【解決手段】制御部は、前処理液の塗布を行わない状態では、塗布ローラ32を容器51内の前処理液に浸すよう制御する。また、制御部は、塗布モータを制御して塗布ローラ32を回転させるとともに、撹拌ポンプにより容器51内の前処理液を出し入れするよう制御して、容器51内の前処理液を撹拌させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0011】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る塗布装置が設けられた印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す印刷装置の前処理ユニットの概略構成図である。
図3は、前処理ユニットが有する塗布ユニットが絞り位置にある状態を示す図である。
図4は、塗布ユニットがスタート位置にある状態を示す図である。
図5は、塗布ユニットの部分拡大図である。
図6は、
図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。なお、以下の説明において、
図1の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。
【0013】
図1、
図6に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、前処理ユニット4と、乾燥ユニット5と、シャトルユニット6と、制御部7とを備える。なお、前処理ユニット4と制御部7とにより、塗布装置が構成される。
【0014】
シャトルベースユニット2は、後述する前処理ユニット4の塗布ユニット保持部21、乾燥ユニット5、およびシャトルユニット6を支持するとともに、それらを前後方向(副走査方向)に移動させる。
【0015】
シャトルベースユニット2は、矩形枠状に形成されている。シャトルベースユニット2は、塗布ユニット保持部21、乾燥ユニット5、およびシャトルユニット6を前後方向に移動させるための駆動機構(図示せず)を有する。また、シャトルベースユニット2の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド11A,11Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド11A,11Bは、前後方向に移動する塗布ユニット保持部21、乾燥ユニット5、およびシャトルユニット6をガイドする。
【0016】
フラットベッドユニット3は、建材等からなる印刷媒体(被塗布材に相当)16を保持する。フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の内側に配置されている。フラットベッドユニット3は、水平面である媒体載置面3aを有し、媒体載置面3a上に印刷媒体16を保持する。
【0017】
前処理ユニット4は、印刷媒体16への印刷を行う際の前処理として、印刷媒体16への前処理液(塗布液に相当)の塗布を行う。前処理液は、印刷時のインクの定着性向上等のために、印刷前に印刷媒体16に塗布される液体である。前処理ユニット4は、塗布ユニット保持部21と、塗布ユニット22と、容器ユニット23とを備える。
【0018】
塗布ユニット保持部21は、塗布ユニット22を昇降可能に保持する。また、塗布ユニット保持部21は、シャトルベースユニット2上を前後方向に移動することで、塗布ユニット22を前後方向に移動させる。
【0019】
図1、
図6に示すように、塗布ユニット保持部21には、昇降モータ26と、昇降ガイド27とが設けられている。昇降モータ26は、塗布ユニット22を昇降させる。昇降ガイド27は、塗布ユニット22を上下方向に移動するようガイドする。
【0020】
塗布ユニット22は、前処理液を印刷媒体16に塗布するものである。塗布ユニット22は、印刷媒体16への前処理液の塗布を行わない待機中は、
