特開2019-209558(P2019-209558A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209558(P2019-209558A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】粉末積層造形物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/268 20170101AFI20191115BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20191115BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20191115BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20191115BHJP
【FI】
   B29C64/268
   B29C64/153
   B33Y10/00
   B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-106571(P2018-106571)
(22)【出願日】2018年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃寛
(72)【発明者】
【氏名】荒井 聡
(72)【発明者】
【氏名】角田 重晴
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL12
4F213WL44
(57)【要約】
【課題】
レーザを用いた粉末積層造形物の課題である、反り変形と表面粗さを抑制する、粉末積層造形物および造形方法の提供することにある。
【解決手段】
レーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法であって、粉末積層造形物の最下層の造形は、材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結し、粉末積層造形物の中間層の造形は、外殻部においては材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により、内部においては低エネルギーのレーザ照射により、溶融・焼結する。そして、粉末積層造形物の最上層の造形は、材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結させて製造する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ焼結式粉末造形装置を用いて多層の粉末積層造形物を製造する製造方法であって、
前記粉末積層造形物の最下層の造形は、材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結し、
前記粉末積層造形物の中間層の造形は、外殻部においては材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により、内部においては前記高エネルギーより低い低エネルギーのレーザ照射により、溶融・焼結し、
前記粉末積層造形物の最上層の造形は、材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結させて製造することを特徴とするレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項2】
前記高エネルギーのレーザ照射と前記低エネルギーのレーザ照射は、レーザを一定速度でスキャンし、
前記高エネルギーのレーザ照射は、高出力のレーザ照射により溶融・焼結するものであり、
前記低エネルギーのレーザ照射は、前記高出力より低い出力である低出力のレーザ照射により溶融・焼結するものであることを特徴とする請求項1の記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項3】
前記高出力のレーザ照射は、20Wのレーザ出力であり、
前記低出力のレーザ照射は、10Wのレーザ出力であることを特徴とする請求項2記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項4】
前記粉末積層造形物の中間層の造形は、前記中間層を複数の領域に分割し、前記分割された各領域は異なるタイミングで材料粉末をレーザ照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項5】
前記粉末積層造形物の最上層と最下層のエッジ部分が、低エネルギーのレーザ照射により材料粉末を溶融・焼結することを特徴とする請求項1記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項6】
前記中間層を複数の領域に分割された小領域の長さは、前記粉末積層造形物の長さの1/3から1/5であることを特徴とする請求項4記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項7】
前記中間層を複数積層する場合、隣り合う2層で分割部の位置を異ならせたことを特徴とする請求項4記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項8】
