【解決手段】レバー24には、入口28Eから奥側に向かうほどレバー24の回動中心13に接近するように湾曲した形態のカム溝28(第1通路)が形成され、レバー24が雌側ハウジング40のカムピン41に摺接しながら初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、ムービングプレート18のカム突起23が、カム溝28内でレバー24の回動中心13に接近するように変位する。レバー24には、逃がし空間31(第2通路)が形成されている。レバー24がカムピン41と非接触の状態で初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、カム突起23が、逃がし空間31内でレバー24の回動中心13との位置関係を変化させずに変位する。
前記第1通路には、前記カム突起と非接触であり、且つ前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングを嵌合する過程で前記カムピンに嵌合方向の押圧力を付与する嵌合用カム面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレバー式コネクタ。
前記第1通路に形成され、前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングが嵌合した状態から前記レバーを前記初期位置側へ回動する過程で、前記カム突起に対し前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングを離脱させる方向の押圧力を付与する離脱用カム面を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
前記レバーには、前記レバーの回動中心と対向し、且つ前記第2通路の外周縁に沿うように配された規制面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記第2通路の入口が前記第1通路の前記入口と隣接して連通しており、前記第1通路及び前記第2通路における前記入口よりも奥側の領域では、前記第2通路が、前記第1通路よりも前記レバーの回動中心から遠い領域に配されていてもよい。この構成によれば、第1通路の入口と第2通路の入口が隣接して連通しているので、第1通路の入口と第2通路の入口が別々の空間である場合に比べると、レバーの形状を簡素化することができる。
【0012】
本発明は、前記第1通路には、前記カム突起と非接触であり、且つ前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングを嵌合する過程で前記カムピンに嵌合方向の押圧力を付与する嵌合用カム面が形成されていてもよい。この構成によれば、第1通路は、カム突起を変位させる空間としてだけでなく、カムピンを変位させる空間としての機能も兼ね備えている。したがって、第1通路とは別に、両ハウジングの嵌合過程でカムピンを変位させるための専用通路を形成する場合に比べると、レバーの形状を簡素化することができる。
【0013】
本発明は、前記第2通路は、前記第1通路よりも浅く凹ませた形態であり、前記カムピンの突出寸法が前記カム突起の突出寸法よりも大きく設定されていてもよい。この構成によれば、両ハウジングの嵌合過程でカムピンが第2通路内に誤進入することを防止できる。
【0014】
本発明は、前記第1通路に形成され、前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングが嵌合した状態から前記レバーを前記初期位置側へ回動する過程で、前記カム突起に対し前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングを離脱させる方向の押圧力を付与する離脱用カム面を備えていてもよい。この構成によれば、第1通路は、両ハウジングの嵌合過程でカム突起を変位させる空間としてだけでなく、両ハウジングの離脱過程でカム突起を変位させるための空間としての機能も兼ね備えている。したがって、第1通路とは別に、両ハウジングの離脱過程でカム突起を変位させるための専用通路を形成する場合に比べると、レバーの形状を簡素化することができる。