図2に示す塗布ユニット22の位置である待機位置に配置される。待機位置では、後述する塗布ローラ32および補給ローラ33が、後述する容器ユニット23の容器51内の前処理液に浸った状態である。また、塗布ユニット22は、前処理液の塗布を開始する前に後述する絞り動作を行う際は、
図3に示す塗布ユニット22の位置である絞り位置に配置される。また、塗布ユニット22は、絞り動作の終了後、
図4に示す塗布ユニット22の位置であるスタート位置に配置され、このスタート位置から、前処理液の塗布を行うための前方向の移動を開始する。
【0021】
塗布ユニット22のスタート位置は、容器ユニット23の上方の位置であって、後述する塗布ローラ32の高さ位置が印刷媒体16への前処理液の塗布を行うための高さ位置となる位置である。塗布ユニット22の絞り位置は、スタート位置の下方の位置であって、塗布ローラ32および後述する補給ローラ33が、後述する容器ユニット23の容器51内の前処理液から引き揚げられた位置である。
【0022】
塗布ユニット22が昇降可能であることで、後述する塗布ローラ32および補給ローラ33が、後述する容器ユニット23の容器51に出し入れ可能になっている。
【0023】
図2〜
図6に示すように、塗布ユニット22は、筐体31と、塗布ローラ(塗布部材に相当)32と、補給ローラ33と、ローラ保持部材34と、塗布モータ35と、補給皿36と、補給皿保持部材37と、回動モータ38と、送液管39と、送液ポンプ40と、予備タンク41とを備える。
【0024】
筐体31は、塗布ユニット22の各部を収納または保持する。筐体31の底板は、後述する容器ユニット23の容器51および補給皿収納部52を開閉する蓋46になっている。
【0025】
蓋46の周縁には、外周凸部46aが下向きに立設されている。外周凸部46aは、後述する容器ユニット23の溝部23aに嵌合する。これにより、容器ユニット23の容器51および補給皿収納部52が蓋46により密閉可能になっている。
【0026】
塗布ローラ32は、前処理液を印刷媒体16に塗布するためのローラである。塗布ローラ32は、弾性変形可能で液体を含浸可能なスポンジ等の材料により形成されている。塗布ローラ32は、左右方向に細長い円柱形状に形成されている。塗布ローラ32は、左右方向に延びるローラ軸32aを有し、ローラ軸32aを中心に回転する。
【0027】
補給ローラ33は、印刷媒体16への前処理液の塗布中に塗布ローラ32とともに移動しつつ、塗布ローラ32に補給皿36から前処理液を補給する。また、補給ローラ33は、前処理液の塗布を行うために塗布ローラ32および補給ローラ33が容器51から取り出される際に行われる後述の絞り動作において、塗布ローラ32との間で互いに絞り合うことで、塗布ローラ32が保持する前処理液を低減させる。補給ローラ33は、塗布ローラ32と同様に、弾性変形可能で液体を含浸可能なスポンジ等の材料により、左右方向に細長い円柱形状に形成されている。補給ローラ33は、左右方向に延びるローラ軸33aを有し、ローラ軸33aを中心に回転する。なお、補給ローラ33と補給皿36とが、補給手段を構成する。
【0028】
ローラ保持部材34は、塗布ローラ32および補給ローラ33を回転可能に保持する。ローラ保持部材34は、蓋46の下面に立設されている。ローラ保持部材34は、塗布ローラ32および補給ローラ33の左端側と右端側とにそれぞれ配置されている。ローラ保持部材34には、塗布ローラ保持穴34aと、補給ローラ保持穴34bとが形成されている。
【0029】
塗布ローラ保持穴34aは、塗布ローラ32を保持するための穴である。塗布ローラ保持穴34aには、塗布ローラ32のローラ軸32aが回転可能に挿通されている。
【0030】
補給ローラ保持穴34bは、補給ローラ33を保持するための穴である。補給ローラ保持穴34bには、補給ローラ33のローラ軸33aが回転可能に挿通されている。補給ローラ保持穴34bは、塗布ローラ保持穴34aの後側において、塗布ローラ保持穴34aより高い位置であって、補給ローラ33が塗布ローラ32に接するような位置に配置されている。
