【解決手段】二次電池は、第1電極活物質を含み所定方向に所定間隔で配列された複数の柱状の第1電極と、第2電極活物質を含み第1電極に対向して配設された第2電極と、イオン伝導性を有し第1電極を被覆しており第1電極と第2電極との間に介在する電解質とを有する複数の柱状電極構造体と、柱状電極構造体と柱状電極構造体との間に介在された電子伝導体層と、を備えている。
第1電極活物質を含み所定方向に所定間隔で配列された複数の柱状の第1電極と、第2電極活物質を含み前記第1電極に対向して配設された第2電極と、イオン伝導性を有し前記第1電極を被覆しており前記第1電極と前記第2電極との間に介在する電解質と、を有する複数の柱状電極構造体と、
前記柱状電極構造体と前記柱状電極構造体との間に介在された電子伝導体層と、
を備えた二次電池。
前記柱状電極構造体は、少なくとも前記電解質により構成され前記第1電極と前記第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部、を更に有する柱状電極連結体である、請求項1に記載の二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(二次電池)
本実施形態で説明する二次電池は、複数の柱状電極構造体と、柱状電極構造体と柱状電極構造体との間に介在された電子伝導体層と、を備えている。柱状電極構造体は、複数の柱状の第1電極と、第1電極に対向して配設された第2電極と、第1電極と第2電極との間に介在する電解質と、を有する。この柱状電極構造体は、電解質が第1電極上に層状で形成されており、第2電極が電解質上に層状で形成されており、第1電極と電解質と第2電極とを有する電極本体が繋ぎ部により繋がれた柱状電極連結体の構造を有するものとしてもよい。この第1電極は、負極としてもよいし、正極としてもよいが負極であることが好ましい。また、第2電極は、正極としてもよいし、負極としてもよいが、正極であることが好ましい。説明の便宜のため、ここでは、第1電極を負極とし、第2電極を正極とし、リチウムイオンをキャリアとし、繋ぎ部を有する柱状電極連結体を備えたリチウム二次電池をその主たる一例として以下説明する。
【0011】
第1電極は、第1電極活物質(負極活物質)を含む柱状体である負極としてもよい。この第1電極は、柱状であればよく、その断面は円形や楕円形であってもよいし、四角形や六角形などの多角形であってもよい。また、二次電池では、複数の柱状の第1電極が所定の間隔を空けて所定方向に配列されている。この第1電極は、第1電極活物質としての炭素質材料を含むものとしてもよい。炭素質材料としては、例えば、コークス類や、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維としてもよい。このような炭素質材料は、例えば、柱状の軸方向(長手方向)に結晶が配向したものが好ましい。また、柱状の軸方向に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。あるいは、繊維状の負極は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状に形成したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。この負極は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、炭素質材料や金属としてもよい。また、第1電極は、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。
【0012】
この第1電極は、その直径D(μm)が20μm以上800μm以下の範囲であるものとしてもよい。直径Dが20μm以上では連結体の形成プロセスを容易にすることができ、800μm以下では電極中のイオン拡散抵抗の増加をより抑制でき、好ましい。この直径Dは、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、直径Dは、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。また、第1電極間の距離L(μm)は、5μm以上1500μm以下の範囲であるものとしてもよく、10μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましい。
【0013】
第2電極は、第2電極活物質(正極活物質)を含み第1電極に対向して配設されている正極としてもよい。この第2電極は、電解質上に層状で形成されているものとしてもよい。また、第2電極は、電解質の表面に形成された合材層としてもよい。第2電極は、その厚さT(μm)が5μm以上200μm以下の範囲であるものとしてもよく、10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。第2電極の厚さTは、正負極容量比に応じて適宜定めるものとしてもよい。第2電極は、例えば、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着剤とを混合し成形したものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi
(1-x)MnO
2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi
(1-x)Mn
2O
4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi
(1-x)CoO
2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi
(1-x)NiO
2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi
(1-x)Co
aNi
bMn
cO
2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li
(1-x)Co
aNi
bMn
cO
4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV
2O
3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV
2O
5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO
4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2やLiNi
0.4Co
0.3Mn
0.3O
2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0014】
第2電極に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0015】
第2電極において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、第2電極の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、第2電極の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、第2電極の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0016】
電解質は、キャリアであるイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し第1電極を被覆しており第1電極と第2電極との間に介在するものである。この電解質は、第1電極と第2電極とを絶縁するものである。電解質は、第1電極の外周面の全体に形成されており、第1電極上に層状で形成されているものとしてもよい。この電解質は、その厚さt(μm)が2μm以上15μm以下の範囲であることが好ましい。厚さtが2μm以上では、機械的強度を確保することができ、第1電極及び第2電極の短絡をより防止することができる。また、厚さtが15μm以下では、電解質の占める体積を低減することができ、エネルギー密度を向上することができる。また、イオン伝導する距離をより短縮可能であり、出入力性能をより向上することができる。この厚さtは、機械的強度の観点からは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、厚さtは、エネルギー密度の観点からは12μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0017】
電解質は、イオン伝導性と絶縁性とを有するポリマーが好適である。この電解質は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。また、電解質は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、二次電池のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiSbF
6、LiSiF
6、LiAlF
4、LiSCN、LiClO
4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl
4などが挙げられる。このうち、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4などの無機塩、及びLiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0018】
あるいは、電解質は、固体電解質であるものとしてもよい。固体電解質としては、例えば、無機固体電解質、あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質との混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを膜状にしたものを利用することができる。無機固体電解質としては、例えば、Li
3N、LISICONと呼ばれるLi
14Zn(GeO
4)
4、硫化物のLi
3.25Ge
0.25P
0.75S
4、ペロブスカイト型のLa
0.5Li
0.5TiO
3、(La
2/3Li
3x□
1/3-2x)TiO
3(□:原子空孔)、ガーネット型のLi
7La
3Zr
2O
12、NASICON型と呼ばれるLiTi
2(PO
4)
3、Li
1.3M
0.3Ti
1.7(PO
3)
4(M=Sc,Al)などが挙げられる。また、ガラスセラミックスである80Li
2S・20P
2S
5(mol%)組成のガラスから得られたLi
7P
3S
11、さらに硫化物系で高い導電率を持つ物質であるLi
10Ge
2PS
2なども挙げられる。ガラス系無機固体電解質ではLi
2S−SiS
2、Li
2S−SiS
2−LiI、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
2S−SiS
2−Li
4SiO
4、Li
2S−P
2S
5、Li
3PO
4−Li
4SiO
4、Li
3BO
4−Li
4SiO
4、そしてSiO
2、GeO
2、B
2O
3、P
2O
5をガラス系物質としてLi
2Oを網目修飾物質とするものなどが挙げられる。また、チオリシコン固体電解質としてLi
2S−GeS
2系、Li
2S−GeS
2−ZnS系、Li
2S−Ga
2S
2系、Li
2S−GeS
2−Ga
2S
3系、Li
2S−GeS
2−P
2S
5系、Li
2S−GeS
2−SbS
5系、Li
2S−GeS
2−Al
2S
