【解決手段】本開示の圧縮機のターミナル構造は、圧縮機のケーシングに設けられたターミナル部と、ターミナル部に取り付けられたシート部材(140)とを備える。シート部材(140)は、ターミナル部のターミナルピンが挿通される穴部(43)と、穴部(43)を取り囲む環状領域(A2)に設けられた少なくとも1つの貫通孔(44)とを備えることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態に係る圧縮機のターミナル構造を添付図面を参照して説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る圧縮機1の上部の分解斜視図である。
図2は、本実施形態に係る圧縮機1の上部の縦断面図である。
【0017】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態の圧縮機1は、ケーシング10と、ケーシング10に設けられたターミナル部20と、ターミナルガード30と、シート部材40と、ターミナルカバー50とを備える。また、本実施形態の圧縮機1は、ケーシング10の内部に、冷媒を圧縮する圧縮機構部(図示せず)と、上記圧縮機構部を駆動するモータ(図示せず)とを備える。
【0018】
ケーシング10は、金属製の密閉容器である。本実施形態のケーシング10の上部には、ターミナル部20を取り付けるための取付部11と、ケーシング10の内部と外部とを連通する吐出管12とが設けられている。
図2に示すように、ケーシング10の取付部11には、ターミナル部20が嵌合可能なように構成された取付孔11aが設けられている。吐出管12は、圧縮機1のケーシング10の内部に設けられた上記圧縮機構部からの高温高圧の冷媒を、ケーシング10の外部へと吐出する。
【0019】
本実施形態のターミナル部20は、ハーメチックターミナル(気密端子)である。ターミナル部20は、ボディ21と、ボディ21に挿通された複数(本実施形態では3つ)のターミナルピン22とを備える。
【0020】
ボディ21は、金属からなる有底筒形状の部材である。具体的には、ボディ21は、円板形状の基部21aと、基部21aの周縁部から立設された筒部21bとを備える。また、ボディ21は、基部21aに設けられ、ターミナルピン22を挿通可能なように構成された複数(本実施形態では3つ)の挿通孔21cを備える。また、ボディ21は、ケーシング10の取付部11に設けられた取付孔11aに嵌合した状態で、筒部21bが取付孔11aの内周に溶接されることで固定される。
【0021】
ターミナルピン22は、金属のような導電性材料からなる。本実施形態のターミナルピン22は、ボディ21の挿通孔21cに挿入されて固定されている。
【0022】
ターミナルピン22の一方側の端部(
図2において下側の端部)は、圧縮機1のケーシング10の内部に位置しており、圧縮機1のケーシング10の内部に設けられたモータ(図示せず)に電気的に接続されている。
【0023】
ターミナルピン22の他方側の端部(
図2において上側の端部)は、ターミナルカバー50によって覆われた空間に位置している。また、ターミナルピン22の他方側の端部(
図2において上側の端部)には、端子板23が取り付けられている。ターミナルピン22は、圧縮機1の外部に設けられた三相交流電源(図示せず)に、端子板23と電線(図示せず)とを介して電気的に接続されている。
【0024】
ターミナルピン22の外周面と、ボディ21の挿通孔21cとの間には、ガラスからなる絶縁ガラス部24が設けられている。絶縁ガラス部24は、ボディ21にターミナルピン22を固定するとともに、ボディ21とターミナルピン22との間を電気的に絶縁する。
【0025】
ターミナルガード30は、金属からなる有底筒形状の部材であり、ターミナル部20を取り囲むように、ケーシング10の取付部11上に配置されている。具体的には、ターミナルガード30は、ケーシング10の取付部11上に載置される底面31と、底面31の周縁部から立設された側面32とを備える。
【0026】
ターミナルガード30の底面31には、
図2に示すように、ターミナル部20を挿通可能に構成された開口31aが設けられている。ターミナルガード30の側面32には、
図1に示すように、切欠き部32aが設けられている。ターミナルガード30に設けられた切欠き部32aには、耐熱ゴムからなる閉塞部材33が取り付けられる。
【0027】
閉塞部材33は、ターミナルピン22の他方側の端部(
図2において上側の端部)と三相交流電源(図示せず)とを電気的に接続する電線(図示せず)を挿通可能な孔部33aと、孔部33aに到達する切り込み33bとを備える。孔部33aは、後述するように、ターミナルガード30とシート部材40とターミナルカバー50とで画定される内部空間Sと外部とを連通する。