【0031】
補給ローラ保持穴34bは、前後方向が長軸方向となる長円形状に形成されている。これにより、補給ローラ33の前後方向における位置が、前側位置と後側位置との間で変更可能になっている。補給ローラ33の前側位置は、ローラ軸33aが補給ローラ保持穴34bの前側の縁に接しているときの補給ローラ33の位置である。補給ローラ33の後側位置は、ローラ軸33aが補給ローラ保持穴34bの後側の縁に接しているときの補給ローラ33の位置である。
【0032】
補給ローラ33のローラ軸33aが後述するガイド部材56の上部の端辺56aに接している状態以外では、互いに接している塗布ローラ32および補給ローラ33の弾性力により、補給ローラ33のローラ軸33aが補給ローラ保持穴34bの後側の縁に押し付けられる。これにより、ローラ軸33aがガイド部材56の上部の端辺56aに接している状態以外では、
図2、
図4のように、補給ローラ33は後側位置に配置される。
【0033】
補給ローラ33が後側位置にあるとき、補給ローラ33のローラ軸33aと塗布ローラ32のローラ軸32aとの中心間距離は、塗布ローラ32の半径と補給ローラ33の半径との合計より、所定距離分だけ短くなっている。このため、補給ローラ33が後側位置にあるとき、塗布ローラ32と補給ローラ33とは、所定距離分だけ互いにつぶし合って接している。
【0034】
補給ローラ33のローラ軸33aがガイド部材56の上部の端辺56aに接している状態では、
図3のように、補給ローラ33は前側位置に配置される。補給ローラ33が前側位置にあるときは、補給ローラ33のローラ軸33aと塗布ローラ32のローラ軸32aとの中心間距離は、補給ローラ33が後側位置にあるときよりも短くなる。このため、補給ローラ33が前側位置にあるときは、後側位置にあるときよりも、塗布ローラ32と補給ローラ33とが互いにつぶし合う度合いが大きくなる。これにより、絞り動作において、補給ローラ33を前側位置に配置し、塗布ローラ32および補給ローラ33を回転させることで、塗布ローラ32と補給ローラ33とが互いに絞り合うことができるようになっている。
【0035】
ローラ保持部材34を介して、塗布ローラ32および補給ローラ33が蓋46の下面側に接続されているため、塗布ローラ32および補給ローラ33が容器51に収納されるのに連動して蓋46が閉じられるようになっている。
【0036】
塗布モータ35は、塗布ローラ32および補給ローラ33を回転させる。塗布モータ35の回転駆動力が、図示しない伝達機構により塗布ローラ32および補給ローラ33に伝達され、塗布ローラ32および補給ローラ33が回転する。印刷媒体16への前処理液の塗布を行う際は、塗布ローラ32が
図2〜
図5における時計回り方向に回転し、補給ローラ33が塗布ローラ32とは逆方向に回転する。後述のように容器51内の前処理液を撹拌するために塗布ローラ32および補給ローラ33を回転させる際は、その回転方向は限定されない。なお、塗布モータ35は、撹拌手段に相当する。
【0037】
補給皿36は、印刷媒体16への前処理液の塗布中に補給ローラ33が塗布ローラ32に補給するための前処理液を貯留する。補給皿36は、左右方向に細長いトレイ形状に形成されている。補給皿36は、左右方向に延びる回動軸36aを有する。補給皿36は、回動軸36aを中心として回動することで、補給可能位置と、退避位置との間で位置変更可能に構成されている。
【0038】
補給皿36の補給可能位置は、
図4、
図5における補給皿36の位置であり、補給ローラ33の下側にある。補給皿36が補給可能位置にあるとき、補給皿36の開口部が上向きになり、前処理液を貯留可能な状態になる。
【0039】
補給皿36の退避位置は、
図2、
図3における補給皿36の位置であり、補給可能位置から後側に退避した位置である。補給皿36が退避位置にあるとき、補給皿36が補給皿収納部52に収納可能な状態になる。
