【解決手段】半導体装置100は、出力帰還端子FBの端子電圧に応じた帰還電圧Vfbが所定の参照電圧Vrefと一致するようにスイッチ出力段110を駆動して入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成する出力帰還部(120、130、140、150)と、スイッチ出力段110で生成されるスイッチ電圧Vswの平均値が過電圧状態であるときに上記の出力帰還部(特に制御部140)を介してスイッチ出力段110を強制停止させるスイッチ電圧監視部180と、を有する。
前記出力帰還部は、前記端子電圧または前記帰還電圧が所定値よりも低く、かつ、前記スイッチ電圧の平均値が過電圧状態であるときに、前記スイッチ出力段を強制停止させることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記端子電圧または前記帰還電圧が前記所定値よりも低い状態が所定期間に亘って継続したときに装置全体をシャットダウンする機能を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
前記スイッチ出力段を強制停止させるときに前記スイッチ電圧を放電する放電部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<スイッチング電源(DC/DCコンバータ)>
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。本構成例のスイッチング電源1は、入力電圧Vinを所望の出力電圧Voutに変換する電力変換装置であり、その制御主体として、半導体装置100(いわゆる電源制御IC)を有する。
【0020】
<半導体装置(電源制御IC)>
引き続き、
図1を参照しながら、半導体装置100の構成及び動作について説明する。半導体装置100は、スイッチ出力段110と、帰還電圧生成部120と、誤差電圧生成部130と、制御部140と、駆動部150と、コンパレータ160及び170と、スイッチ電圧監視部180と、放電部190と、を集積化して成る。また、半導体装置100は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、複数の外部端子(本図では出力端子SWと出力帰還端子FBの2本のみを明示)を備えている。
【0021】
スイッチ出力段110は、入力電圧Vinを降圧して所望の出力電圧Voutを生成する降圧型であり、出力トランジスタ111(本図では、PMOSFET[P channel type metal oxide semiconductor field effect transistor])と、同期整流トランジスタ112(本図ではNMOSFET[N channel type MOSFET])と、インダクタ113と、キャパシタ114と、を含む。
【0022】
出力トランジスタ111のソースは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。出力トランジスタ111のドレインは、出力端子SWに接続されている。出力トランジスタ111のゲートには、ゲート信号G1が入力されている。従って、出力トランジスタ111は、ゲート信号G1がハイレベルであるときにオフし、ゲート信号G1がローレベルであるときにオンする。
【0023】
同期整流トランジスタ112のソースは、接地端(=接地電圧GNDの印加端であり、システムの基準電位端に相当)に接続されている。同期整流トランジスタ112のドレインは、出力端子SWに接続されている。同期整流トランジスタ112のゲートには、ゲート信号G2が入力されている。従って、同期整流トランジスタ112は、ゲート信号G2がハイレベルであるときにオンし、ゲート信号G2がローレベルであるときにオフする。
【0024】
出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112は、ゲート信号G1及びG2に応じて相補的にオン/オフされる。このようなスイッチング制御により、出力端子SWには、入力電圧Vinと接地電圧GNDとの間でパルス駆動される矩形波状のスイッチ電圧Vswが生成される。なお、上記の「相補的」という文言は、出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112のオン/オフ状態が完全に逆転している場合だけでなく、両トランジスタの同時オフ期間(デッドタイム)が設けられている場合も含む。
【0025】
なお、出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112は、本図のように半導体装置100に内蔵してもよいし、或いは、半導体装置100に外付けしてもよい。すなわち、スイッチ出力段100の一部を半導体装置100に外付けしてもよいし、スイッチ出力段100の全部を半導体装置100に外付けしてもよい。
【0026】
また、出力トランジスタ111をNMOSFETに置き換えることもできる。ただし、その場合には、ブートストラップ回路やチャージポンプ回路などを用いて、ゲート信号G1のハイレベルを入力電圧Vinよりも高めてやる必要がある。また、同期整流トランジスタ112に代えて、整流ダイオードを用いることも可能である。
【0027】
また、スイッチ出力段110に高電圧が印加される場合には、出力トランジスタ111や同期整流トランジスタ112として、パワーMOSFET、IGBT[insulated gate bipolar transistor]、SiCトランジスタなどの高耐圧素子を用いるとよい。
【0028】
