【課題】使用に伴う劣化等に起因するFOUP等の基板収納容器の交換時期を予測可能な基板収納容器管理システムを、センサ等の機器類を設けた基板収納容器ではなく、現在、汎用的に用いられている基板収納容器を適用して実現する。
【解決手段】搬出入口41を有する基板収納容器であるFOUP4に対して基板Wを出し入れ処理可能なロードポート2によって、FOUP4に付された個体識別用ID4xを読み取り、個体識別用ID4xと、ロードポート2に設けたセンサ2cのセンサ値を上位システムCに送信し、上位システムCにおいてこれら個体識別用ID4xとセンサ値を相互に紐付けてデータベースCdに格納して蓄積し、データベースCd内のデータを解析して個体識別用ID4x毎のFOUP4の状態を出力するように構成した。
搬出入口を有する基板収納容器と、前記基板収納容器が載置される載置台を有し且つ前記基板収納容器に対して前記基板を出し入れ処理可能なロードポートと、前記ロードポートと通信可能な上位システムとを備え、
前記ロードポートは、前記基板収納容器に付された個体識別用IDを読み取り可能なID読取手段と、前記基板収納容器の状態を直接または間接的に検出するセンサと、前記ID読取手段で読み取った前記個体識別用ID及び前記センサで検出したセンサ値を前記上位システムに対して送信可能なロードポート側通信手段とを備えたものであり、
前記上位システムは、ロードポート側通信手段から送信された前記個体識別用IDと前記センサ値を受信可能な上位システム側通信手段と、前記上位システム側通信手段によって受信した前記個体識別用IDと前記センサ値を相互に紐付ける紐付け手段と、前記紐付け手段で紐付けたデータを格納して蓄積するデータベースと、前記データベース内の前記データを解析して前記個体識別用ID毎の前記基板収納容器の状態を出力するデータ処理部とを備えたものであることを特徴とする基板収納容器管理システム。
前記データ処理部は、特定の前記センサで検出したセンサ値から統計データを算出する算出手段と、特定の前記個体識別用IDに紐付けされたセンサ値と前記算出手段によって算出した算出結果とを比較する比較手段と、前記比較手段によって比較した結果に基づいて前記基板収納容器の状態を出力する状態出力手段とを備えている請求項1に記載の基板収納容器管理システム。
前記請求項1乃至3の何れかに記載の基板収納容器管理システムに適用されるロードポートであり、前記基板収納容器に付された個体識別用IDを読み取り可能な前記ID読取手段と、前記基板収納容器の状態を直接または間接的に検出するセンサと、前記ID読取手段で読み取った前記個体識別用ID及び前記センサで検出したセンサ値を前記上位システムに対して送信可能なロードポート側通信手段とを備えていることを特徴としているロードポート。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、歩留まりや品質の向上のため、クリーンルーム内でウェーハの処理がなされている。近年では、ウェーハの周囲の局所的な空間についてのみ清浄度をより向上させる「ミニエンバイロメント方式」を取り入れ、ウェーハの搬送その他の処理を行う手段が採用されている。ミニエンバイロメント方式では、筐体の内部で略閉止されたウェーハ搬送室(以下「搬送室」)の壁面の一部を構成するとともに、高清浄な内部空間にウェーハが収納された容器であるFOUP(Front-Opening Unified Pod)を載置し、FOUPのドア(以下「FOUPドア」)に密着した状態で当該FOUPドアを開閉させる機能を有するロードポート(Load Port)が搬送室に隣接して設けられている。
【0003】
ロードポートは、搬送室との間でウェーハの出し入れを行うための装置であり、搬送室とFOUPの間におけるインターフェース部として機能する。そして、FOUPドアに係合可能であってFOUPドアを開閉させるロードポートのドア(以下「ロードポートドア」)を開放すると、搬送室内に配置された搬送ロボット(ウェーハ搬送装置)によって、FOUP内のウェーハを搬送室内に取り出したり、ウェーハを搬送室内からFOUP内に収納できるように構成されている。
【0004】
そして、半導体の製造工程では、ウェーハ周辺の雰囲気を適切に維持するために、上述のFOUPと呼ばれる格納ポッドが用いられ、FOUPの内部にウェーハを収容して管理している。特に近年では素子の高集積化や回路の微細化が進められており、ウェーハ表面へのパーティクルや水分の付着が生じないように、ウェーハ周辺を高いクリーン度に維持することが求められている。そこで、ウェーハ表面が酸化するなど表面の性状が変化することがないように、FOUPの内部に窒素ガスを充填して、ウェーハ周辺を不活性ガスである窒素雰囲気としたり、真空状態にする処理(パージ処理)も行われている。
【0005】
ところで、FOUPは、内部に埃や処理工程で使用された不純物が滞留するため、定期的に温水洗浄が行われて再利用される。この温水洗浄が繰り返されることにより、樹脂製のFOUPは徐々に変形していく。このようなFOUPの変形によって気密性が低下することで、FOUPに対する気体の流入・漏出(リーク)が問題となる。例えば、FOUP本体のうちFOUPドアによって開閉可能な搬出入口に歪みが生じた場合、FOUPドアによる気密性が低下する。その結果、FOUP内の気体を窒素ガスに置き換えるパージ処理を実施した後に、ОHT等による搬送中にFOUP内の窒素ガスがFOUP外に漏れ出たり、周囲の大気がFOUP内に流入し易い状況になり、FOUP内の酸素濃度が上昇するという問題が生じる。
【0006】
このような問題に対処すべく、FOUPの形状をFOUP毎に測定することによってFOUPの劣化の程度を判定する手法(以下「前者の手法」)や、予め設定した所定の使用回数や使用期間を越えたFOUPを一律に交換する手法(以下「後者の手法」)が考えられる。
【0007】
しかしながら、前者の手法は、FOUPの形状を1つずつ測定する必要があるため、このような形状測定を実施する時間を、半導体の製造工程中、または半導体の製造工程の前後の適宜のタイミングで確保する必要があるため、時間が掛かり、非効率的である。また、後者の手法であれば、交換が必要な程度にまで劣化していないFOUPを交換してしまう事態が生じ、FOUPの新規購入に要するコストが必要以上に多くなったり、所定の使用回数や使用期間に達する前に変形の程度が大きくなったFOUPを所定の使用回数や使用期間に達するまで使用し続けることによって、FOUPに対する気体の流入・漏出(リーク)が発生し得ることがある。
【0008】
そもそもFOUPの変形は少しずつ進行するために、劣化による交換時期をFOUP毎に正確に把握することは困難であり、後者の手法のようなFOUPの個体差を無視した交換手法であれば、非効率的であり、不要な交換費用が発生したり、FOUPに対して気体が流入・漏出(リーク)する事態を未然に防止できる確率が高くないと考えられる。
【0009】
