【解決手段】本発明の加水システム100は、環状の内壁体411と、内壁体411の外側に配される外壁体412と、圧送されている水が外壁孔部413aを介して環状空間S2に供給される水供給部413と、環状空間S2内の水を、内壁孔部414aを介して通路空間S1に向かって噴出させる噴出部414とを備える合流装置41と、合流装置41に水を圧送するポンプ32aと、ポンプ32aを駆動させるモータ32bと、インバータ32cと、インバータ32cの出力周波数が設定される設定部32dと、設定部32dで設定された出力周波数となるようにインバータ32cの出力周波数を制御する制御部32eとを有する送水装置32と、水供給部413とポンプ32aの間に配され、ポンプ32aより圧送された水を水供給部413に供給する水圧送路34とを備える。
圧送されている吹付原材料を通過させる通路空間を内側に含む環状の内壁体と、前記内壁体との間で前記通路空間を囲む環状空間が形成されるように、前記内壁体の外側に配される外壁体と、前記外壁体の外部と前記環状空間とが繋がるように前記外壁体を貫通する外壁孔部を含み、圧送されている水が前記外壁孔部を介して前記環状空間に供給される水供給部と、前記環状空間と前記通路空間とが繋がるように前記内壁体を貫通する内壁孔部を含み、前記環状空間内の水を、前記内壁孔部を介して前記通路空間に向かって噴出させる噴出部とを備える合流装置と、
前記合流装置に水を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動させるモータと、前記モータを所定の出力周波数で駆動させるインバータと、作業者の入力操作により前記インバータの出力周波数が設定される設定部と、前記設定部で設定された出力周波数となるように前記インバータの出力周波数を制御する制御部とを有する送水装置と、
前記合流装置の前記水供給部と、前記送水装置の前記ポンプとの間に配され、前記ポンプより圧送された水を前記水供給部に供給する水圧送路と、を備える吹付工法用の加水システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る加水システム100について、
図1〜
図4を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加水システム100を利用したモルタル又はコンクリート吹付装置10(以下、単に「吹付装置10」と称する場合がある。)を模式的に表した説明図である。
【0017】
加水システム100は、長距離・高揚程の施工対象(例えば、法面1)に、モルタル又はコンクリートからなる施工物(例えば、法枠)を形成可能な、吹付装置10に利用される装置である。以下、吹付装置10、及びそれを利用したモルタル又はコンクリート吹付方法(以下、単に「吹付方法」と称する場合がある。)を説明しつつ、本実施形態の加水システム100について説明する。
【0018】
吹付装置10は、例えば、施工対象である法面1に設けられている型枠の中に、未硬化状態のモルタル又はコンクリートからなるモルタル材料又はコンクリート材料(以下、「モルタル材料等」と称する場合がある。)を、吹付により供給する。
【0019】
モルタル材料等は、少なくとも、造粒固化材、骨材及び水を混合したものからなる。本実施形態では、固化材として、一般的な粉末状のものではなく、固化能力を維持した状態で、粒状化された造粒固化材(例えば、セメント系造粒固化材)が利用される。なお、骨材及び水については、一般的な吹付工法で用いられる公知のものが利用される。具体的な骨材としては、細骨材(例えば、砂)、粗骨材(例えば、砕石等)等が挙げられる。
【0020】
造粒固化材としては、例えば、上述した特許文献2に示されるセメント系造粒固化材(造粒セメント)が利用される。造粒固化材は、例えば、少なくとも固化材(セメント等)及び油脂類を含む複合材料の混練材の圧縮造粒体からなる。造粒固化材の大きさは、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、細骨材、粗骨材等の骨材と同程度の大きさを標準として設定される。
【0021】
