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特開2019-207938圧電素子及び圧電アクチュエータ並びに圧電素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-207938(P2019-207938A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】圧電素子及び圧電アクチュエータ並びに圧電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/09 20060101AFI20191108BHJP
   H01L 41/332 20130101ALI20191108BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20191108BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20191108BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   H01L41/09
   H01L41/332
   G02B26/10 104Z
   G02B26/10 C
   G02B26/08 E
   B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-102415(P2018-102415)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 護
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
3C081
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB38
2H045AB73
2H045AB81
2H045BA12
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141MF25
2H141MG06
2H141MZ03
2H141MZ06
2H141MZ16
2H141MZ19
2H141MZ26
3C081AA17
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA32
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA55
3C081CA14
3C081CA28
3C081DA04
3C081EA01
3C081EA08
3C081EA21
(57)【要約】
【課題】圧電体において欠陥部が存在しない圧電素子及びその製造方法並びに圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】圧電アクチュエータ24の圧電素子25は、下部電極26と、上部電極27と、下部電極26と上部電極27との間に挟まれた圧電体28と、部分的に下部電極26上の圧電体28が表面に至るまで貫通して除去された貫通孔31とを備える。貫通孔31は、圧電体28における所定の絶縁耐力を有する正常部位よりも絶縁耐力が低い欠陥部29aを除去して形成された部分であり、絶縁体30の一部が充填されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と、
上部電極と、
前記下部電極と前記上部電極との間に挟まれた圧電体と、
前記上部電極の表面側から前記上部電極及び前記圧電体を貫通し、前記下部電極に至る貫通孔とを備えることを特徴とする圧電素子。
【請求項2】
前記上部電極を覆う絶縁体を備え、
前記貫通孔は、前記絶縁体によって充填されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記貫通孔における前記上部電極の開口は、前記圧電体の開口より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記上部電極は、前記圧電体を構成する圧電材料よりも融点が高い材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電素子を備えることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
基板上に下部電極膜、圧電膜及び上部電極膜をこの順で形成する工程と、
前記上部電極膜の形成後に、前記下部電極膜と前記上部電極膜との間に、前記圧電膜の膜欠陥を含む欠陥部の耐電圧を超える電圧を印加して該欠陥部を除去する欠陥部除去工程とを備えることを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項7】
前記欠陥部除去工程の前に、前記下部電極膜上の前記圧電膜及び前記上部電極膜を一体的にストリート状に除去して、前記圧電膜及び前記上部電極膜を複数の分割領域に分割する分割工程を有することを特徴とする請求項6に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項8】
前記分割工程においては、前記上部電極膜の一部であり、隣接する前記分割領域同士を接続する接続部を残して分割することを特徴とする請求項7に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項9】
