特開2019-209926(P2019-209926A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマー株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019209926-作業車両 図000003
  • 特開2019209926-作業車両 図000004
  • 特開2019209926-作業車両 図000005
  • 特開2019209926-作業車両 図000006
  • 特開2019209926-作業車両 図000007
  • 特開2019209926-作業車両 図000008
  • 特開2019209926-作業車両 図000009
  • 特開2019209926-作業車両 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209926(P2019-209926A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 11/08 20060101AFI20191115BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20191115BHJP
   B60K 23/04 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   B62D11/08 X
   A01B69/00 302
   B62D11/08 J
   B60K23/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-110009(P2018-110009)
(22)【出願日】2018年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智洋
【テーマコード(参考)】
2B043
3D036
3D052
【Fターム(参考)】
2B043AA03
2B043AB20
2B043BA02
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB14
2B043DA04
2B043DB05
2B043DC03
2B043ED01
2B043ED04
3D036GA16
3D036GB05
3D036GD02
3D036GG42
3D036GH22
3D036GJ13
3D036GJ17
3D052AA02
3D052AA04
3D052BB08
3D052DD03
3D052EE02
3D052FF01
3D052GG03
3D052HH01
3D052HH02
3D052JJ11
3D052JJ17
(57)【要約】
【課題】旋回操作時に、自由回転状態を経由することなく、旋回内側の車輪への駆動力を低速に切り替えることができる作業車両を提供する。
【解決手段】エンジン5を搭載した走行機体2を支持する走行部と、走行部を操向操作可能な操向ハンドル13と、を備え、走行部は、左右の後輪4,4と、各後輪4,4を支持するとともにエンジン5からの動力がリヤ駆動軸42を介して伝達される左の後車軸92及び右の後車軸92とを有し、操向ハンドル13の操作に伴う走行部の旋回開始後において、旋回外側の後車軸92に対してリヤ駆動軸42から第1駆動力が伝達されているときは、旋回内側の後車軸92に対してリヤ駆動軸42から第1駆動力及び第1駆動力より低速の第2駆動力の何れかの駆動力が伝達される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を搭載した走行機体を支持する走行部と、
前記走行部を操向操作可能な操向操作具と、を備え、
前記走行部は、左右の車輪と、各車輪を支持するとともに前記駆動源からの動力が駆動軸を介して伝達される左車軸及び右車軸とを有し、
前記操向操作具の操作に伴う前記走行部の旋回開始後において、前記左車軸及び前記右車軸のうち、旋回外側の車軸に対して前記駆動軸から第1駆動力が伝達されているときは、旋回内側の車軸に対して前記駆動軸から前記第1駆動力及び前記第1駆動力より低速の第2駆動力の何れかの駆動力が伝達される、作業車両。
【請求項2】
前記駆動軸から前記旋回内側の車軸に対する前記第1駆動力の伝達を継断する第1クラッチと、
前記駆動軸から前記旋回内側の車軸に対する前記第2駆動力の伝達を継断する第2クラッチと、