【0028】
図3は、本実施形態に係るシート部材40の斜視図である。
【0029】
図3を参照すると、シート部材40は、シリコーンゴムのような絶縁材料からなる有底筒形状の部材である。具体的には、シート部材40は、シート状である底壁41と、底壁41の周縁部から立設された側壁42とを備える。本実施形態のシート部材40は、ターミナル部20やターミナルガード30(
図1に示す)等の金属部分を覆うことで、ターミナル部20やターミナルガード30等の金属部分とターミナルピン22(
図1に示す)とが接触することを抑制して、ターミナル部20(
図1に示す)でのショートを抑制するための保護部材である。
【0030】
図2と
図3を併せて参照すると、本実施形態のシート部材40の底壁41は、ターミナル部20の上面と、ターミナルガード30の上面とに沿うように構成されている。具体的には、
図3に示すように、シート部材40の底壁41は、ターミナル部20のボディ21の基部21aに沿うように構成された上段41aと、ターミナルガード30の底面31に沿うように構成された下段41bとを有する。
【0031】
これにより、シート部材40の底壁41がターミナル部20と、ターミナルガード30とに沿って密着して配置されるため、シート部材40とターミナル部20及びターミナルガード30との間において隙間の発生を抑制できる。このため、シート部材40とターミナル部20及びターミナルガード30との間に水分が溜まることを抑制できるので、ターミナル部20やターミナルガード30が腐食することを抑制できる。
【0032】
また、
図3に示すように、シート部材40の底壁41は、複数(本実施形態では3つ)の穴部43と、穴部43の周囲に設けられた複数(本実施形態では8つ)の貫通孔44とを備える。3つの穴部43と、8つの貫通孔44とは、底壁41の上段41aに設けられている。
【0033】
ここで、シート部材40の底壁41の上段41aを、円形状の仮想的な境界線BLによって、3つの穴部43を含む円形領域A1と、円形領域A1を取り囲む環状領域A2とに画定しているものとする。言い換えれば、円形領域A1は、3つの穴部43を取り囲むように形成されている境界線BLによって取り囲まれた内側の領域であり、環状領域A2は、境界線BLの外側の領域である。
【0034】
本実施形態のシート部材40の穴部43は、前述したように、シート部材40の底壁41に画定された円形領域A1に設けられており、ターミナルピン22が挿通できるように構成されている。具体的には、シート部材40の3つの穴部43は、ターミナルピン22の端子板23が挿通可能な内径をそれぞれ有しており、3つのターミナルピン22のそれぞれに対応する位置に設けられている。シート部材40がターミナルガード30内に配置された状態において、シート部材40の穴部43には、ターミナルピン22が挿通されている。
【0035】
本実施形態のシート部材40に設けられた8つの円形の貫通孔44は、前述したように、穴部43が設けられた円形領域A1を取り囲む環状領域A2に設けられている。また、本実施形態のシート部材40の貫通孔44は、穴部43を取り囲むように境界線BLの外側に配置されている。また、
図2を併せて参照すると、シート部材40の貫通孔44の直径D1は、例えば、1mmであり、ターミナルピン22の外径D2よりも小さい。
【0036】
シート部材40の側壁42は、ターミナルガード30の側面32に沿うように構成されており、ターミナルガード30の側面32を内側から覆うように配置されている。また、シート部材40の側壁42には、切欠き部42aが設けられている。シート部材40の側壁42に設けられた切欠き部42aは、シート部材40がターミナルガード30の内部に配置された状態で、ターミナルガード30の切欠き部32a(
図1に示す)に対応する位置に設けられる。シート部材40の側壁42に設けられた切欠き部42aは、閉塞部材33と干渉しないように構成されている。
【0037】
図1を参照すると、ターミナルカバー50は、ターミナルガード30の外形と略同一の内形を有する有底筒形状である。具体的には、ターミナルカバー50は、天板部51と、天板部51の周縁部から下方に延在する側部52とを有する。ターミナルカバー50は、ターミナル部20、ターミナルガード30及びシート部材40を覆うように、ターミナルガード30に取り付けられる。ターミナルカバー50の側部52には、切欠き部52aが設けられており、ターミナルカバー50がターミナル部20、ターミナルガード30及びシート部材40を覆ったとき、切欠き部52aからは閉塞部材33が露出する。また、ターミナルカバー50は、ナイロン66のような合成樹脂からなる。ターミナルカバー50は、UL94−5VAの難燃グレードであれば好ましい。
