【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、環境省「CO2排出削減対策強化 誘導型技術開発・実証事業」 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を 受ける特許出願
【解決手段】冷凍サイクル装置1aの速度型圧縮機3aは、回転軸5と、回転軸5に固定される複数のインペラ6とを含む回転体7と、回転軸5を回転可能に支持する軸受8と、回転軸5の内部で、流入口10から圧縮機の吸入口へ回転軸方向に伸びている主流路11と、主流路11から分岐する分岐口から、冷媒蒸気がインペラ6表面を流れる冷媒蒸気流路の壁面12に形成された流出口13まで延びている噴射流路14と、翼車背面排水ライン18とを備え、噴射流路14は、インペラ6と回転軸5との接合面と交わり、翼車背面排水ライン18は接合面と速度型圧縮機3aの外部とに接続されている。
前記冷凍サイクル装置は、さらに、前記回転軸方向に対して前記インペラのハブ面の翼端よりも前記軸受け側に位置し、前記インペラの背面で、前記インペラの一部である後方ボス部と、
前記速度型圧縮機内部に配置され、前記接合面の一部と前記速度型圧縮機の外部とに接続された翼車背面排水ラインと、を備えた、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷凍サイクル装置は、二段の圧縮機を備え、一段目圧縮機から吐出された冷媒蒸気を二段目圧縮機が吸入する前に冷却するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された従来の冷凍サイクル装置を示すものである。
図5に示すように、遠心型圧縮機101とルーツ式圧縮機102とが直列に設けられている冷凍サイクル装置100が記載されている。遠心型圧縮機101が前段に設けられ、ルーツ式圧縮機102が後段に設けられている。
【0004】
冷凍サイクル装置100は、蒸発器103、循環ポンプ104、管路105、負荷106、管路107、凝縮器108、蒸気ダクト109、及び蒸気冷却器110をさらに備えている。蒸発器103は、水等の蒸発性液体を大気圧より低い減圧状態で沸騰蒸発させる。蒸発器103における沸騰蒸発により温度が低くなった水は、循環ポンプ104によって汲み出され管路105を介して負荷106に送られて冷房に供される。蒸発器103において発生した飽和状態の蒸気は先ず遠心型圧縮機101に吸引されて圧縮される。次いで、遠心型圧縮機101で圧縮された蒸気はルーツ式圧縮機102に吸引されて圧縮された後、凝縮器108に導かれる。
【0005】
蒸気冷却器110は、蒸気ダクト109のうち遠心型圧縮機101とルーツ式圧縮機102との間の部位に設けられている。蒸気冷却器110は、遠心型圧縮機101で圧縮された蒸気を過熱蒸気の状態から飽和蒸気の状態に冷却する、又は、飽和蒸気の状態に近づけるように冷却する。その冷却は、蒸気に対して水を直接噴霧すること、又は、蒸気を大気空気又は冷却水と間接的に熱交換させることによって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の構成では、ルーツ式圧縮機(二段目圧縮機)の吸入過熱度は低減できる一方で、遠心型圧縮機(一段目圧縮機)、及び、ルーツ式圧縮機(二段目圧縮機)の圧縮機過程で発生する熱は取り除くことができず、圧縮時のエンタルピ上昇による圧縮機動力を低減できなかった。そこで、冷媒液を圧縮機の高速回転する回転体内部の噴射流路で遠心加圧して冷媒蒸気流路に噴射する構成にすることで、冷媒液を噴霧するために必要な加圧ポンプや配管などの構成部品を増やすことなく、過熱状態の冷媒蒸気を連続的に冷却するため、圧縮時のエンタルピ上昇を抑制して圧縮機動力を低減することが可能となる。
【0008】
しかしながら、噴射流路は圧縮機の翼車と回転軸との接合面と交わるため、噴射流路を通水する冷媒液は接合面から翼車背面へ流れ込む。噴射流路の冷媒液は、圧縮機の高速回転で遠心加圧されており、噴射流路の最大圧力は、例えば1.4MPa程度である。それに対して、圧縮機の翼車背面の圧力は、冷凍サイクル装置の低段側圧力に近く、例えば1.7kPa程度であることから、噴射流路における高圧の冷媒液は、接合面を伝って、低圧の翼車背面へ流れ込み、液滴径が粗い冷媒液が冷媒蒸気空間へ流出する。それにより、多段圧縮構成の場合、二段目以降の翼車と接触してエロージョンが発生するという課題を有していた。