【0015】
本発明は、前記レバーには、前記レバーの回動中心と対向し、且つ前記第2通路の外周縁に沿うように配された規制面が形成されていてもよい。この構成によれば、カム突起が規制面に当接することにより、保護位置のムービングプレートがフード部の正面側へ離脱することを防止できる。
【0016】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図14を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図1〜5,7〜9における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1〜14にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。尚、上方と正面側は同義であり、下方と背面側は同義である。
【0017】
本実施例1のレバー式コネクタの概要を説明する。レバー式コネクタは、正面側へ筒状に突出したフード部12を有する合成樹脂製の雄側ハウジング10と、フード部12内に嵌入可能であって左右両外側面に左右対称な一対のカムピン41が突出形成された合成樹脂製の雌側ハウジング40とを備えている。雄側ハウジング10には、フード部12で包囲されたタブ17を有する複数の雄端子金具15が取り付けられている。
【0018】
フード部12内には、複数のタブ17の先端部を貫通させた状態で位置決めする保護位置と、保護位置より背面側(下方)の退避位置との間で上下方向に移動可能な合成樹脂製のムービングプレート18が収容されている。ムービングプレート18には左右一対のカム突起23が形成されている。雄側ハウジング10には、初期位置と嵌合位置との間で回動可能な合成樹脂製のレバー24が取り付けられている。レバー24は、カムピン41と摺接しながら初期位置から嵌合位置へ回動することで雌側ハウジング40と雄側ハウジング10を嵌合させる倍力機能を発揮する。
【0019】
<雄側ハウジング10及び雄端子金具15>
雄側ハウジング10は、ブロック状をなす端子保持部11と、端子保持部11の外周縁から上方へ角筒状に突出した形態のフード部12とを有している。端子保持部11内には、複数の雄端子金具15の端子本体部16が収容され、雄端子金具15の先端部に形成したタブ17が、端子保持部11から上向きに突出してフード部12内に収容されている。雄側ハウジング10の左右両外側面には、左右一対の回動軸13(レバー24の回動中心)が形成されている。また、フード部12の左右両外壁部には、その上端縁部(フード部12の開口端縁部)を下方へ切欠した形態の左右一対の切欠部14が形成されている。
【0020】
<ムービングプレート18>
ムービングプレート18は、板厚方向をムービングプレート18の移動方向と平行に向けた平板状をなすプレート本体部19と、プレート本体部19の外周縁から上方へ突出した周壁部20とを有する単一部品である。プレート本体部19には、複数のタブ17を貫通させた状態で個別に位置決めする複数の位置決め孔21が形成されている。周壁部20の左右両側壁部には、周壁部20の上端縁(開口端縁)から下方(背面側)へ切欠した形態の左右対称な一対のガイド溝22が形成されている。
【0021】
周壁部20の左右両外側面には、夫々、両ガイド溝22の溝縁部の下端部から突出した前後一対ずつのカム突起23が形成されている。ムービングプレート18をフード部12内に収容した状態では、両カム突起23が、切欠部14からフード部12の外側面外方へ突出する。カム突起23は、後述するレバー24のカム溝28と逃がし空間31内に収容され得るようになっている。
【0022】
ムービングプレート18は、周壁部20をフード部12の内周面に摺接させることで、傾くことなく保護位置(
図2,3を参照)と退避位置(
図7を参照)との間で移動することができる。ムービングプレート18が保護位置にある状態では、タブ17の先端部(上端部)がプレート本体部19の位置決め孔21を貫通するので、プレート本体部19からのタブ17の上方への突出寸法が小さく抑えられている。
【0023】
