特開2019-208832(P2019-208832A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-208832歯科分析システムおよび歯科分析X線システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-208832(P2019-208832A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】歯科分析システムおよび歯科分析X線システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20191115BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20191115BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20191115BHJP
【FI】
   A61B6/14 300
   A61B6/00 360Z
   G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-107012(P2018-107012)
(22)【出願日】2018年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】518197616
【氏名又は名称】田島 聖士
(71)【出願人】
【識別番号】518197638
【氏名又は名称】塩澤 繁
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 聖士
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 繁
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA12
4C093AA26
4C093CA18
4C093DA05
4C093EA17
4C093EB04
4C093EC28
4C093EE07
4C093EE30
4C093FD01
4C093FD09
4C093FF08
4C093FF13
4C093FF15
4C093FF28
4C093FF29
4C093FF50
4C093FG13
4C093FG16
4C093FG18
4C093FH03
4C093FH07
4C093FH09
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】歯科医師の判断の補助となる歯科分析システムおよび歯科分析X線システムを提供する。
【解決手段】デンタルX線画像400からインプラント治療箇所を検出してインプラント情報を判定するディープラーニング部340と、ディープラーニング部340により特定されたインプラント治療箇所およびインプラント情報をデンタルX線画像400上に表示する表示部320と、を含む。また、ディープラーニング部340は、YOLO (you only look once)システムを含んでもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンタルX線画像からインプラント治療箇所を検出してインプラント情報を判定するディープラーニング部と、
前記ディープラーニング部により特定された前記インプラント治療箇所および前記インプラント情報を前記デンタルX線画像上に表示する表示部と、を含む歯科分析システム。
【請求項2】
前記ディープラーニング部は、YOLO (you only look once)システムを含む、請求項1に記載の歯科分析システム。
【請求項3】
前記YOLOシステムは、前記デンタルX線画像の幅を300ピクセル以上8000ピクセル以下とし、高さを200ピクセル以上6000ピクセル以下とする、請求項1または2に記載の歯科分析システム。
【請求項4】
前記YOLOシステムは、畳み込み処理における前記デンタルX線画像を下記式(1)の倍率Rとする、請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科分析システム。
R≧7/min(minW, minH) (1)
(式中、minWおよびminHはデンタルX線画像上の検出したいインプラント治療箇所を囲む矩形の幅の最小値および高さの最小値を示し、min(minW, minH)はminWまたはminHのうちいずれか小さい方の値を示す。)
【請求項5】
前記インプラント情報は、インプラントの型番、サイズ、種類およびメーカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4のいずれか1項に記載の歯科分析システム。
【請求項6】
前記ディープラーニング部は、検出および判定させたいインプラント情報ごとに500種類以上100000種類以下の教師データを用いて学習をさせる、請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科分析システム。
【請求項7】
前記ディープラーニング部は、前記インプラント情報の判定確率を前記表示部に表示する、請求項1から6のいずれか1項に記載の歯科分析システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の歯科分析システムと、
前記デンタルX線画像を撮影するX線装置と、を含む、歯科分析X線システム。
【請求項9】
前記デンタルX線画像、および請求項1から7のいずれか1項に記載の歯科分析システムの分析結果を被検者のカルテとリンクするリンク部をさらに含む、請求項8に記載の歯科分析X線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分析システムおよび歯科分析X線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医師が患者の歯の治療または診断を行うとき、患者のカルテ情報が無い場合、歯科医師は患者の過去の治療状況を確認しつつ、病変箇所の診断をするのが通常である。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2018−63707号公報)では、歯科パノラマX線画像を深層学習により歯番情報を取得し、身元確定対象者の身元確認情報を容易に得ることを可能とし、さらに、深層学習によって歯科パノラマX線画像から歯単体の画像を切り出し、深層学習により歯番情報を取得した上で、人手によって歯番情報の誤りを修正する画像分析システムが開示されており、容易に身元確認情報を得ることができる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2015−154918号公報)には、医療映像内で病変候補を検出する病変候補検出段階と、医療映像内で解剖学的客体を検出する周辺客体検出段階と、病変候補を病変候補の位置と解剖学的客体の位置との関係情報を含む解剖学的脈絡情報に基づいて検証する病変候補検証段階と、検証結果に基づいて、病変候補のうち、偽陽性病変候補を除去する偽陽性除去段階と、を含む病変検出装置が開示されており、病変に関わる部位を適切に検出できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−63707号公報
