特開2019-212450(P2019-212450A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-212450(P2019-212450A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】止水剤塗布ノズル
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/32 20060101AFI20191115BHJP
   H01B 7/285 20060101ALI20191115BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20191115BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   H01B13/32
   H01B7/285
   B05C5/00 101
   B05B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-106385(P2018-106385)
(22)【出願日】2018年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝覚
【テーマコード(参考)】
4F033
4F041
5G313
5G327
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033BA03
4F033DA02
4F033EA02
4F033NA01
4F041AA13
4F041AB01
4F041BA12
4F041BA13
5G313FA01
5G313FB04
5G313FC06
5G313FD01
5G313FD06
5G327EA10
(57)【要約】
【課題】電線束に対する止水剤の塗布量のバラツキを低減することが可能な止水剤塗布ノズルを提供すること。
【解決手段】止水剤塗布ノズル40は、複数本の電線Cを整列させた電線束CTに対して、電線Cの整列方向に沿って止水剤を塗布する。止水剤塗布ノズル40は、止水剤を電線束CTへ向けて吐出するように整列方向に交差する交差方向に延びるスリット状の吐出口52と、止水剤を吐出口52に向けて供給する供給路51と、供給路51を経た止水剤の少なくとも一部を、吐出口52からの吐出前に交差方向に向けて案内する案内壁54と、を備える。案内壁54は、2つのスリット状の吐出口52に挟まれる位置に配置される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を整列させた電線束に対して前記電線の整列方向に沿って止水剤を塗布する止水剤塗布ノズルであって、
前記止水剤を前記電線束へ向けて吐出するように前記整列方向に交差する交差方向に延びるスリット状の吐出口と、
前記止水剤を前記吐出口に向けて供給する供給路と、
前記供給路を経た前記止水剤の少なくとも一部を、前記吐出口からの吐出前に前記交差方向に向けて案内する案内壁と、を備える、
止水剤塗布ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の止水剤塗布ノズルにおいて、
前記吐出口は、
前記交差方向に沿って並ぶ2つのスリット状の開口部から構成され、
前記案内壁は、
2つの前記開口部に挟まれる位置に設けられる、
止水剤塗布ノズル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の止水剤塗布ノズルであって、
前記供給路に接続されて前記供給路を経た前記止水剤を一時的に貯留する空間を画成すると共に、前記空間を経た前記止水剤を前記吐出口に向けて送り込む貯留部を更に備え、
前記貯留部は、
前記空間の前記交差方向に直交する平面上の断面積が、前記供給路との接続箇所から離れるにつれて小さくなるように構成された、
止水剤塗布ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の電線を整列させた電線束に対してその整列方向に沿って止水剤を塗布する止水剤塗布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載された電源等と各種の電装品等とを接続するための電線束(いわゆるワイヤハーネス)が知られている。そのようなワイヤハーネスのうち、例えば、車体パネル等に設けられた貫通孔をグロメットを介して通り抜けるように配索されるワイヤハーネスには、止水性を向上するべく、グロメットとの接触箇所に止水剤を設ける止水処理が施される場合がある(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
