【解決手段】本開示の一態様に係る電池は、電極層110、電極層110に対向する対極層120、及び電極層110と対極層120との間に配置される固体電解質層130を含む単電池と、電極層110に接する電極集電体210と、対極層120に接する対極集電体220と、電極集電体210と対極集電体220との間に配置される封止部材310と、を備える。単電池は、電極集電体210と対極集電体220との間に配置される。封止部材310は、固体電解質層130に向かって突出する少なくとも1つの突出部分350を含み、少なくとも1つの突出部分350の少なくとも一部は、固体電解質層130に接する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の概要)
本開示の一態様における電池は、電極層、前記電極層に対向する対極層、及び前記電極層と前記対極層との間に配置される固体電解質層を含む単電池と、前記電極層に接する電極集電体と、前記対極層に接する対極集電体と、前記電極集電体と前記対極集電体との間に配置される封止部材と、を備える。前記単電池は、前記電極集電体と前記対極集電体との間に配置される。前記封止部材は、前記固体電解質層に向かって突出する少なくとも1つの突出部分を含み、前記少なくとも1つの突出部分の少なくとも一部は、前記固体電解質層に接する。
【0010】
これにより、電池の機械的強度を向上させることができる。具体的には、固体電解質層が封止部材の突出部分によって支持されるので、通電電極を各集電体に押し当てた場合などの外力に対し、固体電解質層の崩落を抑制することができる。このため、単電池である発電要素の破損リスクを小さくすることができ、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。
【0011】
例えば、固体電解質層の一部に外力が加わった場合であっても、封止部材の突出部分によって固体電解質層が支持されているので、固体電解質層の崩落を抑制することができる。例えば、全固体電池、または、電極層と対極層との間にセパレータを備えない電池においても、電極集電体と対極集電体との直接接触によって、または、固体電解質層の崩落によって電極層と対極層とが短絡するリスクを低減することができる。
【0012】
また、封止部材が電極集電体と対極集電体との間に設けられているので、電極集電体と対極集電体とが接触する可能性を低減することができる。すなわち、封止部材によって、電極集電体と対極集電体との間隔を一定の距離以上(例えば、封止部材の厚み以上)に、維持することができるので、電極集電体と対極集電体とが互いに近接することを抑制することができる。
【0013】
また、例えば、前記少なくとも1つの突出部分は、前記電極層及び前記対極層のいずれにも接しなくてもよい。
【0014】
これにより、封止部材と、電極層または対極層と、が化学反応するリスクが十分に低減されるので、封止部材として利用できる材料の選択を広げることができる。
【0015】
また、例えば、前記封止部材は、前記電極集電体と前記対極集電体とに接してもよい。
【0016】
これにより、封止部材によって、電極集電体と対極集電体との間隔を一定の距離以上(例えば、封止部材の厚み以上)に、より強固に維持することができる。したがって、電極集電体と対極集電体とが互いに近接することを、より強く抑制することができる。これにより、電極集電体と対極集電体とが直接接触して電極層と対極層とが短絡するリスクをより低減することができる。
【0017】
また、例えば、前記少なくとも1つの突出部分は、複数の突出部分を含んでいてもよい。
【0018】
これにより、複数の突出部分によって固体電解質を複数箇所で支えることができるので、通電電極を押し当てた場合などの外力に対し、固体電解質層の崩落をより強く抑制することができる。したがって、単電池である発電要素の破損リスクを小さくして、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。
【0019】
また、例えば、前記固体電解質層の形状は、前記電池を厚み方向に見た場合において、複数の頂点を有する多角形であり、前記少なくとも1つの突出部分は、前記複数の頂点のうち少なくとも1つに接していてもよい。
【0020】
これにより、通電電極を押し当てた場合などの外力に対し、特に損傷を受けやすい固体電解質層の角部の崩落を抑制することができる。したがって、発電要素の破損リスクを小さくして、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。また、固体電解質層の角部の各々に突出部分が設けられた場合には、複数の突出部分の各々を頂点とする多角形が発電要素を内包するように設けられる。これにより、電池全体の機械的信頼性を高めることができる。
【0021】
また、例えば、前記少なくとも1つの突出部分は、前記電池を厚み方向に見た場合において、前記固体電解質層の外周に沿って配置された長尺形状を有していてもよい。
【0022】
これにより、突出部分と固体電解質層との接触面積が大きくなるので、通電電極を押し当てた場合などの外力に対し、固体電解質層の崩落をより強く抑制することができる。したがって、単電池である発電要素の破損リスクを小さくして、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。
【0023】
また、例えば、前記少なくとも1つの突出部分は、前記電池を厚み方向に見た場合において、前記固体電解質層の全周に沿って連続的に配置されてもよい。
【0024】
これにより、通電電極を押し当てた場合などの外力に対し、固体電解質層の全周で突出部分が接するので、固体電解質層の崩落を十分に強く抑制することができる。したがって、単電池である発電要素の破損リスクを小さくして、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。
【0025】
また、例えば、前記固体電解質層は、凹部を含み、前記少なくとも1つの突出部分の少なくとも一部は、前記凹部内で前記固体電解質層に接してもよい。
【0026】
これにより、固体電解質に設けられた凹部に突出部分が位置するので、突出部分が固体電解質層をより強固に支持することができる。したがって、単電池である発電要素の破損リスクを小さくして、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。
【0027】
また、例えば、前記固体電解質層は、前記電極層に接する電極側電解質層と、前記電極側電解質層および前記対極層に接する対極側電解質層とを含み、前記少なくとも1つの突出部分は、前記電極側電解質層と前記対極側電解質層との界面に接してもよい。
【0028】
また、例えば、前記電池を厚み方向に見た場合において、前記電極集電体は、前記電極層と重ならない第1領域を含み、前記第1領域は、前記電極集電体の外周の少なくとも一部を含み、前記対極集電体は、前記対極層と重ならない第2領域を含み、前記第2領域は、前記対極集電体の外周の少なくとも一部を含み、前記封止部材は、前記第1領域及び前記第2領域と重なっていてもよい。
【0029】
これにより、封止部材と電極集電体および対極集電体の各々との接着性を高めることができ、封止部材を介した電極集電体および対極集電体の接合部分の強度を高めることができる。したがって、電極集電体と対極集電体とが接触する可能性を、より低減することができる。
【0030】