前記分割工程は、該接続部が連続して一直線上に並ぶことがないように行われることを特徴とする請求項8に記載の圧電素子の製造方法。
【請求項10】
前記上部電極膜の形成は、前記圧電膜を構成する圧電材料よりも融点が高い材料を用いて行われることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の圧電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子、該圧電素子を備える圧電アクチュエータ、及び該圧電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の微細構造を有するシステムにおいて、圧電素子で構成されたセンサやアクチュエータ等のニーズが大きくなっている。なかでも圧電アクチュエータは、小型で低消費電力、かつ大きな駆動力を発生させることが可能であるため、特に注目されている。
【0003】
圧電アクチュエータを構成する圧電膜の成膜方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PLD(Pulse Laser Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CSD(Chemical Solution Deposition)法、ゾルゲル法等が知られている。
【0004】
これらの成膜方法によって形成される圧電膜には、程度の差はあるものの、ボイド、表面の窪みや突起、微小なクラック等の膜欠陥が含まれる。このような膜欠陥は、成膜雰囲気からの微細な塵やコンタミ、基板の凹凸などの影響により発生するので、完全にゼロにすることは難しい。
【0005】
また、圧電アクチュエータの出力を増大させるためには、圧電膜の膜厚を大きくする必要がある。しかし、そうすると、圧電膜の形成に長時間を要し、コストが増大することに加え、成膜中の応力によって剥離やクラックが発生するので、好ましい圧電膜の膜厚は5μm以下とされる。
【0006】
圧電アクチュエータを製造する際には、まず、SOI(silicon on insulator)ウェハ(SOI基板)の上に下部電極膜が形成される。次に、この下部電極膜の上に圧電材料からなる圧電膜が形成される。このとき、圧電膜に、ボイドや、表面の窪みや突起、微小なクラック等の膜欠陥を含む絶縁耐力が低い欠陥部が生じる。
【0007】
次に、この圧電膜上に上部電極膜が形成される。このとき、圧電膜上のランダムな位置に生じている欠陥部を避けて上部電極膜を形成することは困難であるため、欠陥部の上にも上部電極膜が形成される。したがって、上部電極膜を形成して得られる構造は、圧電膜の欠陥部が上部電極膜と下部電極膜とで挟まれたものとなる。
【0008】
さらに、上部電極膜の上に必要に応じて絶縁膜や引き出し配線等が形成され、圧電アクチュエータの可動部となる部分のSOIウェハが除去され、そして、圧電アクチュエータへの給電用の配線が形成される。これにより、下部電極膜、圧電膜及び上部電極膜によってそれぞれ下部電極、圧電体及び上部電極が形成された圧電アクチュエータが形成される。
【0009】
この圧電アクチュエータの製造方法によれば、完成した圧電アクチュエータにおいても上記の圧電膜の欠陥部が存在し、さらにその欠陥部は、上部電極と下部電極で挟まれた構造となっている。このため、圧電アクチュエータを駆動させると、絶縁耐力が低い欠陥部に印加される駆動電圧により、欠陥部に絶縁破壊が生じるおそれがある。これは、良品のみを選択する手間の増大や、歩留りの低下を招来する要因となる。
【0010】
そこで、従来、圧電膜等における欠陥部の発生を防止するために、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では、圧電素子の製造工程における各層の成膜後に、純水やガスを含む水、ブラシ等を用いたスクラブ洗浄を行うことにより、異物等が圧電膜に含まれるのを防止することが提案されている。
【0011】
また、特許文献2では、薄膜コンデンサ用の誘電体薄膜の形成時に、誘電体薄膜に短絡や耐電圧不足を生じさせるような誘電体薄膜表面の異物を、ブラッシング洗浄等で取り除くことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−173499号公報
【特許文献2】特開平11−154734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1や2の方法によれば、圧電素子の各層の成膜後にその表面に付着した異物を除去したり、誘電体薄膜上の異物を除去したりすることは可能である。しかし、圧電膜や誘電体薄膜の成膜途中で異常成長し、膜内に生じた欠陥部までは除去することができない。
【0014】
したがって、特許文献1や2の方法を圧電アクチュエータの製造に適用したとしても、製造時に圧電膜に欠陥部が生じ、その欠陥部が、製造された圧電アクチュエータの圧電体にも残存するおそれがある。
【0015】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、圧電体において欠陥部が存在しない圧電素子及びその製造方法並びに圧電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明に係る圧電素子は、
