【解決手段】車載装置10は、車両1の前方に位置する前方車両を検知する他車検知部23と、車両1が前方車両の側方を通行可能か否かを判定する通行可否判定部26と、通行可否判定部26によって通行可能と判定した場合に、車両1の運転支援機能の要否の入力を受け付ける入力受付部27と、入力受付部27により車両1の運転支援機能を必要とするとの入力を受け付けた場合に、運転支援機能に関する情報を出力する走行支援制御部22と、を備える。
前記他車状態判定部は、前記前方車両の制動灯の点灯状態、前記前方車両の方向指示器の点灯状態、及び、前記前方車両の車速の変化のいずれか1以上に基づき判定を行う、ことを特徴とする請求項3記載の走行支援装置。
前記通行可否判定部は、前記車両と前記前方車両との距離が設定された基準以下である場合に、前記車両が前記前方車両の側方を通行可能でないと判定する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の走行支援装置。
前記通行可否判定部は、前記前方車両が位置する道路が、前記車両の進行方向の車線を複数有する道路である場合、前記車両が前記前方車両の側方を通行可能か否かの判定を行わない、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の走行支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施形態に係る車両1の制御系の構成を示す図である。
車両1は、車両1を制御する車載装置10を備える。車載装置10は、走行支援ECU(Electronic Control Unit)20、記憶部40、表示部61、及び入力部62を含む。走行支援ECU20、或いは走行支援ECUを備える車載装置10は、車両1の走行を支援する走行支援装置として機能する。また、車両1は自車両に相当する。また、車載装置10は、車両制御ECU50を含むものとしてもよいが、本実施形態では、車載装置10が車両制御ECU50とバス63を介して接続され、相互に通信を実行する構成とする。
【0016】
車両制御ECU50は、車両1の運転操作の少なくとも一部を実行する。車両制御ECUは、例えば、車両制御部ということができる。
車両1は、運転者による運転操作に応じて車両1を動作させるステアリング51、アクセル52、及び、ブレーキ53を備える。ステアリング51は、ステアリングホイール(図示略)の操作に応じて車両1を操舵する機構である。アクセル52は、アクセルペダル(図示略)の操作に応じて車両1の加速を制御する機構である。ブレーキ53は、ブレーキペダル(図示略)の操作に応じて車両1の減速を制御する機構である。ステアリング51は、車両制御ECU50の制御により動作するアクチュエータ(図示略)を備え、車両制御ECU50は、ステアリング51のアクチュエータを駆動することにより、運転者に変わってステアリング51を動作させる。すなわち、車両制御ECU50は、少なくとも車両1の操舵に関する自動運転を実行可能であり、運転者に代わってステアリング51を動作させる。また、アクセル52、及び、ブレーキ53がアクチュエータ(図示略)を備え、車両制御ECU50が、運転者に代わってアクセル52及びブレーキ53を動作させることが可能な構成であってもよい。
【0017】
車両1は、カメラ11、ソナー12、レーダ装置13、車速センサ14、BCM(Body Control Module)15、舵角センサ18、及びGPS(Global Positioning System)17が搭載される。これらの各部は、バス63を介して、走行支援ECU20及び車両制御ECU50に接続される。バス63は、CAN(Controller Area Network)により各部を相互に通信可能に接続する通信路である。また、車両に搭載される各センサの一部は、LIN(Local Interconnect Network)バスを介してバス63に接続されてもよい。
【0018】
走行支援ECU20は、CPU(Central Processing Unit)21と、CPU21が実行するプログラムやCPU21により処理されるデータを格納するメモリ30とを備えるコンピュータ装置である。また、走行支援ECU20は、CPU21の制御によりCAN通信を実行するCAN通信部31を備える。走行支援ECU20は、CAN通信部31により、車両制御ECU50に対して制御情報を出力することにより、車両制御ECU50の動作を制御する。例えば、走行支援ECU20は、車両制御ECU50による運転制御を実行させる。
【0019】
CPU21は、メモリ30が記憶するプログラムを実行することにより、車載装置10を制御する。走行支援ECU20は、ソフトウェアとハードウェアの協働により走行支援制御部22、他車検知部23、他車状態判定部24、通行幅検出部25、通行可否判定部26、入力受付部27、及び報知制御部28の各機能部を実現する。これらの機能部については後述する。
【0020】
メモリ30は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM等の不揮発性記憶部、及び、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶部の少なくともいずれかを含み、メモリ30が複数の記憶装置により構成されてもよい。
【0021】
走行支援ECU20は、CPU21によりプログラムを実行する構成に限定されず、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラムされたハードウェアで構成されてもよい。
【0022】
カメラ11は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ11には、例えば、180度以上の画角を有する超広角レンズが装着され、比較的広範囲の画像を撮像することができる。カメラ11が生成した撮像画像データは、カメラ11を識別する識別情報や、撮像時刻等の付加情報が付加され、走行支援ECU20に出力され、メモリ30に一時的に記憶される。カメラ11は、単眼カメラであってもよいし、複数のカメラ11がステレオカメラを構成してもよい。
【0023】
ソナー12は、車両1に近接している物体を検知する超音波センサである。