前記駆動軸とともに回転する駆動部材と、前記旋回内側の車軸とともに回転する従動部材と、を備え、
前記第1クラッチの遮断作動に伴い発生する前記駆動部材と前記従動部材との差動を用いて、前記第2クラッチを接続する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記従動部材は、対向する端面にそれぞれカム面が形成された第1カム及び第2カムを備え、
前記差動を用いて前記第1カムを回転させることで前記第2カムをスラスト方向に移動させて、前記第2クラッチを接続する、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記駆動部材と前記従動部材とで構成される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給された作動油により伸縮される油圧シリンダと、を備え、
前記差動を用いて前記油圧ポンプを駆動させることで前記油圧シリンダを伸長させて、前記第2クラッチを接続する、請求項2に記載の作業車両。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、左右の後輪に駆動力を伝達するリヤアクスルケース内にサイドクラッチを配置して、左右それぞれで旋回操作を行うと、旋回操作具の所定角度の操作によりサイドクラッチが遮断操作されることで旋回中心側(以下、旋回内側とも呼ぶ)の後輪に伝達されていた駆動力が遮断され、旋回中心側の後輪は伝達される駆動力のない自由回転状態となり、そこからさらに旋回操作を行うと、所定角度の操作で自由回転状態に移行する前に伝達されていた駆動力よりも低速の駆動力が旋回中心側の後輪に伝達される作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4083067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、それぞれのサイドクラッチは一つの部材として構成されていて、旋回途中の旋回操作具の操作は、後輪の自由回転状態を経由して所定の角度で低速の駆動力が伝達される構成となっている。しかしながら、圃場の状態によっては、走破性を高めるために自由回転状態を経由せずに低速の駆動力に切り替えることが望ましいこともある。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、旋回操作時に、自由回転状態を経由することなく、旋回内側の車輪への駆動力を低速に切り替えることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車両は、駆動源を搭載した走行機体を支持する走行部と、
前記走行部を操向操作可能な操向操作具と、を備え、
前記走行部は、左右の車輪と、各車輪を支持するとともに前記駆動源からの動力が駆動軸を介して伝達される左車軸及び右車軸とを有し、
前記操向操作具の操作に伴う前記走行部の旋回開始後において、前記左車軸及び前記右車軸のうち、旋回外側の車軸に対して前記駆動軸から第1駆動力が伝達されているときは、旋回内側の車軸に対して前記駆動軸から前記第1駆動力及び前記第1駆動力より低速の第2駆動力の何れかの駆動力が伝達されるものである。
【0007】
本発明の作業車両は、前記駆動軸から前記旋回内側の車軸に対する前記第1駆動力の伝達を継断する第1クラッチと、
前記駆動軸から前記旋回内側の車軸に対する前記第2駆動力の伝達を継断する第2クラッチと、
前記駆動軸とともに回転する駆動部材と、前記旋回内側の車軸とともに回転する従動部材と、を備え、
前記第1クラッチの遮断作動に伴い発生する前記駆動部材と前記従動部材との差動を用いて、前記第2クラッチを接続するものでもよい。
【0008】
本発明において、前記従動部材は、対向する端面にそれぞれカム面が形成された第1カム及び第2カムを備え、
前記差動を用いて前記第1カムを回転させることで前記第2カムをスラスト方向に移動させて、前記第2クラッチを接続するものでもよい。
【0009】
本発明の作業車両は、前記駆動部材と前記従動部材とで構成される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給された作動油により伸縮される油圧シリンダと、を備え、
