【課題】光デバイスのウエハ状態での試験を可能とし、かつ動作時の出力信号の劣化を抑制することのできる光デバイス、これを用いた光モジュール、及び光デバイスの試験方法を提供する。
【解決手段】基板105に光送信回路と光受信回路が集積された光デバイス10Aは、光源からの出射光を光デバイスに入力する入射ポートまたはその近傍で基板の端面に対して斜めに延びる第1の斜め導波路109−1と、光受信回路と光学的に接続される受信ポートまたはその近傍で基板の端面に対して斜めに延びる第2の斜め導波路109−2と、光送信回路と光学的に接続される送信ポートまたはその近傍で基板の端面に対して斜めに延びる第3の斜め導波路109−3、の少なくとも1つを有する。
前記第1の斜め導波路と、前記第2の斜め導波路と、前記第3の斜め導波路の少なくともひとつは、前記基板の前記端面と直交する方向に延びる光導波路と光学的に結合して方向性結合器を形成していることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態では、ウエハ状態で光集積回路チップの特性試験を可能にし、かつ実際の動作時に出力信号の劣化が抑制される光デバイス構成を提供する。
【0013】
ダイシング後の光集積回路チップで、送受信の経路上の反射点と試験用のグレーティングカプラの間で光の共振が起きると、この共振がノイズになって、送信出力光または受信光から得られる電気出力信号が劣化する。
【0014】
望ましくない光の共振を防止するために、
(1)試験用のグレーティングカプラ(または光結合器)をウエハ上のチップ領域以外の領域に形成する、または
(2)チップ領域に形成されたグレーティングカプラを、そのチップ領域以外のチップ領域の光特性試験に用いる、
ことが考えられる。
【0015】
構成(1)の場合、ウエハが各チップにダイシングされた後は、試験用のグレーティングカプラはチップ上に残らない。構成(2)の場合、ダイシング後にチップ上に試験用のグレーティングカプラが残るが、このグレーティングカプラはチップ上の送受信経路からアイソレートされている。したがって、動作時に送受信の経路に存在する反射点と試験用のグレーティングカプラとの間で共振が生じることを防止できる。
【0016】
さらに、試験用のグレーティングカプラをチップ上の光回路に結合する光導波路を、チップ端面に対して斜めに延びるように形成する。送信経路または受信経路上の反射点と試験用のグレーティングカプラとの間で共振がない場合でも、試験に用いた光導波路がチップ端面に対して垂直に延びていると、端面での反射が起こり得る。そこで、試験用のグレーティングカプラに接続される光導波路を、チップ端面に対して斜めに配置する。
【0017】
これにより、動作時の好ましくない光の共振を最小にして、送信側の光出力信号及び/または受信側の電気出力信号の劣化を抑制する。
【0018】
以下で、図面を参照して具体的な構成を説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、ウエハ100Aに形成された複数のチップ領域101の模式図である。第1実施形態では、テスト光を入出力するグレーティングカプラ(図中、「GC」と表記)をチップ領域101の外部に設ける。
【0020】
ウエハ100Aは、チップ領域101と、チップ領域101に隣接して設けられるテスト光入出力領域102を有する。テスト光入出力領域102は、半導体ウエハに通常設けられているスクライブラインの一部を拡張したものであってもよい。
【0021】
ウエハ100A上に、複数のチップ領域101が配置されている。チップ領域101とチップ領域101の間、及びチップ領域101とテスト光入出力領域102の間は、スクライブライン103で区画されている。ウエハ100Aは、最終的にはスクライブライン103に沿って切断され、多数の光デバイス10Aが得られる。
【0022】
各チップ領域101には、光送信回路Txと光受信回路Rxがモノリシックに形成されている。ウエハ100Aの状態で、各チップ領域101の光学性能を試験するために、テスト光入出力領域102に、グレーティングカプラ121、122、及び123が形成されている。
【0023】
グレーティングカプラ121、122、及び123は、スクライブライン103に対して斜めに延びる斜め導波路109によって、チップ領域101の光送信回路Txと光受信回路Rxと光学的に接続されている。斜め導波路109−1〜109−3(適宜、「斜め導波路109」と総称する)の端部は、斜めのままスクライブライン103を超えて、チップ領域101の端部領域に入り、チップ領域101内の光導波路に光学的に結合される。斜め導波路109の端部は、チップ領域101に形成された光導波路との間で方向性結合器106を形成する。