【0040】
補給皿36には、
図5に示すように、絞り部材47が設けられている。絞り部材47は、塗布ローラ32への前処理液の過剰供給を防止するために、補給ローラ33を絞って、補給ローラ33が保持する前処理液を低減する部材である。
【0041】
補給皿保持部材37は、補給皿36を回動可能に保持する。補給皿保持部材37は、ローラ保持部材34の後側において、蓋46の下面に立設されている。補給皿保持部材37は、補給皿36の左端側と右端側とにそれぞれ配置されている。補給皿保持部材37の下端部に、補給皿36の回動軸36aが回動可能に接続されている。
【0042】
回動モータ38は、補給皿36を回動させる。
【0043】
送液管39は、後述する容器ユニット23の容器51と予備タンク41との間の前処理液の流路を構成する。また、送液管39は、予備タンク41と補給皿36との間の前処理液の流路としての役割も果たす。
【0044】
送液管39の一端は、
図2に示すように、塗布ユニット22が待機位置にあるときに容器ユニット23の容器51内に配置される。また、送液管39の一端は、
図4、
図5に示すように、塗布ユニット22がスタート位置の高さにあり、補給皿36が補給可能位置にあるとき、補給皿36に対向して配置される。送液管39の他端は、予備タンク41内に配置されている。
【0045】
送液ポンプ40は、後述する容器ユニット23の容器51から予備タンク41へ送液管39を介して前処理液を送液する。また、送液ポンプ40は、予備タンク41から補給皿36へ送液管39を介して前処理液を送液する。また、送液ポンプ40は、塗布ローラ32による印刷媒体16への前処理液の塗布が終了する際に、送液管39を介して補給皿36から前処理液を吸引して、補給皿36上の前処理液を低減させる。送液ポンプ40は、送液管39の途中に配置されている。
【0046】
予備タンク41は、補給皿36に供給するために後述する容器ユニット23の容器51から送液ポンプ40により汲み上げられた前処理液を貯留する。
【0047】
容器ユニット23は、前処理液を貯留するとともに、塗布ローラ32、補給ローラ33、および補給皿36が収納されるものである。容器ユニット23は、フラットベッドユニット3の後側に隣接して配置されている。
図2〜
図4、
図6に示すように、容器ユニット23は、容器51と、補給皿収納部52と、撹拌ポンプ53とを備える。なお、撹拌ポンプ53は、撹拌手段に相当する。
【0048】
容器51は、前処理液を貯留する。また、容器51は、前処理液の塗布を行わない前処理ユニット4の待機中において、塗布ローラ32および補給ローラ33が収納される部分である。容器51には、図示しない前処理液供給機構により前処理液が供給される。容器51は、左右方向に細長い箱状に形成され、上側は開口している。
【0049】
容器51の底部には、流入口51aと流出口51bとが設けられている。
【0050】
流入口51aは、容器51内の前処理液を撹拌するために容器51内に前処理液を流入させるための開口部である。容器51には、左右方向に沿って複数の流入口51aが形成されている。
【0051】
流出口51bは、容器51内の前処理液を撹拌するために容器51から前処理液を流出させるための開口部である。容器51には、左右方向に沿って複数の流出口51bが形成されている。
【0052】
容器51内には、ガイド部材56が配置されている。ガイド部材56は、塗布ユニット22が後述する絞り位置に配置されたときに、補給ローラ33を、前後方向において前側位置に配置するための部材である。ガイド部材56は、塗布ローラ32および補給ローラ33の左端側と右端側とにそれぞれ配置されている。
【0053】
ガイド部材56は、上下方向に平行な前側の上部の端辺56aが、上下方向に平行な下部の端辺56bよりも前側に位置し、端辺56a,56bが、それらに対して傾斜した傾斜部56cで連接されるように形成されている。塗布ユニット22が絞り位置にあるとき、ガイド部材56の端辺56aが補給ローラ33のローラ軸33aの位置を規制することで、補給ローラ33が前後方向において前側位置に配置される。