そこで、基板収納容器に設けられてその使用状態を検出する検出手段と、基板収納容器に設けられてその検査点検時期を判断する小型の無線通信手段と、検査点検時期の基板収納容器を検査点検する検査点検装置と、無線通信手段による基板収納容器の検査点検時期の判断結果と検査点検装置による基板収納容器の検査点検結果のいずれかの結果に応じた内容を報知する報知手段とを備え、無線通信手段が、少なくとも検出手段の検出値と基板収納容器に関する検査点検値とを演算処理部により比較し、この比較結果により、基板収納容器の検査点検時期を判断する管理システムが案出されている(特許文献1参照)。
【0010】
このような管理システムによれば、基板収納容器に設けた検出手段によって当該基板収納容器の使用状態を検出し、検出値の出力先である無線通信手段において、検出値と基板収納容器に関する閾値とを比較し、その結果、検出値が閾値未満であったり、閾値に近付いていない場合には、基板収納容器をそのまま継続して使用可能であると判断する一方、検出値が閾値に近付いたり、閾値を越えた場合には、基板収納容器の性能や品質が低下し、基板収納容器の使用限度が近いと判断し、基板収納容器の交換品を選定することが可能であると前記特許文献1には記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1記載の管理システムであれば、基板収納容器であるFOUPにセンサ及び通信手段(以下「センサ等の機器類」)を設けることが必須であるため、FOUPにセンサ等の機器類を取り付ける作業が必要になることに加えて、FOUP毎にセンサ用の電源を実装することも要求される。したがって、特許文献1に記載のシステムを実現するためには、基板収納容器として現在使用されている一般的なFOUPを用いることができず、新たなFOUPに全て変更する必要がある。半導体製造ラインでは大量のFOUPが既に広く使用されており、その全数を交換して同文献の管理システムを採用することはユーザにとって負担が大きく、製造現場に導入され難いと考えられる。
【0013】
さらに、大量のFOUPにそれぞれ付与されたセンサ等の機器類を個別にメンテナンスする作業は膨大な労力を要し、FOUPを温水洗浄する際の熱や浸水によるセンサ等の機器類の故障にも留意する必要があり、センサ等の機器類を正常な状態で使用するための事前準備やメンテナンスを万全に行うことは困難である。そして、センサ等の機器類の事前準備やメンテナンスが不十分であれば、センサによる正確な検出処理ができなかったり、不安定な無線通信状態に陥り、交換対象となるFOUPを適切に選定することができず、本来であれば交換対象となるFOUPを使用することによって、FOUPに対する気体の流入・漏出(リーク)が発生し、FOUP内のウェーハの表面が酸化されるという問題も生じ得る。このような問題は、FOUP以外の基板収納容器であっても同様に生じ得る。
【0014】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、FOUP等の基板収納容器内に収容されるウェーハの表面が酸化されることを抑制すべく、使用に伴う劣化等に起因する基板収納容器の交換時期を予測可能な基板収納容器管理システムを、センサ等の機器類を設けたFOUPではなく、現在、汎用的に用いられているFOUPを適用して実現することである。なお、本発明は、FOUP以外の基板収納容器であっても対応可能な技術である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、搬出入口を有する基板収納容器と、基板収納容器が載置される載置台を有し且つ基板収納容器に対して基板を出し入れ処理可能なロードポートと、ロードポートと通信可能な上位システムとを備えた基板収納容器管理システムであって、ロードポートとして、基板収納容器に付された個体識別用IDを読み取り可能なID読取手段と、基板収納容器の状態を直接または間接的に検出するセンサと、ID読取手段で読み取った個体識別用ID及びセンサによって取得したセンサ値を上位システムに対して送信可能なロードポート側通信手段とを備えたものを適用し、上位システムとして、ロードポート側通信手段から送信された個体識別用IDとセンサ値を受信可能な上位システム側通信手段と、上位システム側通信手段によって受信した個体識別用IDとセンサ値を相互に紐付ける紐付け手段と、紐付け手段で紐付けたデータを格納して蓄積するデータベースと、データベース内のデータを解析して個体識別用ID毎の基板収納容器の状態を出力するデータ処理部とを備えたものを適用していることを特徴としている。
【0016】
ここで、個体識別用IDは、個々の基板収納容器を識別するためのものであり、ロードポートに設けたセンサの検出値に関してどの基板収納容器から取得したものなのかを判断するためのものである。なお、個体識別用IDに基板収納容器の経年劣化などに関するデータは書き込まれない。「基板収納容器の状態を直接または間接的に検出するセンサ」は、基板収納容器の劣化(変形)を示す情報を検出可能なセンサであればよく、例えば、基板収納容器内を窒素ガス等の適宜の気体に置換するパージ処理時において基板収納容器のポートを通じて基板収納容器内から基板収納容器外に排気される気体(排気ガス)の圧力を検出するセンサや、基板収納容器内におけるウェーハ位置を検出するマッピングセンサ等を挙げることができる。このような排気ガスの圧力センサ値や、マッピングセンサの検出値から基板収納容器の変形を把握することができる。つまり、排気ガスの圧力センサ値が以前より下がった場合には、基板収納容器が変形してパージ処理時に基板収納容器内の気体が基板収納容器の変形部分を通じて外部に漏れ出ていると考えることができる。また、マッピングセンサの検出値が以前の検出値と異なる(ウェーハの位置ズレが発生している)場合は、基板収納容器が変形し、ウェーハの位置が変化したと考えることができる。つまり、基板収納容器内に収容されるウェーハは、基板収納容器内に設けられる多段状の棚に載置されており、基板収納容器の変形が進むと高さ方向におけるウェーハ同士の隙間が変化するため、このような変化を検出することで基板収納容器が変形しているか否かを判断できたり、1枚のウェーハが傾いているか否かを検出することによって基板収納容器が変形しているか否かを判断できる。
【0017】
このような本発明に係る基板収納容器管理システムであれば、センサ用の電源を各基板収納容器に実装する必要がなく、全ての基板収納容器に個体識別用IDを付与する作業は、全ての基板収納容器にセンサ等の機器類を設ける作業よりも容易であり、さらに、ロードポートのID読取手段、センサ、及びロードポート側通信手段に対する電源供給は、ロードポートが有する電気系を利用して比較的容易に行うことができる。加えて、本発明に係る基板収納容器管理システムは、センサの設置対象をロードポートに設定していることによって、従来技術として述べた基板収納容器毎にセンサ等の機器類を設ける態様と比べて、メンテナンスの対象となる絶対数が少なくなり、メンテナンスの負担が軽減されるとともに、基板収納容器の温水洗浄時の熱や浸水によるセンサ等の機器類の故障に留意する必要がないという点においても有利である。
