【解決手段】ロボットアームと、前記ロボットアームに配置されたセンサーと、前記ロボットアームに配置され、前記ロボットアームを駆動する駆動部と、前記ロボットアームに接続された配管部材と、前記配管部材内に収納され、前記センサーから出力された信号を伝搬する第1信号線と、前記配管部材内に収納され、前記駆動部から出力された信号を伝搬する第2信号線と、前記配管部材の内部において前記第1信号線および前記第2信号線を一括して覆うシールドと、を備えることを特徴とするロボット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のロボットを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<実施形態>
図1は、本発明のロボットの実施形態を示す側面図である。
図2は、
図1に示すロボットシステムのブロック図である。
図3は、
図1に示すロボットが備える第2アームの側面図(一部透視図)である。
図4は、
図1に示すロボットが備える基台の側面図(一部透視図)である。
図5は、
図1に示す配管部材、シールドおよび配線群の横断面図である。
図6は、従来の配管部材、シールドおよび配線群の横断面図である。なお、
図1では、表示装置41および入力装置42の図示は省略されている。
【0011】
また、
図1、
図3、
図4では、説明の便宜上、互いに直交する3軸として、x軸、y軸およびz軸を図示している。また、以下では、x軸に平行な方向を「x軸方向」とも言い、y軸に平行な方向を「y軸方向」とも言い、z軸に平行な方向を「z軸方向」とも言う。また、以下では、図示された各矢印の先端側を「+(プラス)」、基端側を「−(マイナス)」と言い、+x軸方向に平行な方向を「+x軸方向」とも言い、−x軸方向に平行な方向を「−x軸方向」とも言い、+y軸方向に平行な方向を「+y軸方向」とも言い、−y軸方向に平行な方向を「−y軸方向」とも言い、+z軸方向に平行な方向を「+z軸方向」とも言い、−z軸方向に平行な方向を「−z軸方向」とも言う。また、z軸周りの方向およびz軸に平行な軸周りの方向を「u軸方向」とも言う。
【0012】
また、以下では、説明の便宜上、
図1中の+z軸方向(z軸方向+側)(上側)を「上」、−z軸方向(z軸方向−側)(下側)を「下」とも言う。また、ロボットアーム20については、
図1中の基台21側を「基端」、その反対側(エンドエフェクター7側)を「先端」と言う。また、
図1中のz軸方向(上下方向)を「鉛直方向」とし、x軸方向およびy軸方向(左右方向)を「水平方向」とする。
【0013】
また、本明細書において、「水平」とは、完全に水平な場合のみならず、水平に対して±5°以内で傾斜している場合も含む。同様に、本明細書において、「鉛直」とは、完全に鉛直な場合のみならず、鉛直に対して±5°以内で傾斜している場合も含む。また、本明細書において、「平行」とは、2つの線(軸を含む)または面が、互いに完全な平行である場合のみならず、±5°以内で傾斜している場合も含む。また、本明細書において、「一致」とは、2つの線(軸を含む)または面が、互いに完全な一致している場合のみならず、±5°以内で傾斜している場合も含む。また、本明細書において、「直交」とは、2つの線(軸を含む)または面が、互いに完全な直交である場合のみならず、±5°以内で傾斜している場合も含む。
【0014】
図1および
図2に示すロボットシステム100は、例えば、電子部品および電子機器等のワーク(対象物)の保持、搬送、組立ておよび検査等の作業で用いられる装置である。ロボットシステム100は、制御装置1と、ロボット2と、エンドエフェクター7と、表示装置41(表示部)と、入力装置42(入力部)とを備えている。
【0015】
また、図示の構成では、制御装置1は、ロボット2の外側に配置されているが、これに限定されず、ロボット2に内蔵されていてもよい。
【0016】
また、図示の構成では、ロボット2と制御装置1とは、ケーブル200で電気的に接続(以下、単に「接続」とも言う)されているが、これに限定されずケーブル200を省略し、無線方式で通信を行うようになっていてもよい。すなわち、ロボット2と制御装置1とは、有線通信で接続されていてもよく、また、無線通信で接続されていてもよい。
【0017】
<ロボット>