【0054】
補給皿収納部52は、前処理ユニット4の待機中において、補給皿36が収納される部分である。補給皿収納部52は、容器51の後側に隣接して設けられている。補給皿収納部52は、左右方向において容器51と同等の長さの箱状に形成され、上側は開口している。
【0055】
撹拌ポンプ53は、容器51に前処理液を出し入れすることにより、容器51内の前処理液を撹拌する。撹拌ポンプ53は、容器51の流入口51aおよび流出口51bに接続された撹拌管57に接続されている。撹拌ポンプ53の駆動により、撹拌管57を介して流入口51aから容器51内へ前処理液が流入し、撹拌管57を介して流出口51bから容器51内の前処理液が流出することで、容器51内の前処理液が撹拌される。
【0056】
容器ユニット23には、上端部を周回するように溝部23aが形成されている。溝部23aには、蓋46の外周凸部46aが嵌合する。
【0057】
乾燥ユニット5は、前処理液が塗布された印刷媒体16を乾燥させる。また、乾燥ユニット5は、印刷後の印刷媒体16を乾燥させる。乾燥ユニット5は、シャトルベースユニット2上を前後方向に移動しつつ、印刷媒体16を乾燥させる。乾燥ユニット5は、印刷媒体16に温風を送風して乾燥させる乾燥機構(図示せず)を備える。
【0058】
シャトルユニット6は、シャトルベースユニット2上を前後方向に移動しつつ、印刷媒体16に印刷を行う。シャトルユニット6は、インクジェットヘッド(図示せず)を備え、インクジェットヘッドから印刷媒体16にインクを吐出して印刷を行う。
【0059】
制御部7は、印刷装置1全体の動作を制御する。制御部7は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0060】
具体的には、制御部7は、前処理ユニット4により印刷媒体16に前処理液を塗布し、前処理液が塗布された印刷媒体16を乾燥ユニット5により乾燥させた後、シャトルユニット6により印刷媒体16に印刷を行うよう制御する。
【0061】
また、制御部7は、前処理液の塗布を行わない状態である塗布ユニット22の待機中は、塗布ユニット22を待機位置に配置して塗布ローラ32および補給ローラ33を容器51内の前処理液に浸すよう制御する。また、制御部7は、塗布ユニット22の待機中において、塗布モータ35を制御して塗布ローラ32および補給ローラ33を回転させるとともに、撹拌ポンプ53により容器51内の前処理液を出し入れするよう制御して、容器51内の前処理液の撹拌を行う。
【0062】
次に、印刷装置1の動作について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0063】
印刷を行う際、まず、
図7のステップS1において、制御部7は、前処理を行うために、前処理ユニット4の塗布ユニット22を待機位置から絞り位置へ移動させる。塗布ユニット22が待機位置から絞り位置へ移動する際、補給ローラ33のローラ軸33aが、ガイド部材56の下部の端辺56b、傾斜部56c、および上部の端辺56aに沿って上昇する。これにより、補給ローラ33が後側位置から前側位置へ移動する。塗布ユニット22が絞り位置に配置された状態では、
図3のように、塗布ローラ32および補給ローラ33は、全体が容器51内の前処理液の液面より上方にある。
【0064】
ここで、前処理を開始する前は、前処理ユニット4の塗布ユニット22は、待機位置に配置されている。したがって、蓋46が閉じられており、容器ユニット23の容器51および補給皿収納部52が蓋46により密閉されている。
【0065】
そして、塗布ローラ32および補給ローラ33が容器51内に収納され、補給皿36が補給皿収納部52内に収納されている。このとき、