前記差動を用いて前記油圧ポンプを駆動させることで前記油圧シリンダを伸長させて、前記第2クラッチを接続するものでもよい。
【0010】
本発明によれば、操向操作具の操作に伴う旋回開始後において、旋回外側の車軸に第1駆動力が伝達されているときに、旋回内側の車軸に第1駆動力及び第2駆動力の何れかの駆動力が伝達されるため、旋回操作時に、自由回転状態を経由することなく、旋回内側の車輪への駆動力を低速に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る田植機の全体構成を示す左側面図である。
図2】ステアリング系統の概略構成を示す模式図である。
図3】後輪への伝動機構を示す駆動系統図である。
図4図3の一部を拡大した図である。
図5】四駆旋回用クラッチ操作機構の側面図である。
図6】第1カム及び第2カムの断面図である。
図7】第2実施形態に係る四駆旋回用クラッチ操作機構の模式図である。
図8】油圧ポンプの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、作業車両の一例としての田植機1を示している。作業車両としては、田植機1のほか、トラクタ、コンバイン、土木・建築作業車等が例示される。
【0014】
まず、田植機1の概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の前進方向に向かって左側を単に「左」又は「左側」と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に「右」又は「右側」と称する。田植機1は、走行機体2と、走行機体2を支持する走行部としての左右一対の前輪3,3及び左右一対の後輪4,4と、走行機体2の前部に搭載されるエンジン5(駆動源に相当する)とを備えている。エンジン5からの動力を後方のミッションケース6に伝達して、前輪3,3及び後輪4,4を駆動させることにより、走行機体2が前後進走行するように構成されている。ミッションケース6の左右側方にフロントアクスルケース7を突出させ、フロントアクスルケース7から左右外向きに延びる前車軸に前輪3が舵取り可能に取り付けられている。ミッションケース6の後方に筒状フレーム8を突出させ、筒状フレーム8の後端側にリヤアクスルケース9を固設し、リヤアクスルケース9から左右外向きに延びる後車軸に後輪4が取り付けられている。また、走行機体2は、不図示の制御部を備えている。制御部は、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
【0015】
図1に示されるように、走行機体2の前部及び中央部の上面側には、オペレータ搭乗用の作業ステップ(車体カバー)10が設けられている。作業ステップ10の前部の上方にはフロントボンネット11が配置され、フロントボンネット11の内部にエンジン5を設置している。
【0016】
また、フロントボンネット11の後部上面側にある運転操作部12には、操向ハンドル13と走行主変速レバー14とが設けられている。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後方には、シートフレーム15を介して操縦座席16が配置されている。
【0017】
走行機体2の後端部にリンクフレーム17が立設されている。リンクフレーム17には、ロワーリンク18及びトップリンク19からなる昇降リンク機構20を介して、苗植付装置21が昇降可能に連結されている。筒状フレーム8の上面後部に、油圧式の昇降シリンダ22のシリンダ基端側を上下回動可能に支持させる。昇降シリンダ22のロッド先端側はロワーリンク18に連結している。昇降シリンダ22の伸縮動にて昇降リンク機構20を上下回動させる結果、苗植付装置21が昇降動する。
【0018】
オペレータは、作業ステップ10の側方にある乗降ステップ23から作業ステップ10上に搭乗し、運転操作にて圃場内を移動しながら、苗植付装置21を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。
【0019】