【0018】
そして、本発明に係る基板収納容器管理システムによれば、多くの製造現場で既に使用されている基板収納容器に付与した個体識別用IDと、ロードポートに設けたセンサによる検出値とを上位システムで紐付けてデータベース化し、上位システムのデータ処理部でデータベース内のデータを解析して個体識別用ID毎の基板収納容器の状態を出力することによって、ユーザは基板収納容器の劣化情報を取得・把握することができる。このような本発明に係る基板収納容器管理システムを活用することによって、劣化情報に基づいて基板収納容器個々の交換時期を特定することができ、交換すべき基板収納容器を新たな基板収納容器に交換することで、基板収納容器の変形に起因する基板収納容器内のウェーハ表面の酸化という事態を防止・抑制して、エラー発生頻度を低減することができ、半導体製造装置の停止時間が短くなり、生産性が向上する。
【0019】
本発明におけるデータ処理部の具体的な構成は特に限定されないが、好適な一例として、特定のセンサから検出したセンサ値から統計データを算出する算出手段と、特定の個体識別用IDに紐付けされたセンサ値と算出手段によって算出した算出結果とを比較する比較手段と、比較手段によって比較した結果に基づいて基板収納容器の状態を出力する状態出力手段とを備えたものを挙げることができる。
【0020】
本発明では、ロードポートとして、複数種類のセンサを備え、これらセンサ毎のセンサ値をロードポート側通信手段によって上位システムに送信可能なものを適用することができ、この場合、上位システムの紐付け手段が、ロードポート側通信手段から送信された個体識別用IDとセンサ毎のセンサ値を相互に紐付け可能なものであればよい。
【0021】
また、本発明に係るロードポートは、上述の基板収納容器管理システムに適用されるものであり、上述のID読取手段、センサ、及びロードポート側通信手段とを備えていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係る基板収納容器管理方法は、搬出入口を有する基板収納容器に対して基板を出し入れ処理可能なロードポートによって、基板収納容器に付された個体識別用IDを読み取るID読取ステップと、ID読取ステップで読み取った個体識別用ID及びロードポートに設けたセンサによって基板収納容器の状態を直接または間接的に検出したセンサ値を上位システムに対して送信するロードポート側通信ステップと、ロードポート側通信ステップによって送信された個体識別用IDとセンサ値を上位システムで受信し、これら受信した個体識別用IDとセンサ値を相互に紐付ける紐付けステップと、紐付けステップで紐付けたデータをデータベースに格納して蓄積するデータベース化ステップと、データベース内のデータを解析して個体識別用ID毎の基板収納容器の状態を出力するデータ処理ステップとを経ることを特徴としている。
【0023】
このような本発明に係る基板収納容器管理方法であれば、多くの製造現場で既に使用されている基板収納容器を大幅な仕様変更を伴うことなくそのまま利用して、各基板収納容器の状態を出力することができる。そして、基板収納容器の状態に関する出力情報に基づいて各基板収納容器の交換時期の予測を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、FOUP等の基板収納容器に個体識別用IDを付与し、IоT(Internet of Things)により、ロードポートに設けたセンサのセンサ値と個体識別用IDを紐付けてデータベース化し、データベースのデータに基づいて基板収納容器の使用に伴う劣化状態を判断し、基板収納容器の交換時期を予測可能な基板収納容器管理システムを、センサ等の機器類を設けた専用の基板収納容器ではなく、汎用的に用いられている基板収納容器を適用して実現することができる。そして、このような本発明により、基板収納容器の形状測定に時間を掛けることなく、基板収納容器の変形に関する情報を取得することができ、交換すべき基板収納容器を特定し、その特定した基板収納容器を新たな基板収納容器に交換すれば、基板収納容器内に収容されるウェーハの表面が酸化されることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
本実施形態に係る基板収納容器管理システム1は、例えば
図1に示すように、半導体の製造工程において用いられる基板収納容器であるFOUP4と、ロードポート2と、上位システムCとを利用して構成され、具体的にはFOUP4に付帯させた個体識別用ID4xと、ロードポート2に設けたセンサ2cで検出したFOUP4に関するセンサ値とを、ロードポート2の通信手段2yから上位システムCに送信し、上位システムCにおいてこれら個体識別用ID4x及びセンサ値を紐付けしてデータベース化し、データベースCdのデータに基づいてFOUP4の状態を出力可能なシステムである。
【0028】
FOUP4は、
図2に示すように、半導体の製造工程において、クリーンルームに配置されるロードポート2及び搬送室3を備えたEFEM(Equipment Front End Module)とともに用いられるものである。
図2には、EFEMとその周辺装置の相対位置関係を模式的に示す。
【0029】
搬送室3の内部空間3Sには、基板であるウェーハWをFOUP4と処理装置Mとの間で搬送可能な搬送ロボット31を設けている。搬送室3内に設けたファンフィルタユニット32を駆動させることにより、搬送室3の内部空間3Sに下降気流を生じさせ、清浄度の高い気体(環境ガス)を搬送空間3Sで循環させることが可能である。搬送室3のうちロードポート2を配置した前壁面3Aに対向する後壁面3Bには例えば処理装置M(半導体処理装置)が隣接して設けられる。クリーンルームにおいて、処理装置Mの内部空間MS、搬送室3の内部空間3S及びロードポート2上に載置されるFOUP4の内部空間4Sは高清浄度に維持される。一方、ロードポート2を配置した空間、換言すれば処理装置M外、EFEM外は比較的低清浄度となる。
【0030】
本実施形態では、
図2に示すように、EFEMの前後方向Dにおいてロードポート2、搬送室3、処理装置Mをこの順で相互に密接させて配置している。なお、EFEMの作動は、ロードポート2のコントローラ(
図4に示す制御部2C)や、EFEM全体のコントローラ(
図2に示す制御部3C)によって制御され、処理装置Mの作動は、処理装置Mのコントローラ(
図2に示す制御部MC)によって制御される。ここで、処理装置M全体のコントローラである制御部MCや、EFEM全体のコントローラである制御部3Cは、ロードポート2の制御部2Cの上位コントローラである。なお、基板収納容器管理システム1を構成する上位システムCは、サーバで構成され、半導体製造工程に設置された複数のロードポート2と接続可能である。これら各制御部2C,MC,3Cは、CPU、メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成されるもので、メモリには予め処理に必要なプログラムが格納してあり、CPUは逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して所期の機能を実現するものとなっている。