図2のように、容器51内の前処理液の液位は、補給ローラ33の最高点よりも高い位置にある。すなわち、前処理液の塗布を行わない待機中は、塗布ローラ32および補給ローラ33は、全体が容器51内の塗布液に浸けられている。
【0066】
また、前処理ユニット4の塗布ユニット22が待機位置にあるとき、塗布ユニット保持部21は、
図1に示す塗布ユニット保持部21の位置であるホーム位置に配置されている。塗布ユニット保持部21のホーム位置は、前後方向におけるフラットベッドユニット3の後側近傍にある。
【0067】
また、前処理を開始する前は、乾燥ユニット5およびシャトルユニット6は、それぞれのホーム位置に配置されている。乾燥ユニット5およびシャトルユニット6のホーム位置は、
図1に示すそれぞれの位置である。すなわち、乾燥ユニット5のホーム位置は、前処理ユニット4の塗布ユニット保持部21のホーム位置の後側近傍の位置である。シャトルユニット6のホーム位置は、乾燥ユニット5のホーム位置の後側近傍の位置である。
【0068】
図7に戻り、ステップS2において、制御部7は、絞り動作を実行する。絞り動作は、塗布ローラ32に含浸された前処理液を低減するために、塗布ローラ32および補給ローラ33を絞る動作である。具体的には、制御部7は、塗布ローラ32および補給ローラ33を所定回転回数(例えば1回転)だけ回転させる。これにより、塗布ローラ32と補給ローラ33とが互いに絞り合い、両ローラに含浸されている前処理液が低減する。この結果、塗布ローラ32が前処理液を過剰に保持した状態で印刷媒体16への塗布が行われことが防止されるので、印刷媒体16に前処理液が過剰に塗布されることや、液垂れによる印刷媒体16や装置内の部材への前処理液の意図しない付着が抑えられる。
【0069】
次いで、ステップS3において、制御部7は、塗布ユニット22を絞り位置からスタート位置へ移動させる。この際、制御部7は、まず、塗布ユニット22を絞り位置からスタート位置より高い位置まで上昇させ、その位置で補給皿36を退避位置から補給可能位置へ回動させる。その後、制御部7は、塗布ユニット22をスタート位置まで下降させる。
【0070】
次いで、ステップS4において、制御部7は、送液ポンプ40を制御して、予備タンク41から補給皿36へ前処理液を送液させる。これにより、補給皿36に前処理液が貯留され、
図5のように、補給ローラ33の下部の一部、および送液管39の一端が前処理液に浸かった状態となる。ここで、予備タンク41には、予め容器51から汲み上げられた前処理液が貯留されている。
【0071】
次いで、ステップS5において、制御部7は、塗布ユニット22による印刷媒体16への前処理液の塗布を開始させる。具体的には、制御部7は、塗布ユニット保持部21の前方向への移動を開始させる。これにより、塗布ユニット22のスタート位置から前方向への移動が開始される。塗布ローラ32が印刷媒体16に到達すると、制御部7は、塗布ローラ32および補給ローラ33の回転を開始させる。塗布ローラ32が回転しつつ印刷媒体16上を前方向へ移動することで、前処理液が印刷媒体16に塗布される。
【0072】
ここで、塗布ユニット22による前処理液の塗布中は、塗布ローラ32から印刷媒体16へ前処理液が移動する。これに対し、補給皿36の前処理液が補給ローラ33により塗布ローラ32に補給される。すなわち、補給ローラ33が補給皿36の前処理液を吸収しつつ回転し、補給ローラ33に接しつつ回転する塗布ローラ32に補給ローラ33から前処理液が補給される。この際、補給皿36の絞り部材47により補給ローラ33が絞られることで、補給ローラ33から塗布ローラ32への前処理液の過剰供給は防止される。
【0073】
次いで、ステップS6において、制御部7は、補給皿36からの前処理液の吸引タイミングになったか否かを判断する。ここで、補給皿36からの前処理液の吸引タイミングは、塗布ローラ32が前処理液を印刷媒体16に塗布するための最後の1回転の開始タイミングである。制御部7は、塗布ローラ32の回転角度に応じてパルス信号を出力するエンコーダ(図示せず)の出力パルス数に基づき、塗布ローラ32の最後の1回転の開始タイミングを判断できる。補給皿36からの前処理液の吸引タイミングになっていないと判断した場合(ステップS6:NO)、制御部7は、ステップS6を繰り返す。