造粒固化材は、固化材(セメント等)及び油脂類の他に、必要に応じて、増粘材、崩壊材等を含んでもよい。増粘材としては、前記複合材料の粘性を向上させて粒状化させ易くする性質を有するものが使用される。崩壊材としては、水を吸収すると、造粒固化材を内側から崩壊させる性質を有するものが使用される。造粒固化材の製造方法は、例えば、特許文献2に示される通りであり、少なくとも固化材(セメント等)及び油脂類を含む複合材料の混合攪拌工程と、前記混合攪拌工程による1次処理材料の粉砕・解砕工程と、必要に応じて前記粉砕・解砕工程による2次処理材料の圧縮造粒工程とを備える。なお、前記圧縮造粒工程で製造された造粒固化材は、必要に応じて焼成されてもよい。
【0022】
吹付装置10は、上述したモルタル材料等の原材料を、水M3と、水M3(液体)以外の原材料(造粒固化材M1、骨材M2等の吹付原材料)とに分けた状態で、それらを別々のホースを利用して施工対象(法面1)の近くまで圧送する。そして、それらのホースは、後述するように、下流側で繋がっているため、別々に圧送された水M3と、水M3以外の原材料(造粒固化材M1、骨材M2等の吹付原材料)とは下流側で合流し、混ざり合った状態で吐出される。
【0023】
吹付装置10は、造粒固化材M1及び骨材M2を下流側に供給する手段として、ホッパー21、第1ベルトコンベア22、計量器23、第2ベルトコンベア24、吹付機25、耐圧ホースからなるエアホース27、圧縮機26、及び第1耐圧ホース28を備えている。なお、吹付装置10は、図示されない発電機を備えており、その発電機で発電された電力が、発電機に付設されている配電盤(不図示)を介して、吹付機25、第1ベルトコンベア22、計量器23、第2ベルトコンベア24及びホッパー21に供給される。また、本実施形態の場合、前記発電機は、後述する加水システム100が備える送水装置32、流量計33にも前記配電盤を介して電力を供給する。
【0024】
ホッパー21は、受入口から骨材M2を受け入れると、適量の骨材M2を隣接する第1ベルトコンベア22に排出する。なお、骨材M2は、ユニック車等により、ホッパー21の近くまで運ばれる。第1ベルトコンベア22は、ホッパー21と、計量器23との間に設置されており、ホッパー21から排出された骨材M2を計量器23へ搬送する。
【0025】
計量器23は、ホッパー21からベルトコンベア22を介して送られてくる骨材M2を、篩を用いて粒径で選別する。そして、計量器23は、篩を通過した適当な大きさの骨材M2のみを、所定量に計り取った状態で、隣接する第2ベルトコンベア24に排出する。
【0026】
第2ベルトコンベア24は、計量器23と、吹付機25との間に設置されており、計量器23から排出された骨材M2を吹付機25へ搬送する。なお、骨材M2が第2ベルトコンベア24上を移動する際に、適量の造粒固化材M1が、作業者によって第2ベルトコンベア24上に載せられる。そのため、第2ベルトコンベア24は、適量の骨材M2と共に、適量の造粒固化材M1を、同時にまとめて吹付機25へ搬送する。
【0027】
吹付機(ガン機)25は、第2ベルトコンベア24から送られてくる造粒固化材M1及び骨材M2を攪拌しつつ、それらの混合物を、吹付機25に接続する第1耐圧ホース28に向けて噴出する装置である。吹付機25は、撹拌機を内蔵する攪拌槽を備えており、造粒固化材M1及び骨材M2が供給されると、それらを混合する。また、吹付機25は、エアホース27を介して圧縮機(コンプレッサー)26と接続しており、その圧縮機26から、前記混合物を噴出させるための高圧の圧縮空気(圧搾空気)が供給される。なお、吹付機25は、図示されない制御盤を備えている。作業者は、この制御盤を適宜、操作することにより、吹付機25から供給される圧縮空気量等が調整される。
【0028】
耐圧ホース28は、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を、下流側へ圧送させる通路である。第1耐圧ホース28の上流側の端部は、吹付機25に接続され、下流側の端部は、後述する接続手段43に接続される。
【0029】
また、吹付装置10は、水M3を施工対象の近くまで圧送し、かつ水M3以外の原材料に対して、所定の割合で水M3を加える装置として、加水システム100を備えている。加水システム100は、
図1に示されるように、水タンク31、送水装置32、流量計33、第2耐圧ホース(水圧送路の一例)34、及び合流装置41を備えている。
【0030】
水タンク31に収容された水M3は、送水装置32によって、吸い上げられて、第2耐圧ホース34を介して下流側へ圧送される。第2耐圧ホース34の上流側は、送水装置32に接続され、下流側は、合流装置41に接続される。また、第2耐圧ホース34の途中には、流量計33が設置されており、その流量計33で流量が計量されながら、水M3が第2耐圧ホース34を介して下流側へ圧送される。