図1に示すように、苗植付装置21は、エンジン5からミッションケース6を経由した動力が伝達される植付入力ケース24と、植付入力ケース24に連結する八条用四組(二条で一組)の植付伝動ケース25と、各植付伝動ケース25の後端側に設けられた苗植機構26と、苗載台27と、各植付伝動ケース25の下面側に配置された田面均平用のフロート28とを備えている。苗植機構26には、一条分二本の植付爪29を有するロータリケース30が設けられている。植付伝動ケース25に二条分のロータリケース30が配置されている。ロータリケース30の一回転によって、二本の植付爪29が各々一株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート28にて整地された田面に植え付ける。
【0020】
以下、図2に基づいて、ステアリング系統の概略構成について説明する。操向ハンドル13は、走行機体2を支持する走行部を操向操作可能な操向操作具に相当する。
【0021】
ステアリングシャフト13aは、操向ハンドル13の中心部分に接続されて、操向ハンドル13の操舵力を前輪3に伝達する。ステアリングシャフト13aは、上下方向に延びるように備えられ、その上端部が操向ハンドル13に連結されている。ステアリングシャフト13aの下端部がミッションケース6の上部に連結されており、ステアリングシャフト13aは、ミッションケース6の上部に支持されている。
【0022】
オペレータが操向ハンドル13を回転操作すると、その回転操作に伴う操舵力がステアリングシャフト13aに伝達される。ステアリングシャフト13aの中間部にはパワーステアリング装置(図示していない)が備えられており、ステアリングシャフト13aには、オペレータによる操向ハンドル13の操舵力に加えて、パワーステアリング装置による操舵補助力が付与されている。ステアリングシャフト13aは、操向ハンドル13による操舵力、及び、パワーステアリング装置による操舵補助力によって回転駆動することになり、ステアリングシャフト13aの回転駆動によって右及び左の前輪3,3を操向操作するように構成されている。
【0023】
次に、後輪4の後車軸に対する駆動力の伝達の有無を切り替え可能なサイドクラッチ操作機構について説明する。
【0024】
エンジン5の動力は、プロペラシャフト91を介して、リヤアクスルケース9に伝達される。リヤアクスルケース9内に入力された回転駆動力は、後車軸92に伝達される。左の後車軸92は左の後輪4を駆動し、右の後車軸92は右の後輪4を駆動する。
【0025】
プロペラシャフト91から左の後車軸92までの駆動伝達経路の間には、左のサイドクラッチ93(後述する)が配置されている。同様に、プロペラシャフト91から右の後車軸92までの駆動伝達経路の間には、右のサイドクラッチ93(後述する)が配置されている。左右のサイドクラッチ93,93は、それぞれ独立して接続と遮断を切り替えることができる。サイドクラッチ93は第1クラッチに相当する。
【0026】
また、プロペラシャフト91から左の後車軸92までの駆動伝達経路の間には、左の四駆旋回用クラッチ44(後述する)が配置されている。同様に、プロペラシャフト91から右の後車軸92までの駆動伝達経路の間には、右の四駆旋回用クラッチ44(後述する)が配置されている。左右の四駆旋回用クラッチ44,44は、それぞれ独立して接続と遮断を切り替えることができる。四駆旋回用クラッチ44は第2クラッチに相当する。
【0027】
サイドクラッチ操作機構94は、左右のクラッチ操作レバー95L,95Rと、ステアリング連動レバー96と、ステアリング操作伝達リンク97と、から構成されている。
【0028】
クラッチ操作レバー95L,95Rはリヤアクスルケース9の上面側に配置されている。また、クラッチ操作レバー95L,95Rは、後述するサイドクラッチ用カム軸93e,93eを中心にして「クラッチ接続位置」と「クラッチ遮断位置」との間で回動することにより、対応する側のサイドクラッチ93を操作できるように構成されている。具体的には、左のクラッチ操作レバー95Lを「クラッチ接続位置」まで回動させると左のサイドクラッチ93が接続状態となり、当該左のクラッチ操作レバー95Lを「クラッチ遮断位置」まで回動させると左のサイドクラッチ93が遮断状態となるように構成されている。同様に、右のクラッチ操作レバー95Rを「クラッチ接続位置」まで回動させると右のサイドクラッチ93が接続状態となり、当該右のクラッチ操作レバー95Rを「クラッチ遮断位置」まで回動させると右のサイドクラッチ93が遮断状態となるように構成されている。なお、クラッチ操作レバー95L,95Rは、不図示の付勢部材によって、「クラッチ接続位置」となるように付勢力が加えられている。従って、左右のクラッチ操作レバー95L,95Rに対して操作力を加えない状態では、左右のサイドクラッチ93,93は共に接続状態となる。図2は、左右のクラッチ操作レバー95L,95Rに対して操作力が加えられておらず、左右のサイドクラッチ93,93が共に接続状態である状態を示している。