レーダ装置13は、車両1の前方に位置する障害物を検知し、検知した障害物と車両1との距離を検知する。レーダ装置13は、例えば、周波数30−300GHzのミリ波を用いるミリ波レーダ装置や、周波数20GHz−30GHzの準ミリ波を用いる準ミリ波レーダ装置である。また、レーザ光を利用する、レーザレーダ装置やLiDaR(Light Detection and Ranging)装置であってもよい。レーダ装置13により検知される障害物は、建造物、道路設備、他の車両等である。また、レーダ装置13は、少なくとも、車両1の前方の障害物を検知できればよく、車両1の側方や後方に位置する障害物を検知する構成であってもよい。
【0024】
なお、カメラ11がステレオカメラで構成される場合、カメラ11の撮像画像に基づき、カメラ11の撮像範囲内の被写体から車両1までの距離を求めることが可能である。この場合、車両1は、レーダ装置13を備えない構成とすることができる。また、この場合、走行支援ECU20及びその他の各部は、レーダ装置13が検知する距離の代わりに、カメラ11の撮像画像から求めた被写体までの距離を取得する。
【0025】
車速センサ14は、車両1の速度を検出し、バス63により出力する。
アクセル開度センサ15は、アクセル52のスロットル開度を検出し、バス63により出力する。ブレーキセンサ16は、ブレーキ53の動作状態を検出し、検出結果をバス63により出力する。また、ブレーキセンサ16は、ブレーキ53を操作するブレーキペダルの踏力を検出してもよい。
【0026】
BCM17は、車両1に設置される灯火類(図示略)やドアロックアクチュエータ(図示略)等の負荷に対する供給電力を制御する。BCM17は、例えば、前照灯、方向指示器、制動灯等の灯火類への電力を制御し、これらの点灯状態を含む、車両1の動作状態をバス63により出力する。ここで、制動灯はいわゆるブレーキランプであり、方向指示器はいわゆるウインカーである。
舵角センサ18は、ステアリング51の舵角、または、ステアリング51を操作するステアリングホイールの舵角を検出し、検出結果をバス63により出力する。
GPS19は、測位を実行し、車両1の現在位置を出力する。GPS19は、車両1の位置を検出する位置検出部として機能する。
【0027】
記憶部40は、データを不揮発的に記憶する装置であり、自車両データ41、及び地図データ42を記憶する。地図データ42は地図情報ということもでき、地図データ42を記憶する記憶部40は、地図情報記憶部ということができる。
記憶部40は複数の記憶装置を含んでもよく、例えば、地図データ42を、自車両データ41とは異なる記憶装置に記憶する構成であってもよい。
【0028】
自車両データ41は、車両1の諸元に関する情報を含む。例えば、自車両データ41は、車両1の車幅、前後長、旋回半径、制動能力等の情報を含む。また、自車両データ41は、車両1におけるカメラ11、ソナー12、レーダ装置13の設置位置等の情報を含んでもよい。
地図データ42は、道路、及び、道路に隣接する施設に関する情報を含むデータである。
【0029】
表示部61は、液晶表示パネル等で構成される表示画面100(
図10)を備え、走行支援ECU20の制御に従って、表示画面100に画像や文字を表示する。
入力部62は、運転者の入力操作を受け付ける操作部であり、例えば、表示画面100に重ねて配置されるタッチセンサー(図示略)や、スイッチを備える。入力部62は、操作部に対する操作を検出し、検出結果を走行支援ECU20に出力する。
【0030】
車両制御ECU50は、車速センサ14、アクセル開度センサ15、ブレーキセンサ16、舵角センサ18の検出結果を取得する。車両制御ECU50は、取得した検出結果に基づき、少なくともステアリング51の操作を含む車両1の走行制御を行う。
【0031】
走行支援ECU20は、走行支援制御部22により、車両制御ECU50による運転支援を制御する。
本実施形態において、走行支援制御部22は、車両1が狭路を通行する際に、車両制御ECU50による運転支援を行うことを運転者に案内する。走行支援制御部22は、運転者が、運転支援を求める入力を行った場合に、車両制御ECU50に対してCAN通信部31により制御情報を出力し、車両制御ECU50に走行制御を実行させる。ここで、走行支援制御部22は、制御部として機能する。
特に、本実施形態では、車両1が狭路を通行する場面として、車両1の前方に位置する他の車両(以下、前方車両という)が停車している状態、或いは停車しようとする状態で、車両1が前方車両の側方を通過する場面を想定する。すなわち、走行支援制御部22は、前方車両を検知し、検知した前方車両が停車しているか停車しようとしていることを判定し、運転支援を行うことを運転者に案内する。
【0032】
上記の機能を実現するため、走行支援制御部22は、走行支援ECU20が備える他車検知部23、他車状態判定部24、通行幅検出部25、通行可否判定部26、入力受付部27、及び、報知制御部28を制御する。
【0033】
他車検知部23は、カメラ11の撮像画像データ、及び、レーダ装置13の検知結果に基づき、前方車両を検知する。以下に説明する走行支援ECU20の各部は、他車検知部23が検知した前方車両について処理を行う。
【0034】
他車状態判定部24は、前方車両が停車している状態または停車しようとしている状態であるか、否かを判定する。他車状態判定部24は、例えば、カメラ11の撮像画像データやレーダ装置13が検知した前方車両までの距離に基づいて、前方車両の車速を算出し、算出した車速をもとに判定を行う。また、他車状態判定部24は、カメラ11の撮像画像データにより、前方車両の制動灯の点灯状態、及び/または前方車両の方向指示器の点灯状態を検出し、検出した点灯状態に基づき、判定を行うものであってもよい。この場合、他車状態判定部24は、カメラ11が撮像した動画像のデータを取得し、或いは、カメラ11による撮像時刻が異なる複数の静止画像のデータを取得し、前方車両の制動灯及び/または方向指示器の点灯状態の経時的な変化を検出してもよい。他車状態判定部24は、例えば、前方車両の速度が低速であり、方向指示器が点滅している場合、前方車両が右折や左折のために停車する可能性がある。また、制動灯が継続して点灯しており、方向指示器が点滅している場合、前方車両が右折や左折のために停車する可能性がある。制動灯が所定時間以上継続して点灯している場合、前方車両が停車する可能性がある。これらの場合、他車状態判定部24は、前方車両が停車しようとしていると判定してもよい。
