【解決手段】保護部材10は、筒状の胴体部51の端部に第2の鏡板部52Bが連接された繊維強化プラスチック容器である水素タンク50の第2の鏡板部52Bに固定される。保護部材10は、緩衝性を有し水素タンク50の第2の鏡板部52Bに接する内側発泡層11に、耐火性を有する外側発泡層12が外側から積層されてなり、内側発泡層11と外側発泡層12のアスカーC硬度の平均が75度以上である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の保護部材に対して、さらなる衝撃吸収性の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、筒状の胴体部の端部に鏡板部が連接された繊維強化プラスチック容器の該鏡板部に固定される保護部材であって、緩衝性を有し前記鏡板部に接する内側発泡層に、耐火性を有する外側発泡層が外側から積層されてなり、前記内側発泡層と前記外側発泡層のアスカーC硬度の平均が75度以上であることを特徴とする保護部材である。
【0006】
請求項2の発明は、前記内側発泡層のアスカーC硬度は、前記外側発泡層のアスカーC硬度以下となっている請求項1に記載の保護部材である。
【0007】
請求項3の発明は、前記外側発泡層は、見掛け密度0.4〜0.7g/cm
3において、0.1〜0.35g/cm
3の膨張黒鉛を含む請求項1又は2に記載の保護部材である。
【0008】
請求項4の発明は、環状をなして、前記鏡板部に対応する形状の内周面を有し、その中心軸に対して45度傾斜する傾斜方向で前記内周面が前記鏡板部に接し、前記傾斜方向において、50mm/minで40kNまで圧縮したときの荷重たわみが、90%以下であり、前記傾斜方向において、速度5m/secで質量21.05kgの衝突体を衝突させたときの最大荷重が、40kN以下である請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の保護部材である。
【0009】
請求項5の発明は、前記内側発泡層と前記外側発泡層は、ポリウレタン発泡成形体からなり、3官能で数平均分子量が4000〜8000であるポリオールに由来する構造単位と、4官能で数平均分子量が250〜1200である架橋剤に由来する構造単位と、2官能で分子量が60〜150であるジオールに由来する構造単位と、ポリイソシアネートに由来する構造単位と、を含む請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の保護部材である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の保護部材の製造方法であって、3官能で数平均分子量が4000〜8000であるポリオールと、4官能で数平均分子量が250〜1200である架橋剤と、2官能で分子量が60〜150であるジオールからなる鎖延長剤と、を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を成形金型内で反応させて、ポリウレタン発泡体を成形することにより、前記内側発泡層と前記外側発泡層を形成する保護部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の保護部材によれば、衝撃吸収性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
なお、内側発泡層のアスカーC硬度は、外側発泡層のアスカーC硬度以下となっていることが好ましい(請求項2の発明)。
【0013】
また、外側発泡層は、見掛け密度0.4〜0.7g/cm
3において、0.1〜0.35g/cm
3の膨張黒鉛を含むことが好ましい(請求項3の発明)。このような外側発泡層によれば、耐火性の向上が図られる。
【0014】
保護部材は、環状をなして、その中心軸に対して45度傾斜する傾斜方向で鏡板部に接する場合、その傾斜方向において、50mm/minで40kNまで圧縮したときの荷重たわみが、90%以下であることが好ましい。また、保護部材は、前記傾斜方向において、速度5m/secで質量21.05kgの衝突体を衝突させたときの最大荷重が40kN以下であることが好ましい(請求項4の発明)。この構成によれば、繊維強化プラスチック容器が傾いて落下した場合の衝撃吸収性の向上が図られる。
【0015】