【0029】
ステアリング連動レバー96は、リヤアクスルケース9の上面側に配置されている。また、ステアリング連動レバー96は、その長手方向中心部に支軸96aが取り付けられており、この支軸96aを中心にして回動可能に構成されている。ステアリング連動レバー96は、支軸96aを中心にして回動することにより、左右のクラッチ操作レバー95L,95Rを操作できるように構成されている。
【0030】
具体的には、左のクラッチ操作レバー95Lは、ステアリング連動レバー96の左側の端部96bの近傍に配置されている。そして、ステアリング連動レバーが支軸96aを中心として一方向に向けて回転することにより、当該ステアリング連動レバー96の左側の端部96bによって左のクラッチ操作レバー95Lを押すことができるように構成されている。このようにステアリング連動レバー96の端部96bによって左のクラッチ操作レバー95Lを押すことにより、前記付勢力に逆らって左のクラッチ操作レバー95Lを回動させ、当該左のクラッチ操作レバー95Lを「クラッチ遮断位置」とすることができる。
【0031】
また、右のクラッチ操作レバー95Rは、ステアリング連動レバー96の右側の端部96cの近傍に配置されている。そして、ステアリング連動レバー96は、支軸96aを中心として他方向に向けて回転することにより、当該ステアリング連動レバー96の他側の端部96cによって右のクラッチ操作レバー95Rを押すことができるように構成されている。このようにステアリング連動レバー96の端部96cによって右のクラッチ操作レバー95Rを押すことにより、前記付勢力に逆らって右のクラッチ操作レバー95Rを回動させ、当該右のクラッチ操作レバー95Rを「クラッチ遮断位置」とすることができる。なお、ステアリング連動レバー96は、左右のクラッチ操作レバー95L,95Rの何れも操作しない中立位置(図2の状態)を取ることができるように構成されている。
【0032】
ステアリング操作伝達リンク97は、オペレータによる操向ハンドル13の操作を、ステアリング連動レバー96の支軸96aに伝達するように構成されている。これにより、操向ハンドル13の操作量に応じてステアリング連動レバー96を回動させることができるので、操向ハンドル13の操作に応じてサイドクラッチ93,93の接続/遮断を切り替えることができる。
【0033】
より具体的には、操向ハンドル13を左に一定量以上操作すると、ステアリング連動レバー96の端部96bが左のクラッチ操作レバー95Lを押して、左のサイドクラッチ93を遮断するように構成されている。左のサイドクラッチ93は、例えば操向ハンドル13が直進状態(0度)から左へ270度以上回転操作された場合に遮断される。また、操向ハンドル13を右に一定量以上操作すると、ステアリング連動レバー96の端部96cが右のクラッチ操作レバー95Rを押して、右のサイドクラッチ93を遮断するように構成されている。右のサイドクラッチ93は、例えば操向ハンドル13が直進状態(0度)から右へ270度以上回転操作された場合に遮断される。
【0034】
次いで、図3及び図4に基づいて、後車軸92への伝動機構について説明する。リヤアクスルケース9内には、プロペラシャフト91に連結するリヤ入力軸41と、リヤ入力軸41の動力を左右の歯車式伝動機構43及び後車軸92を介して後輪4に伝達するリヤ駆動軸42(駆動軸に相当)と、リヤ駆動軸42の左右両側にそれぞれ配置したサイドクラッチ93と、サイドクラッチ93よりも左右外側でリヤ駆動軸42の左右両側にそれぞれ配置した四駆旋回用クラッチ44及び減速機構45とが設けられている。
【0035】
リヤ入力軸41の後端には、リヤ駆動軸42に動力を伝達するリヤ駆動軸用ベベルギヤ46が設けられている。リヤ駆動軸用ベベルギヤ46は、リヤ駆動軸42に設けた連動用ベベルギヤ48に噛み合っている。
【0036】
歯車式伝動機構43は、リヤ駆動軸42の動力を後車軸92に伝達する。歯車式伝動機構43は、中間軸43aを有し、中間軸43aは、中間ギヤ43b及び減速ギヤ43cを介してサイドクラッチケース93aに連結される。また、中間軸43aは、中間軸ギヤ43dとファイナルギヤ43eを介して後車軸92に連結される。リヤ駆動軸42の回転駆動力は、減速ギヤ43c及び中間ギヤ43bと、中間軸ギヤ43d及びファイナルギヤ43eとでそれぞれ減速されて、後車軸92に伝達される。
