【解決手段】 介助者が装着するチョッキ状の人体支持具にリングあるいはフックを設け、入浴者の背中や臀部等を包むネット本体の両側にフックあるいはリングを設け、前記人体支持具のリングあるいはフックに前記ネット本体のフックあるいはリングを係合させて入浴者の体を保持して入浴できるようにしたもの。
介助者が装着するチョッキ状の人体支持具にリングあるいはフックを設け、入浴者の背中や臀部を包むネット本体の両側にフックあるいはリングを設け、前記人体支持具のリングあるいはフックに前記ネット本体のフックあるいはリングを係合させて入浴者の体を持ち上げて入浴するようにした入浴介助具。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの老人や、それ以外の人、例えば,怪我をしている人は、自分で入浴するのが困難で、介助が必要となる。介助される被介助者(以下、入浴者という。)は、男性の場合、平均60キログラム、女性の場合でも50キロブラムであり、介護師一人で持ち上げて移動し入浴させるのが困難で、入浴作業は二人あるいは複数人で対応することになる。
【0003】
最近は、介護師不足で介護師の確保が困難となっており、二人で入浴作業に対応することができず、病院や入浴のできるデイサービス施設の悩みの種になっている。
【0004】
そのため、一人で入浴作業ができるように、最近では、介助人に装着するロボットスーツ(CYBERDYNE社所有商標)や、その他の被介助者を持ち上げた状態で浴槽まで移動する機械器具が提案されている。
【0005】
しかしながら、前記ロボットスーツは、器具を介助者に装着するのが面倒で、機械器具は、入浴するたびに、持ち運ばなければならないという問題がある。
又、前記ロボットスーツや機械器具は高価で、小規模の病院やデイサービス施設では自前で購入するのが困難といえる。レンタルで購入する方法もあるが、入浴できる福祉企業の負担は同様である。
本発明は前記の課題を解決することを指向として、一人でも入浴作業ができる入浴を介助する補助具を提案するものである。
【0006】
本発明は前記に着目し、介助者一人でも入浴作業ができるように、ネットで入浴者の全身を包も、このネットの端部に取り付けた係合部に、介助者が装着したチョッキの如くの人体支持具に、同様に取り付けた係合部に係合し、介助者に掛かる荷重を腕や腰に分担して、介助者の腰痛の発症などを押させるようにした入浴を補助するための入浴介助具である。
【0007】
従来、入浴するときに、ネットで体を支えるものは知られており、下記特許文献もその一つである。しかしながら、入浴に際して介助者の負担に着目し、介助者の負担を軽減するものは存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載した発明は、ネットで体を支えるものであることは前述とおりである。
具体的には、ネット素材3を張設した枠体2の上辺には係止紐7a、7bが、これらの係止紐7a、7bの上端にはフック6a、6bを設け、そしてこのフック6a、6bを、浴室Yの壁の手摺り棒Zに引っ掛け、ネット素材3を張設した枠体2を浴槽内に設置して入浴するものである。
【0010】
前記実用新案登録公報に記載されている実用新案は、ネットを利用して入浴するものである点では、本発明と同じであるが、本発明が指向している介助者の肉体的負担を軽減し、介助者の腰痛を抑えるなど、介助者への肉体的負担を軽減することについては記載されていないし、又、その示唆もないものである。
【0011】
前記の課題に着目し、本発明の主たる目的は、介助者の腰痛の発症を抑え、介助者に掛かる入浴時の負担を軽減しうる入浴介助具を提供することである。
その他の目的は、入浴する被介助者がネットに乗り移り易く、介助者の負担を軽減することである。
