(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-210625(P2019-210625A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】オフィスビル
(51)【国際特許分類】
E04H 1/06 20060101AFI20191115BHJP
【FI】
E04H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-105086(P2018-105086)
(22)【出願日】2018年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】米津 正臣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】倉田 悦男
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】篠島 隆司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将吾
(72)【発明者】
【氏名】天野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 光典
(57)【要約】
【課題】有効率の大幅な向上を図りつつ、人、会社間の新たなネットワークの創出をも大いに期待することができるオフィスビルを提供すること。
【解決手段】本発明に係るオフィスビルは、上下に連続しない一又は複数の特別階1と、該特別階1よりも多数の一般階2とを有し、前記特別階1に便所室3及びレストエリア4を集中配置した。また、前記一般階2及び前記特別階1の外周をバルコニー5で囲み、該バルコニー5に設備機器類6及び外部階段7を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に連続しない一又は複数の特別階と、該特別階よりも多数の一般階とを有し、
前記特別階に便所室及びレストエリアを集中配置したオフィスビル。
【請求項2】
前記一般階及び前記特別階の外周をバルコニーで囲み、
該バルコニーに設備機器類及び外部階段を設けた請求項1に記載のオフィスビル。
【請求項3】
前記バルコニーの一辺に沿って腰壁及び該腰壁の上側に連なる窓を設け、
該腰壁の上部から外側に向けて仕切り部を延ばし、該仕切り部の下方を、前記設備機器類を収容する収容スペースとした請求項2に記載のオフィスビル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自社ビル、テナントビル等のオフィスビルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来のテナントビルでは、基準階に便所室、レストエリアなどの共用ゾーンを持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記テナントビルでは、基準階に共用ゾーンを持つため、有効率(レンタブル比)の向上には限界がある。また、斯かる基準階のレイアウトでは、働き方が各階で完結し、人、会社間の新たなネットワークの創出が乏しいと考えられる。
【0004】
本発明は、有効率の大幅な向上を図りつつ、人、会社間の新たなネットワークの創出をも大いに期待することができるオフィスビルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るオフィスビルは、上下に連続しない一又は複数の特別階と、該特別階よりも多数の一般階とを有し、前記特別階に便所室及びレストエリアを集中配置した(請求項1)。
【0006】
上記オフィスビルにおいて、前記一般階及び前記特別階の外周をバルコニーで囲み、該バルコニーに設備機器類及び外部階段を設けてもよい(請求項2)。
【0007】
上記オフィスビルにおいて、前記バルコニーの一辺に沿って腰壁及び該腰壁の上側に連なる窓を設け、該腰壁の上部から外側に向けて仕切り部を延ばし、該仕切り部の下方を、前記設備機器類を収容する収容スペースとしてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0008】
本願発明では、有効率の大幅な向上を図りつつ、人、会社間の新たなネットワークの創出をも大いに期待することができるオフィスビルが得られる。
【0009】
すなわち、本願の各請求項に係る発明のオフィスビルでは、便所室及びレストエリアを集中配置した特別階を建物全体の共有ゾーンとすることにより、有効率(レンタブル比)の大幅な向上を図ることができる。
【0010】
また、一般階で働く労働者等は、便所室の利用のために特別階への移動を促されることになり、かつ、特別階にはレストエリアが存在するので、特別階にて人、会社間の新たなネットワークの創出を大いに期待することができる。しかも、この効果は、有効率の大幅な向上という上記効果に伴い、建物に入室する会社・人の増加と相俟って、一層高まることになる。