【0074】
補給皿36からの前処理液の吸引タイミングになったと判断した場合(ステップS6:YES)、ステップS7において、制御部7は、送液ポンプ40を制御して、補給皿36から前処理液を吸引させる。これにより、塗布ローラ32が印刷媒体16への前処理液の塗布を終了する際に、補給皿36から前処理液が吸引され、補給皿36上の前処理液が低減する。補給皿36から前処理液を吸引するのは、塗布ユニット22の移動停止時の振動等により補給皿36から前処理液がこぼれることを抑えるためである。
【0075】
次いで、ステップS8において、制御部7は、塗布ユニット22による印刷媒体16への前処理液の塗布を終了させる。具体的には、制御部7は、塗布ローラ32の最後の1回転が終了すると、塗布ローラ32および補給ローラ33の回転を停止させる。この後、制御部7は、塗布ユニット保持部21がシャトルベースユニット2の前端側の所定の退避位置に達すると、塗布ユニット保持部21を停止させる。
【0076】
次いで、ステップS9において、制御部7は、乾燥ユニット5による印刷媒体16の乾燥を実行する。具体的には、制御部7は、乾燥ユニット5を前方向へ移動させるとともに、乾燥ユニット5が有する乾燥機構を駆動させる。これにより、乾燥ユニット5が前方向へ移動しつつ、前処理液が塗布された印刷媒体16を乾燥させる。印刷媒体16の乾燥が終了すると、制御部7は、乾燥ユニット5を、シャトルベースユニット2の前端側に退避している塗布ユニット保持部21の後側近傍に配置する。
【0077】
なお、塗布ユニット22による前処理液の塗布が終了する前に、乾燥ユニット5による印刷媒体16の乾燥を開始してもよい。
【0078】
次いで、ステップS10において、制御部7は、印刷媒体16に印刷を行うようシャトルユニット6を制御する。具体的には、制御部7は、シャトルユニット6を前方向に移動させつつ、インクジェットヘッドにより印刷媒体に印刷させる。
【0079】
次いで、ステップS11において、制御部7は、シャトルユニット6を印刷終了時の位置から後方向へ移動させてホーム位置に戻す。
【0080】
次いで、ステップS12において、制御部7は、乾燥ユニット5を後方向へ移動させてホーム位置に戻す。この際、制御部7は、印刷後の印刷媒体16を乾燥させるよう乾燥ユニット5の乾燥機構を駆動させる。
【0081】
次いで、ステップS13において、制御部7は、塗布ユニット22を待機位置に戻す。具体的には、まず、制御部7は、塗布ユニット保持部21を後方向へ移動させて、塗布ユニット22をスタート位置に戻す。次いで、制御部7は、塗布ユニット22をスタート位置より高い位置まで上昇させ、その位置で補給皿36を補給可能位置から退避位置へ回動させる。その後、制御部7は、塗布ユニット22を待機位置まで下降させる。この結果、塗布ローラ32および補給ローラ33が容器51内に収納されて塗布液に浸けられ、補給皿36が補給皿収納部52内に収納されるとともに、容器51および補給皿収納部52が蓋46により密閉される。これにより、一連の動作が終了となる。
【0082】
次に、前処理ユニット4における撹拌動作について説明する。
【0083】
撹拌動作は、容器51内の前処理液の成分分離を抑えるために、容器51内の前処理液を撹拌する動作である。撹拌動作は、前処理ユニット4の塗布ユニット22が待機位置に配置されている待機中において行われる。撹拌動作は、例えば、印刷装置1の電源投入時や、設定された定期的なタイミングで行われる。また、塗布ユニット22が待機位置に配置されてからの経過時間、気温、湿度等に応じて、撹拌動作を行うタイミングを決定してもよい。
【0084】