3系、Li
2S−SiS
2系、Li
2S−P
2S
5系、Li
2S−Al
2S
3系、LiS−SiS
2−Al
2S
3系、Li
2S−SiS
2−P
2S
5系などの固体電解質が挙げられる。
【0019】
繋ぎ部は、少なくとも電解質により構成され第1電極と第1電極とをつなぎ合わせる部位である。この繋ぎ部の表面には第2電極が形成されていてもよい。即ち、第2電極は、複数の第1電極に亘って形成されているものとしてもよい。この二次電池は、第1電極と電解質と第2電極とを有する電極本体が繋ぎ部により繋がれた柱状電極連結体の構造を有するものとしてもよい。この繋ぎ部は、その厚さが5μm以上200μm以下の範囲であるものとしてもよく、10μm以上100μm以下の範囲が好ましい。
【0020】
柱状電極連結体は、平面状に第1電極が所定間隔で配列されているものとしてもよい。この柱状電極連結体は、2以上の柱状電極連結体が積層された積層体を構成するものとしてよいが、その積層数は、特に限定されず、2層、3層、4層などとしてもよい。第1電極の本数や、柱状電極連結体の積層数は、所望の電池特性が得られるものを適宜選択するものとすればよい。
【0021】
この二次電池において、第2電極活物質(正極活物質)の容量に対する第1電極活物質(負極活物質)の容量の比である電極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。第2電極の厚さは、第1電極の直径及び電極容量比に応じて適宜設定されるものとしてもよい。この第2電極の厚さは、例えば、第1電極上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとしてもよい。
【0022】
電子伝導体層は、電子を伝導する電子伝導体により構成される層であり、柱状電極連結体と柱状電極連結体との間に介在する。この電子伝導体層は、柱状電極連結体と柱状電極連結体との間以外に形成されていてもよい。例えば、電子伝導体層は、2以上の柱状電極連結体が積層された積層体の最外周面及び/又は柱状電極連結体の最外周面にも形成されていてもよい。電子伝導体層が最外周面に形成されると、導電性をより高めることができる。この電子伝導体層は、電子伝導性がより高いものがより好ましく、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。電子伝導体層の形状は、特に限定されず、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0023】
電子伝導体層は、多孔質であることが好ましい。これは、電解液を注液する際に速やかに電解液が浸透し、二次電池の製造時間をより短縮することができるためである。この電子伝導体層は、気孔率が30体積%以上95体積%以下の範囲であることが好ましい。気孔率が30体積%以上では電解液の浸透性をより高めることができる。また、気孔率が95体積%以下では電子伝導性の低下をより抑制することができる。電子伝導体層の気孔率は、電解液の浸透性の観点からは、50体積%以上がより好ましく、70体積%以上が更に好ましい。また、電子伝導体層の気孔率は、電子伝導性の観点からは、90体積%以下がより好ましく、80体積%以下が更に好ましい。また、電子伝導体層は、その厚さが0.1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。電子伝導体層の厚さが0.1μm以上では電子伝導性をより高めることができる。また、厚さが20μm以下では二次電池のエネルギー密度の低下をより抑制することができる。電子伝導体層の厚さは、電子伝導性の観点からは、0.2μm以上がより好ましく、0.4μm以上が更に好ましい。また、電子伝導体層の厚さは、エネルギー密度の観点からは、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。この電子伝導体層には、集電部が接続されているものとしてもよい。集電部は、導電性を有する部材であり、電子伝導体層の端部及び/又は表面に電気的に接続されている。
【0024】
図1、2は、二次電池20の一例を示す模式図である。この二次電池20は、
図1、2に示すように、所定方向に所定間隔で配列された複数の柱状の第1電極21と、第1電極21に対向して配設された第2電極22と、第1電極21を被覆しており第1電極21と第2電極22との間に介在する電解質24と、第1電極21と第1電極21とをつなぎ合わせる繋ぎ部26と、を備えている。また、二次電池20は、第1電極21と第2電極22と電解質24とを有する電極本体25が繋ぎ部26により繋がれた柱状電極連結体10の構造を有するものとしてもよい。また、二次電池20は、柱状電極連結体10を複数積層した構造を有し、その層間に電子伝導体層28が形成されている。また、電子伝導体層28には、集電部としての集電タブ29が接続されている。
【0025】
(二次電池の製造方法)
本開示の二次電池の製造方法は、柱状電極連結体を形成する連結体形成工程と、柱状電極連結体に電子伝導体層を形成しこれを積層する積層工程と、電子伝導体層に集電部を形成する集電部形成工程とを含むものとしてもよい。各工程では、上述した二次電池の部材や組成、形状、構造などを適宜用いるものとする。なお、集電部形成工程は適宜省略してもよい。連結体形成工程では、第1電極活物質を含む複数の柱状の第1電極を、第1電極と第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部を形成する間隔を空けて所定方向に配列し、第2電極活物質を含む第2電極とイオン伝導性を有する電解質とを電解質が第1電極上に介在され且つ繋ぎ部を構成するよう配置して加熱押圧する処理を行う。この工程では、第1電極と第2電極と電解質と繋ぎ部とを有する柱状電極連結体を複数作製するものとする。積層工程では、柱状電極連結体の上面及び下面に電子伝導体層を形成し、これらを積層する処理を行う。電子伝導体層は、多孔質の部材を用いることが好ましい。柱状電極連結体を積層した際に、荷重を加えて圧着するものとしてもよい。この工程で得られた柱状電極連結体の積層体は、収容部材に収容され、電解液が注入されて封止されるものとしてもよい。集電部形成工程では、第1電極や電子伝導体層に集電部(集電タブ)を形成する処理を行う。