【0011】
さらに、便所室及びレストエリアを集中配置することにより、その清掃に掛かる労力の軽減も図れる。その上、建物全体の面積、人員を対象とした最適数量の便所器具を設置することを考えると、各階に便所室を設けるより、本発明のように特別階に便所室を集中させる方が、便所器具の個数調整を行い易く、その過不足を生じ難くすることもできる。
【0012】
請求項2に係る発明のオフィスビルでは、各階の外周をバルコニーで囲むことにより、外装メンテナンスを容易にし、かつ、このバルコニーに外部階段を設けることにより、避難通路スペースを確保することも可能となる。また、設備機器類をバルコニーに配置するとともに、各階完結の空調システムを構築し、室内に縦シャフト(パイプスペース、ドレンスペース)を無くし、最短距離あるいはそれに近い距離でのエネルギー供給を実現することにより、空調等のエネルギーロスを低減することが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明のオフィスビルでは、各階の窓から室内への日射は、腰壁及び上階のバルコニーによって制限されるので、熱負荷を軽減し、内部の設備効率を上げ、快適な執務空間を実現することが可能となる。しかも、腰壁の外側の空間を無駄にすることなく、設備機器類を収容するスペースとして有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の一実施の形態に係るオフィスビルの構成を概略的に示す長手方向及び短手方向の縦断面図である。
【
図2】(A)及び(B)は、前記オフィスビルの一般階及び特別階の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】(A)は前記一般階の構成を概略的に示す説明図、(B)は前記一般階の天井部の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1(A)及び(B)に示すオフィスビルは、階高を低減することにより、省部材化・省資源化を図れることはもちろん、上下階の移動が容易になるというメリットを活かし、特定の階にレストエリア等を集約したものである。
【0017】
すなわち、従来の一般的なオフィスビルの階高を4.2mとすれば、本例のオフィスビルの階高は3.15m、つまり、4分の3の階高となっている。
【0018】
そして、本例のオフィスビルは、上下に連続しない一又は複数の特別階1と、特別階1よりも多数の一般階2とを有し(
図1(A)参照)、特別階1に便所室3及びレストエリア4を集中配置したものである(
図1(B)参照)。
図1(A)及び(B)に示す例では、一つの特別階1のみが中間階(5階)として設けられている。なお、一般階2は、特別階1以外の階を指し、基準階と同一構成の汎用階2Aと、基準階とは異なる構成の限定階2Bとを含む。
【0019】
このような本例のオフィスビルでは、便所室3及びレストエリア4を集中配置した特別階1をビル全体の共有ゾーンとすることにより、有効率(レンタブル比)の大幅な向上を図ることができる。
【0020】
また、一般階2で働く労働者等は、便所室3の利用のために特別階1への移動を促されることになり、かつ、特別階1にはレストエリア4が存在するので、特別階1にて人、会社間の新たなネットワークの創出を大いに期待することができる。しかも、この効果は、有効率の大幅な向上という上記効果に伴い、ビルに入室する会社・人の増加と相俟って、一層高まることになる。
【0021】
さらに、便所室3及びレストエリア4を集中配置することにより、その清掃に掛かる労力の軽減も図れる。
【0022】
その上、ビル全体の面積、人員を対象とした最適数量の便所器具を設置することを考えると、各階に便所室3を設けるより、本例のように特別階1に便所室3を集中させる方が、便所器具の個数調整を行い易く、その過不足を生じ難くすることもできる。
【0023】
また、
図2(A)及び(B)に示すように、本例のオフィスビルは、一般階2及び特別階1の各階(1階を除く)の外周をバルコニー5で囲み、バルコニー5に設備機器類6及び外部階段7を設けてある。
【0024】
具体的には、本例のオフィスビルの平面視は横長の略矩形状を呈し、バルコニー5の二つの長辺に設備機器類6を配置し、かつ、その一方にのみ外部階段7を設けてある。
【0025】
ここで、設備機器類6としては、
図2(A)及び(B)、
図3(A)に示すように、パイプスペース等(PS,EPS)6a、分電盤6b、屋外機6c、除湿機能及び加湿機能付きの換気装置(デシカント外気処理機)6d等が挙げられる。
【0026】
このように各階の外周をバルコニー5で囲むことにより、外装メンテナンスを容易にし、かつ、このバルコニー5に外部階段7を設けることにより、避難通路スペースを確保することも可能となる。
【0027】