【0009】
本開示は、前記従来の課題を解決するもので、圧縮時のエンタルピ上昇による圧縮機動力を低減する一方で、噴射流路の冷媒液が接合面から翼車背面へ漏れることなく、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制する冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の冷凍サイクル装置は、
冷媒液を蒸発させ冷媒蒸気を発生させる蒸発器と、
前記蒸発器で発生した冷媒蒸気を吸入し、圧縮して吐出する速度型圧縮機と、
前記速度型圧縮機から吐出された前記冷媒蒸気を導入し、凝縮させて、前記冷媒液を生成する凝縮器と、を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記速度型圧縮機は、
回転軸と、
前記回転軸に固定される複数のインペラとを含む回転体と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸の内部で、前記回転軸の端部に形成された流入口から前記圧縮機の吸入口へ前記回転軸方向に伸びている主流路と、
前記主流路から分岐する分岐口から、前記冷媒蒸気が前記インペラ表面を流れる冷媒蒸気流路の壁面に形成された流出口まで延びている噴射流路と、を備え、
前記噴射流路は、前記インペラと前記回転軸との接合面と接触し、
前記軸受け側に配置された前記接合面の一部は前記速度型圧縮機の外部と連結している、冷凍サイクル装置である。
【0011】
上記態様により、冷媒液は回転軸の主流路から供給され、高速回転する回転体内部の噴射流路で遠心加圧して冷媒蒸気流路に噴射するため、過熱状態の冷媒蒸気を連続的に冷却されることとなる。この時、噴射流路を通水する冷媒液のうち、一段目の翼車と回転軸との接合面から漏れた冷媒液は、接合面を伝って速度型圧縮機の外部へ排水される。それにより、冷媒液は翼車背面へ流れ込まないため、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の冷凍サイクル装置は、噴射流路の冷媒液が接合面から翼車背面へ漏れることなく、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の第1の態様は、
冷媒液を蒸発させ冷媒蒸気を発生させる蒸発器と、
前記蒸発器で発生した冷媒蒸気を吸入し、圧縮して吐出する速度型圧縮機と、
前記速度型圧縮機から吐出された前記冷媒蒸気を導入し、凝縮させて、前記冷媒液を生成する凝縮器と、を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記速度型圧縮機は、
回転軸と、
前記回転軸に固定される複数のインペラとを含む回転体と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸の内部で、前記回転軸の端部に形成された流入口から前記圧縮機の吸入口へ前記回転軸方向に伸びている主流路と、
前記主流路から分岐する分岐口から、前記冷媒蒸気が前記インペラ表面を流れる冷媒蒸気流路の壁面に形成された流出口まで延びている噴射流路と、を備え、
前記噴射流路は、前記インペラと前記回転軸との接合面と接触し、
前記軸受け側に配置された前記接合面の一部は前記速度型圧縮機の外部と連結している、冷凍サイクル装置である。
【0015】
上記態様により、冷媒液は回転軸の主流路から供給され、高速回転する回転体内部の噴射流路で遠心加圧して冷媒蒸気流路に噴射するため、過熱状態の冷媒蒸気を連続的に冷却されることとなる。この時、噴射流路を通水する冷媒液のうち、一段目の翼車と回転軸との接合面から漏れた冷媒液は、接合面を伝って速度型圧縮機の外部へ排水される。それにより、冷媒液は翼車背面へ流れ込まないため、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制する。
【0016】
本開示の第2の態様は、特に第1の態様の冷凍サイクル装置において、