【0035】
また、他車状態判定部24は、GPS19により測位された車両1の位置と、地図データ42とに基づき、前方車両が停車している状態または停車しようとしている状態であるか否かを判定してもよい。例えば、車両1の位置を基準とする所定範囲内に、車両が進入可能な施設、店舗、その他の領域が存在する場合、この領域に進入するために、前方車両が右折や左折を行う可能性がある。車両が進入可能な領域は、例えば、駐車場や、駐車場を有する商業施設等である。この場合、前方車両が右折や左折のために停車する可能性があるので、他車状態判定部24は、前方車両が停車しようとしている状態であると判定してもよい。また、他車状態判定部24は、カメラ11の撮像画像データに基づき前方車両の車種を判別してもよい。例えば、前方車両が輸送用車両である場合には、車両1から所定範囲内に物流施設が存在している状況で、前方車両が右折や左折を行う可能性があると判定してもよい。
【0036】
他車状態判定部24は、前方車両が右折しようとする状態と、左折しようとする状態とを区別してもよい。例えば、道路上を前方車両が左側通行する状況において、前方車両が右折しようとする場合、前方車両は右折のために停車する可能性が高い。一方、前方車両が左折しようとする場合、前方車両が左折のために停車する可能性は、高いとは限らない。前方車両が右側通行をする状況では、上記と逆のことがいえる。従って、他車状態判定部24は、前方車両が右折しようとする状態と、左折しようとする状態とを区別して、停車しようとする状態であるか否かを判定してもよい。
【0037】
通行幅検出部25は、前方車両を避けて車両1が通行する通行路を検出し、通行路の幅、すなわち通行幅を検出する。例えば、通行幅検出部25は、前方車両及び車両1が左側通行かつ対面通行する道路上にあり、前方車両が右折しようとして停車中である場合、前方車両の左側のスペースが通行路として検出する。通行幅検出部25は、例えば、カメラ11の撮像画像データに基づき、通行幅を検出する。
【0038】
通行幅検出部25は、他車検知部23が検知した障害物が車両である場合に限り、通行幅を検出する処理を行ってもよいし、他車検知部23が検知した障害物が車両でない場合にも通行幅を検出する処理を行う構成であってもよい。
【0039】
通行可否判定部26は、前方車両を避けて車両1が通行可能か否かを判定する。例えば、通行可否判定部26は、通行幅検出部25が検出した通行路を、車両1が通行可能か否かを判定する。通行可否判定部26の判定は、通行幅検出部25が検出した通行幅と、車両1の車幅とを比較することで判定を行ってもよい。
【0040】
通行可否判定部26は、車両1と前方車両との距離に基づき、通行路を車両1が通行可能か否かを判定してもよい。この場合、通行可否判定部26は、前方車両から車両1までの距離が設定された基準以下である場合に、車両1が前方車両の側方を通行可能でないと判定する。例えば、車両1が前方車両を避けるために、車両1の方向転換が必要な場合、前方車両から車両1までの距離が不足していると、車両1の方向転換を完了できないことがある。そこで、通行可否判定部26は、車両1と前方車両との距離が、車両1の方向転換を行うための十分な距離であるか否かを判定してもよい。
【0041】
ところで、前方車両と車両1が、片側2車線以上の車線を有する道路上にある場合、停車している前方車両を避けるためには、車両1は前方車両とは異なる車線を走行すればよい。つまり、前方車両を避ける通行路は、狭路とはいえない。片側2車線以上の車線を有する道路は、車両1の進行方向の車線を複数有する道路といえる。従って、通行可否判定部26は、前方車両が位置する道路が、車両1の進行方向の車線を複数有する道路である場合、車両1が通行可能か否かの判定を行わない。
【0042】
入力受付部27は、運転者に対し、車両制御ECU50による運転支援を行うか否かの案内を行い、この案内に対応する運転者の入力を受け付ける。例えば、入力受付部27は、運転支援を行うことを案内するメッセージを、表示部61により表示させる。入力受付部27は、入力部62に対する操作を検出することにより、入力を受け付ける。
【0043】
報知制御部28は、運転者に対する報知を行う報知部として機能する。本実施形態では、報知制御部28は、案内や通知を目的とする文字や画像を表示部61に表示させることにより、運転者に対して報知を行う。例えば、報知制御部28は、通行可否判定部26により通行不可と判定した場合に、通行不可であることを報知する。また、例えば、報知制御部28は、車両制御ECU50による運転支援が可能であることを案内する報知を行う。また、例えば、報知制御部28は、前方車両が存在するために、前方の通行路が狭路であることを報知する。
【0044】
図2〜
図7は、車載装置10の動作を示すフローチャートである。
図2は、車載装置10の全体的な動作を示す。
図3、
図4、
図5、
図6及び
図7は、
図2に示した各動作を詳細に示す。以下、これらの図を参照して、車載装置10の動作を説明する。
【0045】
走行支援制御部22は、車速センサ14の検出値を取得して、車両1が走行中であるか否かを判定する(ステップS1)。ここで、走行中とは、車速センサ14が検出した車両1の車速が0km/hを超える場合、或いは、予め設定された閾値以上である場合を指す。
車両1が走行中でない場合(ステップS1;NO)、走行支援制御部22は待機する。車両1が走行中である場合(ステップS1;YES)、走行支援制御部22の制御により、他車検知部23が、カメラ11の撮像画像データ及びレーダ装置13の検知結果を取得して、車両1の前方の車両を検知する処理を行う(ステップS2)。
【0046】
図8は、カメラ11により撮像された撮像画像70の例を示す図である。
カメラ11は、少なくとも車両1の前方を含む撮像範囲を撮像するように車両1に設置される。このため、撮像画像70には、車両1の前方に位置する車両300が写る。また、撮像画像70には、車両300及び車両1が走行する道路350の縁石351や中央線352が写る。
【0047】