前記中間層を複数積層する場合、下層側の分割数を多く、上層側の分割数を少なくしたことを特徴とする請求項7記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項9】
前記分割された各領域における周辺部は、隣接する領域のレーザ照射によっても、材料粉末が溶融・焼結されることで、高密度化されることを特徴とする請求項4記載のレーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法。
【請求項10】
レーザ焼結式粉末造形装置による多層の粉末積層造形物であって、
材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結し、高密度の最下層と、
外殻部においては材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結されて高密度の外殻部と、前記高エネルギーより低いエネルギーである低エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結されて低密度な内部とを有する中間層と、
材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結された高密度の最上層とを有することを特徴とする粉末積層造形物。
【請求項11】
前記中間層は、複数の領域の低密度に分割され、前記分割された各領域は異なるタイミングでレーザ照射により溶融・焼結されていることを特徴とする請求項10記載の粉末積層造形物。
【請求項12】
前記最下層、前記中間層及び前記最上層のエッジ部分は、低エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結されて低密度であることを特徴とする請求項10記載の粉末積層造形物。
請求項9の粉末積層造形物。
【請求項13】
前記中間層が複数積層された粉末積層造形物であって、
前記中間層のうち、第N番目の層を分割する小領域の境界が、前記第N番目の層と隣接する第N−1番目および第N+1番目の層を分割する小領域の境界と異なる位置であることを特徴とする請求項11記載の粉末積層造形物。
【請求項14】
前記中間層のうち、前記第N番目の層を分割する小領域の数が、前記第N番目の層の上層である第N+1番目の層を分割する小領域の数に比べて多いことを特徴とする請求項13記載の粉末積層造形物。
【請求項15】
前記中間層の分割された各領域における周辺部は、隣接する領域のレーザ照射によっても、材料粉末が溶融・焼結されることで、高密度化されることを特徴とする請求項13記載の粉末積層造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末積層造形物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業のみならず、医療や建築など幅広い分野において、素早く廉価に、1個だけのツールやパーツを作製したいという、カスタムメイドへの要求もが増加しつつある。こうした要求に応える有力な手段の一つとして、3次元CADデータからダイレクトに試作品を作製する、ラピッドプロトタイピング(RP:Rapid Prototyping)技術がある。これにより、3次元CADデータがあれば、RP装置により立体形状の試作品を簡単に作成できる。この種の技術として、一層ごとにナイロン樹脂等の微粉末を層状に敷き詰め、レーザにより任意の断面形状に加熱・焼結することを繰り返すことにより、造形物を積層造形するレーザ焼結式粉末造形装置がある。この装置において、表面粗さをユーザーの意図するように制御して三次元造形物を造形する技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−139957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用分析装置の筐体や商用品のコントローラ筐体は、人の手に触れるため、所望の表面粗さで造形することが望まれる。これと同時に、造形物の最終寸法も所定のものとなっていなければ、産業用分析装置の筐体に付加されるスイッチや、商用品のコントローラ筐体からでる操作レバー等の操作性が著しく損なわれるため、筐体の反りによる変形を抑制しなければならない。このような表面粗さと反り抑制を同時に満たすニーズは、産業用分析装置や商用品のコントローラの筐体に限った話ではなく、スマートフォン、パソコンや一般家電製品等、人の手に触れ、一定の寸法精度となる部品が必要なケースで同様にある。
【0005】
しかしながら、特許文献1には、立体造形物を粉末積層造形方法で造形する際に、表面粗さを低減して造形する方法が示されているものの、造形物に生じる反り変形が考慮されておらず、造形物の表面粗さと反り変形を所定の精度で製造することができない。
【0006】
本発明の目的は、レーザを用いた粉末積層造形物の課題である、反り変形と表面粗さを所定の精度で製造する粉末積層造形物の製造方法と、反り変形を抑制し所定精度の表面粗さを実現した粉末積層造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、本発明に係る粉末積層造形物の製造方法は、好ましくは、レーザ焼結式粉末造形装置を用いた粉末積層造形物の製造方法であって、粉末積層造形物の最下層の造形は、材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結し、粉末積層造形物の中間層の造形は、外殻部においては材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により、内部においては低エネルギーのレーザ照射により、溶融・焼結する。そして、粉末積層造形物の最上層の造形は、材料粉末を高エネルギーのレーザ照射により溶融・焼結させて製造する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反り変形を抑制し所定精度の表面粗さを実現した粉末積層造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】レーザ粉末積層造形装置の概略を示した図である。
