(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206835(P2019-206835A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】バラスト止め
(51)【国際特許分類】
E01B 1/00 20060101AFI20191108BHJP
E01B 19/00 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
E01B1/00
E01B19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-102296(P2018-102296)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】594026251
【氏名又は名称】田中鉄筋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 進
【テーマコード(参考)】
2D056
【Fターム(参考)】
2D056AA03
(57)【要約】
【課題】簡単にバラストを止められるようにするとともに、大雨が降った際などに、水を左右方向に流せるようにしたバラスト止めを提供することを目的とする。
【解決手段】鉄道の線路に設けられるバラストの崩れを防止するバラスト止め1において、L字状に屈強する複数本の主筋2をバラストの大きさよりも小さくなるように密に配置する。一方、当該主筋2に対して直交する横方向に横筋3を設け、その先端部分31を横方向に突出させ、隣接するバラスト止め1の主筋2に当接させて連結部材4で連結させるようにする。また、主筋2の底面部分6の先端部分21についても突出させ、バラストの隙間に差し込めるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の線路に設けられるバラストの崩れを防止するバラスト止めにおいて、
L字状に屈強する複数本の主筋と、
当該主筋に対して直交する方向に設けられる横筋と、
を備えてなることを特徴とするバラスト止め。
【請求項2】
前記主筋がバラストの大きさよりも小さい隙間幅で設けられるものであり、
横筋が、主筋よりも少ない本数で設けられるものである請求項1に記載のバラスト止め。
【請求項3】
前記横筋のうち片側の横筋を、最側方の主筋よりも横方向に突出させた請求項1に記載のバラスト止め。
【請求項4】
前記主筋の下側端部を、横筋よりも突出させるようにした請求項1に記載のバラスト止め。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の線路内に設けられたバラストを止めるためのバラスト止めに関するものであり、より詳しくは、設置や運搬を楽に行うようにするとともに、排水なども容易に行えるようにしたバラスト止めに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道の線路や軌道には、バラストが敷かれている。このようなバラストは、列車からかかる荷重を広く分散させて路盤に伝えるとともに、枕木の移動防止や、騒音の防止、振動エネルギーの吸収、雨水の排水などの役割などを果たしている。
【0003】
ところで、このようなバラストには、左右方向への崩れを防止するためにコンクリートによるブロックが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−162972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなコンクリートによるブロックは、重機を用いて設置しなければならずコストや時間がかかってしまう。このため、例えば、バラストの交換を行う場合、列車が停止している数時間の間にブロックの設置やバラストの交換などを行わなければならず、短期間の間に長い距離のバラスト交換を行うことができなかった。また、このようなコンクリート製のブロックでは、左右方向への水の流れが遮断されてしまうため、大雨が降った場合に水の逃げ場がなくなり、路盤が緩くなってしまうといった問題もある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、簡単にバラストを止められるようにするとともに、大雨が降った際などに、水を左右方向に流せるようにしたバラスト止めを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、鉄道の線路に設けられるバラストの崩れを防止するバラスト止めにおいて、L字状に屈強する複数本の主筋と、当該主筋に対して直交する横方向に設けられる横筋とを備えるようにしたものである。
【0008】
このように構成すれば、バラストよりも小さく主筋や横筋を組むことで、非常に軽いバラスト止めを構成することができるとともに、主筋や横筋の間から排水できるようになるため、線路内に水が溜まることを防止できるようになる。
【0009】
また、このような発明において、前記主筋をバラストの大きさよりも小さい隙間幅で設け、また、横筋を、主筋よりも少ない本数で設けるようにする。
【0010】
このようにすれば、主筋でバラストの抜けとバラストによる押圧力に耐えるようにすることができるとともに、横筋を少なくすることで、全体重量を軽くして、コストも低減させることができる。
