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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-212868(P2019-212868A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】被洗浄物の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/26 20060101AFI20191115BHJP
   B08B 3/04 20060101ALN20191115BHJP
【FI】
   H05K3/26 A
   B08B3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-110401(P2018-110401)
(22)【出願日】2018年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 大祐
【テーマコード(参考)】
3B201
5E343
【Fターム(参考)】
3B201AA02
3B201AB43
3B201BB02
3B201BC01
5E343AA15
5E343AA17
5E343BB24
5E343BB67
5E343EE06
5E343EE12
5E343FF23
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】 プリント配線板製造途中の積層体を水洗液で洗浄する際、水洗液の流れ等に左右されず、積層体に付着した微粒子を確実に除去することができる被洗浄物の洗浄方法を提供する。
【解決手段】 基板上に少なくとも1層の導体回路を有するプリント配線板の製造工程において、プリント配線板製造途中の積層体に付着した微粒子を洗浄、除去する被洗浄物の洗浄方法であって、被洗浄物である前記積層体を浸漬した溶液から引き上げた後、前記被洗浄物を水洗槽に貯留された水洗液に浸漬し、浸漬前に前記被洗浄物に付着していた微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧を、前記水洗槽と該水洗槽に設けられた微粒子除去用電極板との間に印加し、前記微粒子除去用電極板に前記微粒子を付着させることにより微粒子を除去することを特徴とする被洗浄物の洗浄方法。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも1層の導体回路を有するプリント配線板の製造工程において、プリント配線板製造途中の積層体に付着した微粒子を洗浄、除去する被洗浄物の洗浄方法であって、
被洗浄物である前記積層体を浸漬した溶液から引き上げた後、前記被洗浄物を水洗槽に貯留された水洗液に浸漬し、浸漬前に前記被洗浄物に付着していた微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧を、前記水洗槽と該水洗槽に設けられた微粒子除去用電極板との間に印加し、前記微粒子除去用電極板に前記微粒子を付着させることにより微粒子を除去することを特徴とする被洗浄物の洗浄方法。
【請求項2】
前記微粒子は、前記基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項3】
前記被洗浄物を水洗槽に貯留された水洗液に浸漬した後、前記水洗液を攪拌しながら前記した電圧を印加する請求項1又は2に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項4】
前記微粒子除去用電極板は、少なくとも前記水洗液の液表面に近い液中、前記水洗液の下部、前記下部と前記液表面との中間部に水平方向に配設されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項5】
前記微粒子除去用電極板は、前記水洗液の表面に対して垂直方向に配設されているか、又は、被洗浄物を前記水洗液中に浸漬した後、前記水洗液の表面に対して垂直方向に前記微粒子除去用電極板を挿入することにより前記微粒子除去用電極板を配設する請求項1〜4のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項6】
前記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧は、アース接続した水洗槽に対して、前記微粒子除去用電極板の電位差がプラスの電位差となる電圧である請求項1〜5のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項7】
前記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧は、−1kV〜+1kVである請求項6に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項8】
前記微粒子除去用電極板は、板状体であるか、複数個所に貫通孔が設けられた板状体であるか、又は、メッシュ形状の板状体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項9】
前記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、パルス電圧を印加する請求項1〜8のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項10】