下部電極と、
上部電極と、
前記下部電極と前記上部電極との間に挟まれた圧電体と、
前記上部電極の表面側から前記上部電極及び前記圧電体を貫通し、前記下部電極に至る貫通孔とを備えることを特徴とする。
【0017】
第1発明によれば、圧電素子の圧電体となる圧電膜を成膜するときに圧電膜に生じた欠陥部に対応する部分を上記の貫通孔とすることにより、欠陥部を極力排除した圧電素子を提供することができる。
【0018】
第2発明に係る圧電素子は、第1発明において、
前記上部電極を覆う絶縁体を備え、
前記貫通孔は、前記絶縁体によって充填されていることを特徴とする。
【0019】
第2発明によれば、貫通孔に充填されている絶縁体によって、下部電極と上部電極との間の貫通孔における絶縁性を確実に保持することができる。
【0020】
第3発明に係る圧電素子は、第1又は第2発明において、前記貫通孔における前記上部電極の開口は、前記圧電体の開口より大きいことを特徴とする。
【0021】
第3発明によれば、下部電極と上部電極との間の貫通孔における絶縁性をより確実に保持することができる。
【0022】
第4発明に係る圧電素子は、第1〜第3のいずれかの発明において、
前記上部電極は、前記圧電体を構成する圧電材料よりも融点が高い材料からなることを特徴とする。
【0023】
第4発明によれば、圧電素子の製造に際して、圧電体となる圧電膜の欠陥部及び隣接する上部電極となる上部電極膜の部分を除去した後に、該除去した部分に溶融した上部電極膜の材料が流れ込むことにより、圧電素子の下部電極と上部電極との間の絶縁性が損なわれるのを防止することができる。
【0024】
第5発明に係る圧電アクチュエータは、第1〜第4のいずれかの発明の圧電素子を備えることを特徴とする。
【0025】
第5発明によれば、圧電アクチュエータの圧電素子は欠陥部が極力排除されているので、欠陥部に起因する絶縁破壊が防止された圧電アクチュエータを提供することができる。
【0026】
第6発明に係る圧電素子の製造方法は、
基板上に下部電極膜、圧電膜及び上部電極膜をこの順で形成する工程と、
前記上部電極膜の形成後に、前記下部電極膜と前記上部電極膜との間に、前記圧電膜の膜欠陥を含む欠陥部の耐電圧を超える電圧を印加して該欠陥部を除去する欠陥部除去工程とを備えることを特徴とする。
【0027】
第6発明によれば、圧電膜内の欠陥部は他の正常部位よりも耐電圧が低いので、これを超える適切な電圧が下部電極膜と上部電極膜との間に印加されると、欠陥部に絶縁破壊が生じ、欠陥部及び対応する上部電極膜部分がジュール熱により除去される。
【0028】
したがって、得られる圧電素子においては、圧電膜の形成時に圧電膜に生じた欠陥部が除去されているので、圧電素子が組み込まれた製品において、欠陥部における絶縁破壊に起因する不具合の発生を防止することができる。
【0029】
第7発明に係る圧電素子の製造方法は、第6発明において、前記欠陥部除去工程の前に、前記下部電極膜上の前記圧電膜及び前記上部電極膜を一体的にストリート状に除去して、前記圧電膜及び前記上部電極膜を複数の分割領域に分割する分割工程を有することを特徴とする。
【0030】
第7発明によれば、欠陥部除去工程において、電圧の印加による応力の発生によって圧電膜にクラックが発生するのを防止することができる。
【0031】
第8発明に係る圧電素子の製造方法は、第7発明において、前記分割工程においては、前記上部電極膜の一部であり、隣接する前記分割領域同士を接続する接続部を残して分割することを特徴とする。
【0032】
第8発明によれば、上部電極膜の分割された各部分が電気的に接続されているので、欠陥部除去工程において、簡便な電圧印加手段によって、下部電極膜と上部電極膜との間に電圧を印加することができる。
【0033】
第9発明に係る圧電素子の製造方法は、第7発明において、前記分割工程は、該接続部が連続して一直線上に並ぶことがないように行われることを特徴とする。
【0034】
第9発明によれば、接続部が連続して一直線上に並ぶ場合には、欠陥部除去工程における電圧の印加によって発生する機械的な応力によってクラックが圧電膜に生じ易くなるところ、これを防止することができる。
【0035】
第10発明に係る圧電素子の製造方法は、第6〜第9のいずれかの発明において、
前記上部電極膜の形成は、前記圧電膜を構成する圧電材料よりも融点が高い材料を用いて行われることを特徴とする。
【0036】
第10発明によれば、欠陥部除去工程において圧電膜の欠陥部及び隣接する上部電極膜の部分を除去した後に、該除去した部分に溶融した上部電極膜の材料が流れ込んで下部電極膜と上部電極膜との間の絶縁性が損なわれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る光偏向器の正面図である。
図2図1の光偏向器のカンチレバーを構成するカンチレバー型の圧電アクチュエータの断面図である。
図3図3A図3Dは、図2の圧電アクチュエータの製造に際して圧電膜が絶縁破壊してできた貫通孔の4箇所を、上部電極膜側から観察した様子をそれぞれ示す4枚の顕微鏡写真である。
図4図4A図4Dは、本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法における一部の工程を示す断面図である。