【0024】
ウエハの状態で試験を行う場合、チップ領域101に形成された図示しない電極パッドにプローブをあてて電気信号を入出力するとともに、ウエハ100Aの上面方向から光ファイバで光を入出力する。グレーティングカプラ121〜123は、テスト光の入出力のためのインタフェースとして機能し、ウエハ100Aの表面から光ファイバの端面をグレーティングカプラ121〜123に近づけて、光を入出射する。
【0025】
図1の例では、グレーティングカプラ121は、光源からの光(レーザ光など)を光送信回路Txに入力するためのインタフェースである。入力されたレーザ光の一部は、光受信回路Rxでの検波にも用いられる。グレーティングカプラ122は、光受信回路Rxに信号光を入力して受信特性をモニタするためのインタフェースである。グレーティングカプラ123は、光送信回路Txから出力される光信号の特性をモニタするためのインタフェースである。
【0026】
各チップ領域101の試験が終了すると、ウエハ100Aはスクライブライン103に沿って切断(ダイシング)され、各チップに分離される。
【0027】
図2は、ダイシング後に得られる光デバイス10Aの模式図である。光デバイス10Aは、たとえば互いに直交する2つの偏波成分と、互いに直交する2つの位相成分を用いて4つの論理値を表わすDP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying:偏波多重直交位相偏移)方式の光デバイスである。光デバイス10Aは、基板105上に集積された光送信回路Txと光受信回路Rxを有し、光トランシーバのフロントエンド(光電気変換)回路として機能する。
【0028】
光デバイス10Aは、ウエハ試験時にレーザ光の入力に用いられた方向性結合器106−1と、テスト信号光の入力に用いられた方向性結合器106−2と、テスト信号光の出力に用いられた方向性結合器106−3を有する。
【0029】
方向性結合器106−1では、性能試験に用いられた斜め導波路109−1の一部が、光導波路108に近接して残っている。方向性結合器106−2では、性能試験に用いられた斜め導波路109-2の一部が、光導波路115に近接して残っている。方向性結合器106−3では、性能試験に用いられた斜め導波路109−3の一部が、光導波路116に近接して残っている。
【0030】
動作時には、光源からのレーザ光が光導波路108に入射する。光導波路108を伝搬したレーザ光は、光カプラ11によって分岐され、一方は光送信回路Txの変調部21に供給され、他方は光受信回路Rxで検波用の局発光(LO)として用いられる。
【0031】
光導波路108上の光カプラ11、あるいは光受信回路Rxの90°ハイブリッド光ミキサ13X、13Yは反射点となり得るが、反射光がレーザ光の入射側に戻ったとしても反射光の少なくとも一部は斜め導波路109−1に結合して、反射が低減される。したがって、光送信回路Txと光受信回路Rxに供給されるレーザ光へのノイズの混入が抑制される。
【0032】
光受信回路Rxでは、光導波路115から入力された光信号は、偏光ビームスプリッタ(PBS)15で2つの光成分に分離される。一方の光成分の偏光方向が、偏波ローテータ(PR)14によって90°回転された後に、90°ハイブリッド光ミキサ13Xと13Yにそれぞれ入力される。90°ハイブリッド光ミキサ13Xは、一方の偏波成分(X偏波成分)を局発光LOと干渉させて、位相が一致する干渉成分と、位相が90°異なる干渉成分を出力する。90°ハイブリッド光ミキサ13Yは、他方の偏波成分(Y偏波成分)を局発光LOと干渉させて、位相が一致する干渉成分と、位相が90°異なる干渉成分を出力する。これらの出力は、光検出器12a(PDXI)、12b(PDXQ)、12c(PDYI)、及び12d(PDYQ)で検出される。光検出器12a〜12dで得られた光電流は、4対の信号配線41a〜41dから出力される。
【0033】
光導波路115上の光ビームスプリッタ15は反射点となり得るが、反射光が受信光の入力端に戻ったとしても、反射光の少なくとも一部は斜め導波路109−2に結合して反射が低減され、不要な共振が抑制される。
【0034】
