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特開2019-212354熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体及びそれを用いたサーボ信号記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-212354(P2019-212354A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体及びそれを用いたサーボ信号記録装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/706 20060101AFI20191115BHJP
   G11B 5/70 20060101ALI20191115BHJP
   G11B 5/738 20060101ALI20191115BHJP
   G11B 5/78 20060101ALI20191115BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20191115BHJP
   G11B 20/12 20060101ALI20191115BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   G11B5/706
   G11B5/70
   G11B5/738
   G11B5/78
   G11B5/02 S
   G11B20/12
   G11B21/10 W
   G11B21/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-109214(P2018-109214)
(22)【出願日】2018年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川上 伸二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真男
(72)【発明者】
【氏名】廣井 俊雄
【テーマコード(参考)】
5D006
5D044
5D091
5D096
【Fターム(参考)】
5D006BA06
5D006BA08
5D006FA05
5D006FA09
5D044DE02
5D044DE46
5D091AA01
5D091CC30
5D096VV01
5D096WW02
(57)【要約】
【課題】電磁変換特性及び耐久性に優れ、且つ、トラッキングサーボ特性に優れた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体100は、非磁性支持体101と、下塗層102と、磁性体粒子を含む磁性層103と、バックコート層104とを備え、25℃における磁性層103の厚さ方向の保磁力Hcが、4100エルステッド〔Oe〕以上であり、55℃以上80℃以下における磁性層103の厚さ方向の保磁力Hcが、1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下であり、磁性層103には、ヘッドトラッキング用のサーボ信号が記録されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体と、磁性体粒子を含む磁性層とを備える熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体であって、
25℃における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、4100エルステッド〔Oe〕以上であり、
55℃以上80℃以下における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下であり、
前記磁性層には、ヘッドトラッキング用のサーボ信号が記録されていることを特徴とする熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項2】
前記サーボ信号が、記録波長2μm以上のタイミング・サーボ信号である請求項1に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項3】
25℃における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、4500エルステッド〔Oe〕以上であり、60℃以上70℃以下における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、1900エルステッド〔Oe〕以上3500エルステッド〔Oe〕以下である請求項1又は2に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項4】
25℃における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、10000エルステッド〔Oe〕以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項5】
前記磁性体粒子は、鉄以外の元素を含むε型酸化鉄からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項6】
前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcの温度依存性が、−30エルステッド〔Oe〕/℃以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項7】
前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、下塗層を更に含み、前記下塗層が、前記磁性層と直接接している請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項8】
全厚が5.0μm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体と、サーボ信号記録用ヘッドと、加熱装置とを含むことを特徴とするサーボ信号記録装置。
【請求項10】
前記加熱装置が、ハロゲンランプ及び加熱ヒータから選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のサーボ信号記録装置。
【請求項11】
前記サーボ信号記録用ヘッドより上流側に位置する前記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の供給部、支持体及びローラの少なくとも1つを、前記加熱装置で55℃以上95℃以下に加熱する請求項9又は10に記載のサーボ信号記録装置。
【請求項12】
前記供給部が、パンケーキであり、前記支持体が、固定ガイドであり、前記ローラが、キャプスタンローラ、ピンチローラ及びガイドローラである請求項11に記載のサーボ信号記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体及びそれを用いたサーボ信号記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性支持体上に磁性粉末と結合剤とを含有する磁性層が形成された塗布型の磁気記録媒体は、アナログ方式からデジタル方式への記録再生方式の移行に伴い、一層の記録密度の向上が要求されている。特に、高密度デジタルビデオテープやコンピュータバックアップテープ等においては、この要求が年々高まってきている。
【0003】