ムービングプレート18が退避位置にある状態では、プレート本体部19が端子保持部11の上端面(フード部12の奥底面)に当接又は接近するので、位置決め孔21にはタブ17の基端側の部分が貫通する。したがって、プレート本体部19からのタブ17の上方への突出寸法は、保護位置にあるときよりも大きくなる。
【0024】
<レバー24>
レバー24は、左右対称な一対の板状をなすアーム部25と、両アーム部25の先端部同士を連結する操作部26とを有する単一部品である。両アーム部25における基端側の位置には、左右方向に貫通した形態の軸受孔27が形成されている。レバー24は、軸受孔27を回動軸13に嵌合することで雄側ハウジング10に取り付けられ、初期位置(
図1,2,4,8を参照)と嵌合位置(
図3,5,7,9を参照)との間で回動可能となっている。レバー24を雄側ハウジング10に取り付けた状態では、アーム部25が、フード部12の外側面と対向して切欠部14を覆うように配される。
【0025】
レバー24には、両アーム部25の内側面を凹ませた形態の左右対称な一対のカム溝28が形成されている。カム溝28は、軸受孔27(レバー24の回動中心)を包囲するような概ね弧状に湾曲した形状であり、カム溝28の入口28Eは、アーム部25の外周縁に開口している。軸受孔27からカム溝28までの径方向の距離は、カム溝28の入口28Eで最も遠く、カム溝28の奥端部において最も小さくなっている。
【0026】
両ハウジング10,40の嵌合過程及び離脱過程では、ムービングプレート18のカム突起23と雌側ハウジング40のカムピン41が、カム溝28内を相対移動するようになっている。カム溝28の内面のうち軸受孔27(回動軸13)と対向する外側の内側面は、嵌合用カム面29として機能する。カム溝28のうち軸受孔27(回動軸13)に対して背を向けた内側の内側面は、離脱用カム面30として機能する。離脱用カム面30は、嵌合用カム面29よりも回動軸13に近い位置に配されている。
【0027】
レバー24には、両アーム部25の内側面を凹ませた形態の左右対称な一対の逃がし空間31が形成されている。両ハウジング10,40が離脱した状態でレバー24が初期位置と嵌合位置との間で回動する過程では、カム突起23が逃がし空間31内を相対変位するようになっている。アーム部25の内側面からの逃がし空間31の深さ寸法(回動軸13の軸線と平行な寸法)は、カム溝28の深さ寸法よりも小さく設定されている。したがって、カム溝28及び逃がし空間31の深さ方向において、嵌合用カム面29は逃がし空間31よりも奥方の領域に配されている。
【0028】
逃がし空間31に対するカム突起23の進入深さは、逃がし空間31の深さ寸法と同じか、それよりも僅かに小さい寸法とされている。カム突起23が逃がし空間31内を移動する際に、カム突起23の突出端面(
図6における左端面)は、逃がし空間31の内面と非接触の状態を保つか、逃がし空間31の内面に軽く摺接する。また、離脱用カム面30は、カム溝28及び逃がし空間31の深さ方向において、逃がし空間31と同じ深さ領域に配されている。したがって、離脱用カム面30には、カム突起23の外周面と後述するカムピン41の外周面が摺接し得るようになっている。但し、嵌合用カム面29には、後述するカムピン41は摺接するが、カム突起23は接触できない。
【0029】
アーム部25の内側面において、逃がし空間31は、嵌合用カム面29及び離脱用カム面30よりも回動軸13から遠い領域に配されている。逃がし空間31は、その入口31Eから奥端に至る全領域に亘ってカム溝28と連通している。つまり、逃がし空間31の入口31Eは、カム溝28の入口28Eと隣接して連通している。また、逃がし空間31は嵌合用カム面29に対し径方向(回動軸13と直交し且つレバー24の回動方向と交差する方向)に隣接している。
【0030】
アーム部25には、回動軸13に対し径方向に対向するように面する規制面32が形成されている。規制面32は、逃がし空間31の外周縁に沿うように、且つ逃がし空間31の入口31Eから奥端に至る全領域に亘って形成されている。規制面32のうち逃がし空間31の入口31Eよりも奥側の領域は、回動軸13と同心の略円弧形をなしている。規制面32の略円弧状領域と回動軸13の中心との間の径方向の距離は、ムービングプレート18が保護位置にあるときの回動軸13の中心からカム突起23の上端(カム突起23のうち回動軸13から最も遠い部位)までの距離より大きい寸法に設定されている。これにより、カム突起23が逃がし空間31内を相対移動する全過程で、カム突起23は規制面32と非接触の状態を保つ。