また、例えば、前記封止部材は、第1材料を含む第1封止部材と、前記第1材料と異なる第2材料を含む第2封止部材とを含み、前記第1封止部材は、前記第2封止部材よりも前記電極集電体の近くに位置し、前記第2封止部材は、前記第1封止部材よりも前記対極集電体の近くに位置していてもよい。
【0031】
これにより、反応性または機械特性などの観点から、正極側の封止部材の材料として最も適した材料及び負極側の封止部材の材料として最も適した材料を、それぞれ選ぶことができる。これにより、電池の信頼性をさらに向上することができる。
【0032】
また、例えば、前記封止部材は、第1材料を含み、前記第1材料は、絶縁性であり、かつ、イオン伝導性を有さない材料であってもよい。
【0033】
これにより、第1材料が絶縁性であることで、電極集電体と対極集電体との間の導通を抑制することができる。また、第1材料がイオン伝導性を有さないことで、例えば、封止部材と他の電池の封止部材などとの接触による電池特性の低下を抑制することができる。
【0034】
また、例えば、前記第1材料は、樹脂を含んでもよい。
【0035】
これにより、封止部材が樹脂(例えば封止剤)を含むことにより、電池に外力が加わった場合、または、湿潤雰囲気もしくはガス成分に電池が晒された場合において、封止部材の可とう性、柔軟性またはガスバリア性によって、単電池である発電要素に悪影響が及ぶのを一層抑制することができる。これにより、電池の信頼性をさらに高めることができる。
【0036】
また、例えば、前記第1材料は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びシルセスキオキサンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0037】
これにより、例えば、硬化が容易な材料を用いて封止部材を形成することができる。すなわち、封止部材に含まれる第1材料は、初期状態では流動性を有し、その後、例えば、紫外線照射、熱処理などにより流動性を喪失させて、硬化させることができる材料となる。また、必要に応じて、熱処理もしくは紫外線照射による仮硬化、または、熱処理による本硬化を行うことにより、電極集電体と対極集電体とが対向する領域の範囲外に、封止部材をはみ出させることが容易となる。
【0038】
また、例えば、前記封止部材は、粒子状の金属酸化物材料を含んでもよい。
【0039】
これにより、例えば、電池形状の維持力、絶縁性、熱伝導性、防湿性などの封止部材の特性を、より向上させることができる。
【0040】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0041】
なお、以下で説明される実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0042】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0043】
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0044】
また、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0045】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を電池の厚み方向としている。また、本明細書において、「厚み方向」とは、電極層が形成された電極集電体の面、または、対極層が形成された対極集電体の面に垂直な方向のことである。また、本明細書において、「平面視」とは、電池の厚み方向に沿って電池を見た場合を意味する。
【0046】
(実施の形態1)
[構成]
図1は、実施の形態1における電池1000の概略構成を示す図である。具体的には、
図1の(a)は、電池1000の概略構成を示す断面図であり、
図1の(b)の一点鎖線で示される位置の断面を表している。
図1の(b)は、電池1000の概略構成を示す上面透視図である。
図1の(b)では、電池1000を上方から見た場合における電池1000の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。なお、
図1の(b)では、封止部材310が有する突出部分350を示していない。突出部分350の平面視形状の具体例については、
図7から
図10に示される。
【0047】
図1に示されるように、実施の形態1における電池1000は、発電要素100と、電極集電体210と、対極集電体220と、封止部材310と、を備える。
【0048】
発電要素100は、例えば、充電および放電の機能を有する発電部である。発電要素100は、例えば二次電池である。例えば、発電要素100は、単電池(セル)であってもよい。発電要素100は、電極集電体210と対極集電体220との間に配置されている。
【0049】
発電要素100は、
図1の(a)に示されるように、電極層110と対極層120と固体電解質層130とを含む。電極層110と、固体電解質層130と、対極層120とは、電池1000の厚み方向(z軸方向)に沿ってこの順で積層されている。発電要素100は、例えば、全固体電池であってもよい。
【0050】
実施の形態1における発電要素100では、電極層110が電池の負極であり、対極層120が電池の正極である。このとき、電極集電体210は負極集電体である。対極集電体220は正極集電体である。
【0051】
電極層110は、例えば活物質などの電極材料を含む層である。具体的には、電極層110は、例えば、電極材料として負極活物質を含む負極活物質層である。電極層110は、対極層120に対向して配置されている。
【0052】
電極層110に含有される負極活物質としては、例えば、グラファイト、金属リチウムなどの負極活物質が用いられうる。負極活物質の材料としては、リチウム(Li)またはマグネシウム(Mg)などのイオンを離脱および挿入することができる各種材料が用いられうる。
【0053】
また、電極層110の含有材料としては、例えば、無機系固体電解質などの固体電解質が用いられてもよい。無機系固体電解質としては、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質などが用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、硫化リチウム(Li
2S)および五硫化二リン(P
2S
5)の混合物が用いられうる。また、電極層110の含有材料としては、例えばアセチレンブラックなどの導電材料、または、例えばポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられてもよい。
【0054】
電極層110の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、電極集電体210の面上に塗工乾燥することにより、電極層110が作製されうる。電極層110の密度を高めるために、電極層110および電極集電体210を含む電極板(本実施の形態では負極板)をプレスしておいてもよい。電極層110の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下であるが、これに限らない。
【0055】
対極層120は、例えば活物質などの対極材料を含む層である。対極材料は、電極層の対極を構成する材料である。具体的には、対極層120は、例えば対極材料として正極活物質を含む正極活物質層である。
【0056】
