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特開2019-209413異常検知システム、異常検知方法、穿孔機及び穿孔方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209413(P2019-209413A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】異常検知システム、異常検知方法、穿孔機及び穿孔方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20191115BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20191115BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   B23Q17/09 F
   B23Q17/00 A
   B23B49/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-106610(P2018-106610)
(22)【出願日】2018年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】石丸 大祐
(72)【発明者】
【氏名】井坂 晃一
【テーマコード(参考)】
3C029
3C036
【Fターム(参考)】
3C029DD04
3C029EE01
3C036LL09
(57)【要約】
【課題】エア駆動式の自動穿孔機に工具の異常検知機能を簡易に付加できるようにすることである。
【解決手段】実施形態に係る異常検知システムは、エアで少なくともスピンドルを回転させることによって工具を回転させる動作を行う穿孔機に取付けられ、前記工具及び前記スピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサと、前記センサで検出された振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知する信号処理部とを備え、前記信号処理部は、前記エアに基づいて決定した期間に前記穿孔異常の検知を行うように構成されるものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアで少なくともスピンドルを回転させることによって工具を回転させる動作を行う穿孔機に取付けられ、前記工具及び前記スピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサと、
前記センサで検出された振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知する信号処理部とを備え、
前記信号処理部は、前記エアに基づいて決定した期間に前記穿孔異常の検知を行うように構成される異常検知システム。
【請求項2】
前記エアの流量を測定する流量センサを更に備え、
前記信号処理部は、前記流量センサで測定された前記流量が閾値以上となっている期間又は閾値を超えている期間に前記穿孔異常の検知を行うように構成される請求項1記載の異常検知システム。
【請求項3】
複数の前記穿孔機に前記振動又は回転数を検出するセンサと前記流量センサを取付け、
前記信号処理部は、前記複数の穿孔機にそれぞれ取付けられた前記複数の流量センサで測定された前記流量に基づいて前記複数の穿孔機から選択された穿孔機を対象として前記穿孔異常の検知を行うように構成される請求項2記載の異常検知システム。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記センサで検出された前記振動又は回転数の時間変化を表す波形の特徴を表す指標値が許容範囲外となった場合に前記穿孔異常が発生したと判定するように構成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異常検知システム。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記工具の回転が開始されてから前記工具が被切削材に接触して穿孔を行い、前記被切削材の穿孔が完了した後に前記工具が前記被切削材から退避して前記工具の回転が終了するまでにおける前記振動又は回転数の時間変化を表す波形の特徴を表す指標値が許容範囲外となった場合に前記穿孔異常が発生したと判定するように構成される請求項4記載の異常検知システム。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記波形の2乗平均平方根を用いて定義された第1の指標値及び前記波形の尖度を用いて定義された第2の指標値の少なくとも一方が許容範囲外となった場合に前記穿孔異常が発生したと判定するように構成される請求項4又は5記載の異常検知システム。
【請求項7】
前記センサを前記穿孔機に固定するための固定具を更に備え、
前記センサのみを前記固定具から着脱可能に構成した請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異常検知システム。
【請求項8】
前記固定具は前記センサを着脱可能に固定する磁石を有する請求項7記載の異常検知システム。
【請求項9】
前記固定具に前記センサの位置決め用のガイドを設けた請求項7又は8記載の異常検知システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の異常検知システムを備えた穿孔機。