前記インペラの背面にあって蒸気入口側とは軸方向の反対側に位置する後方ボス部は、前記インペラの一部であり、且つ、前記インペラのハブ面の翼端よりも軸方向に対して蒸気出口側にあって、
前記速度型圧縮機内部には翼車背面排水ラインを有し、
前記翼車背面排水ラインは前記接合面と前記速度型圧縮機の外部とに接続された排水流路である。
【0017】
上記態様により、接合面から漏れた冷媒液は、翼車背面排水ラインを介して速度型圧縮機の外部へ排水されるため、特に高回転数で噴射流路からの冷媒液噴霧量が多い場合においても、冷媒液は翼車背面へ流れ込まない。それにより、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制する。
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本開示が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本開示の第1の実施の形態における冷凍サイクル装置の構成図を示すものである。
図1において、冷凍サイクル装置1aは、蒸発器2、圧縮機3、凝縮器4を備えている。
【0020】
冷凍サイクル装置1aには、同一種類の冷媒が充填されている。冷凍サイクル装置1aに充填される冷媒としては、HCFC(hydrochlorofluorocarbon)及びHFC(hydrofluorocarbon)等のフロン系冷媒、HFO−1234yf等の地球温暖化係数の低い冷媒、並びにCO2及び水等の自然冷媒を用いることができる。冷凍サイクル装置1aの冷媒は、望ましくは水である。水を用いた場合にはサイクル圧力比が大きくなり、冷媒蒸気の過熱度が過大となるため、圧縮過程のエンタルピ上昇を抑制することで大幅に圧縮機3がなすべき仕事を有利に低減できる。
【0021】
蒸発器2は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する容器によって構成されている。蒸発器2は、液相の冷媒を貯留するとともに、外部と熱交換することにより冷媒を内部で蒸発させる。蒸発器2に貯留された液相の冷媒の温度及び蒸発器2で発生した気相の冷媒の温度は、例えば5℃である。また、蒸発器2は、シェルチューブ熱交換器のように液相の冷媒と他の熱媒体とが間接的に熱交換する間接型の熱交換器であってもよいし、噴霧式や充填材式のような直接接触型の熱交換器であってもよい。
【0022】
圧縮機3は、蒸発器2で発生した気相の冷媒を吸入して圧縮する。圧縮機3は、例えば速度型圧縮機である。速度型圧縮機とは、冷媒に運動量を与え、冷媒の速度を減速することによって冷媒の圧力を上昇させる圧縮機である。速度型圧縮機(ターボ圧縮機)として、遠心圧縮機、斜流圧縮機、軸流圧縮機などが挙げられる。圧縮機3は、インバータによって駆動されるモータなど、回転数を変化させるための機構を備えていてもよい。圧縮機3の吐出口における冷媒の温度は、例えば100℃〜150℃である。
【0023】
凝縮器4は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する容器によって構成されている。凝縮器4は、液相の冷媒を貯留するとともに、外部と熱交換することにより冷媒蒸気を内部で凝縮させる。凝縮器4に導入される冷媒蒸気の温度は100℃〜150℃、凝縮器4で凝縮した気相の冷媒の温度は、例えば35℃である。また、凝縮器4は、シェルチューブ熱交換器のように液相の冷媒と他の熱媒体とが間接的に熱交換する間接型の熱交換器であってもよいし、噴霧式や充填材式のような直接接触型の熱交換器であってもよい。
【0024】
次に圧縮機3について詳細に説明する。
【0025】
図2は、速度型圧縮機3aの構成図を示すものである。
【0026】
図2において、速度型圧縮機3aは、回転軸5と複数のインペラ6を含む回転体7、軸受8、回転軸の表面9に形成された流入口10、主流路11、回転体7と冷媒蒸気流路の壁面12、流出口13、噴射流路14、を備えている。インペラ6の背面には後方ボス部16を有する。更に、速度型圧縮機3aの内部には、翼車背面排水ライン18が設けられている。
【0027】
回転体7は、複数のインペラ6と回転軸5を含んでおり、インペラ6と回転軸5は焼き嵌め、もしくは別部品のテンションボルトなどで固定されている。