対極層120に含有される正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)などの正極活物質が用いられうる。正極活物質の材料としては、LiまたはMgなどのイオンを離脱および挿入することができる各種材料が用いられうる。対極層120に含有される正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム複合酸化物(LCO)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LNO)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LMO)、リチウム‐マンガン‐ニッケル複合酸化物(LMNO)、リチウム‐マンガン‐コバルト複合酸化物(LMCO)、リチウム‐ニッケル‐コバルト複合酸化物(LNCO)、リチウム‐ニッケル‐マンガン‐コバルト複合酸化物(LNMCO)などの正極活物質が用いられうる。
【0057】
また、対極層120の含有材料としては、例えば、無機系固体電解質などの固体電解質が用いられてもよい。無機系固体電解質としては、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質などが用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、Li
2SおよびP
2S
5の混合物が用いられうる。正極活物質の表面は、固体電解質でコートされていてもよい。また、対極層120の含有材料としては、例えばアセチレンブラックなどの導電材料、または、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられてもよい。
【0058】
対極層120の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、対極集電体220の面上に塗工乾燥することにより、対極層120が作製されうる。対極層120の密度を高めるために、乾燥後に、対極層120および対極集電体220を含む対極板(本実施の形態では正極板)をプレスしておいてもよい。対極層120の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下であるが、これに限らない。
【0059】
固体電解質層130は、電極層110と対極層120との間に配置される。固体電解質層130は、電極層110および対極層120の各々に接する。固体電解質層130は、電解質材料を含む層である。電解質材料としては、一般に公知の電池用の固体電解質が用いられうる。固体電解質層130の厚みは、5μm以上300μm以下であってもよく、または、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0060】
固体電解質としては、例えば、無機系固体電解質などの固体電解質が用いられうる。無機系固体電解質としては、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質などが用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、Li
2SおよびP
2S
5の混合物が用いられうる。なお、固体電解質層130は、電解質材料に加えて、例えばポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどを含有してもよい。
【0061】
固体電解質層130の大きさおよび平面視形状はそれぞれ、電極層110および対極層120の各々の大きさおよび平面視形状と同じである。すなわち、固体電解質層130の端部(すなわち、側面)は、電極層110の端部(すなわち、側面)および対極層120の端部(すなわち、側面)の各々と面一である。
【0062】
固体電解質層130の側面には、凹部131が設けられている。凹部131内には、封止部材310の突出部分350の少なくとも一部が位置している。凹部131の内面と突出部分350の先端部分とが接している。
【0063】
実施の形態1では、電極層110、対極層120、固体電解質層130は平行平板状に維持されている。これにより、湾曲による割れまたは崩落の発生を抑制することができる。なお、電極層110、対極層120、固体電解質層130を合わせて滑らかに湾曲させてもよい。
【0064】
なお、発電要素100では、電極層110が電池の正極であり、対極層120が電池の負極であってもよい。具体的には、電極層110は、電極材料として正極活物質を含む正極活物質層であってもよい。このとき、電極集電体210は正極集電体である。対極層120は、対極材料として負極活物質を含む負極活物質層である。対極集電体220は負極集電体である。
【0065】
実施の形態1では、電極層110と対極層120とが同じ大きさおよび同じ形状である。平面視において、発電要素100は、電極集電体210および対極集電体220の各々より小さく、電極集電体210および対極集電体220の各々の内部に位置している。
【0066】
電極集電体210と対極集電体220とはそれぞれ、導電性を有する部材である。電極集電体210と対極集電体220とはそれぞれ、例えば、導電性を有する薄膜であってもよい。電極集電体210と対極集電体220とを構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの金属が用いられうる。
【0067】
電極集電体210は、電極層110に接して配置される。上述したように、電極集電体210は、負極集電体である。負極集電体としては、例えば、SUS箔、Cu箔などの金属箔が用いられうる。電極集電体210の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下であるが、これに限らない。なお、電極集電体210は、電極層110に接する部分に、例えば、導電性材料を含む層である集電体層を備えてもよい。
【0068】
平面視において、電極集電体210は、電極層110よりも大きく設けられている。
図1の(b)には、電極集電体210の外周の少なくとも一部を含み、電極層110と重ならない領域である第1領域230が示されている。実施の形態1では、平面視において、電極層110が電極集電体210の中央に位置しているので、第1領域230は、電極集電体210の全周に亘って設けられている。具体的には、第1領域230の平面視形状は、所定の線幅の矩形環状である。
【0069】
対極集電体220は、対極層120に接して配置される。上述したように、対極集電体220は、正極集電体である。正極集電体としては、例えば、SUS箔、Al箔などの金属箔が用いられうる。対極集電体220の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下であるが、これに限らない。なお、対極集電体220は、対極層120に接する部分に、集電体層を備えてもよい。
【0070】
平面視において、対極集電体220は、対極層120よりも大きく設けられている。
図1の(b)には、対極集電体220の外周の少なくとも一部を含み、対極層120と重ならない領域である第2領域240が示されている。具体的には、第2領域240の平面視形状は、所定の線幅の矩形環状である。実施の形態1では、矩形環状の第2領域240の線幅は、矩形環状の第1領域230の線幅より短い。
【0071】
また、