この種の止水処理の手法として、例えば、ワイヤハーネスを構成する電線束の外周部分に止水剤を塗布した後に止水剤を覆うようにシート材を巻き付け、シート材を介して止水剤を電線束の内側向きに押圧することで、電線と電線との間の隙間に止水剤を浸透させる手法が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。また、電線束へ止水剤を塗布するための装置として、例えば、いわゆるフラットケーブルのような面状の配列状態をなすように整列させた電線束に対し、複数の止水剤塗布用のノズルによって電線束を挟み込みながら止水剤を塗布する装置が挙げられる(例えば、特許文献2,3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4118769号公報
【特許文献2】特開2004−55267号公報
【特許文献3】特開2008−181815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤハーネスに対して上述したような止水処理を施すにあたり、止水剤塗布用のノズルに設けられた止水剤の吐出口の開口面積を大きくし、一度の塗布工程で出来る限り多数の電線に対して一括して止水剤を塗布するようにすれば、止水処理の作業効率を向上し得るとも思われる。しかし、不用意に吐出口を大型化すると、止水剤の粘性の大きさ等に起因し、吐出口の開口領域の場所ごとに(特に、吐出口がスリット状の幅広形状を有する場合、その幅方向において)止水剤の吐出量にバラツキが生じる可能性がある。このような吐出量のバラツキが生じた場合、電線束に対して止水剤が均等に塗布されず、止水剤の厚さの偏り(塗布ムラ)が生じる可能性がある。止水性を向上する観点等において、このような塗布ムラは出来る限り抑制されることが望ましい。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線束に対する止水剤の塗布量のバラツキを低減することが可能な止水剤塗布ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る止水剤塗布ノズルは、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
複数本の電線を整列させた電線束に対して前記電線の整列方向に沿って止水剤を塗布する止水剤塗布ノズルであって、
前記止水剤を前記電線束へ向けて吐出するように前記整列方向に交差する交差方向に延びるスリット状の吐出口と、
前記止水剤を前記吐出口に向けて供給する供給路と、
前記供給路を経た前記止水剤の少なくとも一部を、前記吐出口からの吐出前に前記交差方向に向けて案内する案内壁と、を備える、
止水剤塗布ノズルであること。
(2)
上記(1)に記載の止水剤塗布ノズルにおいて、
前記吐出口は、
前記交差方向に沿って並ぶ2つのスリット状の開口部から構成され、
前記案内壁は、
2つの前記開口部に挟まれる位置に設けられる、
止水剤塗布ノズルであること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載の止水剤塗布ノズルであって、
前記供給路に接続されて前記供給路を経た前記止水剤を一時的に貯留する空間を画成すると共に、前記空間を経た前記止水剤を前記吐出口に向けて送り込む貯留部を更に備え、
前記貯留部は、
前記空間の前記交差方向に直交する平面上の断面積が、前記供給路との接続箇所から離れるにつれて小さくなるように構成された、
止水剤塗布ノズルであること。
【0008】
上記(1)の構成の止水剤塗布ノズルによれば、供給路を経た止水剤の少なくとも一部が、案内壁によって交差方向に向けて案内された後、スリット状の吐出口から吐出されることになる。よって、このような案内壁が存在しない場合に比べ、スリット状の吐出口の開口領域の場所ごとの吐出量のバラツキを低減できる。したがって、本構成の止水剤塗布ノズルは、電線束に対する止水剤の塗布量のバラツキを低減することが可能である。
【0009】
上記(2)の構成の止水剤塗布ノズルによれば、案内壁を止水剤塗布ノズルの吐出口内に配置するにあたり、吐出口を構成する2つのスリット状の開口部に挟まれる位置に、案内壁が配置される。この配置により、他の位置に案内壁が配置される場合に比べ、案内壁が2つの開口部に対してより均一に止水剤を案内し得ることになる。よって、本構成の止水剤塗布ノズルは、電線束に対する止水剤の塗布量のバラツキを更に低減することが可能である。
【0010】