【0028】
インペラ6は、回転軸5に接続され高速で回転する。回転数は例えば5000rpm〜100000rpmである。インペラ6は、例えばアルミやジュラルミン、鉄、セラミックなどで構成され、冷媒蒸気流路を流れる冷媒蒸気に回転方向の速度を与える。
【0029】
回転軸5は、インペラ6に接続され、高速で回転することでインペラ6を回転される。回転数は例えば5000rpm〜100000rpmである。回転軸5は、S45CHなどの強度の高い鉄系材料で構成される。
【0030】
軸受8は、回転軸5を回転可能に支持する。軸受8は玉軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよいが、冷凍サイクル装置1aの冷媒で潤滑する滑り軸受が望ましい。軸受8は直接または軸受箱(図示省略)を通して圧縮機のケーシングに接続される。
【0031】
流入口10は、回転軸の表面9に開口され、主流路11と連通している。
【0032】
回転軸の表面9は、回転軸5の端面としても、回転軸5の側面としてもよい。
【0033】
主流路11は、回転軸5の軸方向に延びていて、流入口10と噴射流路14とに連通している。主流路11は、回転軸5の軸心に形成することが望ましいが、軸心に近い半径位置に形成してもよい。主流路11の直径は、例えば0.017mであり、主流路11の軸方向長は、例えば0.09mである。主流路11は、噴射流路14へ冷媒液を供給する通路である。主流路11は、回転軸5の端部に形成された流入口10から圧縮機の吸入口へ回転軸方向に延びている。
【0034】
流出口13は、回転体7と冷媒蒸気流路の壁面12に設けられた開口部で、噴射流路14と連通している。冷媒蒸気流路の壁面12は、回転軸5の側面、インペラ6のハブ面、インペラ6のブレード面のうち、いずれの面であってもよい。
【0035】
インペラ6は、インペラ6のハブ面の翼端17よりも軸方向に対して軸受け側に設けられた後方ボス部16を有する。インペラ6は、回転軸5により回転するように、インペラ6と回転軸5とは嵌合する。インペラ6と回転軸5とが接触する面のことを接触面31と呼ぶ。
【0036】
後方ボス部16と回転軸5との接触面31は、インペラ6のハブ面の翼端17よりも軸方向に対して蒸気出口側に位置している。
【0037】
図2に示すように、噴射流路14は、主流路11から分岐する分岐口30から、冷媒蒸気がインペラ6の表面を流れる冷媒蒸気流路の壁面12に形成された流出口13まで延びている。噴射流路14が接触面31を横切るため、噴射流路14の冷媒液が接触面31から翼車背面へ漏れる。その結果、二段目以降の翼車のエロージョンが発生する。
【0038】
また、速度型圧縮機3aは多段圧縮機であり、噴射流路14は各段のインペラ6の内部に形成されている。
【0039】
翼車背面排水ライン18は、速度型圧縮機3aの外部に接触面31から漏れる冷媒液を排出する排水流路である。
図2に示すように、翼車背面排水ライン18は、例えば速度型圧縮機3aの内壁と接していて回転体7を支える支持フランジ19の内部に設けられており、接合面から回転軸5に対して鉛直下向き方向に延びている。
【0040】
噴射流路14を通水する冷媒液のうち接合面から漏れた冷媒液は、接合面と連結した翼車背面排水ライン18へ流れ込み、最終的に速度型圧縮機3aの外部へ送られる。その結果、翼車背面排水ライン18により、噴射流路の冷媒液が接合面から翼車背面へ漏れることなく、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制することが可能である。
【0041】
図3は、
図2のI―I線に沿った速度型圧縮機3aの断面図を示すものである。
【0042】
回転体7は、速度型圧縮機3aの内部で支持フランジ19によって支えられている。一段目圧縮機で圧縮された冷媒蒸気は、冷媒蒸気流路15を通って、二段目圧縮機へ送られる。
【0043】
以上のように構成された冷凍サイクル装置1a、及び速度型圧縮機3aについて、以下その動作、作用を説明する。
【0044】
