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特開2019-209369超音波接合装置および超音波接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209369(P2019-209369A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】超音波接合装置および超音波接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20191115BHJP
   H01L 21/607 20060101ALI20191115BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20191115BHJP
   B06B 3/00 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   B23K20/10
   H01L21/607 C
   H01L21/60 311R
   B06B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-109768(P2018-109768)
(22)【出願日】2018年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】須永 誠寿郎
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 敏暢
(72)【発明者】
【氏名】牧田 光悦
【テーマコード(参考)】
4E167
5D107
5F044
【Fターム(参考)】
4E167BE07
5D107BB20
5D107EE01
5D107FF03
5F044KK03
5F044KK06
5F044NN13
5F044PP11
(57)【要約】
【課題】配線ピッチ間隔が狭い場合でも、ショート不良などを発生させることなく、平面部材同士の電気的接続を図ることが容易な超音波接合装置および超音波接合方法を提供すること。
【解決手段】接合すべき第1平面部材と第2平面部材とが設置されるステージと、第1平面部材と前記第2平面部材との積層部分に押し当てられる押圧部を持つ超音波ホーンと、を有する超音波接合装置である。ステージは、第1平面部材が設置される低位側表面と、低位側表面に対して所定の段差高さで高い位置にあり、第2平面部材が設置される高位側表面と、低位側表面と高位側表面との境界に位置する段差壁面と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合すべき第1平面部材と第2平面部材とが設置されるステージと、
前記第1平面部材と前記第2平面部材との積層部分に押し当てられる押圧部を持つ超音波ホーンと、
を有する超音波接合装置であって、
前記ステージは、
前記第1平面部材が設置される低位側表面と、
前記低位側表面に対して所定の段差高さで高い位置にあり、前記第2平面部材が設置される高位側表面と、
前記低位側表面と前記高位側表面との境界に位置する段差壁面と、を有する超音波接合装置。
【請求項2】
前記ステージは、
前記第1平面部材の端部が前記段差壁面に接触して位置決めされるように、前記第1平面部材を前記低位側表面に着脱自在に固定する第1固定手段と、
前記第2平面部材の少なくとも一部が前記第1平面部材の上に積層されるように、前記第2平面部材を前記高位側表面に着脱自在に固定する第2固定手段と、をさらに有する請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記超音波ホーンを、前記ステージに対して相対移動させる移動機構と、
前記超音波ホーンの押圧部が、前記段差壁面に対応する位置で前記積層部分に押し当てられるように、前記移動機構を制御する制御手段と、をさらに有する請求項2に記載の超音波接合装置。
【請求項4】
前記段差高さは、前記第1平面部材の厚みと同等以下である請求項1〜3のいずれかに記載の超音波接合装置。
【請求項5】
前記超音波ホーンの押圧部は、前記段差壁面から所定範囲で前記低位側表面の上に位置する前記積層部を押圧するように、前記移動機構が前記制御手段で制御される請求項3または4に記載の超音波接合装置。
【請求項6】
低位側表面と、前記低位側表面に対して所定の段差高さで高い位置にある高位側表面と、前記低位側表面と前記高位側表面との境界に位置する段差壁面と、を有するステージを準備する工程と、
第1平面部材を、当該第1平面部材の端部が前記段差壁面に位置合わせされるように、前記低位側表面に設置する工程と、
第2平面部材の少なくとも一部が前記第1平面部材の上に積層される積層部分が形成されるように、前記高位側表面に、第2平面部材を設置する工程と、