このような磁気記録媒体の大容量化のための高記録密度化に伴い、磁性層の高トラック密度化が進んでいる。しかし、高トラック密度化に伴いトラック幅が縮小し、その結果、出力特性が低下するという問題がある。このため、高記録密度化に伴う高トラック密度化を行っても電磁変換特性に優れた磁気記録媒体が望まれている。
【0004】
このような状況において近年、磁気記録媒体用の新しい磁性材料として、ε−Fe23(ε型酸化鉄)の研究が行われている。ε型酸化鉄は、高い保磁力を維持しつつ微粒子化が可能なため、高記録密度化に適している。しかし、ε型酸化鉄の保磁力は、室温条件下で通常20kOe程度と高く、通常の磁気ヘッドで信号を記録することは困難である。
【0005】
このため、ε型酸化鉄のFeサイトの一部を異種の3価の金属で置換することで、保磁力を制御することが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。即ち、ε型酸化鉄のFeサイトの一部を異種の3価の金属で置換することで、通常の磁気ヘッドで情報を記録することができる保磁力である3700〔Oe〕以下まで低下させることができる。しかし、ε型酸化鉄のFeサイトの一部を異種金属で置換して保磁力を3700〔Oe〕以下まで低下させると、ε型酸化鉄の粒度分布がシャープでなくなり、ε型酸化鉄の微粒子化が困難となる。また、ε型酸化鉄の保磁力が室温条件下で3700〔Oe〕以下まで低下させると、本来高い保磁力を有するε型酸化鉄の特徴を生かすことができなくなる。このため、単にε型酸化鉄のFeサイトの一部を異種の3価の金属で置換することで、保磁力を制御しただけでは、高記録密度化に適するε型酸化鉄を得ることは困難であった。
【0006】
一方、4000〔Oe〕以上の高い保磁力の磁性層に信号を記録する方法として、ハードディスクドライブで導入が検討さている熱アシスト記録技術を、磁気テープ等の塗布型磁気記録媒体に適用することが提案されている(例えば、特許文献4、5)。この熱アシスト記録技術は、磁性層に100℃以上の高い熱を加えて保磁力を下げて信号を記録する技術であり、磁性層の加熱工程が必要となるため、磁気テープ等の塗布型磁気記録媒体の磁性層や支持体フィルムが熱で変形したり、損傷する問題がある。この問題を解決するために、特許文献4及び5では、支持体フィルムと磁性層との間に遮熱層又は熱拡散層を設けている。
【0007】
しかし、特許文献4及び5では、磁気記録媒体に必要な非磁性支持体、磁性層以外に遮熱層や熱拡散層を設ける必要があり、製造工程が増える問題がある。更に、特許文献4及び5の熱アシスト記録は、通常100℃以上の加熱工程が必要となり、たとえ支持体フィルムと磁性層との間に遮熱層又は熱拡散層を設けたとしても、塗布型磁気記録媒体の磁性層に、局所的に100℃以上の高温が加えられるため、磁性層が局部的に変形を起こし、磁性層の磁気ヘッドと摺動する面の表面性が劣化して、磁気テープ等の塗布型磁気記録媒体の耐久性及び信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
また、特許文献6には、−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−2〜−10〔Oe〕/℃の温度依存性を示す磁気記録媒体が提案されている。しかし、特許文献6の磁気記録媒体の温度依存性は−2〜−10〔Oe〕/℃であり、温度依存性が小さいため、25℃で4100〔Oe〕以上の高い保磁力を有する磁性層において、信号を記録できる程度に磁性層の保磁力を下げるためには、高温まで加熱する必要があり、磁気テープの磁性層及びベースフィルムが、熱により変形、損傷する恐れがある。従って、特許文献6では、室温における垂直方向の保磁力が4100〔Oe〕未満でなければならず、高トラック密度化に伴いトラック幅が縮小した場合、良好な電磁変換特性が得られない。
【0009】
更に、磁気テープ等の塗布型磁気記録媒体においては、サーボ信号を磁気記録しているが、このサーボ信号は、塗布型磁気記録媒体の幅方向の端から端までの間に等間隔で配置された5本程度のサーボバンドに記録されており、熱アシスト記録技術によりこれらのサーボバンドにサーボ信号を記録するためには、塗布型磁気記録媒体の幅方向全体の広い範囲を加熱する必要がある。しかし、塗布型磁気記録媒体の広い範囲の全体に100℃以上の高温が加えられると、塗布型磁気記録媒体の磁性層や支持体フィルムが熱で変形したり、損傷する問題がある。
【0010】
一方、上記サーボ信号は、タイミング・サーボ信号であり、記録波長が2μm以上であり、通常のデータ信号の記録波長に比べて長い。このような記録波長が長いタイミング・サーボ信号を磁気記録して最適な再生波形を得るためには、磁性層の深層まで、磁性層の保磁力以上の磁界を加えて磁化する必要があるため、より大きなヘッド磁界が必要である。また、磁気ヘッドから発生する磁界は磁気ヘッドの表面から離れるほど弱くブロードになってくるため、前述の磁性層の保磁力が高くなった場合におけるタイミング・サーボ信号の磁気記録の困難性は、記録波長が0.2μm程度のデータ信号の場合に比べて大きい。このため、高保磁力磁気記録媒体に対するサーボ信号の磁気記録において、適度な熱を加えて磁性層の保磁力を低下させる熱アシスト記録技術の適用が特に効果的である。
【0011】
また、本発明に関連する先行技術文献としては、層厚さ測定方法に関する特許文献7がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−269548号公報
【特許文献2】特開2007−281410号公報
【特許文献3】特開2008−60293号公報
【特許文献4】特開2014−154177号公報
【特許文献5】特開2014−154178号公報
【特許文献6】特開2011−100503号公報
【特許文献7】特開2008−128672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、高記録密度化に伴う高トラック密度化を行っても電磁変換特性及び耐久性に優れ、且つ、トラッキングサーボ特性に優れた磁気記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体は、非磁性支持体と、磁性体粒子を含む磁性層とを備える熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体であって、25℃における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、4100エルステッド〔Oe〕以上であり、55℃以上80℃以下における前記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下であり、前記磁性層には、ヘッドトラッキング用のサーボ信号が記録されている。
【0015】
また、本発明のサーボ信号記録装置は、上記本発明の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体と、サーボ信号記録用ヘッドと、加熱装置とを含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大容量化のための高記録密度化に伴う高トラック密度化によりトラック幅が縮小しても、電磁変換特性及び耐久性に優れ、且つ、トラッキングサーボ特性に優れた塗布型磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、磁気記録媒体の一例を示す模式断面図である。
図2図2(a)は、磁気記録媒体のサーボバンドとデータバンドの配置の一例を示す図であり、図2(b)は、図2(a)のサーボバンドの拡大図であり、図2(c)は、図2(b)に示すサーボパターンに対応するサーボ信号再生波形を示す図である。
図3図3は、サーボ信号記録装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体)