前記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、直流電圧を印加する請求項1〜8のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項11】
前記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、パルス電圧及び直流電圧を印加する請求項1〜8のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項12】
前記微粒子除去用電極板の総面積は、前記水洗液の体積10リットル当たり、1mである請求項1〜11のいずれか1項に記載の被洗浄物の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に広く使用されているプリント配線板は、電子機器の小型化、高機能化のために、層の薄型化や回路の微細配線化が求められている。プリント配線板の製造技術としては、導体層を有する基板に絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。
【0003】
このようなプリント配線板を製造する工程において、導体回路やビア導体、導体パッド等を形成する際には、めっき浴等の溶液にプリント配線板製造途中の積層体を浸漬し、無電解めっきや電解めっき等の処理を施すが、処理途中において、基板の材料に起因する微粒子やフォトレジスト等に起因する微粒子等が発生して上記積層体に付着するか、溶液中に分散し、上記溶液から積層体を引き上げた際、上記微粒子がさらに積層体の表面に付着する。
【0004】
上記積層体に付着した微粒子は、後工程において、めっき処理等を行う際、欠陥等が発生する原因となるので、除去する必要があるが、単にめっき浴等の溶液中から引き上げて洗浄水で洗浄したのみでは、完全に除去することが難しく、ある程度の数の微粒子が積層体表面に残留した状態で、次の工程に進んでしまうという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、積層体等の被洗浄物の表面に付着した微粒子を洗浄、除去するに当たり、被洗浄物を水洗液に浸漬するとともに洗浄物に電場を掛け、水洗液でその被洗浄物の表面から離れた微粒子を電場方向に泳動させ、さらに水洗液をポンプで循環し、循環の途中にフィルタを設置してフィルタで微粒子を捕獲する被洗浄物の洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−94459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、微粒子は、その種類によってζ電位等が異なり、単に電場を掛けたのみでは、良好に泳動しないものが存在する。また、水洗槽内での水洗液の流れは水洗槽の形状等に左右され易く、不均一となり易く、水洗槽内で浮遊する微粒子を効率よく、全て循環ポンプ中に移動させることは難しく、フィルタによる微粒子の除去は不充分になり易い。さらに、フィルタにより微粒子を除去しようとした場合、微粒子に起因してフィルタが微粒子で詰まり易く、効率よく微粒子を取り除くのが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、プリント配線板製造途中の積層体を水洗液で洗浄する際、水洗液の流れ等に左右されず、積層体に付着した微粒子を確実に除去することができる被洗浄物の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の被洗浄物の洗浄方法は、基板上に少なくとも1層の導体回路を有するプリント配線板の製造工程において、プリント配線板製造途中の積層体に付着した微粒子を洗浄、除去する被洗浄物の洗浄方法であって、被洗浄物である上記積層体(以下、本明細書では、上記積層体は、ベースとなる基板に絶縁層と導体層とを交互に積み重ねていく過程における完成前のプリント配線板の全てをいうものとする)を浸漬した溶液から引き上げた後、上記被洗浄物を水洗槽に貯留された水洗液に浸漬し、浸漬前に上記被洗浄物に付着していた微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧を、上記水洗槽と該水洗槽に設けられた微粒子除去用電極板との間に印加し、上記微粒子除去用電極板に上記微粒子を付着させることにより微粒子を除去することを特徴とする。
【0010】
本発明の被洗浄物の洗浄方法では、浸漬前に上記被洗浄物に付着していた微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧を、上記水洗槽と該水洗槽に設けられた微粒子除去用電極板との間に印加し、上記微粒子除去用電極板に上記微粒子を付着させることにより微粒子を除去するので、上記被洗浄物に付着していた微粒子は、上記微粒子除去用電極板に向かって確実に移動し、上記微粒子除去用電極板に吸着する。従って、本発明の被洗浄物の洗浄方法では、微粒子が除去された積層体を水洗液中から引き上げることにより、効率よく、積層体から微粒子を除去することができる。なお、微粒子が付着した上記微粒子除去用電極板は、水洗槽より引き上げ、微粒子を取り除くことにより、効率よく微粒子を除去することができる。積層体を引き上げた後、微粒子が付着した上記微粒子除去用電極板に、微粒子を付着させた際の電圧とは逆の極性の電圧を印加し、水洗液中に微粒子を分散させた後、フィルタで微粒子を除去してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子は、上記基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記被洗浄物に付着した微粒子が上記した基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストであると、弱アルカリ性の水洗液中において、ζ(ゼータ)電位がマイナス側で大きくなり易い。従って、例えば、水洗液のpHを弱アルカリ性にし、ζ電位に対応する電位差の電圧を印加することにより、微粒子を効率よく微粒子除去用電極板に吸着させることができ、上記微粒子を除去することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記被洗浄物を水洗槽に貯留された水洗液に浸漬した後、上記水洗液を攪拌しながら上記した電圧を印加することが望ましい。