【0031】
ここで、
図2を参照しつつ、加水システム100が備える送水装置32について詳細に説明する。
図2は、加水システム100の一部を構成する送水装置32の構成を模式的に表した説明図である。送水装置32は、主として、ポンプ32a、モータ32b、インバータ制御盤320(インバータ32c、設定部32d、制御部32e)を備えている。
【0032】
本実施形態のポンプ32aは、所謂ピストンポンプ(プランジャポンプ)であり、駆動軸32a1の回転により、図示されないシリンダ内のピストン(プランジャ)を往復させることで、水M3の吸い込み、及び水M3の吐き出しを行う。駆動軸32a1には、プーリー32a2が取り付けられており、そのプーリー32a2に対して、プーリーベルト32fが掛けられている。
【0033】
ポンプ32aには、上述した第2耐圧ホース34以外に、吸水ホース32g、余水ホース32hが接続されている。吸水ホース32gの一端は、ポンプ32aに設けられた吸い込み口32g1に接続され、他端は、水タンク31内に配置されている。ポンプ32aが吸い込み動作を行うと、水タンク31内の水M3が、吸水ホース32gを介してポンプ32a側へ吸い込まれる形で移動する。そして、ポンプ32a内に吸い込まれた水M3は、ポンプ32aの吐き出し動作により、第2耐圧ホース34を介してポンプ32a内から外部へ圧送される。なお、第2耐圧ホース34の上流側の端部は、ポンプ32aに設けられている吐出口32iに接続されている。
【0034】
また、余水ホース32hの一端は、ポンプ32aに設けられた余水吐出口32h1に接続され、その他端は、水タンク31内に配置されている。余水吐出口32h1と、吐出口32iとの間には、安全弁(アンローダバルブ)32jが設けられている。安全弁32jは、例えば、後述する吹付ノズル61が閉じられて、内部の圧力が設定値以上となった場合に、吸水ホース32gによって吸い上げられた水M3を、余水ホース32hを介して水タンク31内へ戻すように作動する。なお、吹付ノズル61が開けられて、内部の圧力が設定値を下回ると、水M3が第2耐圧ホース34を介して圧送されるように安全弁32jが作動する。
【0035】
ポンプ32aや、モータ32b等は、載置台32k上に設置されている。モータ32bの回転軸32b1には、プーリー32b2が取り付けられており、そのプーリー32b2に対して、上述したプーリーベルト32fが掛けられている。モータ32bは、回転軸32b1及びプーリーベルト32fを介して、ポンプ32aの駆動軸32a1を回転駆動させる。
【0036】
インバータ制御盤320は、モータ32bを、所定の出力周波数で駆動させるインバータ32cと、作業者の入力操作によりインバータ32cの出力周波数が設定される設定部32dと、設定部32dで設定された出力周波数となるようにインバータ32cの出力周波数を制御する制御部32eとを備えている。
【0037】
所定の出力周波数に応じて、モータ32bの回転数が変化すると、ポンプ32aによって吐出される水M3の量も変化する。作業者が、流量計33の値を確認しながら、設定部32dが備える入力部(例えば、摘まみ式の入力部)を操作することで、所定の出力周波数が設定される。そして、制御部32eは、その設定された出力周波数となるようにインバータ32cの出力周波数を制御する。なお、送水装置32の電源は、上述した発電機及び配電盤より、インバータ制御盤320に接続する電源ケーブル321を介して供給される。
【0038】
このような送水装置32に接続する第2耐圧ホース34の下流側の端部には、合流装置41が取り付けられている。なお、本実施形態の場合、合流装置41は、それと接続する破砕・攪拌部42と共に、接続手段43を構成している。
【0039】
接続手段43は、第1耐圧ホース28の下流側の端部28aと、第2耐圧ホース34の下流側の端部34aとを接続して、第1耐圧ホース28内の造粒固化材M1及び骨材M2からなる混合物と、第2耐圧ホース34内の水M3とを合流させる手段である。なお、接続手段43の下流側には、合流後の前記混合物(造粒固化材M1、及び骨材M2)と水M3とが互いに混ざり合いながら通過する第3耐圧ホース(合流供給路)51が接続されている。
【0040】