他車検知部23は、撮像画像70を解析することにより、車両300を前方車両として検知する。例えば、他車検知部23は、レーダ装置13の検知結果から車両1の前方の障害物までの距離を取得し、撮像画像70において、レーダ装置13が検知した障害物と同程度の距離の被写体を検出する。他車検知部23は、撮像画像70から検出した被写体の画像について、パターンマッチング等の処理により、車両か否かを判定し、車両であると判定した場合に、この被写体を前方車両として検知する。また、他車検知部23は、レーダ装置13の検知結果を用いず、撮像画像70を解析することにより前方車両を検知してもよい。
【0048】
図2に戻り、走行支援制御部22は、他車検知部23により前方車両が検知されたか否かを判別する(ステップS3)。前方車両が検知されなかった場合(ステップS3;NO)、走行支援制御部22はステップS1に戻る。また、前方車両が検知された場合(ステップS3;YES)、走行支援制御部22は、他車検知部23により検知された前方車両が走行中の道路の車線構成が、片側2車線以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、対向車線の車線構成を問わず、前方車両が位置する車線が2車線以上であるか否かを判定する。走行支援制御部22は、2車線以上の道路であると判定した場合(ステップS4;YES)、ステップS1に戻る。
【0049】
また、片側2車線以上の道路でないと判定した場合(ステップS4;NO)、他車状態判定部24が、走行支援制御部22の制御に従って、他車状態判定処理を実行する(ステップS5)。ステップS5の他車状態判定処理は、ステップS2で検知された前方車両が停車中または停車の可能性があるか否かを判定する処理である。他車状態判定処理については
図3を参照して詳細に説明する。
【0050】
走行支援制御部22は、他車状態判定処理(ステップS5)の判定結果を取得し、前方車両が停車中または停車の可能性があるか否かを判定する(ステップS6)。前方車両が停車中または停車の可能性がないと判定された場合(ステップS6;NO)、走行支援制御部22はステップS1に戻る。前方車両が停車中または停車の可能性があると判定された場合(ステップS6;YES)、通行幅検出部25が、走行支援制御部22の制御に従って、前方車両の側方の通行路の幅を検出する処理を行う(ステップS7)。ステップS7の処理については
図4を参照して詳細に説明する。
【0051】
例えば、
図8に示した撮像画像70には、車両300の制動灯321、左方向指示器322、及び、右方向指示器323が写っている。制動灯321は、車両300の後部の左右両側部に配置され、車両300の後部の左側には左方向指示器322が配置され、右側には右方向指示器323が配置される。他車状態判定部24は、他車状態判定処理において、カメラ11により撮像される複数の撮像画像70を比較することで、制動灯321、左方向指示器322及び右方向指示器323の点灯状態の経時変化を判定できる。
【0052】
また、通行幅検出部25は、道路350の左端である縁石351と、車両300との間の通行路310を検出し、通行路310の幅を算出する。撮像画像70では、道路350の端に縁石351が設置された例を示すが、例えば、道路350の端が歩道、路側帯、停車帯である場合や、車道外側線が設けられている場合がある。これらの場合であっても、通行幅検出部25が道路350の端を検出可能であることが好ましい。また、
図8の撮像画像70は、左側通行の道路を走行する車両300を撮像した例である。例えば、車両300及び車両1が右側通行の道路を走行する場合、通行幅検出部25は、道路350の右端と車両300との間の通行路を検出する。
【0053】
続いて、通行可否判定部26が、走行支援制御部22の制御に従い、通行幅検出部25により検出された通行幅に基づいて、通行可否判定処理を実行する(ステップS8)。ステップS8で、通行可否判定部26は、前方車両の側方を車両1が通行できるか否かを判定する。ステップS8の動作については
図5を参照して詳細に説明する。
【0054】
走行支援制御部22は、通行可否判定処理(ステップS8)の判定結果を取得し、車両1が通行可能か否かを判定する(ステップS9)。車両1が通行不可と判定された場合(ステップS9;NO)、報知制御部28が、走行支援制御部22の制御に従って、通行不可であることの報知を行う(ステップS10)。
【0055】
図10は、車載装置10の表示例を示す図である。
図10の例では、表示部61が備える表示画面100に、地図により車両1の経路案内を行う経路案内画像110が表示される。経路案内画像110には、車両1の位置を示す自車位置表示111、及び、車両1の経路を示す経路表示112等が含まれる。
【0056】
報知制御部28は、ステップS10(
図2)において、表示部61を制御して、案内メッセージ130を表示させる。案内メッセージ130は、車両1の前方に車両があること、前方車両の側方を通過できないことを文字により案内する。
【0057】
図2に戻り、通行可否判定処理により車両1が通行可能と判定された場合(ステップS9;YES)、走行支援制御部22の制御により、通行可否判定部26が、支援要否判定処理を実行する(ステップS11)。支援要否判定処理は、車両制御ECU50による運転支援を運転者に案内するか否かを判定する処理である。支援要否判定処理については
図6及び
図7を参照して詳細に説明する。
【0058】
走行支援制御部22は、支援要否判定処理(ステップS11)の判定結果を取得し、運転者に、運転支援の案内を行うか否かを判定する(ステップS12)。運転支援の案内を行わないと判定された場合(ステップS12;NO)、走行支援制御部22の制御に従って、報知制御部28が表示部61を制御し、運転者に対して注意喚起の通知を行う(ステップS13)。
【0059】
図11は、車載装置10の表示例を示す図である。
図11の例では、
図10と同様、表示画面100に経路案内画像110が表示される。表示画面100には、報知制御部28の制御により、案内メッセージ131が表示されている。案内メッセージ131は、文字によって車両1の前方の通行路が狭路であることを運転者に通知し、注意を促す。
【0060】
図2に戻り、運転支援の案内を行うと判定された場合(ステップS12;YES)、走行支援制御部22の制御により、報知制御部28が、運転支援の案内を行う(ステップS14)。
【0061】