超音波ホーンの押圧部を、前記段差壁面に対応する位置で前記積層部分に押し当てる工程と、を有する超音波接合方法。
【請求項7】
前記第2平面部材と積層される前記第1平面部材の表面には、第1金属が形成してあり、
前記第1平面部材と積層される前記第2平面部材の表面には、第2金属が形成してあり、
前記超音波ホーンの押圧部が接触する前記積層部分では、前記第1金属と前記第2金属とが超音波により固相結合される請求項6に記載の超音波接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合装置および超音波接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1に示すように、表示画面基板となるガラス基板の配線を、異方性導電膜(anisotropIc conductive film:以下ACF)を介して、フレキシブル配線基板(FPC)などに接続される技術は知られている。
【0003】
しかしながら、近年、配線パターンのピッチ間隔が狭くなってきており、ACFで接続する場合には、配線間のショート不良が課題になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−186517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、配線ピッチ間隔が狭い場合でも、ショート不良などを発生させることなく、平面部材同士の電気的接続を図ることが容易な超音波接合装置および超音波接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波接合装置は、
接合すべき第1平面部材と第2平面部材とが設置されるステージと、
前記第1平面部材と前記第2平面部材との積層部分に押し当てられる押圧部を持つ超音波ホーンと、
を有する超音波接合装置であって、
前記ステージは、
前記第1平面部材が設置される低位側表面と、
前記低位側表面に対して所定の段差高さで高い位置にあり、前記第2平面部材が設置される高位側表面と、
前記低位側表面と前記高位側表面との境界に位置する段差壁面と、を有する。
【0007】
本発明に係る超音波接合装置を用いて第1平面部材と第2平面部材との超音波接合を行うには、まず、第1平面部材を、当該第1平面部材の端部が前記段差壁面に位置合わせされるように、前記低位側表面に設置する。次に、第2平面部材の少なくとも一部が第1平面部材の上に積層される積層部分が形成されるように、高位側表面に、第2平面部材を設置する。その後に、超音波ホーンの押圧部を、段差壁面に対応する位置で前記積層部分に押し当てれば、超音波接合が完了する。
【0008】
本発明の超音波接合装置では、ステージの表面に段差壁面があるために、この段差壁面を利用して、第1平面部材と第2平面部材との位置合わせが容易になり、これらの配線パターン同士の超音波接合が可能になる。そのため、たとえば数十μm以下程度に配線ピッチ間隔が狭い場合でも、ショート不良などを発生させることなく、平面部材同士の電気的接続を図ることが容易になる。
【0009】
また、最近では、スマートフォンなどの表示画面などのように、装置の外形サイズ近くまでに広い表示画面が要求されることから、配線パターン同士の接合長さも短くせざるを得ず、その接続信頼性が問題になってきている。本発明の装置によれば、超音波接合により金属同士の固相結合が可能になり、接続の信頼性も向上する。
【0010】
さらに、本発明の超音波接合装置では、ステージの表面に段差壁面があるために、第1平面部材と第2平面部材との積層部の幅が、たとえば60mm以上に広い場合でも、確実に配線パターン同士を超音波接合することができる。
【0011】
好ましくは、前記ステージは、
前記第1平面部材の端部が前記段差壁面に接触して位置決めされるように、前記第1平面部材を前記低位側表面に着脱自在に固定する第1固定手段と、
前記第2平面部材の少なくとも一部が前記第1平面部材の上に積層されるように、前記第2平面部材を前記高位側表面に着脱自在に固定する第2固定手段と、をさらに有する。
【0012】
第1固定手段としては、特に限定されないが、たとえばステージの低位側表面に形成してある複数の第1吸着孔が例示される。複数の第1吸着孔に負圧を導入することで、第1平面部材を低位側表面に着脱自在に固定することができる。また、同様に、第2固定手段としては、特に限定されないが、たとえばステージの高位側表面に形成してある複数の第2吸着孔が例示される。複数の第2吸着孔に負圧を導入することで、第2平面部材を高位側表面に着脱自在に固定することができる。
【0013】
好ましくは、本発明の超音波接合装置は、
前記超音波ホーンを、前記ステージに対して相対移動させる移動機構と、
前記超音波ホーンの押圧部が、前記段差壁面に対応する位置で前記積層部分に押し当てられるように、前記移動機構を制御する制御手段と、をさらに有する。