【0038】
(水分の流れ)
以下、
図2を参照して、シート部材40とターミナルガード30との間に水分が侵入した場合の水分の流れを説明する。シート部材40の底壁41とターミナルガード30の底面31との間に侵入した水分は、シート部材40の底壁41に設けられた貫通孔44から、ターミナルガード30とシート部材40とターミナルカバー50とによって画定された内部空間Sに排出される。
【0039】
具体的には、シート部材40とターミナルガード30との間に侵入した水分は、毛細管現象によって、シート部材40の底壁41の下面に沿って移動する。そして、
図2に明瞭に示すように、シート部材40の環状領域A2に設けられた貫通孔44の近傍まで侵入した水分の一部は、貫通孔44に案内される(
図2中符号W参照)。すなわち、シート部材40の環状領域A2に設けられた貫通孔44は、貫通孔44の近傍まで侵入した水分の侵入経路を遮断する。貫通孔44に案内された水分は、その後、蒸発して貫通孔44から内部空間Sに排出され、内部空間Sと外部とを連通する閉塞部材33の孔部33a(
図1に示す)からターミナルカバー50の外部へと排出される。
【0040】
上記構成によれば、ターミナルピン22を挿通するシート部材40の穴部43を取り囲む環状領域A2に貫通孔44が設けられているため、シート部材40とターミナルガード30との間に侵入した水分の一部は、ターミナルピン22に到達する前に、環状領域A2に設けられた貫通孔44に案内され、その後、貫通孔44から蒸発して内部空間Sに排出される。これにより、外部から水分が侵入したとしても、ターミナルピン22に水分が到達することを抑制できるので、ターミナル部20で漏電又は絶縁不良が発生することを抑制できる。
【0041】
また、上記実施形態では、貫通孔44の内径D1が、ターミナルピン22の外径D2よりも小さいため、万が一、ターミナルピン22がボディ21から外れた場合であっても、ターミナルピン22が貫通孔44を介してターミナル部20のボディ21に接触することを抑制できる。これにより、ターミナル部20にショートが発生することを抑制できる。
【0042】
以下に説明する第2実施形態から第5実施形態では、第1実施形態と同一ないし同様の要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。さらに、第2実施形態から第4実施形態では、特に言及する点を除いて、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0043】
[第2実施形態]
図4は、本実施形態に係るシート部材140の
図3と同様の斜視図である。本実施形態に係る圧縮機1のターミナル構造は、シート部材を除いて、第1実施形態と同一の構成をしており、
図1及び
図2を援用する。
【0044】
図4を参照すると、本実施形態のシート部材140は、底壁41が多孔板状になるように、多数の貫通孔44が設けられている。すなわち、本実施形態の貫通孔44は、円形領域A1と底壁41の下段41bにも設けられている。
【0045】
なお、貫通孔44は、境界線BLの内側に設けられていなくてもよく、シート部材140の底壁41の下段41bに設けられていなくてもよい。
【0046】
本実施形態の圧縮機1のターミナル構造は、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0047】
[第3実施形態]
図5は、本実施形態に係るシート部材240の
図3と同様の斜視図である。また、
図6は、
図5におけるVI−VI線に沿った貫通孔及び溝部周辺を示す模式的な断面図である。本実施形態に係る圧縮機1のターミナル構造は、シート部材を除いて、第1実施形態と同一の構成をしており、
図1及び
図2を援用する。
【0048】
図5及び
図6を参照すると、本実施形態のシート部材240は、環状領域A2のターミナル部20のボディ21側(すなわち、圧縮機1のケーシング10(
図2に示す)側)に、環状の溝部245が設けられている。環状の溝部245は、3つの穴部43を取り囲むように設けられている。
図6に示すように、溝部245は、シート部材240の底壁41の底面が、ターミナル部20のボディ21とは反対側(すなわち、圧縮機1のケーシング10(
図2に示す)とは反対側)に窪んでいる。また、本実施形態の3つの貫通孔244は、溝部245に連なるように設けられている。
【0049】
溝部245は、円形に限定されず、楕円形や多角形などの他の形状を有していてもよい。また、溝部245は、複数設けられていてもよい。
【0050】