図1の(b)に示される対向領域250は、電極集電体210と対極集電体220とが対向する領域である。すなわち、対向領域250は、平面視において電極集電体210と対極集電体220とが重複する領域である。実施の形態1では、電極集電体210よりも対極集電体220が小さく、かつ、平面視において電極集電体210の内部に対極集電体220が位置する。この場合には、対向領域250の平面視形状は、対極集電体220の平面視形状と同じになる。実施の形態1では、対向領域250は、発電要素100が設けられた領域と第2領域240とを合わせた領域である。
【0072】
実施の形態1では、電極集電体210と対極集電体220とが平行平板状に配置されている。具体的には、電極集電体210および対極集電体220の各々は、厚みが均一の平板であり、互いに平行に配置されている。実施の形態1では、電極集電体210と対極集電体220との間隔は一定に維持されている。具体的には、封止部材310が設けられた領域における電極集電体210と対極集電体220との間隔は、発電要素100が設けられた領域における電極集電体210と対極集電体220との間隔と同じである。
【0073】
封止部材310は、電極集電体210と対極集電体220との間に配置される。封止部材310は、例えば電気絶縁材料を用いて形成されている。封止部材310は、電極集電体210と対極集電体220との間隔を維持するスペーサとして機能する。封止部材310は、電極集電体210と対極集電体220との間に発電要素100を封止するための部材である。封止部材310は、発電要素100の少なくとも一部が外気に触れないように、発電要素100の少なくとも一部を封止する。
【0074】
実施の形態1では、
図1の(a)に示されるように、封止部材310は、電極集電体210と対極集電体220とに接する。具体的には、封止部材310は、電極層110が配置された面のうち電極層110が配置されていない第1領域230内で、電極集電体210に接している。封止部材310は、対極層120が配置された面のうち対極層120が配置されていない第2領域240内で、対極集電体220に接している。つまり、平面視において、封止部材310は、第1領域230と第2領域240とが互いに対向する位置に配置される。
【0075】
例えば、発電要素100の平面視形状が矩形である場合、封止部材310は、発電要素100の平面視形状である矩形の一辺に沿って位置してもよい。実施の形態1では、
図1の(b)に示されるように、封止部材310の平面視形状は、台形であるが、これに限らない。
【0076】
例えば、封止部材310は、第1材料を含む部材である。封止部材310は、例えば、第1材料を主成分として含む部材であってもよい。封止部材310は、例えば、第1材料のみからなる部材であってもよい。
【0077】
第1材料としては、例えば封止剤などの一般に公知の電池の封止部材の材料が用いられうる。第1材料としては、例えば、樹脂材料が用いられうる。なお、第1材料は、絶縁性であり、かつ、イオン伝導性を有さない材料であってもよい。例えば、第1材料は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とポリイミド樹脂とシルセスキオキサンとのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0078】
封止部材310は、粒子状の金属酸化物材料を含んでもよい。金属酸化物材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、ゼオライト、ガラスなどが用いられうる。例えば、封止部材310は、金属酸化物材料からなる複数の粒子が分散された樹脂材料を用いて形成されていてもよい。
【0079】
金属酸化物材料の粒子サイズは、電極集電体210と対極集電体220との間隔以下であればよい。金属酸化物材料の粒子形状は、正円状(球状)、楕円球状、棒状などであってもよい。
【0080】
図1の(a)に示されるように、封止部材310は、固体電解質層130に向かって突出し、少なくとも一部が固体電解質層130に接する突出部分350を有する。突出部分350は、封止部材310の固体電解質層130に対向する面から固体電解質層130に向かって突出している。突出部分350の突出方向は、電池1000の厚み方向に直交する方向である。突出方向は、例えば、発電要素100の中心に向かう方向である。
【0081】
突出部分350は、例えば、突出方向に延びる円柱状であり、先端部が曲面になる形状(ドーム形状)を有するが、これに限らない。例えば、突出部分350の先端部は、平面でもよく、尖っていてもよい。例えば、突出部分350の形状は、角柱状であってもよい。あるいは、突出部分350は、発電要素100の外周に沿った方向(
図1においてy軸方向)に延びていてもよい。具体的には、突出部分350は、電池1000を厚み方向に見た場合において、固体電解質層130の外周に沿って長尺状に設けられていてもよい。
【0082】
突出部分350の少なくとも一部は、固体電解質層130が有する凹部131内で固体電解質層130に接する。具体的には、突出部分350は、例えば、突出方向における長さの少なくとも半分以上の部分が固体電解質層130に接している。突出部分350の厚み(z軸方向における長さ)は、例えば、固体電解質層130の厚みより小さいが、これに限らない。突出部分350の大きさおよび形状は、これらに限らない。
【0083】
実施の形態1では、封止部材310と発電要素100との間には隙間が設けられている。封止部材310は、突出部分350のみで発電要素100と接している。具体的には、
図1の(a)に示されるように、突出部分350は、電極層110と対極層120とに接しなくてもよい。なお、例えば、突出部分350と凹部131との間には隙間がなく、密接している。言い換えると、凹部131内は、突出部分350によって完全に埋められている。
【0084】
[変形例]
以下では、実施の形態1の複数の変形例について説明する。なお、以下の複数の変形例の説明において、実施の形態1との相違点または変形例間での相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0085】
<変形例1>
まず、実施の形態1の変形例1について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態1の変形例1における電池1100の概略構成を示す図である。具体的には、
図2の(a)は、電池1100の概略構成を示す断面図であり、
図2の(b)の一点鎖線で示される位置の断面を表している。
図2の(b)は、電池1100の概略構成を示す上面透視図である。
図2の(b)では、電池1100を上方から見た場合における電池1100の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。なお、
図2の(b)では、封止部材312が有する突出部分350を示していない。
【0086】
図2に示されるように、電池1100は、実施の形態1における電池1000と比較して、封止部材310の代わりに封止部材312を備える。封止部材312は、発電要素100の周囲を囲んで設けられている。具体的には、平面視において、封止部材312は、発電要素100の全周に亘って連続的に設けられている。封止部材312は、発電要素100の全周に亘って、電極集電体210と対極集電体220との両方に接している。封止部材312は、発電要素100の側面を全周に亘って封止している。封止部材312は、例えば、発電要素100の平面視形状が矩形である場合に、発電要素100の全辺に接して設けられてもよい。電池1100を任意の側方(具体的には、z軸に直交する任意の方向)から見た場合に、発電要素100は、完全に封止部材312によって覆われており、外部に露出していない。