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記水洗液を攪拌しながら上記した電圧を印加することにより、微粒子が水洗液中を移動し易くなり、微粒子を効率よく微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子除去用電極板は、少なくとも上記水洗液の液表面に近い液中、上記水洗液の下部、上記下部と上記液表面との中間部に水平方向に配設されていることが望ましい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記微粒子除去用電極板が、少なくとも上記水洗液の液表面に近い液中、上記水洗液の下部、上記下部と上記液表面との中間部に水平方向に配設されていると、上記微粒子除去用電極板が複数の適切な位置に配設されているので、水洗液の全体に効率よく電圧を印加することができ、微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子除去用電極板は、上記水洗液の表面に対して垂直方向に配設されているか、又は、被洗浄物を上記水洗液中に浸漬した後、上記水洗液の表面に対して垂直方向に上記微粒子除去用電極板を挿入することにより上記微粒子除去用電極板を配設することが望ましい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記微粒子除去用電極板が、上記水洗液の表面に対して垂直方向に配設されているか、又は、被洗浄物を上記水洗液中に浸漬した後、上記水洗液の表面に対して垂直方向に上記微粒子除去用電極板を挿入することにより上記微粒子除去用電極板を配設することにより、上記微粒子除去用電極板は、上記水洗液表面に対して垂直な方向に配設されることとなり、水洗液全体に電圧を印加することができ、微粒子を効率よく、微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0017】
また、上記した水平方向の微粒子除去用電極板と垂直方向の微粒子除去用電極板とを組み合わせることにより、より水洗液の全体に多角的に電圧を印加することができ、微粒子をより効率よく、微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧は、アース接続した水洗槽に対して、上記微粒子除去用電極板の電位差がプラスの電位差となるように電圧を印加することが望ましい。
【0019】
上記水洗液中の微粒子のζ電位は、弱アルカリ性の水洗液中でマイナスとなる傾向にある。従って、本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧が、アース接続した水洗槽に対して、上記微粒子除去用電極板の電位差がプラスの電位差となるように電圧を印加すると、微粒子は微粒子除去用電極板に向かって確実に移動し、上記微粒子除去用電極板に吸着される。従って、微粒子を効率よく、除去することができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧は、−1kV〜+1kVであることが望ましい。
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧が、−1kV〜+1kVであると、良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子除去用電極板は、板状体であるか、複数個所に貫通孔が設けられた板状体であるか、又は、メッシュ形状の板状体であることが望ましい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記微粒子除去用電極板が、板状体であるか、複数個所に貫通孔が設けられた板状体であるか、又は、メッシュ形状の板状体であると、微粒子除去用電極板の面積を広くとることができるので、電圧印加の効果が大きくなり、良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、パルス電圧を印加することが望ましい。
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において、上記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、所定の電位差となるように設定したパルス電圧を印加することにより、微粒子が移動し易くなり、良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、直流電圧を印加して、微粒子が移動し易くすることもでき、良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0025】