ロボット2の種類は、特に限定されないが、本実施形態では、ロボット2は、水平多関節ロボットの1例であるスカラロボットである。
【0018】
図1に示すように、ロボット2は、基台21と、第1アーム22と、第2アーム23と、作業ヘッド24と、配線群5と、配管部材9とを備えている。第1アーム22、第2アーム23および作業ヘッド24等によりロボットアーム20が構成される。
【0019】
また、ロボット2は、第1アーム22を基台21に対して回動(駆動)させる駆動部25と、第2アーム23を第1アーム22に対して回動させる駆動部26と、作業ヘッド24のシャフト241を第2アーム23に対して回動させる駆動部27と、シャフト241を第2アーム23に対してz軸方向に移動させる駆動部28と、角速度センサーとを備えている。
【0020】
図2に示すように、駆動部25は、第1アーム22の筐体220内に内蔵されており、駆動力を発生するモーター251と、モーター251の駆動力を減速する図示しない減速機と、モーター251または減速機の回転軸の回転角度を検出する位置センサー252とを有している。
【0021】
駆動部26は、第2アーム23の筐体230に内蔵されており、駆動力を発生するモーター261と、モーター261の駆動力を減速する図示しない減速機と、モーター261または減速機の回転軸の回転角度を検出する位置センサー262とを有している。
【0022】
駆動部27は、第2アーム23の筐体230に内蔵されており、駆動力を発生するモーター271と、モーター271の駆動力を減速する図示しない減速機と、モーター271または減速機の回転軸の回転角度を検出する位置センサー272とを有している。
【0023】
駆動部28は、第2アーム23の筐体230に内蔵されており、駆動力を発生するモーター281と、モーター281の駆動力を減速する図示しない減速機と、モーター281または減速機の回転軸の回転角度を検出する位置センサー282とを有している。
【0024】
モーター251、モーター261、モーター271およびモーター281としては、例えば、ACサーボモーター、DCサーボモーター等のサーボモーターを用いることができる。また、減速機としては、例えば、遊星ギア型の減速機、波動歯車装置等を用いることができる。また、位置センサー252、位置センサー262、位置センサー272および位置センサー282は、例えば、角度センサーとすることができる。
【0025】
駆動部25、駆動部26、駆動部27および駆動部28は、それぞれ、対応する図示しないモータードライバーに接続されており、モータードライバーを介して制御装置1のロボット制御部11により制御される。なお、各減速機は省略されていてもよい。
【0026】
また、角速度センサー29(センサー)は、第2アーム23に内蔵されている。このため、第2アーム23の角速度を検出することができる。この検出した角速度の情報に基づいて、制御装置1は、ロボット2の制御を行う。また、角速度センサー29は、駆動部26〜28よりも−y軸側、すなわち、基台21の遠位側に設置されている。
【0027】
基台21は、例えば、図示しない床面にボルト等によって固定されている。基台21の上端部には第1アーム22が連結されている。第1アーム22は、基台21に対して鉛直方向に沿う第1回動軸O1周りに回動可能となっている。第1アーム22を回動させる駆動部25が駆動すると、第1アーム22が基台21に対して第1回動軸O1周りに水平面内で回動する。また、位置センサー252により、基台21に対する第1アーム22の駆動(回動量)が検出できるようになっている。
【0028】
また、第1アーム22の先端部には、第2アーム23が連結されている。第2アーム23は、第1アーム22に対して鉛直方向に沿う第2回動軸O2周りに回動可能となっている。第1回動軸O1の軸方向と第2回動軸O2の軸方向とは同一である。すなわち、第2回動軸O2は、第1回動軸O1と平行である。第2アーム23を回動させる駆動部26が駆動すると、第2アーム23が第1アーム22に対して第2回動軸O2周りに水平面内で回動する。また、位置センサー262により、第1アーム22に対する第2アーム23の駆動(回動量)が検出できるようになっている。
【0029】