【0087】
図2の(b)に示されるように、封止部材312の平面視形状は、所定の線幅の矩形環状である。平面視における封止部材312の線幅は、矩形環状の第2領域240の線幅より短い。本変形例では、封止部材312の厚みは、均一である。つまり、封止部材312の厚みは、封止部材312の全周に亘って発電要素100の厚みと同じである。
【0088】
また、封止部材312は、突出部分350だけでなく、突出部分350以外の部分において発電要素100に接する。具体的には、封止部材312の発電要素100側の側面、すなわち、突出部分350が設けられた側面は、発電要素100の電極層110、対極層120および固体電解質層130の各々の側面に接する。つまり、封止部材312と発電要素100との間には隙間が設けられていない。突出部分350の全体が、固体電解質層130の凹部131内に位置している。
【0089】
以上の構成によれば、封止部材312によって、発電要素100の全周において、電極集電体210と対極集電体220との間隔を一定の距離以上(例えば、封止部材312の厚み以上)に維持することができる。したがって、発電要素100の全周において、電極集電体210と対極集電体220とが、互いに近接することを抑制することができる。
【0090】
また、発電要素100の側面を封止部材312によって覆うことができる。これにより、例えば、電極層110に含まれる電極材料、対極層120に含まれる対極材料、固体電解質層130に含まれる固体電解質材料などの一部が崩落した場合であっても、封止部材312によって、当該崩落した構成部材が電池内部の別の部材に接触することを抑制することができる。したがって、電池1100の構成部材の崩落による電池内部の短絡を抑制することができる。これらにより、電池1100の信頼性を、より向上させることができる。
【0091】
<変形例2>
次に、実施の形態1の変形例2について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態1の変形例2における電池1200の概略構成を示す図である。具体的には、
図3の(a)は、電池1200の概略構成を示す断面図であり、
図3の(b)の一点鎖線で示される位置の断面を表している。
図3の(b)は、電池1200の概略構成を示す上面透視図である。
図3の(b)では、電池1200を上方から見た場合における電池1200の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。なお、
図3の(b)では、封止部材312が有する突出部分350を示していない。
【0092】
図3に示されるように、電池1200は、変形例1における電池1100と比較して、電極集電体210の代わりに電極集電体212を備える。電極集電体212は、対極集電体220と、平面視形状および大きさが同じである。
【0093】
このため、
図3の(b)に示されるように、電極集電体212と対極集電体220とが同じ大きさ、かつ、同じ形状であるので、電極層110が配置されていない領域である第1領域232は、対極層120が配置されていない領域である第2領域240と同じ大きさおよび同じ形状になる。また、対向領域250は、電極集電体212および対極集電体220の各々の形成範囲と同じ領域となる。
【0094】
以上の構成によれば、電極集電体212が対極集電体220より外方にはみ出ていないので、電極集電体212を対極集電体220から離す方向に外部から衝撃が加わりにくくなる。このため、電極集電体212が剥離されるのを抑制することができ、電池1200が破壊されるのを抑制することができる。
【0095】
<変形例3>
次に、実施の形態1の変形例3について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態1の変形例3における電池1300の概略構成を示す図である。具体的には、
図4の(a)は、電池1300の概略構成を示す断面図であり、
図4の(b)の一点鎖線で示される位置の断面を表している。
図4の(b)は、電池1300の概略構成を示す上面透視図である。
図4の(b)では、電池1300を上方から見た場合における電池1300の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。なお、
図4の(b)では、封止部材314が有する突出部分350を示していない。
【0096】
図4に示されるように、電池1300は、変形例2における電池1200と比較して、封止部材312の代わりに封止部材314を備える。封止部材314は、電極集電体212と対極集電体220との隙間を埋めるように設けられている。
図4の(b)に示されるように、封止部材314の平面視形状は、第1領域232および第2領域240の各々の平面視形状と同じである。つまり、第1領域232の全体および第2領域240の全体に封止部材314が設けられている。
図4の(a)に示されるように、封止部材314の外周の側面(例えばyz面)は、電極集電体212の端面(yz面)および対極集電体220の端面(yz面)と面一になっている。
【0097】
以上の構成によれば、電極集電体212の外周と対極集電体220の外周との間の隙間が封止部材314で埋められているので、電極集電体212および対極集電体220の一方を他方から離す方向に外部から衝撃が加わりにくくなる。このため、電極集電体212および対極集電体220がそれぞれ剥離されるのを抑制することができ、電池1300が破壊されるのを抑制することができる。
【0098】
<変形例4>
次に、実施の形態1の変形例4について、
図5を用いて説明する。
図5は、実施の形態1の変形例4における電池1400の概略構成を示す図である。具体的には、
図5の(a)は、電池1400の概略構成を示す断面図であり、
図5の(b)の一点鎖線で示される位置の断面を表している。
図5の(b)は、電池1400の概略構成を示す上面透視図である。
図5の(b)では、電池1400を上方から見た場合における電池1400の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。なお、
図5の(b)では、封止部材314が有する突出部分350を示していない。
【0099】
図5に示されるように、電池1400は、変形例3における電池1300と比較して、発電要素100の代わりに発電要素102を備える。発電要素102は、対極層120および固体電解質層130の代わりに対極層122および固体電解質層132を備える。
【0100】
変形例4では、電極層110の大きさと対極層122の大きさとは、互いに異なっている。例えば、平面視において、電極層110は、対極層122より大きい。
図5の(b)に示されるように、対極層122は、平面視において、電極層110の内部に位置している。
【0101】
また、
図5の(a)に示されるように、例えば、固体電解質層132は、対極層122の側面を覆っている。このとき、固体電解質層132は、対極集電体220に接する。また、封止部材314は、電極層110の側面と固体電解質層132の側面とに接しており、対極層122には接していない。
【0102】