【0014】
移動機構としては、超音波ホーンを、ステージに対して移動させる機構、ステージを超音波ホーンに対して移動させる機構、あるいはこれらの双方の機構であってもよい。移動機構は、少なくとも超音波ホーンを、ステージに対して相対的に近づける方向またはその逆方向に移動させる機構を含む。また、移動機構は、超音波ホーンを、ステージに対して相対的に平面方向に移動させる機構も含むことが好ましい。
【0015】
好ましくは、前記段差高さは、前記第1平面部材の厚みと同等以下である。このように構成することで、ステージの製造誤差があったとしても、第1平面部材の上面が、高位側表面に対して低くなることはなくなり、第1平面部材の上面が、高位側表面と面一か僅かに上側に突出することになる。そのため、第2平面部材を高位側表面に設置する場合に、それらの積層部(重複部)では、必ず第1平面部材と第2平面部材とが接触することになる。そのため、確実に超音波接合を行うことが可能になり、接続部の信頼性がさらに向上する。
【0016】
好ましくは、前記超音波ホーンの押圧部は、前記段差壁面から所定範囲で前記低位側表面の上に位置する前記積層部を押圧するように、前記移動機構が前記制御手段で制御される。超音波ホーンの押圧部は、高位側表面の上に位置する第2平面部材を押圧しないことが好ましく、積層部のみを押圧して超音波接合することが好ましい。このように構成することで、配線パターンの断線などを生じさせることなく、配線パターン同士の超音波接合の信頼性がさらに向上する。
【0017】
本発明に係る超音波接合方法は、
低位側表面と、前記低位側表面に対して所定の段差高さで高い位置にある高位側表面と、前記低位側表面と前記高位側表面との境界に位置する段差壁面と、を有するステージを準備する工程と、
第1平面部材を、当該第1平面部材の端部が前記段差壁面に位置合わせされるように、前記低位側表面に設置する工程と、
第2平面部材の少なくとも一部が前記第1平面部材の上に積層される積層部分が形成されるように、前記高位側表面に、第2平面部材を設置する工程と、
超音波ホーンの押圧部を、前記段差壁面に対応する位置で前記積層部分に押し当てる工程と、を有する。
【0018】
本発明の超音波接合方法では、ステージの表面に段差壁面があるために、この段差壁面を利用して、第1平面部材と第2平面部材との位置合わせが容易になり、これらの配線パターン同士の超音波接合が可能になる。そのため、たとえば数十μm以下程度に配線ピッチ間隔が狭い場合でも、ショート不良などを発生させることなく、平面部材同士の電気的接続を図ることが容易になる。なお、超音波の振動の方向は、積層部の積層方向ではなく、接合される配線パターン同士の長手方向に沿う方向であることが好ましい。
【0019】
また、最近では、スマートフォンなどの表示画面などのように、装置の外形サイズ近くまでに広い表示画面が要求されることから、配線パターン同士の接合長さも短くせざるを得ず、その接続信頼性が問題になってきている。本発明の方法によれば、超音波接合により金属同士の固相結合が可能になり、接続の信頼性も向上する。
【0020】
さらに、本発明の超音波接合方法では、ステージの表面に段差壁面があるために、第1平面部材と第2平面部材との積層部の幅が、たとえば60mm以上に広い場合でも、確実に配線パターン同士を超音波接合することができる。
【0021】
好ましくは、前記第2平面部材と積層される前記第1平面部材の表面には、第1金属が形成してあり、
前記第1平面部材と積層される前記第2平面部材の表面には、第2金属が形成してあり、
前記超音波ホーンの押圧部が接触する前記積層部分では、前記第1金属と前記第2金属とが超音波により固相結合される。
【0022】
好ましくは、第1平面部材に形成してある配線パターンの接続部が第1金属で構成してあり、第2平面部材に形成してある配線パターンの接続部が第2金属で構成してある。これらが超音波接合により固相結合される。これらの金属としては、超音波接合可能な金属(合金含む)であれば、特に限定されないが、銀、金、アルミニウム、あるいはこれらを主成分とする合金などが例示される。なお、これらの金属の表面に、チタンなどを主成分とする酸化防止膜が形成してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の一実施形態に係る超音波接合装置の概略構成図である。
図2図2図1に示す装置を用いた超音波接合方法の一工程を示す概略図である。
図3図3図2の続きを示す概略図である。
図4図4図3の続きを示す概略図である。
図5A図5A図4の続きを示す概略図である。
図5B図5B図5Aの続きを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0025】
図1に示す本発明の一実施形態に係る超音波接合装置2を用いて、図2図5Bに示す超音波接合方法を行い、図5Bに示す基板接合体8を製造する方法を説明する。