本実施形態の接続手段43は、上述したように、2つの部分から構成されており、第2耐圧ホース34の端部34aが固定される合流装置41と、第1耐圧ホース28の端部28aが固定され、合流装置41の上流側に接続する破砕・攪拌部42とを備えている。
【0041】
破砕・攪拌部42は、全体的には、管状をなしており、上流側の端部に、第1耐圧ホース28の端部28aが固定される。また、管状をなした破砕・攪拌部42の内周面には、中心に向かって突出する複数の突起が設けられている。第1耐圧ホース28から送られてきた造粒固化材M1及び骨材M2の混合物は、破砕・攪拌部42の内部を通過する際に、前記突起と衝突することで、適宜、破砕及び攪拌される。造粒固化材M1は、この破砕・攪拌部42の内部を通過することで、通常の粉状の固化材(セメント等)に戻り易くなる。
【0042】
破砕・攪拌部42の下流側は、加水システム100の一部を構成する合流装置41に接続されている。ここで、
図3及び
図4を参照しつつ、合流装置41について詳細に説明する。
図3は、加水システム100の一部を構成する合流装置41の構成を模式的に表した断面図であり、
図4は、
図3のA−A線に対応する箇所の合流装置41の断面図である。
【0043】
合流装置41は、主として、内壁体411、外壁体412、水供給部413、及び噴出部414を備えている。
【0044】
内壁体411は、全体的には、環状をなしている。環状をなした内壁体411の内側には、通路空間S1がある。通路空間S1は、破砕・攪拌部42側(上流側)から圧送されてくる造粒固化材M1、及び骨材M2の混合物(吹付原材料)を、下流側へ通過させるための空間である。なお、通路空間S1は、内壁体411の内周面で囲まれている。
【0045】
外壁体412は、全体的には、内壁体411よりも一回り大きな筒状をなしている。
図3及び
図4に示されるように、外壁体412は、内壁体411との間で環状空間S2が形成されるように、内壁体411の外側に配されている。外壁体412の内周面の一部に、外側に窪みつつ周方向で繋がった環状の凹溝412aが形成されている。この凹溝412aを間に置く形で、内壁体411の下流側の端部411aと、上流側の端部411bとが、外壁体412の内周面に当接している。このように当接した内壁体411と外壁体412との間に、環状空間S2が形成される。この環状空間S2は、通路空間S1の周りを囲むような形をなしている。つまり、環状空間S2の内側の空間内に、通路空間S1の一部が配置された形となっている。
【0046】
水供給部413は、外壁体412の外部より圧送されてくる水を環状空間S2に供給する部分である。水供給部413は、外壁体412の外部と環状空間S2とが繋がるように外壁体412を貫通する外壁孔部413aを備えている。本実施形態の場合、水供給部413の内周面には、ネジ溝(雌ネジ)が形成されており、そのネジ溝に螺着される形で、外周面にネジ山(雄ネジ)が形成されている筒型の第1接続パイプ415が取り付けられている。また、その第1接続パイプ415に対して、略L字型に折り曲げられた形の第2接続パイプ416が取り付けられている。第2接続パイプ416の内周面にも、ネジ溝(雌ネジ)が形成されており、そのネジ溝に螺着される形で、第1接続パイプ415が取り付けられている。そして、
図3及び
図4では、図示されていないものの、その第2接続パイプ415には、第2耐圧ホース34の下流側の端部34aが接続されている。第2耐圧ホース34を介して圧送されてきた水M3は、第2接続パイプ416及び第1接続パイプ415を通過すると共に、水供給部413を通過する形で、環状空間S2内に供給される。なお、第2接続パイプ416の途中には、必要に応じて、水3Mの流量を調節する調節弁(不図示)等が設けられてもよい。
【0047】
噴出部414は、環状空間S2内の水を、通路空間S1に向かって噴出させる部分である。噴出部414は、内壁体411を貫通する複数の内壁孔部414aを備えている。各内壁孔部414aは、環状空間S1と通路空間S1とが繋がるように内壁体411を貫通している。複数の噴出部414は、通路空間S1を囲むように円環状に並んだ形となっている。これらの噴出部414は、等間隔で並んでいる。本実施形態の場合、5個の噴出部414が等間隔で円環状に並んでいる。
【0048】