なお、本変形例では、対極層122が電極層110より小さい例を示したが、電極層110が対極層122より小さくてもよい。この場合、固体電解質層132は、電極層110の側面を覆っていてもよい。封止部材314は、対極層122の側面と固体電解質層132の側面とに接しており、電極層110には接していなくてもよい。
【0103】
例えば、対極層122および電極層110のうち正極に相当する一方が、対極層122および電極層110のうち負極に相当する他方よりも小さくてもよい。つまり、負極活物質層は、正極活物質層よりも大きくなる。これにより、リチウムの析出、または、マグネシウムの析出による電池の信頼性の低下を抑制することができる。
【0104】
<変形例5>
次に、実施の形態1の変形例5について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態1の変形例5における電池1500の概略構成を示す図である。具体的には、
図6の(a)は、電池1500の概略構成を示す断面図であり、
図6の(b)の一点鎖線で示される位置の断面を表している。
図6の(b)は、電池1500の概略構成を示す上面透視図である。
図6の(b)では、電池1500を上方から見た場合における電池1500の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。なお、
図6の(b)では、封止部材314が有する突出部分350を示していない。
【0105】
図6に示されるように、電池1500は、変形例4における電池1400と比較して、発電要素102の代わりに発電要素104を備える。発電要素104は、発電要素102と比較して、固体電解質層132の代わりに固体電解質層133を備える。固体電解質層133は、電極側電解質層134と対極側電解質層135とを含む。
【0106】
電極側電解質層134は、対極側電解質層135よりも電極層110に近い側に位置し、電極層110に接する。
図6の(a)に示されるように、電極側電解質層134は、例えば、電極層110の側面を覆っており、電極集電体212に接する。電極層110は、電極側電解質層134に覆われることで、外部に露出していない。具体的には、電極層110は、封止部材314に接しない。
【0107】
対極側電解質層135は、電極側電解質層134よりも対極層122に近い側に位置し、対極層122に接する。
図6の(a)に示されるように、対極側電解質層135は、例えば、対極層122の側面を覆っており、対極集電体220に接する。対極層122は、対極側電解質層135に覆われることで、外部に露出していない。具体的には、対極層122は、封止部材314に接しない。
【0108】
図6の(b)に示されるように、平面視において、電極側電解質層134は、対極側電解質層135よりも大きい。具体的には、平面視において、対極側電解質層135は、電極側電解質層134の内部に位置している。なお、電極側電解質層134と対極側電解質層135とは、同じ大きさおよび同じ形状であってもよい。例えば、電極側電解質層134の側面と対極側電解質層135の側面とは面一であってもよい。
【0109】
電極側電解質層134と対極側電解質層135とはそれぞれ、電解質材料を含む層である。電解質材料としては、一般に公知の電池用の固体電解質が用いられうる。電極側電解質層134と対極側電解質層135とは、互いに同じ電解質材料を含んでもよく、互いに異なる電解質材料を含んでもよい。電極側電解質層134の厚みと対極側電解質層135の厚みとはそれぞれ、5μm以上150μm以下であってもよく、5μm以上50μm以下であってもよい。
【0110】
図6に示されるように、封止部材314は、電極側電解質層134の側面と対極側電解質層135の側面とに接する。あるいは、電極側電解質層134の側面と対極側電解質層135の側面との少なくとも一部は、封止部材314に覆われずに、露出されていてもよい。
【0111】
本変形例では、突出部分350の厚み方向における位置は、突出部分350の部位によって異なっていてもよい。例えば、
図6の(a)に示されるように、左側の突出部分350は、電極側電解質層134と対極側電解質層135との界面に接する。具体的には、突出部分350の先端部分は、電極側電解質層134と対極側電解質層135との界面の端部に接する。また、右側の突出部分350は、対極側電解質層135のみに接している。なお、突出部分350は、電極側電解質層134のみに接していてもよい。
【0112】
封止部材314は、複数の突出部分350を有してもよい。複数の突出部分350は、平面視において、互いに異なる位置に位置している。例えば、
図7に示されるように、複数の突出部分350は、固体電解質層133の一辺上の複数の位置に設けられていてもよい。なお、
図7は、変形例5における電池1500の突出部分350の形状および位置の一例を示す上面透視図である。例えば、
図7は、
図6の(b)の紙面左側の部分を拡大して示している。後述する
図8から
図10についても同様である。
【0113】
図7に示されるように、複数の突出部分350は、平面視において、電極層110および対極層122のいずれにも重複していない。あるいは、複数の突出部分350の少なくとも1つは、平面視において、電極層110および対極層122の少なくとも一方と重複していてもよい。
【0114】
また、本変形例では、固体電解質層133の平面視形状は、
図6の(b)に示されるように、多角形である。具体的には、固体電解質層133の平面視形状は、矩形である。例えば、複数の突出部分350は、固体電解質層133の多角形の頂点に位置してもよい。具体的には、
図8に示されるように、封止部材314は、複数の突出部分350の代わりに複数の突出部分352を有してもよい。例えば、封止部材314は、4つの突出部分352を有する。4つの突出部分352は、固体電解質層133の矩形の四隅(すなわち、4つの角部)に設けられていてもよい。
【0115】
また、突出部分350は、平面視において、固体電解質層133の外周に沿って長尺状に位置してもよい。例えば、
図9に示されるように、封止部材314は、複数の突出部分350の代わりに突出部分354を有してもよい。突出部分354は、固体電解質層133の一辺に沿って長尺状に設けられている。突出部分354は、平面視形状が矩形の固体電解質層133の1つの頂点(すなわち、角部)から一辺に沿って、他の頂点に向かって延びている。突出部分354は、他の頂点に至るまで延びていてもよい。
【0116】
また、突出部分350は、平面視において、固体電解質層133の全周に沿って連続的に位置してもよい。例えば、
図10に示されるように、封止部材314は、複数の突出部分350の代わりに突出部分356を有してもよい。突出部分356は、固体電解質層133の全周に沿って連続的に設けられていてもよい。
【0117】
以上の構成によれば、通電電極を押し当てた場合などの外力に対し、固体電解質層の強度を高めて崩落を抑制することができる。したがって、発電要素104の破損リスクを小さくして、信頼性の高い電気的接触を得ることができる。
【0118】
<変形例6>
次に、実施の形態1の変形例6について、
図11を用いて説明する。
図11は、実施の形態1の変形例6における電池1600の概略構成を示す断面図である。
【0119】
図11に示されるように、電池1600は、変形例5における電池1500と比較して、封止部材314の代わりに封止部材316を備える。封止部材316は、第1封止部材317と、第2封止部材318とを有する。
【0120】