この構成によれば、環状領域A2に環状の溝部245が設けられているため、シート部材240とターミナルガード30との間から侵入した水分は、ターミナルピン22に到達する前に環状の溝部245に案内され、その後、貫通孔244から蒸発して内部空間Sに排出される。言い換えれば、環状領域A2に設けられた環状の溝部245によって、水分の侵入経路を分断できる。これにより、外部から水分が侵入したとしても、水分がターミナルピン22に到達することを抑制できるので、ターミナル部20で漏電又は絶縁不良が発生することを効果的に抑制できる。
【0051】
[第4実施形態]
図7は、本実施形態に係るシート部材340の
図6と同様の貫通孔、溝部及び畝部の周辺を示す模式的な断面図である。本実施形態に係る圧縮機1のターミナル構造は、シート部材を除いて、第1実施形態と同一の構成をしており、
図1及び
図2を援用する。
【0052】
図7を参照すると、本実施形態のシート部材340は、ターミナル部20のボディ21側(すなわち、圧縮機1のケーシング10(
図2に示す)側)に、環状の溝部345が設けられている。また、図示しないが、本実施形態の溝部345は、上記第3実施形態と同様に、環状で有り、環状領域A2に3つの穴部43を取り囲むように設けられている。
【0053】
また、本実施形態のシート部材340は、環状領域A2のターミナル部20のボディ21とは反対側(すなわち、圧縮機1のケーシング10(
図2に示す)とは反対側)に、溝部345に沿って形成された畝部346が設けられている。畝部346は、ターミナル部20のボディ21とは反対側(すなわち、圧縮機1のケーシング10(
図2に示す)とは反対側)にドーム状の断面形状を有するように突出している。本実施形態の3つの貫通孔344は、畝部346を貫通して、溝部345に連なる。
【0054】
この構成によれば、シート部材340が畝部346を有しているため、溝部345を形成した場合であっても、シート部材340の厚みを一定に保つことができる。すなわち、畝部346が設けられていない場合と比較して、シート部材340の厚みを厚くすることなく、溝部345の容積を大きくとることができる。このため、溝部345がより多くの水分を捕捉できるので、ターミナル部20で漏電又は絶縁不良が発生することを効果的に抑制できる。
【0055】
[第5実施形態]
図8は、本実施形態に係る圧縮機1のターミナル構造の
図2と同様の断面図である。本実施形態の圧縮機のターミナル構造は、側壁42(
図3に示す)を備えていない点、及びシート部材の形状が異なる点を除いて、上記第1実施形態の圧縮機のターミナル構造と同様の構成を有する。
【0056】
図8を参照すると、本実施形態の圧縮機1は、ターミナルガード30(
図2に示す)を備えておらず、圧縮機1のターミナルカバー50は、図示しないスタッドボルト及びナットで圧縮機1のケーシング10に直接取り付けられている。
【0057】
本実施形態のシート部材440は、圧縮機1のケーシング10とターミナルカバー50とに挟持されて、圧縮機1のケーシング10とターミナルカバー50との間を封止するガスケットである。本実施形態のシート部材440は、側壁42(
図3に示す)を備えていない点でのみ、第1実施形態のシート部材40(
図3に示す)と異なる。すなわち、シート部材440は、シリコーンゴムのような絶縁材料からなる略板状の部材である。具体的には、シート部材40は、シート状である底壁41を備え、シート部材440の底壁41は、ターミナルピン22が挿通できるように構成された穴部43と、穴部43の周囲に設けられた複数の貫通孔44とを備える。
【0058】
本実施形態の圧縮機のターミナル構造は、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0059】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0060】
例えば、上記第1〜第4実施形態では、4つ、8つ又は多数の貫通孔44,が設けられていたが、これに限定されず、貫通孔44は、環状領域A2に少なくとも1つあればよい。
【0061】
上記第1〜第5実施形態では、シート部材40,140,240,340,440の底壁41は、上段41aと下段41bとを有していたが、シート部材40の形状はこれに限定されない。例えば、シート部材40の底壁41は、圧縮機1のケーシング10、ターミナル部20、又はターミナルガード30の形状に沿うように、平面状に形成されていてもよく、ターミナル部20のみを覆うように構成されていてもよい。
【0062】
境界線BLは円形状に限定されず、穴部43を取り囲む形状であれば多角形のような他の形状であってもよい。すなわち、境界線BLは、穴部43の数、位置、及び大きさに応じて、形状及び大きさを適宜変更できる。