光送信回路Txでは、変調部21でレーザ光を変調して変調光信号を生成する。変調部21は、光変調器21a(XI)、21b(XQ)、21c(YI)、及び21d(YQ)を有する。レーザ光は光導波路111を通って光変調器21a〜21dに入力される。光変調器21a〜21dには、信号配線31a〜31dから高速の駆動信号が入力されてレーザ光を変調する。光変調器21aと21bの出力光の間にπ/2の位相差が与えられて合波され、偏光ビームコンバイナ(PBC)25に供給される。光変調器21dと21dの出力の間にπ/2の位相差が与えられ、偏波ローテータ(PR)24によって偏光方向が90°回転された後に偏光ビームコンバイナ25に供給される。
【0035】
偏光ビームコンバイナ25で合波された光は、送信光出力部106−3から光ファイバ等の外部光配線に出力される。出力前(たとえば偏波合成前)に、各変調光信号を適切なレベルに制御するために、基板105上に可変光減衰器(VOA)22X、22Yと、出力レベル制御用のモニタフォトダイオード(mPD)23a、23bが集積されていてもよい。
【0036】
図3は、基板105の入出力側の端部の拡大図である。レーザ光入射ポートP
LDの方向性結合器106−1は、光導波路108と光結合する斜め導波路109−1を有する。斜め導波路109−1は、ウエハ状態での性能試験に用いられた導波路の端部であり、基板105のエッジに対して斜めに延びる斜め部分109aと、光導波路108と平行に延びる平行部分109bを有する。
【0037】
方向性結合器106−1は、レーザ光入力経路上の反射点からの反射光に対しても方向性結合器として働く。方向性結合器106−1は、試験時にグレーティングカプラ121からのレーザ光を光導波路108に高効率で結合させ、動作時に反射戻り光を斜め導波路109−1に分岐させるように、相互作用長、間隔などが適切に設計されている。レーザ光入力経路で反射光が生じた場合でも、反射光の少なくとも一部を斜め導波路109−1に結合させて、好ましくない共振を低減する。
【0038】
光信号の受信ポートPinに設けられた方向性結合器106−2は、光導波路115と光結合する斜め導波路109−2を有する。斜め導波路109−2もウエハ状態での性能試験に用いられた導波路の端部であり、基板105のエッジに対して斜めに延びる斜め部分109aと、光導波路115と平行に延びる平行部分109bを有する。
【0039】
方向性結合器106−2は、受信経路上の反射点からの反射光に対しても方向性結合器として働く。ウエハ試験時にテスト信号光が斜め導波路109−2から光導波路115に高効率で結合し、動作時に反射戻り光が斜め導波路109−2に分岐するように、相互作用長、間隔などが適切に設計されている。受信経路で反射光が生じた場合でも、反射光の少なくとも一部を斜め導波路109−2に結合させて、好ましくない共振を低減することができる。
【0040】
光信号を送信する送信ポートPoutに設けられた方向性結合器106−3は、光導波路116と光結合する斜め導波路109−3を有する。斜め導波路109−3はウエハ状態での性能試験に用いられた導波路の端部であり、基板105のエッジに対して斜めに延びる斜め部分109aと、光導波路115と平行に延びる平行部分109bを有する。光導波路116の端面と送信経路上の反射点との間で反射が起きた場合であっても、反射戻り光の少なくとも一部を斜め導波路109−3に結合させて、好ましくない共振を低減することができる。送信側の場合、送信光信号も一部斜め導波路109−3に結合して損失が生じ得るが、ノイズの低減により送信光信号の品質が維持される。
【0041】
このように、第1実施形態では、ウエハ100A上のチップ領域101の外に形成されたグレーティングカプラ121〜123とチップ領域101の光回路を接続する導波路を斜めに配置することで、光デバイス10Aの動作時に光の共振によるノイズの発生を抑制することができる。
【0042】
図4は、第1実施形態の変形例として、ウエハ100Bへのグレーティングカプラ121〜123の別の配置例を示す。
図4では、複数のグレーティングカプラ121〜123がテスト光入出力領域102に整列して配置されている。
【0043】
図1の配置構成では、たとえばチップ領域101の光受信回路Rxを検査する場合、テスト光入出力領域102の長さ方向の両側から2本の光ファイバを対向させて、グレーティングカプラ121とグレーティングカプラ122に光を入射することになる。この場合、各光ファイバの光軸は、グレーティングカプラ121と122の中心に対して、個別に調整される。
【0044】