また、第2アーム23は、底板231、天板232およびこれらを連結している側壁233を有する筐体230を有している。この筐体230の内部、すなわち、底板231上には、角速度センサー29、駆動部26、駆動部27および駆動部28が+y軸側からこの順で並んでいる。
【0030】
また、筐体230は、天板232と側壁233との間に位置する傾斜部234を有している。この傾斜部234は、天板232の−y軸側に設けられている。また、この傾斜部234は、z軸に対して傾斜して設けられている。
【0031】
また、第2アーム23の先端部には、シャフト241を有する作業ヘッド24が設置されている。シャフト241は、第2アーム23に対して、鉛直方向に沿う第3回動軸O3周りに回動可能であり、かつ、上下方向に移動(昇降)可能となっている。このシャフト241は、ロボットアーム20の第3アームであり、ロボットアーム20の最も先端のアームである。
【0032】
シャフト241を回動させる駆動部27が駆動すると、シャフト241は、z軸周りに正逆回転(回動)する。また、位置センサー272により、第2アーム23に対するシャフト241の回転量が検出できるようになっている。
【0033】
また、シャフト241をz軸方向に移動させる駆動部28が駆動すると、シャフト241は、上下方向(z軸方向)に移動する。また、位置センサー282により、第2アーム23に対するシャフト241のz軸方向の移動量が検出できるようになっている。
【0034】
また、シャフト241の先端部(下端部)には、各種のエンドエフェクターが着脱可能に連結される。エンドエフェクターとしては、特に限定されず、例えば、被搬送物を把持するもの、被加工物を加工するもの、検査に使用するもの等が挙げられる。本実施形態では、エンドエフェクター7が着脱可能に連結される。エンドエフェクター7については、後に詳述する。
【0035】
なお、エンドエフェクター7は、本実施形態では、ロボット2の構成要素になっていないが、エンドエフェクター7の一部または全部がロボット2の構成要素になっていてもよい。また、エンドエフェクター7は、本実施形態では、ロボットアーム20の構成要素になっていないが、エンドエフェクター7の一部または全部がロボットアーム20の構成要素になっていてもよい。
【0036】
<エンドエフェクター>
図1に示すように、エンドエフェクター7は、力検出部290と、力検出部290に取り付けられた取り付け部71と、取り付け部71に設けられたモーター72と、モーター72の回転軸に、着脱可能に同心的に取り付けられたねじ用限界ゲージ3とを有している。このエンドエフェクター7では、力検出部290が、直接または図示しない連結部材を介して、シャフト241の先端部に着脱可能に連結される。また、シャフト241の中心軸、すなわち、第3回動軸O3と、モーター72の回転軸と、ねじ用限界ゲージ3の中心軸とは、一致している。すなわち、第3回動軸O3の軸方向から見て、第3回動軸O3と、モーター72と、ねじ用限界ゲージ3とは重なっている。
【0037】
また、ねじ用限界ゲージ3は、ねじゲージの1例であり、柱状の把持部31と、把持部31の一端部に設けられ、雄ねじが形成された通り側ゲージ32と、把持部31の他端部に設けられ、雄ねじが形成された止まり側ゲージ33とを有している。このねじ用限界ゲージ3は、通り側ゲージ32を使用する場合は、止まり側ゲージ33が設けられた把持部31の端部をモーター72の回転軸に取り付け、通り側ゲージ32を先端側に配置する。また、止まり側ゲージ33を使用する場合は、通り側ゲージ32が設けられた把持部31の端部をモーター72の回転軸に取り付け、止まり側ゲージ33を先端側に配置する。
【0038】
また、モーター72としては、特に限定されないが、例えば、ACサーボモーター、DCサーボモーター等のサーボモーター、ステッピングモーター等が用いられる。
【0039】
また、エンドエフェクター7は、モーター72の回転軸の回転角度を検出する図示しない角度センサーを有しており、その位置センサーにより、モーター72の回転軸の回転角度が検出できるようになっている。
【0040】
また、力検出部290は、例えば、ねじ用限界ゲージ3に加わる力を検出する力覚センサー等で構成されている。なお、本実施形態では、力検出部290はエンドエフェクター7の構成要素であるが、これに限定されず、ロボット2またはロボットアーム20の構成要素であってもよい。