【0031】
<雌側ハウジング40>
雌側ハウジング40は、全体としてブロック状をなし、ムービングプレート18(フード部12)内に嵌入し得るようになっている。雌側ハウジング40内には、複数の雌端子金具42が収容されている。雌側ハウジング40の左右両外側面には、左右対称な一対のカムピン41が突出形成されている。雌側ハウジング40がムービングプレート18内に嵌入すると、カムピン41と一対のカム突起23は、カムピン41が一対のカム突起23の間で前後に挟まれた状態で合体し得るようになっている。カムピン41と一対のカム突起23は、合体状態で上下方向(両ハウジング10,40の嵌合・離脱方向と平行な方向)に相対変位し得るようになっている。
【0032】
カムピン41とカム突起23が合体した状態では、
図10に示すように、カムピン41の突出端が、カム突起23の突出端から側方(回動軸13の軸線と平行な方向)へ突出するようになっている。また、カムピン41の上下寸法はカム突起23の上下寸法より大きく設定されているので、カムピン41とカム突起23が合体した状態では、カムピン41の前端部と後端部のうち少なくとも一方の端部が、カム突起23の前方又は後方へ突出した状態となる。
【0033】
また、雄側ハウジング10と雌側ハウジング40の嵌合・離脱過程において、ムービングプレート18には摺動抵抗等に起因する大きな負荷が作用しないので、カム突起23の形状と寸法は、比較的剛性と強度の低い形態とされている。これに対し、雄側ハウジング10と雌側ハウジング40との間には、雄端子金具15と雌端子金具42との間の弾性接触に起因する大きな摺動抵抗が発生するので、レバー24からカムピン41に対して大きな負荷が作用する。そのため、カムピン41は、カム突起23よりも剛性と強度が高くなるような形状及び寸法とされている。
【0034】
<作用及び効果>
雄側ハウジング10と雌側ハウジング40が離脱し、レバー24が初期位置にある状態(
図2を参照)では、
図4に示すように、カム溝28の入口28Eと逃がし空間31の入口31Eが上向きに開口し、カム突起23が、カム溝28の入口28Eの奥端面に当接又は接近するように位置する。カム突起23がカム溝28の入口28Eに位置するとき、ムービングプレート18は保護位置にある。保護位置のムービングプレート18は、フード部12に形成したストッパ33に係止することにより、退避位置への移動を規制される。
【0035】
この状態からフード部12内に雌側ハウジング40を浅く嵌入すると、雌側ハウジング40は、ムービングプレート18の周壁部20内に嵌合され、プレート本体部19の上面と接近して、つまり非接触で対向する状態となる。尚、このとき、雌側ハウジング40がプレート19の上面に当接するようにしてもよい。ムービングプレート18に雌側ハウジング40が浅く嵌合するのに伴い、カムピン41が、カム溝28の入口28Eに進入して一対のカム突起23の間に進入し、カムピン41とカム突起23が合体した状態となる。このとき、カムピン41が入口28Eの奥端面に当接し、カムピン41の上端部(嵌合方向後端部)がカム突起23の上方へ突出した状態となる。
【0036】
また、雌側ハウジング40がストッパ33を変位させるので、ムービングプレート18は退避位置への移動が可能となる。この状態から初期位置のレバー24を嵌合位置側へ回動させると、カムピン41がカム溝28の嵌合用カム面29に摺接して倍力機能が発揮されるので、雌側ハウジング40が雄側ハウジング10に引き寄せられて嵌合が進む。
【0037】
両ハウジング10,40の嵌合過程(レバー24の回動過程)の初期においては、嵌合用カム面29がカムピン41の上端部を押圧するので、雌側ハウジング40のみが下方(嵌合方向)へ移動する。この間、嵌合用カム面29はカム突起23に接触しないので、ムービングプレート18は保護位置から動かない。雌側ハウジング40は、僅かに移動したところで、プレート本体部19の上面に面当たり状態で当接する。
【0038】