【0031】
FOUP4は、
図2及び
図3に示すように、開口部である搬出入口41を通じて内部空間4Sを開放可能なFOUP本体42と、搬出入口41を開閉可能なFOUPドア43とを備え、内部に複数枚のウェーハWを上下方向Hに多段状に収容し、搬出入口41を介してこれらウェーハWを出し入れ可能に構成された既知のものである。
【0032】
FOUP本体42は、内部空間4SにウェーハWを複数段所定ピッチで載せることが可能な棚部(ウェーハ載置棚)を備えたものである。FOUP本体42の底壁には、
図3等に示すように、ポート40が所定箇所に設けられている。ポート40は、例えば、FOUP本体42の底壁に形成したポート取付用貫通孔に嵌め込まれた中空筒状のグロメットシールを主体としてなり、チェック弁によって開閉可能に構成されたものである。FOUP本体42の上壁における上向面の中央部に、容器搬送装置(例えばOHT:Over Head Transport)等に把持されるフランジ部を設けている。
【0033】
FOUPドア43は、ロードポート2の後述する載置台23に載置された状態においてロードポート2のロードポートドア22と対面するものであり、概略板状をなす。FOUPドア43には、このFOUPドア43をFOUP本体42にロックし得るラッチキー(図示省略)を設けている。FOUPドア43のうち搬出入口41をFOUPドア43で閉止した状態においてFOUP本体42に接触または近接する所定の部分にガスケット(図示省略)を設け、ガスケットをFOUP本体42に接触させて弾性変形させることで、FOUP4の内部空間4Sを密閉できるように構成されている。
【0034】
本実施形態に係るFOUP4は、
図1に示すように、適宜の箇所に個体識別用ID4xを取り付けている。なお、
図1では個体識別用ID4xを模式的に示している。個体識別用ID4xの一例としてRFID(Radio Frequency Identifier)を挙げることができるが、これに限定されず適宜のIDを用いることができる。FOUP4に付帯させる個体識別用ID4xは、パッシブタグ(受動タグ)、アクティブタグ(能動タグ)、双方を組み合わせたセミアクティブタグ(起動型能動タグ)の何れであってもよく、通信方式も特に限定されるものではない。さらに、FOUP4に付帯させる個体識別用ID4xとして、1次元バーコードやQRコード(登録商標)のような2次元バーコード等を用いることもできる。
【0035】
本実施形態に係るロードポート2は、
図3乃至
図6等に示すように、搬送室3の前壁面3Aの一部を構成し、且つ搬送室3の内部空間3Sを開放するための開口部21aが形成された板状をなすベース21と、ベース21の開口部21aを開閉するロードポートドア22と、ベース21に略水平姿勢で設けた載置台23とを備えている。
【0036】
ベース21の下端には、キャスタ及び設置脚を有する脚部24を設け、FOUPドア43と対向する位置にウインドウユニット214(
図7参照)を設けている。このウインドウユニット214に設けた開口部215が、ウェーハWの通過を許容する開口部である。
【0037】
載置台23は、ベース21のうち高さ方向中央よりもやや上方寄りの位置に略水平姿勢で配置される水平基台25(支持台)の上部に設けられる。この載置台23は、FOUP本体42の内部空間4Sを開閉可能とするFOUPドア43をロードポートドア22に対向させる向きでFOUP4を載置可能なものである。また、載置台23は、FOUPドア43がベース21の開口部21aに接近する所定のドッキング位置(
図8参照)と、FOUPドア43をドッキング位置よりもベース21から所定距離離間した位置(
図3参照)との間で、ベース21に対して進退移動可能に構成されている。載置台23は、
図4に示すように、上向きに突出させた複数の突起(ピン)231を有し、これらの突起231をFOUP4の底面に形成された穴(図示省略)に係合させることで、載置台23上におけるFOUP4の位置決めを図っている。また、載置台23に対してFOUP4を固定するためのロック爪232を設けている。このロック爪232をFOUP4の底面に設けた被ロック部(図示省略)に引っ掛けて固定したロック状態にすることで、位置決め用の突起231と協働してFOUP4を載置台23上における適正な位置に案内しながら固定することができる。また、FOUP4の底面に設けた被ロック部に対するロック爪232のロック状態を解除することでFOUP4を載置台23から離間可能な状態にすることができる。
【0038】
ロードポートドア22は、FOUPドア43を連結して、FOUPドア43をFOUP本体42から取り外し可能な蓋連結状態と、FOUPドア43に対する連結状態を解除し、且つFOUPドア43をFOUP本体42に取り付けた蓋連結解除状態との間で切替可能な連結機構221(
図6参照)を備え、連結機構221によってFOUPドア43を一体化した状態で保持したまま所定の移動経路に沿って移動可能なものである。本実施形態のロードポート2は、ロードポートドア22を、
図8に示す位置、つまり、当該ロードポートドア22が保持するFOUPドア43によってFOUP本体42の内部空間4Sを密閉する全閉位置(C)と、
図9に示す位置、つまり、当該ロードポートドア22が保持するFOUPドア43をFOUP本体42から離間させて当該FOUP本体42の内部空間4Sを搬送室3内に向かって開放させる開放位置(O)との間で少なくとも移動可能に構成している。本実施形態のロードポート2は、全閉位置(C)に位置付けたロードポートドア22の起立姿勢を維持したまま
図9に示す開放位置(O)まで移動させることができ、さらに、
図9に示す開放位置(O)から図示しない全開位置まで起立姿勢を維持したまま下方向に移動可能に構成している。このようなロードポートドア22の移動は、ロードポート2に設けたドア移動機構27によって実現している。また、本実施形態のロードポート2は、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4がベース21から離間する方向に移動することを規制する移動規制部Lを備えている。本実施形態では、移動規制部Lをウインドウユニット214としてユニット化している(
図7参照)。
【0039】
本実施形態のロードポート2は、FOUP4の内部空間4Sにパージ用気体(パージ用ガスとも称され、主に窒素ガスやドライエアが用いられる)を注入し、FOUP4の内部空間4Sの気体雰囲気をパージ用気体に置換可能なパージ装置Pを備えている(