【0041】
このエンドエフェクター7では、モーター72の回転軸とねじ用限界ゲージ3との間に歯車やベルト等の動力伝達機構が介在している場合に比べて、バックラッシュによる回転精度の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、ねじ用限界ゲージ3は、このような構成のものに限定されず、例えば、通り側ゲージのみを有するねじ用限界ゲージと、止まり側ゲージのみを有するねじ用限界ゲージとを付け替えて使用する構成のものであってもよい。
【0043】
また、本実施形態では、エンドエフェクター7は、ロボットアーム20に対して着脱可能であるが、これに限定されず、例えば、エンドエフェクター7は、ロボットアーム20から離脱不能になっていてもよく、また、力検出部290がロボットアーム20から離脱不能になっていてもよい。
【0044】
<制御装置>
図2に示すように、制御装置1は、ロボット制御部11と、モーター制御部12(エンドエフェクター制御部)と、表示制御部13と、記憶部14と、受付部15と、判定部16とを備えており、ロボット2、エンドエフェクター7のモーター72および表示装置41等、ロボットシステム100の各部の駆動をそれぞれ制御する。
【0045】
また、制御装置1は、ロボット制御部11と、モーター制御部12と、表示制御部13と、記憶部14と、受付部15と、判定部16との間で、それぞれ、通信可能に構成されている。すなわち、ロボット制御部11と、モーター制御部12と、表示制御部13と、記憶部14と、受付部15と、判定部16とは、互いに、有線または無線通信で接続されている。
【0046】
また、制御装置1には、ロボット2と、表示装置41と、入力装置42と、エンドエフェクター7とが、それぞれ、有線または無線通信で接続されている。
【0047】
(ロボット制御部)
ロボット制御部11は、ロボット2の駆動、すなわち、ロボットアーム20等の駆動を制御する。ロボット制御部11は、OS等のプログラムがインストールされたコンピューターである。このロボット制御部11は、例えば、プロセッサとしてのCPUと、RAMと、プログラムが記憶されたROMとを有する。また、ロボット制御部11の機能は、例えば、CPUにより各種プログラムを実行することにより実現することができる。
【0048】
(モーター制御部)
モーター制御部12は、モーター72の駆動を制御する。モーター制御部12は、OS等のプログラムがインストールされたコンピューターである。このモーター制御部12は、例えば、プロセッサとしてのCPUと、RAMと、プログラムが記憶されたROMとを有する。また、モーター制御部12の機能は、例えば、CPUにより各種プログラムを実行することにより実現することができる。
【0049】
(表示制御部)
表示制御部13は、表示装置41にウィンドウ等の各種の画面や文字等を表示させる機能を有している。すなわち、表示制御部13は、表示装置41の駆動を制御する。この表示制御部13の機能は、例えばGPU等により実現することができる。
【0050】
(記憶部)
記憶部14は、各種の情報(データやプログラム等を含む)を記憶する機能を有する。この記憶部14は、制御プログラム等を記憶する。記憶部14の機能は、ROM等やいわゆる外部記憶装置(図示せず)によって実現することができる。
【0051】
(受付部)
受付部15は、入力装置42からの入力を受け付ける機能を有している。この受付部15の機能は、例えばインターフェース回路によって実現することができる。なお、例えばタッチパネルを用いる場合には、受付部15は、ユーザーの指のタッチパネルへの接触等を検知する入力検知部としての機能を有する。
【0052】
<表示装置>
表示装置41は、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等で構成されたモニター(図示せず)を備えており、例えば、各種の画像(ウィンドウ等の各種の画面等を含む)や文字等を表示する機能を有する。
【0053】
<入力装置>
入力装置42は、例えば、マウスやキーボード等で構成されている。したがって、ユーザーは、入力装置42を操作することで、制御装置1に対して各種の処理等の指示を行うことができる。
【0054】