これ以降、レバー24の回動が進むのに伴い、ムービングプレート18は、雌側ハウジング40に押されることにより雌側ハウジング40と一体となってフード部12の奥方(下方)へ押し込まれる。そして、レバー24が嵌合位置に到達すると、両ハウジング10,40が正規の嵌合状態となり、雄端子金具15のタブ17が雌側ハウジング40内に進入して雌端子金具42に接続される。
【0039】
雌側ハウジング40がプレート本体部19に面当たりしたときから、レバー24が嵌合位置へ回動するまでの間に、カム突起23と嵌合用カム面29は非接触の状態のままであるから、ムービングプレート18と雌側ハウジング40の上下方向の位置関係は変化しない。したがって、雌側ハウジング40とプレート本体部19は面当たりした状態を保つ。
【0040】
このように、レバー24が初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、回動の初期に雌側ハウジング40のみが移動することで、ムービングプレート18と雌側ハウジング40が当接して一体する。その後、嵌合位置に至るまでの間、雌側ハウジング40はムービングプレート18と一体化した状態を保ったまま雄側ハウジング10と嵌合する。
【0041】
また、上下方向においてカム突起23の上端とカムピン41の上端とが概ね同じ位置にあり、レバー24が嵌合位置に至る過程や嵌合位置に到達した状態では、カム突起23の上端部が嵌合用カム面29より上方に位置することがある。そのため、カム突起23の上端部がレバー24と干渉することが懸念されるが、嵌合用カム面29の上方には逃がし空間31が隣接して配されているので、カム突起23は、その上端部(一部)を逃がし空間31に進入させることでレバー24との干渉を回避している。
【0042】
両ハウジング10,40が嵌合している状態から嵌合位置のレバー24を初期位置へ回動させると、離脱用カム面30がカム突起23とカムピン41に摺接することにより、退避位置のムービングプレート18が上方(フード部12の開口端側)へ押し動かされて保護位置へ移動するとともに、雌側ハウジング40が上方へ押し動かされて雄側ハウジング10から離脱する。
【0043】
詳述すると、両ハウジング10,40が嵌合している状態では、カム突起23が離脱用カム面30から大きく離間しているのに対し、カムピン41の下端部は、カム突起23の下端より下方へ突出し、離脱用カム面30に対し接触又は接近している。そのため、レバー24の回動初期は、離脱用カム面30がカムピン41の下端部のみに摺接し、雌側ハウジング40が上方へ押し上げられてプレート本体部19から離間する。この間、ムービングプレート18は移動せず、カムピン41がカム突起23に対して相対的に上動する。
【0044】
雌側ハウジング40がプレート本体部19から離間した後、レバー24の回動が進むと、離脱用カム面30がカム突起23の下端部への摺接を開始する。これ以降は、レバー24が初期位置に到達するまで、離脱用カム面30がカム突起23とカムピン41の両方に摺接し、ムービングプレート18と雌側ハウジング40の両方が上方へ移動する。レバー24が初期位置に戻ると、カムピン41とカム突起23がカム溝28の入口28Eに戻るので、雌側ハウジング40を持ち上げれば、両ハウジング10,40を離脱させることができる。
【0045】
尚、レバー24を嵌合位置から初期位置へ回動させる過程で、離脱用カム面30をカム突起23のみに摺接させようとすると、プレート本体部19で雌側ハウジング40を離脱方向へ押し動かすことになる。この場合、カム突起23には、雄側ハウジング10と雌側ハウジング40との間の大きな離脱抵抗に相当する負荷が作用するため、カム突起23を大型化して強度の高い形態にする必要がある。カム突起23を大型化すると逃がし空間31も大きくする必要がある。逃がし空間31を大きくすることは、レバー24における肉薄領域を拡大することになるので、強度の観点からは好ましくない。
【0046】
これを回避するため、本実施例1では、レバー24が嵌合位置から初期位置へ回動する過程の初期において、離脱用カム面30をカムピン41のみに摺接させ、雌側ハウジング40をプレート本体部19から離間させた。その後、離脱用カム面30がカム突起23への摺接を開始してから、レバー24が初期位置に到達するまでの間は、離脱用カム面30をカム突起23とカムピン41の両方に摺接させ、雌側ハウジング40とプレート本体部19が離間した状態のまま離脱方向へ移動させるようにした。これにより、カム突起23を小型化することが実現できた。