本発明の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体(以下、単に磁気記録媒体とも言う。)は、非磁性支持体と、磁性体粒子を含む磁性層とを備え、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、4100エルステッド〔Oe〕以上であり、55℃以上80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが、1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下であり、上記磁性層には、ヘッドトラッキング用のサーボ信号が記録されている。
【0020】
本実施形態の磁気記録媒体では、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが4100エルステッド〔Oe〕以上であり、高い保磁力を維持できるため、上記磁気記録媒体の高記録密度化が可能となる。また、上記磁性体粒子として、鉄以外の元素を含むε型酸化鉄を用いて保磁力Hcを小さくする場合であっても、上記鉄以外の元素の含有量を少なくすることができるため、ε型酸化鉄の粒度分布をシャープにしつつ微粒子化が可能となり、高記録密度化が可能となる。
【0021】
また、上記磁気記録媒体では、55℃以上80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下であり、100℃未満の低温条件下において、通常の磁気ヘッドで信号を記録することができる保磁力である3700〔Oe〕以下まで保磁力を低下させることができる。このため、25℃における保磁力が高い上記磁性層を、熱アシスト記録によって最適な保磁力にして飽和記録することができるため、分解能が高い信号記録が可能となり、高記録密度化しても電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供できる。
【0022】
更に、上記磁気記録媒体では、55℃以上80℃以下の低温条件下での熱アシスト記録が可能なため、磁気記録媒体への熱による変形や損傷を抑制でき、耐久性に優れ、信頼性の高い磁気記録媒体を提供できる。
【0023】
また、上記磁性層には、ヘッドトラッキング用のサーボ信号が記録されているが、上記磁性層に記録波長が2μm以上のハの字型のタイミング・サーボ信号を記録する際にも、上記熱アシスト記録を行うことにより、サーボ信号を低い記録電流で記録することができるため、記録信号パルスの歪を低減することができ、パルスの立ち上がりがよりシャープなサーボ信号を記録することができる。これにより、サーボトラッキング精度が向上するため、高記録密度化してもエラーレートが良好で、信頼性の高い磁気記録媒体を提供できる。
【0024】
また、本実施形態の磁気記録媒体では、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcは、4500エルステッド〔Oe〕以上が好ましく、60℃以上70℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcは、1900エルステッド〔Oe〕以上3500エルステッド〔Oe〕以下とすることもできる。
【0025】
また、本実施形態の磁気記録媒体では、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcは、10000エルステッド〔Oe〕以下であることが好ましい。25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcが10000エルステッド〔Oe〕を超えると、55℃以上80℃以下の低温条件下での熱アシスト記録が困難となる傾向があるからである。
【0026】
本実施形態の磁気記録媒体において、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを4100エルステッド〔Oe〕以上とし、55℃以上80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下とするためには、上記磁性層に含まれる上記磁性体粒子は、鉄以外の元素を含むε型酸化鉄からなることが好ましい。上記鉄以外の元素を含むε型酸化鉄は、上記鉄以外の元素の含有量を調整することにより、室温条件である25℃における保磁力と、低温加熱条件である55℃以上80℃以下における保磁力とを制御可能だからである。
【0027】
上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcの温度依存性は、−30エルステッド〔Oe〕/℃以下であることが好ましい。ここで、保磁力Hcの温度依存性とは、単位温度当たりの保磁力Hcの変化量を意味する。これにより、例えば、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力が4100エルステッド〔Oe〕の場合、55℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力を3600エルステッド〔Oe〕以下にすることができ、また、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力が4100エルステッド〔Oe〕を超える場合でも、熱アシスト記録時の加熱温度を高めることにより、55℃を超え80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下とすることができる。
【0028】
上記非磁性支持体と上記磁性層との間に、下塗層を更に備え、上記下塗層が、上記磁性層と直接接していることが好ましい。上記下塗層を備えることにより、上記磁気記録媒体の強度を高めることができ、また、上記下塗層と上記磁性層とを直接接触させることにより、潤滑剤の保持機能を有する上記下塗層から上記磁性層への潤滑剤の供給が容易となるからである。
【0029】
また、本実施形態の磁気記録媒体の全厚は、5.0μm以下であることが好ましい。これにより、体積容量密度の大きい磁気記録媒体を提供できる。一方、上記全厚を5.0μm以下に薄くすると、上記磁気記録媒体の耐久性はある程度低下するが、上記磁気記録媒体は、熱アシスト記録時の加熱温度が55℃以上80℃以下と低いため、大きな耐久性の低下を防止できる。
【0030】
以下、本実施形態の磁気記録媒体を図面に基づき説明する。図1は、本実施形態の磁気記録媒体の一例を示す模式断面図である。また、図2(a)は、本実施形態の磁気記録媒体のサーボバンドとデータバンドの配置の一例を示す図であり、図2(b)は、図2(a)のサーボバンドの拡大図であり、図2(c)は、図2(b)に示すサーボパターンに対応するサーボ信号再生波形を示す図である。
【0031】
図1において、本実施形態の磁気記録媒体100は、非磁性支持体101と、非磁性支持体101の一方の主面に形成された下塗層102と、下塗層102の非磁性支持体101側とは反対側の主面に形成された磁性層103とを有する磁気テープである。また、非磁性支持体101の下塗層102が形成されていない側の主面には、バックコート層104が形成されている。
【0032】
また、図2(a)に示すように、磁気記録媒体100には、サーボ信号に基づくサーボパターンが記録されているサーボバンド111と、データが記録されているデータバンド112とが形成されている。上記サーボパターンは、例えば、後述する図3に示すサーボ信号記録装置によって記録することができる。
【0033】