具体的には、ユーザーは、表示装置41に表示される各種画面(ウィンドウ等)に対して入力装置42のマウスでクリックする操作や、入力装置42のキーボードで文字や数字等を入力する操作により、制御装置1に対する指示を行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、表示装置41および入力装置42の代わりに、表示装置41および入力装置42を兼ね備えた表示入力装置を設けてもよい。表示入力装置としては、例えば静電式タッチパネルや感圧式タッチパネル等のタッチパネルを用いることができる。また、入力装置42は、音声等の音を認識する構成であってもよい。
【0056】
次に、ロボット2の配線について説明する。
ロボット2では、制御装置1とロボット2とは、配線群5によって接続されている。配線群5は、モーター261と制御装置1とを接続する信号線51と、モーター271と制御装置1とを接続する信号線52と、モーター281と制御装置1とを接続する信号線53と、角速度センサー29と制御装置1とを接続する信号線54とを有している。これにより、制御装置1がロボット2を制御するための電気信号を、モーター261、モーター271、モーター281および角速度センサー29に送信することができる。
【0057】
なお、モーター261、モーター271、モーター281および角速度センサー29等に電力を供給するための電力線等の図示および説明を省略している。
【0058】
信号線51〜信号線54は、それぞれ、導電性を有する導線55(芯線)と、導線55を被覆する被覆層56とを有している。導線55は、電気信号を伝搬する機能を有する。被覆層56は、絶縁性を有し、導線55が他の導電性を有する部材と接触するのを防止する機能を有する。
【0059】
導線55の構成材料としては、例えば、銅などの金属材料が挙げられる。一方、被覆層56の構成材料は、例えば、各種樹脂材料、各種ゴム材料等が挙げられる。
【0060】
また、信号線51〜信号線54の外径は、それぞれ、0.5mm以上3.0mm以下程度とされる。
【0061】
このような信号線51〜信号線54は、第2アーム23内から配管部材9、基台21を通過し、制御装置1に引き回されている。
【0062】
配管部材9は、可撓性を有する管状部材で構成されている。この配管部材9によって、信号線51〜信号線54がロボット2の外側に剥き出しになってしまうのを防止することができる。また、配管部材9が可撓性を有するため、第1アーム22および第2アーム23がそれぞれ回動する際、配管部材9が変形することができ、前記回動が円滑に行われる。
【0063】
前述した信号線51〜信号線54は、外部からのノイズ、特に、電磁波の影響を軽減するためにシールド8によって覆われている。シールド8は、一端部83(
図3中左側の端部)が第2アーム23の内側に位置し、他端部84(
図4中右側の端部)が基台21の内側に位置し、長手方向の途中が配管部材9内を挿通している。すなわち、シールド8は、第2アーム23から基台21に至るまで、配線群5を被覆している。換言すれば、シールド8は、配管部材9から第2アーム23内に伸びている第1延長部86と、配管部材9から基台21内に伸びている第2延長部87とを有している。
【0064】
シールド8は、管状をなし、遮蔽層81と、遮蔽層81の外周側に設けられた被覆層82とを有する2重管構造をなしている。遮蔽層81は、電磁波遮蔽性を有する材料で構成されている。一方、被覆層82は、絶縁性を有し、遮蔽層81が他の導電性を有する部材と接触するのを防止する機能を有する。このようなシールド8によれば、信号線51〜信号線54にノイズが混入するのを防止または抑制することができる。よって、モーター261〜モーター281の作動を正確に制御することができるとともに、角速度センサー29が検出した検出結果を正確に制御装置1に送信することができる。その結果、ロボット2の制御を正確に行うことができる。
【0065】
特に、ロボット2では、外部からのノイズの影響を比較的受けやすい配管部材9の内部において、信号線51〜信号線54がシールド8によって保護されているため、その結果、ロボット2の制御を正確に行うことができる。
【0066】