【0047】
離脱用カム面30のうちカム突起23及びカムピン41への当接領域は、嵌合・離脱方向に対して斜めをなすが、離脱用カム面30の当接領域の傾斜角度はレバー24の回動過程で変化していく。これに加え、カム突起23とカムピン41は嵌合・離脱方向と交差する方向に並ぶように配されている。そのため、レバー24が一定角度回動したときにおける雌側ハウジング40の移動距離とムービングプレート18の移動距離が微妙に相違するが、雌側ハウジング40とプレート本体部19は充分に離間した状態に保たれているので、レバー24の回動過程で雌側ハウジング40とプレート本体部19が干渉する虞はない。
【0048】
また、両ハウジング10,40を離脱してレバー24を初期位置に戻すと、ムービングプレート18は保護位置に戻る。この状態では、レバー24の操作部26がフード部12の開口領域よりも前方へ外れた位置にあるため、フード部12の上端の全領域が開放された状態となる。しかし、ムービングプレート18が保護位置にある状態では、プレート本体部19からのタブ17の上方への突出寸法が比較的小さいので、タブ17に対して異物が干渉する虞はない。
【0049】
本実施例1のレバー式コネクタでは、雄側ハウジング10を他部材に取り付ける場合等に、両ハウジング10,40が離脱したままの状態でレバー24を初期位置から嵌合位置へ回動することが行われる。レバー24を嵌合位置へ回動させるときにレバー24の嵌合用カム面29がカム突起23を押圧すると、ムービングプレート18が退避位置へ落ち込んでしまい、プレート本体部19からのタブ17の突出寸法が大きくなってタブ17が他部材の干渉によって変形を来す虞がある。
【0050】
しかし、本実施例1のレバー式コネクタでは、カム突起23が嵌合用カム面29と干渉しないので、レバー24からカム突起23に嵌合方向の押圧力が作用することはない。また、離脱用カム面30は、レバー24の回動に伴ってカム突起23から遠ざかるので、レバー24からカム突起23の離脱方向の押圧力も作用しない。そのため、カム突起23は、レバー24の回動に伴って逃がし空間31内に進入し、逃がし空間31内を周方向に相対変位する。カム突起23が逃がし空間31内を相対変位する間、カム突起23はレバー24と非干渉の状態(レバー24から径方向及び周方向の押圧力を受けない状態)を保つので、ムービングプレート18は保護位置に保持される。
【0051】
また、両ハウジング10,40が離脱した状態でレバー24を嵌合位置へ回動した後、そのレバー24を初期位置へ回動させると、カム突起23は、逃がし空間31内を相対変位してカム溝28の入口28Eに戻る。この間、カム突起23には、離脱用カム面30も嵌合用カム面29も接触しないので、ムービングプレート18は保護位置に保たれたままである。
【0052】
本実施例1のレバー式コネクタは、レバー24に嵌合用カム面29と逃がし空間31が形成されている。嵌合用カム面29は、レバー24を初期位置から嵌合位置へ回動する過程で、カム突起23と非接触の状態でカムピン41を嵌合方向へ押圧する。また、両ハウジング10,40が離脱し且つムービングプレート18が保護位置にある状態でレバー24が初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、カム突起23が嵌合用カム面29と非接触の状態で逃がし空間31内に収容される。
【0053】
この構成によれば、逃がし空間31内のカム突起23には嵌合用カム面29が接触しないので、ムービングプレート18には嵌合方向の押圧力は作用しない。これにより、ムービングプレート18を保護位置に保持することができる。また、カム溝28は、カム突起23を変位させる空間としてだけでなく、カムピン41を変位させる空間としての機能も兼ね備えている。したがって、カム溝28とは別に、両ハウジング10,40の嵌合過程でカムピン41を変位させるための専用通路を形成する場合に比べると、レバー24の形状を簡素化することができる。