第1封止部材317は、第2封止部材318よりも電極集電体212に近い側に位置し、第1材料を含む。第2封止部材318は、第1封止部材317よりも対極集電体220に近い側に位置し、第2材料を含む。第2材料は、第1材料とは異なる材料である。第2材料は、例えば、絶縁性であり、かつ、イオン伝導性を有さない材料である。第2材料は、例えば封止剤などの樹脂を含んでもよい。
【0121】
第2材料は、例えば、第1材料として利用可能な複数の材料から選択された、第1封止部材317に含まれる材料とは異なる材料であってもよい。例えば、第2材料は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とポリイミド樹脂とシルセスキオキサンとのうち、第1封止部材317に含まれない材料であってもよい。第2材料は、粒子状の金属酸化物材料を含んでもよい。
【0122】
第1封止部材317および第2封止部材318の少なくとも一方は、突出部分350を有する。例えば、
図11の左側において、第1封止部材317が突出部分350を有する。
図11の右側において、第2封止部材318が突出部分350を有する。なお、第1封止部材317のおよび第2封止部材318の一方のみが突出部分350を有してもよい。
【0123】
以上の構成によれば、反応性または機械特性などの観点から、正極側の封止部材の材料として最も適した材料及び負極側の封止部材の材料として最も適した材料を、それぞれ選ぶことができる。これにより、電池1600の信頼性をさらに向上することができる。
【0124】
[電池の製造方法]
続いて、実施の形態1および各変形例における電池の製造方法の一例を説明する。以下では、
図12を用いて、上述した変形例5における電池1500の製造方法を説明する。他の電池1000、1100、1200、1300、1400および1600についても同様である。
【0125】
図12は、電池1500の製造方法の一例を示す図である。
【0126】
まず、対極材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を準備する。この塗料を対極集電体220上に塗工する。すなわち、対極層122を形成する。さらに、塗工された塗料を覆うように、固体電解質材料を対極集電体220上に塗工し、乾燥する。すなわち、対極側電解質層135を形成する。これにより、
図12の(a)に示されるような、対極板が作製される。なお、対極材料(および、後述する電極材料)と固体電解質材料とは、溶剤を含まない材料で準備されてもよい。
【0127】
次に、
図12の(b)に示されるように、対極板の周辺部に封止材料を塗布する。すなわち、封止部材314を形成する。このとき、
図12の(b)に示されるように、封止部材314の厚みが、対極層122と対極側電解質層135と電極層110と電極側電解質層134との厚みの合計よりも、厚く塗布されてもよい。
【0128】
このとき、電池構成時に封止部材314の一部が、固体電解質層133に向かって突出する突出部分350になるように、封止材料を対極集電体220上と対極側電解質層135上とに跨って塗布する。例えば、対極側電解質層135上に塗布される封止材料の厚みを、対極集電体220上に塗布される封止材料の厚みより、対極層122と対極側電解質層135との厚みの和だけ薄くして、封止材料の塗布表面(すなわち、上面)をほぼ平坦にする。あるいは、対極側電解質層135上に塗布される封止材料の厚みと、対極集電体220上に塗布される封止材料の厚みとを適宜調整することにより、封止材料の塗布表面に段差を設けてもよい。なお、封止材料の塗布表面に段差を設けるための一方法として、封止材料を複数回に分けて塗布してもよい。固体電解質層133に接触する突出部分350を形成するための方法は、これらの限りではない。
【0129】
さらに、封止材料を塗布した後に、熱処理または紫外線照射などを行う。これにより、塗料の流動性を残したまま増粘させて、塗料を仮硬化することができる。増粘硬化を用いることで、封止部材314の変形を制御できる。
【0130】
次に、電極材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を準備する。この塗料を電極集電体212上に塗工する。すなわち、電極層110を形成する。さらに、塗工された塗料を覆うように、固体電解質材料を電極集電体212上に塗工し、乾燥する。すなわち、電極側電解質層134を形成する。これにより、
図12の(c)に示されるような、電極板が作製される。
【0131】
次に、
図12の(c)に示されるように、上冶具510と下冶具520とを備える加圧冶具500を用いて、電極板と対極板とを圧着する。具体的には、封止部材314を形成した対極板に対向するように、電極板を配置し、上冶具510と下冶具520とで電極板と対極板とを挟み込んで圧着する。
【0132】
これにより、
図12の(d)に示されるように、電池1500が製造される。
【0133】
なお、例えば、熱処理またはUV照射などにより、封止部材314を本硬化させてもよい。これにより、封止状態をより強固にすることができる。
【0134】
また、封止材料を対極集電体220上と対極側電解質層135上とに跨って塗布する代わりに、封止材料を電極集電体212上と電極側電解質層134上とに跨って塗布してもよい。
【0135】
また、電極板と対極板との両方に封止材料をそれぞれ塗布してもよい。電極板と対極板との各々に封止部材314の一部を形成してから、電極板と対極板とを貼り合わせてもよい。これにより、一度に形成する封止部材314の量が減るので、封止部材314をより高速に形成することができる。また、接合面積が増えることで、封止部材314と電極板との接合をより強固にすることができる。また、封止部材314の突起が低くなるので、工程途中の電極板または対極板を容易に巻き取ることができる。また、電極板と対極板とにそれぞれ最適な異なる封止材料を選択することもできる。
【0136】
以上のような工程を経て、対極板と電極板とを圧着することにより、電極層110および対極層122の形成されない領域、すなわち、対極側電解質層135より外側及び電極側電解質層134より外側に封止部材314を設けることができる。封止部材314に含まれる第1材料として、固体電解質材料に比べて耐衝撃性、絶縁性などの特性に優れた材料を用いることにより、電極層110および対極層122の形成されない領域の固体電解質層133を強固にすることができる。
【0137】
また、以上のように、
図12に示される電池1500の製造方法では、電極板と対極板とが貼り合わされる前に、封止部材314を事前に形成する工程を包含する。これにより、例えば、電極集電体212と対極集電体220との少なくとも一方の外側に、封止部材314を形成することも可能である。これにより、電極集電体212と対極集電体220とが直接接触することに起因する電極層110と対極層122との短絡のリスクを、大幅に小さくすることができる。
【0138】
ここで、封止部材314の厚み制御は、電池1500の信頼性の向上に大きく寄与する要素となる。このとき、封止部材314が、電極集電体212と対極集電体220との端部の大半を被覆しないように、つまり、各集電体の端部から外側に漏れないように調整されてもよい。
【0139】
なお、封止部材314を形成する位置、電極層110と対極層122と固体電解質層133との各々の形成範囲、電極集電体212と対極集電体220との大きさなどが調整されてもよい。これにより、実施の形態1および各変形例において示された電池のそれぞれが、作製されうる。また、複数の電池の積層を行うことで、後述する実施の形態2において示す積層電池のそれぞれが、作製されうる。