また、信号線54が接続されるセンサーは、角速度センサー29である。角速度センサー29は、図示はしないがA/D変換部を有しており、信号線54内を通過する信号は、デジタル信号となる。このデジタル信号は、外部からのノイズの影響を受けにくいため、信号線54が接続されるセンサーが角速度センサー29であることにより、信号線51〜信号線53からのノイズの影響も軽減することができる。
【0067】
遮蔽層81の構成材料としては、金、銀、銅、鉄、ニッケルおよびアルミニウム、またはこれらを含む合金のような金属、および、AFe
2O
4(式中、Aは、Mn、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるフェライト、ITO、ATO、FTOのような金属酸化物等を含むものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、形態は特に限定されず、これらの材料で構成された箔や、これらの材料で構成された繊維からなる織布または不織布であってもよい。また、これらの材料で構成された粉末を樹脂材料に練り込んで成形したものであってもよい。
一方、被覆層82の構成材料としては、各種樹脂材料、各種ゴム材料等が挙げられる。
【0068】
ここで、従来では、
図6に示すように、信号線51〜信号線54は、それぞれ、シールド8’によって被覆されている構成であった。このため、信号線51〜信号線54が挿通される配管部材9’の外径D’(最大幅)を比較的大きく確保する必要があり、配管部材9’が太くなる傾向を示す。このような傾向は、配線の数が増えれば増えるほど、顕著になる。
【0069】
これに対し、ロボット2では、
図5に示すように、シールド8が信号線51〜信号線54を一括して被覆する構成となっている。これにより、
図6に示すような信号線51〜信号線54の各々を被覆する構成に比べて、配線群5全体として細径化を図ることができる。よって、配管部材9を配管部材9’と同じ管厚としたとき、内径および外径D(最大幅)を小さくすることができ、配管部材9の細径化を図ることができる。その結果、ロボット2全体として小型化を図ることができるとともに、第1アーム22および第2アーム23が回動する際、配管部材9からの抵抗を小さくすることができ、配管部材9が回動動作を阻害するのを防止または抑制することができる。
【0070】
また、
図3に示すように、シールド8は、配管部材9からロボットアーム20の内部、すなわち、第2アーム23の内部に延びた第1延長部86を有している。これにより、信号線51〜信号線54の、シールド8に覆われている部分をより長くすることができる。よって、本発明の効果をより効果的に発揮することができる。
【0071】
また、シールド8は、一端部83、すなわち、第1延長部86の配管部材9から遠位側の端部は、モーター261、モーター271およびモーター281および角速度センサー29と離間している。このため、シールド8の一端部83よりも先では、信号線51〜信号線54の各々が露出している。よって、信号線51〜信号線54をそれぞれ、独立してモーター261、モーター271、モーター281および角速度センサー29にそれぞれ接続することができる。
【0072】
また、シールド8は、一端部83が角速度センサー29よりも−y軸側に位置している。すなわち、シールド8は、一端部83が角速度センサー29の、基台21の遠位側に位置している。このため、信号線51〜信号線54は、角速度センサー29よりも−y軸側まで引き回され、そこからモーター261、モーター271、モーター281および角速度センサー29に向って折り返す構成となっている。これにより、第2アーム23の内部において、モーター261、モーター271、モーター281および角速度センサー29の+z側に配置される信号線51〜信号線54を可及的に少なくすることができる。よって、第2アーム23の厚さ(z軸方向に沿った長さ)を可及的に小さくすることができ、ロボット2の小型化に寄与する。
【0073】
また、シールド8は、固定部820(第1固定部)によって、第2アーム23内に固定されている。固定部820は、互いに離間した位置に配置された2つの固定部821および固定部822を有する。
【0074】
固定部821は、角速度センサー29よりも−y軸側に設けられている。また、固定部821は、一端部83の近傍を第2アーム23の筐体230の上部の内壁に固定している。これにより、ロボット2が駆動したとしても、シールド8の一端部83が第2アーム23内で過剰に動いてしまうのを防止することができる。