図12は、車載装置10の表示例を示す図である。
図12の例では、
図10と同様、表示画面100に経路案内画像110が表示される。表示画面100には、報知制御部28の制御により、案内メッセージ132が表示されている。案内メッセージ132は、文字により、車両制御ECU50による運転支援機能を実行するか否かの入力を求める。案内メッセージ132では、車両制御ECU50の運転支援機能を自動運転と表示している。案内メッセージ132により、運転者は、狭路の運転操作に不安を感じる場合や、疲労の軽減を求める場合に、自動運転の実行を指示できる。また、案内メッセージ132は、通行幅検出部25が検出した通行路の幅と、車両1の車幅とを運転者に通知する。このため、運転者は、前方の狭路を通過する運転の困難性を知ることができ、運転支援機能を指示するか否かを適切に判断できる。
【0062】
ステップS14で運転支援の案内が実行された後、入力受付部27が、入力部62の操作による入力を受け付ける(ステップS15)。走行支援制御部22は、ステップS15で入力受付部27が受け付けた入力に基づき、運転支援を行うか否かを判定する(ステップS16)。運転支援を行わないと判定した場合(ステップS16;NO)、走行支援制御部22はステップS13に移行し、報知制御部28により、注意喚起の通知を実行させる(ステップS13)。
【0063】
また、運転支援を行うと判定した場合(ステップS16;YES)、走行支援制御部22の制御に従って、車両制御ECU50が、ステアリング51の操作を含む運転支援機能を実行する(ステップS17)。すなわち、走行支援制御部22は、車両制御ECU50に対して、運転支援機能の実行の許可、或いは、運転支援機能の実行の指示に相当する制御情報を、CAN通信部31により出力させる。車両制御ECU50は、走行支援ECU20からバス63を介して送信された制御情報を受信し、受信した制御情報に従って、運転支援機能を実行する。
走行支援制御部22は、車両制御ECU50により運転支援機能を実行する間、報知制御部28により、運転支援機能の実行中であることを通知させてもよい。通知の例を
図13に示す。
【0064】
図13は、車載装置10の表示例を示す図である。
図13の例では、
図10と同様、表示画面100に経路案内画像110が表示される。表示画面100には、報知制御部28の制御により、案内メッセージ133が表示されている。案内メッセージ132は、文字により、車両制御ECU50による自動運転を実行中であることを通知する。
【0065】
図2のフローチャートは、ステップS10、S13、S17の後に処理を終える形式で記載されているが、
図2に示した動作は、車両1の動作中に繰り返し実行される。車両1の動作中とは、車両1の主電源やアクセサリ電源がオンの状態、或いは、車両1のエンジン(図示略)が稼働中をいう。また、運転者が入力部62を操作することにより、
図2の処理を実行させることが可能な構成であってもよい。
【0066】
図3は、他車状態判定処理(ステップS5)を詳細に示すフローチャートである。
他車状態判定部24は、カメラ11の撮像画像データを取得し(ステップS21)、レーダ装置13により検知された前方車両と車両1との距離を取得する(ステップS22)。なお、走行支援ECU20は、カメラ11の撮像画像データ、及び、レーダ装置13が検知する距離を、常時取得する構成であってもよい。すなわち、走行支援ECU20は、カメラ11の撮像画像データ、及び、レーダ装置13の検知結果を、予め設定されたサンプリング周期で取得する処理を、常時実行してもよい。この場合のサンプリング周期は、カメラ11が撮像を実行する周期、及び、レーダ装置13が検知を行う周期と、それぞれ一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
他車状態判定部24は、撮像時刻が異なる複数の撮像画像データ、及び/または、レーダ装置13の検知時刻が異なる複数の検知結果に基づいて、前方車両の速度を算出する(ステップS23)。
【0068】
他車状態判定部24は、ステップS23で算出した前方車両の速度が0km/hであるか否かを判定する(ステップS24)。前方車両の速度が0km/hである場合(ステップS24;YES)、他車状態判定部24は、前方車両が停車していると判定する(ステップS25)。他車状態判定部24は、判定結果を走行支援制御部22に出力し(ステップS26)、
図2の動作に戻る。
【0069】
前方車両の速度が0km/hでない場合(ステップS24;NO)、他車状態判定部24は、地図データ42を取得する(ステップS27)。ステップS27で、他車状態判定部24は、GPS19により測位された車両1の位置を取得してもよい。また、走行支援ECU20が常時、GPS19の測位の結果を、設定された周期で取得する構成であってもよい。
【0070】
他車状態判定部24は、ステップS21で取得した撮像画像データに基づき、前方車両の灯火の点灯状態を検出する(ステップS28)。ステップS28で、他車状態判定部24は、例えば、前方車両の制動灯および方向指示器が点灯しているか、点滅しているか、消灯しているかを検出する。
【0071】
他車状態判定部24は、地図データ42、及び、ステップS28の検出結果の少なくともいずれかに基づいて、前方車両が停車する可能性があるか否かを判定する(ステップS29)。他車状態判定部24は、前方車両が停車する可能性がある場合(ステップS29;YES)、前方車両が停車する可能性があるとの判定結果を生成し(ステップS30)、ステップS26に移行して判定結果を出力する。
【0072】
また、他車状態判定部24は、前方車両が停車する可能性がない場合(ステップS29;NO)、前方車両が停車する可能性がないとの判定結果を生成し(ステップS31)、ステップS26に移行して判定結果を出力する。
【0073】
図4は、通行幅検出部25が通行路の幅を検出する処理(ステップS7)を詳細に示すフローチャートである。
通行幅検出部25は、カメラ11の撮像画像データを取得し(ステップS41)、取得した撮像画像データから、道路の幅方向の境界を示す道路構造物、および、前方車両を検出する(ステップS42)。例えば、通行幅検出部25は、撮像画像70(