更に又、介助者に掛かる入浴者の体重を、介助者の身体全体で分担させ、介助者の肉体的負担を軽減し、介助者の腰痛の発症を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、介助者が装着するチョッキ状の人体支持具にリングあるいはフックを設け、入浴者の背中や臀部を保持するネット本体の両側にフックあるいはリングを設け、前記人体支持具のリングあるいはフックに前記ネットのフックあるいはリングを係合させて入浴者の体を保持して入浴するようにした入浴介助具であり、又、入浴者を持ち上げて移動するのを容易にするために、入浴者を保持するネットの側辺の幅を狭くしたものであり、更に、臀部支え部に設けたフックあるいはリングを人体支持具に設けたリングあるいはフックを係合させて構成したものであり、更に又、介助者に装着する腰ベルトに入浴者の体重を分担するように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前記手段により、介助者の腰痛の発症を抑え、介助者の入浴作業を軽減することができる入浴時の入浴介助具を提供することができたものである。
又、ネットの側辺の幅を狭くすることで、入浴者がネットに容易に移れるようになり、入浴者本人はもとより介助者の負担も軽くなるという効果を有するものである。
更に又、腰に取り付ける腰ベルトで入浴者の体重をネット本体と分散して負担することにより、介護者の腰痛の発症を軽減することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1のネット全体の平面図と、
図2のネットを浴槽に取り付けた状態図と、入浴者を入浴時に支える人体を浴槽に取り付けた概略側面図であり、これらの図に基づいて次に説明する。
【0016】
1はネット本体で、入浴する入浴者を支持するネットで、伸長しない漁網や、これに類する合成樹脂製の網で構成している。このネット本体1の周囲の上辺には上縁101、下辺には下縁102、左側辺には左側縁103、および、右側辺には右側縁104が設けられていて、これらの上下縁101、102、左右側縁103、104によってネットの枠体を形成している。この枠体には、人体を支持するネットを張設している。
前記ネットの枠体はインサートした合成樹脂で構成され、枠体の左側縁103と右側縁104は、それぞれ湾曲に形成して、他の枠体に比較して幅狭に形成し、入浴者のネットへ本体1への乗り移しが容易にできるように工夫してある。
【0017】
2は、ネット1に貼着し、身体の臀部を支える臀部支え部で、臀部の当接部には当て布21が設けられている。当て布21は、ネット本体1より厚く柔らかい素材で形成し、臀部の痛みを和らげる。
3は、前記の上縁101の右端に結合された、紐あるいは細幅状の第1の紐条体で、この第1の紐条体3には、体の上部(首付近)を支える上部支えリング4、同じく体の足部を支える複数の足部支えリング5が取り付けられている。
31は、ネット本体1の下縁102の右端に結合された第2の紐条体で、体の上部を支える上部支えリング41、同様にして足部支える複数の足部支えリング51が取り付けられている。
【0018】
前記上縁101及び下縁102の左端には、それぞれ後述する人体支持具(チョッキ)の上部支えリング4、41に係合するフック6及び61が紐によって取り付けてある。
臀部支え部2の左端には、フック7、及び71が紐によって取り付けてある。
【0019】
前記、リング4、5、リング41、51は、後述する
図11の人体支持具11に記載されているフック8と係合し、フック6、61、及びフック7、71は同じく
図11に記載されているリング9にそれぞれに係合するように構成されている。
人体支持具11の構成については、後述する
図11で詳細に説明する。
【0020】
図1の符号10は、二点鎖線で表示した浴槽Cの上縁に引っ掛けるフックで、ネット本体1の左側縁103に4個、右側縁104に4個ずつ設けられている。
左右側縁に4個ずつ、合計8個のフックにより、ネット本体1は安定して浴槽Cに装着することができる。
【0021】
図2、
図3は、ネット本体1を、浴槽Cに装着した状態を上方から見た図、及び横から見た図である。
図で、16は、浴槽Cの上縁に差し渡した被介助者である入浴者Bの人体を下方から支持する剛性の人体支持板である。この人体支持板16は、入浴者の体重を支えるのに充分な強度を持つ。
又、この人体支持具16は、湯船を沈めて使用するもので、その深さは入浴者が仰向けに寝た状態で体が沈む程度としている。
【0022】
図4乃至
図6は、介助者Aが、
図11で示した人体支持具11(チョッキ)を装着した状態を、それぞれ示しているが、先ず、
図11の人体支持具11の詳細な構成を先に説明する。
【0023】
図11において、11は、前述のように、帆布のような比較的強い生地を、馬蹄形に裁断して形成した人体支持具である。