【0037】
サイドクラッチ93は、摩擦板93bとスチールプレート93cを交互に配置した多板式構造を有し、リヤ駆動軸42に摩擦板93bが左右方向にスライド可能に固定され、サイドクラッチケース93aにスチールプレート93cが左右方向にスライド可能に固定されている。
【0038】
四駆旋回用クラッチ44は、摩擦板44aとスチールプレート44bを交互に配置した多板式構造を有し、後述するキャリア45dに摩擦板44aが左右方向にスライド可能に固定され、サイドクラッチケース93aにスチールプレート44bが左右方向にスライド可能に固定されている。
【0039】
サイドクラッチ93は、リヤ駆動軸42の左右端部側に設けられている。サイドクラッチ93の左右内側に、サイドクラッチ93の接続/遮断を切り替えるサイドクラッチ操作部材93d及びサイドクラッチ用カム軸93eが設けられている。サイドクラッチ93は、操向ハンドル13を所定操舵角以上に操作すると遮断される。サイドクラッチ93の接続状態では、リヤ駆動軸42の回転駆動力がサイドクラッチ93を介して歯車式伝動機構43に伝達される。サイドクラッチ操作部材93dは、リヤ駆動軸42上にスライド可能に支持されている。サイドクラッチ操作部材93dの左右内側には、サイドクラッチ用カム軸93eの下端側カム面が当接される。
【0040】
また、サイドクラッチ93よりも左右外側でリヤ駆動軸42の左右端部側に、内側から順に四駆旋回用クラッチ44と減速機構45が設けられている。減速機構45は、リヤ駆動軸42に固定されるサンギヤ45aと、サンギヤ45aにプラネタリギヤ45bを介して連結されるインターナルギア45cと、プラネタリギヤ45bを軸支するキャリア45dとを備えている。インターナルギア45cは、リヤアクスルケース9内に固定されている。減速機構45は、四駆旋回用クラッチ44の接続状態時に、リヤ駆動軸42の回転駆動力を減速して歯車式伝動機構43に伝達する。すなわち、四駆旋回用クラッチ44を経由して伝達される第2駆動力は、サイドクラッチ93を経由して伝達される第1駆動力よりも低速となっている。
【0041】
四駆旋回用クラッチ44よりも左右内側には、四駆旋回用クラッチ操作機構47が設けられている。図5は、四駆旋回用クラッチ操作機構47の側面図である。四駆旋回用クラッチ操作機構47は、リヤ駆動軸42とともに回転する駆動プレート47a(駆動部材に相当する)と、サイドクラッチケース93aに固定される第1カム47b及び第2カム47c(従動部材に相当する)とを備えている。駆動プレート47aは、リヤ駆動軸42の外周面に固定され、リヤ駆動軸42と一体に回転する。
【0042】
第1カム47bは、駆動プレート47aよりも左右外側に設けられ、第2カム47cは、第1カム47bよりも左右外側に設けられている。また、第1カム47bと駆動プレート47aの間にはフリクションプレート47dが設けられる。フリクションプレート47dは、駆動プレート47aに取り付けられて駆動プレート47aと一体的に回転する。一方、第1カム47bとフリクションプレート47dとは、相対回転可能に構成されている。
【0043】
図6の(a)、(b)は、第1カム47bと第2カム47cのスラスト方向(図5の左方向)の断面図である。第1カム47bには、回転方向に沿って複数の第1の突起477が設けられている。一方、サイドクラッチケース93aには、回転方向を長手方向とした複数の第1の長孔931が設けられている。第1の突起477は、対応する第1の長孔931内を回転方向に移動可能となっている。これにより、第1カム47bは、サイドクラッチケース93aに対して、スラスト方向に移動不能、且つ、回転方向に移動可能に固定されている。
【0044】
第2カム47cには、回転方向に沿って複数の第2の突起478が設けられている。一方、サイドクラッチケース93aには、スラスト方向を長手方向とした複数の第2の長孔932が設けられている。第2の突起478は、対応する第2の長孔932内をスラスト方向に移動可能となっている。これにより、第2カム47cは、サイドクラッチケース93aに対して、スラスト方向に移動可能、且つ、回転方向に移動不能に固定されている。
【0045】