【0011】
さらに、前記横筋のうち片側の横筋を、最側方の主筋よりも横方向に突出させるようにする。
【0012】
このように構成すれば、左右方向にバラスト止めを連結させる際、突出する横筋を隣接するバラスト止めの主筋に当接させることができ、縦側の壁面を揃えた状態でバラスト止めを連結していくことができるようになる。
【0013】
また、前記主筋の下側端部を、横筋よりも突出させるようにする。
【0014】
このように構成すれば、バラストが積まれた状態でバラスト止めを奥方(線路側)に押し込む際、突出する主筋の先端側をバラストの隙間に差し込んでバラストを逃がしながら押し込んでいくことができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄道の線路に設けられるバラストの崩れを防止するバラスト止めにおいて、L字状に屈強する複数本の主筋と、当該主筋に対して直交する方向に設けられる横筋とを備えるようにしたので、バラストよりも小さく主筋や横筋を組むことで、非常に軽いバラスト止めを構成することができるとともに、主筋や横筋の間から排水できるようになるため、線路内に水が溜まることを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態を示すバラスト止めの外観斜視図
【
図5】同形態におけるバラスト止めを設置する状態図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るバラスト止め1の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。この実施の形態におけるバラスト止め1は、
図1に示すように、L字状に屈曲する複数本の主筋2と、当該主筋2に対して直交する方向に設けられる横筋3とを備えるようにしたもので、これによって、バラストの押圧力に耐えられるようにするとともに、バラストの抜けを防止し、また、鉄筋の隙間から雨水などを逃がして線路内に水が溜まることを防止できるようにしたものである。以下、本実施の形態におけるバラスト止め1の構成について詳細に説明する。
【0018】
まず、このバラスト止め1を構成する主筋2は、直径約6mm〜8mm程度の鉄筋で構成されるものであって、高さ寸法が400mm、水平方向寸法が400mm程度のL字状に屈曲して設けられる。そして、この主筋2によってバラストの押圧力に耐えられるようにするとともに、バラストの抜けを防止するために、可能な限り主筋2を密に配置して有効隙間幅をバラストよりも小さな20mm〜27mmとしている。なお、このように主筋2を用いる場合、例えば、直径8mm程度の太い主筋2のみで構成してもよいが、このようにすると重量が重くなってしまうとともに、コストも高くなってしまう。このため、この実施の形態では、
図2に示すように、連続して太い径の主筋2を設けて、バラストの圧力に耐えられるようにするとともに、その太い径の主筋2に隣接して細い径の主筋2を配置することで、バラストの抜けを防止できるようにしている。なお、ここでは、2本の太い主筋2と、2本の細い主筋2を交互に設けるようにしたが、太い主筋2を一定間隔おきに設け、その間に細い主筋2を設けるようにしてもよい。このような主筋2の配列幅は、横方向に800mm〜1200mmに配列され、これによって作業者が手で運搬できるようにしている。
【0019】
一方、横筋3は、左右方向に設けられるものであって、屈曲する主筋2の外側に溶接して設けられる。この横筋3は、主筋2の隙間間隔を維持する役割を担うものであって、ここでは、主筋2と同じ直径6mm〜8mm程度の鉄筋で構成されている。この横筋3を溶接する場合、屈曲した主筋2の内側に溶接することもできるが、このようにすると主筋2の屈曲する内側に設けられたバラストが直接横筋3に当たってしまい、その荷重によって横筋3の溶接が外れてしまう可能性がある。このため、横筋3を主筋2の外側に溶接するようにしている。
【0020】
このような横筋3を設ける場合、横筋3の間隔を密にしてバラストの抜けを防止できるようにしてもよいが、本実施の形態では、主筋2だけでバラストの抜けを防止できるようにしているため、横筋3の本数を少なくして、製造作業の簡素化とコストの低減を図れるようにしている。具体的には、この横筋3は、主筋2の有効隙間幅25mm(芯と芯の間は31〜32mm)に対して、123mm〜125mm程度の有効隙間幅となるように配置している。また、このような横筋3を溶接する際、片方の端部については、
図1に示すように、主筋2と一致するように溶接するとともに、他端側については、主筋2から25〜30mm程度突出させるようにしておく。これにより、隣接するバラスト止め1を連結する場合に、突出する横筋3を隣接するバラスト止め1の主筋2に当接させ、縦方向の壁面を揃えることができるようになる。一方、バラスト止め1の底面部分6の横筋3については、主筋2の先端よりも内側に溶接しておき、これによって、主筋2の先端部分21を突出させるようにしておく。この場合、横筋3を主筋2の先端部分21に一致させるように溶接させてもよいが、このようにすると、バラスト止め1を奥方向に押圧する際、直線状の横筋3をバラストに押圧することになるため、バラスト止め1を奥方に押し込むことができなくなる。これに対して、主筋2の先端部分21を突出させておくと、その先端部分21をバラストの隙間に入り込ませることができ、バラストを逃がしながらバラスト止め1を押し込んでいくことができるようになる。そして、押し込み寸法を調整しながら、左右のバラスト止め1の位置を揃えて連結していくようにする。