【0054】
本実施例1のレバー式コネクタは、レバー24にカム溝28が形成されている。カム溝28は、入口28Eから奥側に向かうほど回動軸13(レバー24の回動中心)に接近するように湾曲した形態である。レバー24がカムピン41に摺接しながら初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、カム溝28は、カム突起23が回動軸13に接近するように変位することを可能にする第1通路としての機能を発揮する。
【0055】
同じくレバー24には逃がし空間31が形成されている。レバー24がカムピン41と非接触の状態で初期位置から嵌合位置へ回動する過程において、逃がし空間31は、カム突起23が回動軸13との位置関係を変化させずに変位することを許容する第2通路としての機能を発揮する。したがって、両ハウジング10,40が離脱してレバー24がカムピン41と非接触となる状態において、レバー24が初期位置から嵌合位置へ回動した場合、カム突起23は、レバー24の回動中心に接近しない状態を保ったままで逃がし空間31内を変位する。したがって、ムービングプレート18も保護位置から動くことはない。
【0056】
本実施例1のレバー式コネクタは、レバー24に、離脱用カム面30と、離脱用カム面30よりも回動軸13から遠い領域に配された逃がし空間31とが形成されている。両ハウジング10,40が嵌合している状態において嵌合位置のレバー24を初期位置へ回動する過程では、離脱用カム面30がカム突起23を回動軸13から遠ざかる方向へ押圧することで、両ハウジング10,40が離脱される。また、両ハウジング10,40が離脱し且つムービングプレート18が保護位置にある状態でレバー24が初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、カム突起23が、離脱用カム面30から離間しながら逃がし空間31内に収容される。
【0057】
この構成によれば、両ハウジング10,40が離脱した状態では、カム突起23が、離脱用カム面30に押されることによってレバー24の回動軸13から最も遠い位置に配される。そして、逃がし空間31は、離脱用カム面30よりも回動軸13から遠い領域に配されている。したがって、両ハウジング10,40が離脱した状態においてレバー24が嵌合位置側へ回動する過程では、逃がし空間31内に収容されるカム突起23が回動軸13に接近することはない。これにより、ムービングプレート18は保護位置に保持される。
【0058】
本実施例1のレバー式コネクタは、雌側ハウジング40にカムピン41が形成されている。雌側ハウジング40をフード部12に嵌入してカムピン41とカム突起23を合体した状態では、カムピン41の雄側ハウジング10の外側面からの突出寸法が、カム突起23の雄側ハウジング10の外側面からの突出寸法よりも大きい。一方、レバー24には、両ハウジング10,40の嵌合・離脱過程でカム突起23とカムピン41を収容するカム溝28が形成されている。同じくレバー24には、カム溝28よりも浅く凹ませることでカムピン41の進入を規制した逃がし空間31が形成されている。逃がし空間31は、カム溝28よりも浅く凹ませた形態である。
【0059】
そして、両ハウジング10,40が離脱し且つムービングプレート18が保護位置にある状態でレバー24が初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、カム突起23がレバー24と非干渉の状態で逃がし空間31内に収容される。したがって、ムービングプレート18には嵌合方向の押圧力は作用しないので、ムービングプレート18を保護位置に保持することができる。また、両ハウジング10,40の嵌合過程で、カムピン41が逃がし空間31内に誤進入することが防止される。
【0060】
また、レバー24には、両ハウジング10,40の嵌合過程でカム突起23とカムピン41を収容可能なカム溝28が形成され、このカム溝28に嵌合用カム面29が形成されている。そして、逃がし空間31は、嵌合用カム面29に隣接し且つカム溝28と連通している。逃がし空間31がカム溝28と連通しているので、両ハウジング10,40を嵌合する工程で、カム突起23とカムピン41を合体させた状態でカム溝28内を移動させることができる。また、カム溝28は、両ハウジング10,40の嵌合過程においてカム突起23の移動経路を兼ねるので、カム溝28とは別にカム突起23専用の移動経路をレバー24に形成する場合に比べると、レバー24の形状を簡素化することができる。