図4参照)。パージ装置Pは、載置台23上に上端部を露出可能な状態で所定箇所に配置される複数のパージノズル9(気体給排装置)を備えたものである。これら複数のパージノズル9は、FOUP4の底面に設けたポート40の位置に応じて載置台23上の適宜位置に取り付けられ、ポート40に接触した状態で接続可能なものである。このようなパージ装置Pを用いたボトムパージ処理は、FOUP4の底部に設けられた複数のポート40のうち、所定数(全部を除く)のポートを「供給ポート」として機能させ、供給ポートに接続したパージノズル9により当該FOUP4内に窒素ガスや不活性ガス又はドライエア等の適宜選択されたパージ用気体を注入するとともに、残りのポート40を「排気ポート」として機能させ、排気ポートに接続したパージノズル9を通じてFOUP4内の気体雰囲気を排出することで、FOUP4内にパージ用気体を充満する処理である。ロードポート2は、ボトムパージ処理時に排気ポートとして機能するポート40に接続したパージノズル9のガス圧(排気圧)を検出する圧力センサ(図示省略)を備えている。
【0040】
本実施形態のロードポート2は、
図10に示すように、FOUP4内におけるウェーハWの有無や収納姿勢を検出可能なマッピング部mを備えている。マッピング部mは、FOUP4内において高さ方向Hに多段状に収納されたウェーハWの有無を検出可能なマッピングセンサ(送信器m1、受信器m2)と、マッピングセンサm1,m2を支持するセンサフレームm3とを有している。マッピング部mは、その全体が搬送室内の搬送空間に配置されるマッピング退避姿勢と、少なくともマッピングセンサm1,m2がベース21の開口21aを通じてFOUP4内に位置付けられるマッピング姿勢との間で姿勢可能である。マッピング部mは、マッピング退避姿勢やマッピング姿勢を維持したまま高さ方向Hに移動可能に構成されている。
図10に示すように、センサフレームm3の一部をドア移動機構27の一部に取り付けることで、マッピング部mの昇降移動が、ロードポートドア22の昇降移動と一体に行われるように構成している。なお、
図10以外の各図ではマッピング部mを省略している。
【0041】
マッピングセンサは、信号であるビーム(線光)を発する送信器m1(発光センサ)と、送信器m1から発せられた信号を受信する受信器m2(受光センサ)とから構成される。なお、マッピングセンサを送信器と、送信器から発せられた線光を送信器に向かって反射する反射部とによって構成することも可能である。この場合、送信機は、受信器としての機能も有する。
【0042】
そして、本実施形態に係るロードポート2は、
図1に示すように、FOUP4に付された個体識別用ID4xを読み取り可能なID読取手段2xと、ID読取手段2xで読み取った個体識別用ID4x及びFOUP4の状態を直接または間接的に検出するセンサ2c(本実施形態では、圧力センサ、マッピングセンサの2種類のセンサ)の検出値(センサ値)を上位システムCに対して送信可能なロードポート側通信手段2yとを備えている。ID読取手段2x、圧力センサ、マッピングセンサ、ロードポート側通信手段2yはそれぞれ汎用品で構成され、ロードポート2の所定箇所に設けられる。
【0043】
上位システムCは、
図1に示すように、上位システム側通信手段Cxと、紐付け手段Cyと、データベースCdと、データ処理部Czとを備えている。上位システム側通信手段Cxは、ロードポート側通信手段2yから送信される個体識別用ID4x及びセンサ値を受信可能なものである。紐付け手段Cyは、上位システム側通信手段Cxによって受信した個体識別用ID4xとセンサ値を相互に紐付けるものである。データベースCdは、紐付け手段Cyで紐付けたデータを格納して蓄積するものであり、データ処理部Czは、データベースCd内のデータを解析して個体識別用ID4x毎の状態(本実施形態ではFOUP4の交換時期の予測結果)を出力するものである。上位システム側通信手段Cx、紐付け手段Cy、データベースCdはそれぞれ汎用品を用いて構成することができる。データ処理部Czにおける具体的な処理内容は後述する。
【0044】
次に、EFEMの動作フローと併せて、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1の動作フローを説明する。
【0045】
先ず、OHT等の容器搬送装置によりFOUP4がロードポート2の上方まで搬送され、載置台23上に載置される。この際、例えば載置台23に設けた位置決め用突起231がFOUP4の位置決め用凹部に嵌まり、載置台23上のロック爪232をロック状態にする(ロック処理)。本実施形態では、搬送室3の幅方向に3台並べて配置したロードポート2の載置台23にそれぞれFOUP4を載置することができる。また、FOUP4が載置台23上に所定の位置に載置されているか否かを検出する着座センサ(図示省略)によりFOUP4が載置台23上の正規位置に載置されたことを検出するように構成することもできる。
【0046】
本実施形態のロードポート2では、載置台23上の正規位置にFOUP4が載置された時点で、載置台23に設けた例えば加圧センサの被押圧部をFOUP4のうち底面部が押圧したことを検出する。これをきっかけに、載置台23に設けたパージノズル9(全てのパージノズル9)が載置台23の上面よりも上方へ進出してFOUP4の各ポート40に連結し、各ポート40は閉止状態から開放状態に切り替わる。そして、本実施形態のロードポート2は、パージ装置PによりパージFOUP4の内部空間4Sに窒素ガスを供給して、FOUP4の内部空間4Sを窒素ガスに置換する処理(ボトムパージ処理)を行う。ボトムパージ処理時に、FOUP4内の気体雰囲気は排気ポートとして機能するポート40に接続されているパージノズル9からFOUP4外に排出される。このようなボトムパージ処理によって、FOUP4内の水分濃度及び酸素濃度をそれぞれ所定値以下にまで低下させてFOUP4内におけるウェーハWの周囲環境を低湿度環境及び低酸素環境にする。
【0047】
本実施形態のロードポート2は、ロック処理後に、
図2に示す位置にある載置台23を
図8に示すドッキング位置まで移動させて(ドッキング処理)、移動規制部Lを用いてFOUP4の少なくとも両サイドを保持して固定する処理(クランプ処理)を行い、連結機構221を蓋連結状態に切り替え(蓋連結処理)、FOUPドア43をロードポートドア22とともに移動させて、ベース21の開口部21a及びFOUP4の搬出入口41を開放して、FOUP4内の密閉状態を解除する処理(密閉解除処理)を実行する。本実施形態のロードポート2は、ロードポートドア22を開放位置(O)から全開位置に移動させる処理中に、マッピング部mによるマッピング処理を実施する。マッピング処理は、密閉解除処理を実行する直前までマッピング退避姿勢にあるマッピング部mを、ロードポートドア22を全閉位置(C)から開放位置(O)まで移動させた後にマッピング姿勢に切り替え、ロードポートドア22を全開位置に向かって下方へ移動させることで、マッピング部mもマッピング姿勢を維持したまま下方へ移動させ、マッピングセンサm1,m2を用いて、FOUP4内に収納されたウェーハWの有無や収納姿勢を検出する処理である。すなわち、送信器m1から受信器m2に向かって信号を発することで送信器m1と受信器m2との間に形成されている信号経路が、ウェーハWの存在しているところでは遮られ、ウェーハWの存在していないところでは遮られずに受信器m2に達する。これにより、FOUP4内において高さ方向Hに並んで収納されているウェーハWの有無や収納姿勢を順次検出することができる。