【0021】
このように設けられたバラスト止め1は、連結部材4を用いて左右方向に連結される。この連結部材4は、
図4に示すように、コの字状に設けられるものであって、この内側に主筋2を収容して左右方向のずれを防止し、プレート41やフランジナット42で固定できるようになっている。
【0022】
次に、このように構成されたバラスト止め1を使用する場合の方法について説明する。
【0023】
バラスト止め1を使用する場合、
図5に示すように、複数段にわたってバラスト止め1を配置する。まず、最下段のバラスト止め1を設置する場合は、路盤の上にバラスト止め1を横方向に配置していく。このようにバラスト止め1を配置する際、横筋3の先端部分31を、隣接するバラスト止め1の主筋2に当接するように配置し、その状態で連結部材4を用いて隣接するバラスト止め1の主筋2と主筋2を連結していく。このとき、バラスト止め1が倒れないように、数個のバラストを底面部分6に載せておくとよい。そして、このようにバラスト止め1を連結した後、バラストを積み上げていく。このとき、L字状に屈曲したバラスト止め1の底面部分6にバラストが載るため、その荷重によって縦側壁面5が固定され、バラストの崩れを防止することができるようになる。
【0024】
そして、このようにバラストが積み上げられた状態で、さらに、その上にバラスト止め1を設置していく。
【0025】
このように積み上げられたバラストの上にバラスト止め1を設置する場合、バラストの凹凸によってバラスト止め1がずれてしまうことになるが、横方向に突出する横筋3を隣接するバラスト止め1の主筋2に押し当てるように当接させるとともに、奥方にバラスト止め1を押圧することで、縦側壁面5を揃えることができる。この奥方にバラスト止め1を押圧する際には、主筋2の先端部分21によってバラストの隙間を通し、バラストを逃がしながらバラスト止め1を奥方に押し込んでいく。そして、このようにバラスト止め1の縦側壁面5を揃えた状態で、連結部材4を主筋2に取り付け、プレート41やフランジナット42で固定していく。そして、さらに、その上にバラストを積み上げていくようにする。
【0026】
このように上記実施の形態によれば、鉄道の線路に設けられるバラストの崩れを防止するバラスト止め1において、L字状に屈強する複数本の主筋2と、当該主筋2に対して直交する横方向に設けられる横筋3とを備えるようにしたので、バラストよりも小さく主筋2や横筋3を組むことで、非常に軽いバラスト止め1を構成することができるとともに、主筋2や横筋3の間から排水できるようになるため、線路内に水が溜まることを防止できるようになる。
【0027】
また、前記主筋2をバラストの大きさよりも小さい隙間幅で設け、また、横筋3を、主筋2よりも少ない本数で設けるようにしたので、主筋2でバラストの抜けとバラストによる押圧力に耐えるようにすることができるとともに、横筋3を少なくすることで、全体重量を軽くして、コストも低減させることができる。
【0028】
さらに、前記横筋3のうち片側の横筋3の先端部分31を、最側方の主筋2よりも横方向に突出させるようにしたので、左右方向にバラスト止め1を連結させる際、突出する横筋3を隣接するバラスト止め1の主筋2に当接させることができ、縦側の壁面を揃えた状態でバラスト止め1を連結していくことができるようになる。
【0029】
また、前記主筋2の下側端部を、横筋3よりも突出させるようにしたので、バラストが積まれた状態でバラスト止め1を奥方(線路側)に押し込む際、突出する主筋2の先端側をバラストの隙間に差し込んでバラストを逃がしながら押し込んでいくことができるようになる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、主筋2の間隔を密にしてバラストの抜けを防止するようにしたが、メッシュ状のエキスパンドメタルを用いてバラストの抜けを防止したり、あるいは、横筋3の間隔を密にしてバラストの抜けを防止できるようにしてもよい。
【0031】
また、上記実施の形態では、主筋2によってバラストの横方向の押圧力に耐えられるようにしたが、縦側壁面5に設けられた横筋3と、底面部分6に設けられた横筋3との間に、対角状の補助金を取り付けて横方向の押圧力に耐えられるようにしてもよい。
【0032】
さらに、上記実施の形態では、片側にのみ突出する横筋3を設けるようにしたが、両方に突出するように横筋3を設けるようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、連結部材4によってバラスト止め1を連結させるようにしたが、横方向に突出する横筋3をフック状に屈曲させておき、そのフック部分を隣接するバラスト止め1の主筋2や横筋3のフック部分などに連結させていくようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・バラスト止め
2・・・主筋
21・・・突出部分
3・・・横筋
31・・・突出部分
4・・・連結部材
41・・・プレート
42・・・フランジナット
5・・・縦側壁面
6・・・底面部分