上記(3)の構成の止水剤塗布ノズルによれば、貯留部の内部空間の断面積が、供給路との接続箇所から離れるにつれて小さくなる。貯留部の内部空間がこのような形状を有することにより、止水剤がある程度大きな粘性を有する場合であっても、貯留部の内部空間における止水剤の供給圧の偏りを、供給路との接続箇所からの距離によらず低減し得る。よって、本構成の止水剤塗布ノズルは、電線束に対する止水剤の塗布量のバラツキを更に低減することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線束に対する止水剤の塗布量のバラツキを低減することが可能な止水剤塗布ノズルを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、止水剤塗布装置の構成を説明する概略側面図である。
図2図2は、止水剤塗布装置の下端部における概略側面図である。
図3図3は、固定側ノズルの斜視図である。
図4図4は、固定側ノズルの正面図である。
図5図5は、図4におけるA−A断面図である。
図6図6は、図4におけるB−B断面図である。
図7図7は、図6におけるC部拡大図である。
図8図8(a)は、本実施形態に係る止水剤塗布ノズルである可動側ノズルを正面側からみた斜視図であり、図8(b)は、可動側ノズルを背面側からみた斜視図である。
図9図9は、本実施形態に係る止水剤塗布ノズルである可動側ノズルの正面図である。
図10図10(a)は、図9におけるD−D断面斜視図であり、図10(b)は、図9におけるE−E断面図である。
図11図11は、図9におけるF−F断面図である。
図12図12は、図11におけるG部拡大図である。
図13図13(a)は、変形例に係る可動側ノズルの図10(b)に対応する図であり、図13(b)は、他の変形例に係る可動側ノズルの図10(b)に対応する図である。
図14図14は、変形例に係る固定側ノズルの斜視図である。
図15図15は、変形例に係る固定側ノズルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0015】
<止水剤塗布装置>
図1は、止水剤塗布装置の構成を説明する概略側面図である。
【0016】
図1に示すように、止水剤塗布装置10は、インナー11と、二つのアウター12とを備えている。この止水剤塗布装置10は、複数本の電線を束ねたワイヤハーネスのグロメットへの挿通箇所に止水処理を施すために、ワイヤハーネスを構成する電線束の所定箇所に止水剤を塗布する装置である。止水剤塗布装置10で電線束に止水剤が塗布されたワイヤハーネスは、その止水剤の塗布箇所にシートが巻き付けられてグロメットへ通される。止水剤としては、シリコーン等の1液性の樹脂を用いるのが好ましいが、2液性の樹脂を用いてもよい。
【0017】
止水剤塗布装置10を構成するインナー11及びアウター12は、支持ブロック13に支持されている。インナー11は、支持ブロック13に固定されて下方へ延在されている。アウター12は、インナー11の両側に配置されている。
【0018】
インナー11の端部には、固定側ノズル20が設けられ、それぞれのアウター12の端部には、可動側ノズル40が設けられている。アウター12は、支持ブロック13に設けられた取付片14に回動可能に支持されている。これにより、アウター12に設けられた可動側ノズル40は、固定側ノズル20に対して近接離間方向へ移動可能とされている。
【0019】
支持ブロック13とアウター12との間には、取付片14におけるアウター12の支持箇所よりも後端側に圧縮バネ15が設けられている。これにより、アウター12の先端に設けられた可動側ノズル40は、インナー11の先端に設けられた固定側ノズル20へ向かって近接する方向へ付勢されている。
【0020】
支持ブロック13には、アウター12の可動側ノズル40に繋がるチューブ16が接続されている。この支持ブロック13には、アダプタ17が設けられており、このアダプタ17を介してディスペンサ(図示略)から止水剤が供給される。固定側ノズル20には、支持ブロック13に供給される止水剤が、インナー11に設けられた流路(図示略)を介して供給される。可動側ノズル40には、支持ブロック13に供給される止水剤が、チューブ16を介して供給される。固定側ノズル20は、供給される止水剤を両側へ向かって吐出し、可動側ノズル40は、供給される止水剤を、それぞれ片側である内側へ吐出する。
【0021】
図2は、止水剤塗布装置の下端部における概略側面図である。
【0022】
図2に示すように、止水剤塗布装置10は、ワイヤハーネスを構成する複数本の電線Cを二つの電線束CTに分割した状態で、その電線束CTの間にインナー11の固定側ノズル20が挿し込まれ、電線束CTの外側にアウター12の可動側ノズル40が配置される。この状態で、電線束CTの電線Cは、インナー11側である内側を基準としてフラットに整列される。
【0023】
止水剤塗布装置10は、電線束CTに対して電線Cの整列方向へ相対的に移動されることで、固定側ノズル20から吐出される止水剤を各電線束CTの基準とされた一方側に塗布し、可動側ノズル40から吐出される止水剤を各電線束CTの基準と反対の他方側に塗布する。