また、設備機器類6を各階のバルコニー5に配置するとともに、各階完結の空調システムを構築し、室内に縦シャフト(パイプスペース、ドレンスペース)を無くし、最短距離あるいはそれに近い距離でのエネルギー供給を実現することにより、空調等のエネルギーロスを低減することが可能となる。なお、バルコニー5の奥行を、建築基準法上の延べ床面積に算入されない2m以下とすることで、有効面積の最大化を図ることができる。
【0028】
さらに、
図3(A)に示すように、本例のオフィスビルでは、バルコニー5の一辺(バルコニー5の二つの長辺のうち外部階段7を設けない方)に沿って腰壁8及びその上側に連なる窓9を設け、腰壁8の上部から外側に向けて仕切り部10を延ばし、仕切り部10の下方を、換気装置6d(設備機器類6の一例)を収容する収容スペース11としている。
【0029】
斯かる本例のオフィスビルでは、各階の窓9から室内への日射は、腰壁8及び上階のバルコニー5によって制限されるので、熱負荷を軽減し、内部の設備効率を上げ、快適な執務空間を実現することが可能となる。しかも、腰壁8の外側の空間を無駄にすることなく、設備機器類6を収容するスペースとして有効に活用することができる。
【0030】
なお、
図3(A)の例では、腰壁8から上昇可能なライトシェルフを兼用するクライマー式のブラインド12を設け、また、窓9の上方には換気窓13を設けてある。
【0031】
そして、本例のオフィスビルでは、階高を低減するために以下の構成を採用している。
【0032】
図3(A)に示すように、窓9に対面するコア側の天井内に、空調機(例えばコアンダ効果を利用したインダクションユニット空調機)14を設置して、ジェット気流15による空調を行う。なお、本例では、室内の天井側に臨ませるスラブをボイドスラブ16で構成することで小梁を無くし、防煙垂壁兼用の構造大梁17は空調機14から窓9に向かって(バルコニー5の短手方向に平行に)延びているので、ジェット気流15が天井の凹凸に妨げられることなく効率よく流れることになる。
【0033】
なお、一般階2では、空調機14を廊下18の天井部に配置してある。一方、特別階1では、空調機14を廊下18の天井部に配置してもよいし、便所室3の天井部に配置してもよい。この配置により、空調機14に外気を直接入れて処理する方法も容易となる。
【0034】
また、換気は床下吹出しによって行うことも可能である。すなわち、
図3(A)に示すように、室内をOAフロア等の二重床としてあり、室19の下方に床下空間20を形成してある。この床下空間20は収容スペース11に連通しており、換気装置6dから供給される換気用外気21が床材22に設けられた例えば風量可変型の床吹き出し口(図示していない)から吹き出し可能となっている。
【0035】
以上の構成に伴い、室内の天井には空調ダクト配管を一切設けず、冷媒又は冷温水の配管23は天井スラブにはわせ、直天井を実現する。具体的には、
図3(B)に示すように、室内の天井に、構造大梁17と平行に延びる間仕切りガイドレール24を一定間隔おきに設け、例えば各間仕切りガイドレール24に配管23を保持させる。そして、一部の間仕切りガイドレール24に照明器具25を保持させる。
【0036】
なお、
図1(A)及び(B)において、26は免震ピットである。ただし、本発明のオフィスビルは、必ずしもこうした免震構造を有していなくても(非免震構造でも)よい。
【0037】
本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0038】
上記実施の形態では、階高の低減を図っているが、階高の低減は必須ではない。例えばエスカレーターを設けて上下階の移動を容易にし、階高が高くても上下階の移動が苦にならないようにする、といったことも考えられる。
【0039】
特別階1を最上階や最下階に設けてもよい。但し、特別階1へのアクセス性を考慮しつつ、特別階1の数をなるべく少なくするという観点に立てば、一般階2によって上下から挟まれる中間階の位置のみに特別階1を設けるのが好ましく、複数の特別階1を設ける場合は、その複数の特別階1の間に一以上の一般階2を設けるのが合理的である。
【0040】
上記実施の形態では、バルコニー5におけるエレベーターシャフト27の外周部分に設備機器類6を配置していないが、配置するようにしてもよい。
【0041】
そして、本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 特別階
2 一般階
2A 汎用階
2B 限定階
3 便所室
4 レストエリア
5 バルコニー
6 設備機器類
6a パイプスペース等
6b 分電盤
6c 屋外機
6d 換気装置
7 外部階段
8 腰壁
9 窓
10 仕切り部
11 収容スペース
12 ブラインド
13 換気窓
14 空調機
15 ジェット気流
16 ボイドスラブ
17 構造大梁
18 廊下
19 室
20 床下空間
21 換気用外気
22 床材
23 配管
24 間仕切りガイドレール
25 照明器具
26 免震ピット
27 エレベーターシャフト