図8)において、道路構造物として縁石351を検出する。ステップS42で検出される道路構造物は、車両1が通行する通行路の幅を規定する物体や表示を含み、例えば、縁石、ガードレース、歩道等が挙げられる。また、ステップS42で検出される道路構造物は、車両1が回避すべき物体や表示であればよく、道路の付属物に限定されず、建物、壁、柵等の建造物、看板などの設置物、植栽などを含んでもよい。
【0074】
通行幅検出部25は、ステップS42で検出した道路構造物と前方車両との間隔を算出し(ステップS43)、実質的な通行路の幅を算出する(ステップS44)。ステップS43で、通行幅検出部25は、ステップS42で検出した道路構造物と前方車両との撮像画像データにおける間隔を単純に求める。これに対し、ステップS44では、車両1が通行することを前提として、ステップS43で求めた間隔を補正する。例えば、ステップS43で、複数の道路構造物と前方車両との間隔を算出し、ステップS44では、複数の道路構造物と前方車両との間隔のうち最も狭い間隔を、実質的な通行路の幅とする。ステップS44では、車両1の高さ方向の諸元、すなわち車高または最低地上高を基準として処理を行ってもよい。すなわち、車両1の車高よりも高い位置にある道路構造物について、通行路の幅を算出する処理から除外してもよい。また、車両1の最低地上高よりも大幅に低い道路構造物について、通行路の幅を算出する処理から除外してもよい。ステップS44では、例えば、センチメートル単位の実寸として通行路の幅を算出する。
【0075】
図5は、通行可否判定処理(ステップS8)を詳細に示すフローチャートである。
通行可否判定部26は、通行幅検出部25が算出した実質的な通行路の幅を取得する(ステップS51)。通行可否判定部26は、車両1の最大幅である車幅に、車両1の幅方向において必要なマージンを加算して、最小の通行幅を算出する(ステップS53)。車両1の車幅、及び、必要なマージンは、例えば、自車両データ41に含まれる。また、車幅にマージンを加えた最小の通行幅を、予め自車両データ41に含めて記憶してもよい。
【0076】
通行可否判定部26は、実質的な通行路の幅と、ステップS52で求めた最小の通行幅とを比較し(ステップS53)、車両1が通行可能か否かを判定する(ステップS54)。例えば、通行路の幅がステップS52で求めた最小の通行幅以下である場合、通行不可能と判定する。車両1が通行路を通行不可能であると判定した場合(ステップS54;NO)、通行可否判定部26は、通行不可能であることを示す判定結果を生成し(ステップS55)、走行支援制御部22に出力し(ステップS56)、
図2の動作に戻る。
通行可否判定部26は、車両1が通行路を通行可能であると判定した場合(ステップS54;YES)、通行可能であることを示す判定結果を生成し(ステップS57)、ステップS56に移行して判定結果を出力する。
【0077】
図6及び
図7は、支援要否判定処理(ステップS11)を詳細に示すフローチャートである。また、
図9は、車載装置10の動作の説明図であり、前方車両と車両1との位置関係を示す平面図である。これらの図を参照して支援要否判定処理を説明する。
【0078】
図9に示す例では、片側1車線の道路350に、車両1と、車両1にとって前方車両である車両300とが位置しており、車両300は停車または停車しようとする状態である。道路350は、幅方向両端に縁石351が設けられ、中央に中央線352が設けられている。
【0079】
車両300は、道路350に沿って位置する店舗380に進入するため、進路301で示すように右折する。右折を行うために、中央線352に沿った位置で対向車が通過するのを待機する停車中であるか、或いは、右折のために中央線352に沿って走行しており、減速している。
【0080】
車両1は、車両300を回避するために、車両300の左側と、縁石351との間の通行路310を通行する。
図9の例では、車両1は道路350の中央寄りを走行しているので、車両1の右端が車両300の左端よりも左側にある。このため、車両1は、通行路310を通行するために、ステアリング51により旋回する必要がある。この場合の車両1の進路201を図中に破線で示す。
【0081】
ここで、通行路310において車両1に最も近い位置を、狭路進入開始位置202とする。車両1は、狭路進入開始位置202に達するまでに、車両300を回避できる位置まで旋回を完了する必要がある。
【0082】
車両1が、狭路進入開始位置202までに、車両300に接触せずに旋回を完了できるか否かは、通行路310の幅方向における通行路310と車両1との距離と、狭路進入開始位置202から車両1までの距離203との相関により決定される。
つまり、距離203が長いほど、車両1は狭路進入開始位置202までに、幅方向において大きく移動でき、距離203が短いほど車両1の幅方向の移動距離は短い。これを図に表すと、車両1の幅方向および前後方向に延びる旋回限界ライン204となる。車両1が、旋回限界ライン204を超えて車両300に接近した場合、車両1は、狭路進入開始位置202までに車両300を回避する旋回を完了できない。
【0083】
旋回限界ライン204は、車両1の車幅、及び、車両1の旋回性能である最小回転半径により決定される直線を、通行路310及び狭路進入開始位置202の位置に重ねることで、決定できる。つまり、旋回限界ライン204の傾きは車両1の諸元により決定される。このため、車載装置10は、旋回限界ライン204を設定するための情報を、予め自車両データ41に含めて記憶してもよい。
【0084】
旋回限界ライン204が決定されると、車両1が旋回を開始すべき位置が決定される。この位置を、旋回開始ライン205とする。旋回開始ライン205は、車両1の最小回転半径に基づき、車両1が車両300を回避するための旋回を開始する位置のうち、最も狭路進入開始位置202に近い位置を示す。
【0085】
通行可否判定部26は、支援要否判定処理で、旋回限界ライン204と、旋回開始ライン205に基づいて、車両1が通行路310に到達できる場合に、車両制御ECU50の運転支援機能を運転者に提供するか否かを判定する。
【0086】
図6において、通行可否判定部26は、通行幅検出部25がステップS45で出力した通行路の幅を取得する(ステップS61)。通行可否判定部26は、車両1の速度を取得し(ステップS62)、前方車両との距離を取得する(ステップS63)。ここで、前方車両との距離は、