図5図5A図5Dは、図4の製造方法の残りの工程を示す断面図である。
図6図6Aは、図4図5の製造方法における欠陥部除去工程において設けられる下部電極膜の露出部の一例を示す図であり、図6Bは該露出部の別の例を示す図である。
図7図7Aは、図4図5の製造方法における分割工程でチップ毎に分割された上部電極膜及び圧電膜の一例を示す図である。図7Bは、該分割工程でチップ毎に分割された上部電極膜及び圧電膜の別の例を示す図である。
図8図8Aは、圧電アクチュエータの変形例を示す平面図であり、図8BはそのB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(光偏向器の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータを用いて構成される光偏向器を示す。図1に示すように、この光偏向器1は、MEMSとして製造される。なお、平板状の光偏向器1に対し、ミラー部2の反射面が視認できる側を「正面」、その反対側を「背面」ということにする。
【0039】
以下、光偏向器1について上下左右というとき、光偏向器1の正面視での上下左右をいうものとする。光偏向器1の構成の把握の便宜のため、図1等に三軸直交座標を定義している。原点Oは、ミラー部2の中心に設定している。Z軸は、光偏向器1の厚み方向に対応している。X軸及びY軸は、左右方向及び上下方向に対応している。Z軸は、背面から正面に向かう向きとされる。X軸は、左から右に向かう向きとされる。Y軸は、下から上に向かう向きとされる。以下、光偏向器1の構成は、ミラー部2の静止状態、すなわちミラー部2の反射面の法線がZ軸に一致している状態で説明する。
【0040】
光偏向器1は、ミラー部2、内側圧電式アクチュエータ3a、3b、可動支持部としての可動枠4、外側圧電式アクチュエータ5a、5b、及び固定枠6を備える。固定枠6は、正面視で横長の矩形となっている。固定枠6の長辺及び短辺は、それぞれX軸及びY軸に平行である。
【0041】
図1において、軸線Lx、Lyは、ミラー部2が往復回動(正逆転)する2つの軸線である。軸線Lx、Lyは、ミラー部2の中心(原点O)において直交する。内側圧電式アクチュエータ3a、3bは、駆動部(図示せず)から第1駆動電圧を供給されて、ミラー部2を軸線Lyの回りに第1周波数(例:30kHz)で往復回動させる。外側圧電式アクチュエータ5a、5bは、駆動部から第2駆動電圧を供給されて、ミラー部2を軸線Lxの回りに第2周波数(例:60Hz)で往復回動させる。
【0042】
内側圧電式アクチュエータ3a、3bは、圧電構造付きのカンチレバーから構成され、正面視においてY軸に対して左右対称の構造になっている。内側圧電式アクチュエータ3a、3bは、Y軸方向の両端部において相互に結合し、全体では、ミラー部2を包囲するY軸方向に縦長の楕円環を構成する。可動枠4は、内外周がY軸方向に縦長の楕円輪郭の環状枠として形成され、内周側において内側圧電式アクチュエータ3a、3bから構成される楕円環を包囲する。
【0043】
トーションバー21a、21bは、ミラー部2からY軸に沿って上下に直線状に突出し、中間部において内側圧電式アクチュエータ3a、3bの結合部に結合し、突出端において可動枠4の内周に結合する。軸線Lyは、トーションバー21a、21bの中心線に一致する。
【0044】
外側圧電式アクチュエータ5a、5bは、矩形の固定枠6の内周側でかつX軸方向に可動枠4に対して左右対称に配設される。外側圧電式アクチュエータ5a、5bの各々は、ミアンダ配列で直列に結合している複数のカンチレバー23から構成される。カンチレバー23も、内側圧電式アクチュエータ3a、3bのカンチレバー(符号無し)と同様に、圧電構造付きとなっている。なお、各カンチレバー23は、単独で圧電アクチュエータとして使用可能である。
【0045】
具体的には、各カンチレバー23は、長手方向をY軸方向に揃えて、X軸方向に一列に配列される。複数のカンチレバー23は、折り返し部(符号無し)を介して縦方向(Y軸方向)の端部において横方向(X軸方向)に左隣り又は右隣りのカンチレバー23に結合している。
【0046】
外側圧電式アクチュエータ5a、5bの各々においてX軸方向の両端のカンチレバー23は、長さが中間のカンチレバー23の半分となっており、X軸上で固定枠6及び可動枠4にそれぞれ結合している。固定枠6に結合しているカンチレバー23の端部は、外側圧電式アクチュエータ5a、5bの基端部を構成し、可動枠4に結合しているカンチレバー23の端部は、外側圧電式アクチュエータ5a、5bの先端部を構成する。
【0047】
電極パッド16a、16bは、固定枠6の各短辺部の表面に複数ずつ配設されている。電極パッド16aは、光偏向器1の内部配線を介して光偏向器1の左半部の内側圧電式アクチュエータ3a及び外側圧電式アクチュエータ5aに接続されている。電極パッド16bは、光偏向器1の内部配線を介して光偏向器1の右半部の内側圧電式アクチュエータ3b及び外側圧電式アクチュエータ5bに接続されている。
【0048】
(光偏向器の作用)
光偏向器1の作用について説明する。なお、以下、内側圧電式アクチュエータ3a、3bを特に区別しないときは、「内側圧電式アクチュエータ3」と総称する。外側圧電式アクチュエータ5a、5bを特に区別しないときは、「外側圧電式アクチュエータ5」と総称する。電極パッド16a、16bを特に区別しないときは、「電極パッド16」と総称する。