【0048】
密閉解除処理を実行することによって、FOUP本体42の内部空間4Sと搬送室3の内部空間3Sとが連通した状態になり、マッピング処理で検出した情報(ウェーハ位置)に基づいて、搬送室3の内部空間3Sに設けた搬送ロボット31が特定のウェーハ載置棚からウェーハWを取り出したり、特定のウェーハ載置棚にウェーハWを収納する処理(搬送処理)を実施する。
【0049】
本実施形態に係るロードポート2は、FOUP4内のウェーハWが全て処理装置Mによる処理工程を終えたものになると、ドア移動機構27によりロードポートドア22を全閉位置(C)に移動させて、ベース21の開口部21a及びFOUP4の搬出入口41を閉止して、FOUP4の内部空間4Sを密閉する処理(密閉処理)を行い、続いて、連結機構221を蓋連結状態から蓋連結解除状態に切り替える処理(蓋連結解除処理)を実行する。この処理により、FOUP本体42にFOUPドア43を取り付けることができ、ベース21の開口部21a及びFOUP4の搬出入口41はそれぞれロードポートドア22、FOUPドア43によって閉止されて、FOUP4の内部空間4Sは密閉状態になる。
【0050】
続いて、本実施形態に係るロードポート2は、移動規制部LによるFOUP4の固定状態(クランプ状態)を解除するクランプ解除処理を行い、次いで、載置台23をベース21から離間する方向に移動させる処理(ドッキング解除処理)を実行した後、載置台23上のロック爪232でFOUP4をロックしている状態を解除する(ロック解除処理)。これにより、所定の処理を終えたウェーハWを格納したFOUP4は、各ロードポート2の載置台23上から容器搬送装置に引き渡され、次工程へと運び出される。
【0051】
以上の処理を行う過程で、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1は、ロードポート2の載置台23に載置されたFOUP4の状態を出力する(具体的には、FOUP4の交換時期を予測する)。すなわち、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1は、ロードポート2の載置台23にFOUP4がセットされた時点で、FOUP4の個体識別用ID4xをロードポート2のID読取手段2xで読み取り、読み取った個体識別用ID4xをロードポート側通信手段2yによって上位システムCの紐付け手段Cyへ送信する。そして、FOUP4内をパージする処理(ボトムパージ処理)を行う際に、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1は、ロードポート2の排気用パージノズル9に関連付けて設けた圧力センサで排気ガスの圧力を検出し、検出値(圧力値)を上位システムCの紐付け手段Cyへ送信する。
【0052】
上位システムCは、上位システム側通信手段Cxによって個体識別用ID4x及び圧力値を受信し、紐付け手段Cyで個体識別用ID4x及び圧力値を相互に紐付けて、データベースCdに保存(格納、蓄積)する。また、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1は、マッピング部mによるマッピング処理時に、マッピングセンサの検出値であるウェーハ位置をロードポート側通信手段2yによって上位システムCの紐付け手段Cyへ送信する。上位システムCは、上位システム側通信手段Cxによってウェーハ位置を受信し、紐付け手段Cyで個体識別用ID4xとウェーハ位置を紐付けて、データベースCdに保存(格納、蓄積)する。
【0053】
これにより、上位システムCでは、ロードポート2に設けられた各種センサの検出値(本実施形態では圧力センサの圧力値、マッピングセンサのウェーハ位置)をFOUP4に付与された個体識別用ID4xと紐付けてデータベース化する。なお、本実施形態では
図13のテーブルのようにFOUP4毎の個体識別用ID4x、圧力センサの圧力値(
図13の排気ノズル圧力値)、マッピングセンサのウェーハ位置(
図13のFOUPウェーハ位置)と一緒に、計測日時を保存することとしている。そして、上位システムCのデータ処理部Czにおいて、収集したデータを解析し、FOUP4の交換時期の予測を行う。なお、ロードポート2の排気用パージノズル9に関連付けて設けた圧力センサで検出した排気ガスの圧力値の変化に基づいて、FOUP4の搬出入口41とFOUPドア43との間の隙間が広がっていることを判断できる。すなわち、排気用パージノズル9から排気される気体の圧力が低くなっていることが分かれば、FOUP4の搬出入口41とFOUPドア43との間の隙間を通じた排気量が多くなっていることが分かり、FOUP4の搬出入口41とFOUPドア43との間の隙間が広がっていると判断でき、FOUP4の変形を特定できる。また、上述の通り、マッピングセンサの検出値が以前の検出値と異なる(ウェーハWの位置ズレが発生している)場合は、FOUP4が変形し、ウェーハWの位置が変化したと考えることができる。つまり、FOUP4の変形が進むとFOUP4内に多段状に収容されるウェーハW同士の隙間が変化するため、このような変化を検出することでFOUP4の変形を特定したり、ウェーハWが傾いた姿勢で収容されていることを検出することによってFOUP4の変形を特定できる。
【0054】
本実施形態におけるデータ処理部Czは、
図11(a)に示すように、特定のセンサ2c(本実施形態では圧力センサ、マッピングセンサ)で検出したセンサ値(圧力値、ウェーハ位置)から統計データを算出する算出手段Cz1と、特定の個体識別用ID4xに紐付けされたセンサ値と算出手段Cz1によって算出した算出結果とを比較する比較手段Cz2と、比較手段Cz2によって比較した結果に基づいてFOUP4の交換時期を算出して予測結果を出力する予測結果出力手段Cz3とを備えている。すなわち、本実施形態におけるデータ処理部Czは、データベースCdに格納、蓄積されたデータを各種センサ毎に平均化した数値に基づいてFOUP4の交換時期を予測するものである。ここで、「予測結果出力手段Cz3」は、本発明における「比較手段によって比較した結果に基づいて基板収納容器の状態を出力する状態出力手段」に相当するものであり、「状態出力手段」の一例である。
【0055】
具体的には、
図11(b)のフローチャートに示すように、データ処理部Czの算出手段Cz1が、データベースCdからFOUP4の個体識別用ID4x毎にデータを取得し、個体識別用ID4x毎に各種センサ値をグラフ化する処理と、各個体識別用ID4xのグラフ化したセンサ値(センサ値グラフ)をセンサの種類毎に平均化する処理、つまり、センサ2cの種類毎にセンサ値平均グラフを作成する処理(統計データを算出する処理)を行う。
