【課題】本発明は、特にスルーホールに端子部を挿入し、リフロー処理によって基板に電子部品を実装でき、基板に対する電子部品の接続強度が安定して高いリフロー実装構造等を提供する。
【解決手段】本発明のリフロー実装構造は、スルーホール102を有する基板100と、端子部74を有する接続対象物とを具え、中間挿入部分78は、スルーホール102の内面に向かって迫り出している突出部82を有し、基端側挿入部分80は、突出部82の上面との境界をなす一端E1から、端子部74の挿入基端E2まで延在する特定外面84を有し、基端側挿入部分80の外面からスルーホール102の対向する内面までの距離dを測定したとき、特定外面84は、前記距離dが最も長い部分をもち、特定外面84と、突出部82の上面82aと、特定外面84および突出部82の上面82aを取り囲むスルーホール102の内面とによって、半田溜まり空間Sを区画形成したものである。
スルーホールを有する基板と、端子部を有する接続対象物とを具え、前記スルーホールに前記端子部を挿入した状態でのリフロー処理により、前記基板に前記接続対象物が実装されているリフロー実装構造において、
前記端子部を、挿入先端から前記端子部の延在方向に3分割して、先端側挿入部分、中間挿入部分および基端側挿入部分とするとき、
前記中間挿入部分は、前記スルーホールの内面に向かって迫り出している突出部を有し、
前記基端側挿入部分は、前記突出部の上面との境界をなす一端から、前記端子部の挿入基端まで延在する特定外面を有し、前記基端側挿入部分の外面から前記スルーホールの対向する内面までの距離を測定したとき、前記特定外面は、前記距離が最も長い部分をもち、
前記特定外面と、前記突出部の上面と、前記特定外面および前記突出部の上面を取り囲む前記スルーホールの内面とによって、半田溜まり空間を区画形成してなることを特徴とするリフロー実装構造。
【背景技術】
【0002】
通信機器や電子機器等に搭載される基板に電子部品を実装する方法としては、例えば、プリント配線板等の基板上に形成したランドに、半田を塗布(ペースト)し、その上に、例えばコネクタ等の電子部品を載置した後にリフロー槽に入れて加熱(リフロー処理)することによって実装する、いわゆる表面実装法や、電子部品の端子部を基板に形成したスルーホールに挿入した後に、例えばフロー方式の半田噴流槽で半田付けすることによって実装する、いわゆる挿入実装法が挙げられる。
【0003】
また、基板に実装される電子部品は、用途や顧客の要求に応じて、表面実装されるタイプの電子部品と、挿入実装されるタイプの電子部品とが混在して同一基板に実装される場合もあり、かかる場合には、例えば、リフロー処理により表面実装を行なう工程の後に、挿入実装を行なう工程がさらに必要となり、これは、製造工程を増えて、手間もかかるという問題がある。
【0004】
このため、近年では、基板のスルーホールに電子部品の端子部を挿入する挿入実装タイプの場合も、表面実装タイプと同様、リフロー処理で、基板に電子部品を実装できる技術の開発が要求されるようになってきた。
【0005】
例えば、挿入実装タイプの電子部品をリフロー処理で基板に実装する技術を開示したものとしては、特許文献1、2等が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、複数のリード端子を有する電子部品と、電子部品の複数のリード端子を挿入する挿入穴を有するプリント配線板とを備え、リード端子の中心が、プリント配線板のリード端子を挿入する挿入穴の中心に対して偏芯し、リード端子と挿入穴との間隔が狭い間隙部分に、半田接続部が形成されている、リード端子つき電子部品をリフロー工法でプリント配線板に実装する際の電子部品の実装構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、プリント配線基板に形成されたスルーホールに対応する位置に遮蔽体が形成されたメタルマスクの開口部を通してスルーホールの内側にスルーホールを塞がないようにクリーム半田を印刷するクリーム半田印刷ステップと、クリーム半田を半田付けすることより、スルーホールの一端にリード付部品のリードを挿入するための孔である挿入孔を形成する挿入孔形成ステップと、スルーホールに挿入孔を形成する半田付けが行われた後で、スルーホールの他端からスルーホールの内部に対してクリーム半田を印刷するとともに、他端から挿入孔に向けてリードを挿入するリード挿入ステップとを含むことを特徴とする半田付け方法が開示されている。
【0008】