図4の変形例では、グレーティングカプラ121〜123をアレイ状に並べることで、ウエハ試験時の光ファイバの光軸調整が容易になる。たとえば、ファイバアレイを用いて一括して光軸を調整して、複数のグレーティングカプラに光を入出力できる。また、グレーティングカプラの配置スペースを小さくできるので、ウエハ100Bでのテスト光入出力領域102の幅を低減することができる。
【0045】
ウエハ100Bのダイシング後に得られる各光デバイス10Bの構成は、
図2の光デバイス10Aと同じである。ウエハ試験に用いた斜め導波路109−1〜109−3の端部は、方向性結合器106−1〜106−3の一部として光デバイス10Bに残り、反射戻り光による好ましくない共振を低減する。
【0046】
<第2実施形態>
図5は、ウエハ100Cに形成された複数のチップ領域101の模式図である。第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。第2実施形態では、方向性結合器106を用いずに、斜め導波路119−1〜119−3により、テスト光を光デバイス10Cに入出力する。試験時に、斜め導波路119−1〜119−3は、テスト光入出力領域のグレーティングカプラ121〜123を、直接チップ領域101の光回路に接続する。
【0047】
グレーティングカプラ121から入力されるテスト用のレーザ光は、斜め導波路119−1によって光送信回路Txと光受信回路Rxに供給される。グレーティングカプラ122から入力されるテスト用の信号光は、斜め導波路119−2によって光受信回路Rxに入力される。光送信回路Txで生成されたテスト用の送信信号は、グレーティングカプラ123から出力される。
【0048】
図5の構成は、方向性結合器で発生し得る損失を低減できる。また、グレーティングカプラ121〜123とチップ領域101内の光回路を、斜め導波路119−1〜119−3で接続するので、ダイシング後の動作時に、反射戻り光によるノイズを抑制できる。
【0049】
図6は、ウエハ100Cのダイシング後に得られる光デバイス10Cの模式図である。光デバイス10Cは、レーザ光入射ポートP
LDから基板エッジに対して斜めに延びる斜め導波路119−1と、受信ポートPinから基板エッジに対して斜めに延びる斜め導波路119−2と、送信ポートPoutから基板エッジに対して斜めに延びる斜め導波路119−3を有する。
【0050】
動作時に、レーザ光入射ポートP
LDからレーザ光が斜め導波路119−1に入射する。斜め導波路119−1を伝搬したレーザ光は、光カプラ11によって分岐され、一方は光送信回路Txの変調部21に供給され、他方は光受信回路Rxで検波用の局発光(LO)として用いられる。
【0051】
光導波路108上の光カプラ11、あるいは光受信回路Rxの90°ハイブリッド光ミキサ13X及び13Yは反射点となり得るが、反射光がレーザ光入射ポートP
LDに戻ったとしても、基板105の端面での反射が低減される。光送信回路Txと光受信回路Rxに供給されるレーザ光へのノイズの混入が抑制され、光信号の劣化が防止される。
【0052】
受信ポートPinから斜め導波路119−2に入力された受信光信号は、光受信回路Rxで4つの論理値を表わす光電流に変換され、4対の信号配線41a〜41dから出力される。受信経路上に反射点からの反射戻り光があったとしても、斜め導波路119−2は基板105のエッジに対して斜めに延びているので、端面での反射戻り光の再反射が低減され、望ましくない共振の発生が抑制される。
【0053】
光送信回路Txで生成された送信光は、斜め導波路119−3を通って送信ポートPoutに出力される。斜め導波路119−3は基板105のエッジに対して斜めに延びているので、端面での反射が低減され、出射端面と送信経路上の反射点との間の共振を抑制することができる。
【0054】
さらに、方向性結合器を用いていないので、光損失を防止することができる。
【0055】
<第3実施形態>
図7は、ウエハ100Dに形成された複数のチップ領域101の模式図である。第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0056】
第1実施形態と第2実施形態では、チップ領域101に隣接するテスト光入出力領域102にグレーティングカプラ121〜123を設けていた。この場合、1枚のウエハから切り出されるチップの数が減少する可能性がある。
【0057】
第3実施形態では、ウエハ上にテスト光入出力領域を設けずに、チップ領域内にグレーティングカプラを配置し、このグレーティングカプラを用いて、隣接するチップ領域の光学性能を試験する。
