(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209488(P2019-209488A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型及び空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20191115BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20191115BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20191115BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20191115BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29D30/06
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-104553(P2018-104553)
(22)【出願日】2018年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】小原 将明
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
4F215
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU02
4F202CU07
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM32
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F203DN26
4F215AH20
4F215VA03
4F215VL22
4F215VL27
4F215VP37
(57)【要約】
【課題】ベントプラグを備えるタイヤ加硫金型においてゴム噛みの発生を抑制する。
【解決手段】タイヤ加硫金型10は、キャビティ16にセットされた空気入りタイヤ1のタイヤ表面を成型する成形面17と、成形面17に設けられた凹部22と、凹部22に設けられたベントプラグ25とを備える。ベントプラグ25は、排気通路26を内部に有する円筒状のハウジング30と、ハウジング30に挿入されており、ハウジング30の前記排気通路26を開閉するステム40と、ステム40をキャビティ16側に向かって付勢する付勢部材27とを備える。凹部22は、ベントプラグ25のハウジング30の外径Dと略同等の幅Wを有する狭小部23A,23B,24Aを備え、ベントプラグ25は、狭小部24Aに配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティにセットされた空気入りタイヤのタイヤ表面を成型する成形面と、
前記成形面に設けられた凹部と、
前記凹部に設けられたベントプラグと
を備えるタイヤ加硫金型であって、
前記ベントプラグは、
排気通路を内部に有する円筒状のハウジングと、
前記ハウジングに挿入されており、前記ハウジングの前記排気通路を開閉するステムと、
前記ステムを前記キャビティ側に向かって付勢する付勢部材と
を備え、
前記凹部は、前記ベントプラグの前記ハウジングの外径と略同等の幅を有する狭小部を備え、
前記ベントプラグは、前記狭小部に配置されている、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記凹部の前記狭小部の幅は、前記ベントプラグの前記ハウジングの外径の0.5倍以上1.5倍以下である、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記凹部の前記狭小部の幅は、前記ベントプラグの前記ハウジングの外径の1倍以上1.5倍以下である、請求項2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記凹部は、少なくとも1つの閉領域を囲む枠状である、請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記凹部は、隅部を有しており、
前記ベントプラグが設けられた前記狭小部は、前記凹部の前記隅部に設けられている、請求項4に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型にグリーンタイヤをセットし、前記グリーンタイヤに加熱及び加圧を施して加硫を行う工程を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型及び空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫金型として、タイヤ表面を成形する成形面にベント孔が形成され、ベント孔にベントプラグが嵌め込まれたものが知られている。加硫成形時において、成形面とタイヤ表面との間に介在する空気が、ベントプラグより排出されるようになっている。