特許文献1に記載された電子部品の実装構造は、リード端子の中心を、挿入穴の中心との関係で適正位置に配置することによって、一定の厚みを持った、半田フィレットを確保できることを目的としており、また、特許文献2に記載の半田付け方法は、表面実装部品とリード部品とを一括でリフロー半田付けする半田付け方法であって、特にスルーホールへの半田充填量を確保できるとともに、スルーホールに挿入されたリードを確実に固定することができることを目的としたものであって、いずれも、リード(端子部)が、一定の太さ(径)寸法で形成された一般的なストレート形状(円柱状)を有する場合の例しか示されておらず、かかる構成の場合、端子部をスルーホール内に強固に半田付けすることはできない。
【0009】
すなわち、端子部の太さ寸法が、スルーホール径との寸法差が小さい場合には、予めスルーホールの内面に塗布(ペースト)してある半田を、スルーホールに端子部が挿入された際に、挿入された端子部の外面が、スルーホールの内面に塗布されている半田を挿入方向に押し出してしまうとともに、リフロー処理時に基板表面上に塗布してある半田がスルーホール内に流入できる隙間もないため、端子部をスルーホール内に強固に半田付けすることはできないという問題がある。
【0010】
また、端子部の太さ寸法が、スルーホール径との寸法差が大きい場合には、端子部の外面とスルーホールの内面との間に大きな隙間(空間)が生じるため、予めスルーホールの内面に塗布(ペースト)してある半田を、スルーホールに端子部が挿入された際に、端子部の外面とスルーホールの内面との間に存在する半田の一部は、リフロー処理時にスルーホールの外部に流れ出し、加えて、基板上に塗布されていた半田の一部が、リフロー処理時にスルーホール内に流入しても、端子部の外面とスルーホールの内面との間の隙間には、半田がスルーホールの外部に流出するのを防止するための構成が存在しないため、スルーホールに流入した半田がスルーホールの外部に流れ出しやすく、この結果、端子部の外面とスルーホールの内面との間には、健全な半田フィレットが形成されにくくなって、端子部をスルーホール内に強固に半田付けすることはできないという問題がある。
【0011】
さらに、端子部がストレート形状(円柱状)を有する場合には、実装された電子部品が基板から引き離す方向に外力(引き抜き力)が作用した際に、端子部には、スルーホールの内面や、スルーホール内に存在する半田に対して引抜き方向に引っ掛かる部分が存在しないため、基板に対する電子部品の接続強度(引抜強度)が十分に得られず、しかも、実装された電子部品ごとの接続強度のバラツキも大きいという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、特に、基板に形成したスルーホールに電子部品の端子部を挿入した状態でリフロー処理することによって、基板に電子部品を挿入実装することができ、しかも、実装された電子部品が基板から引き離す方向に引っ張られた場合であっても、基板に対する電子部品の接続強度(引抜強度)が高く、かつ、バラツキの少ない安定した接続強度を得られるリフロー実装構造およびこれを有するコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)スルーホールを有する基板と、端子部を有する接続対象物とを具え、前記スルーホールに前記端子部を挿入した状態でのリフロー処理により、前記基板に前記接続対象物が実装されているリフロー実装構造において、前記端子部を、挿入先端から前記端子部の延在方向に3分割して、先端側挿入部分、中間挿入部分および基端側挿入部分とするとき、前記中間挿入部分は、前記スルーホールの内面に向かって迫り出している突出部を有し、前記基端側挿入部分は、前記突出部の上面との境界をなす一端から、前記端子部の挿入基端まで延在する特定外面を有し、前記基端側挿入部分の外面から前記スルーホールの対向する内面までの距離を測定したとき、前記特定外面は、前記距離が最も長い部分をもち、前記特定外面と、前記突出部の上面と、前記特定外面および前記突出部の上面を取り囲む前記スルーホールの内面とによって、半田溜まり空間を区画形成してなることを特徴とするリフロー実装構造。
(2)前記先端側挿入部分は、前記スルーホールの挿入側開口に対して挿入しやすい形状をもつ誘い部を有する、上記(1)に記載のリフロー実装構造。
(3)上記(1)または(2)に記載のリフロー実装構造を構成するコネクタであって、相手コネクタの端子と接触する第1接触部、および前記基板の前記スルーホールに挿入される前記端子部を有する前記接続対象物であるコンタクトと、該コンタクトが配列・保持されるハウジングとを具えるコネクタ。
(4)上記(1)または(2)に記載のリフロー実装構造を構成するコネクタであって、相手コネクタの端子と接触する第1接触部、および前記基板の前記スルーホールに挿入される第1接続部を有するコンタクトと、前記基板の前記スルーホールに挿入される前記端子部を有する前記接続対象物である固定具と、前記コンタクト及び前記固定具が配列・保持されるハウジングとを具えるコネクタ。
(5)前記コンタクトの前記第1接続部が、さらに前記端子部である、上記(4)に記載のコネクタ。