請求項1〜4の保護部材は、3官能で数平均分子量が4000〜8000であるポリオールと、4官能で数平均分子量が250〜1200である架橋剤と、2官能で分子量が60〜150であるジオールからなる鎖延長剤と、を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を成形金型内で反応させて、ポリウレタン発泡体を成形することにより、内側発泡層と外側発泡層を容易に形成することができる(請求項6の発明)。この場合、保護部材には、上記のポリオール、架橋剤、ジオール、ポリイソシアネートに由来する構造単位が含まれることとなる(請求項5の発明)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る保護部材10は、燃料電池車の水素タンク50に用いられる。水素タンク50は、円筒状の胴体部51の両端に、半球状に膨出する第1と第2の鏡板部52A,52Bがそれぞれ連接されてなり、第1の鏡板部52Aには、水素を流出入させるためのバルブ56が取り付けられている。そして、保護部材10は、バルブ56とは反対側の第2の鏡板部52Bの外面に接着固定される。
【0018】
水素タンク50は、繊維強化プラスチック容器であり、具体的には、水素が充填される容器状のプラスチックライナー53を外側から補強層54で覆った構成となっている。補強層54は、例えば、炭素繊維強化プラスチックから構成され、フィラメントワインディング法により形成される。このため、
図1に示されるように、各鏡板部52A,52Bには、補強層54が最も薄肉となった環状の薄肉部52Tが形成される。保護部材10は、薄肉部52Tを覆うように固定されて、薄肉部52Tを外側からの衝撃や熱から保護する。
【0019】
図2に示されるように、保護部材10は、円環状となっている。詳細には、保護部材10は、深皿の底部に貫通孔が形成された形状となっていて、保護部材10の内面10Mは、水素タンク50の第2の鏡板部52B(
図1参照)の外面に対応する形状の凹面となっている。保護層10の内面10Mは水素タンク50の第2の鏡板部52Bの外面と接着剤により固定される。
【0020】
本実施形態では、保護部材10のうち外側を向く面には、円筒状の外周面10Gと、外周面10Gの軸方向に略直交する底面10Bと、外周面10Gと底面10Bを連絡し、底面10B側に向かうにつれて縮径される勾配面10Tと、が設けられている。勾配面10Tと中心軸Jとの間の角度は、略45度となっている。
【0021】
図1に示されるように、保護部材10は、第2の鏡板部52Bに固定されると、保護部材10の中心軸Jが、水素タンク50と同軸になるように配置され、保護部材10の内面10Mは、上記傾斜方向H(勾配面10Tと略直交する方向)で、第2の鏡板部52Bに接する。
【0022】
なお、水素タンク50のうちバルブ56側に配置される第1の鏡板部52Aには、第1の鏡板部52Aの薄肉部52Tを覆うように保護部材10と同様な形状の別の保護部材19が固定される。
【0023】
保護部材10は、発泡成形体からなり、水素タンク50の第2の鏡板部52Bと接する内側発泡層11と内側発泡層11に外側から積層される外側発泡層12とから構成される(
図1参照)。内側発泡層11と外側発泡層12は、緩衝性を有していて、外側発泡層12は、耐火性も有している。なお、本実施形態では、外側発泡層12のうち水素タンク50の第2の鏡板部52B側を向く内側面に、保護部材10の中心軸Jを中心とする円環状凹部12Uが形成され、保護部材10は、円環状凹部12Uに内側発泡層11が埋まった構造となっている。保護部材10を構成する発泡性成形体としては、ポリウレタン樹脂からなるものが好ましい。
【0024】
ここで、内側発泡層11の硬度は、外側発泡層12の硬度以下となっている。このような保護部材10によれば、衝撃吸収性の向上を図ることが可能となる。また、内側発泡層11と外側発泡層12のアスカーC硬度(JIS K7312に準拠。)の平均は、衝撃吸収性能の観点から、75%以上であることが好ましい。
【0025】
図1に示されるように、保護部材10は、中心軸J方向に対して45度傾斜する傾斜方向Hで第2の鏡板部52Bの薄肉部52Tに重なる。従って、水素タンク50が、運搬中等に斜めに傾いて落下した場合、保護部材10が地面に衝突し、水素タンク50の下敷きになることとなる。そのため、衝撃吸収性の観点から、保護部材10は、傾斜方向Hにおいて50mm/minで40kNまで圧縮したときの荷重たわみが、93%以下であることが好ましく、90%以下であることがさらに好ましい。また、同様に衝撃吸収性の観点から、保護部材10は、傾斜方向Hにおいて速度5m/secで質量21.05kgの衝突体を衝突させたときの最大荷重が40kN以下であることが好ましい。これらの構成によれば、水素タンク等の繊維強化プラスチック容器が傾いて落下した場合の衝撃吸収性の向上が図られる。なお、保護部材の荷重たわみが93%以下である場合には、水素タンク50が傷つき易くなるおそれがある。保護部材の最大荷重が40kN以下である場合にも、水素タンク50が傷つき易くなるおそれがある。また、後述の実施例で説明するように、保護部材10の荷重たわみと最大荷重の観点から、保護部材10の密度を、0.20g/cm