【0026】
図3は、柱状の第1電極21を連結した柱状電極連結体を積層した二次電池20の製造工程の一例を示す説明図である。この製造方法において、まず、支持体13上に形成した第1電極活物質を含む第2電極層12と、電解質層14とを用意する(
図3A)。支持体13は、例えばAl箔などの金属箔を用いることができる。次に、支持体13に形成した第2電極層12と電解質層14とを貼り合せ、プレスする(
図3B)。続いて、支持体13を第2電極層12から剥離することで、正極合材を電解質層に転写させ、第2電極層12/電解質層14の接合体を得る(
図3C)。この接合体を複数作製する。次に、柱状の第1電極11を所定間隔で整列させ、その上下を接合体で挟み(
図3D)、熱融着などにより電解質層14を接合し、柱状電極連結体10を得る(
図3E)。柱状電極連結体10の上面と下面の第2電極22に電子伝導体層28を形成し、これらを積層する(
図3F)。電子伝導体層28に集電タブ29を接続し、第1電極21に集電タブ27を接続し、収容部材に入れ、電解液を注液して封止し、電子伝導体層28を介して柱状電極連結体10を積層した二次電池20を得ることができる(
図3G)。
【0027】
以上詳述した二次電池では、充放電特性をより高める新規な二次電池を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。例えば、外周面から立体的にイオンの吸蔵放出を行うことができる柱状電極の三次元配列構造を用いることによって、正極及び負極を至近配置することができるため、エネルギー密度や出入力性能を向上することができる。また、柱状電極構造体を複数含む構造において、柱状電極構造体の間に電子伝導体層を有するため、第2電極の集電性が向上し、容量低下などをより抑制して充放電容量などをより向上することができる。
【0028】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、二次電池において、柱状の第1電極を負極とし、第1電極を覆う第2電極を正極として説明したが、特にこれに限定されず、柱状の第1電極を正極とし、第1電極を覆う第2電極を負極としてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、二次電池のキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、柱状の第1電極は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、二次電池は、第1電極と第2電極と電解質とを有する電極本体を繋ぎ部で繋いだ柱状電極連結体を複数積層したものとして説明したが、特にこれに限定されず、第1電極と第2電極と電解質とを有する柱状電極構造体を複数有するものとすれば、特にこれに限定されず、繋ぎ部を省略してもよい。
図4は、二次電池20Bの一例を示す説明図である。この二次電池20Bは、第1電極21と第2電極22と電解質24とを有する柱状電極構造体10Bと、柱状電極構造体10Bの間に介在した電子伝導体層28Bとを備える。このような二次電池20Bにおいても、上述した実施形態と同様に、充放電特性をより高める新規な二次電池を提供することができる。
【実施例】
【0033】
以下には、上述した二次電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。まず、二次電池の構造について考察した結果を説明する。なお、実験例1が参考例であり、実験例2、3、6、7が本開示の実施例であり、実験例4,5が比較例に相当する。
【0034】
(実験例1〜3)
柱状電極連結体を1又は2以上積層したセルを
図3に示す作製順に作製した。まず、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解させたポリフッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)溶液をガラス基板に塗布・乾燥後、剥離することで、5μmの厚さのPVdF−HFP単離膜(電解質層)を得た。正極活物質をLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(NCM)とし、導電材をカーボンブラックとし、結着材をPVdFとし、それぞれを質量比で92:5:3で混合し、溶媒としてのNMP中で分散させて正極合材とした。この正極合材のペーストを15μmの厚さのAl箔に塗布し乾燥させることで正極合材層を作製した(
図3A)。Al箔に形成した正極合材層と電解質層とを貼り合せ、プレス後(
図3B)、Al箔を剥離することで、正極合材を電解質層に転写させ(
図3C)、正極合材層/電解質層の接合体を得た。この接合体を複数枚作製した。次に、直径500μmの円柱状炭素電極5本を1mm間隔で整列させ、その上下を接合体で挟み(
図3D)、熱融着によりPVdF−HFP膜を接合し、柱状電極連結体を得た(
図3E)。柱状電極連結体の上面と下面の正極合材層に電子伝導体としての多孔質Al箔(厚さ15μm、気孔率50体積%)を貼り合せた。この柱状電極連結体を1層のみ、2層積層、4層積層したものを作製し(
図3F)、それぞれ実験例1〜3のセルとした。実験例2、3では、柱状電極連結体の層間に電子伝導体層が形成されている(
図1、3参照)。正負極タブを接合し電解液を注液後、密封容器に封止して100時間以上静置し、柱状電極配列セルとした(