なお、本実施形態の合流装置41は、更に外壁体412の内部で、内壁体411を固定するための筒状の固定壁体417を備えている。固定壁体417は、全体的には、筒状をなした外壁体412の内部に挿入可能な大きさの筒状の部材である。固定壁体417は、その下流側の端部417aが、外壁体412の内側の空間に対して上流側から挿入される。挿入された固定壁体417の端部417aは、外壁体412の内周面から凸状に盛り上がった係止部412bとの間で、内壁体411を挟み付ける形となる。なお、外壁体412の係止部412bは、内壁体411の下流側の端部411aと当接する部分である。外壁体412と固定壁体417とは、図示されない締結部材(ネジ等)を利用して互いに固定されている。
【0049】
合流装置41の下流側(外壁体412の下流側)は、上述した第3耐圧ホース(合流供給路)51と接続され、上流側(固定壁体417の上流側)は、破砕・攪拌部42と接続される。なお、合流装置41を構成する内壁体411、外壁体412、固定壁体417等は、金属(合金を含む)部材を所定形状に加工したものからなる。
【0050】
このような合流装置41は、全体的には、管状(筒状)をなしており、その内部を、上流側から圧送されてきた造粒固化材M1及び骨材M2の混合物が通過する。その際、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物は、内壁体411の内側にある通路空間S1を通過する。また、合流装置41の内壁体411には、複数の噴出部414が設けられている。そのような噴出部414から通路空間S1に向けて水M3が噴出されると、その水M3は、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物と合流し、それらと混合される。水M3は、等間隔で円環状に配置された複数の噴出部414から、通路空間S1の中心(軸線方向)に向かって噴出される。そのため、水M3は、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物に対して、偏りなく混ざり易くなっている。
【0051】
このように接続手段43(合流装置41)によって合流した造粒固化材(セメント系造粒固化材)M1、骨材M2及び水M3は、第3耐圧ホース51を通過しながら、互いに混ざり合い、モルタル材料M10となって第3耐圧ホース51の下流側の端部に設けられた吹付ノズル61から、外部に吐出される。本実施形態の場合、吹付ノズル61から吐出されたモルタル材料M10は、法面(施工対象)1に設けられた所定の型枠の中に供給される。なお、接続手段43(合流装置41)は、例えば、吹付ノズル61から、10m〜20m手前の部分に設置される。
【0052】
以上のように、吹付装置10を利用した吹付方法は、固化材として、造粒固化材(セメント系造粒固化材)M1を使用することで、長距離・高揚程であっても、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を、第1耐圧ホース28を閉塞せずに、目的箇所まで圧送することができる。造粒固化材M1は、従来の粉状の固化材(セメント等)よりも、粒径が大きく、骨材M2と同程度の大きさに調製されている。また、造粒固化材M1には、油脂類が添加され、ホース内での摩擦抵抗が低減されている。前記吹付方法は、このような造粒固化材M1を使用することにより、第1耐圧ホース28を介して造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を均一に混合した状態で圧送することができる。
【0053】
また、前記吹付方法は、固化材として、造粒固化材を使用することで固化材(セメント)配合比を高めたモルタル材料等(例えば、高強度モルタル)を施工することが可能となる。従来の吹付工法では、セメントを水と混ぜてセメントミルクの状態で圧送するため、セメント配合比を高くすると、セメントミルクが高粘度化してホースを閉塞し、セメントミルクを圧送することができなかった。また、従来、セメントを砂等の骨材と混ぜた状態で、乾式で圧送する場合も、セメント配合比を高くすると、粉状のセメントが骨材と容易に分離し、その分離したセメントが骨材に付着した水分と反応して固化等するため、圧送することができなかった。
【0054】
また、前記吹付方法は、上記のように、第1耐圧ホース28の閉塞が抑制されるため、施工性のみならず、作業者(例えば、吹付ノズル61を操作するノズルマン、吹付機25を操作するガンマン等)の安全性も確保される。また、本実施形態の吹付方法は、均質な状態のモルタル材料等を、施工対象に供給することができるため、高品質の施工物を得ることができる。