3以上とすることが好ましい。また、保護部材10の密度は、保護部材の重量と材料費の観点から、0.35g/cm
3以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、外側発泡層12は、難燃剤を含有している。難燃剤としては、赤燐、リン酸塩、リン酸エステル、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、膨張黒鉛をそれぞれ単独あるいは複合して用いることができる。本実施形態では、外側発泡層12には、膨張黒鉛が含まれている。膨張黒鉛は、耐火性向上の観点から、外側発泡層12の見掛け密度が0.4〜0.7g/cm
3において、0.10〜0.35g/cm
3含まれていることが好ましく、0.15〜0.25g/cm
3含まれていることがさらに好ましい。
【0027】
なお、本実施形態では、水素タンク50のうちバルブ56側の第1の鏡板部52Aに固定される上述の別の保護部材19は、膨張黒鉛を含んでおらず、例えば、内側発泡層11と同様の材質で構成される。別の保護部材19に膨張黒鉛を含めていないのは、水素タンク50の温度が上昇した場合に、別の保護部材19が膨張してバルブ56の開閉を妨げることを防ぐためである。
【0028】
内側発泡層11をポリウレタン樹脂の発泡体で構成する場合、下記の原料を用いることができる。ポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオールもポリエステルポリオールも用いることができるが、ポリエステルポリオールは加水分解をするため経年劣化のことを考えればポリエーテル系のほうが望ましい。さらに、ポリオールとしてポリビニルフィラーを懸濁したポリマーポリオールを添加することで、保護部材10の硬度を高くすることが可能となる。また、ポリイソシアネートとしては、汎用なものを用いることができるが、強度、硬度の観点から、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が望ましい。さらに、衝撃吸収性能の観点から硬度を必要とするため、分子量の低い水酸基価が高いポリオール(鎖延長剤)と水酸基が低く官能基数の高い架橋剤を加えることが好ましい。鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等を用いることができる。架橋剤としては、エチレンジアミン、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の活性水素含有化合物を出発物質として、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものを用いることができる。このように、分子量の低い水酸基価が高いポリオールである鎖延長剤と、水酸基が低く官能基数の高い架橋剤を併用することで、発泡体の硬度を上げることが可能となる。その他、ポリウレタン発泡体の原料に含まれる整泡剤、触媒としても汎用なものを用いることができる。
【0029】
外側発泡層12をポリウレタン樹脂の発泡体で構成する場合、上述の内側発泡層11の原料と同様の原料を用いることができる。また、原料のポリイソシアネートは、ウレタン変性することで、耐熱性を高くすることが可能となり、特に、ウレタン変性メチレンジフェニルジイソシアネート(ウレタン変性MDI)とすることで、耐熱性をより高くすることが可能となる。
【0030】
ポリウレタン樹脂の発泡体からなる保護部材10は、例えば、以下のようにして製造される。まず、ポリエーテルポリオールやポリマーポリオールと、鎖延長剤、架橋剤、整泡材、発泡剤、泡化触媒、樹脂化触媒等を撹拌したものを内側発泡層11用のA液として用意する。そして、そのA液と、ポリイソシアネートからなる内側発泡層11用のB液とを撹拌して、内側発泡層用の成形金型に注入する。そして、この成形金型内で原料を発泡硬化させることで、内側発泡層11を発泡成形する。また、上記内側発泡層11用のA液及びB液と同様にして、外側発泡層12用のA液及びB液も用意する。その際、外側発泡層12用のA液には、難燃剤(例えば、膨張黒鉛)を混合しておく。そして、内側発泡層11が内面にセットされた外側発泡層用の成形金型に、外側発泡層12用のA液とB液を混合撹拌した原料を注入して発泡硬化させることで、内側発泡層11の外側に積層された外側発泡層12を形成する。そして、それら内側発泡層11及び外側発泡層12が発泡成形から外されて、保護部材10が得られる。