図3G)。電解液としては、1MのLiPF
6を含むエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で3:4:3で混合したものを用いた。
【0035】
(充放電試験、電池出力測定)
作製した実験例1〜3のセルを用い、充放電試験を行った。充放電試験は、終止電圧を2.0〜4.1V、電流値を0.05C、試験温度を25℃として実施した。また、電池出力は、25℃において4.1Vまで充電したセルを3Cで放電させたときの2秒後の電圧と電流値から算出した。
【0036】
(実験例4、5)
最外周のみに多孔性Al箔を配置し、柱状電極連結体の層間に多孔性Al箔を用いなかった以外は実施例2と同様に作製したセルを実験例4とした。また、最外周のみに多孔性Al箔を配置し、柱状電極連結体の層間に多孔性Al箔を用いなかった以外は実施例3と同様に作製したセルを実験例5とした。
図5は、柱状電極連結体の層間に電子伝導体層を含まない二次電池30の説明図である(実験例5)。
【0037】
(結果と考察)
実験例1〜5の積層数、層間の電子伝導体層、放電容量、電池出力をまとめて表1に示した。
図6は、柱状電極連結体の層間に電子伝導体層がある場合とない場合においての柱状電極連結体の積層数と放電容量の関係図である。表1及び
図6に示すように、電子伝導体層としての多孔性Al箔を層間に用いた場合、柱状電極連結体の積層数に比例して放電容量が増加した。一方、多孔性Al箔を層間に用いなかった場合(実験例4,5)、積層数が増加しても放電容量は増加しなかった。この原因は、以下のように推察される。多孔性Al箔を層間に用いない場合、柱状電極連結体の層間にある合材の電子抵抗が大きいため、層間の活物質は充放電に関与せず、再外周部の合材のみが充放電するものと推察された。このため、層数を増加させても充放電に関与できるのは、電子伝導体(集電体)と接している最外周の柱状電極連結体のみになるため、容量は増加しないものと推察された。一方、層間に多孔性Al箔を配置させた実験例2,3では層間の活物質への電子の授受が行われるため、積層数の増加に応じて、放電容量が比例的に増加するものと推察された。
【0038】
また、表1の実験例2,4、実験例3,5に示すように、同じ積層数のセルにおいて、層間への多孔性Al箔の配置によって、出力が向上した。これは上述の通り、柱状電極連結体の層間にある合材部の電子伝導性向上によるものと推察された。電池出力は入力特性や急速充電特性と相関があることから、柱状電極連結体の層間へ電子伝導体層としての多孔性Al箔を配置することによって、これらの特性が向上していることが推察された。
【0039】
【表1】
【0040】
(実験例6、7)
次に、電子伝導体層の多孔性について検討した。
図7は、電解質への電解液の浸透性を評価する注液速度測定セル40の模式図である。注液速度測定セル40は、電解液43と、電解質44と、電子伝導体層48と、集電線49とを備えている。この注液速度測定セル40は、集電線49を接続した2つの電子伝導体層48の間に電解質44を配置し、電解液43が電解質44に浸透する際のイオン抵抗を集電線49を介して測定するセルである。電解質44としてPVdF−HFP膜(5μm厚)、電子伝導体層48として多孔性Al箔(45μm厚、気孔率50体積%)、電解液を上述した1M−LiPF
6/(EC+DMC+EMC)としたものを実験例6のセルとした。また、多孔性Al箔の代わりに無孔Al箔を用いた以外は実験例6と同様のセルを実験例7とした。注液速度測定セル40における電解質44の抵抗は、電解液43をセルへ注入した直後に封止し、25℃で交流インピーダンス法により所定の時間間隔でイオン抵抗を測定することにより評価した。
【0041】
(結果と考察)
実験例6,7の電解液の浸透時間(h)と、電子伝導体層の材質をまとめて表2に示した。
図8は、電解液の電解質への浸透時間と電解質のイオン抵抗との関係図である。
図8に示すように、実験例6では、時間の経過と共に膜のイオン抵抗が減少した。これは、多孔質の電子伝導体層を介して電解液を電解質が含浸し、電解質の膜中をイオンが伝導できるようになったためである。浸透時間を10時間以上にすると電解質のイオン抵抗は一定になった。これは、電解液の電解質への含浸量が飽和したためであると推察された。電解質のイオン抵抗が一定になるまでに要した時間を注液時間とすると、多孔性Al箔を電子伝導体層として用いた場合、注液時間は10時間であった。一方、無孔Al箔を用いた実験例7の場合、注液時間は33時間となり、多孔性Al箔を用いたときよりも注液時間が長くなることがわかった。なお、実験例6,7において、注液が完了したあとは、これらに充放電特性の違いはない。
【0042】
ここで、実験例1〜5の二次電池について考察する。
図9は、電解液が電子伝導体層28(電解質24)へ浸透する模式図であり、
図9Aが多孔質の電子伝導体層28を用いた二次電池20の図であり、
図9Bが無孔の電子伝導体層28Cを用いた二次電池20Cの図である。二次電池20の電解液の注液は、セルを拘束し、柱状電極連結体同士が密着した状態で実施される。
図9Bに示すように、無孔の電子伝導体層28Cを用いた場合、電解液は第2電極22の空孔のみを拡散し、電解質24に浸透する。一方、
図9Aに示すように、多孔性の電子伝導体層28を用いた場合、第2電極22の合材の空孔に加え、電子伝導体層28の空孔を介して電解液が拡散する。このため、多孔性の電子伝導体層28を用いることによって、電解質24への電解液の注液時間を短縮することができることがわかった。このように、電解液の拡散経路の違いに基づき、電解液の注液速度を高めるには、多孔性の電子伝導体層を備えた方が好適であることがわかった。
【0043】
【表2】
【0044】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。