【0024】
<固定側ノズル>
図3は、固定側ノズルの斜視図である。図4は、本実施形態に係る止水剤塗布ノズルである固定側ノズルの正面図である。図5は、図4におけるA−A断面図である。図6は、図4におけるB−B断面図である。図7は、図6におけるC部拡大図である。
【0025】
図3及び図4に示すように、固定側ノズル20は、ノズル本体21に、一対の吐出部22を有している。それぞれの吐出部22は、供給路31と、吐出口32と、貯留部33とを有している。ノズル本体21は、その下部に、下方へ向かって次第に窄まるガイド部23を有しており、電線束CT間へ円滑に挿し込み可能とされている。
【0026】
供給路31は、ノズル本体21の上部で開口されており、インナー11の流路と連通される。これにより、供給路31には、インナー11の流路から止水剤が送り込まれる。供給路31は、ノズル本体21の下方へ向かってノズル本体21の幅方向の中央へ傾斜されている。
【0027】
吐出口32は、電線Cの整列方向と直交する方向、つまり、ノズル本体21の幅方向に沿って形成されたスリットSからなるもので、ノズル本体21の側面に設けられている。吐出口32は、供給路31に供給された止水剤を電線束CTに向かって吐出する。
【0028】
図5及び図6に示すように、貯留部33は、ノズル本体21における供給路31と吐出口32との間に設けられている。貯留部33は、吐出口32に対してノズル本体21の奥側で、ノズル本体21の幅方向に沿って形成されている。この貯留部33には、その中央で供給路31が連通されており、この供給路31から止水剤が送り込まれる。貯留部33には、長手方向にわたって吐出口32が連通されており、これにより、貯留部33に送り込まれた止水剤は、貯留部33から吐出口32を構成するスリットSへ送り出される。この貯留部33は、吐出口32からの止水剤の吐出方向と直交する断面積が吐出口32よりも大きな空隙からなるもので、供給路31から送り込まれる止水剤を貯留する。
【0029】
図7に示すように、ノズル本体21の側面には、吐出口32における止水剤の吐出方向前方側に、保持凹部35が形成されている。これにより、スリットSからなる吐出口32は、保持凹部35の底部で開口されている。この保持凹部35には、吐出口32から吐出される止水剤が保持される。
【0030】
<可動側ノズル>
図8(a)は、本実施形態に係る止水剤塗布ノズルである可動側ノズルを正面側からみた斜視図であり、図8(b)は、可動側ノズルを背面側からみた斜視図である。図9は、本実施形態に係る止水剤塗布ノズルである可動側ノズルの正面図である。図10(a)は、図9におけるD−D断面斜視図であり、図10(b)は、図9におけるE−E断面図である。図11は、図9におけるF−F断面図である。図12は、図11におけるG部拡大図である。
【0031】
図8及び図9に示すように、可動側ノズル40は、ノズル本体41に、吐出部42を有している。吐出部42は、供給路51と、吐出口52と、貯留部53と、案内壁54と、を有している。ノズル本体41は、支柱部43と、支柱部43の下部の幅広部44とを有している。
【0032】
供給路51は、ノズル本体41の支柱部43の下部における背面側で開口されており(図8(b)参照)、この供給路51には、チューブ16が接続される。これにより、供給路51には、チューブ16から止水剤が送り込まれる。供給路51は、ノズル本体41の幅広部44の中央へ向かって延在されている(図10を参照)。
【0033】
吐出口52は、電線Cの整列方向と直交する方向、つまり、ノズル本体41の幅方向に沿って配列された一対のスリットSからなるもので、ノズル本体41の幅広部44の側面に設けられている。一対のスリットSは、案内壁54を挟んで一列に直線状に幅方向に並んでいる。吐出口52は、供給路51に供給された止水剤を電線束CTに向かって吐出する。
【0034】
図10及び図11に示すように、貯留部53は、ノズル本体41の幅広部44における供給路51と吐出口52との間に設けられている。貯留部53は、吐出口52に対してノズル本体41の幅広部44の奥側で、幅広部44に沿って形成されている。貯留部53の内部空間の幅方向(図10(b)において左右方向)に直交する平面上の断面積(空間断面積)は、貯留部53の幅方向に亘って一定である。この貯留部53には、その中央で供給路51が連通されており、この供給路51から止水剤が送り込まれる。図12に示すように、貯留部53には、吐出口52のスリットSが連通されており、これにより、貯留部53に送り込まれた止水剤は、貯留部53から吐出口52を構成する一対のスリットSへ送り出される。この貯留部53は、吐出口52からの止水剤の吐出方向と直交する断面積が吐出口52よりも大きな空隙からなるもので、供給路51から送り込まれる止水剤を貯留する。
【0035】