【0031】
本実施形態の保護部材10は、3官能で数平均分子量が4000〜8000であるポリオールと、4官能で数平均分子量が250〜1200である架橋剤と、2官能で分子量が60〜150であるジオールからなる鎖延長剤と、を含むポリオール成分(A液)と、ポリイソシアネート成分(B液)と、を成形金型内で反応させて、ポリウレタン発泡体を成形することにより、内側発泡層11と外側発泡層12を容易に形成することができる。この場合、保護部材10には、上記のポリオール、架橋剤、ジオール、ポリイソシアネートに由来する構造単位が含まれることとなる。
【0032】
なお、原料配合の際に、イソシアネートインデックスを100より大きくする(所謂、イソシアネートリッチにする)ことで、ウレタン結合に加えて、アロファネート結合、ビウレット結合といった副次的な結合を生じさせることができ、ポリウレタン発泡体の架橋度を上げて、内側発泡層11又は外側発泡層12の硬度を上げることが可能となる。なお、イソシアネートインデックスとは、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数を、ポリオール、架橋剤、鎖延長剤、発泡剤(水)等の全活性水素基のモル数で除した値に100をかけた値である。
【0033】
[確認実験]
図6〜8に示される実験例1〜15の保護部材を上述の製造方法で製造し、それら保護部材に対して、衝撃吸収性、耐火性を確認した。衝撃吸収性の評価として、本確認実験では、保護部材の荷重たわみと最大荷重の評価を行った。
【0034】
[実験例1〜5の保護部材]
図6に示される実験例1〜5では、保護部材として単層構造のもの(内側発泡層11と外側発泡層12を同じ配合の原料で一体に発泡成形したもの)を製造し、荷重たわみと最大荷重を測定した。実験例1〜5の保護部材の発泡原料としてのA液及びB液の組成及び配合比は、
図6及び以下の通りである。各実験例では、A液とB液とをイソシアネートインデックスが110となるように混合した。なお、実験例1〜3は、配合比は同じであるが、保護部材の見掛け密度がそれぞれ0.25、0.30、0.20と異なっている。このように見掛け密度が異なる保護部材は、成形金型内へ注入する反応混合液の注入量を変更することで形成することができる。すなわち、同じ成形金型であっても、同じイソシアネートインデクスの反応混合液を所定量より多量に注入することで高密度の保護部材が得られる。また、実験例4の配合は、実験例1〜3の配合に対して、発泡剤(水)の配合量のみが異なる。実験例5の配合は、実験例1〜3の配合に対して、ポリエーテルポリオールA、ポリマーポリオールB、鎖延長剤、架橋剤の配合が異なり、架橋剤が含まれていない。
【0035】
<A液>
ポリエーテルポリオールA;三洋化成工業株式会社製の「商品名ポリオール38」(官能基数が3、数平均分子量が5000、水酸基価が33mgKOH/g)
ポリマーポリオールB;三洋化成工業株式会社製の「商品名サンニックス(登録商標)FA−728R」(官能基数が3、数平均分子量が6000、水酸基価が28mgKOH/g)
鎖延長剤;エチレングリコール(官能基数が2、数平均分子量が62.07g/mol)
架橋剤;エチレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加して得た架橋剤;ADEKA株式会社製の「商品名EDP−450」(官能基数が4、水酸基価が505mgKOH/g、数平均分子量が444.35g/mol)。
泡化触媒;エボニック株式会社製の「商品名 DABCO(登録商標)NE300」
樹脂化触媒;東ソー株式会社製の「商品名TOYOCAT(登録商標)−NCT」
整泡剤;エボニック株式会社製の「商品名 B8738LF2」
発泡剤;水
<B液>
ポリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI、イソシアネート基含有率(NCO%)が27.5%)
【0036】
[実験例6〜11の保護部材]
図7に示される実験例6〜11では、保護部材として単層構造のものを製造し、荷重たわみと最大荷重を測定した。実験例6〜11の保護部材の発泡原料としてのA液及びB液の組成及び配合比は、
