ28a,28bの回転軸32a,32bにはウォームギア34a,34bが設けられており、図示しないホイールギアと噛合する。ウォームギア34a,34bはホイールギアとの噛み合いの兼ね合い上、軸方向にスライド可能であることが望ましく、回転軸32a,32bに対して固定されていない。
【0019】
モータ28a,28bおよびスイッチ30a,30b,30cはプレート38に固定されている。プレート38はドアロック装置10の電気部品をまとめて固定し、電気的に相互接続している。プレート38はドアロック装置10の内部で天面部から前面部にかけて防水カバー20に沿うように延在しており、その直下に設けられている。プレート38は上方部後端にスイッチ30aを保持し、前方部下端でカプラー18のカプラーピン18aを保持し、カプラーピン18aの近傍ではスイッチ30cを保持している。プレート38は略中央部でスイッチ30bを保持し、スイッチ30bを挟んだ上下位置ではモータ28a,28bが保持されている。プレート38は、前方部下端近傍で斜め後方に突出するバンパー48aと、上方部後端近傍で斜め前方に突出するバンパー48bとを有する。バンパー48a,48bは適度な長さと適度な弾性を有する。カバー16には、バンパー48a,48bの先端部に対向する箇所にリブ49a,49bが立設しており、バンパー48a,48bは弾性的にやや変形しながらリブ49a,49bを押圧している。
【0020】
モータ28a,28bはプレート38に対して左右一対の係合爪40a,40bによって保持されている。モータ28a,28bはさらにケース14から立設する前壁42a,42bおよび後壁44a、44b(
図4参照)によって位置決めされている。回転軸32a,32bはやや斜め下方を指向しているが、ウォームギア34a,34bはケース14から立設している側壁46a,46b(
図4参照)に囲われており、抜け落ちることがない。側壁46aと前壁42a、および側壁46bと前壁42bとは端部同士でつながっている。
【0021】
図4に示すように、プレート38には、電機部品に対する動力線または信号線として作用するターミナルが設けられている。プレート38は
図4で露呈している側を裏面とし、その反対を表面とする。ターミナルは、スイッチ30a,30b,30cに接続される信号線ターミナル50a,50b,50c,52、およびモータ28a,28bに接続される動力線ターミナル54a、54b、56a、56bである。各ターミナルは端部にカプラーピン18aを有する。各ターミナルはプレート38に設けられたプレート溝38aに沿って配置・固定される。信号線ターミナル50aはグランド線である。信号線ターミナル50a,50b,50c,52および動力線ターミナル54a,54bはプレート38の裏面に固定される。動力線ターミナル56a,56bはプレート38の表面に固定される。信号線ターミナル50aと信号線ターミナル52とは非接触で交差している。
【0022】
信号線ターミナル50bは短い。信号線ターミナル50a,50cは長く、互いに近接しながら並行的に延在している。信号線ターミナル52、動力線ターミナル54a,54c,56a,56bはやや長い。動力線ターミナル54a,54cは互いに近接しながら並行的に延在している。
【0023】
ドアロック装置10の組立工程よりも前の段階において、信号線ターミナル50aと信号線ターミナル50bとは連結部58aでつながっている。信号線ターミナル50aと信号線ターミナル50cとは連結部58b,58c,58dでつながっている。このようにして信号線ターミナル50a〜50cはターミナル体50を形成している。動力線ターミナル54aと動力線ターミナル54bとは連結部58e,58fでつながっており、ターミナル体54を形成している。動力線ターミナル56aと動力線ターミナル56bとは連結部58g,58hでつながっており、ターミナル体56を形成している。信号線ターミナル52は単体である。連結部58a〜58hがある程度の長さを確保できるように、ターミナルの一方にはターミナルの他方から離間する方向に凸の湾曲部60が適宜設けられている。湾曲部60は並列するターミナルのいずれの側に設けてもよく、例えば、連結部58b,58cについての湾曲部60は信号線ターミナル50cの側に設けられており、連結部58dについての湾曲部60は信号線ターミナル50aの側に設けられている。ターミナル同士の距離が短い部分に湾曲部60を設けることで、連結部58b、58c、58d、58f、58gに適度な長さが確保されて切断されやすく、離間距離が長くなり、しかも後述するピン64を挿入しやすくなって絶縁性が高まる。