【0075】
固定部822は、配管部材9の接続部91付近に設けられている。これにより、第2アーム23内におけるシールド8の根本を固定することができる。これにより、ロボット2が駆動したとしても、シールド8の一端部83が第2アーム23内で過剰に動いてしまうのを防止することができる。
【0076】
このような固定部821および固定部822は、シールド8の動きを規制する機能を有していれば特に限定されないが、例えば、紐、金具等が挙げられる。
【0077】
このように、ロボット2は、第1延長部86を第2アーム23(ロボットアーム)に対して固定する固定部820(第1固定部)を有する。これにより、第2アーム23内でのシールド8の動きを規制することができる。よって、シールド8が第2アーム23内で過剰に動いてしまうのを防止することができ、この過剰な動きに伴う信号線51〜54の断線を防止または抑制することができる。
【0078】
また、
図4に示すように、シールド8は、配管部材9から基台21の内部に延びた第2延長部87を有している。これにより、信号線51〜信号線54の、シールド8に覆われている部分をより長くすることができる。よって、本発明の効果をより効果的に発揮することができる。
【0079】
また、シールド8は、基台21内では、固定部830(第2固定部)によって、基台21内に固定されている。固定部830は、互いに離間した位置に配置された2つの固定部831および固定部832を有する。固定部831は、配管部材9と基台21との接続部92付近に位置している。また、固定部832は、固定部831よりも−z軸側に設けられている。
【0080】
また、ロボット2では、基台21内に板金85が設けられており、固定部831および固定部832は、板金85に固定されている。板金85は、y軸方向に延在し、基台21の上部の内面に固定される部分851と、z軸方向に延在する部分852と、z軸に傾斜して設けられた部分853とを有する。
【0081】
部分851は、z軸方向を厚さ方向とする向きで基台21の上部の内面に固定されている。この固定方法としては、特に限定されず、金具を介したネジ止めや、接着、融着等の接合等が挙げられる。
【0082】
部分852は、y軸方向を厚さ方向とする向きで部分851の端部から垂設されている。この部分852には、固定部831によってシールド8が固定されている。これにより、シールド8の長手方向の途中が基台21に固定される。
【0083】
また、部分853は、部分852に対して傾斜して設けられている。すなわち、部分853は、z軸に対して傾斜して設けられている。このため、固定部832(第2固定部)は、ロボットアーム20の回動軸である第1回動軸O1および第2回動軸O2に対して傾斜している。これにより、シールド8の他端部84を一旦、−y側に引き回してから基台21の+y側に引き出すことができる。よって、他端部84は、−y軸側から+y軸側に向って基台21の+y側の内面に接続され、そのまま基台21の+y軸側に位置する制御装置1に引き出すことができる。その結果、基台21の+y側の内面付近でシールド8が急峻に屈曲した状態となるのをの防止することができる。よって、シールド8が屈曲により損傷するのを防止することができ、信号線51〜信号線54の断線を防止することができる。
【0084】
このような固定部831および固定部832は、シールド8の動きを規制する機能を有していれば特に限定されず、例えば、固定部821および固定部822と同様の構成とすることができる。
【0085】
このように、ロボット2は、第2延長部87を基台21に対して固定する固定部830(第2固定部)を有する。これにより、基台21内でのシールド8の動きを規制することができる。よって、シールド8が基台21内で過剰に動いてしまうのを防止することができ、過剰な動きに伴う信号線51〜信号線54の断線を防止または抑制することができる。
【0086】
また、シールド8の他端部84は、基台21内の+y軸側の内面付近に位置する接続部93に接続されている。信号線51〜信号線54は、この接続部93を介して基台21の外側に引き出され、制御装置1に接続されている。
【0087】