この人体支持具11は、チョッキのように、介護者の左右の腕を通す楕円形の腕抜き穴12を有しており、人体支持具11は容易に着脱できる。
この人体支持具11を着用し、前記ネット本体1や体重軽減ベルト14と共に使用するときは、入浴者Bの体重を軽減するために、人体支持具11を介助者にできるだけ密着して装着することが好ましい。
【0024】
人体支持具11の裏面には、帆布にタスキ掛けしたリボン状で帆布製の人体支持ベルト13が縫製されている。
この人体支持ベルト13の上方端には、前記したフック8、8を、左右下端にリング9、9が設けられている。
【0025】
次に、
図7乃至
図9に基づいて、被介助者である入浴者の体重を軽減する入浴者の体重を軽減する体重軽減腰ベルトについで説明する。
【0026】
図7において、14は、医療用ベルトやベルトコンベアなどの剛性素材でなされる体重軽減腰ベルトで、介助者が腰に巻き付け装着、使用するものである。
この体重軽減腰ベルト14には、図示しないが長さを調整する通常の長さ調整金具が備えられている。
【0027】
この体重軽減腰ベルト14の長辺一方には、体重分散ブロック15が設けられている。
図8は、体重軽減ベルト14の正面図、第9図はその側面図である。
体重分散ブロック15は合成樹脂で形成され、
図9の側面で明らかなように、側面が三角状の斜面▲b▼を形成している。
【0028】
そして、この斜面▲b▼を後で述べるように、入浴者の身体の下面に挿入して、体重を分散し、介助者の負担を軽減するように作用する。
尚、体重分散ブロック15が身体に接触する面は、入浴する身体の形に合うように湾曲(図示せず)して、入浴者の下にスムースに滑り込むようにしている。
このように、入浴者への入浴作業がスムース、且つ、効率的にできるようになる。
【0029】
前記本発明は構成されるが、次に、
図4乃至
図6に基づき本発明による入浴の作業手順についてステップ毎に説明する。
【0030】
ステップ1
図3のように、人体支持板16を浴槽Cの長手方向上縁に跨がせて入浴の準備をする
。 浴槽に、この人体支持板16が沈むように湯を張る。
このとき、湯はネットを通して全身に接触し、身体を洗うことができる。
ステップ2
ベッド(図示せず)の横に、ベッドと同じ高いか、若干低い高さのテーブル(図示せ
ず)を密着させる。
ステップ3
ベッドに密着しているテーブルの上にネット本体1を広げる。
このとき、ネット本体1に付いている複数のリング4、5やフック7、10同士が絡
まないように注意する。
ステップ4
入浴者Bが、寝ているか、起きて寛いでいる状態から、入浴者Bは前記ネット本体1
の上に移る。
入浴者B自身がネット本体1上に移れない場合は、介助者Aが、それを手助けするよ
うにする。
このとき、ネット本体1の左側縁103と右側縁が湾曲して、その幅が狭くなってい
るので、入浴者Bの乗り移りがスムースに行える。従って、入浴の作業時間が短縮でき
る効果がある。
ステップ5
一方、介助者Aは、人体支持具11に腕抜き穴12に腕を通して人体支持具11を
着用装着して準備は完了する。
【0031】
次に、介助者Aが、人体支持具11(チョッキ)を装着し、入浴者Bをネット本体1に乗せて、持ち上げるやり方について、
図4〜
図6に基づいて説明する。
図4は、介助者Aが、入浴者Bをネット本体1に乗せた状態を前から見た正面図、
図5は、同じく横から見た側面図、同じく
図6は背面から見た背面図である。
【0032】
これらの図面に基づいて説明する。
先ず、ネット本体1に入浴者が乗せられた状態で、ネット本体1の臀部支え部2に取り付けられたフック9に係合させる。
これによって被介助者Bの体重の一部を支えることができる。
【0033】
次に、ネット本体1のリング4を6に係合し、同じくネット本体1のリング5を人体支持ベルト11のフック8に係合させ、ネット本体1で入浴者Bを包み吊り下げられる状態にする。
このとき、入浴者Bは、身体の臀部から足部までの身体全体がネット本体1に包まれるので、身体が安定し、恐怖感が除かれる。
【0034】
一方、介助者Aは、体重軽減用の腰ベルト14を腰に巻き付け装着し、入浴作業の準備をする。
【0035】
そして、腰ベルト14に設けた体重分散ブロック15を、入浴者Bの下、具体的には臀部の下に挿入する。このとき、介助者Aがネット本体1に包まれている入浴者Bを若干持ち上げれば簡単に挿入できるものである。