【0003】
ベントプラグとして、排気通路を内部に有する円筒状のハウジングと、ハウジングに挿入されて排気通路を開閉する弁体を成形面側の端部に有するステムと、該ステムを成形面側へ付勢する付勢手段とを有する、スプリングベントが知られている(例えば特許文献1参照)。このスプリングベントは、付勢手段がステムを成形面側に付勢することで開状態となり、加硫成形時にタイヤ表面がステムを押すことで閉状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−113895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプリングベントを備えるタイヤ加硫金型では、加硫成形時にスプリングベントが閉状態になる前に、ゴムがスプリングベントの排気通路に流れ込んで、スプリングベントの排気通路にゴムが残留するゴム噛みと呼ばれる問題がある。
【0006】
本発明は、スプリングベントを備えるタイヤ加硫金型において、ゴム噛みの発生を抑制できるタイヤ加硫金型及び空気入りタイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るタイヤ加硫金型は、
キャビティにセットされた空気入りタイヤのタイヤ表面を成型する成形面と、
前記成形面に設けられた凹部と、
前記凹部に設けられたベントプラグと
を備えるタイヤ加硫金型であって、
前記ベントプラグは、
排気通路を内部に有する円筒状のハウジングと、
前記ハウジングに挿入されており、前記ハウジングの前記排気通路を開閉するステムと、
前記ステムを前記キャビティ側に向かって付勢する付勢部材と
を備え、
前記凹部は、前記ベントプラグの前記ハウジングの外径と略同等の幅を有する狭小部を備え、
前記ベントプラグは、前記狭小部に配置されている。
【0008】
この構成によれば、ベントプラグは、凹部のうち、加硫成形時の初期段階において未加硫ゴムが流れ込みにくい狭小部に設けられているので、未加硫ゴムは、加硫成形時のキャビティ側からステムに接触するようになる。このため、ベントプラグのステムがハウジングの排気通路を閉塞していない状態で未加硫ゴムがベントプラグの排気通路に流れ込むことを抑制でき、タイヤの加硫成形時におけるゴム噛みの発生を抑制できる。
【0009】
また、前記凹部の狭小部の幅は、前記ベントプラグの前記ハウジングの外径の0.5倍以上1.5倍以下であってもよい。
【0010】
この構成によれば、上記発明を好適に実施できる。
【0011】
前記凹部の前記狭小部の幅は、前記ベントプラグの前記ハウジングの外径の1倍以上1.5倍以下であってもよい。
【0012】
凹部の狭小部の幅がベントプラグのハウジングの外径よりも小さい場合、タイヤ加硫金型の凹部の狭小部によって空気入りタイヤに形成される凸部の一部は、ベントプラグの外形に対応するように膨出して形成され、空気入りタイヤの外観品質が悪化する。このため、凹部の狭小部の幅を適切な範囲に設定することで、タイヤの外観品質の悪化を抑制できる。
【0013】
前記凹部は、少なくとも1つの閉領域を囲む枠状であってもよい。
【0014】
前記凹部は、隅部を有していてもよく、前記ベントプラグが設けられた前記狭小部は、前記凹部の前記隅部に設けられていてもよい。
【0015】
加硫成形時の未加硫ゴムは、凹部の隅部に向かって広がるように流れていくため、ベントプラグを設ける狭小部を凹部の隅部に配置することで、タイヤ加硫金型の凹部に溜まった空気をタイヤ加硫金型の外側へと効果的に排出できる。
【0016】
本発明の他の態様に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記タイヤ加硫金型にグリーンタイヤをセットし、前記グリーンタイヤに加熱及び加圧を施して加硫を行う工程を含む。
【0017】
このタイヤ製造方法によれば、ベントプラグを備えるタイヤ加硫金型において、ゴム噛みの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スプリングベントを備えるタイヤ加硫金型において、ゴム噛みの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型の概略構成を示す断面図。
【
図2】タイヤ加硫金型によってタイヤのサイドウォール部に形成される標章を模式的に示す図。
【
図3】
図1のX矢視によるタイヤ加硫金型の成形面を示す図。