【0061】
また、逃がし空間31は、嵌合用カム面29よりも回動軸13から遠い領域に配されていてもよい。この構成によれば、両ハウジング10,40が離脱した状態でレバー24が初期位置から嵌合位置へ回動する過程で、カム突起23はレバー24の回動中心に接近しないので、ムービングプレート18を保護位置に保持することができる。
【0062】
また、レバー24には、離脱用カム面30が形成されている。両ハウジング10,40が嵌合した状態からレバー24を初期位置側へ回動して両ハウジング10,40を離脱する過程では、離脱用カム面30がカム突起23を押圧することによりムービングプレート18を保護位置側へ移動させるようになっている。この構成によれば、両ハウジング10,40が嵌合している状態でレバー24を嵌合位置から初期位置へ回動させると、離脱用カム面30がカム突起23を押圧してムービングプレート18を保護位置へ移動させる。ムービングプレート18が保護位置へ移動する過程で両ハウジング10,40が離脱する。
【0063】
また、雌側ハウジング40には、両ハウジング10,40の嵌合過程で、レバー24が初期位置から嵌合位置へ回動するのに伴いカム溝28によって嵌合方向へ押圧されるカムピン41が形成されている。逃がし空間31はカム溝28と連通しており、カム溝28には離脱用カム面30が形成されている。この構成によれば、カム溝28は、両ハウジング10,40の嵌合過程におけるカムピン41の移動経路と、両ハウジング10,40の離脱過程におけるカム突起23の移動経路を兼ねる。したがって、カム溝28とは別にカム突起23専用の離脱用移動空間をレバー24に形成する場合に比べると、レバー24の形状を簡素化することができる。
【0064】
また、逃がし空間31の入口31Eがカム溝28の入口28Eと隣接して連通しており、カム溝28及び逃がし空間31における入口28E,31Eよりも奥側の領域では、逃がし空間31が、カム溝28よりも回動軸13から遠い領域に配されている。この構成によれば、カム溝28の入口28Eと逃がし空間31の入口31Eが隣接して連通しているので、カム溝28の入口28Eと逃がし空間31の入口31Eが連通しない別々の空間である場合に比べると、レバー24の形状を簡素化することができる。
【0065】
また、レバー24には、回動軸13と対向し、且つ逃がし空間31の外周縁に沿うように配された規制面32が形成されている。この構成によれば、カム突起23が規制面32に当接することにより、保護位置のムービングプレート18が退避位置とは反対側へ移動してフード部12の正面の開口から離脱することを防止できる。尚、両ハウジング10,40が離脱した状態でレバー24を初期位置と嵌合位置との間で回動させる過程では、逃がし空間31内を相対変位するカム突起23が規制面32とは非接触の状態を保つので、保護位置のムービングプレート18が退避位置側へ落とし込まれる虞がない。
【0066】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、両ハウジングが離脱した状態でレバーを初期位置から嵌合位置へ回動する過程で、ムービングプレートは保護位置に保持されているが、レバーの回動過程でムービングプレートが僅かに退避位置側へ移動するようになっていてもよい。
(2)上記実施例では、第1通路(嵌合用カム面)が第2通路より回動軸に近い内周側に配されているが、これとは逆に、第2通路が第1通路(嵌合用カム面)より回動軸に近い内周側に配されていてもよい。この場合、両ハウジングの嵌合過程で、カムピンとカム突起を合体させないようにすればよい。
(3)上記実施例では、第2通路の外周縁に沿った規制面を形成したが、第2通路は、規制面が形成されておらず、レバーの外周縁に開放された形態であってもよい。
(4)上記実施例では、第1通路の入口と第2通路の入口が隣接して連通しているが、第1通路の入口と第2通路の入口は別々の空間であってもよい。