図9の距離203に相当し、この距離により車両1に対する狭路進入開始位置202の相対位置が決定される。
通行可否判定部26は、車両1の速度と、前方車両との距離に基づいて、車両1が前方車両の位置に到達するまでの到達時間を算出する(ステップS64)。
【0087】
通行可否判定部26は、狭路進入開始位置202に車両1が移動できるか否かについて、移動可否判定を行う(ステップS65)。
【0088】
図7に、ステップS65の処理を詳細に示す。
通行可否判定部26は、車両1の速度に対応する旋回最短距離を取得する(ステップS81)。旋回最短距離は旋回を完了するために必要な走行距離であり、車両1が旋回により左右方向に移動する距離(以下、旋回距離という)と、車両1の速度と、車両1の旋回性能とにより決定される。旋回最短距離は、車両1の仕様から求めることが可能であるため、車載装置10は、旋回最短距離を、旋回距離と車両1の速度とに対応付けて、自車両データ41に含めて記憶部40に記憶する。例えば、旋回距離と車両1の速度とに対応する旋回最短距離をテーブル形式で記憶してもよい。また、旋回距離と車両1の速度とから旋回最短距離を求める関数や演算式を自車両データ41に含めて記憶してもよい。また、旋回距離及び車両1の速度の代表値に対応する旋回最短距離を自車両データ41に含めて記憶し、通行可否判定部26が、補間演算を行うことにより、任意の旋回距離と車両1の速度に対応する旋回最短距離を得られる構成であってもよい。
【0089】
通行可否判定部26は、狭路進入開始位置202までの距離203を算出する(ステップS82)。本実施形態では、距離203は、例えばレーダ装置13が検知する距離に相当する。通行可否判定部26は、カメラ11の撮像画像データ等により、前方車両の左端の位置を特定し(ステップS83)、車両1の右端が前方車両の左端よりも右にあるか否かを判定する(ステップS84)。
【0090】
ここで、車両1の左右方向において、車両1の右端が前方車両の左端と一致するか、左にある場合(ステップS84;NO)、通行可否判定部26は、車両1の旋回が不要であると判定する(ステップS85)。つまり、車両1の旋回を考慮せず、車両1を通行路310に移動させることができる。このため、通行可否判定部26は、車両1が狭路進入開始位置202に移動可能であると判定し(ステップS86)、判定結果を出力して(ステップS93)、
図6に戻る。
【0091】
車両1の左右方向において、車両1の右端が前方車両の左端より右にある場合(ステップS84;YES)、通行可否判定部26は、車両1の旋回が必要であると判定する(ステップS87)。通行可否判定部26は、車両1の左右方向(横方向)の移動距離、すなわち、上述した旋回距離を算出する(ステップS88)。
【0092】
通行可否判定部26は、旋回限界ライン204、及び、旋回開始ライン205を算出する(ステップS89)。
ここで、通行可否判定部26は、車両1の減速が必要か否かを判定する(ステップS90)。詳細には、通行可否判定部26は、車両1が旋回開始ライン205から旋回する場合の舵角と、車両1の速度とを比較し、車両1が車両制御ECU50の運転支援機能により旋回可能な速度を超えていないかを判定する。
【0093】
減速が必要でないと判定した場合(ステップS90;NO)、通行可否判定部26はステップS86に移行して、車両1が狭路進入開始位置202に移動可能であると判定する(ステップS86)。
【0094】
減速が必要であると判定した場合(ステップS90;YES)、通行可否判定部26は、車両1が、旋回開始ライン205までに減速できるか否かを判定する(ステップS91)。ステップS91で、通行可否判定部26は、車両1の舵角から求められる適切な速度と、ステップS62で取得した速度と、車両1が車両制御ECU50の運転支援機能による減速性能とに基づき判定を行う。
【0095】
旋回開始ライン205までに減速可能であると判定した場合(ステップS91;YES)、通行可否判定部26はステップS86に移行して、車両1が狭路進入開始位置202に移動可能であると判定する(ステップS86)。
【0096】
旋回開始ライン205までに減速不可能であると判定した場合(ステップS91;NO)、通行可否判定部26は、車両1が狭路進入開始位置202に移動不可能であると判定し(ステップS92)、判定結果を出力する(ステップS93)。
【0097】
通行可否判定部26は、移動可否判定の判定結果を参照し(ステップS66)、狭路進入開始位置202に車両1が移動できないと判定した場合(ステップS66;NO)、車両制御ECU50の運転支援機能の案内が不要であると判定する(ステップS67)。ステップS65の移動可否判定では、車両制御ECU50の運転支援機能によって車両1を操縦し、通行路310を通過させることが可能か否かを判定する。ステップS66で否定判定した場合、通行路310を通過させるためには、運転者が車両1を運転する必要がある。このため、通行可否判定部26は、運転支援機能の案内が不要であると判定し、判定結果を出力し(ステップS71)、
図2に戻る。
【0098】
通行可否判定部26は、狭路進入開始位置202に車両1が移動できると判定した場合(ステップS66;YES)、車両1の方向指示器の点灯状態を、BCM17から取得する(ステップS68)。通行可否判定部26は、車両1の方向指示器が、前方車両が点滅させている方向指示器と同じ側で点滅させているか否かを判定する(ステップS69)。
図9に示した例では、車両300が右方向指示器323を点滅させている。この場合、車両1が、右側の方向指示器を点滅させていれば、車両1は車両300と同じように右折するので、通行路310を通行するための案内は不要である。通行可否判定部26は、車両1が、前方車両と同じ側の方向指示器を点滅させている場合(ステップS69;YES)、車両制御ECU50の運転支援機能の案内が不要であると判定する(ステップS67)。
【0099】
通行可否判定部26は、車両1が、前方車両と同じ側の方向指示器を点滅させていない場合(ステップS69;NO)、車両制御ECU50の運転支援機能の案内が必要であると判定し(ステップS70)、判定結果を出力し(ステップS71)、
図2に戻る。
【0100】