図2】レーザ粉末積層造形装置の制御部の構成を示した図である。
図3】レーザ粉末積層造形方法の概要を示す図である。
図4】実施例1に係る粉末積層造形物の構造と造形方法を説明する図である。
図5】実施例2に係る粉末積層造形物の構造と造形方法を説明する図である。
図6】実施例3に係る粉末積層造形物の構造と造形方法を説明する図である。
図7】実施例4に係る粉末積層造形物の構造と造形方法を説明する図である。
図8】実施例5に係る粉末積層造形物の構造と造形方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例1を図面によって説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、レーザ粉末積層造形装置の概略を示した図である。コンピュータ装置11から粉末積層造形物の3次元CADデータ(ポリゴンデータ)を生成し、レーザ粉末積層造形装置1の制御部2に送信する。制御部2はレーザ3をx方向、y方向(必要によりZ方向)に移動させるレーザ駆動装置4に制御信号を送る。レーザ駆動装置4によりレーザ3の移動が制御され、パートヘッド部20に供給された材料粉末にレーザを照射して、粉末を溶融・焼結させることで、積層造形する。
【0012】
図2は、主にレーザ粉末積層造形装置の制御部2の構成を示した図である。制御部2は、プロセッサ(CPU)7、メモリ9、記憶部8、インターフェースI/F6を有し、それぞれはバス10により接続されている。記憶装置8は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等からなり、レーザ出力を制御するレーザ制御81、レーザ3をx、y、z方向に移動させる制御を行うレーザ部駆動制御82、パートヘッド部20に粉末を供給や、ローラー(図示せず)により、粉末を敷設する制御を行うフィード部駆動制御83等を実行するための各種プログラムを格納する他、コンピュータ装置11からの3次元CADデータを格納する。メモリ9は、プロセッサ7の作業エリアとなり、レーザ制御81、レーザ部駆動制御82、フィード部駆動制御83等の各種プログラムと3次元CADデータを記憶する。通信I/F6は、コンピュータ装置11と接続されるほか、レーザ3、レーザ3をX方向、Y方向と移動させるレーザ部駆動装置4、粉末積層造形物の材料となる粉末をパートベッド部20に供給する機構であるフィード部駆動装置5に接続される。レーザ粉末積層造形装置1の制御部2は、レーザ3、レーザ部駆動装置4、フィード部駆動装置5をそれぞれ制御することにより、造形物を積層造形する。
【0013】
図3はレーザ粉末積層造形方法の概要を示す図である。
【0014】
実施例1では、積層造形物の製造方法として、図3に示すレーザ粉末積層造形方法を使用する。レーザ粉末積層造形方法では、造形時間は非常に長いものの、一体となった立体物を作製(造形)でき、また、機械加工では作製困難な形状も作製することが可能である。
【0015】
レーザ粉末積層造形方法は、熱可塑性樹脂の粉末をローラ40またはブレードを用いて敷設し、そこにレーザを照射して溶融・焼結させることで積層造形する方法である。レーザ粉末積層造形方法では、まず図3(a)に示すように、材料粉末が蓄えられた左側フィード部5から、ローラ40を使ってパートベッド部20に材料粉末12を供給・敷設する(粉面形成1回目)。
【0016】
次に図3(b)に示すように、敷設した粉末に、レーザ光源からレーザを照射することで材料粉末12を溶融・焼結させ、第1層目の焼結体50を得る(レーザスキャン1回目)。
【0017】
続いて、図3(c)に示すように、再びローラ40を使って、右側フィード部5から、パートベッド部20に材料粉末12を供給・敷設する(粉面形成2回目)。
【0018】
そして、図3(d)に示す通り、敷設した粉末12にレーザ光源からレーザを照射することで材料粉末12を溶融・焼結させ、第1層目の焼結体と結合した、第2層目の焼結体51を得る(レーザスキャン2回目)。
【0019】
このような工程を繰り返すことで任意の立体構造物を積層造形する。レーザ粉末積層造形方法では、精度と強度の観点から、一般的に、結晶性樹脂が使われ、PA12(ポリアミド12)、PA11(ポリアミド11)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)PA6(ポリアミド6)、PA6-6(ポリアミド6-6)、PPS、PEEKなどを対象とする。ただし、結晶性樹脂が主材料であれば、非結晶性樹脂とのアロイ、ブレンドなどは対象となる。
【0020】