撹拌動作として、制御部7は、塗布モータ35により塗布ローラ32および補給ローラ33を回転させるとともに、撹拌ポンプ53を駆動させる。これにより、容器51内の前処理液に浸けられた塗布ローラ32および補給ローラ33が回転することで、容器51内の前処理液が撹拌される。また、撹拌ポンプ53の駆動により、流入口51aから容器51内へ前処理液が流入し、流出口51bから容器51内の前処理液が流出することで、容器51内の前処理液が撹拌される。
【0085】
以上説明したように、印刷装置1では、制御部7は、前処理液の塗布を行わない状態では、塗布ユニット22を待機位置に配置して塗布ローラ32および補給ローラ33を容器51内の前処理液に浸すよう制御する。これにより、塗布ローラ32の乾燥を抑制できるので、乾燥して前処理液が固着した塗布ローラ32で印刷媒体16への前処理液の塗布が行われることを低減できる。また、制御部7は、塗布ユニット22の待機中において、塗布モータ35を制御して塗布ローラ32および補給ローラ33を回転させるとともに、撹拌ポンプ53を駆動させて、容器51内の前処理液を撹拌させる。これにより、容器51内の前処理液の成分分離が抑えられる。この結果、印刷装置1によれば、印刷媒体16への前処理液の塗布品質の低下を抑制できる。
【0086】
また、印刷装置1では、塗布ローラ32および補給ローラ33の回転、および撹拌ポンプ53による容器51内の前処理液を出し入れにより、容器51内の前処理液の撹拌を行う。これにより、容器51の内部に撹拌のための機構を設けることなく、容器51内の前処理液の撹拌を行うことができる。このため、容器51の大型化を抑えることができる。また、蓋46を閉じて容器51を密閉したままでも、容器51内の前処理液の撹拌を行うことができる。
【0087】
なお、塗布ローラ32および補給ローラ33の回転による前処理液の撹拌を省略し、撹拌ポンプ53のみで前処理液の撹拌を行うようにしてもよい。また、撹拌ポンプ53を省略し、塗布ローラ32および補給ローラ33の回転のみで前処理液の撹拌を行うようにしてもよい。ここで、塗布ローラ32および補給ローラ33の回転による前処理液の撹拌を行う場合では、塗布ユニット22を待機位置に配置したときの塗布ローラ32および補給ローラ33は、全体が前処理液に浸からなくてもよく、少なくとも一部が前処理液に浸かればよい。塗布ローラ32および補給ローラ33は、一部が前処理液に浸かっていない場合でも、回転することで乾燥が防止されるからである。
【0088】
また、上述した実施の形態では、容器51に流入口51aおよび流出口51bをそれぞれ複数設けた構成を示したが、左右方向に細長い流入口および流出口をそれぞれ1つずつ設けた構成でもよい。
【0089】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0090】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0091】
(付記1)
塗布液を貯留する容器と、
前記容器に貯留された塗布液を被塗布材に塗布する塗布部材と、
前記容器内の塗布液を撹拌する撹拌手段と、
塗布液の塗布を行わない状態では、前記塗布部材の少なくとも一部を前記容器内の塗布液に浸すとともに、前記撹拌手段により前記容器内の塗布液の撹拌を行うよう制御する制御手段と
を備えることを特徴とする塗布装置。
【0092】
(付記2)
前記撹拌手段は、前記容器に塗布液を出し入れすることにより前記容器内の塗布液を撹拌することを特徴とする付記1に記載の塗布装置。
【0093】
(付記3)
被塗布材への塗布液の塗布中に前記塗布部材に塗布液を補給する補給手段をさらに備え、
前記塗布部材は、塗布ローラであり、
前記補給手段は、前記塗布ローラに塗布液を補給するための補給ローラを有し、
前記制御手段は、塗布液の塗布を行わない状態では、前記塗布ローラとともに前記補給ローラの少なくとも一部を前記容器内の塗布液に浸し、
前記撹拌手段は、前記塗布ローラおよび前記補給ローラを回転させることで、前記容器内の塗布液を撹拌することを特徴とする付記1または2に記載の塗布装置。