【0026】
図5Bに示すように、基板接合体8は、第1平面部材としての電子制御基板4と、第2平面部材としてのフレキシブル基板6とを有する。電子制御基板4は、たとえば液晶表示パネル、有機EL表示パネル、あるいはその他の表示パネルであってもよく、たとえばガラス基板を含んでいてもよい。
【0027】
フレキシブル基板6は、電子制御基板4に、何らかの信号と電力を供給するための基板であり、電子制御基板4の配線パターン4aと、フレキシブル基板6の配線パターン6aとが、パターン毎に電気的に接続されている。
【0028】
なお、図5Bに示す基板接合体8では、配線パターン4aと配線パターン6aとが超音波接合された後には、フレキシブル基板6は、電子制御基板4の配線パターン4a側の端部から裏側に折り曲げられて、たとえばスマートフォンのケーシングの内部に収容される。このように構成することにより、ケーシングの外形サイズに近い全面を、電子制御基板4の表示画面として利用することができる。
【0029】
このような観点からは、配線パターン4aと配線パターン6aとのX軸方向の重複幅x1(図5A参照)は、たとえば0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下と、可能な限り小さくすることが要求されている。また、また、画面表示の高微細化と共に、配線パターン4aおよび配線パターン6aのY軸方向の配線ピッチ間隔は、たとえば数十μm以下、好ましくは20μm以下程度に小さくなってきている。なお、図では、基板6の厚みが基板4と同程度の厚みに描いてあるが、実際には、基板6の厚みは、基板4の厚みに比較して小さいが、同じでも逆でもよい。
【0030】
本実施形態では、電子制御基板4の配線パターン4aと、フレキシブル基板6の配線パターン6aとを、パターン毎に電気的に接続するために、図1に示す超音波接合装置2を用いている。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の超音波接合装置2は、接合すべき電子制御基板4とフレキシブル基板6とが設置されるステージ10と、電子制御基板4と前フレキシブル基板6との積層部分に押し当てられる押圧部50aを持つ超音波ホーン50と、を有する。
【0032】
また、ステージ10のZ軸方向の上部には、搬送ヘッド20が、ステージ10に対してX軸、Y軸およびZ軸方向に相対移動自在に配置してある。さらに、ステージ10のZ軸方向の上部には、搬送ヘッド20とはZ軸方向の位置がずれるように、カメラ30が、ステージ10に対して、少なくともX軸およびY軸方向に相対移動自在に配置してある。なお、カメラ30も、搬送ヘッド20と同様に、ステージ10に対してZ軸方向に相対移動自在に配置してもよい。
【0033】
また、超音波ホーン50は、搬送ヘッド20およびカメラ30とは衝突しない位置で、ステージ10に対してX軸、Y軸およびZ軸方向に相対移動自在に配置してある。相対移動自在とは、一方が他方に対して移動してもよく、他方が一方に対して移動してもよく、あるいは、一方と他方とが相互に移動してもよいという趣旨であり、一方と他方との相対位置が変化する。
【0034】
ステージ10、超音波ホーン50、吸着ヘッド20およびカメラ30の相対移動機構の制御は、図示省略してある制御手段により行われる。制御手段は、装置2の制御装置を兼ねていてもよく、カメラ30により取得した画像の画像処理、後述する吸着孔11,12,14の負圧制御も行っていてもよい。制御手段としては、専用の制御回路でもよく、制御プログラムを持つ汎用のコンピュータで構成されていてもよい。
【0035】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直であり、Z軸は、装置2の高さ方向に一致し、X軸は、電子制御基板4またはフレキシブル基板6の長手方向に一致し、Y軸は、電子制御基板4またはフレキシブル基板6の幅方向に一致する。また、X軸およびY軸は、電子制御基板4の表示面に略平行である。
【0036】
ステージ10のZ軸上面には、少なくとも電子制御基板4が設置される低位側表面10aと、低位側表面10aに対して所定の段差高さz1で高い位置にある高位側表面10bと、低位側表面10aと高位側表面10bとの境界に位置する段差壁面10cとが形成してある。低位側表面10aと高位側表面10bとは、それぞれX−Y軸平面に対して、略平行であり、段差壁面10cは、Z−Y軸平面に対して、略平行である。
【0037】
低位側表面10aには、電子制御基板4が設置される接合位置10a1と、接合位置10a1からX軸方向(またはY軸方向)に離れてフレキシブル基板6が仮設置される待機位置10a2とが形成してある。接合位置10a1に位置する低位側表面10aには、ステージ10の内部に形成してある複数の第1吸着孔12が開口してある。また、待機位置10a2に位置する低位側表面10aには、ステージ10の内部に形成してある複数の待機吸着孔11が開口してある。