【0058】
チップ領域101−1に形成されたグレーティングカプラ121〜123は、スクライブライン103に対して斜めに延びる斜め導波路129によって、隣接するチップ領域101−2の光送信回路Txと光受信回路Rxに光学的に接続されている。斜め導波路129は、ダイシング後にグレーティングカプラ121〜123とともにチップ領域101−1に残る第1部分129aと、チップ領域101−2の入出力ポートに光学的に接続されることになる第2部分129bを有する。
【0059】
グレーティングカプラ121〜123はチップ領域101−1の端部に配置され、チップ領域101−1の回路構成を妨げず、かつ、隣接するチップ領域101−1への距離を短くすることができる。グレーティングカプラ121〜123は等間隔に配置されていてもよい。等間隔で配置することで、ウエハ試験の際に、光ファイバアレイを用いて一度の光軸調整で試験を行うことができる。
【0060】
図8は、ウエハ100Dのダイシング後に得られる光デバイス10Dの模式図である。光デバイス10Dは、
図6の光デバイス10Cと同様に、レーザ光入射ポートP
LDから基板エッジに対して斜めに延びる斜め導波路129b−1と、受信ポートPinから基板エッジに対して斜めに延びる斜め導波路129b−2と、送信ポートPoutから基板エッジに対して斜めに延びる斜め導波路129b−3を有する。
【0061】
光デバイス10Dは、さらに、基板105上に等間隔で並べられたグレーティングカプラ121〜123と、クレーティングカプラ121〜123からそれぞれ基板105のエッジに対して斜めに延びる斜め導波路の第1部分129a−1、129a―2、129a―3を有する。グレーティングカプラ121〜123は、光送信回路Tx及び光受信回路Rxと光学的に隔離されている。
【0062】
第3実施形態の構成は、性能試験で用いるグレーティングカプラを配置する領域を、チップ領域と別に設ける必要がなく、ウエハ当たりのチップ数が減ることを防止できる。グレーティングカプラを等間隔で配置することで、ウエハ試験時に光ファイバアレイを用いて一括して光軸調整を行うことができる。
【0063】
<第4実施形態>
図9は、ウエハ100Eに形成された複数のチップ領域101の模式図である。第1実施形態〜第3実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0064】
光デバイス10の光回路の構成によっては、送受信用のポートPin、Poutやレーザ光入射ポートP
LDに光を入出力できない場合があり得る。その場合は、
図9のように、斜め導波路を有する2入力2出力(2×2)光カプラ125を用いて、光送信回路Txと光受信回路Rxにテスト光を入力する。
【0065】
チップ領域101−2のためのテスト光は、チップ領域101−1に設けられたグレーティングカプラ124に光ファイバの端面を所定の角度で対向させて入力される。
図9の例では、チップ領域101−1に形成されたグレーティングカプラ124は、斜め導波路139によってスクライブライン103を超えて、隣接するチップ領域101−2の2×2光カプラ125に接続されている。2×2光カプラ125の一方の出力は光送信回路Txに光学的に接続され、他方の出力は光受信回路Rxに光学的に接続されている。
【0066】
図10は、ウエハ100Eのダイシングの後に得られる光デバイス10Eの模式図である。光デバイス10Eは、レーザ光入射ポートP
LDに光学的に接続される2×2光カプラ125を有する。2×2光カプラ125の一方の入力は、レーザ入射ポートP
LDに接続され、他方の入力は導波路139aとして、基板105の端面まで斜めに延びて終端している。導波路139aはウエハ100Eの状態での斜め導波路139の一部である。
【0067】
光デバイス10Eはまた、2×2光カプラ125と反対側の端部に、グレーティングカプラ124と、このグレーティングカプラ124から基板105の端面に対して斜めに延びる導波路139bを有する。導波路139bは、ウエハ100Eの状態での斜め導波路139の一部である。
【0068】
ウエハ100Eの状態での試験時には、隣接するチップ領域のグレーティングカプラ124から2×2光カプラ125に光が入力され、2×2光カプラ125で分岐された一方の光は、光導波路111から光変調器21a〜21dに入射する。入射光は、信号配線31a〜31dから入力されるテスト用の駆動信号で変調されて光変調器21a〜21dから出力される。光送信回路Txの特性は、モニタPD23a及び23bから出力される電流信号を検知することで検査される。