レーザ粉末積層造形方法の課題の一つとして、造形物を形成する際に発生する反り変形がある。材料粉末を溶融・焼結する際、および溶融・焼結した粉末積層造形物が冷却される際に、造形物の収縮が発生する。図3に示すように、レーザ粉末積層造形方法では材料粉末の溶融・焼結を逐次繰り返して立体形状を得るため、前述した造形物の収縮による収縮力が残留応力として蓄積し、反り変形が発生する。このような反り変形は、材料粉末の溶融・焼結による収縮力が大きいほど発生し易いため、したがって造形物のレーザ照射面積が大きいほど発生し易くなる。また同じレーザ照射面積であっても、レーザ照射エネルギーが高出力であるほど、反りが顕著となる傾向がある。
【0021】
レーザ粉末積層造形方法のもう一つの課題は、粉末積層造形物の表面粗さが射出成形物などに比べて高いことである。
【0022】
なお、粉末積層造形物の表面粗さRaは、積層造形時のレーザ照射エネルギーを高くすることで低減可能である。例えば、PBT樹脂の粉末積層造形物では、照射エネルギーを約10 kJ/m2とした場合、Raはおよそ20-40 μmとなるが、照射エネルギーを約20 kJ/m2とした場合、Raは10-20 μm程度まで低減される。照射エネルギーはレーザの出力と照射時間の積で決まる値であり、例えば、照射エネルギー約10 kJ/m2は、おおよそレーザ出力10W程度でレーザ3がレーザ部駆動装置4により15m/sで移動させたエネルギーに相当する。また、照射エネルギーを約20 kJ/m2は、おおよそレーザ出力20W程度でレーザ3がレーザ部駆動装置4により、15m/sで移動させたエネルギーに相当する。
【0023】
しかしながら、造形物の反り変形は、レーザ照射エネルギーが高出力であるほど増加する傾向があり、上記の例のように照射エネルギーを2倍とした場合、反り変形は3-4倍に増加する。
【0024】
従来技術では、粉末積層造形物を作製する際、図3に示したプロセスに従って、一定の出力で各層の材料粉末にレーザを照射することで、各層の密度が概ね等しい粉末積層造形物が得られる。
このようなレーザ照射方法で作製された積層造形物では、前述のような理由から、反り変形量と表面粗さは互いにトレードオフの関係にあるため、低反り変形と低表面粗さを両立することが困難である。
【0025】
一方、実施例1の粉末積層造形物は、図4に示すように、造形物の内部61に対しては弱い出力でレーザを照射し、造形物の外殻部60に対しては、内部に比べて強い出力でレーザを照射することで作製される。実施例1では、粉末の粒径を70μmから100μmを使用し、各層の厚さを100μm程度としている。
【0026】
図4(a)の最下層41の造形では、レーザ出力を高出力20Wとし、レーザ部駆動装置4によりレーザ3を15m/sで移動(スキャン)させた高密度の外殻部60を造形する。尚、外殻部60の厚さは、一回のスキャンであれば、100μm、2回のスキャンであれば200μmとすることができ、最終的な粉末積層造形物に求められる強度により、適宜設定することができる。
【0027】
図4(b)に示した中間層42の造形では、左右の外郭部60は高出力でレーザ照射し、内部61には低出力10Wでレーザ照射する。
【0028】
図4(c)に示した最上層43の造形では、再び高出力でレーザ照射し、外殻部60とする。中間層の厚さ一回のスキャンであれば、100μm、2回のスキャンであれば200μmとすることができる。最終的な粉末積層造形物に求められる大きさや、強度により、中間層や最上層の積層数は、適宜設定する。また、中間層の外郭部の長さは、100μmから実現可能である。
【0029】
尚、図4(a)から(c)は、スキャンスピードは、どの層も15m/sと一定とし、レーザ出力を変更させたが、照射エネルギーを外殻部と内部で異ならせるため、レーザ出力一定でスキャンの速さを変更させることもできる。このようなプロセスで得られた粉末積層造形物の外殻部は、内部に比べて高密度であり、表面粗さは低減されている。実施例1では、外殻部60は内部61に比べて10%程度高密度となり、外殻部の表面粗さRaは、10-20 μm程度まで低減させることができる。また、粉末積層造形物の内部は低レーザ出力で造形されているため、全体を高レーザ出力で造形する場合と比べて、反り変形は抑制される。実施例1の場合長さ100mmの粉末積層造形物に対し、反り変形を1/3程度に低減できる。このように、粉末積層造形物の外殻部のみを高レーザ出力で造形することにより、表面粗さを低減しつつ、反り変形を抑制した粉末積層造形物の作製が可能である。
【0030】
実施例1で製造した粉末積層造形物は、例えば、産業用分析装置の筐体や商用品のコントローラ筐体のように、人の手に触れる部材を所望の表面粗さ、つまり、滑りがなく、肌触りも良好な状態とした筐体を提供することができる。また、反り変形を抑制しているため、最終寸法も所定の精度が達成できる。これにより、筐体に付加されるスイッチや操作レバー等の操作性を向上させることができる。
【0031】
このような表面粗さと反り抑制を同時に満たすニーズは、産業用分析装置や商用品のコントローラの筐体の他、スマートフォン、パソコンや一般家電製品等、人の手に触れ、一定の寸法精度となる部品が必要な製品においても適応可能である。
【実施例2】
【0032】
実施例2について、図5を用いて説明する。なお実施例1に記載され、実施例2に未記載の事項は、特段の事情のない限り実施例2にも適用可能である。
【0033】