さらに、本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子のζ電位に対応する電圧を印加する際、パルス電圧及び直流電圧を印加することにより、微粒子がより移動し易くなり、良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子除去用電極板の総面積は、上記水洗液の体積10リットル当たり、1mであることが望ましい。
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法において上記微粒子除去用電極板の総面積が、上記水洗液の体積10リットル当たり、1mであると、水洗液中に充分な電圧を印加することができ、より良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1(a)は、本発明の被洗浄物の洗浄方法に用いられる水洗槽の一実施形態を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す水洗槽の側面図である。
図2図2(a)〜(e)は、微粒子除去用電極板に印加される電圧のパターンを模式的に示す説明図である。
図3図3(a)は、本発明の被洗浄物の洗浄方法に用いられる水洗槽の他の実施形態を模式的に示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す水洗槽の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の被洗浄物の洗浄方法は、基板上に少なくとも1層の導体回路を有するプリント配線板の製造工程において、プリント配線板製造途中の積層体に付着した微粒子を洗浄、除去する被洗浄物の洗浄方法であって、
被洗浄物である上記積層体を浸漬した溶液から引き上げた後、上記被洗浄物を水洗槽に貯留された水洗液に浸漬し、浸漬前に上記被洗浄物に付着していた微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧を、上記水洗槽と該水洗槽に設けられた微粒子除去用電極板との間に印加し、上記微粒子除去用電極板に上記微粒子を付着させることにより微粒子を除去することを特徴とする。
【0029】
本発明の被洗浄物の洗浄方法では、浸漬前に上記被洗浄物に付着していた微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧を、上記水洗槽と該水洗槽に設けられた微粒子除去用電極板との間に印加し、上記微粒子除去用電極板に上記微粒子を付着させることにより微粒子を除去するので、上記被洗浄物に付着していた微粒子は、上記微粒子除去用電極板に向かって確実に移動し、上記微粒子除去用電極板に吸着する。従って、本発明の被洗浄物の洗浄方法では、微粒子が除去された積層体を水洗液中から引き上げることにより、効率よく、積層体から微粒子を除去することができる。
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄方法の対象となる被洗浄物は、基板上に少なくとも1層の導体回路を有するプリント配線板を製造する途中の積層体である。
本明細書において、基板とは、プリント配線板を製造するための原材料であって、スルーホール、ビアホール等を形成するための処理が施されていないものをいい、例えば、銅箔等が貼り付けられていない基板、銅張基板等が上記基板に相当する。導体回路、スルーホール、ビアホール等が形成された少なくとも1層の導体回路を有する基板を、本明細書では、プリント配線板ということとする。
完成品のプリント配線板は、基板上に1層の導体回路が形成されていてもよく、複数の導体回路が形成されていてもよい。また、導体回路は、基板の片面に形成されていてもよく、基板の両面に形成されていてもよい。
【0031】
また、被洗浄物は、上記した完成品の製造途中のプリント配線板であるので、例えば、原材料である銅張基板を出発材料とし、上記銅張基板になんらかの処理を施した積層体が被洗浄物となる。
対象となる積層体の具体例としては、例えば、上記銅張基板にスルーホール及び導体層を形成した積層体、上記導体層にフォトレジスト層を形成し、現像処理を施して導体回路とした積層体、導体回路上に絶縁層を形成し、ビアホールと導体層や導体回路を形成した積層体等も被洗浄物となる。さらに、上記した処理以外の処理が施された積層体も、プリント配線板完成前の積層体であれば、被洗浄物となる。
【0032】
上記微粒子の大きさは、0.01〜100μmであることが望ましい。微粒子の形状が球状でなく、大きさが場所により異なる場合には、最も長い部分の距離をその微粒子の大きさとする。
微粒子の大きさが100μmを超えると、その比重により水洗液の表面に浮くか、水洗槽の底に沈むため、微粒子除去用電極板を用いて除去する必要性に乏しい。0.01μm未満の微粒子は、発生する可能性が極めて低い。
【0033】
本発明の一実施形態に係る被洗浄物の洗浄方法では、上記微粒子は、積層体に付着した微粒子であれば、その種類は特に限定されるものではないが、上記基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストからなる群から選択される少なくとも1種であると、より効率的に微粒子を取り除くことができる。
上記基板の材料とは、基板を構成する材料であって、ガラス繊維をエポキシ樹脂で固めた基板、銅張基板、ベークライト製等の他の種類の樹脂からなる基板等が基板に相当するので、ガラス繊維からなる微粒子も上記微粒子に該当するが、大部分は、種々の樹脂からなる微粒子である。
【0034】