(6)上記(1)または(2)に記載のリフロー実装構造を構成する同軸コネクタであって、相手コネクタの端子と接触する第2接触部、および前記基板に実装される第2接続部を有する内部導体と、該内部導体が配列・保持されている絶縁体と、該絶縁体を覆うとともに前記相手コネクタと接触する第3接触部、および前記基板の前記スルーホールに挿入される前記端子部を有する前記接続対象物である外部導体とを具える同軸コネクタ。
(7)前記第2接続部は、挿入先端側部分が、前記基板の前記スルーホールの孔径よりも細い、上記(6)に記載の同軸コネクタ。
(8)前記第2接続部は、挿入先端に向かってテーパー形状を有する、上記(6)または(7)に記載の同軸コネクタ。
(9)上記(1)または(2)に記載のリフロー実装構造を構成する同軸コネクタであって、相手コネクタの端子と接触する第2接触部、および前記基板に実装される前記接続対象物である端子部を有する内部導体と、該内部導体が配列・保持されている絶縁体と、該絶縁体を覆うとともに前記相手コネクタと接触する第3接触部、および前記基板の前記スルーホールに挿入される第3接続部を有する外部導体とを具える同軸コネクタ。
(10)前記第3接続部は、挿入先端側部分が、前記基板の前記スルーホールの孔径よりも細い、上記(9)に記載の同軸コネクタ。
(11)前記第3接続部は、挿入先端に向かってテーパー形状を有する、上記(9)または(10)に記載の同軸コネクタ。
(12)前記第3接続部が、さらに前記端子部である、上記(9)に記載の同軸コネクタ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に従うリフロー実装構造を説明するための斜視図であって、スルーホール内の端子部が視認できるようにして示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す同軸コネクタを構成する1つの端子部を、スルーホール内に挿入された状態を拡大して示した斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す同軸コネクタを構成する1つの端子部を、スルーホール内に挿入し、リフロー処理した後に、スルーホール内の半田溜まり空間に半田が充填された状態を拡大して示した斜視図である。
【
図4】
図4(a)、(b)、(c)は、
図1に示すリフロー実装構造に用いた同軸コネクタを示したものであって、
図4(a)が同軸コネクタを相手コネクタと接触する側から眺めた斜視図、
図4(b)が同軸コネクタを基板に実装される側から眺めた斜視図、そして、
図4(c)が同軸コネクタの断面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、
図4に示す同軸コネクタを構成する内部導体を示したものであって、
図5(a)が内部導体を、同軸コネクタが相手コネクタと接触する側(先端側)から眺めた斜視図、そして、
図5(b)が内部導体を、同軸コネクタが基板に実装される側(後端側)から眺めた斜視図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、
図4に示す同軸コネクタを構成する絶縁体を示したものであって、
図6(a)が絶縁体を、同軸コネクタが相手コネクタと接触する側(先端側)から眺めた斜視図、そして、
図6(b)が絶縁体を、同軸コネクタが基板に実装される側(後端側)から眺めた斜視図である。
【
図7】
図7(a)、(b)、(c)は、
図4に示す同軸コネクタを構成する外部導体を示したものであって、
図7(a)が外部導体を、同軸コネクタが相手コネクタと接触する側(先端側)から眺めた斜視図、
図7(b)が外部導体を、同軸コネクタが基板に実装される側(後端側)から眺めた斜視図、そして、
図7(c)が外部導体の断面図である。
【
図8】
図8(a)、(b)、(c)は、
図1に示すリフロー実装構造を製造するための主要工程を説明するためのものであって、
図8(a)が同軸コネクタの端子部を、基板のスルーホールに挿入する前の状態を示す図、
図8(b)が同軸コネクタの端子部を、基板のスルーホールに挿入して、同軸コネクタを基板に載置した状態を示す図、そして、
図8(c)が
図8(b)の状態でリフロー処理した後の状態を示す図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、
図7(a)〜(c)に示す外部導体とは異なる形状を有する他の実施形態の外部導体を示したものであって、
図9(a)が外部導体を、同軸コネクタが相手コネクタと接触する側(先端側)から眺めた斜視図、そして、
図9(b)が外部導体を、同軸コネクタが基板に実装される側(後端側)から眺めた斜視図である。
【
図10】
図10(a)、(b)、(c)は、
図7(a)〜(c)に示す外部導体とは異なる形状を有する他の実施形態の外部導体を示したものであって、