図10に示すように、案内壁54は、2つのスリットSに挟まれる位置に設けられており、幅方向に延びる吐出口52の幅方向中央部にて吐出口52の上下壁を連結する壁部分を構成している。換言すれば、案内壁54は、吐出口52を、幅方向に沿って並ぶ2つのスリットSに分割するように配置されている。また、図10(b)から理解できるように、案内壁54は、供給路51と貯留部53との接続箇所からの止水剤の貯留部53への流入方向の延長線上に位置している。
【0036】
このため、供給路51から貯留部53に流入した止水剤の少なくとも一部が、案内壁54に衝突し、案内壁54に衝突した止水剤の流れの向きが幅方向(図10(b)において左右方向)に変化する。この結果、止水剤の少なくとも一部が、案内壁54によって幅方向に向けて案内され、その後、一対のスリットSからなる吐出口52から吐出されることになる。よって、案内壁54が存在しない場合に比べ、一対のスリットSからなる吐出口52からの吐出量の幅方向の偏りを低減できる。
【0037】
<止水剤の塗布>
次いで、上記構成の止水剤塗布装置10によってワイヤハーネスを構成する電線束CTに止水剤を塗布する場合について説明する。
【0038】
圧縮バネ15の付勢力に抗してアウター12を回動させて保持し、インナー11の固定側ノズル20からアウター12の可動側ノズル40を離間させる。
【0039】
複数の電線Cを二つの電線束CTに分割したワイヤハーネスに対して、固定側ノズル20を分割した電線束CT間へ挿し込み、固定側ノズル20側を基準として各電線束CTの電線Cをフラットに整列させ、アウター12の保持を解除する。このようにすると、アウター12の可動側ノズル40が圧縮バネ15の付勢力によって固定側ノズル20側へ付勢される。これにより、固定側ノズル20と可動側ノズル40とで電線束CTが挟まれた状態とされる。
【0040】
この状態で、ディスペンサから止水剤を供給することで、固定側ノズル20及び可動側ノズル40のそれぞれの吐出部22,42の吐出口32,52から止水剤を吐出させながら止水剤塗布装置10を、ワイヤハーネスに対する装着時と反対に引き離すように移動させる。このようにすると、止水剤を吐出する固定側ノズル20及び可動側ノズル40が、各電線束CTに対して電線Cの整列方向へ移動することで、各電線束CTの表裏に止水剤が帯状に塗布される。
【0041】
この止水剤の塗布工程において、固定側ノズル20及び可動側ノズル40では、供給路31,51から送り込まれる止水剤が、吐出口32,52からの止水剤の吐出方向と直交する断面積が吐出口32,52よりも大きな空隙からなる貯留部33,53に一旦貯留され、止水剤の供給圧が貯留部33,53で分散される。したがって、吐出口32,52から電線束CTへ向かって吐出される止水剤の吐出圧の偏りが抑制される。
【0042】
そして、固定側ノズル20では、吐出口32を構成するスリットSから止水剤が幅広く均等に吐出される。この吐出口32から吐出される止水剤は、保持凹部35に保持された後、電線束CTの基準とされた一方側に幅広く塗布される。
【0043】
また、可動側ノズル40では、吐出口52を構成する一対のスリットSから止水剤が幅広く吐出される。したがって、電線束CTには、基準と反対の他方側に幅広く止水剤が塗布される。このとき、上述した案内壁54による止水剤の幅方向への案内作用(図10(b)の矢印の向きの変化を参照)により、案内壁54が存在しない場合に比べ、一対のスリットSからなる吐出口52からの吐出量の幅方向の偏りをより一層低減できる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態に係る止水剤塗布ノズルである可動側ノズル40によれば、供給路51を経た止水剤の少なくとも一部が、案内壁54によってノズル本体41の幅方向に向けて案内された後、一対のスリットSからなる吐出口52から吐出されることになる。よって、案内壁54が存在しない場合に比べ、一対のスリットSからなる吐出口52からの吐出量の幅方向の偏りを低減できる。したがって、本構成の止水剤塗布ノズルは、電線束CTへ止水剤を幅広く均等に塗布して止水処理の作業性を向上させることが可能である。
【0045】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、貯留部53における幅方向(図10(b)において左右方向)に直交する空間断面積は、貯留部53の幅方向に亘って一定である(図10(b)参照)。これに対し、図13(a)に示すように、貯留部53を画成する奥側(図13(a)にて上側)の壁53aを、貯留部53の幅方向中央部から幅方向外側に離れるにつれて前側(図13(a)にて下側)に位置するように傾斜させてもよい。これによれば、貯留部53における幅方向(図13(a)において左右方向)に直交する空間断面積が、貯留部53の幅方向中央部(換言すると、供給路51と貯留部53との接続箇所)から離れるにつれて小さくなる。この結果、貯留部53の内部での止水剤の供給圧のバラツキを、供給路51と貯留部53との接続箇所からの距離によらず低減できる。