【
図5】加硫成形時における未加硫ゴムの流れを表す
図4と同様の断面図。
【
図6】加硫成形時における未加硫ゴムの流れを表す
図3のVI−VI線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型10の概略構成を示す断面図であり、タイヤ径方向の一方側(
図1において右側)のみ示している。なお、
図1には、タイヤ加硫金型10において加硫成形される空気入りタイヤ1が、仮想線(二点鎖線)で併せて示されている。空気入りタイヤ1は、グリーンタイヤをタイヤ軸線が上下方向に向くようにタイヤ加硫金型10にセットして加硫成形することによって製造される。
【0022】
図1に示すように、タイヤ加硫金型10は、環状のセクターモールド11と、この内径側に位置する上下一対のサイドプレート12,13と、この更に内径側に位置する上下一対のビードリング14,15とを有し、これらの内側に空気入りタイヤ1が加硫成形されるキャビティ16が画定された、所謂セグメンテッドモールドとして構成されている。
【0023】
セクターモールド11、サイドプレート12,13、及びビードリング14,15のキャビティ16を画定する内壁面はそれぞれ、空気入りタイヤ1のトレッド部2,サイドウォール部3、及びビード部4をそれぞれ加硫成形する成形面17として構成されている。
【0024】
また、サイドプレート12,13には、成形面17からこの面直方向に延びてタイヤ加硫金型10の外部へ貫通するベント孔18が形成されている。ベント孔18には、キャビティ16側の端部にスプリングベント25(ベントプラグ)が嵌め込まれている。
【0025】
サイドプレート12,13における成形面17には、空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に標章5を加硫成形するための標章成形部20が形成されている。ベント孔18は、後述する標章成形部20の凹部22に形成されており、加硫成形時に凹部22に溜まる空気を、タイヤ加硫金型10の外部へ排出する。
【0026】
図2は、本実施形態のタイヤ加硫金型10によって空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に成形される標章5の斜視図である。
【0027】
図2を参照すると、本実施形態の標章5は、アルファベット大文字の「T」に対応する形状を有している。具体的には、標章5は、「T」の文字を表す標章本体5aと、標章本体5aを縁取るようにサイドウォール部3の外表面から突出して設けられた凸部5bとを備える。ここで、標章5は、文字、図形、又は記号のいずれであってもよく、それらの組合せであってもよい。例えば、標章5が表す文字は、アルファベット大文字の「T」に限定されない。
【0028】
図3は、
図1のX矢視によるサイドプレート12の成形面17に形成された標章成形部20を示す図である。
【0029】
図3に示すように、標章成形部20は、「T」の文字を表す標章成形面21と、標章成形面21を縁取るようにタイヤ加硫金型10の成形面17に窪んで設けられた凹部22とを備える。すなわち、凹部22は、閉領域である標章成形面21を取り囲む枠状である。標章成形部20の標章成形面21は、加硫成形時に空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に標章5の標章本体5a(
図2に示す)を成形し、標章成形部20の凹部22は、加硫成形時に空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に標章5の凸部5b(
図2に示す)を成形する。
【0030】
凹部22は、タイヤ加硫金型10の成形面17から窪んで設けられて略直線状に延びる複数(本実施形態では8つ)の凹溝23A〜23Hと、凹溝23A〜23Hのうちの2つが屈曲して連なる複数(本実施形態では8つ)の隅部24A〜24Hとを有する。本実施形態の凹溝23A〜23Hは、凹溝23A〜23Hのそれぞれが延在する方向に渡って一様な幅を有する。本実施形態の凹溝23A〜23Hのうち、凹溝23A,23Bの幅は、凹溝23C〜23Hの幅よりも小さい。具体的には、凹溝23A,23Bは、スプリングベント25のハウジング30の外径Dと略同等である幅Wを有する狭小部である。このため、2つの凹溝23A,23Bが屈曲して連なる隅部24Aもまた狭小部である。すなわち、本実施形態の凹部22は、凹溝23A,23Bと隅部24Aとから構成される狭小部を備える。
【0031】
前述したように、ベント孔18は、タイヤ加硫金型10の凹部22に設けられている。具体的には、ベント孔18は、凹部22の狭小部である隅部24Aに設けられている。すなわち、ベント孔18に嵌め込まれるスプリングベント25は、タイヤ加硫金型10の凹部22の狭小部である隅部24Aに配置されている。