【0024】
プレート38において、連結部58a,58b,58c,58d,58e,58f,58g,58hに対向する箇所には順に孔62a,62b,62c,62d,62e,62f,62g,62hが設けられている。
【0025】
連結部58a〜58hには1か所の切欠61(
図6(a)参照)が設けられている。説明の便宜上、連結部58a〜58hを代表的に連結部58とも呼び、孔62a〜62hを代表的に孔62とも呼ぶ。また、並列する2本のターミナルのうち、切欠61から遠い側を第1ターミナル63aとも呼び、切欠61が設けられている側を第2ターミナル63bとも呼ぶ。ドアロック装置10では、湾曲部60は基本的に第1ターミナル63aに設けられているが、逆であってもよい。
【0026】
切欠61は連結部58の表面側、裏面側のどちらでもよいし、対抗する両面位置に設けてもよいし、幅を狭めたくびれでもよい。これらの形態の切欠61も実質的には1か所と言える。湾曲部60が設けられている箇所の連結部58では、切欠61は湾曲部60から遠い端部、つまり第2ターミナル63bとの接続部で連結部58を横断するように設けられている。孔62(
図6(a)参照)は連結部58のほぼ全長に亘ってその直下に設けられている。孔62において、第1ターミナル63aの縁は連結部58の延在方向に対して直交線状であり、面取68aが形成されている。面取68aの奥の孔壁68bはプレート38の表面に対する直交平面である。後述するように、連結部58は組立工程において切欠61の箇所が切断されて折り曲げられ、各ターミナルは独立的で絶縁された導体となる。つまり、切欠61は切断箇所となる脆弱部ともいえる。
【0027】
図2および
図5に示すように、ケース14にはピン64a,64b,64c,64d,64e,64f,64g,64hが設けられている。このうちいくつかは根本部をリブ65で補強されている。ピン64a〜64hを代表的にピン64とも呼ぶ。ピン64は孔62に挿入される位置および高さになっている。ピン64は円柱形であり、先端が錘状で孔62に挿入されやすい。ピン64は、折曲片66が接触しても変形または折損しない適度な強度を有する。
【0028】
次に、ドアロック装置10におけるプレート38および電気部品の組立工程について説明する。
【0029】
まず、プレート38の裏面を上向きとし(
図4参照)、ターミナル体50,54および信号線ターミナル52はプレート38の裏面(上側)からプレート溝38aに挿入する。ターミナル体50,54および信号線ターミナル52はプレート溝38aに嵌って適度な摩擦により安定する。次に、ターミナル体56をプレート38の表面(下側)からプレート溝38aに挿入する。ターミナル体56はプレート溝38aに嵌って適度な摩擦を受けることから、過大な力や振動を加えなければ落下しない。この時点でプレート38に装着するのはターミナル体50,54,56および信号線ターミナル52の4部品だけであり作業性に優れる。また、ターミナル体50,54,56は過度に小さい部品ではなくて扱いやすく、しかも装着位置が分かりやすい。例えば、信号線ターミナル50aおよび50cは形状がよく似ているが、ターミナル体50として一体になっているので、挿入箇所を間違えることがない。
【0030】
図5(a)に示すように、連結部58a〜58fは孔62の直上位置に配置される。ただし、ターミナル体56における連結部58g,58hは孔62の直下位置に配置される。
【0031】
次に、連結部58a〜58fを押圧具で裏面側から表面側に向かって押圧し、切欠61の箇所で切断させ、
図6(b)に示すように孔62の内方に入り込むように折り曲げ、折曲片66を形成する。これにより、第1ターミナル63aと第2ターミナル63bとは切り離され絶縁される。また、折曲片66は、面取68aに沿って適正曲率で適正方向に折り曲げられ、その一部は孔壁68bに適度な摩擦または押圧力をもって当接し、安定する。これによりターミナルはプレート38に対して適度に強く固定される。折曲片66および湾曲部60の内側縁は、それぞれ第2ターミナル63bにおける切欠61の跡から適度に離間している。なお、連結部58g,58hについても同様に押圧具で裏面側から表面側に向かって押圧して折曲片66を形成するが、連結部58g,58hから形成される折曲片66は孔62に挿入されず、逆向きに立設することになる(