図12(a)に、個体識別用ID「A」に紐付けされた「第1センサのセンサ値」(例えば圧力センサの圧力値)に関する「センサ値グラフ」の一例を示し、同図(b)に、個体識別用ID「A」に紐付けされた「第2センサのセンサ値」(例えばマッピングセンサのウェーハ位置)に関する「センサ値グラフ」の一例を示す。また、同図(c)に、個体識別用ID「A」に紐付けされた第1センサのセンサ値に関する「センサ値グラフ」と、個体識別用ID「B」に紐付けされた第1センサのセンサ値に関する「センサ値グラフ」と、これら複数の「センサ値グラフ」に基づいて作成した「第1センサに関するセンサ値平均グラフ」の一例を示す。
【0056】
センサ値平均グラフを作成する処理に次いで、データ処理部Czの比較手段Cz2が、センサ値平均グラフと個体識別用ID4x毎に作成したセンサ値グラフを解析(比較・検討)する。この場合の解析としては、例えばセンサ値平均グラフと比較されるセンサ値の乖離度や、設定された閾値への接近度合い(あるいは閾値を超えたか否か)等の演算・判断処理を含めることができる。
図12(c)に、第1センサのセンサ値平均グラフと、個体識別用ID「A」に紐付けされた第1センサのセンサ値に関するセンサ値グラフとを並べて示す。
【0057】
そして、データ処理部Czの予測結果出力手段Cz3が、同じ個体識別用ID4xの各種センサの検出値に基づく交換時期予測結果を解析(比較・検討)し、個体識別用ID4x毎(FOUP4毎)の交換時期を予測して、その予測結果を出力する。この場合、センサの種類毎に優先順位(重み付け)を設定したり、平均値を演算する等の処理が可能である。すなわち、センサの種類毎に予測交換時期が異なる場合(例えば第1センサの検出値に基づく交換時期が4月23日であり、第2センサの検出値に基づく交換時期が4月25日である場合)には、最も早い予測交換時期(4月23日)をFOUPの予測交換時期として出力したり、各センサの予測交換時期の平均または中間値(4月24日)をFOUPの予測交換時期として出力したり、あるいは最も遅い予測交換時期(4月25日)をFOUPの予測交換時期として出力するように設定することができる。また、上述の重み付けや平均値の演算等ではなく、センサ値の閾値やFOUP4の使用回数等を任意に設定し、設定した閾値や使用回数等の範囲外となったとき、FOUP4の交換時期として出力することもできる。
【0058】
データ処理部Czが出力する個体識別用ID4x毎(FOUP4毎)の交換時期予測結果は、例えばユーザが視認可能なディスプレイに表示したり、適宜のスピーカ等から音として発して報知するように設定することで、ユーザはFOUP4の交換時期予測結果を把握することができる。
【0059】
このような本実施形態に係る基板収納容器管理システム1及び基板収納容器管理方法によれば、多くの製造現場で既に使用されているFOUP4に付与した個体識別用ID4xと、ロードポート2に設けたセンサ2cによる検出値とを上位システムCで紐付けてデータベース化し、上位システムCのデータ処理部CzでデータベースCd内のデータを解析して個体識別用ID4x毎のFOUP4の状態(具体的には、交換時期の予測結果)を出力することによって、FOUP4の劣化情報を取得することができる。このような本発明に係る基板収納容器管理システム1を活用することによって、ユーザは、ロードポート2に設けたセンサ2cの検出値に基づいて予測されるFOUP4毎の交換時期を把握することができる。そして、交換時期が近いFOUP4や、交換時期に到達しているFOUP4を新たなFOUP4に交換することで、FOUP4の変形・歪みに起因する不具合、すなわち、FOUP4の搬出入口41とFOUPドア43の隙間が大きくなり、この隙間を通じて気体がFOUP4内に流入したり、漏出するという不具合を防止・抑制することができ、FOUP4内の気体を窒素ガスに置き換えるパージ処理後において、窒素ガスがFOUP4内からFOUP4外へ流出したり、大気(酸素)がFOUP4内に流入する事態を防止して、所定の期間FOUP4内部を低酸素濃度に維持することが可能であり、FOUP4内に収容されるウェーハの表面が酸化される事態を防止・抑制できる。その結果、FOUP4の変形に起因するエラー発生頻度を低減することができ、半導体製造装置の停止時間が短くなり、生産性が向上する。
【0060】
特に、全てのFOUP4にセンサ等の機器類を設ける作業が大掛かりで複雑であることを考慮すれば、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1及び基板収納容器管理方法は、現行のFOUP4に対して個体識別用ID4xを付与するだけでよく、従来技術として述べたFOUP4毎にセンサを設ける態様と比べて、各FOUP4にセンサ用の電源を実装する必要がない点においても有利であり、基板収納容器管理システム1及び基板収納容器管理方法システムに適用可能な専用の基板収納容器を新たに用意する必要がなく、製造現場(製造ライン)に導入し易い。
【0061】
加えて、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1及び基板収納容器管理方法は、センサの設置対象をロードポート2に設定していることによって、従来技術として述べたFOUP4毎にセンサを設ける態様と比べて、メンテナンスの対象となるセンサの絶対数が少なく、メンテナンスの負担が軽減されるとともに、FOUP4の温水洗浄時の熱や浸水によるセンサ等の機器類の故障に留意する必要がないという点においても有利である。さらに、ロードポート2のID読取手段2x、センサ2c、及びロードポート側通信手段2yに対する電源供給は、ロードポート2が有する電気系を利用して比較的容易に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1及び基板収納容器管理方法によれば、基板収納容器需要の予測も行うことができる。すなわち、基板収納容器であるFOUP4の交換時期予測の結果から、同時期に交換(廃棄)されると予測されたFOUP4の数を、新たなFOUP4の導入数として需要予測することができる。さらに、本実施形態に係る基板収納容器管理システム1及び基板収納容器管理方法によれば、データベースCdに収集されたデータをビッグデータとして活用し、データマイニングによる基板収納容器劣化原因の追求も可能であると考えられる。
【0063】
また、以下の第2実施形態のように、データベースCdに保存されたデータの解析に機械学習を用いてもよい。
【0064】
第1実施形態では、上位システムCのデータ処理部Czは、
図11(a)に示すような構成だったが、第2実施形態では
図14に示すデータ処理部Ceを用いる。なお、データ処理部Ce以外の構成は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
本実施形態では、第1実施形態(
図1)と同様にFOUP4がロードポート2によってFOUPドア43を開閉する過程で、単一または複数のセンサ2cを用いてFOUP4の状態を直接または間接的に検出する。また、センサ2cで検出したセンサ値を上位システムCのデータベースCdに保存(格納、蓄積)する。なお、データベースCdに保存されるデータは、