実施例2では、図5(a)に示すように、粉末積層造形物の内部61は複数の小領域62に分割されている。表面粗さと反り変形の低減を考慮すると、一つの小分割62の長さ(図の横方向)は、全体の造形物の長さ(図の横方向)の1/4から1/6程度とするのが望ましい。図5(b)には、レーザ3のスキャンパスを示している。実施例1と同様、外殻部60は高出力、分割された内部62には低出力でレーザ照射を行う。レーザ3は一つであることを前提としているので、レーザスキャンパス64からわかるように、分割された各領域はそれぞれ異なるタイミングでレーザが照射され、材料粉末が溶融・焼結するタイミングがそれぞれ異なる。尚、分割部の周辺部を構成する境界部63は、隣り合う分割部62で2度レーザ照射されるようにすると、境界部63は、照射エネルギーが2倍となる。そのため、密度も高くなるため、いわゆるハニカム構造のような生成物とすることができる。最終的な粉末積層造形物に強度が要求される場合、特に、厚さは薄いが、高強度の粉末積層造形物が必要となる場合には有効となる。
【0034】
実施例2の構成によれば、実施例1と比較しさらに1/3程度反り変形を更に抑制できる。
【0035】
前述したようにレーザ粉末積層造形方法では、レーザで一度に溶融・焼結する面積が大きいほど、造形時の収縮力が大きくなり、反り変形が発生し易くなる。したがって、図5(B)に示すように、粉末積層造形物の内部を分割してレーザスキャンすることにより、一度に内部全体をスキャンした場合に比べて反り変形を抑制することができる。
【実施例3】
【0036】
実施例3について、図6を用いて説明する。なお実施例1乃至実施例2に記載され、実施例3に未記載の事項は、特段の事情のない限り実施例3にも適用可能である。
【0037】
実施例3では、図6に示すように、粉末積層造形物の外殻部60のうちエッジ部65は、低出力のレーザ照射を行うため、その他の外殻部に比べて密度が低くしている。エッジ部65は、レーザ3の一スキャン(300μm)から設定することができる。
前述したように粉末積層造形方法では、レーザ照射エネルギーを高めることで表面粗さを低減できる。一方、高出力のレーザを用いた場合、エッジ部が丸みを帯び易くなり、エッジ精度が低下するという問題がある。したがって、粉末積層造形物の外殻部60のうち、エッジ部65に対してのみレーザ照射エネルギーを低く設定することで、エッジ精度、即ち寸法精度の低下を防止することができる。
【0038】
実施例3の構成によれば、実施例1乃至実施例2の効果に加えて、粉末積層造形物のエッジ精度(寸法精度)を向上させることができる。
【実施例4】
【0039】
実施例4について、図7を用いて説明する。なお実施例1乃至実施例3に記載され、実施例4に未記載の事項は、特段の事情のない限り実施例4にも適用可能である。
【0040】
実施例4では、図7に示すように、中間層を複数層積層して造形する。この中間層において第N番目の層を分割する小領域間の境界部63は、隣接する第N+1番目および第N−1番目の層を分割する小領域間の境界と重ならないよう異なる位置で造形する。
【0041】
前述したように、粉末積層造形物の各層を小領域に分割することで、反り変形を低減することができる。一方、小領域間の境界が破壊の起点となる為、分割しない場合に比べて強度が著しく低下する。したがって強度低下を防止する為には、図7に示すように、第N番目の層66を分割する小領域間の境界と、隣接する第N+1番目67および第N−1番目の層を分割する小領域間の境界を一致させない構成が有効である。このように、小領域間の境界を一致させない構成とすることで、境界が破壊の起点となって、粉末積層造形物全体が破壊されるといった現象を防止できる。
【0042】
実施例4の構成によれば、実施例1乃至実施例3の効果に加えて、境界が破壊の起点となって、粉末積層造形物全体が破壊されるといった現象を防止でき、層を分割することで発生する強度低下を抑止できる。実施例4においては、ハニカム構造をさらに効果的に実現することができる。そのため、最終的な粉末積層造形物に強度が要求される場合、特に、厚さは薄いが、高強度の粉末積層造形物が必要となる場合には有効となる
【実施例5】
【0043】
実施例5について、図8を用いて説明する。なお実施例1乃至実施例4に記載され、実施例5に未記載の事項は、特段の事情のない限り実施例5にも適用可能である。
【0044】
実施例5では、図8に示すように、粉末積層造形物の内部に存在する第N番目の層を分割する小領域68の数は、第N番目の層の上層に存在し、かつ粉末積層造形物の内部69に存在する第N+1番目の層を小領域の数よりも多い。
【0045】
前述したように、粉末積層造形方法では、レーザで一度に溶融・焼結する面積が大きい反り変形が発生し易くなるが、溶融・焼結される層の下地となる層の剛性が高いほど、反りは発生し難くなるという特徴がある。したがって、造形後期に溶融・焼結される上層を細かく分割するより、造形初期の下層を細かく分割した方が、反りの低減効果が高い。
【0046】
なお、粉末積層造形物の下層と上層では、下層のエッジの方が丸みを帯び易いという特徴があるため、これにより上層と下層を区別することが可能である。
【0047】
実施例5の構成によれば、実施例1乃至実施例4の効果に加えて、より少ない分割数で反り変形を低減でき、造形時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…レーザ粉末積層造形装置、2…制御部、3…レーザ、4…レーザ駆動装置、5…フィード駆動装置、6…インターフェースI/F、7…プロセッサ、8…メモリ、9…記憶部、11…コンピュータ装置、12…材料粉末、20…パートベッド部、60…外殻部、63…分割境界、64…エッジ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8