図10(a)が外部導体を、同軸コネクタが相手コネクタと接触する側(先端側)から眺めた斜視図、
図10(b)が外部導体を、同軸コネクタが基板に実装される側(後端側)から眺めた斜視図、そして
図10(c)が外部導体の断面図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、
図7(a)〜(c)に示す外部導体とは異なる形状を有する他の実施形態の外部導体を示したものであって、
図11(a)が外部導体を、同軸コネクタが相手コネクタと接触する側(先端側)から眺めた斜視図、そして、
図11(b)が外部導体を、同軸コネクタが基板に実装される側(後端側)から眺めた斜視図である。
【
図12】
図12(a)、(b)、(c)は、他の実施形態のリフロー実装構造に用いた多極コネクタを示したものであって、
図12(a)が多極コネクタの平面図、
図12(b)が多極コネクタの側面図、そして、
図12(c)が多極コネクタの端子部側から眺めたときの斜視図である。
【
図13】
図13(a)、(b)、(c)は、従来のリフロー実装構造を製造するための主要工程を説明するためのものであって、
図13(a)が同軸コネクタの(円柱状の)端子部を、基板のスルーホールに挿入する前の状態を示す図、
図13(b)が同軸コネクタの端子部を、基板のスルーホールに挿入して、同軸コネクタを基板に載置した(リフロー処理前の)状態を示す図、そして、
図13(c)が
図13(b)の状態でさらにリフロー処理した後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に従うリフロー実装構造の実施形態について図面を参照しながら以下で説明する。
【0017】
(リフロー実装構造の実施形態)
図1〜
図8は、本発明に従う実施形態のリフロー実装構造を有する同軸コネクタを示したものであって、
図1は、本発明に従うリフロー実装構造を説明するための斜視図、
図2は、
図1に示す同軸コネクタを構成する1つの端子部を、スルーホール内に挿入された状態を拡大して示した斜視図、
図3は、
図1に示す同軸コネクタを構成する1つの端子部を、スルーホール内に挿入し、リフロー処理した後に、スルーホール内の半田溜まり空間に半田が充填された状態を拡大して示した斜視図、
図4(a)、(b)、(c)は、
図1に示すリフロー実装構造に用いた同軸コネクタを示した図、
図5(a)、(b)は、
図4に示す同軸コネクタを構成する内部導体を示した図、
図6(a)、(b)は、
図4に示す同軸コネクタを構成する絶縁体を示した図、
図7(a)、(b)、(c)は、
図4に示す同軸コネクタを構成する外部導体を示した図、そして、
図8(a)、(b)、(c)は、
図1に示すリフロー実装構造を製造するための主要工程を説明するための図である。
【0018】
図1は、本実施形態のリフロー実装構造を説明するための斜視図であり、スルーホール内に挿入されている端子部の状態が視認できるようにして示したものである。
【0019】
本実施形態のリフロー実装構造1は、端子部を有する接続対象物である同軸コネクタ10と、スルーホールを有する基板100とを具えている。
【0020】
<基板>
基板100は、ガラスエポキシ樹脂などの公知の絶縁材料で形成された絶縁基板であって、基板100には、同軸コネクタ10を構成する、後述の外部導体の端子部(または第3接続部)や、内部導体の第2接続部(または端子部)に対応して、略円形断面形状のスルーホール102が貫設されている。また、スルーホール102の内周面には全面にわたって、図示しない銅めっき等の表面処理が施されていると共に、基板100の表面側および裏面側においてスルーホール102の開口部の周囲には、フランジ状のランド部104が設けられている。さらに、スルーホール102の内面に施されためっき層は、ランド部104を介して基板100の表面に形成されているプリント配線(図示せず)と相互に接続されるように形成されている。加えて、スルーホール102の内面に施されためっき層の表面には、クリーム半田(半田粉末と液体のフラックスを適当な粘度になるように混合してクリーム状にしたもの)が塗布(ペースト)されている。(
図8参照)
【0021】
<同軸コネクタ>
同軸コネクタ10は、
図1に示す第1実施形態のリフロー実装構造を構成する同軸コネクタであって、
図4〜
図7に示すように、内部導体30と絶縁体50と外部導体70とで主に構成されている。なお、本実施形態では、同軸コネクタ1を、ジャックコネクタとして構成した場合を示しているが、プラグコネクタとして構成してもよい。
【0022】
[内部導体]
内部導体30は、相手コネクタ(図示せず)の端子と接触する第2接触部32、および基板100に実装される第2接続部34を有している。また、