また、図5に示すように、第1カム47bと第2カム47cの対向する端面には、それぞれカム面が形成されている。そして、サイドクラッチ93が遮断されて、第1カム47bと第2カム47cの回転差が生じる(より詳説すると、第2カム47cの回転速度が第1カム47bの回転速度よりも低速になる)と、第1カム47bは第2カム47cに対して第1の長孔931内を回転方向に移動する。これにより第1カム47bのカム面が、第2カム47cのカム面を四駆旋回用クラッチ44に向かって押し出して互いが離れる向きの力が生じる。よって、第1カム47bが回転すると第2カム47cにはスラスト方向の力が付与される。第2カム47cが左右外側に移動されると、四駆旋回用クラッチ44の摩擦板44a及びスチールプレート44bが左右内側から押圧されて、摩擦板44aとスチールプレート44bの間の摩擦により四駆旋回用クラッチ44は接続状態となる。
【0046】
次に、サイドクラッチ93及び四駆旋回用クラッチ44の入り切り作動について説明する。
【0047】
まず、操向ハンドル13が直進操作又は左右に一定量未満操作された場合、左右のサイドクラッチ93は接続状態であり、左右の四駆旋回用クラッチ44は遮断状態である。このとき、リヤ駆動軸42は、サイドクラッチ93、減速ギヤ43c、及び歯車式伝動機構43を介して左右の後車軸92に連結される。これによりリヤ駆動軸42から左右の後車軸92に第1駆動力が伝達される。
【0048】
次いで、操向ハンドル13が左右に一定量以上操作された場合(例えば、圃場にて旋回を行う場合)、旋回内側のサイドクラッチ用カム軸93eが回動してサイドクラッチ操作部材93dが左右外側に移動し、サイドクラッチ93を遮断する。サイドクラッチ93が遮断状態になると、リヤ駆動軸42とサイドクラッチケース93aとの間に差動が生じる。すなわち、リヤ駆動軸42に固定された駆動プレート47aと、サイドクラッチケース93aに固定された第1カム47bとの間にも差動が生じる。ところが、第1カム47bと駆動プレート47aの間にはフリクションプレート47dが設けられており、第1カム47bにはフリクションプレート47dを介して駆動プレート47aの回転駆動力が伝達される。これにより、第1カム47bが回転して、上記した第1カム47b及び第2カム47cのカム面の作用によって第2カム47cが左右外側に移動し、四駆旋回用クラッチ44を接続する。よって、サイドクラッチ93の遮断作動に伴い発生する差動を用いて四駆旋回用クラッチ44を接続することができる。
【0049】
旋回内側のサイドクラッチ93が遮断状態、かつ旋回内側の四駆旋回用クラッチ44が接続状態のとき、リヤ駆動軸42は、減速機構45、四駆旋回用クラッチ44、減速ギヤ43c、及び歯車式伝動機構43を介して旋回内側の後車軸92に連結される。これにより、リヤ駆動軸42からの回転駆動力は減速機構45で減速されるため、リヤ駆動軸42から四駆旋回用クラッチ44を介して旋回内側の後車軸92に伝達される第2駆動力は、サイドクラッチ93を介して伝達される第1駆動力よりも低速となる。
【0050】
以上の構成により、操向ハンドル13の操作に伴って旋回が開始された後、操向ハンドル13の操作が一定量未満であれば、旋回外側の後車軸92及び旋回内側の後車軸92には第1駆動力が伝達される。そして、操向ハンドル13が一定量以上操作されると、旋回外側の後車軸92には第1駆動力が伝達され続けるが、旋回内側の後車軸92は、第1駆動力が伝達されている状態から自由回転状態を経由することなく、第2駆動力が伝達される状態に切り替えることができる。その結果、旋回操作時に、自由回転状態を経由することなく、旋回内側の後輪4への駆動力を低速に切り替えることができる。また、2つのクラッチの操作を連携させるためには、通常、微妙な調整が必要となるが、本発明では、サイドクラッチ93の遮断作動に伴って自動的に四駆旋回用クラッチ44が接続されるため、微妙な調整は不要である。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態では、四駆旋回用クラッチ操作機構47は、リヤ駆動軸42とともに回転する駆動部材と後車軸92とともに回転する従動部材とで構成される油圧ポンプ47eと、油圧ポンプ47eから供給された作動油により伸縮される油圧シリンダ47fと、を備えている。
【0052】