図13に示すテーブルのように、個体識別用ID4xと、センサ2cで検出したセンサ値とを紐付け手段Cyで紐付けし、計測日時を付与したレコードとして格納される。なお、データベースCdに保存されたデータは、
図14に示すデータ処理部Ceによって処理・解析され、FOUP4の状態または交換時期予測等、予知保全に活用される。
【0066】
データ処理部Ceについて、具体的な構成を以下に述べる。データ処理部Ceは、
図14に示すブロック図のように、学習手段Ce1と、予測結果出力手段Ce2を有している。学習手段Ce1は、例えばニューラルネットワークにて構成される。
【0067】
以下に、本実施形態のデータ処理部Ceが有する学習手段Ce1による学習済みモデルの構築手順を述べる。まず、データベースCdから、FOUP4毎のセンサ2cのセンサ値の時系列データと、FOUP4が実際に劣化・変形し、使用できなくなった日時または交換した日時を抽出し、学習手段Ce1のニューラルネットワークに入力する。すると、ニューラルネットワークでは、入力されたデータによって各種パラメータが更新され、学習が進む。これを繰り返すことにより、学習済みモデルが構築される。
【0068】
以上の手順で構築された学習済みモデルに、データベースCdに保存されたFOUP4毎のデータを入力すると、FOUP4の状態の推定、交換時期の予測結果を出力することができる。よって、学習済みモデルから出力されたFOUP4の状態、交換時期予測を予測結果出力手段Ce2を用いて出力する。
【0069】
本実施形態ではニューラルネットワークを用いて学習モデルを構築したが、これ以外の手法を用いることも可能である。また、本実施形態では教師あり学習を用いたが、教師なし学習を用いてもよいし、学習モデルを随時更新するようなアルゴリズムを用いてもよい。さらに、本実施形態ではデータベースCdからFOUP4が使用できなくなった日時を抽出して学習済みモデルを構築したが、FOUP4が正常に利用できている時のデータを用いて学習済みモデルを構築し、予知保全を行うことも可能である。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではない。例えば、上述の実施形態では、ロードポートから上位システムに送信するセンサ値が、2種類のセンサのセンサ値である態様を例示したが、ロードポートから上位システムに送信するセンサ値が、1種類のセンサのセンサ値である態様や、3種類以上のセンサのセンサ値である態様であってもよい。また、上位システムの設置場所は、半導体製造を行う工場内外を問わず、複数の半導体製造工場や複数の半導体製造工程のデータを1つの上位システムで一括管理または処理してもよい。さらに、上位システムの機能を複数のコンピュータやサーバに分散させることも可能である。データベースに保存するデータの形式についても、実施形態のようなテーブル以外の形式で保存してもよい。また、上記実施形態では、データベースに保存するデータに計測日時を添付することで、データの時系列を示したが、時系列を把握できる別のデータに置き換えることも可能である。
【0071】
本発明における「FOUPの状態を直接または間接的に検出するセンサ」としては、上述の「排気ノズルの圧力センサ」、「マッピングセンサ」以外に、「容器ドア(FOUPドア)の全閉位置から開放位置までの移動に掛かった時間を直接または間接的に検出可能なセンサ」や、「容器ドア(FOUPドア)のラッチキーの回転トルクを測定するトルクセンサ」を挙げることができる。「容器ドア(FOUPドア)の全閉位置から開放位置までの移動時間」をデータとして取得することにより、容器ドア(FOUPドア)が開き難くなっているか否かを把握することができ、容器ドア(FOUPドア)の全閉位置から開放位置までの移動時間が長くなっているセンサ値(データ)から、容器ドア(FOUPドア)が開き難くなっている事象、つまり基板収納容器が変形している可能性があると判断できる。また、FOUPのドッキング処理時、容器ドア(FOUPドア)とロードポートドアがドッキングするのに必要なトルクや圧力を計測できるセンサを取り付けてもよい。
【0072】
また、「容器ドア(FOUPドア)のラッチキーの回転トルク値」をデータとして取得することにより、ラッチキーが回転し難くなっているか否かを把握することができ、回転トルク値が大きいデータから、ラッチキーが回転し難くなっている事象、つまり基板収納容器が変形している可能性があると判断できる。
【0073】
さらには、容器ドア(FOUPドア)をロードポートドアに連結するためにロードポートドアに設けた連結機構に関して、この連結機構による適切な連結状態を検出可能なセンサをロードポートに設け、当該センサの検出値の変化によって基板収納容器の変形に起因する連結不良を推測・判断するように設定してもよい。加えて、排気ノズルから排出される排気ガスの酸素濃度計からセンサ値を取得することで、基板収納容器の変形による外気の流入が、基板収納容器内のウェーハにどの程度影響するのかを推定・判断できる。また、ロードポートの載置台に設けたロック爪のロックエラーを検出することで、基板収納容器の底面に設けられた被ロック部(ロック爪と係合する部分)の削れを推定することができる。さらに、ロック爪のロックエラー回数を計測してもよい。
【0074】
また、上位システムのデータ処理部が、データマイニングの手法を利用することで基板収納容器の状態を出力(例えば基板収納容器の交換時期を予測)可能なものであってもよい。
【0075】
タクトタイムを検出(計測)して、標準タクトタイムに対して、時間が掛かるようになってきた場合に、特定のロードポートだけ時間が掛かる傾向であればロードポートに起因するタイムロスが生じていると判定することが可能であり、ロードポートの調整を促すメッセージを報知したり、特定の基板収納容器がどのロードポート上に載置しても時間が掛かる傾向であれば基板収納容器に起因するタイムロスが生じていると判定することが可能であり、基板収納容器をチェック対象とするメッセージまたは交換を促すメッセージを報知するようにしてもよい。
【0076】
上述の実施形態では、基板収納容器としてウェーハ搬送に用いられるFOUPを採用した。しかし本発明では、FOUP以外の基板収納容器、例えば、MAC(Multi Application Carrier)、H−MAC(Horizontal-MAC)、FOSB(Front Open Shipping Box)などを用いることも可能である。
【0077】
上述の実施形態ではボトムパージ処理等に用いる環境ガスとして窒素ガスを例にしたが、これに限定されず、乾燥ガス、アルゴンガスなど所望のガス(不活性ガス)を用いることができる。
【0078】
また、容器ドア(FOUPドア)が、全閉位置から全開位置に移動する過程で一時的に傾斜姿勢となる(部分円弧状の軌跡を描くような動作を伴う)ものであっても構わない。
【0079】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。