図5に示す内部導体30は、第2接触部32が略円筒状をなし、第2接続部34が略円柱状または略円錐状をなしている。内部導体30は、金属製であり、公知技術のプレス加工や切削加工によって製作されている。内部導体30の材質としては、バネ性や導電性や寸法安定性などが要求されるので、黄銅やベリリウム銅やリン青銅等を挙げることができる。本実施形態では、内部導体30に、絶縁体50の内部に位置決め固定される保持部36をさらに有している。
【0023】
第2接触部32は、相手コネクタの端子と接触し易いように相手コネクタの形状に合わせて適宜設計しているが、本実施例では略円筒状に形成されている。また、第2接触部32の先端は、弾性(バネ性)を付加するために2箇所にスリットが形成されている。
【0024】
第2接続部34は、基板100に接続される部分である。基板への接続方法としては、基板100のスルーホール102に、内部導体30の第2接続部34を挿入した後に、リフロー処理を施すことによって挿入実装(半田実装)すればよい。本実施例においては、前記スルーホール102に挿入した後に半田付けする一般的なものを図示したが、本発明の接続構造である後述する外部導体70の端子部74と同様の構造にしたものであってもよい。
【0025】
保持部36は、絶縁体50に位置決め固定できる部分であればよく、例えば、圧入や引っ掛け(ランス)や溶着や一体成形等によって、絶縁体30に位置決め固定する場合が挙げられる。
図4に示す同軸コネクタでは、内部導体30を絶縁体50への圧入によって保持または固定をした場合を示している。保持部36の形状・大きさは、保持力、加工性、強度等を考慮して適宜設計する。保持部36は、第2接触部32と第2接続部34の間、
図5では内部導体30のほぼ中間位置に形成されている場合を示しており、矢尻状の突起を設けて絶縁体50の凹部52に引っ掛ける(係合させる)ことにより固定することができる。
【0026】
内部導体30は、
図5に示すように、第2接続部34の挿入先端側部分が、基板100のスルーホール102の孔径よりも細いことが、自動搬送で実装を行なう際の、基板100のスルーホール102への内部導体30の第2接続部34の挿入を容易にする点で好ましく、さらに、内部導体30の第2接続部34を、挿入先端に向かってテーパー形状に形成することがより好適である。
【0027】
[絶縁体]
絶縁体50は、電気絶縁性のプラスチックであり、公知技術の射出成形や切削加工によって製作され、この材質としては寸法安定性や加工性やコスト等を考慮して適宜選択するが、一般的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリアミド(66PA、46PA)や液晶ポリマー(LCP)やポリカーボネート(PC)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、これらの合成材料を挙げることができる。本実施形態では、切削加工によって製作した場合を示している。
【0028】
絶縁体50は、内部導体30と外部導体70との間を電気的に絶縁するために設けられる部材であって、内部導体30が配列・保持されている。絶縁体50は、断面形状が、
図6に示すように同軸コネクタ10の開口端F側に向かって延びる円筒状先端部分56と、この円筒状先端部分56よりも外径が大きい円筒状後端部分58とを備えて、全体として略凸形状を有している。円筒状先端部分56は、挿入される相手コネクタの円筒状部分が嵌合連結される部分であり、また、円筒状後端部分58は、外部導体70の内部に位置決めするための部分である。円筒状先端部分56の大きさおよび形状は、相手コネクタの円筒状部分が嵌合連結できるように適宜設計すればよく、また、円筒状後端部分58の大きさおよび形状は、外部導体70に挿入かつ保持できればよく、保持力、強度、加工性等を考慮して適宜設計すればよい。
【0029】
また、絶縁体50には、内部導体30が貫通して両端側に突出した状態で保持する挿入孔54が設けられている。絶縁体50の挿入孔54は、内部導体30を圧入や引っ掛け(ランス)や溶着等によって固定することができる。本実施形態では、内部導体30を圧入によって絶縁体50に固定している。
【0030】
[外部導体]
外部導体70は、絶縁体50を覆うとともに相手コネクタと接触する第3接触部72と、基板100のスルーホール102に挿入される端子部74を有し、本実施形態では、第3接触部72と端子部74とが、同一材料で一体に形成されている場合を示しているが、第3接触部72と端子部74とを、異なる材料からなる部材を連結して一体的に構成することもできる。外部導体70は、本発明では、導電性を有していれば、ばね弾性力を必ずしも有している必要はなく、剛体であってもよいことから、外部導体70としては、黄銅、ベリリウム銅、リン青銅、ステンレス鋼、アルミニウム系材料などのあらゆる金属材料や、導電性カーボン材料、導電性プラスチック材料、導電性セラミックス材料などの導電性材料を用いることも可能である。