【0140】
(実施の形態2)
以下では、実施の形態2について説明する。なお、以下の説明において、上述の実施の形態1および各変形例との相違点を中心に説明し、共通点の説明を適宜、省略または簡略化する。
【0141】
図13は、実施の形態2における積層電池2000の概略構成を示す断面図である。実施の形態2における積層電池2000は、上述の実施の形態1または各変形例における電池を複数積層し、かつ、直列で接続してなる電池である。
【0142】
図13に示される例では、積層電池2000は、3つの電池2002、2004および2006をこの順で積層した構成を有する。電池2002、2004および2006はそれぞれ、互いに同じ構成を有する。例えば、電池2002、2004および2006はそれぞれ、実施の形態1の変形例5における電池1500と同じ構成を有する。例えば、電池2002、2004および2006の少なくとも1つは、実施の形態1における電池1000であってもよく、変形例1から変形例6における電池1100から電池1600の少なくとも1つであってもよい。
【0143】
積層電池2000においては、所定の電池(例えば、単電池)の電極集電体と、別の電池(例えば、単電池)の対極集電体とを接合することで、複数の電池が積層されている。具体的には、
図13に示されるように、電池2002の電極集電体212と電池2004の対極集電体220とが接合されている。電池2004の電極集電体212と電池2006の対極集電体220とが接合されている。電極集電体212と対極集電体220との接合は、直接接合されてもよく、導電性接着剤または溶接法などにより接合されてもよい。電池2002、2004および2006は、直列に接続されている。
【0144】
図13に示されるように、積層電池2000は、さらに、電気絶縁部材2010を備える。電気絶縁部材2010は、電池2002、2004および2006の各々の側面を覆っている。これにより、封止部材314が突出部分350を有する構造の効果と相まって、積層電池2000における複数の電池の積層状態を、より強固に維持することができる。
【0145】
なお、積層電池2000が備える電池の数は、3以上であってもよく、2つのみであってもよい。積層される電池の数を調整することで、所望の電池特性を得ることができる。
【0146】
また、積層電池を構成する際に、必要な特性に応じて、複数の電池を並列接続してもよい。また、並列接続された2以上の電池と直列接続された2以上の電池とが混在してもよい。これにより、僅かな体積で高容量の積層電池を実現できる。直列、並列、またはそれらの混在については公知の技術による複数の単電池セル間における集電体の接続方法の変更によって容易に実現することができる。
【0147】
以上の構成によれば、複数の単電池を直列に積層することにより、高電圧を得ることができる。したがって、直列型であり、かつ、短絡リスクの小さい積層電池を実現できる。すなわち、集電体同士の接触による短絡リスクが小さく、かつ、直列積層のバイポーラ構造を形成することができる。
【0148】
図14は、実施の形態2における積層電池2000の使用例を模式的に示す図である。積層電池2000は、
図14に示されるように、例えば電極押さえ2020と対極押さえ2030との間に挟み込まれて加圧されている。電極押さえ2020には、電極取り出し線2022が設けられている。対極押さえ2030には、対極取り出し線2032が設けられている。電極押さえ2020、対極押さえ2030、電極取り出し線2022および対極取り出し線2032はそれぞれ、導電性を有する金属材料などで形成されている。これにより、電極取り出し線2022および対極取り出し線2032を介して、積層電池2000から電流を取り出すことができる。
【0149】
電極押さえ2020と対極押さえ2030との間に電池または積層電池を挟み込んで加圧しても、突出部分350が固体電解質層133を支持するので、発電要素の層間剥離などの発生を防止した状態で、長期間繰り返しの使用に際しても、電気的接続に優れた適用が可能である。
【0150】
なお、積層電池2000は、封止ケースに内包されてもよい。封止ケースとしては、例えば、ラミネート袋、金属缶、樹脂ケースなどの封止ケースが用いられうる。封止ケースを用いることで、発電要素が水分によって劣化することを抑制することができる。
【0151】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様における電池について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0152】
例えば、上記の実施の形態では、封止部材310、312、314または316は、電極集電体210または212に接していなくてもよい。例えば、電極層110が電極集電体210または212の全面に形成されていてもよく、封止部材310、312、314または316は、電極層110と対極集電体220との間に位置し、電極層110に接していてもよい。
【0153】
同様に、封止部材310、312、314または316は、対極集電体220に接していなくてもよい。例えば、対極層120または122が対極集電体220の全面に形成されていてもよく、封止部材310、312、314または316は、対極層120または122と電極集電体210または212との間に位置し、対極層120または122に接していてもよい。
【0154】
また、例えば、封止部材312、314または316は、発電要素100、102または104に接していなくてもよい。
【0155】
また、例えば、突出部分350は、電極層110、および、対極層120または122の少なくとも一方に接していてもよい。
【0156】
また、例えば、封止部材310、312、314または316が設けられた領域における電極集電体210または212と対極集電体220との間隔は、発電要素100、102または104が設けられた領域における電極集電体210または212と対極集電体220との間隔より大きくてもよい。封止部材310、312、314または316が設けられた領域における厚みを、発電要素100、102または104が設けられた領域における厚みよりも大きくすることにより、電極集電体210または212と対極集電体220とが短絡するリスクを軽減することができる。
【0157】
また、例えば、電極板と対極板との貼り合わせ時に加圧板の中央付近が、封止部材310、312、314または316を加圧する部分に比べて突出していてもよい。これにより、貼り合わせ後の電池の、封止部材310、312、314または316の厚みを発電要素100、102または104の厚みよりも容易に大きくすることができる。
【0158】
発電要素100、102または104の厚みに比べて、封止部材310、312、314または316の厚みは電極板側で厚くてもよく、対極板側で厚くてもよく、電極板側と対極板側との両方で厚くてもよい。これにより、通電電極を押し当てた場合、または、積層電池に厚み方向の拘束力を印加した場合に、発電要素100、102または104より封止部材310、312、314または316に圧力を集中させることができる。これにより、発電要素100、102または104の破損リスクを小さくして良好な電気的接触を安定的に得ることができる。これにより、積層電池を、安定的に高容量化することができる。
【0159】
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。