【0038】
第1吸着孔12に負圧が作用することで、接合位置10a1に載置された電子制御基板4を、接合位置10a1において低位側表面10aに着脱自在に吸着仮固定することができる。接合位置10a1においては、電子制御基板4は、基板4に形成してある配線パターン4aの接続予定部がZ軸方向の上を向くように、しかも、基板4の配線パターン4aの接続予定部側の端部が段差壁面10cに突き当たる(接触する)ように配置される。電子制御基板4を、接合位置10a1において低位側表面10aの上述した所定位置に配置するための手段としては、たとえば図1に示す吸着ヘッド20を用いてもよいし、あるいは、これとは別の吸着ヘッドを用いてもよい。
【0039】
また、待機吸着孔11に負圧が作用することで、待機位置10a2に載置されたフレキシブル基板6を、待機位置10a2において低位側表面10aに着脱自在に吸着仮固定することができる。待機位置10a2においては、フレキシブル基板6は、基板6に形成してある配線パターン6aの接続予定部がZ軸方向の下を向くように、しかも、基板6の配線パターン6aの接続予定部側の端部が電子制御基板4とはX軸方向の反対側を向くように配置される。フレキシブル基板6を、待機位置10a2において低位側表面10aの上述した所定位置に配置するための手段としては、たとえば図1に示す吸着ヘッド20を用いる。
【0040】
本実施形態では、段差壁面10cの段差高さZ1は、電子制御基板4の厚みt0と同等以下であり、これらの差異(t0−z1)は、好ましくは、0〜20μm、さらに好ましくは10〜20μmである。
【0041】
ステージ10の高位側表面10bには、段差壁面10cの近くで、ステージ10の内部に形成してある複数の第2吸着孔14が開口してある。第2吸着孔14に負圧が作用することで、図4に示すように、高位側表面10bに載置されたフレキシブル基板6を、段差壁面10cの近くで高位側表面10bに着脱自在に吸着仮固定することができる。フレキシブル基板6を、段差壁面10cの近くで高位側表面10aに配置するための手段としては、たとえば吸着ヘッド20を用いる。
【0042】
次に、図1に示す超音波接合装置2を用いた超音波接合方法について説明する。図2に示すように、まず、待機位置10a2の低位側表面10aに開口している待機吸着孔11の負圧を解除し、吸着ヘッド20により、待機位置10a2に位置しているフレキシブル基板6をZ軸方向の上部に持ち上げる。吸着ヘッド20は、たとえば吸引力によりヘッド下面に基板6を吸着保持する機構を有する。
【0043】
その後に、図3に示すように、吸着ヘッド20を基板6と共に、ステージ10に対して、X軸方向に移動させる。なお、ステージ10をX軸方向に移動させてもよい。吸着ヘッド20に保持された基板6は、段差壁面10c近くの高位側表面10bの上に位置するように、吸着ヘッド20がステージ10に対してX軸方向に相対移動する。その移動制御は、制御手段により行われる。
【0044】
また、基板6の配線パターン6aの接続予定部が、基板4の配線パターン4aの接続予定部と正確に位置合わせされるように、配線パターン4aと配線パターン6aとの間には、カメラ30が入り込み、これらの位置関係を撮像し、制御手段では、これらの画像処理を行う。その画像処理結果に基づき、制御手段は、基板6の配線パターン6aの接続予定部が、基板4の配線パターン4aの接続予定部と正確に位置合わせされるように、吸着ヘッド20を、ステージ10に対して、X軸およびY軸方向に相対的に移動させる。また、必要に応じて、制御手段は移動機構を制御して、吸着ヘッド20を、ステージ10に対して、吸着ヘッドの軸芯回りに回転移動も行わせてもよい。
【0045】
次に、カメラ30は、基板6とステージ10との間からX軸方向に移動し、吸着ヘッド20のZ軸方向の移動を阻害しない位置に退避する。その後に、図4に示すように、吸着ヘッド20はステージ10の高位側表面10bに近づき、基板6への吸着保持を解除し、基板6を高位側表面10bの上に載置する。同時に、第2吸着孔14に負圧が作用し、基板6を高位側表面10bの上に吸着保持する。その状態で、基板6のX軸方向の端部下面と基板4のX軸方向の端部上面とが重なり、段差壁面10cに対応する位置で積層部分が形成される。積層部分では、配線パターン4aの接合予定部と配線パターン6aの接合予定部とが向き合うことになる。
【0046】
次に、図5Aに示すように、ステージ10を、吸着ヘッド20およびカメラ30に対してX軸方向に相対移動させて、超音波ホーン50の押圧部50aを、配線パターン6a,4a同士の積層部分のZ軸方向の直上位置に位置させる。なお、ステージ10の段差壁面10cに対して、超音波ホーン50の押圧部50aがX軸方向の所定範囲x3内で低位側表面10aの上に位置するように、予めステージ10と超音波ホーン50とのX軸相対移動が制御されている。