図7及び以下の通りである。各実験例では、A液とB液とをイソシアネートインデックスが103となるように混合した。実験例6〜11では、膨張黒鉛以外の配合は同じになっているが、ポリウレタン発泡体の総重量に対する膨張黒鉛量(wt%)と、見掛け密度(g/cm
3)と、の積である単位体積当たりの膨張黒鉛量は、0.067〜0.228g/cm
3の範囲で互いに異なっている。なお、見掛け発泡密度は、実験例1〜3と同様に、成形金型内へ注入する反応混合液の注入量を変更することで調整することができる。
【0037】
<A液>
ポリエーテルポリオールA;三洋化成工業株式会社製の「商品名ポリオール38」(官能基数が3、数平均分子量が5000、水酸基価が33mgKOH/g)
鎖延長剤;エチレングリコール(官能基数が2、数平均分子量が62.07g/mol)
樹脂化触媒A;エボニック株式会社製の「商品名DABCO(登録商標) 33LSI」
樹脂化触媒B;サンアプロ株式会社社製の「商品名SA−102」
整泡剤;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「商品名L−3184J」
発泡剤;水
膨張性黒鉛;Shijazhuang ADT Carbonic Material Factory社製のSYZR502FP。なお、
図7における膨張黒鉛量(wt%)は、出来上がったポリウレタン発泡体の総重量に対する膨張性黒鉛の重量である。
<B液>
ポリイソシアネート;ウレタン変性のMDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)(イソシアネート基含有率が23%)
【0038】
[実験例12〜15の保護部材]
図8に示される実験例12〜15では、保護部材10として内側発泡層11と外側発泡層12とからなる2層構造のものを製造し、荷重たわみと最大荷重を測定した。実験例12〜15では、内側発泡層として実験例1と実験例3の配合の2種類、外側発泡層として実験例9の配合と見掛け密度を調整した実験例7の配合の2種類を組み合わせた。具体的には、実験例12では、内側発泡層は実験例1と同じ配合、外側発泡層は実験例9と同じ配合である。実験例13では、内側発泡層は実験例3と同じ配合、外側発泡層は実験例9と同じ配合である。実験例14では、内側発泡層は実験例1と同じ配合、外側発泡層の配合は金型への注入量を変量して見掛け密度を変量した実験例7の配合である。実験例15では、内側発泡層は実験例3と同じ配合、外側発泡層の配合は金型への注入量を変量して見掛け密度を変量した実験例7の配合である。なお、実験例12〜15の保護部材が上記実施形態の保護部材10に相当する。
【0039】
[評価方法]
<荷重たわみ試験>
75℃に加熱した成形金型で4分間発泡成形して保護部材(外径が300mm、軸方向の長さが80mm)を得る。そして、その保護部材を、周方向で1/4サイズにカットすることにより、カットサンプル80を作製する。そして、
図3に示されるように、このカットサンプル80を水素タンクの鏡板部の形状を模した受け治具81に、勾配面10Tを上側に向けて載置する。このとき、保護部材は、中心軸Jに対して45度に傾斜して交差する傾斜方向H(
図1参照)が上下方向となるように配置される。そして、平坦な下面を有する円盤状の治具82によって速度50mm/minでカットサンプル80を40kNまで下方に圧縮した。このとき荷重−たわみ曲線(いわゆるLoad−Deflection Curve)におけるたわみ量と圧縮前の厚みとの比を100分率で表したものをたわみ(%)とした。なお、カットサンプル80のうち傾斜方向Hで勾配面10Tと重なる部分では、圧縮前において、カットサンプル80全体の厚みが28mmとなっていると共に、内側発泡層11の厚みは20mm、外側発泡層12の厚みは8mmとなっている。
【0040】
荷重たわみの測定結果が、90%以下の場合を〇、90%より大きく93%以下の場合を△、93%より大きい場合を、×と評価した。
【0041】
<最大荷重試験>
図4(A)に示される伊藤精機株式会社製、水平射出装置付き衝撃試験機70を用いて行った。上記衝撃試験機70は、上記荷重−たわみ試験と同様のカットサンプル80を水素タンクの鏡板部の形状を模したサンプル支持部71にあてがい固定し、サンプル支持部71の側面に対向する平板状の衝突体72を、固定されたカットサンプル80に衝突させる衝突装置73と、を有する。