冷凍サイクル装置1a内は、ある一定期間(例えば夜間)放置された場合、ほぼ室温に均温されている。まず初めに圧縮機3を起動すると、蒸発器2内の冷媒蒸気圧力が低下し、外気から吸熱することで冷媒蒸気が発生する。蒸発器2内で発生した冷媒蒸気は、圧縮機3に吸入され、昇圧し吐出される。圧縮機3から吐出された高圧の冷媒蒸気は、凝縮器4に導入され、外気に熱を放熱することで凝縮し冷媒液となる。
【0045】
冷媒蒸気を冷却する冷媒液は流入口10から供給され、回転軸5の主流路11を通じて噴射流路14に分岐する。冷媒液は、高速回転する回転体内部の噴射流路14で遠心加圧され、流出口13から冷媒蒸気流路に噴射されて、圧縮機3に吸入される冷媒蒸気と共に吸入される。定格条件として冷凍能力が880kWの場合、圧縮機過程で発生する熱を取り除くために必要な冷媒液の噴霧量は、例えば0.034kg/sであり、噴射流路14の口径を、例えば0.13mm、口数を16個とすると、噴射流路14では1.4MPa程度の圧力で流出口13から冷媒蒸気流路に噴射される。
【0046】
以上のように、本実施の形態においては、冷媒液は高速回転する回転体内部の噴射流路14で遠心加圧して冷媒蒸気流路に噴射するため、過熱状態の冷媒蒸気を連続的に冷却されることとなり、この時、噴射流路を通水する冷媒液のうち、一段目の翼車と回転軸との接合面から漏れた冷媒液は、翼車背面排水ライン18を介して速度型圧縮機3aの外部へ排水されるため、特に高回転数で噴射流路14からの冷媒液噴霧量が多い場合においても、冷媒液は翼車背面へ流れ込まない。その結果、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制することができる。
【0047】
(実施の形態2)
図4は、
図2に示す本開示の実施の形態1の速度型圧縮機3aの第一の変形例である。
図4に示すように、速度型圧縮機3bは、実施の形態1の変形例として、速度型圧縮機3a内部に、更に、軸受給水ライン20、軸受排水ライン21、軸受空間22、を備えるように構成されている。
【0048】
以上のように構成された速度型圧縮機3bについて、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
速度型圧縮機3bにおいて、軸受8は冷凍サイクル装置1aの冷媒液で潤滑する滑り軸受である。回転軸5の内部には軸受給水ライン20が設けられており、軸受給水ライン20は、回転軸5と軸受8との軸受空間22と主流路11とに接続されている。
【0050】
一方で、軸受排水ライン21は、軸受空間22と速度型圧縮機3bの外部とに接続されている。つまり、軸受給水ライン20と軸受排水ライン21は、軸受空間22を介して連結している。主流路11を通水する冷媒液の一部は、潤滑用流体として軸受給水ライン20から軸受空間22へ供給されており、最終的に軸受排水ライン21から速度型圧縮機3bの外部へ送られる。主流路11の圧力は、例えば0.1MPaであり、軸受空間22は、例えば1.5kPaである。
【0051】
後方ボス部16は、インペラ6のハブ面の翼端17よりも軸方向に対して蒸気出口側に設けられており、更に、回転軸5とインペラ6との接合面のうち、最も蒸気出口側にある接合面の一端は、軸受空間22と連結している。つまり、噴射流路14を通水する冷媒液のうち、回転軸5とインペラ6との接合面から漏れた冷媒液は、接合面と連結した軸受空間22へ流れ込み、軸受8の潤滑用流体として作用する。接合面から漏れた冷媒液と、潤滑用流体として軸受給水ライン20から供給された冷媒液は、軸受空間22で混ざり合い、最終的に軸受排水ライン21から速度型圧縮機3bの外部へ送られる。つまり、軸受排水ライン21は、速度型圧縮機3aにおける翼車背面排水ライン18の役割を担っている。この時、接合面と噴射流路14との交点における圧力は、例えば0.5MPa程度であり、軸受空間22は、例えば1.5kPa程度である。また、翼車背面の圧力は、例えば1.7kPa程度であり、仮に軸受空間22と翼車背面との間に微小な空間が存在した場合においても、軸受空間22の冷媒液は翼車背面へ流れ込まない。
【0052】
以上のように、本実施の形態においては、接合面から漏れた冷媒液は軸受空間22へ流れ込み、軸受8の潤滑用流体として作用した後、軸受排水ライン21から速度型圧縮機3bの外部へ排水される。それにより、翼車背面排水ライン18を増設することなく、二段目以降の翼車のエロージョンを抑制する。