【特許文献2】特開2015−154918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者のカルテ情報が無い場合、患者にインプラント治療がされていると、歯科医師は患者のインプラントの型番、メーカなどの情報を調べる必要があった。しかし、インプラントのメーカは数百社あり、患者が使用しているインプラントの型番を判定するのは困難であったため、歯科医師の負担となっていた。
そして、特許文献1の画像分析システムは、歯科パノラマX線画像から歯番情報を取得するものであって、インプラント治療された患者のインプラントの型番、メーカなどの情報を判定することはできなかった。
また、特許文献2の病変検出装置は、胸部映像から解剖学的客体として皮膚、脂肪、線組織、筋肉、骨のうち少なくとも1つを検出するために、病変候補検出と客体検出と病変候補検証と偽陽性除去の手順を行う必要があるため、インプラント治療された患者のインプラント情報を判定することはできないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の主な目的は、インプラント治療がされた患者のインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定をすることで、歯科医師の判断の補助となる歯科分析システムおよび歯科分析X線システムを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度で高速に行うことができる歯科分析システムおよび歯科分析X線システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
一局面に従う歯科分析システムは、デンタルX線画像からインプラント治療箇所を検出してインプラント情報を判定するディープラーニング部と、ディープラーニング部により特定されたインプラント治療箇所およびインプラント情報をデンタルX線画像上に表示する表示部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
ディープラーニング部(深層学習部)によりデンタルX線画像からインプラント治療箇所を検出し、さらにインプラント情報を判定させることができるので、歯科医師の判断の補助に有効利用することができる。さらに、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定に深層学習を用いることで、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度で高速に行うことができる。
【0011】
(2)
第2の発明に係る歯科分析システムは、一局面の発明に係る歯科分析システムであって、ディープラーニング部は、YOLO (you only look once)システムを含んでもよい。
【0012】
デンタルX線画像を用いてインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定をするにあたりYOLOシステムを用いることにより、より高精度かつ高速の処理をすることができる。
【0013】
(3)
第3の発明に係る歯科分析システムは、一局面または第2の発明に係る歯科分析システムであって、YOLOシステムは、デンタルX線画像の幅を300ピクセル以上8000ピクセル以下とし、高さを200ピクセル以上6000ピクセル以下としてもよい。
【0014】
これにより、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度ですることができる。
【0015】
(4)
第4の発明に係る歯科分析システムは、一局面から第3のいずれかの発明に係る歯科分析システムであって、YOLOシステムは、畳み込み処理におけるデンタルX線画像を下記式(1)の倍率Rとしてよい。
R≧7/min(minW, minH) (1)
(式中、minWおよびminHはデンタルX線画像上の検出したいインプラント治療箇所を囲む矩形の幅の最小値および高さの最小値を示し、min(minW, minH)はminWまたはminHのうちいずれか小さい方の値を示す。)
【0016】
これにより、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度ですることができる。
【0017】
(5)
第5の発明に係る歯科分析システムは、一局面から第4のいずれかの発明に係る歯科分析システムであって、インプラント情報は、インプラントの型番、サイズ、種類およびメーカからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0018】
これにより、ディープラーニング部は、通常判定が難しいインプラントの型番、サイズ、種類およびメーカを高い精度で判定することができる。
【0019】
(6)
第6の発明に係る歯科分析システムは、一局面から第5のいずれかの発明に係る歯科分析システムであって、ディープラーニング部は、検出および判定させたいインプラント情報ごとに500種類以上100000種類以下の教師データを用いて学習をさせてよい。
【0020】
これにより、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度ですることができる。
【0021】
(7)
第7の発明に係る歯科分析システムは、一局面から第6のいずれかの発明に係る歯科分析システムであって、ディープラーニング部は、インプラント情報の判定確率を表示部に表示してもよい。
【0022】
これにより、インプラント情報の判定確率を表示できるので、歯科医師の判断の補助に有効利用することができる。
【0023】
(8)
第8の発明に係る歯科分析X線システムは、請求項1から7のいずれか1項に記載の歯科分析システムと、デンタルX線画像を撮影するX線装置と、を含んでもよい。