また、図2(b)に示すように、サーボバンド111に記録されているサーボパターンでは、1つのサーボフレームが第1サブフレームと第2サブフレームとで構成されている。第1サブフレームは、第1ストライプ群100a及び第2ストライプ群100bで構成されている。また、第2サブフレームは、第3ストライプ群100c及び第4ストライプ群100dで構成されている。第1ストライプ群100aは、互いに平行な5本のストライプで構成され、サーボバンド111の幅方向に対して僅かに傾斜して形成されている。また、第2ストライプ群100bは、互いに平行な5本のストライプで構成され、サーボバンド111の幅方向に対して僅かに傾斜して形成されている。ここで、第1ストライプ群100aと第2ストライプ群100bとの傾斜方向は、相対する方向である。一方、第3ストライプ群100cは、互いに平行な4本のストライプで構成され、第1ストライプ群100aのストライプと同方向に同角度傾斜している。また、第4ストライプ群100dは、互いに平行な4本のストライプで構成され、第2ストライプ群100bのストライプと同方向に同角度傾斜している。このように、1つのサーボフレームは、18本のストライプで構成されている。
【0034】
また、図2(c)には、図2(b)に示すサーボパターンに対応するサーボ信号再生波形を示す。ここで、図2(c)に示したサーボ信号波長とは、同じストライプ群の中で1本のストライプの入側から隣接ストライプの入側までの距離に相当するサーボ信号再生波形の波長をいう。
【0035】
<磁性層>
磁性層103は、磁性体粒子と結合剤とを含むものである。上記磁性体粒子としては、鉄以外の元素を含むε型酸化鉄(以下、単にε型酸化鉄とも言う。)が好ましい。
【0036】
上記磁性体粒子として、上記鉄以外の元素を含むε型酸化鉄を用い、上記鉄以外の元素の含有量を適宜調整することにより、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを4100エルステッド〔Oe〕以上に設定でき、また、55℃以上80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下に設定できる。これは、上記ε型酸化鉄における鉄以外の元素の含有量が、ε型酸化鉄の25℃における保磁力と、その保磁力の温度依存性に影響するためと考えられる。
【0037】
但し、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを4100エルステッド〔Oe〕以上に設定し、また、55℃以上80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下に設定するには、上記ε型酸化鉄の保磁力の温度依存性と、上記ε型酸化鉄の25℃における保磁力とのバランスが重要である。上記ε型酸化鉄の保磁力の温度依存性が大きくても、上記ε型酸化鉄の25℃における保磁力が大きすぎると、55℃以上80℃以下における上記ε型酸化鉄の保磁力を1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下に設定することが困難となるからである。このため、25℃における上記ε型酸化鉄の保磁力は、上記ε型酸化鉄の保磁力の温度依存性とのバランスを考慮して、通常10000エルステッド〔Oe〕以下に設定される。
【0038】
上記鉄以外の元素を含むε型酸化鉄は、一般組成式ε−MxFe2-x3で表される単相で形成されていることが好ましい。α型酸化鉄やγ型酸化鉄が混入すると、磁性層の保磁力が低下するからである。但し、磁性層の保磁力が低下しない水準であれば、不純物としてα型酸化鉄やγ型酸化鉄を含んでいてもよい。本実施形態において、ε型酸化鉄と、それ以外のγ型酸化鉄及びα型酸化鉄とは、X線回折によりそれらの結晶構造を解析することにより、識別できる。
【0039】
上記一般組成式ε−MxFe2-x3において、Mは、例えば、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)等の鉄(Fe)以外の単一の元素又は複数の元素を表し、xの最適値は、Mの種類及びMとFeとのモル比により異なり、MとFeとのモル比をx/(2−x)とすると、例えば、MがGaの場合、0.4≦x/(2−x)≦0.9が好ましく、MがTi、Co、Alの場合、0.1≦x/(2−x)≦0.18が好ましく、MがTi、Co、Gaの場合、0.1≦x/(2−x)≦0.30が好ましい。x/(2−x)が、上記範囲内であれば、25℃における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを4100エルステッド〔Oe〕以上に設定でき、また、55℃以上80℃以下における上記磁性層の厚さ方向の保磁力Hcを1200エルステッド〔Oe〕以上3700エルステッド〔Oe〕以下に設定できる。
【0040】
また、Mが、Ga、Co、Ti、Al以外の場合の、x/(2−x)の範囲は、有限の実験により求めることができる。
【0041】
上記ε型酸化鉄は、通常、球状の粒子からなるが、球状の粒子に限定されず、略球状又は楕円体状であってもよい。
【0042】
また、上記ε型酸化鉄からなる磁性体粒子の平均粒子径は、短波長記録により対応するために17nm以下であることが好ましい。上記ε型酸化鉄からなる磁性体粒子の平均粒子径の下限値は、通常8nm程度である。平均粒子径が8nmを下回るε型酸化鉄は、製造が容易ではないからである。
【0043】
本実施形態において磁性層に含まれる磁性体粒子の平均粒子径は、磁性層の表面を、日立製作所製の走査型電子顕微鏡(SEM)“S−4800”を用い、加速電圧:2kV、倍率:10000倍(10k倍)、観察条件:U−LA100で撮影した写真より、1視野中の磁性体粒子100個を用いて、次のように決定する。
【0044】
上記粒子が針状の場合は100個の粒子の平均長軸径を、上記粒子が板状の場合は100個の粒子の平均最大板径を、上記粒子が長軸長と短軸長の比が1〜3.5である球状ないし楕円体状の場合は100個の粒子の平均最大差し渡し径をそれぞれ算出して決定する。
【0045】
上記磁性層の厚さは、30nm以上200nm以下であることが好ましい。上記磁性層の厚さを200nm以下とすることにより、短波長記録特性を向上でき、上記磁性層の厚さを30nm以上とすることにより、サーボ信号を記録することができる。本実施形態の磁性体粒子としてε型酸化鉄粒子を用いる場合、ε型酸化鉄粒子の飽和磁化量は、従来の強磁性六方晶フェライト粒子の飽和磁化量に比べて、1/2〜1/3と小さいため、記録波長が長いサーボ信号を記録する場合には、磁性層の厚さは30nm以上とする必要がある。
【0046】
上記磁性層の平均厚さの測定方法は特に限定されないが、例えば、特開2008−128672号公報(特許文献7)に記載の方法により行うことができる。
【0047】
磁性層103に含まれる結合剤としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。上記熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられる。
【0048】
磁性層103中の上記結合剤の含有量は、磁性体粒子100質量部に対して、好ましくは7〜50質量部であり、より好ましく10〜35質量部である。
【0049】
また、上記結合剤と共に、結合剤中に含まれる官能基等と結合し架橋構造を形成する熱硬化性の架橋剤を併用することが好ましい。上記架橋剤としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の水酸基を複数個有する化合物との反応生成物;イソシアネート化合物の縮合生成物等の各種のポリイソシアネートが挙げられる。上記架橋剤の含有量は、結合剤100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部である。
【0050】