これらの基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストからなる群から選択される少なくとも1種からなる微粒子は、弱アルカリ性の水洗液中において、ζ電位がマイナス側で大きくなり易い。
【0035】
ζ電気とは、電気二重層中の滑り面と、界面から充分に離れた部分との間の電位差のことである。
すなわち、溶液中に微粒子等が存在する場合、微粒子と溶液との界面では表面荷電に対する対イオンにより電気二重層が形成され電位差(イオン濃度勾配)が生じる。溶液に接触した微粒子が相対的に運動しているとき、微粒子の表面からある厚さの層にある溶液は粘性のために接触相とともに運動する。この層の表面を滑り面というが、このすべり面から充分に離れた溶液のバルク部分との電位差をζ電位という。
【0036】
水洗液中に浸漬する微粒子除去用電極板を、微粒子のζ電位との電位差が大きくなるように設定することにより、微粒子を微粒子除去用電極板に引き付け、吸着させることができる。
従って、例えば、水洗液のpHを弱アルカリ性にし、マイナスとなった微粒子のζ電位に対応するプラスの電位差の電圧を印加することにより、微粒子を効率よく微粒子除去用電極板に吸着させることができ、上記微粒子を除去することができるが、導体回路を形成した後の積層体を水洗液に浸漬すると弱アルカリ性となる場合が多い。従って、大きなマイナスのζ電位を有する微粒子に、微粒子除去用電極板の電位をプラスの電位とすることにより、微粒子除去用電極板に微粒子を吸着させることができる。
上記した以外の微粒子も存在する可能性があるが、その数は極めて少なく、これらの微粒子も上記した電圧の印加により、移動する可能性が高いので、上記した電圧の印加により殆どの微粒子を除去することができる。
【0037】
なお、微粒子のζ電位は、以下の方法により測定することができる。
(1)まず、微粒子が分散している部分に外部から電場をかけ、微粒子を電気泳動させる。
(2)次に、電気泳動している微粒子に波長(λ)のレーザ光を照射し、微粒子からの散乱光の散乱角(θ)におけるドップラーシフト量(Δv)を測定する。
【0038】
(3)微粒子の電気泳動速度(V)と、散乱角(θ)におけるドップラー効果によるドップラーシフト量(Δv)との間には、下記の(1)式の関係が成立するので、(1)式により微粒子の電気泳動速度(V)を求めることができる。
V=λ・Δv/[2n・sin(θ/2)]・・・(1)
ただし、n:水洗液の屈折率、θ:検出角度
【0039】
(4)得られた電気泳動速度(V)を用いると、電気泳動速度(V)と電場(E)との関係を示す(2)式から微粒子の電気移動速度(U)を求めることができる。
U=V/E・・・(2)
【0040】
(5)電気移動速度(U)からζ電位(ζ)を求める際には、(3)式で示すSmoluchowskiの式を用いることができ、これによりζ電位(ζ)を求めることができる。
ζ=4nηU/ε・・・(3)
ただし、η:水洗液の粘度、ε:水洗液の誘電率
【0041】
微粒子のζ電位は、具体的には、例えば、大塚電子製のMicrotrackMT3300EXII,ELS−Zを用いることにより、粒径が0.6nm〜2800μm、ζ電位が−200〜200mVの微粒子のζ電位を求めることができる。
【0042】
図1(a)は、本発明の被洗浄物の洗浄方法に用いられる水洗槽の一実施形態を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す水洗槽の側面図である。
【0043】
図1(a)及び(b)に示す水洗槽10では、槽本体11の内部に水洗液17が貯留されるとともに、水洗液17の液表面に近い液中、水洗液17(槽本体11)の下部、及び、上記下部と上記液表面との中間部に金属板からなる微粒子除去用電極板12が水平方向に配設されており、微粒子除去用電極板12は配線15を介して電圧印加装置18に接続されている。
【0044】
槽本体11は配線14を介して接地されており、槽本体11の中央部分には、下部に攪拌羽根16aを備えた撹拌機16が配設されており、撹拌機16を動作させると、攪拌羽根16aにより水洗液17全体が攪拌される。また、微粒子除去用電極板12の間には、洗浄の対象となる複数の積層板(図示せず)を収容した積層板収容ラック13が配設されており、この水洗槽10で洗浄処理することにより、積層板に付着した微粒子を取り除くことができる。
【0045】
この水洗槽10では、水洗液17は弱アルカリ性であるか、又は、弱アルカリ性となるように調整されており、このため、基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストのζ電位は、マイナスとなっている。一方、槽本体11は、接地されており、微粒子除去用電極板12は、アノード電極として機能し、微粒子のζ電位に対応するように、電圧印加装置を介してプラスの電位差の電圧が印加されるようになっている。
【0046】
微粒子除去用電極板12に印加される電圧は、特に限定されるものではなく、一定値の直流電圧を印加してもよいが、経時的に変化するパルス電圧を印加した方が、積層体に付着した微粒子が電圧により揺さぶられ、積層体より離脱し易くなる。印加する電圧は、パルス電圧であってもよく、直流電圧であってもよく、パルス電圧及び直流電圧を印加してもよい。
【0047】