このとき、体重分散ブロック15のすべてを挿入する必要はなく、このブロック15の一部を入浴者Bに、入浴者Bが苦痛を感じない程度に挿入すればよい。
これは、入浴者Bに問いながら行えばよい。
【0036】
又、この腰ベルト14には体重分散ブロック15を設けられているが、このブロック15は三角形の斜面を有する形状として入浴者の体重を分散するように工夫している。
図10に体重を分散する理屈について説明する。
【0037】
図において、X0は入浴者Bの全体重 X1は入浴者Bの斜面効果で分散され、ベクトルで示された分散された後の主体重、X2は、臀部支え部2やブロック15を持つ体重軽減腰ベルト14を用いた後の分担体重である。
α1はブロック15の斜面の角度を示しており、入浴者Bが体重50キログラムで、斜面角度α1が45°であれば、分散された体重X1は斜面効果で約35キログラムになる。
又、斜面角度がα2で角度20°のときは、同じく斜面効果で、分散された体重X2は約47キログラムになる。
いずれにしても、ブロック15の斜面効果で入浴者Bの体重は軽減され、斜面の角度は任意に変更できる。
【0038】
前述のステップ、あるいは、手順で、介助者Aは、入浴者Bをネット本体1で包んだ状態で持ち上げるができる。このとき、介助者に掛かる肉体的負担が軽減されているので、浴槽Cまで介助者Aは、一人で運ぶことができる。
このとき、入浴者の主たる重量が腰に掛かるので、腕に掛かる荷重は低減され、介助者Aの肉体的な負担が軽減されるのである。
【0039】
浴槽Cまで運んだ後は、入浴車Bを人体支持板16に乗せた後に、フック10を浴槽Cの上縁に引っ掛ける。このとき、ネット本体1を突っ張る程度に張設する。
その後ネット本体1を人体支持具(チョッキ)11から外して体を洗うことが可能になる。
【0040】
浴槽Cには身体が沈む程度に湯が張ってあるので、体を洗うことができる。
入浴者Bは、自身で洗うか、場合によっては介助者Aの手助けによって洗うことができる。
身体を洗い、入浴完了後は、前述の逆の手順によって、入浴作業は完了する。
【0041】
以上述べたように、本発明は、介助者A単独で入浴作業をするのに好適な介助具であり、具体的には、入浴者Bの身体を包むネット本体1、臀部支え部2の両方で持ち上げて持ち運ぶことができる。更に、斜面形状を有するブロック15を体重軽減用の腰ベルト14を、追加し用いることで、これら三者で、被介助者Bの体重を分散するようにして、介助者Aの負担を、更に軽減するようにできるものである。
【0042】
前述のように、介助者Aが人体支持具11(チョッキ)を装着し、ネット本体1で入浴
者Bを包んだ状態で持ち上げるときは、入浴者Bの体重を分散できるので、介助者Aの
負担を軽減することができる
特に、腰に掛かる負担を軽減することができるので、腰痛の発症を抑えることができたものである。
【0043】
以上のように、本発明は、前記目的を達成するために、本発明は、介助者が装着するチョッキ状の人体支持具にリングあるいはフックを設け、入浴者の背中や臀部を保持するネット本体の両側にフックあるいはリングを設け、前記人体支持具のリングあるいはフックに前記ネットのフックあるいはリングを係合させて入浴者の身体を保持して入浴するようにした入浴介助具であり、又、入浴者の乗り移りを容易にするために、入浴者を支持保持するネット本体の左右側縁間の幅を狭くしたものであり、更に、臀部支え部に設けたフックあるいはリングを人体支持具に設けたリングあるいはフックに係合させるように構成したものであり、更に又、前記に加え、斜面形状を有するブロックを体重軽減用の腰ベルトを追加し用いることで、更に介助者に掛かる入浴者の体重を分担し、介助者への負担を軽減できるように構成したものである。
【0044】
本発明は前述した構成により、介助者の腰痛の発症を抑え、介助者の入浴作業を軽減することができる入浴時の介助補助具を提供することができたものである。
又、ネットの側辺間の幅を狭くすることで、入浴者がネットに容易に乗り移ることができるようになり、入浴者本人はもとより介助者の負担も軽くなるという効果を有するものである。
更に又、腰に取り付ける腰ベルトで入浴者の体重をネット本体と分散して負担することにより、介護者の腰痛の発症を軽減することができるものである。