磁性層103は、上述した磁性体粒子及び結合剤を含有していれば、研磨剤、潤滑剤、分散剤等の添加剤を更に含有してもよい。特に、耐久性の観点から、研磨剤及び潤滑剤が好ましく用いられる。
【0051】
上記研磨剤としては、具体的には、例えば、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α型酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素等が挙げられ、これらの中でも、モース硬度6以上の研磨剤がより好ましい。これらは、単独で使用してもよく、また、複数を使用してもよい。上記研磨剤の平均粒子径は、使用する研磨剤の種類にもよるが、好ましくは10〜200nmである。上記研磨剤の含有量は、磁性体粒子100質量部に対して、好ましくは5〜20質量部であり、より好ましくは8〜18質量部である。
【0052】
上記潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドが挙げられる。上記脂肪酸は、直鎖型、分岐型、シス・トランス異性体のいずれであってもよいが、潤滑性能に優れる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。上記脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、オレイン酸n−ブチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸n−オクチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸n−ブチル、ラウリン酸ヘプチル、ミリスチン酸n−ブチル、オレイン酸n−ブトキシエチル、トリメチロールプロパントリオレエート、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸s−ブチル、ステアリン酸イソアミル、ステアリン酸ブチルセロソルブ等が挙げられる。上記脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。これらの潤滑剤は、単独で使用してもよく、また、複数を併用してもよい。
【0053】
これらの中でも、脂肪酸エステルと脂肪酸アミドとを併用することが好ましい。特に、磁性層103中の磁性体粒子、研磨剤等の固形分の総量100質量部に対して、脂肪酸エステルを0.2〜3質量部、脂肪酸アミドを0.5〜5質量部使用することが好ましい。上記脂肪酸エステルの含有量が0.2質量部未満であると、摩擦係数低減効果が小さく、3.0質量部を超えると、磁性層103がヘッドに貼り付く等の副作用を生じる虞があるからである。また、上記脂肪酸アミドの含有量が0.5質量部未満であると、磁気ヘッドと磁性層13とが相互接触することにより生じる焼き付きを防止する効果が小さくなるからであり、5質量部を超えると脂肪酸アミドがブリードアウトしてしまう虞があるからである。
【0054】
また、磁性層103は、導電性及び表面潤滑性の向上を目的として、カーボンブラックを含有してもよい。このようなカーボンブラックとしては、具体的には、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等が挙げられる。カーボンブラックの平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.1μmである。上記平均粒子径が0.01μm以上であれば、カーボンブラックが良好に分散された磁性層103を形成することができる。一方、上記平均粒子径が0.1μm以下であれば、表面平滑性に優れた磁性層103を形成することができる。また、必要に応じて、平均粒子径の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。上記カーボンブラックの含有量は、磁性体粒子100質量部に対して、好ましくは0.2〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜4質量部である。
【0055】
磁性層103の表面粗さは、日本工業規格(JIS)B0601で定義されている中心線平均粗さRaとして、2.0nm未満であることが好ましい。磁性層103の表面平滑性が向上するほど、高出力が得られるが、余りに磁性層103の表面が平滑化しすぎると、摩擦係数が高くなり、走行安定性が低下する。このため、Raは1.0nm以上であることが好ましい。
【0056】
<潤滑剤層>
図1には示していないが、磁性層103の摩擦係数を低減し、磁性層103の耐久性をより向上させるため、磁性層103の上には、フッ素系潤滑剤又はシリコーン系潤滑剤を含む潤滑剤層を設けることが好ましい。上記フッ素系潤滑剤として、トリクロロフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルポリエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸等が挙げられる。上記シリコーン系潤滑剤として、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの潤滑剤は、単独で使用してもよく、また、複数を併用してもよい。より具体的には、上記フッ素系潤滑剤としては、例えば、3M社製の“Novec7100”、“Novec1720”(商品名)を用いることができ、上記シリコーン系潤滑剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製の“KF−96L”、“KF−96A”、“KF−96”、“KF−96H”、“KF−99”、“KF−50”、“KF−54”、“KF−965”、“KF−968”、“HIVAC F−4”、“HIVAC F−5”、“KF−56A”、“KF995”、“KF−69”、“KF−410”、“KF−412”、“KF−414”、“FL”(商品名)、東レダウコーニング株式会社製の“BY16−846”、“SF8416”、“SH200”、“SH203”、“SH230”、“SF8419”、“FS1265”、“SH510”、“SH550”、“SH710”、“FZ−2110”、“FZ−2203”(商品名)を用いることができる。
【0057】
上記潤滑剤層は、磁性層103の上に上記潤滑剤をトップコートすれば形成できる。磁性層103は、前述のように、微細な磁性体粒子が均一に充填されているため、磁性層103中に含まれる潤滑剤は、磁性層103の表面に移動しにくいが、潤滑剤を磁性層の表面に塗布するトップコートにより、確実に磁性層103の表面に潤滑剤層を形成できる。
【0058】
<下塗層>
磁性層103の下には、潤滑剤の保持機能と、外部応力(例えば、磁気ヘッドによる加圧力)の緩衝機能とを有する下塗層102を設けることが好ましい。また、下塗層102を設けることにより、磁気記録媒体100の強度が高まるため、磁気記録媒体100を形成する際に、カレンダ処理を可能とし、磁性層103の充填性を向上できる。下塗層102は、非磁性粉末と結合剤と潤滑剤とを含むものである。
【0059】
下塗層102に含まれる非磁性粉末としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等が挙げられ、通常は、カーボンブラックが単独で用いられるか、カーボンブラックと、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等の他の非磁性粉末とが混合して用いられる。厚さムラの少ない塗膜を形成して平滑な下塗層102を形成するためには、粒度分布がシャープな非磁性粉末を用いることが好ましい。上記非磁性粉末の平均粒子径は、下塗層102の均一性、表面平滑性、剛性の確保、及び導電性確保の観点から、例えば10〜1000nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましい。