以上説明したように、ロボット2は、ロボットアーム20と、ロボットアーム20に配置された角速度センサー29(センサー)と、ロボットアーム20に配置され、ロボットアーム20を駆動するモーター261(駆動部)、モーター271(駆動部)およびモーター281(駆動部)と、ロボットアーム20に接続された配管部材9と、配管部材9内に収納され、角速度センサー29(センサー)から出力された信号を伝達する信号線54(第1信号線)と、配管部材9内に収納され、モーター261(駆動部)、モーター271(駆動部)およびモーター281(駆動部)がら出力された信号を伝達する信号線51、信号線52および信号線53(第2信号線)と、少なくとも配管部材9の内部において信号線54(第1信号線)および信号線51、信号線52および信号線53(第2信号線)を一括して覆うシールド8と、を備える。
【0088】
これにより、
図6に示すような信号線51〜信号線54の各々を被覆する構成に比べて、配線群5全体として細径化を図ることができる。よって、配管部材9の細径化を図ることができる。その結果、配管部材9の設置の自由度を高めることができるとともに、ロボット2全体で見たとき、小型化を図ることができる。さらには、配管部材9の細径化を図ることにより、第1アーム22および第2アーム23が回動する際、その動作を阻害するのを防止または抑制することができる。
【0089】
また、ロボットアーム20は、回動可能な第1アーム22および第1アーム22の回動軸O1と配向な回動O2周りで回動可能な第2アーム23を有し、第1アーム22は、基台21に支持され、配管部材9は、第2アーム23と基台21とを接続する。このため、配線群5が第1アーム22内を通過するのを省略することができ、第1アーム22の小型化を図ることができる。その結果、配管部材9の設置の自由度を高めることができるとともに、ロボット2の小型化に寄与することができる。
【0090】
以上、本発明のロボットを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、制御方法には、他の任意の工程が付加されていてもよい。
【0091】
また、本発明は、前記実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0092】
また、前記実施形態では、ロボットアームの回動軸の数は、3つであるが、本発明では、これに限定されず、ロボットアームの回動軸の数は、例えば、2つ、または、4つ以上でもよい。すなわち、前記実施形態では、アーム(リンク)の数は、3つであるが、本発明では、これに限定されず、アームの数は、例えば、2つ、または、4つ以上でもよい。
【0093】
また、前記実施形態では、ロボットアームの数は、1つであるが、本発明では、これに限定されず、ロボットアームの数は、例えば、2つ以上でもよい。すなわち、ロボットは、例えば、双腕ロボット等の複数腕ロボットであってもよい。
【0094】
また、本発明では、ロボット(ロボット本体)は、他の種類(形式)のロボットであってもよい。具体例としては、例えば、垂直多関節ロボット、脚部を有する脚式歩行(走行)ロボット等が挙げられる。「垂直多関節ロボット」とは、軸数(アーム数)が3つ以上であり、かつ、3つの軸のうちの2つの軸が互いに交差(直交)しているロボットのことを言う。
【0095】
また、前記実施形態ではシールドは、遮蔽層および被覆層を有する2重管構成であったが、本発明ではこれに限定されず、例えば、遮蔽層が、被覆層と各信号線との隙間にモールドされた構成であってもよい。すなわち、遮蔽層は、管状をなしていなくてもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、第1信号線と、3本の第2信号線とが一括してシールドによって被覆されている場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、3本の第2信号線のうちの少なくとも1本が第1信号線とともにシールドによって一括して被覆されていれば本発明の効果を奏することができる。
【0097】
また、前記実施形態では、4本の信号線が、横断面において2行2列に束ねられている場合について説明したが、これに限定されず、例えば、一列に束ねられて全体として帯状をなしていてもよい。この場合であっても配管部材の幅および厚さを小さくすることができる。