油圧ポンプ47eは、サイドクラッチ93の遮断作動に伴い発生する駆動部材と従動部材との差動を用いて駆動される。図8は、油圧ポンプ47eの例を模式的に示す断面図である。
【0053】
図8(a)の油圧ポンプ47eは、トロコイドポンプの形態となっている。インナーロータ471(駆動部材に相当する)は、リヤ駆動軸42に固定され、リヤ駆動軸42とともに回転する。アウターロータ472(従動部材に相当する)は、サイドクラッチケース93a内に偏心して形成された円筒状の空間に、回転自在に収容されている。作動油の吸込口473及び吐出口474は、サイドクラッチケース93aに形成されている。なお、油圧ポンプ47eの作動油は、リヤアクスルケース9内のオイルを利用することができる。
【0054】
サイドクラッチ93の接続状態では、リヤ駆動軸42とサイドクラッチケース93aは一体で回転し、インナーロータ471とアウターロータ472は一体で回転するため、油圧ポンプ47eのポンプ作用は生じない。一方、サイドクラッチ93が遮断状態になると、リヤ駆動軸42とサイドクラッチケース93aとの間に差動が生じ、インナーロータ471とアウターロータ472との間にも差動が生じる。これにより、インナーロータ471がアウターロータ472を回転させるため、油圧ポンプ47eのポンプ作用が生じる。
【0055】
油圧ポンプ47eが駆動されると、油圧ポンプ47eから供給された作動油によって油圧シリンダ47fは伸長する。油圧シリンダ47fが伸長されると、四駆旋回用クラッチ44の摩擦板44a及びスチールプレート44bが左右内側から押圧されて、摩擦板44aとスチールプレート44bの間の摩擦により四駆旋回用クラッチ44は接続状態となる。
【0056】
また、図8(b)の油圧ポンプ47eは、ギヤポンプの形態となっている。第1ギヤ475(駆動部材に相当する)は、リヤ駆動軸42に固定され、第2ギヤ476(従動部材に相当する)は、サイドクラッチケース93aに回転可能に固定されている。作動油の吸込口473及び吐出口474は、サイドクラッチケース93aに形成されている。なお、油圧ポンプ47eの作動油は、リヤアクスルケース9内のオイルを利用することができる。
【0057】
サイドクラッチ93の接続状態では、リヤ駆動軸42とサイドクラッチケース93aは一体で回転し、第1ギヤ475と第2ギヤ476は一体で回転するため、油圧ポンプ47eのポンプ作用は生じない。一方、サイドクラッチ93が遮断状態になると、リヤ駆動軸42とサイドクラッチケース93aとの間に差動が生じ、第1ギヤ475と第2ギヤ476との間にも差動が生じる。これにより、第1ギヤ475が第2ギヤ476を回転させるため、油圧ポンプ47eのポンプ作用が生じる。
【0058】
油圧ポンプ47eが駆動されると、油圧ポンプ47eから供給された作動油によって油圧シリンダ47fは伸長する。油圧シリンダ47fが伸長されると、四駆旋回用クラッチ44の摩擦板44a及びスチールプレート44bが左右内側から押圧されて、摩擦板44aとスチールプレート44bの間の摩擦により四駆旋回用クラッチ44は接続状態となる。
【0059】
[他の実施形態]
前述の第1実施形態において、必要に応じて四駆旋回用クラッチ44から離れる向きに第2カム47cを付勢するリターンバネを設けてもよい。同様に、前述の第2実施形態において、必要に応じて四駆旋回用クラッチ44から離れる向きに油圧シリンダ47fを付勢するリターンバネを設けてもよい。リターンバネを設けることで、操向ハンドル13が直進操作又は左右に一定量未満操作された場合に、左右の四駆旋回用クラッチ44を遮断状態に保持することができる。リターンバネは、コイルバネの他、ウェーブワッシャ等の板バネで構成してもよい。
【0060】
前述の第1及び第2実施形態では、第1駆動力と第2駆動力が伝達される車輪を「後輪4」として説明を行ったが、「前輪3」又は「前輪3と後輪4の両方」としてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 田植機
4 後輪
5 エンジン
13 操向ハンドル
42 リヤ駆動軸
44 四駆旋回用クラッチ
45 減速機構
47 四駆旋回用クラッチ操作機構
47a 駆動プレート
47b 第1カム
47c 第2カム
47e 油圧ポンプ
47f 油圧シリンダ
92 後車軸
93 サイドクラッチ
94 サイドクラッチ操作機構



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8