【0049】
光偏向器1は、二次元スキャナとして、映像器や車両用前照灯等に装備される。光偏向器1は、パッケージ内に収納されて、光偏向器1の電極パッド16とパッケージの端子とは、ボンディングワイヤ(図示せず)により接続されている。内側圧電式アクチュエータ3及び外側圧電式アクチュエータ5には、それらの圧電体に電極パッド16から駆動電圧が供給される。
【0050】
図示していない光源(例:半導体レーザ光源)からの光(例:レーザ光)が、光偏向器1のミラー部2の中心(三軸座標系の原点O)に入射する。
【0051】
外側圧電式アクチュエータ5は、電極パッド16からの駆動電圧により作動して、可動枠4をX軸の回りに第2周波数で往復回動させる。この結果、ミラー部2は、軸線Lxの回りを第2周波数で往復回動する。
【0052】
外側圧電式アクチュエータ5の作動について詳説する。各外側圧電式アクチュエータ5は、ミアンダ配列の複数のカンチレバー23から成る。外側圧電式アクチュエータ5の基端側(固定枠6側)から先端側(可動枠4側)にかけて順番にカンチレバー23に番号を付けると、奇数番のカンチレバー23と偶数番のカンチレバー23とは、同一周波数の逆位相の駆動電圧が供給され、湾曲変形の凸側の向きが逆になるように、変形する。
【0053】
この結果、ミアンダ配列を構成する各カンチレバー23は、外側圧電式アクチュエータ5の作動時に、X軸方向に隣接するもの同士で逆向きに湾曲する。この時、各カンチレバー23の基端部に対する先端部の相対回転量の蓄積量が、軸線Lxの回りの外側圧電式アクチュエータ5に対する内側圧電式アクチュエータ3の回転量(捻じれ量)となる。
【0054】
一方、内側圧電式アクチュエータ3は、電極パッド16からの第1駆動電圧によりトーションバー21をその中心軸線としての軸線Lyの回りに第1周波数で往復回動させる。第1周波数は、高い周波数を確保するために、軸線Lyの回りのミラー部2の共振周波数に設定される。なお、軸線Lxの回りのミラー部2の往復回動の周波数である第2周波数は、非共振周波数に設定される。
【0055】
こうして、ミラー部2は、軸線Lyの回りに共振周波数で往復回動しつつ、軸線Lxの回りに非共振周波数で往復回動する。この結果、ミラー部2は、正面視で、左右には共振周波数で、上下には非共振周波数で回動する。図示しない光源からの光は、ミラー部2の中心で反射して、その時々の軸線Lx、Lyの回りの回動角に対応する方向に走査光として出射する。
【0056】
(圧電アクチュエータの構成)
図2は、カンチレバー23を構成するカンチレバー型の圧電アクチュエータ24の断面図である。図2に示すように、圧電アクチュエータ24は、支持部35dにより一方の端部が支持され、他方の端部が自由端となっている圧電素子25を備える。
【0057】
ただし、上述の外側圧電式アクチュエータ5を構成するために、圧電素子25の他方の端部には、別の圧電アクチュエータ24の支持部35dが固定される。圧電アクチュエータ24が、外側圧電式アクチュエータ5の先端側(可動枠4側)のカンチレバー23を構成するものである場合には、圧電素子25の他方の端部は、可動枠4に固定される。
【0058】
圧電素子25は、下部電極26と、上部電極27と、下部電極26と上部電極27との間に挟まれた圧電体28と、上部電極27の表面側から上部電極27及び圧電体28を貫通し、下部電極26に至る貫通孔31とを備える。
【0059】
貫通孔31は、圧電体28における所定の絶縁耐力を有する正常部位よりも絶縁耐力が低い欠陥部29a(図4C参照)の部分及びその上に隣接する上部電極27の部分が後述の欠陥部除去工程により除去されて形成された部分である。
【0060】
上部電極27の上には、上部電極27の必要な部分を絶縁して保護する絶縁体30が設けられる。貫通孔31には、絶縁体30の一部が充填されている。上部電極27及び下部電極26の一端には、給電用の配線32が接続される。支持部35dは、圧電素子25の形成時に使用された基板としてのSOIウェハの残存する一部により形成されている。
【0061】
図3A図3Dは、それぞれ絶縁体30が充填されていない状態における4つの貫通孔31を上部電極27側から見た様子を示す。図3A図3Dのように、貫通孔31における上部電極27の開口は、圧電体28(図2参照)の開口より大きい。
【0062】
すなわち、圧電体28及び上部電極27の厚さ方向に見て、圧電体28が除去されている部分33は、上部電極27が除去されている部分34よりも小さく、かつ上部電極27が除去されている部分34に含まれている。
【0063】
圧電素子25は、固定端側が支持部35dにより支持され、カンチレバー型の圧電アクチュエータ24、すなわちカンチレバー23として機能し、配線32を介して供給される電圧により駆動される。そして、上述のように、複数の圧電アクチュエータ24がミアンダ配列で直列的に結合され、隣り合う者同士が逆極性の駆動電圧で駆動され、外側圧電式アクチュエータ5として機能する。
【0064】
(圧電アクチュエータの製造方法)
図4A図4D及び図5A図5Dは、光偏向器1の製造に際して圧電素子25及び圧電アクチュエータ24(カンチレバー23)を形成する部分の製造工程を示す。図4A図4D及び図5A図5Dにおいては、図2の圧電アクチュエータ24の断面に対応する部分の断面が示されている。