【0031】
外部導体70は、公知技術のプレス加工、射出成形、切削加工等によって作製することができる。本実施形態では、切削加工によって作製されている場合を示している。外部導体70の内部に、絶縁体50が圧入によって位置決め保持されている。本実施形態では、外部導体70の内部に、絶縁体50が圧入によって固定されているが、固定できれば如何なる固定方法を採用してもよく、引っ掛け(ランス)、溶着、一体成形(インサート成形)などで固定すればよい。
【0032】
第3接触部72は、絶縁体50を覆うとともに相手コネクタと接触する部分であって、相手コネクタに対して分離可能な係合(嵌合)連結および接続を行うことができる形状を有していればよい。第3接触部72は、本実施形態では略円筒形状をなしている。
【0033】
端子部74については、本発明の最も重要な部分であるので、以下で詳細に述べる。
ところで、接続対象物、例えば同軸コネクタは、その端子部を基板のスルーホールに挿入した後にリフロー処理することにより、基板に同軸コネクタを実装することができるが、従来のリフロー実装構造では、基板のスルーホールに挿入される接続対象物の端子部が、一定の太さ(径)寸法で形成されたストレート形状(円柱状)を有する場合が一般的であるため、端子部をスルーホール内に強固に半田付けすることはできなかった。
【0034】
図13(a)、(b)、(c)は、従来のリフロー実装構造の製造方法を説明した図である。従来のリフロー実装構造の製造方法は、まず、端子部を有する接続対象物、
図13(a)では、同軸コネクタ110と、スルーホールを形成した基板100とを用意する。この場合、同軸コネクタ110は、端子部174が一定の太さ(径)寸法をもつ円柱状を有し、また、基板100には、スルーホール102が形成されており、スルーホール102の内面には、銅めっきが形成されているとともに、スルーホール102内にはクリーム半田が充填されている。そして、
図13(a)では、このような端子部を有する同軸コネクタの端子部を基板のスルーホールに挿入する。
図13(b)は、スルーホール内への端子部の挿入が完了し、同軸コネクタが基板に載置された状態を示したものである。このように、スルーホール内への端子部の挿入が完了した後は、端子部の先端面や側面によって、スルーホール内に予め充填されていたクリーム半田がスルーホールの外部に押し出されることになる結果、スルーホールの内面と端子部と外面との間に残存するクリーム半田の量は少なくなる。そして、スルーホール内への端子部の挿入が完了した後に、
図13(c)に示すようにリフロー処理を行なって挿入実装したとしても、スルーホールの内面と端子部と外面との間に存在するクリーム半田の量は、リフロー処理後もほとんど増加することがないので、スルーホール内に挿入された端子部の半田付け性は十分に得られない場合が多い。さらに、実装された同軸コネクタが基板から引き離す方向に引っ張られた場合に、スルーホールの内面や、スルーホール内に存在する半田に対して、端子部の引っ掛かる部分が存在しないため、基板に対する同軸コネクタの引抜強度も低い。
【0035】
このため、本発明のリフロー実装構造は、
図2に示すように、端子部74を、挿入先端Tから端子部74の延在方向Dに3分割して、先端側挿入部分76、中間挿入部分78および基端側挿入部分80とするとき、中間挿入部分78は、スルーホール102の内面に向かって迫り出している突出部82を有し、基端側挿入部分80は、突出部82の上面82aとの境界をなす一端E1から、端子部74の挿入基端E2まで延在する特定外面84を有し、基端側挿入部分80の外面からスルーホール100の対向する内面までの距離dを測定したとき、特定外面84は、距離dが最も長い部分をもち、特定外面84と、突出部82の上面82aと、特定外面84および突出部82の上面82aを取り囲むスルーホール100の内面とによって、半田溜まり空間Sを区画形成する構成を採用したことにある。この構成を採用することによって、基板100に形成したスルーホール102に、同軸コネクタ10の端子部74を挿入し、リフロー処理によって、基板100に同軸コネクタ10を挿入実装することができ、しかも、実装された同軸コネクタ10が基板100から引き離す方向に引っ張られた場合であっても、基板100に対する同軸コネクタ10の接続強度(引抜強度)が高く、かつ、バラツキの少ない安定した接続強度を得られるリフロー実装構造を形成することができる。
【0036】
ここで、端子部74の中間挿入部分78に突出部82を設けた理由は、従来のようにストレート状(円柱状)の端子部の場合と比べて、スルーホールの内面に塗布(ペースト)してある半田を、端子部の外面で擦って挿入方向に押し出す量が減り、特に、スルーホールの内面の下側部分がそのまま内面に付着したままであるので、端子部はスルーホール内に強固に半田付けすることができる。