【0024】
この場合、X線装置により撮影されたX線画像を歯科分析システムにより判定し、表示させることができる。その結果、歯科医師の判断の補助に有効利用することができる。
【0025】
(9)
第9の発明に係る歯科分析X線システムは、第8の発明に係る歯科分析X線システムであって、デンタルX線画像、および請求項1から7のいずれか1項に記載の歯科分析システムの分析結果を被検者のカルテとリンクするリンク部をさらに含んでよい。
【0026】
リンク部により自動的に被検者のカルテとリンクすることができるため、歯科医師による診察、治療および診療情報管理の管理に利用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、歯科医師の判断の補助となる歯科分析システムおよび歯科分析X線システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の歯科分析X線システムの一例を示す模式図である。
図2】撮影されたデンタルX線画像の一例を示す模式図である。
図3】デンタルX線画像の分析結果の一例を示す模式図である。
図4】ディープラーニングの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本実施例に係る歯科分析X線システム100は、デンタルX線撮影装置200と、コンピュータ300に導入された歯科分析システムとを含む。
デンタルX線撮影装置200は、被検者のデンタルX線画像400を撮影する。コンピュータ300は、撮影されたデンタルX線画像400をディープラーニング部340で分析することで、インプラントの治療箇所を検出し、インプラントの情報を判定する。コンピュータ300で分析された結果は、表示部320に表示され、歯科医師の判断の補助に有効利用することができる。ディープラーニング部340の詳細は後述する。
【0031】
本発明の歯科分析システムは、デンタルX線画像400および分析結果460は、被検者のカルテとリンクしてもよい。これにより、歯科医師による診察、治療および診療情報の管理に供することができる。
【0032】
(デンタルX線撮影装置200)
本発明に係るデンタルX線撮影装置200は、図1に示すように、被検者に向けてX線を照射するX線源212を有していてもよい。
X線源212は、被検者の周りを移動して適宜必要な位置と角度で撮影することができるように配設される。なお、デンタルX線撮影装置200は、撮影位置を詳細に決定するために、X線源212から被検者へ照射する位置決め用のレーザ光線を設けてもよい。また、デンタルX線撮影装置200は、撮影されたデンタルX線フィルムを現像する現像機214を備えていてもよく、現像されたデンタルX線写真をデンタルX線画像400として取り込むスキャナ216を備えていてもよい。
【0033】
また、撮影されたデンタルX線画像400は、撮影環境または被検者によっては、明るさ、コントラストおよびγ値が最適でない場合がある。したがって、撮影されたデンタルX線画像400の明るさ、コントラストおよびγ値を適宜調整してもよい。
【0034】
(ディープラーニング部340)
デンタルX線画像400は、コンピュータ300のディープラーニング部340によって、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定が行われる。
「ディープラーニング」とは、図4に示すように多層構造のニューラルネットワーク342(深層ニューラルネットワーク)を用いた機械学習である。また、深層学習モデルとは、その深層ニューラルネットワークの構造を示す表現である。コンピュータ300は、教師データ344を用いて、深層学習モデル(深層ニューラルネットワークの構造)の少なくとも一部の構成要素について、人手を介することなく生成し、生成された構成要素を含む深層学習モデルを出力する。
したがって、深層学習モデルは自動的に構築される。本発明では、このようにして得られたニューラルネットワーク342を用いてデンタルX線画像400の分析を行うため、従来の機械学習で行われる、領域探索、特徴抽出などの工程を必要としないため、より高速に処理をすることができる。
本発明におけるディープラーニング部340のアルゴリズム(情報処理装置にインストールするプログラム)は、YOLO (You Only Look Once)、R−CNN (Regions with CNN features)、SPPnet、Fast R−CNN、SSD(Single Shot MultiBox Detector)、U−NETなどを用いることができる。
【0035】
本発明では、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を行うことができる深層学習モデルの構築をするため、事前に教師データ344による学習を行う。
教師データ344として用いられるインプラントのデータは、インプラントの型番、サイズ、種類およびメーカ毎によるデンタルX線画像400を用いて学習をすることが好ましい。これにより、通常判定が難しいインプラントの型番、サイズ、種類およびメーカを、ディープラーニングを用いて高い精度で検出し判定することができる。
ディープラーニング部340は、教師データ344による学習を多数行うことにより、深層学習モデルが自動的に構築される。したがって、インプラント治療箇所およびインプラント情報を学習したディープラーニング部340は、画像認識などコンピュータビジョンによる一般物体検出のアルゴリズムによって、位置とカテゴリーを自動的に特定できるようになるため、デンタルX線画像400からインプラント治療箇所を検出して同時にインプラント情報を判定することができるようになる。
【0036】
本発明の教師データ344による学習は、判定するインプラント情報ごとに500種類以上100000種類以下の教師データ344を用いて学習し、10000種類以上50000種類以下の教師データ344を用いて学習することが好ましい。このように下限値以上の学習をすることで、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高精度ですることができる。一方で、上記上限値を超えると学習の効果が飽和する。
【0037】
本発明におけるディープラーニング部340のシステム(情報処理装置にインストールするプログラム)は、YOLO(Redmon, Joseph, et al.“YOLOv3: An Incremental Improvement”arXiv preprint arXiv:1804.02767)を用いることができる。YOLOは、あらかじめ画像全体をグリッド分割しておき領域ごとに物体のクラス分類(Classification)とバウンディングボックスの計算を行い(Bounding Box Regression)、また1つのネットワークで構築されるため、高精度かつ高速の処理をすることができる。