【0065】
図4A図4D及び図5A図5Dに示すように、この製造工程は、SOIウェハ35上に下部電極膜36を形成する下部電極膜形成工程(図4A)と、下部電極膜36の上に圧電膜29を形成する圧電膜形成工程(図4B)と、圧電膜29の上に上部電極膜37を形成する上部電極膜形成工程(図4C)とを備える。
【0066】
そして、上部電極膜形成工程の後に、下部電極膜36と上部電極膜37との間に電界を印加することにより、圧電膜29内の欠陥部29aを除去する欠陥部除去工程(図4D図5A)が実施される。欠陥部除去工程の後、さらに、絶縁膜38の形成(図5B)、電極コンタクト部の形成(図5C)、SOIウェハ35の部分的除去(図5D)、給電用の配線32の接続(図2)等の工程が行われ、圧電アクチュエータ24が形成される。
【0067】
具体的には、下部電極膜形成工程(図4A)では、まず、SOIウェハ35が熱酸化処理され、その上にスパッタリング法等により下部電極膜36が形成される。SOIウェハ35としては、例えば、Si基板35a上にSiOの熱酸化膜35bを形成し、その上にシリコン単結晶層35cを形成した構造のものを用いることができる。
【0068】
下部電極膜36の形成に際しては、まず、例えばTi、Pt膜がこの順で形成され、さらに、ペロブスカイト型結晶構造を有するSrRuO(SRO:ルテニウム酸ストロンチウム)、LaNiO(LNO:ニッケル酸ランタン)及びBaRuO(BRO:ルテニウム酸バリウム)のうちの何れか1つからなる導電性薄膜が形成される。
【0069】
これらの材料によれば、PZT等の圧電材料に対して特に相性が良く、圧電膜29のエピタキシャル成長を実現し易い良質の積層体である下部電極膜36を形成することができる。
【0070】
圧電膜形成工程(図4B)では、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PLD(Pulse Laser Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CSD(Chemical Solution Deposition)法、ゾルゲル法等により、膜厚が3〜5μmの圧電膜29が形成される。
【0071】
圧電膜29を構成する圧電材料としては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PNZT(チタン酸ジルコン酸ニオブ酸鉛)、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)、PLT(チタン酸ランタン鉛)、PMN(マグネシウム酸ニオブ酸鉛)又はPMNN(マンガン酸ニオブ酸鉛)が用いられる。特に、PZTは大きな圧電特性を有するため、低消費電力化、小型化を図る上で好ましい。
【0072】
この工程では、下部電極膜36表面の異常成膜部や異物、圧電膜29の成膜中に圧電材料に混入した異物、異常成長などにより、圧電膜29に、ボイドや、表面の窪みや突起、微小なクラック等の膜欠陥を含む絶縁耐力が低い欠陥部29aが形成される。欠陥部29aは、その発生原因や発生箇所によってサイズや形は様々であるが、ボイドや異常な粒界を含んでいるものが多く、所定の絶縁耐力を有する正常な部位に比べて、絶縁耐力が低くなっている。
【0073】
上部電極膜形成工程(図4C)では、スパッタリング法等により上部電極膜37が形成される。上部電極膜37は、例えばPt、Ti、Ir、IrO又はSROの薄膜や、これらの積層体により構成される。
【0074】
このとき、上部電極膜37が圧電膜29よりも融点の低い材料で構成されると、欠陥部除去工程において後述のように圧電膜29の欠陥部29aが絶縁破壊して蒸発した後に、溶融した上部電極膜37が流れ込み、下部電極膜36とショートするので望ましくない。
【0075】
同様の理由から、上部電極膜37を膜厚の厚い構成とすることも好ましくない。すなわち、上部電極膜37は、圧電膜29を構成する材料よりも高い融点を有する材料の薄膜として構成するのが好ましい。
【0076】
上部電極膜37をこのような構成とすることによって、この後の欠陥部除去工程において、図3のように、絶縁破壊により、欠陥部29aが存在していた部分33よりもやや大きい範囲の上部電極膜37の部分34が除去される。これにより、絶縁破壊によって生じる恐れがある上部電極膜37と下部電極膜36との間のショートが確実に防止される。
【0077】
欠陥部除去工程(図4D図5A)では、まず、図4Dのように、上部電極膜37及び圧電膜29の一部がフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により除去される。すなわち、圧電膜29の欠陥部29aを除去するための電圧を印加できるように、下部電極膜36が部分的に露出される。
【0078】
この部分的に露出した下部電極膜36の露出部39は、図6Aのように、SOIウェハ35の周辺部の複数箇所に設けるのが好ましい。これにより、この後に圧電膜29に印加される欠陥部29aを除去するための電界をSOIウェハ35の前全面にわたって均等に分布させることができる。なお、図6Bのように、SOIウェハ35の周辺部全体に設けてもよい。
【0079】