【0037】
なお、突出部82は、中間挿入部分78の周方向(端子部74の延在方向Dに対して直交する方向)の全周にわたって配設してもよいが、端子部74の強度を確保する点から、外面側(
図7、
図9、
図10)あるいは内面側(
図11)に部分的に設けることが好ましい。
【0038】
また、基端側挿入部分80の外面(外周面)からスルーホール100の対向する内面までの距離dを測定したときに、特定外面84が、スルーホール100の対向する内面までの距離dが最も長い部分をもつように構成したのは、かかる構成によって、半田溜まり空間Sの容積を有効に大きくすることができ、半田溜まり空間S内に十分な量の半田が、リフロー時に流れ込んで、端子部74の突出部82の引き抜き方向への障害物として存在する結果、引抜強度が高いリフロー実装構造を形成することができる。
【0039】
端子部74は、突出部82を有する中間挿入部分78が、スルーホール100に対して緊密に圧入されていてもよいが、端子部74の突出部82を有する中間挿入部分78の太さ(径)寸法を、スルーホールの内径寸法よりも小さく、好ましくは寸法比で5〜30%だけ小さく設定することが好ましい。これによって、自動搬送での実装を容易にするとともに、端子部74の挿入時における突出部82でのスルーホール102の内面に塗布されている半田が、スルーホール内から押し出されにくくなって、半田付け性が向上するからである。
【0040】
また、端子部74を構成する、先端側挿入部分76、中間挿入部分78および基端側挿入部分80の延在方向の寸法比率は、端子部の全体比率を100%とするとき、それぞれ、20〜80:10〜40:10〜40の範囲であることが好ましい。
【0041】
さらに、端子部74の先端側挿入部分76は、スルーホール102の挿入側開口106に対して挿入しやすい形状をもつ誘い部86を有することが好ましい。これによって、端子部74が、スルーホール102内への挿入が容易になるため、自動搬送での実装が可能になる。また、誘い部86の形成によって、スルーホール102内に塗布(ペースト)されていた半田が、挿入された端子部74によって押し出される現象も抑制され、さらに、スルーホール102内に存在する半田の基板100の裏面への回りこみも容易になる結果として、基板100に対する同軸コネクタ10の引抜強度はより一層高くすることができる。
【0042】
図1に示す本実施形態では、誘い部86が、中間挿入部分78に設けた突出部82との境界端E3から端子部74の挿入先端Tに向かってテーパー形状となるように形成した場合を示している。
【0043】
他の実施形態として、
図7に示す同軸コネクタ10の外部導体70を、例えば、
図9〜
図11に示す外部導体70A、70B、70Cに設計変更する場合が挙げられる。
図9に示す外部導体70Aは、誘い部86Aを、端子部74Aの先端側挿入部分76Aの内面側にテーパー状に形成したものである。また、
図10に示す外部導体70Bは、誘い部86Bを、端子部の先端側挿入部分76Bの全周面にわたってテーパー状(円錐状)に形成したものである。さらに、
図11に示す外部導体70Cは、突出部82Cを、端子部74Cの中間挿入部分78Cの内面側に形成するとともに、誘い部86Cを、端子部74Cの先端側挿入部分76Cの外面側にテーパー状に形成したものである。
【0044】
加えて、
図12(a)、(b)、(c)は、他の実施形態のリフロー実装構造を構成するのに用いられる多極コネクタ11を示したものであって、各7本が2列で配置され、合計14本のコンタクト12と、これらのコンタクト12を配列・保持するハウジング14と、固定具16とを具えている場合を示す。コンタクト12は、相手コネクタ(図示せず)の端子と接触する第1接触部、および基板のスルーホールに挿入される端子部74Dを有し、この端子部74Dは、上述した同軸コネクタ10を構成する外部導体70の端子部74と同様、突出部82Dを有する構成を有している。また、ハウジング14は、コンタクト12を配列・保持する部材であって、上述した絶縁体50と同様な材質で構成されている。さらに、固定具16も、基板100のスルーホール102に挿入される端子部74Eを有している。この端子部74Eも、上述した同軸コネクタ10を構成する外部導体70の端子部74と同様、突出部82Eを有する構成を有している。このため、
図12に示す多極コネクタの端子部は、上述した本実施形態の同軸コネクタ10の端子部74と同様の構成および効果を有している。このため、本実施形態の多極コネクタへの適用については、これ以上の説明は省略する。なお、端子部74D、74Eに関しては、固定具16の端子部74Eのみを、同軸コネクタ10を構成する外部導体70の端子部74と同様の構成にし、コンタクト12の端子部74Dは、従来の構造とすることもできる。多極用コネクタの場合、特に基板100への接続強度を鑑みると、固定具16の端子部74Eを、同軸コネクタ10を構成する外部導体70の端子部74と同様の構成にすることが好ましい。