【0047】
更に、上記実施形態では、案内壁54は、吐出口52を、幅方向に沿って並ぶ2つのスリットSに分割するように配置されている(図10(b)参照)。これに対し、図13(b)に示すように、案内壁54が、吐出口52を幅方向に分割することなく、幅方向に延びる1つのスリットSで構成された吐出口52よりも奥側(図13(b)にて上側)に位置していてもよい。この場合、案内壁54は、貯留部53の幅方向中央部にて貯留部53の上下壁を連結する壁部分である。この例においても、案内壁54は、2つのスリットSに挟まれる位置にあると言え、供給路51と貯留部53との接続箇所からの止水剤の貯留部53への流入方向の延長線上に位置している。このため、案内壁54は、上述した止水剤の幅方向への案内作用(図13(b)の矢印の向きの変化を参照)を発揮し得る。
【0048】
更に、例えば、可動側ノズル40の吐出口52における止水剤の吐出方向前方側に、止水剤を保持する保持凹部を形成してもよい。このようにすると、電線束CTへ止水剤を塗布する際に、吐出口52から吐出された止水剤が電線Cとの接触によってそぎ落ちるのを抑制でき、電線束CTへ塗布する止水剤の均一な塗布厚を確実に確保することができる。
【0049】
ここで、固定側ノズル20及び可動側ノズル40の変形例について説明する。
<固定側ノズルの変形例>
図14は、変形例に係る固定側ノズルの斜視図である。図15は、変形例に係る固定側ノズルの正面図である。
【0050】
図14及び図15に示すように、この変形例に係る固定側ノズル20Aは、電線Cの整列方向と直交する方向に沿って配列された複数の孔部Hからなる吐出口32を有しており、これらの孔部Hからなる吐出口32が貯留部33に連通されている。また、これらの複数の孔部Hからなる吐出口32は、ノズル本体21におけるガイド部23に形成されている。
【0051】
この固定側ノズル20Aでは、吐出口32とされた複数の孔部Hから止水剤を均等に吐出させて電線束CTに対して止水剤を均等に幅広く塗布することができる。また、吐出口32を複数の孔部Hとすることで、各孔部Hから止水剤を高い吐出圧で遠くへ飛ばすことができ、離れた電線束CTの電線Cに対しても確実に止水剤を塗布することができる。
【0052】
なお、この変形例に係る固定側ノズル20Aは、吐出口32がノズル本体21におけるガイド部23に形成されているので、電線束CTに対して吐出口32が離れた位置に配置されることとなる。したがって、吐出口32から吐出される止水剤を保持する保持凹部35がなくても、吐出した止水剤が相対的に移動する電線Cとの接触によってそぎ落とされることなく電線Cに確実に塗布され、これにより、塗布厚を確実に確保することができる。
【0053】
ここで、上述した本発明に係る止水剤塗布ノズルの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
複数本の電線(C)を整列させた電線束(CT)に対して前記電線の整列方向に沿って止水剤を塗布する止水剤塗布ノズル(40)であって、
前記止水剤を前記電線束へ向けて吐出するように前記整列方向に交差する交差方向に延びるスリット状の吐出口(52)と、
前記止水剤を前記吐出口に向けて供給する供給路(51)と、
前記供給路を経た前記止水剤の少なくとも一部を、前記吐出口からの吐出前に前記交差方向に向けて案内する案内壁(54)と、を備える、
止水剤塗布ノズル。
[2]
上記[1]に記載の止水剤塗布ノズルにおいて、
前記吐出口(52)は、
前記交差方向に沿って並ぶ2つのスリット状の開口部(S)から構成され、
前記案内壁(54)は、
2つの前記開口部(S)に挟まれる位置に設けられる、
止水剤塗布ノズル。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の止水剤塗布ノズルであって、
前記供給路(51)に接続されて前記供給路を経た前記止水剤を一時的に貯留する空間を画成すると共に、前記空間を経た前記止水剤を前記吐出口(52)に向けて送り込む貯留部(53)を更に備え、
前記貯留部(53)は、
前記空間の前記交差方向に直交する平面上の断面積が、前記供給路(51)との接続箇所から離れるにつれて小さくなるように構成された、
止水剤塗布ノズル。
【符号の説明】
【0054】
40 可動側ノズル(止水剤塗布ノズル)
51 供給路
52 吐出口
53 貯留部
54 案内壁
C 電線
CT 電線束
S スリット(開口部)
図1
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