【請求項11】
請求項10記載の穿孔機で被切削材を穿孔することによって製品又は半製品を製造する穿孔方法。
【請求項12】
エアで少なくともスピンドルを回転させることによって工具を回転させる動作を行う穿孔機に、前記工具及び前記スピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサを取付け、
前記エアに基づいて決定した期間に前記センサで検出された振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知する異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、異常検知システム、異常検知方法、穿孔機及び穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穿孔機等の様々な機械加工装置には、加工異常を検知する装置が設けられる場合が多い(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。例えば、電動式の穿孔機として、電力やトルクの変動を監視することによって、ドリルの異常を検知する機能を備えたものが市販されている。一方、穿孔作業は、手持ち式のドリル駆動装置を用いた作業者による手作業から自動穿孔機による機械加工に移行しつつある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−049105号公報
【特許文献2】特開平5−337790号公報
【特許文献3】特開2016−175157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エア駆動式の自動穿孔機のように、電動式でない自動穿孔機の場合には、電力やトルクの変動を必ずしも容易に監視することができない。このため、エア駆動式の自動穿孔機に後発的に簡易に穿孔の異常検知機能を付加することが困難である。
【0005】
そこで、本発明は、エア駆動式の自動穿孔機に工具の異常検知機能を簡易に付加できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る異常検知システムは、エアで少なくともスピンドルを回転させることによって工具を回転させる動作を行う穿孔機に取付けられ、前記工具及び前記スピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサと、前記センサで検出された振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知する信号処理部とを備え、前記信号処理部は、前記エアに基づいて決定した期間に前記穿孔異常の検知を行うように構成されるものである。
【0007】
また、本発明の実施形態に係る異常検知方法は、エアで少なくともスピンドルを回転させることによって工具を回転させる動作を行う穿孔機に、前記工具及び前記スピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサを取付け、前記エアに基づいて決定した期間に前記センサで検出された振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知するものである。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る穿孔機は、上述した異常検知システムを備えたものである。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る穿孔方法は、上述した穿孔機で被切削材を穿孔することによって製品又は半製品を製造するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る異常検知システムを備えた穿孔機の構成図。
図2図1に示すセンサを固定具に着脱可能に取付ける方法の例を示す図。
図3図2に示す固定具にセンサの位置決め用のガイドを設けた例を示す図。
図4】本発明の第2の実施形態に係る異常検知システムを備えた穿孔機の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る異常検知システム、異常検知方法、穿孔機及び穿孔方法について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(異常検知システム及び穿孔機の構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る異常検知システムを備えた穿孔機の構成図である。
【0013】
穿孔機1は異常検知システム2を備えている。異常検知システム2は、ドリルやリーマ等の工具Tの破損等による穿孔異常を検知するアタッチメントとして穿孔機1に取付けることができる。異常検知システム2の取付対象となる穿孔機1はエアで少なくともスピンドル(主軸)を回転させることによって工具Tを回転させる動作を行うエア駆動式の穿孔機である。穿孔機1にはエアによって工具Tを回転させるエア駆動式の回転装置のみならず、エアによって工具Tを工具軸方向に送り出すエア駆動式の送り装置を設けることができる。
【0014】
異常検知システム2は、工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知するシステムである。異常検知システム2は、センサ3、流量センサ4及び信号処理部5で構成することができる。
【0015】