また、YOLOシステムに入力するデンタルX線画像400は、画像の幅を300ピクセル以上8000ピクセル以下、高さを200ピクセル以上6000ピクセル以下とすることが好ましい。さらに、YOLOシステムに入力するデンタルX線画像400は、畳み込み処理前に下記式(1)の倍率Rに縮小して計算させるのが好ましい。
R≧7/min(minW, minH) (1)
式(1)において、minWおよびminHはデンタルX線画像400上の検出したいインプラント治療箇所を囲む矩形の幅の最小値および高さの最小値を示し、min(minW, minH)はminWまたはminHのうち小さい方の値を示す。
これにより、インプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度ですることができる。
【0038】
これまで、デンタルX線画像を用いたインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定について説明をしたが、本発明では、デンタルX線画像のかわりに歯科パノラマX線撮影画像を用いてインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を行っても良い。歯科パノラマX線撮影画像では、通常全ての歯およびその周囲が撮影され、デンタルX線画像よりも広い範囲を一度に撮影することができる。
また、歯科パノラマX線撮影画像を用いる場合は、YOLOシステムに入力する画像の幅を1000ピクセル以上10000ピクセル以下、高さを500ピクセル以上5000ピクセル以下とすることが好ましい。これにより歯科パノラマX線撮影画像によるインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定を高い精度ですることができる。
【0039】
(表示部320)
図3に示すように表示部320には、デンタルX線画像400の分析結果460が表示される。デンタルX線画像400の分析結果460は、デンタルX線画像400に重ねるようにして、ディープラーニング部340によって検出されたインプラント治療箇所の位置がバウンディングボックス464で表され、さらに判定されたインプラント情報が文字462で表示される。分析結果460を確認することで、歯科医師は、撮影した被検者(患者)のインプラント治療箇所およびインプラント情報を即座に知ることができる。
表示部320は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどであってよい。また、表示部320には被検者の診療情報が併せて表示されていてもよい。また、表示部320はX線装置の一部であってもよいし、ネットワークを介して表示するものであってもよい。
【0040】
また、表示部320に表示されるインプラント情報には、判定確率をさらに表示させてもよい。これにより、歯科医師の判断の補助に有効利用することができる。
さらに、歯科医師は、分析結果460を見て被検者を診察したうえで、さらに撮影した被検者のデンタルX線画像400を教師データ344としてディープラーニング部340に学習させてもよい。これを繰り返すことにより、判定確率をさらに高くすることができる。
【0041】
(リンク部)
本発明のデンタルX線画像400および分析結果460は、被検者のカルテとリンクしてもよい。これにより、歯科医師による診察、治療および診療情報管理の管理に供することができる。
【実施例】
【0042】
本発明の実施例として、株式会社吉田製作所製(XP−63型式)のデンタルX線撮影装置200を用いて実験を行った。デンタルX線画像装置200で撮影されたデンタルX線画像400をコンピュータ300に取り込み、コンピュータ300において分析を行った。ディープラーニング部340のシステムとしては、YOLO3 (Redmon, Joseph, et al.“YOLOv3: An Incremental Improvement”arXiv preprint arXiv:1804.02767)を用いて歯科分析システムを構築した。YOLO3の入力するデンタルX線画像400の幅は2600ピクセル、高さは1350ピクセルに設定し、畳み込み処理前にデンタルX線画像400を幅832ピクセル高さ832ピクセルに縮小して、ディープラーニングによる学習および分析を行った。
【0043】
ディープラーニングの深層学習モデルを構築するため、あらかじめ教師データ344としてインプラント治療されたデンタルX線画像400および各画像におけるインプラントの型番、サイズ、種類およびメーカを入力して学習させた。なお、デンタルX線画像400は、コントラストを調整したうえで教師データ344として用いた。教師データ344は、インプラントの型番、サイズ、種類およびメーカのそれぞれについて、10000枚の画像を利用して学習をさせた。
【0044】
実施例として、インプラント治療された患者のデンタルX線撮影を行った。撮影されたデンタルX線画像400は、コンピュータ300において、鼻画像および顎画像を削除(トリミング)しコントラストを調整したうえで、YOLO3によるディープラーニングの計算を行った。
その結果、本実施例の歯科分析システムは、歯科医師の診断と同じインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定をすることができた。本実施例のデンタルX線画像400から歯科医師が診断をするに要した時間はインプラントメーカーに問い合わせが必要なため数日かかったが、歯科分析システムがインプラント治療箇所の検出およびインプラント情報の判定をするに要した時間は0.02秒であった。
【0045】
[実施形態における各部と請求項の各構成要素との対応関係]
本明細書における歯科分析X線システム100が「歯科分析X線システム」に相当し、ディープラーニング部340が「ディープラーニング部」に相当し、表示部320が「表示部」に相当し、デンタルX線画像400が「デンタルX線画像」に相当する。
【符号の説明】
【0046】
100 歯科分析X線システム
200 デンタルX線撮影装置
300 コンピュータ
320 表示部
340 ディープラーニング部
342 ニューラルネットワーク
344 教師データ
400 デンタルX線画像
460 分析結果
図1
図2
図3
図4