図9参照)。
【0032】
次いで、後述するようにプレート38にモータ28a,28bを取り付けた後に、プレート38をケース14に装着する(
図2参照)。プレート38は裏面がケース14の内面に対向する向きとする。
【0033】
図7および
図8に示すように、各孔62にそれぞれピン64が入り込み、第1ターミナル63aから突出する折曲片66と第2ターミナル63bとの間に介挿される。このような構造では、湾曲部60によって連結部58が適度な長さが確保されており、しかも折曲片66は略90度屈曲しており、該折曲片66と第2ターミナル63bとの距離は十分に広くなっている。しかもこの間には絶縁性のピン64が介挿されることから、両者間の絶縁性は高く、仮にこの部分が被水した場合であっても非導通の状態が確保される。また、折曲片66は、その根元部は切欠61がなく、しかも面取68aによって適切曲率で屈曲していることから機械的強度が強く、耐振性が高い。仮に折曲片66が振動した場合であっても、ピン64が存在することから第2ターミナル63bに接触することはない。したがって、このような構造をもつドアロック装置10は特に車両用に好適である。
【0034】
図7に示す孔62fのように、その開口縁に支持部70を設けることにより孔壁68bをより高く形成して折曲片66を支持するようにしてもよい。支持部70はT字型とすることにより折曲片66の多少の位置ずれが許容され、しかも折り曲げ時に受ける強い力を支持することができる。
【0035】
図9に示すように、動力線ターミナル56a,56bはプレート38の表面に配置されていることから、孔62hの位置では連結部58hは
図9の上方に向かって折り曲げられ、これによって形成される折曲片66は孔62hには挿入されないが、この場合でも該孔62hにピン64hが挿入されることにより、絶縁状態を維持する効果がある。
【0036】
また、孔62gの位置のように連結部58gを中央部で切断し、2つの折曲片66を形成してもよい。この場合でも孔62gにピン64gが挿入されることにより、絶縁状態を維持する効果がある。
【0037】
次に、プレート38をケース14に組み付ける工程について説明する。
【0038】
図10に示すように、プレート38をケース14に組み付けるのに先立って、モータ28a,28bをプレート38に取り付ける。この場合、まずモータ28aの向きを回転軸32aがやや斜め上方を向くように設定しておき、回転軸32aにウォームギア34aを嵌めこむ。回転軸32aはやや斜め上方を向いていることから、ウォームギア34aが受け落ちることはない。そして、この向きを維持したままモータ28aをプレート38における所定の位置に配置し、係合爪40aで係合して保持する。プレート38はモータ28aの向きに合わせてやや傾斜させておく。モータ28b、ウォームギア34bについても同様であるが、
図10ではモータ28bはすでにプレート38に装着した状態を示している。
【0039】
次いで、ケース14をプレート38、モータ28a,28bの向きに合わせてやや傾斜させておき、モータ28a,28bが装着されたプレート38をケース14における所定の位置に装着する。そうすると、ウォームギア34aは側壁46aで囲まれ、ウォームギア34bは側壁46bで囲まれることから、回転軸32a、32bから抜けることはなくなる。この後、
図11に示すように、ケース14を水平状態とし、他の部品の組み付けを行い、さらにその後、カバー16、防水カバー20、防水シール22,24を取り付ける。
【0040】
カバー16が取り付けられると、
図12に示すように、プレート38から突出するバンパー48aの先端部は、カバー16のリブ49aに対して弾性変形しながら当接する。これにより、プレート38のがたつきが防止され、安定する。バンパー48bがリブ49b(
図3参照)に当接するのも同様の効果がある。
【0041】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。