【0045】
上述したところは、この発明の実施形態の例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、これまでの説明では、同軸コネクタや多極コネクタについて説明してきたが、本発明のリフロー実装構造は、これらのコネクタだけには限定されず、端子部を有しかつ端子部がスルーホールに挿入実装される構成を採用する、あらゆるコネクタに適用することができる。例えば、同軸コネクタで示した(
図7、
図9〜11)端子部の構造を、
図12に示す多極コネクタ11のコンタクト12や固定具16に適用してよく、また、多極コネクタで示した(
図12)端子部の構造を、同軸コネクタの内部導体や外部導体に適用してもよい。
【0046】
[リフロー実装構造の製造方法]
次に、本発明の同軸コネクタを基板に、リフロー処理によって挿入実装した代表的なリフロー実装構造の製造方法の例を説明する。
【0047】
図8(a)、(b)、(c)は、
図1に示すリフロー実装構造の製造方法を説明した図である。本発明のリフロー実装構造の製造方法は、まず、端子部を有する接続対象物、
図8(a)では、上述した突出部82をもつ端子部74を有する同軸コネクタ10と、基板100とを用意する。基板100は、スルーホール102が形成されており、スルーホール102の内面には、銅めっきCが形成されているとともに、スルーホール102内にはクリーム半田Wが充填されている。そして、
図8(a)では、このような端子部74を有する同軸コネクタ10の端子部74を基板100のスルーホール102に挿入する。
図8(b)は、スルーホール102内への端子部74の挿入が完了し、同軸コネクタ10が基板100に載置された状態を示したものである。このように、スルーホール102内への端子部74の挿入が完了した後は、端子部74の先端面や側面に、スルーホール102内に予め充填されていたクリーム半田Wが満遍なく付着するため、スルーホール102の外部に押し出される半田は少なくなる。そして、スルーホール102内への端子部74の挿入が完了した後に、
図8(c)に示すようにリフロー処理を行なって挿入実装を行なうと、半田溜まり空間Sに、基板表面に塗布していた半田Wが流れ込んで充填されることによって、端子部74の外面全体は、スルーホール102内に存在する半田Wによって強固に半田付けされる。また、本発明のリフロー実装構造は、半田溜まり空間Sに充填された半田Wによって、端子部74の突出部82の上面側に位置するため、実装された同軸コネクタ10が基板100から引き離す方向に引っ張られた場合であっても、半田溜まり空間Sに充填された半田Wによって、端子部74の突出部82が引っ掛かることで、基板100に対する同軸コネクタ10の引抜強度が高いリフロー実装構造を製造することができる。
図3は、
図1に示す同軸コネクタ10を基板100に挿入実装したときの1つの端子部74の外面と、スルーホール102の内面との間に充填された半田Wの状態を拡大して示したものである。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0049】
(本発明品)
本発明品のリフロー実装構造は、同軸コネクタとしては、型番:MCX型であり、
図1に示す形状の端子部を有する同軸コネクタを使用し、また、基板としては、スルーホールのサイズがφ1.4mm、厚み1.6mmであるプリント配線基板を使用した。端子部の外形寸法と、スルーホールの径寸法の関係は、端子部の長さ寸法が2.0〜2.5mm、端子部の特定外面から測定したスルーホールの内面までの距離dが0.3〜0.8mm、端子部の突出部82の先端面82bから測定したスルーホールの内面までの距離d1が0〜0.5mmとなるように設定し、前記距離dと前記距離d1の差d−d1は、少なくとも0.2mm以上となるようにした。
【0050】
(従来品)
従来品のリフロー実装構造は、同軸コネクタの端子部が一定の太さ寸法をもつ四角柱状を有し、端子部の寸法が0.8mm×0.8mm×長さ2.0〜2.5mm、スルーホール径を1.4mmとしたことを除いては、本発明品と同様の同軸コネクタと基板を使用した。
【0051】
[接続強度(引抜強度)]
端子部の接続強度は、リフローにて挿入実装した本発明品および従来品を各5個ずつ用意し、引張試験機により測定し、平均値および標準偏差σを算出した。評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す評価結果から、本発明品は、従来品に比べて、接続強度が約23%向上するとともに、接続強度のバラツキ(標準偏差σ)が約3分の1に抑えられており、バラツキが少なく、安定して高い接続強度が得られているのがわかる。