【0047】
すなわち、超音波ホーン50の押圧部50aは、段差壁面10cから所定範囲x3で低位側表面の上10aに位置する積層部を押圧するように、移動機構が制御手段で制御される。なお、所定範囲x3とは、0より大で、積層部のX軸方向長さx1よりも小さいことが好ましい。つまり、押圧部50aが高位側表面10bの上に位置する基板6の表面を押圧しないように制御される。
【0048】
積層部のX軸方向長さx1は、配線パターン4a,6aの接続予定部の重なり長さとも一致し、たとえば0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下と、可能な限り小さくすることが要求されている。また、基板4および6の重なり部分(積層部分)を押圧する押圧部50aのX軸方向の長さx2は、積層部のX軸方向長さx1と同等以上であることが好ましく、長さの差(x2−x1)は、好ましくは、0以上で0.5mm、さらに好ましくは0.01〜0.08mmである。
【0049】
次に、図5Aから図5Bに示すように、超音波ホーン50をステージ10に対してZ軸方向の下方に相対移動させ、超音波ホーン50の押圧部50aを、基板4と6との積層部分に押し付け、積層部分にZ軸方向の押圧力とX軸方向の超音波振動を加える。その結果、X軸方向に長くY軸方向には所定ピッチ間隔で配置されている積層部分の配線パターン4a,6aの金属同士が超音波により固相結合される。
【0050】
配線パターン4a.6aを構成する金属としては、超音波接合可能な金属(合金含む)であれば、特に限定されないが、銀、金、アルミニウム、あるいはこれらを主成分とする合金などが例示される。なお、これらの金属の表面(特にアルミニウムの表面)に、チタンなどを主成分とする酸化防止膜が形成してあってもよい。
【0051】
本実施形態に係る基板接合体8の製造方法(超音波接合方法を含む)では、ステージ10の表面に段差壁面10cがあるために、この段差壁面10cを利用して、電子制御基板4とフレキシブル基板6との位置合わせが容易になり、これらの配線パターン4a,6a同士の超音波接合が可能になる。そのため、たとえば数十μm以下程度にY軸方向の配線ピッチ間隔が狭い場合でも、ショート不良などを発生させることなく、電子制御基板4とフレキシブル基板6との電気的接続を図ることが容易になる。なお、超音波の振動の方向は、積層部の積層方向(Z軸方向)ではなく、接合される配線パターン4a,6a同士の長手方向に沿う方向であることが好ましい。
【0052】
また、最近では、スマートフォンなどの表示画面などのように、装置のケーシング外形サイズ近くまでに広い表示画面が要求されることから、配線パターン4a,6a同士の接合長さx1も短くせざるを得ず、その接続信頼性が問題になってきている。本実施形態の方法によれば、超音波接合により金属同士の固相結合が可能になり、接続の信頼性も向上する。
【0053】
さらに、本実施形態の基板接合体の製造方法では、ステージ10の表面に段差壁面10cがあるために、電子制御基板4とフレキシブル基板6との積層部のY軸方向の幅が、たとえば60mm以上に広い場合でも、確実に配線パターン同士を超音波接合することができる。
【0054】
また、本実施形態では、超音波ホーン50の押圧部50aは、段差壁面10cから所定範囲で低位側表面10aの上に位置する積層部を押圧するように、移動機構が制御手段で制御される。超音波ホーン50の押圧部50aは、高位側表面10bの上に位置するフレキシブル基板6を押圧しないことが好ましく、積層部のみを押圧して超音波接合することが好ましい。このように構成することで、配線パターンの断線などを生じさせることなく、配線パターン4a,6a同士の超音波接合の信頼性がさらに向上する。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0056】
たとえば、電子制御基板4としては、ガラス基板を含む剛性の基板のみでなく、柔軟性を有するフレキシブルな基板であってもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、第2平面部材として、フレキシブル基板6を用いているが、特に限定されない。
【符号の説明】
【0058】
2… 超音波接合装置
4… 電子制御基板(第1平面部材)
4a… 配線パターン
6… フレキシブル基板(第2平面部材)
6a… 配線パターン
8… 基板接合体
10… ステージ
10a… 低位側表面
10a1… 接合位置
10a2… 待機位置
10b… 高位側表面
10c… 段差壁面
11… 待機吸着孔
12… 第1級着孔
14… 第2吸着孔
20… 搬送ヘッド
30… カメラ
50… 超音波ホーン
50a… 押圧部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B