水洗液は、積層体を洗浄する目的で貯留された液であり、水洗液に含まれる成分は、特に限定されるものではないが、洗浄工程の前の工程において処理を行った積層体を洗浄するために用いられる水洗液であり、前工程において積層体に付着した溶液を不可避的に含む液であり、そのため水洗液は弱アルカリ性を示す傾向にある。基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジスト等は、弱アルカリ性の溶液中においてζ電位が大きなマイナスを示すので、プラスの電圧を印加した微粒子除去用電極板に吸着し易くなる。
【0048】
図2(a)〜(e)は、微粒子除去用電極板12に印加される電圧のパターンを模式的に示す説明図である。
図2(a)は、パルス電圧を模式的に示す説明図であり、交流電圧のマイナスの部分をカットし、経時的に変化するプラスの電圧のみを印加している。
【0049】
図2(b)は、パルス電圧の他のパターンを模式的に示す説明図であり、交流電圧のマイナスの部分をカットするとともに、プラスの部分を複数のパルス電圧に分割した形態のプラス電圧を断続的に印加している。
【0050】
図2(c)は、直流電圧のパターンを模式的に示す説明図であり、一定の直流パルス電圧を断続的に印加している。
図2(d)は、直流電圧の他のパターンを模式的に示す説明図であり、一定時間毎に2段階で変化する直流パルス電圧を断続的に印加している。
図2(e)は、交流の一部をカットしたパルス電圧及び直流パルス電圧を印加するパターンを示す説明図であり、図2(a)に示したパルス電圧と直流パルス電圧をミックスしたパターンのパルス電圧を断続的に印加している。
【0051】
基板の材料、ネガ型のフォトレジスト、及び、ポジ型フォトレジストからなる微粒子のpH10〜12におけるζ電位は、−20〜−50mVであり、微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧は、−1kV〜+1kVであることが望ましい。
上記した電圧が変化するパルス電圧の場合、パルス電圧の最大値が上記した電圧に相当する。
上記微粒子のζ電位に対応する電位差の電圧が、−1kV〜+1kVであると、微粒子を充分に微粒子除去用電極板に引き付けることができ、良好に微粒子を微粒子除去用電極板に吸着させることができる。
【0052】
上記した態様の電圧を微粒子除去用電極板12に印加することにより、マイナスのζ電位を有する樹脂等からなる微粒子は、微粒子除去用電極板12に引き付けられ、積層体から離脱し、水洗液中を移動して、微粒子除去用電極板12に吸着する。従って、微粒子が取り除かれた積層体を水洗液17中から引き上げることにより、微粒子が除去された積層体を得ることができる。
また、撹拌機16を使用し、攪拌羽根16aにより水洗液17を攪拌することにより、微粒子がより積層体の表面より離れやすくなり、より効率的に積層体の表面から微粒子を取り除くことができる。
【0053】
上記操作の後、微粒子が吸着した微粒子除去用電極板12の電位を微粒子と同じ電位とすると、微粒子除去用電極板12から微粒子が離脱し、水洗液中に分散するため、微粒子が分散した水洗液をポンプ等を用いて循環させ、フィルタ等を通過させることにより微粒子を取り除くことができ、再度、水洗槽10の水洗液17を積層体の洗浄に使用することができる。
【0054】
微粒子が分散した水洗液を水洗槽10の外に排出し、水洗槽10を洗浄した後、新たに水洗液を流入させることによっても、再度、水洗槽10を積層体の洗浄に使用することができる。
さらに、微粒子除去用電極板12を別の槽に移して、微粒子除去用電極板12から微粒子を離脱させる処理を行ってもよい。
【0055】
図1(a)及び(b)に示した水洗槽10における微粒子除去用電極板12の総面積は、水洗液17の体積10リットル当たり、1mであることが望ましい。
【0056】
図3(a)は、本発明の被洗浄物の洗浄方法に用いられる水洗槽の他の実施形態を模式的に示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す水洗槽の側面図である。
【0057】
図3(a)及び(b)に示す水洗槽20では、槽本体21の内部に水洗液27が貯留されており、水洗液27の液表面に近い液中、水洗液27(槽本体21)の下部、及び、上記下部と上記液表面との中間部にメッシュ(網)形状の微粒子除去用電極板22aが水平方向に配設されるともに、水洗液27の表面に対して垂直方向にもメッシュ(網)形状の3枚の微粒子除去用電極板22bが配設されている。そして、微粒子除去用電極板22a、22bは配線25を介して電圧印加装置28に接続されている。
【0058】
槽本体21は配線24を介して接地されており、槽本体21の中央部分には、下部に攪拌羽根26aを備えた撹拌機26が配設されており、撹拌機26を動作させると、攪拌羽根26aにより水洗液27全体が攪拌される。また、微粒子除去用電極板22a、22bの間には、洗浄の対象となる複数の積層板(図示せず)を収容した積層板収容ラック23が配設されており、この水洗槽20で洗浄処理することにより、積層板に付着した微粒子を取り除くことができる。
【0059】
洗浄方法は、図1(a)〜(b)に示した水洗槽を用いた洗浄方法と同様であるので、ここではその説明を省略することとする。
図3(a)及び(b)に示した水洗槽20における微粒子除去用電極板22a、22bの総面積は、水洗液27の体積10リットル当たり、1mであることが望ましい。ただし、メッシュ形状の微粒子除去用電極板22a、22bの面積は、網を平板とみなした場合の面積とする。
【符号の説明】
【0060】
10、20 水洗槽
11、21 槽本体
12、22a、22b 微粒子除去用電極板
13、23 積層板収容ラック
14、15、24、25 配線
16、26 撹拌機
16a、26a 攪拌羽根
17、27 水洗液
18、28 電圧印加装置
図1
図2
図3