【0069】
光デバイス10Eの動作時には、レーザ光入射ポートP
LDから2×2光カプラ125に光が入力される。2×2光カプラ125で分岐された一方の光は光送信回路Txで変調を受け、変調光信号が送信ポートPoutから出力される。2×2光カプラ125で分岐された他方の光は、局発光(LO)として光受信回路Rxに入力されて、受信ポートPinから入力される信号光を検波する。
【0070】
動作時に、2×光カプラ125、あるいは光受信回路Rxの90°ハイブリッド光ミキサ13Xと13Yは、光源からの入射光に対する反射点となり得るが、反射戻り光が生じても、導波路139aの斜め配置により基板105の端面での再反射が抑制される。これにより、動作時に光の共振によるノイズの発生を抑制することができる。また、ウエハ状態で入出力ポートへの光の入出力が困難な場合でも、ウエハ状態で光デバイスの性能試験を行うことができる。
【0071】
<光デバイスの適用例>
図11は、実施形態の光デバイス10A〜10D(適宜、「光デバイス10」と総称する)の適用例を示す図である。実施形態の光デバイス10を、電気回路チップとともに一つのパッケージ内に収容して光電気変換用の光送受信パッケージ50としてもよい。
【0072】
光送受信パッケージ50は、パッケージ51内に、光集積回路チップである光デバイス10と、ドライバ回路52Tと、トランスインピーダンス増幅(TIA)回路52Rと、中継基板53T及び53R4を有する。中継基板53Tを介してドライバ回路52Tにデータ信号が入力されると、ドライバ回路52Tはデータ信号に基づいて高速の駆動信号を生成し、光デバイス10の光送信回路Txに入力する。光送信回路Txの変調部21は、光デバイス10に入力されたレーザ光(LD)を高速の駆動信号で変調し、送信ポートPoutに出力する。
【0073】
光デバイス10の受信ポートPinに入力された光信号は光受信回路Rxで検出され、光電流(一例として差動電流)がTIA回路52Rに入力される。TIA回路52Rは、光電流を電圧信号に変換し、差動電圧信号が中継基板53Rから出力される。
【0074】
光送受信パッケージ50で用いられる光デバイス10は、ウエハ状態で送受信の特性が検査されており、かつ入出力ポートと送受信経路上の反射点との間の光の共振が抑制されており、小型で高性能の光モジュールが実現される。
【0075】
図12は、
図11の光送受信パッケージ50を用いた光トランシーバモジュール60の模式図である。光トランシーバモジュール60は、光送受信パッケージ50、光源ユニット(LD)63、及び信号処理回路(DSP)62を有し、これらの部品はパッケージ61内に収容されている。
【0076】
光トランシーバモジュール60は、送受信フロントエンドである光電気変換部で好ましくない共振とそれに起因するノイズが抑制されており、良好な送受信特性を有する。
【0077】
上述した実施形態は一例であり、種々の変形が可能である。光デバイス10の変調部21の構成は、DP−QPSK方式の光変調だけではなく、16QAM方式やQPSK方式などで複数の光導波路で複数の信号パスまたはチャネルが形成される構成にも適用可能である。実施形態の光トランシーバモジュール60は、データセンター内のサーバ間等の近距離の光通信に好適に適用されるが、データセンター間の光通信や、メトロネットワークの光通信網にも適用可能である。
【0078】
ウエハ状態でテスト光を入出力する光結合器はグレーティングカプラに限定されず、ウエハ面に対して垂直または斜め方向に光を入出力できる任意の光結合器を用いることができる。たとえば、周期的な屈折率変化を有するフォトニック結晶構造や、ミラー等を用いてもよい。
【0079】
第4実施形態(
図9及び
図10)で、入力光を光送信回路Txと光受信回路Rxに分岐させる2×2光カプラ125に方向性結合器を用いてもよい。
【0080】
第1〜第3実施形態を組み合わせた構成も可能である。たとえばウエハ状態で、レーザ光入射ポートと受信ポートの少なくとも一方は方向性結合器によって隣接領域のグレーティングカプラに接続され、送信ポートは斜め導波路によって直接隣接領域のグレーティングカプラに接続されていてもよい。また、
図10の構成で、グレーティングカプラ124に加えて、隣接チップの受信ポートPinに結合可能なグレーティングカプラを配置するスペースがある場合は、チップ上にもうひとつグレーティングカプラを配置してもよい。ダイシング後は、いずれのグレーティングカプラも光学的に光回路から隔離される。