【0032】
図4は、
図3のIV−IV線における断面図であり、凹部22の隅部24Aに形成されたベント孔18及びここに嵌め込まれたスプリングベント25の縦断面を示している。なお、このベント孔18は、中心軸線を凹溝23A,23Bにおける溝中心に一致させて形成されている。なお、説明の便宜上、ベント孔18の成形面17からこの面直方向に延びる方向を上下方向と称し、キャビティ16側を下方、この反対側を上方と称する。
【0033】
図4に示すように、スプリングベント25は、排気通路26が内部に画定された円筒状のハウジング30と、ハウジング30に挿入されたステム40と、ステム40をキャビティ16側に向けて付勢するコイルスプリング(付勢部材)27とを有している。
【0034】
ハウジング30は、外周部31においてベント孔18に嵌入されて保持されている。ハウジング30は、この軸線方向に貫通した内周部32が形成されており、内周部32により排気通路26が構成されている。内周部32の下端に位置する開口部には、下方に向かって円錐状に拡径したテーパー面33が形成されており、上部には縮径した縮径部34が形成されている。
【0035】
ステム40は、下端部に位置する弁体41と、この上端部から上方へ延びる軸部42と、上端部に位置するストッパ43とを有している。弁体41は、下方に向かって拡径した円錐台状に形成されており、側面部44が、ハウジング30のテーパー面33と平行に延びている。
【0036】
軸部42の下部には、上部に比して外径が大きい大径部46が形成されている。軸部42の周囲において、大径部46と内周部32の縮径部34との間に、コイルスプリング27が弾設されている。なお、ストッパ43は、縮径部34よりも上方に位置しており、且つ、外径が縮径部34の内径よりも大きい。ステム40は、ストッパ43において縮径部34により下方への移動が制限されることによって、キャビティ16側への抜け出しが防止されている。
【0037】
ステム40が、加硫成形されるグリーンタイヤのゴムの流動によってコイルスプリング27による付勢力に抗して上方へ押し上げられたとき、弁体41の側面部44とハウジング30のテーパー面33とが互いに面で当接することにより、これらの間に排気通路26を閉塞するシール部が構成される。
【0038】
弁体41がテーパー面33に当接した状態で、ステム40の下端のステム頂面45は、ハウジング30の下端のハウジング頂面35に対して面一状となり、テーパー面33の上下方向の全範囲において弁体41との間にシール部が構成される。
【0039】
図3及び
図4に示すように、狭小部である凹溝23A,23Bの幅Wは、スプリングベント25のハウジング30の外径Dと略同等である。具体的には、凹部22の凹溝23A,23Bの幅Wは、ハウジング30の外径Dの0.5倍以上1.5倍以下に設定されている。なお、空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に形成される標章5(
図1に示す)の外観性能を考慮すると、凹部22の凹溝23A,23Bの幅Wは、ハウジング30の外径Dの1倍以上1.5倍以下に設定されていると好ましい。
【0040】
また、狭小部である凹溝23A,23Bが延在する方向(延在方向)の長さLは、ハウジング30の外径Dの5倍以上であれば好ましい。
【0041】
(加硫成形時の未加硫ゴムの流れ)
以下、
図3、
図5及び
図6を参照して、加硫成形時の未加硫ゴムの流れを説明する。
図5は、加硫成形時の未加硫ゴムの流れを示す
図3と同様の断面図である。
図6は、加硫成形時の未加硫ゴムの流れを示す
図3のVI−VI線における断面図である。なお、説明の便宜上、ベント孔18の成形面17からこの面直方向に延びる方向を上下方向と称し、キャビティ16(
図1に示す)側を下方、この反対側を上方と称する。
【0042】
図5及び
図6を参照すると、加硫成形時の未加硫ゴム50は、まず、キャビティ16側から成形面17に当接し、その後、凹部22に流入する。
【0043】
具体的には、加硫成形時の初期段階において、未加硫ゴム50は、凹部22のうち、凹溝23C〜23Hに流入する。言い換えれば、加硫成形時の初期段階において、未加硫ゴム50は、凹部22のうち未加硫ゴム50が流入し難い狭小部である凹溝23A,23B以外の部分に流入する。
【0044】
また、狭小部である凹溝23A,23Bによって、凹溝23C〜23Hからスプリングベント25に向かおうとする未加硫ゴム50の流れ(図中二点鎖線矢印G参照)は、スプリングベント25に到達し難くなっている。
【0045】
その後、
図5に示すように、未加硫ゴム50は、キャビティ16(
図3に示す)側からスプリングベント25に向かって流れる(