図4(B)に示されるように、カットサンプル80は、上述の傾斜方向Hが、サンプル支持部71と衝突体72の対向方向となるように配置されると共に、カットサンプル80の勾配面10Tが衝突体72側を向くように配置される。そして、水平衝撃試験機70により、21.05kgの衝突体72を、衝突速度5m/sec(即ち、衝突エネルギー263J)でカットサンプル80に衝突させ、その衝突時の変位加速度より最大荷重を求めた。なお、衝突装置73は、例えば、流体シリンダにより衝突体72を上述の対向方向に直動する。
【0042】
最大荷重の測定結果が、40kN以下の場合を〇、40kNより大きい場合を×と評価した。
【0043】
<耐火試験>
150mm×150mm×8mm(厚み)のテストピースサンプル60を用いる。このテストピースサンプル60は、成形金型内で、発泡原料を75℃で8分間発泡硬化させることで形成される。なお、例えば、テストピースサンプル60の厚み(8mm)は、保護部材10のうち外側発泡層12において最も薄肉となった部分の厚みに決定すればよく、上記実施形態では、前記最も薄肉となった部分は、8mmとなっている。
【0044】
図5に示されるように、厚み方向を上下方向に配置したテストピースサンプル60に対して、「経済産業省 容器保安規則の機能性基準の運用について(2013409商局第4号)」の第14条に準じ、下方に100mm離れた位置から着火装置61によりテストピースサンプル60に20分間、炎を当て続けて、テストピースサンプル60の上面の温度を測定した。この際、テストピースサンプル60の下方25mmの位置において熱電対による測定が600℃以上となるように炎が当てられる。そして、表面温度の測定結果が、250℃以下であれば〇、250℃より高い場合又はテストピースサンプル60を炎が貫通した場合は×、と評価した。
【0045】
また、UL94の規定に準拠した燃焼試験も行った。試験結果がV−0を〇、V−1又はV−2を×、と評価した。
【0046】
[評価結果]
各実験例について、
図6〜8に記載された測定項目で、評価が×となったものがあった場合には、総合判定を×とし、評価が全て〇である場合には、総合判定を〇とし、それ以外の場合には、総合判定を△とした。
【0047】
図6に示されるように、実験例1〜4の比較から、見掛け密度が大きくなると、荷重たわみが小さくなると共に最大荷重も小さくなることがわかる。実験例1〜3の配合では、0.2g/cm
3以上であれば、荷重たわみが93%以下となると共に、最大荷重が40kN以下となり、総合判定が〇又は△となった。実験例4では、見掛け密度を0.15g/cm
3とするため発泡剤としての水を実験例1〜3までの水の量より多く1.5重量部とし、それ以外の配合を実験例1〜3と同じとしたが、荷重たわみが95%、最大荷重が40.8kNとなり、総合判定が×となった。また、実験例5の配合も、鎖延長剤の量を10〜5重量部に減量、架橋剤の量をなくしたところ荷重たわみと最大荷重において、総合判定が×となった。以上より、実験例1〜3の配合による保護部材によれば、衝撃吸収性の向上を図ることが可能であることが確認された。
【0048】
図7に示される実験例6〜11の結果から、単位体積当たりの膨張黒鉛量が、0.1g/cm
3以上であると、テストピースサンプル60が炎で貫通せずに、着火20分後の表面温度が250℃以下(評価〇)となることが確認された。また、同様に単位体積当たりの膨張黒鉛量が0.1g/cm
3以上であると、UL94の燃焼試験の評価においても、V−0(評価〇)となることが確認された。また、実験例6〜11では、荷重たわみが90%以下(評価〇)であると共に、最大荷重が40kN以下(評価〇)であり、実験例6〜9では総合判定が〇となった。以上により、実験例6〜11の原料配合で製造した単層構造の保護部材によっても、衝撃吸収性を向上させることが可能となることが確認できた。
【0049】
実験例12〜15の比較から、内側発泡層11と外側発泡層12のアスカーC硬度の平均(以下、「平均硬度」という。)が大きくなるほど、荷重たわみ及び最大荷重が小さくなることがわかり、衝撃吸収性の向上が図ることができることが確認された。特に、実験例12〜14のように、平均硬度が、75以上であると、荷重たわみ及び最大荷重の評価が共に〇(総合判定〇)となることがわかる。
【0050】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、保護部材10が互いに異なる配合からなる内側発泡層11と外側発泡層12とで構成される層構造であったが、単一の配合からなる単層構造であってもよい。この場合、例えば、実験例6〜11の保護部材のように、保護部材10に膨張黒鉛が含まれることが好ましい。
【0051】
(2)上記実施形態において、内側発泡層11に膨張黒鉛が含まれていてもよい。