センサ3は、穿孔異常を検知するために取得されるパラメータである工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出する振動センサ又は回転数センサである。従って、センサ3は、穿孔機1に取付けられる。工具Tの回転数と、スピンドルの回転数は同一である。従って、回転数を検出する場合には、工具T及びスピンドルの一方の回転数を検出すれば、他方の回転数も必然的に検出されることになる。
【0016】
他方、工具Tはスピンドルに連結されるため、工具T及びスピンドルでそれぞれ生じた振動は相互に伝搬する。このため、振動センサの取付位置によっては、工具T及びスピンドルでそれぞれ生じた振動を合成した振動が検出される。すなわち、振動センサの取付位置をスピンドルから遠い位置とする一方、工具Tに近い位置とする程、工具Tの振動成分が支配的な振動が検出される。逆に、振動センサの取付位置を工具Tから遠い位置とする一方、スピンドルに近い位置とする程、スピンドルの振動成分が支配的な振動が検出される。
【0017】
穿孔機1に異常検知システム2を後発的に取付ける場合には、穿孔機1にはセンサ3を取付けるための構造が無い。そこで、センサ3を穿孔機1に固定するための金具等の固定具6をアタッチメントとして穿孔機1の筐体や工具Tのホルダ等にネジ等の締付具で取付け、固定具6にセンサ3を取付けることができる。
【0018】
接触式のセンサ3を工具Tのホルダ等に配置すれば、振動又は回転数の検出感度を向上させることができる。但し、工具Tを交換する際における衝撃や工具Tの衝突によってセンサ3が故障する恐れがある。また、工具Tを交換する際にセンサ3と接続される信号線が邪魔になる可能性もある。
【0019】
そこで、穿孔機1に異常検知システム2を取付けた後、固定具6については穿孔機1に常時固定する一方、センサ3のみを固定具6から着脱可能に構成することができる。これにより、工具Tの交換に起因するセンサ3の故障を回避しつつ、工具Tを容易に交換できるようにすることができる。
【0020】
センサ3を固定具6に着脱可能に取付ける方法としては、両面テープを用いる方法やネジで締付ける方法も考えられる。但し、両面テープを用いる方法では、センサ3を保持する強度が低い上、同一の位置にセンサ3を取付ける再現性が低い。一方、ネジで締付ける方法の場合にはネジの着脱作業が必要となる。
【0021】
図2図1に示すセンサ3を固定具6に着脱可能に取付ける方法の例を示す図である。
【0022】
そこで、図2に例示されるように固定具6に磁石6Aを設け、磁石6Aでセンサ3を着脱可能に固定することができる。すなわち、センサ3の筐体を磁性体で構成し、固定具6に設けたネオジム磁石等の十分な磁場を形成する磁石6Aにセンサ3を着脱可能に取付けることができる。これにより、ネジの締付等の作業を行うことなく簡単かつ強固にセンサ3を繰返し固定具6に着脱することができる。
【0023】
図3図2に示す固定具6にセンサ3の位置決め用のガイド6Bを設けた例を示す図である。
【0024】
図3に例示されるように固定具6にセンサ3の位置決め用のガイド6Bを設けることもできる。図示される例ではセンサ3の筐体が矩形である。このため、固定具6に位置決め用のガイド6Bとしてセンサ3の筐体を嵌め込むための矩形の枠が形成されている。このようなセンサ3の位置決め用のガイド6Bを固定具6に設けることによって、固定具6へのセンサ3の繰返し位置決め精度を確保することができる。
【0025】
上述した振動センサ又は回転数センサ等のセンサ3とは別に設けられる流量センサ4は、穿孔機1を駆動するためのエアの流量を測定するセンサである。従って、流量センサ4は、穿孔機1又は穿孔機1にエアを供給するための配管7に取付けられる。図1に示す例では、エアを穿孔機1に供給するための配管7に流量センサ4が取付けられている。流量センサ4については、穿孔機1に異常検知システム2を取付けた後、常時取付にすることができる。
【0026】
振動センサ又は回転数センサ等のセンサ3の出力側と、流量センサ4の出力側は信号処理部5と信号線で接続される。すなわち、センサ3で取得された工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数の検出信号と、流量センサ4で検出されたエアの流量の検出信号は信号処理部5に出力される。
【0027】
信号処理部5は、センサ3で検出された工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数に基づいて穿孔異常を検知する装置である。穿孔異常の検知は、センサ3から出力される振動又は回転数の検出信号に対する信号処理によって行うことができる。従って、信号処理部5は、A/D(analog−to−digital)変換器やプログラムを読込ませたコンピュータ等の電気回路で構成することができる。
【0028】
工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数に基づく穿孔異常の検知を信号処理部5に電力を供給する電源の切換えのみによって常時行うようにすると、穿孔すべき孔の数によっては信号処理量が大きくなり、信号処理が非現実的となる恐れがある。そこで、工具Tの回転が開始されてから終了するまでの間に穿孔異常の検知を行うように信号処理部5を構成することができる。工具Tの回転が開始されてから終了するまでの期間は、穿孔機1に工具Tの回転を行うためのエアが供給されているか否かで判定することができる。
【0029】