【0060】
下塗層102に含まれる非磁性粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもあってもよい。針状又は紡錘状の非磁性粉末の平均粒子径は、平均長軸径で10〜300nmが好ましく、平均短軸径で5〜200nmが好ましい。球状の非磁性粉末の平均粒子径は、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。板状の非磁性粉末の平均粒子径は、最も大きな板径で10〜200nmが好ましい。更に、平滑且つ厚みムラの少ない下塗層102を形成するためにも、シャープな粒度分布を有する非磁性粉末が好ましく用いられる。
【0061】
下塗層102に含まれる結合剤及び潤滑剤としては、前述の磁性層103に用いられる結合剤及び潤滑剤と同様のものが使用できる。上記結合剤の含有量は、上記非磁性粉末100質量部に対して、好ましくは7〜50質量部であり、より好ましくは10〜35質量部である。また、上記潤滑剤の含有量は、上記非磁性粉末100質量部に対して、好ましくは2〜6質量部であり、より好ましくは2.5〜4質量部である。
【0062】
前述の磁性層103の磁性体粒子としてε型酸化鉄粒子を用いると、ε型酸化鉄粒子の飽和磁化量は、従来の強磁性六方晶フェライト粒子の飽和磁化量に比べて、1/2〜1/3と小さいため、記録波長が長いサーボ信号を記録する場合には、下塗層102に磁性体粒子を含有させることが好ましい。下塗層102に含有させる磁性体粒子としては、例えば、針状の金属鉄系磁性粒子、板状の六方晶フェライト磁性粒子、粒状の窒化鉄系磁性粒子等を用いることができる。
【0063】
下塗層102の厚さは、好ましくは0.1〜3μmであり、より好ましくは0.3〜2μmである。この厚さ範囲とすることにより、磁気記録媒体10の全厚を不要に大きくせずに、潤滑剤の保持機能と、外部応力の緩衝機能を維持できる。
【0064】
<非磁性支持体>
非磁性支持体101としては、従来から使用されている磁気記録媒体用の非磁性支持体を使用できる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、アラミド等からなるフィルム等が挙げられる。
【0065】
非磁性支持体101の厚さは、用途によって異なるが、好ましくは1.5〜11μmであり、より好ましくは2〜7μmである。非磁性支持体101の厚さが1.5μm以上であれば、成膜性が向上するとともに、高い強度を得ることができる。一方、非磁性支持体101の厚さが11μm以下であれば、全厚が不要に厚くならず、例えば、磁気テープの場合1巻当たりの記録容量を大きくすることができる。
【0066】
非磁性支持体101の長手方向のヤング率は、好ましくは5.8GPa以上であり、より好ましくは7.1GPa以上である。非磁性支持体101の長手方向のヤング率が5.8GPa以上であれば、走行性を向上させることができる。また、ヘリキャルスキャン方式に用いられる磁気記録媒体では、長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)は、好ましくは0.6〜0.8であり、より好ましくは0.65〜0.75であり、更に好ましくは0.7である。上記比の範囲内であれば、磁気ヘッドのトラックの入側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)を抑えることができる。リニアレコーディング方式に用いられる磁気記録媒体では、長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)は、好ましくは0.7〜1.3である。
【0067】
<バックコート層>
非磁性支持体101の下塗層102が形成されている主面とは反対側の主面には、走行性の向上等を目的としてバックコート層104を設けることが好ましい。バックコート層104の厚さは、好ましくは0.2〜0.8μmであり、より好ましくは0.3〜0.8μmである。バックコート層104の厚さが薄すぎると、走行性向上効果が不十分となり、厚すぎると磁気記録媒体100の全厚が厚くなり、例えば、磁気テープ1巻当たりの記録容量が小さくなる。
【0068】
バックコート層104は、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを含有することが好ましい。通常、粒子径が相対的に異なる、小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラックとが併用される。併用する理由は、走行性向上効果が大きくなるからである。
【0069】
また、バックコート層104は結合剤を含み、結合剤としては、磁性層103及び下塗層102に用いられる結合剤と同様のものを用いることができる。これらの中でも、摩擦係数を低減させ磁気ヘッドの走行性を向上させるためには、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを併用することが好ましい。
【0070】
バックコート層104は、強度向上を目的として、酸化鉄、アルミナ等を更に含有することが好ましい。
【0071】
次に、本実施形態の磁気記録媒体の製造方法について説明する。本実施形態の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、各層形成成分と溶媒とを混合して、磁性層形成用塗料、下塗層形成用塗料及びバックコート層形成用塗料をそれぞれ作製し、非磁性支持体の片面に下塗層形成塗料を塗布して乾燥させて下塗層を形成した後に、その下塗層の上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させる逐次重層塗布方式で磁性層を形成し、更に非磁性支持体の他方の片面にバックコート層形成用塗料を塗布して乾燥してバックコート層を形成する。その後に全体をカレンダ処理して磁気記録媒体を得る。
【0072】
また、上記逐次重層塗布方式に代えて、非磁性支持体の片面に下塗層形成用塗料を塗布した後、下塗層形成用塗料が乾燥する前に、下塗層形成用塗料の上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させる同時重層塗布方式を採用することもできる。
【0073】
上記各塗料の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布等を用いることができる。
【0074】
(サーボ信号記録装置)
次に、本発明のサーボ信号記録装置の実施形態について説明する。
【0075】
本実施形態のサーボ信号記録装置は、前述の実施形態の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体と、サーボ信号記録用ヘッドと、加熱装置とを備えている。本実施形態のサーボ信号記録装置は、サーボ信号記録用ヘッドと加熱装置とを備えているので、上記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体にサーボ信号を熱アシスト記録することができる。このため、電磁変換特性及び耐久性に優れ、且つ、トラッキングサーボ特性に優れた塗布型磁気記録媒体を提供できる。
【0076】
上記加熱装置の種類は特に限定されないが、ハロゲンランプ及び加熱ヒータから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらは、温度調節が容易であり、加熱対象物の大きさに合わせて当該加熱装置の発熱容量を調整可能だからである。
【0077】