次に、上部電極膜37と下部電極膜36との間に、欠陥部29aのない正常領域における圧電膜29の耐電圧未満の電圧が印加される。これにより、正常領域よりも耐電圧が低下している欠陥部29aで絶縁破壊が生じ、欠陥部29aが除去される。
【0080】
ただし、正常領域の圧電膜29の耐電界(絶縁耐力)は成膜手法や成膜条件によって異なる。例えば、イオンプレーティング法で形成した圧電膜29は、正常部位において少なくとも20V/μm以上の耐電界を有する。一方、欠陥部29aでの耐電界は、最大でも正常部位の8割以下となっている。
【0081】
したがって、印加される電圧としては、例えば、欠陥部29aの最大の耐電界に相当する電圧を超える電圧が選択される。これにより、欠陥部29aのみを選択的に絶縁破壊させてジュール熱により蒸発させ、図3のような貫通孔31を形成することができる。
【0082】
印加される電圧は、DC電圧でもAC電圧でもよいが、この電圧の印加による電界によって生じる機械的応力が圧電膜29にクラックを発生させるのを防止するために、パルス波形を有する電圧を採用してもよい。
【0083】
また、この圧電膜29におけるクラックの発生を防止するために、下部電極膜36上の、圧電膜29及び上部電極膜37からなる膜を一体的にストリート状に除去して、圧電膜29及び上部電極膜37を複数の分割領域に分割する分割工程を行ってから電圧を印加してもよい。
【0084】
この分割は、図7Aのように、上部電極膜37及び圧電膜29を光偏向器1のチップ毎に行うのが好ましい。これにより、ストリートとスクライブラインを一致させ、ダイシングに都合がよい分割を行うことができる。
【0085】
ただし、この場合、上部電極膜37に電圧を印加するためのプローブは、分割された上部電極膜37a毎に電圧を印加できる構造を有していなければならない。そこで、上部電極膜37及び圧電膜29の分割に際しては、プローブの構造を簡素化するために、図7Bのように、隣接する上部電極膜37a同士を接続する接続部40を残して分割するようにしてもよい。接続部40は、上部電極膜37の一部である。
【0086】
ただし、この場合、接続部40が一直線上に配列されると、上部電極膜37aに機械的応力によるクラックが生じ易くなる。このため、図7Bに示すように、SOIウェハ35の全体にわたって接続部40が一直線上に配列されないように(ジグザグに配置されるように)接続部40を設けるのが好ましい。
【0087】
図7Bの例では、チップの短辺方向に沿って、各隣接する上部電極膜37a間に、チップの長辺方向における一方の側及び他方の側に交互に位置するように、接続部40が配列されている。また、チップの長辺方向に沿って、各隣接する上部電極膜37a間に、チップの短辺方向における一方の側及び他方の側に交互に位置するように、接続部40が配列されている。
【0088】
この欠陥部除去工程が完了すると、次に、フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、上部電極膜37、圧電膜29、下部電極膜36、及びSOIウェハ35の熱酸化膜35bのパターニングが行われる。これにより、各圧電アクチュエータ24に対応する上部電極27、圧電体28及び下部電極26のパターンが形成される。
【0089】
次に、図5Bのように、スパッタリング法やプラズマCVD法により、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等からなる絶縁膜38が上部電極27を覆うように形成される。このとき、絶縁膜38の一部が、上述の欠陥部除去工程で形成された貫通孔31に充填される。
【0090】
さらに、図5Cのように、フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、絶縁膜38、上部電極27及び圧電体28を加工して、上部電極27及び下部電極26の電極コンタクト部が露出される。
【0091】
次に、図5Dのように、SOIウェハ35側に、フォトリソグラフィーにより、レジストパターンの形成後に圧電アクチュエータ24の可動部となる領域24aに対応するSOIウェハ35のSi基板35a(図4A参照)部分がDeep−RIE(深掘りエッチング)により除去され、圧電アクチュエータ24の可動部が形成される。SOIウェハ35の除去されなかった部分により、圧電アクチュエータ24の支持部35dが形成される。
【0092】
そして、さらに領域24a部分のエッジングが行われ、上部電極27及び下部電極26に電圧を供給するための配線32が形成される。これにより、図2に示すような圧電アクチュエータ24が、光偏向器1のチップの一部を構成するものとして形成される。
【0093】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、光偏向器1において圧電アクチュエータ24の圧電体28の絶縁破壊に起因する不具合の発生を防止することができる。すなわち、圧電体28の形成時には、圧電体28となる圧電膜29を成膜するときに圧電膜29に欠陥部29aが生じる。この欠陥部29aは耐電界性が劣化しているので、かかる欠陥部29aが圧電体28に残存する状態で光偏向器1を使用すると、欠陥部29aに絶縁破壊が生じ、光偏向器1に不具合が生じる恐れがある。
【0094】