以上説明したように、本実施形態の車載装置10は、車両1の前方に位置する前方車両を検知する他車検知部23と、車両1が前方車両の側方を通行可能か否かを判定する通行可否判定部26と、を備える。また、通行可否判定部26によって通行可能と判定した場合に、車両1の運転支援機能の要否の入力を受け付ける入力受付部27を備える。走行支援ECU20は、入力受付部27により車両1の運転支援機能を必要とするとの入力を受け付けた場合に、車両1の運転支援機能に関する制御情報を、車両制御ECU50に出力する走行支援制御部22を備える。
【0101】
車載装置10の動作は、走行支援方法に相当する。車両1の前方に位置する前方車両を検知する他車検知部23の動作は、検知ステップに相当する。また、車両1が前方車両の側方を通行可能か否かを判定する通行可否判定部26の動作は、判定ステップに相当する。また、車両1が前方車両の側方を通行可能と判定した場合に、車両1の運転支援機能の要否の入力を受け付ける入力受付部27の動作は、受付ステップに相当する。また、入力受付部27が、車両1の運転支援機能を必要とするとの入力を受け付けた場合に、運転支援機能に関する制御情報を車両制御ECU50に出力する走行支援制御部22の動作は、情報出力ステップに相当する。
【0102】
車載装置10によれば、車両1が前方車両の側方を通行する際に、入力に応じて運転支援機能を制御するので、車両1の運転者の求めに応じて、運転を支援し、運転者の負担を軽減できる。車載装置10は、車両1の進行方向が、前方車両の側方を通過する狭路である場合に、車両制御ECU50により運転を支援させることができる。このため、運転者が、狭路の運転について習熟していない、或いは、狭路の運転を負担と感じる場合に、運転者の心理的負担を軽減できる。また、車載装置10は、運転者による入力に応じて車両制御ECU50の運転支援機能を制御するので、運転者の意図に沿って、適切に運転者を支援できる。
【0103】
車載装置10は、報知を行う報知制御部28を備え、通行可否判定部26によって通行路310を通行不可と判定した場合に、報知制御部28による報知を行い、前方車両の側方を通行できないことを運転者に知らせることができる。これにより、運転者に対し、狭路の通行に関する情報を提供し、運転者の負担を軽減できる。
【0104】
車載装置10は、前方車両が停車中の状態または前方車両が停車しようとする状態であるか否かを判定する他車状態判定部24を備える。通行可否判定部26は、他車状態判定部24によって前方車両が停車中の状態または前方車両が停車しようとする状態であると判定した場合に、前方車両の側方を車両1が通行可能か否かを判定する。このため、前方車両を車両1が追い越す可能性がない場合の処理を省略し、処理の効率化を図ることができる。
【0105】
他車状態判定部24は、前方車両の制動灯の点灯状態、前方車両の方向指示器の点灯状態、及び、前方車両の車速の変化のいずれか1以上に基づき判定を行う。このため、前方車両が停車中の状態または前方車両が停車しようとする状態であることを、適切に判定できる。
【0106】
車載装置10は、商業施設に関する情報を含む地図データ42を記憶する記憶部40と、車両1の位置を検出するGPS19と、を備える。他車状態判定部24は、GPS19により検出した位置から設定された範囲内に商業施設が存在する場合、前方車両が停車中の状態または前方車両が停車しようとする状態であると判定する。これにより、前方車両の周辺の状況を加味して、前方車両が停車中の状態または前方車両が停車しようとする状態であるか否かを、精度良く判定できる。
【0107】
通行可否判定部26は、車両1と前方車両との距離が設定された基準以下である場合に、車両1が前方車両の側方を通行可能でないと判定する。これにより、車両1が前方車両の側方を通行する場合の操舵が可能か否かを加味して、前方車両の側方を車両1が通行可能か否かを精度良く判定できる。
【0108】
通行可否判定部26は、前方車両が位置する道路が、車両1の進行方向の車線を複数有する道路である場合、車両1が前方車両の側方を通行可能か否かの判定を行わない。これにより、前方車両の側方を通る経路が狭路でない場合の処理を省略でき、処理の効率化を図ることができる。
【0109】
上述の実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0110】
例えば、
図2〜
図7のフローチャート、及び、
図8と
図9に示した例は、車両1と、車両1に対する前方車両とが左側通行の道路を通行する際を示しているが、上述のように、本発明は、右側通行の道路を走行する車両に搭載される車載装置に適用可能である。この場合、
図2〜
図7のフローチャートに示した処理では左右を逆にすればよく、
図8及び
図9に示した例も同様である。例えば、他車状態判定部24は、右側通行の道路において、前方車両が、左折のために停車しているか、停車しようとする状態であることを判定する。
【0111】
また、車載装置10を搭載する車両1の構成は任意であり、サイズ、形状、用途は特に限定されず、例えば車両1が輸送用車両であってもよい。また、車両1は、内燃機関をアクセル52により制御して走行する車両に限定されない。例えば、車両1は、バッテリーをエネルギー源として走行する電動車両や、バッテリーと内燃機関をエネルギー源とするハイブリッド車両であってもよい。また、燃料電池や内燃機関を利用した発電装置を搭載する車両であってもよい。
【0112】
また、例えば、
図1に示す機能ブロックは、車両1に搭載される装置の機能を主な処理内容に応じて分類して示した概略図である。例えば、走行支援ECU20の構成は、処理内容に応じて、さらに多くのブロックに分割することもできる。また、この機能ブロックは、
図1に示す1つのブロックによりさらに多くの処理を実行するように構成しても良い。また、各ブロックの処理は、1つのハードウェアで実行しても良いし、複数のハードウェアで実行しても良い。また、各ブロックの処理は、1つのプログラムで実現しても良いし、複数のプログラムで実現しても良い。
【0113】
また、
図2〜
図7に示すフローチャートの処理単位は、車載装置10の動作を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって本発明が制限されることはない。車載装置10の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。