本実施形態のサーボ信号記録装置では、上記サーボ信号記録用ヘッドより上流側に位置する上記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の供給部、支持体及びローラの少なくとも1つを、上記加熱装置で55℃以上95℃以下に加熱することが好ましい。上記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体に直接接するこれらの部材を上記加熱装置で55℃以上95℃以下に加熱することにより、確実に上記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の温度を55℃以上80℃以下に加熱することができる。
【0078】
また、熱伝達時における熱損失等を考慮すると、上記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の供給部、支持体及びローラの加熱温度は、加熱したい上記熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の加熱設定温度よりも10〜15℃程度高くすることが望ましい。
【0079】
具体的には、例えば、上記供給部としてパンケーキが用いられ、上記支持体として固定ガイドが用いられ、上記ローラとして、キャプスタンローラ、ピンチローラ及びガイドローラが用いられる。
【0080】
次に、本実施形態のサーボ信号記録装置を図面に基づき説明する。図3は、本実施形態のサーボ信号記録装置の一例を示す模式図である。
【0081】
図3に示すサーボ信号記録装置(サーボライター)1は、磁気テープ等の塗布型磁気記録媒体にサーボ信号を磁気記録するために用いられる装置である。以下、図3に示すサーボ信号記録装置1の動作について説明する。
【0082】
図3において、磁気テープの供給部であるパンケーキ2から矢印Aに示す方向に引き出された磁気テープ3は、各所に配置されたガイドローラ11で案内されながら、最終的には磁気テープ3の巻き取り部である巻き取りリール10に巻き取られる。より詳細には、パンケーキ2から矢印Aに示す方向に引き出された磁気テープ3は、テンション制御部5を介して、テープ変動測定部6に到達する。磁気テープ3がテープ変動測定部6を通過する時、テープ変動測定部6は、磁気テープ3の幅方向の位置変動を測定する。テープ変動測定部6を出た磁気テープ3は、キャプスタンローラ7及びピンチローラ8に到達する。
【0083】
キャプスタンローラ7及びピンチローラ8を出た磁気テープ3は、テンション制御部9、及び、支持体である固定ガイド12を通過して、サーボ信号記録ヘッド4に達する。ここで、サーボ信号記録ヘッド4より上流に位置するパンケーキ2、ガイドローラ11、キャプスタンローラ7、ピンチローラ8、固定ガイド12は、ハロゲンランプ、加熱ヒータ等の加熱装置(図示せず。)により、55℃以上95℃以下の温度に加熱されている。これにより、サーボ信号記録ヘッド4より上流に位置する磁気テープ3の温度を55℃以上80℃以下に加熱できる。パンケーキ2、ガイドローラ11、キャプスタンローラ7、ピンチローラ8、固定ガイド12は全てを加熱しても良いし、これらの少なくとも1つを加熱しても良い。どのような加熱装置を用いるかは特に限定されないが、上記ハロゲンランプは、パンケーキ2、固定ガイド12のような比較的大型の部材の加熱に適しており、上記加熱ヒータはそれ以外の小型のローラ等の加熱に適している。
【0084】
上記のように、55℃以上80℃以下の温度に加熱されてサーボ信号記録ヘッド4に達した磁気テープ3は、そのサーボバンドにサーボ信号が熱アシスト記録される。
【0085】
サーボ信号記録ヘッド4を出た磁気テープ3は、キャプスタンローラ13及びピンチローラ14を介してサーボ信号再生ヘッド16に達する。ここで、磁気テープ3に記録されたサーボ信号がサーボ信号再生ヘッド16で再生され、サーボ信号の出力を確認することができる。サーボ信号再生ヘッド16を出た磁気テープ3は、テンション制御部15を介して、巻き取りリール10に巻き取られる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。また、以下の説明において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0087】
(実施例1)
[磁性塗料の調製]
表1に示す磁性塗料成分(1)を高速攪拌混合機で高速混合して混合物を調製した。次に、得られた混合物をサンドミルで250分間分散処理した後、表2に示す磁性塗料成分(2)を加えて分散液を調製した。次に、得られた分散液と、表3に示す磁性塗料成分(3)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、磁性塗料を調製した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
[下塗塗料の調製]
表4に示す下塗塗料成分(1)を回分式ニーダで混練することにより混練物を調製した。次に、得られた混練物と、表5に示す下塗塗料成分(2)とをディスパを用いて撹拌して、混合液を調製した。次に、得られた混合液をサンドミルで100分間分散して分散液を調製した後、この分散液と、表6に示す下塗塗料成分(3)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、下塗塗料を調製した。
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
[バックコート層用塗料の調製]
表7に示すバックコート層用塗料成分を混合した混合液を、サンドミルで50分間分散して分散液を調製した。得られた分散液にポリイソシアネートを15部加えて撹拌し、これをフィルタでろ過して、バックコート層用塗料を調製した。
【0096】
【表7】
【0097】
[評価用磁気テープの作製]
非磁性支持体(アラミドフィルム、厚さ:3.6μm)の上に、上記下塗塗料をカレンダ処理後の下塗層の厚さが0.9μmとなるように塗布し、100℃で乾燥して下塗層を形成した。次に、上記下塗層の上に、上記磁性塗料をカレンダ処理後の磁性層の厚さが55nmとなるように塗布し、100℃で乾燥して磁性層を形成した。その乾燥工程の間に、N−S対向磁石を用いて垂直方向に強度450kA/mの配向磁界を印加しながら、垂直配向処理を行った。
【0098】
次に、上記バックコート層用塗料を、非磁性支持体の上記下塗層及び上記磁性層が形成された面とは反対側の面上に、カレンダ処理後の厚さが0.4μmとなるように塗布し、100℃で乾燥してバックコート層を形成した。
【0099】
その後、上記非磁性支持体の上面側に下塗層及び磁性層が形成され、下面側にバックコート層が形成された原反ロールを、7段の金属ロールを有するカレンダ装置で温度100℃、線圧300kg/cmでカレンダ処理した。
【0100】
最後に、得られた原反ロールを60℃で48時間硬化処理し、磁気シートを作製した。この磁気シートを1/2インチ幅に裁断して、実施例1の評価用磁気テープを作製した。
【0101】
(実施例2)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(B)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の評価用磁気テープを作製した。
【0102】
磁性粉末(B) 組成:ε−Ga0.9Fe1.13、平均粒子径:16.7nm、Hc(25℃):5520〔Oe〕、Hc温度依存性:−64〔Oe/℃〕、キュリー温度:102℃
【0103】
(実施例3)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(C)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の評価用磁気テープを作製した。