図5中矢印A参照)。すなわち、未加硫ゴム50は、スプリングベント25のステム40にキャビティ16(
図3に示す)側から当接することで、ステム40を上方に押し上げてスプリングベント25を閉状態にする。
【0046】
このとき、
図6に示すように、凹部22の狭小部である凹溝23Bに流入した未加硫ゴム50は、隅部24B側から狭小部である隅部24A側に向かって流れる。このため、凹部22に溜まっていた空気は、隅部24B側から隅部24A側に向かって流れる(図中二点鎖線参照)。また、この断面において、隅部24Aには、スプリングベント25が配置されており、凹溝23Bを隅部24Aに向かって流れる空気は、隅部24Aに配置されたスプリングベント25から、ベント孔18を介して、タイヤ加硫金型10の外部へと排出される。
【0047】
上記説明したタイヤ加硫金型10によれば、スプリングベント25が、凹部22のうち、加硫成形時の初期段階において未加硫ゴム50が流れ込みにくい狭小部である隅部24Aに設けられているので、未加硫ゴム50は、加硫成形時のキャビティ16側からステム40に接触するようになる。このため、スプリングベント25のステム40がハウジング30の排気通路26を閉塞していない状態で未加硫ゴム50がスプリングベント25の排気通路26に流れ込むことを抑制でき、空気入りタイヤ1の加硫成形時におけるゴム噛みの発生を抑制できる。
【0048】
また、凹部22の狭小部である凹溝23A,23Bの幅Wがスプリングベント25のハウジング30の外径Dよりも小さい場合、標章5の凸部5bにスプリングベント25の外形に対応するように膨出する膨出部5c(
図2参照)が形成され、タイヤの外観品質が悪化する。このため、凹部22の狭小部である凹溝23A,23Bの幅Wを適切な範囲(ハウジング30の外径Dの1倍以上1.5倍以下)に設定することで、空気入りタイヤ1の外観品質の悪化を抑制できる。
【0049】
また、加硫成形時の未加硫ゴム50は、隅部24Aに溜まり易いため、スプリングベント25が凹部22の狭小部である隅部24Aに配置されていることで、タイヤ加硫金型10の凹部22に溜まった空気をタイヤ加硫金型10の外側へと効率よく排出できる。
【0050】
なお、本実施形態では、タイヤ周方向に延びる1つの凹溝23Bについて説明したが、これに限定されず、狭小部である凹溝23Aも同様の構成を有している。
【0051】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0052】
上記実施形態では、凹部22は、空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に標章5を形成するためのものであったが、これに限定されず、例えば、トレッド部2にストーンイジェクタを形成するためのものであってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、凹部22の全体が狭小部によって構成されていたが、これに限定されず、凹部22の一部が狭小部であり、該狭小部にスプリングベント25が配置されていればよい。
【0054】
また、上記実施形態では、凹部22の一部が狭小部によって構成されていたが、これに限定されず、凹部22の全体が狭小部であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、スプリングベント25は、隅部24Aに配置されていたが、これに限定されず、凹溝23Aの途中部分や凹溝23Bの途中部分に配置されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、スプリングベント25は1つであったが、スプリングベント25の数はこれに限定されず、2以上であってもよい。
【0057】
スプリングベント25の付勢部材は、コイルスプリングに限定されず、皿ばねや板ばねのような他の構成であってもよい。
【0058】
タイヤ加硫金型10は、セグメンテッドモールドに限定されず、所謂ツーピースモールドであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 標章
5a 標章本体
5b 凸部
10 タイヤ加硫金型
11 セクターモールド
12,13 サイドプレート
14,15 ビードリング
16 キャビティ
17 成形面
18 ベント孔
20 標章成形部
21 標章成形面
22 凹部
23A,23B 凹溝(狭小部)
23C〜23H 凹溝
24A 隅部(狭小部)
24B〜24H 隅部
25 スプリングベント
26 排気通路
27 コイルスプリング(付勢部材)
30 ハウジング
31 外周部
32 内周部
33 テーパー面
34 縮径部
40 ステム
41 弁体
42 軸部
43 ストッパ
44 側面部
46 大径部
50 未加硫ゴム