【0055】
また、前記吹付方法は、例えば、通常の耐圧ゴムホースを、第1耐圧ホース28として使用した場合でも、最大で、揚程155m、距離560mの施工対象に対して、吹付を行うことができる。また、本実施形態の吹付方法は、水平距離500mの施工対象であれば、固化材(セメント)配合比の高い高強度モルタル用のモルタル材料等を用いても十分に吹付を行うことができる。
【0056】
ところで、上記吹付装置10(及び吹付方法)において、造粒固化材M1及び骨材M2を含む混合物(吹付原材料)と、水M3との混合比は、施工対象の種類等に応じて、適宜、設定される。つまり、造粒固化材M1及び骨材M2を含む混合物(吹付原材料)に加えられる水の量(割合)は、常に同じではなく、例えば、新しい施工対象(施工現場)毎に、前記混合物(吹付原材料)に対する水の供給量(加水量)を改めて設定し直す必要がある。
【0057】
従来の吹付方法では、造粒固化材M1(造粒セメント)を使用しない吹付方法であるため、所定量の造粒固化材M1等(吹付原材料)に対して、水の供給量を変更する必要性がなかった。しかしながら、上記吹付装置10を利用した吹付方法では、上述したように、施工対象の種類等によって、水の供給量を適宜、変更する必要がある。そのため、本実施形態の加水システム100では、作業者が設定部を操作することにより、インバータの出力周波数が設定され、その設定された出力周波数となるように、制御部がインバータの出力周波数を設定する。その結果、モータの回転軸32b1が、所定の速度で回転して、ポンプ32aの駆動軸32a1が、所定の速度で回転することで、ポンプ32aが所定の吐出量で、水M3を第2耐圧ホース(水圧送路)34を介して供給する。なお、作業者は、流量計33の値を確認しながら、適宜、送水装置32の設定部を操作する。
【0058】
第2耐圧ホース(水圧送路)34を通って運ばれた水M3は、上述したように、合流装置41が備える複数の噴出部414から、造粒固化材M1及び骨材M2を含む混合物(吹付原材料)に向かって噴出される。本実施形態の場合、複数(5個)の噴出部414が、通路空間S1を囲むように等間隔で円環状に並ぶ形で内壁体411に配設されている。そのため、通路空間S1を移動する吹付原材料(造粒固化材M1及び骨材M2を含む混合物)に対して、水M3が偏りなく、均等に加えられ易い。
【0059】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、合流装置の噴出部が、5個設けられていたが、本発明はこれに限られず、例えば、噴出部の数が4個以下であってもよいし、6個以上であってもよい。
【0060】
(2)上記実施形態では、送水装置が備えるポンプが、ピストンポンプであったが、本発明はこれに限られず、他の方式のポンプが利用されてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、施工対象が法面であったが、本発明の目的を損なわない限り、施工対象はこれに限られず、例えば、トンネルの壁面、煙突等の耐熱壁等の様々な物が施工対象であってもよい。また、施工対象は、人工物であってもよいし、自然に存在する物であってもよい。
【0062】
(4)造粒固化材の主原料としては、造粒化が可能であり、かつ水と接触して固化可能であれば、セメント系固化材に限られず、例えば、石灰系固化材やその他の固化材を用いることができる。なお、セメント固化材を主原料とする造粒固化材は、セメント系造粒固化材であり、石灰系固化材を主原料とする造粒固化材は、石灰系造粒固化材である。
【0063】
(5)上記実施形態では、第2耐圧ホース34を介して水M3のみを圧送したが、本発明の目的を損なわない限り、他の実施形態においては、必要に応じて、水M3の中に、用途に適した添加剤(例えば、防凍剤、急結剤等)等を溶解させてもよい。
【0064】
(6)上記実施形態では、第1耐圧ホース28を介して造粒セメントM1と骨材M2のみからなる混合物を圧送したが、本発明の目的を損なわない限り、他の実施形態においては、造粒セメントM1及び骨材M2の他に、用途に適した添加剤(例えば、減水剤や添加材としての補強短繊維等)等を混合することができる。
【0065】
(7)上記実施形態では、長距離・高揚程の施工対象の場合を例示したが、本発明はこれに限られず、例えば、近距離・低揚程の通常の施工対象(市場単価等の基準内)にも適用可能である。