このため、信号処理部5において、穿孔機1を駆動するために穿孔機1に供給されるエアに基づいて、工具Tの回転が開始されてから終了するまでの期間を検出することができる。より具体的には、流量センサ4から信号処理部5に出力されるエアの流量の検出信号に対する閾値処理を信号処理部5において実行することができる。そして、流量センサ4で測定された流量が閾値以上となっている期間又は閾値を超えている期間に信号処理部5において穿孔異常の検知を行うようにすることができる。
【0030】
信号処理部5において実行される閾値処理の閾値は、試験によって工具Tの回転等を行うためのエアの流量の下限値以下に決定することができる。これにより、閾値処理によって、工具Tの回転等を行うためのエアが、流量センサ4が取付けられているエアの流路を流れているか否かを判定することができる。
【0031】
そして、工具Tの回転等を行うためのエアが流量センサ4で検出されたことをトリガとして穿孔異常の検知を開始する一方、工具Tの回転等を行うためのエアが流量センサ4で検出されなくなったことをトリガとして穿孔異常の検知を終了することができる。つまり、流量センサ4は、信号処理部5における穿孔異常の検知のための工具T又はスピンドルの振動又は回転数の測定及び記録の開始と終了を指示するためのトリガーを信号処理部5に出力するスイッチとして機能する。これにより、エアに基づいて決定された期間に限り、信号処理部5において穿孔異常の検知を行うようにすることができる。
【0032】
例えば、工具Tの回転と工具軸方向への送りが別々のエア信号で実行される場合には、工具Tの送り用のエア信号の流量を流量センサ4で検出することができる。この場合には、流量センサ4で検出されたエアの流量に基づいて、工具Tの送りが開始されて穿孔が行われ、再び工具Tが工具軸方向における元の位置まで戻る間の期間に信号処理部5において穿孔異常の検知を行うようにすることができる。
【0033】
一方、工具Tの回転のみがエアによって実行される場合、すなわち工具Tの送り機能が無い場合や工具Tの回転と送りが共通のエアで実行される場合には、エアの流量を流量センサ4で検出することによって、工具Tの回転が開始されてから終了するまでの期間に信号処理部5において穿孔異常の検知を行うようにすることができる。
【0034】
尚、センサ3は、信号処理部5において穿孔異常の検知が行われる期間にのみ電源から電力を供給して動作するようにしても良いし、センサ3については電源のオンとオフとの切換によって動作するようにし、信号処理部5におけるセンサ3の検出信号の記録と信号処理を、エアに基づいて決定した期間にのみ実行するようにしても良い。例えば、センサ3の消費電力が小さい場合であれば、センサ3については電源のオンとオフとの切換によって動作するように制御することにより、センサ3の制御を簡易にすることができる。
【0035】
信号処理部5における穿孔異常の検知についても、センサ3から出力される工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を表す検出信号に対する閾値処理を含む信号処理によって行うことができる。具体例として、センサ3で検出された振動又は回転数の時間変化を表す波形の特徴を表す指標値が許容範囲外となった場合に穿孔異常が発生したと判定することができる。
【0036】
振動又は回転数の時間変化を表す波形の特徴を表す指標値としては、振幅やある時刻におけるピーク値など、試験によって所望のパラメータを採用することができる。様々な指標値による試験の結果、波形の2乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)を用いて定義した指標値と、波形の尖度を用いて定義した指標値を対象として評価すると、良好な精度で穿孔異常を検出できることが確認された。従って、信号処理部5において波形のRMSを用いて定義された第1の指標値及び波形の尖度を用いて定義された第2の指標値の少なくとも一方が許容範囲外となった場合に穿孔異常が発生したと判定するアルゴリズムによって穿孔異常の検出を行えば、良好な精度で穿孔異常を検出することができる。尚、指標値の算出前後にノイズ除去処理や正規化処理を行うようにしても良い。
【0037】
穿孔異常の検知を行うための別の信号処理方法としては、センサ3で検出された振動又は回転数の時間変化を表す波形と、穿孔異常が発生していない場合に対応する基準となる波形との間における最小2乗誤差や相互相関係数等の乖離量を表す指標値が閾値以上又は閾値を超えた場合に穿孔異常が発生したと判定する方法が挙げられる。
【0038】
エアをトリガとして工具Tの回転が開始されてから終了するまでの期間に穿孔異常の検知を行う場合には、工具Tの回転が開始されてから工具Tが被切削材に接触して穿孔を行い、被切削材の穿孔が完了した後に工具Tが被切削材から退避して工具Tの回転が終了するまでにおける工具T又はスピンドルの振動又は回転数の時間変化を表す波形が信号処理部5で取得されることになる。
【0039】
このため、例えば、工具Tの回転が開始されてから終了するまでにおける工具T又はスピンドルの振動又は回転数の時間変化を表す波形の特徴を表す指標値が許容範囲外となった場合に穿孔異常が発生したと判定することができる。或いは、工具Tの回転が開始されてから終了するまでにおける工具T又はスピンドルの振動又は回転数の時間変化を表す波形と、基準となる波形との間における乖離量を表す指標値を求めて閾値と比較することにより、穿孔異常の有無を判定することができる。
【0040】
すなわち、工具Tが被切削材と接触していない期間における波形も含めて波形の特徴を表す指標値の算出又は基準波形との比較を行うことができる。これにより、センサ3で検出された波形から穿孔中における波形を抽出するための複雑な信号処理を行うことなく穿孔異常の検知を行うことが可能となる。換言すれば、穿孔中であることを検出せずに穿孔異常の検知を行うことができる。