この点、本実施形態によれば、圧電体28の形成時に圧電体28となる圧電膜29に生じた欠陥部29aが欠陥部除去工程により除去される。これにより、欠陥部29aが圧電体28に残存することが阻止されるので、欠陥部29aに起因する絶縁破壊により光偏向器1に不具合が生じるのを防止することができる。
【0095】
また、欠陥部除去工程により除去された貫通孔31に絶縁体30の一部が充填されるので、下部電極26と上部電極27との間の貫通孔31における絶縁性を確実に保持することができる。
【0096】
また、貫通孔31における上部電極27の開口は、圧電体28の開口より大きいので、貫通孔31における下部電極26と上部電極27との間の絶縁性をより確実に保持することができる。
【0097】
また、欠陥部除去工程の前に、上部電極膜37及び圧電膜29をチップ毎に分割する分割工程を有する場合には、欠陥部除去工程において圧電膜29に印加される電界により発生する機械適応力によって圧電膜29にクラックが発生するのを防止することができる。
【0098】
また、分割工程において接続部40が設けられない場合には、欠陥部除去工程において上部電極膜37の分割された各上部電極膜37aに別個に電圧を印加する必要がある。これに対し、接続部40が設けられる場合には、各上部電極膜37aに別個に電圧を印加する必要がないので、簡便な電圧印加手段により、欠陥部除去工程における電圧の印加を行うことができる。
【0099】
また、接続部40は、連続して一直線上に並ぶことがないように配置されるので、接続部40が連続して一直線上に並ぶことによって上記の機械応力によるクラックが圧電膜29に生じ易くなるのを防止することができる。
【0100】
また、上部電極膜37の形成は、圧電膜29を構成する圧電材料よりも融点が高い材料を用いて行われる。これにより、欠陥部除去工程において欠陥部29aを除去した後に、溶融した上部電極27の材料が貫通孔31に流れ込んで下部電極26と上部電極27との間の絶縁性が損なわれるのを防止することができる。
【0101】
(変形例)
図8A及び図8Bは、圧電アクチュエータの変形例を示す。この圧電アクチュエータ24bは、図8A及び図8Bに示すように、上部電極27に電圧を供給するための給電層41を、上部電極27上に固定端側から自由端側にかけて有している。
【0102】
給電層41は、給電対象の圧電アクチュエータ24bの上部電極27に対して電圧降下なく極力均一に電圧が印加されるように、絶縁体30を貫いて複数箇所で上部電極27に接続している。なお、給電層41と上部電極27の接点は、1つのカンチレバー23を構成する1つの圧電アクチュエータ24bについて少なくとも1つあればよく、多点であってもよい。
【0103】
一方、外側圧電式アクチュエータ5は、上述のように、変位する方向あるいはタイミングが異なる複数のカンチレバー23が直列に接続されたミアンダ構造を有する。そして、各隣接するカンチレバー23には、相互に極性やタイミングが異なる給電を行う必要がある。すなわち、直列に接続されたカンチレバー23の下部電極26を共通の連続膜で形成してGND(グランド)側とする場合、1つおきのカンチレバー23の上部電極27に同じ極性の駆動電圧が入力され、他の1つおきのカンチレバー23の上部電極27に、これと逆極性の駆動電圧が入力される。
【0104】
このため、当該1つおきのカンチレバー23に対する駆動電圧の供給と、当該他の1つおきのカンチレバー23に対する駆動電圧の供給は、基端側から先端側まで直列に配列され、かつ各列において交互に下部電極26との絶縁状態が保たれた、2列の給電層41によりそれぞれ行われる。
【0105】
上記の給電層41を有する圧電アクチュエータ24bにおいて、仮に給電層41と空間的に重なった圧電体28に欠陥部29aが残っている場合を仮定する。この場合、欠陥部29aにおける絶縁破壊が起こると、給電層41の断線や、破壊熱の給電層41を介した伝達や、給電層41と下部電極26との短絡による破壊領域の拡大が引き起こされ、アクチュエータとしての機能が大きく低下するおそれがある。
【0106】
したがって、圧電体28における欠陥部29aの残存が完全に排除された本発明の圧電アクチュエータは、給電層41を有する圧電アクチュエータ24bにおいて特に有効である。
【0107】
(適用例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の製造方法により製造される圧電素子は、アクチュエータに限らず、圧電素子の力・電圧間の変換機能を利用したセンサやスピーカ等の種々の製品に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1…光偏向器、2…ミラー部、3a、3b…内側圧電式アクチュエータ、4…可動枠、5(5a、5b)…外側圧電式アクチュエータ、6…固定枠、16(16a、16b)…電極パッド、21a、21b…トーションバー、23…カンチレバー、24、24b…圧電アクチュエータ、25…圧電素子、26…下部電極、27…上部電極、28…圧電体、29…圧電膜、29a…欠陥部、30…絶縁体、31…貫通孔、32…給電用の配線、33、34…除去されている部分、35…SOIウェハ、35a…Si基板、35b…熱酸化膜、35c…シリコン単結晶層、36…下部電極膜、37…上部電極膜、37a…チップ毎の上部電極膜、38…絶縁膜、39…露出部、40…接続部、41…給電層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8