【0104】
磁性粉末(C) 組成:ε−Ga0.63Fe1.373、平均粒子径:17.5nm、Hc(25℃):6030〔Oe〕、Hc温度依存性:−56〔Oe/℃〕、キュリー温度:120℃
【0105】
(実施例4)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(D)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の評価用磁気テープを作製した。
【0106】
磁性粉末(D) 組成:ε−Ti0.04Co0.03Al0.21Fe1.723、平均粒子径:16.3nm、Hc(25℃):4770〔Oe〕、Hc温度依存性:−36〔Oe/℃〕、キュリー温度:151℃
【0107】
(実施例5)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(E)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の評価用磁気テープを作製した。
【0108】
磁性粉末(E) 組成:ε−Ti0.06Co0.05Ga0.24Fe1.653、平均粒子径:16.5nm、Hc(25℃):4410〔Oe〕、Hc温度依存性:−32〔Oe/℃〕、キュリー温度:146℃
【0109】
(比較例1)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(F)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の評価用磁気テープを作製した。
【0110】
磁性粉末(F) 組成:ε−Ga1.0Fe1.03、平均粒子径:17.1nm、Hc(25℃):5010〔Oe〕、Hc温度依存性:−68〔Oe/℃〕、キュリー温度:95℃
【0111】
(比較例2)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の評価用磁気テープを作製した。
【0112】
磁性粉末(G) 組成:ε−Ti0.05Co0.05Al0.22Fe1.683、平均粒子径:16.8nm、Hc(25℃):4670〔Oe〕、Hc温度依存性:−19〔Oe/℃〕、キュリー温度:263℃
【0113】
(比較例3)
表1に示す磁性塗料成分(1)の磁性粉末(A)を下記磁性粉末(H)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の評価用磁気テープを作製した。
【0114】
磁性粉末(H) 組成:ε−Ti0.06Co0.07Al0.22Fe1.653、平均粒子径:17.2nm、Hc(25℃):4150〔Oe〕、Hc温度依存性:−30〔Oe/℃〕、キュリー温度:155℃
【0115】
<磁性粉末及び磁性層の保磁力並びに温度依存性>
日本カンタム・デザイン社製の完全無冷媒型理特性測定装置“PPMS Dyna Cool”(製品名、印加磁場:5T、スィープ速度:40Oe/sec)を用いて、磁性粉末及び磁性層の各温度における保磁力Hc及び保磁力Hcの温度依存性を測定し、また、磁性粉末のキュリー温度を測定した。上記保磁力Hcの温度依存性は、0℃、25℃、45℃、60℃における保磁力Hcの値を用いて、最小二乗法で算出した近似直線の傾き〔Oe/℃〕として求めた。上記磁性層の保磁力Hcは、磁性層の厚さ方向の保磁力として測定した。
【0116】
<出力特性>
LTOドライブを改造して作製したリニアテープ電磁変換特性測定装置を用いて、これに、書込みトラック幅5μm、読み出しトラック幅2.3μmの誘導型/GMR複合磁気ヘッドを取り付け、温度60℃の雰囲気中で熱アシストし、テープ速度1.5m/secで、記録波長200nm(G7×1.05倍の線記録密度)の信号を評価用磁気テープに記録して評価した。
【0117】
次いで、再び評価用磁気テープを走行させて信号を再生し、再生した信号を市販のMRヘッド用Readアンプで増幅した後、キーサイト・テクノロジー社製のスペクトラムアナライザー“N9020A”(製品名)を用いて、信号の基本波成分出力(S)とその2倍の周波数までの積分ノイズ(N)とを測定し、比較例2のS/N比を基準(0dB)として、他のS/N比を比較例2のS/N比に対する相対値(dB)で示した。上記出力特性の評価はサーボ信号を記録せずに行った。
【0118】
<加速寿命試験>
評価用磁気テープを、温度50℃、相対湿度80%の環境に90日間保管する加速寿命試験を行い、この加速寿命試験の前後で前述の出力特性の測定と同様にして、S/N比を測定し、上記加速寿命試験の後のS/N比から上記加速寿命試験の前のS/N比を差し引いた値を求めた。
【0119】
以上の評価結果を表8及び表9に示す。表8では、磁性粉末の種類、鉄以外の添加元素MとFeとのモル比:x/(2−x)、及び各温度での磁性層の保磁力Hcを示した。また、表9では、磁性層の保磁力Hcの温度依存性、出力特性、及び加速寿命試験前後のSN比の差を示した。
【0120】
【表8】
【0121】
【表9】
【0122】
表9から、実施例1〜5の出力特性(SN比)は、比較例1〜3に比べて高いことが分かる。これに対し、55℃のHcが3700〔Oe〕を上回った比較例2、及び25℃のHcが4100エルステッド〔Oe〕を下回った比較例3は、出力特性(SN比)が低いことが分かる。また、80℃のHcが1200〔Oe〕を下回った比較例1では、加速寿命試験の前後のSN比の差が大きく、耐久性に劣ることが分かる。
【0123】
<サーボ信号出力の測定>
実施例5の評価用磁気テープに対して、図3に示すサーボ信号記録装置を用いて、評価用磁気テープの温度を10℃から80℃に変化させて、サーボ信号記録ヘッドによりサーボ信号を熱アシスト記録した。その後、サーボ信号再生ヘッドでサーボ信号を再生し、サーボ信号出力を出力電圧(V)として測定した。上記評価用磁気テープの温度の変更は、サーボ信号記録ヘッドより上流に位置するパンケーキ、ガイドローラ、キャプスタンローラ、ピンチローラ及び固定ガイドの加熱温度を変更することにより行い、磁気テープの温度は、固定ガイド12上を走行している磁気テープの摺動面と反対側の面の温度を、非接触の赤外線放射温度計を用いて測定した。その結果を表10に示す。
【0124】
【表10】
【0125】
表10から、実施例5の評価用磁気テープに対して、本実施形態のサーボ信号記録装置を用いて、評価用磁気テープの温度を変化させて、サーボ信号を熱アシスト記録したところ、評価用磁気テープの温度が60℃及び80℃の場合に、サーボ出力電圧が他の温度の場合に比べて高く、トラッキングサーボ特性が優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体は、電磁変換特性及び耐久性に優れ、且つ、トラッキングサーボ特性に優れた磁気記録媒体として利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
100 磁気記録媒体(磁気テープ)
101 非磁性支持体
102 下塗層
103 磁性層
104 バックコート層
111 サーボバンド
112 データバンド
100a 第1ストライプ群
100b 第2ストライプ群
100c 第3ストライプ群
100d 第4ストライプ群
1 サーボ信号記録装置
2 パンケーキ
3 磁気テープ
4 サーボ信号記録ヘッド
5 テンション制御部
6 テープ変動測定部
7 キャプスタンローラ
8 ピンチローラ
9 テンション制御部
10 巻き取りリール
11 ガイドローラ
12 固定ガイド
13 キャプスタンローラ
14 ピンチローラ
15 テンション制御部
16 サーボ信号再生ヘッド
図1
図2
図3