【0041】
(異常検知方法及び穿孔方法)
異常検知システム2で穿孔機1における穿孔異常の検知を行う場合には、穿孔機1に異常検知システム2が取付けられる。具体的には、工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサ3が、エアで少なくともスピンドルを回転させることによって工具Tを回転させる動作を行う穿孔機1に取付けられる。また、エアを穿孔機1に供給する配管7等にエアの流量センサ4が取付けられる。
【0042】
異常検知システム2を備えた穿孔機1で穿孔異常の検知を行いながら被切削材の穿孔を行う場合には、エア供給系から穿孔機1に少なくともスピンドルを回転させるためのエアが供給される。供給されたエアは、配管7を通って穿孔機1に供給される。これにより、穿孔機1が駆動し、被切削材の穿孔が実行される。
【0043】
一方、流量センサ4から信号処理部5にエアの流量の検出信号が出力される。これにより、信号処理部5において穿孔機1にエアが供給されたことが検出される。すなわち、信号処理部5において、穿孔機1による穿孔が開始されたことが検出される。そうすると、信号処理部5は、流量センサ4によって検出されたエアに基づいて、工具Tの回転が開始されてから終了するまでの間にセンサ3で検出された工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数に基づく穿孔異常の検知を行う。
【0044】
具体的には、振動センサ又は回転数センサ等のセンサ3で検出された工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数が信号処理部5に出力される。そうすると、信号処理部5は、工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を表す波形信号に対する信号処理を行うことによって穿孔異常が生じたか否かを判定する。穿孔異常が生じたと判定された場合には、穿孔異常の発生をユーザに通知するための情報をディスプレイ等の所望の出力装置に出力することができる。これにより、ユーザは穿孔異常の有無を確認することができる。
【0045】
穿孔異常が発生しなければ、穿孔機1による被切削材の穿孔を続行することができる。そして、被切削材の穿孔によって、製品又は半製品を製造することができる。
【0046】
(効果)
以上のような異常検知システム2、異常検知方法、穿孔機1及び穿孔方法は、工具Tを回転させるためのエアをトリガとし、工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数に基づいて穿孔異常の検知を行うようにしたものである。このため、異常検知システム2、異常検知方法、穿孔機1及び穿孔方法によれば、エア駆動式の穿孔機1に後発的に穿孔の異常検知機能を付加することができる。
【0047】
また、穿孔機1に供給されるエアをトリガとして穿孔異常の検知を行うことによって、穿孔異常の検知のためにセンサ3から出力される検出信号を記録する期間を、穿孔機1による穿孔動作の開始から終了までの期間に限定することができる。すなわち、穿孔異常の検知を行う期間を、自動的に穿孔期間に合わせることができる。これにより、センサ3から出力される検出信号の無駄な記録や信号処理を回避することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態に係る異常検知システムを備えた穿孔機の構成図である。
【0049】
図4に示された第2の実施形態における異常検知システム2Aは、複数の穿孔機1における穿孔異常を検知できるようにした点が第1の実施形態における異常検知システム2と相違する。第2の実施形態における異常検知システム2Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における異常検知システム2と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0050】
複数の穿孔機1における穿孔異常の検知を行う場合には、図4に例示されるように複数の穿孔機1間において信号処理部5を共通にすることができる。すなわち、共通の信号処理部5で複数の穿孔機1における穿孔異常の検知を行うことができる。
【0051】
その場合には、複数の穿孔機1にそれぞれ工具T及びスピンドルの少なくとも一方の振動又は回転数を検出するセンサ3と、流量センサ4が取付けられる。そして、信号処理部5は、複数の穿孔機1にそれぞれ取付けられた複数の流量センサ4で測定された流量に基づいて複数の穿孔機1から選択された単一又は複数の穿孔機1を対象として穿孔異常の検知を行うように構成される。すなわち、エアが供給された穿孔機1のみを対象として穿孔異常の検知を行うようにすることができる。
【0052】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加え、複数の穿孔機1における穿孔異常を検知する場合において、信号処理部5の構成を簡易にできるという効果が得られる。
【0053】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0054】
1 穿孔機
2 異常検知システム
3 センサ
4 流量センサ4
5 信号処理部
6 固定具
6A 磁石
6B ガイド
7 配管
T 工具
図1
図2
図3
図4