インダクタ113とキャパシタ114は、半導体装置100の外付けされるディスクリート部品であり、スイッチ電圧Vswを整流及び平滑して出力電圧Voutを生成するLCフィルタを形成する。なお、インダクタ113の第1端は、出力端子SW(=スイッチ電圧Vswの印加端)に接続されている。インダクタ113の第2端とキャパシタ114の第1端は、いずれも出力電圧Voutの出力端に接続されている。キャパシタ114の第2端は、接地端に接続されている。また、出力電圧Voutの出力端は、出力帰還端子FBにも接続されている。
【0029】
帰還電圧生成部120は、出力帰還端子FBと接地端との間に直列接続された抵抗121及び122(抵抗値:R121及びR122)を含み、両抵抗間の接続ノードから出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfb(=出力電圧Voutの分圧電圧であり、Vfb=Vout×{R122/(R121+R122)})を出力する。なお、抵抗121及び122は、本図のように半導体装置100に内蔵してもよいし、或いは、半導体装置100に外付けしてもよい。また、出力電圧Voutが誤差電圧生成部130やコンパレータ160及び170の入力ダイナミックレンジに収まっている場合には、帰還電圧生成部120を省略しても構わない。
【0030】
誤差電圧生成部130は、エラーアンプ131と、抵抗132と、キャパシタ133とを含み、帰還電圧Vfbと所定の参照電圧Vrefとの差分に応じた誤差電圧Verrを生成する。
【0031】
エラーアンプ131は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプ(いわゆるgmアンプ)であり、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbと、非反転入力端(+)に入力される参照電圧Vref(=出力電圧Voutの目標設定値に相当)との差分に応じた誤差電流Ierrを生成する。なお、誤差電流Ierrは、帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefよりも低いときには正方向(=エラーアンプ131からキャパシタ133に向かう方向)に流れ、帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefよりも高いときには負方向(=キャパシタ133からエラーアンプ131に向かう方向)に流れる。
【0032】
抵抗132とキャパシタ133は、エラーアンプ131の出力端と接地端との間に直列接続されており、誤差電流Ierrの入力を受けて誤差電圧Verrを生成する。なお、誤差電圧Verrは、誤差電流Ierrが正方向に流れるときに上昇し、誤差電流Ierrが負方向に流れるときに低下する。すなわち、Vfb<Vrefであるときに誤差電圧Verrが引き上げられ、Vfb>Vrefであるときに誤差電圧Verrが引き下げられる。なお、抵抗132の抵抗値とキャパシタ133の容量値を適切に設定することにより、誤差電圧信号Verrの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0033】
制御部140は、誤差電圧Verrに応じて制御信号S1及びS2を生成する。具体的に述べると、制御部140は、誤差電圧Verrが高いほど制御信号S1及びS2のオンデューティDon(=所定のスイッチング周期Tに占める出力トランジスタ111のオン期間Tonの割合)を引き上げ、逆に、誤差電圧Verrが低いほどオンデューティDonを引き下げる。このようなPWM[pulse width modulation]制御により、出力電圧Voutを所望の目標値に合わせ込むことができる。なお、制御部140の内部構成については、周知の技術を適用すれば足りるので、詳細な説明は割愛する。
【0034】
また、本図では明示していないが、制御部140は、スイッチ出力段110に流れるインダクタ電流や負荷電流に応じた電流検出信号の帰還入力を受け付けて、電流モード方式の出力帰還制御を行う構成としてもよい。
【0035】
駆動部150は、ドライバ151及び152を含み、制御信号S1及びS2に応じて、スイッチ出力段110)を駆動する。より具体的に述べると、ドライバ151は、制御信号S1に応じてゲート信号G1を生成することにより、出力トランジスタ111を駆動する。また、ドライバ152は、制御信号S2に応じてゲート信号G2を生成することにより、同期整流トランジスタ112を駆動する。
【0036】
なお、上記した帰還電圧生成部120、誤差電圧生成部130、制御部140、及び、駆動部150は、それぞれ、出力帰還端子FBの端子電圧またはこれに応じた帰還電圧Vfbが所定の参照電圧Vrefと一致するようにスイッチ出力段110を駆動して入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成する出力帰還部の構成要素に相当する。
【0037】
コンパレータ160は、出力帰還端子FBが過電圧状態であるか否かを検出するための手段であり、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbと、反転入力端(−)に入力されるFB過電圧検出用の閾値電圧Vovpとを比較することにより、FB過電圧検出信号Saを生成する。FB過電圧検出信号Saは、Vfb>Vovpであるときにハイレベル(=FB過電圧検出時の論理レベル)となり、Vfb<Vovpであるときにローレベル(=FB過電圧未検出時の論理レベル)となる。なお、制御部140は、FB過電圧検出信号Saに応じて適切なFB過電圧保護動作を行う。
【0038】
コンパレータ170は、出力帰還端子FBがGNDショート(地絡)しているか否かを検出するための手段であり、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbと、非反転入力端(+)に入力されるFBショート検出用の閾値電圧Vscpを比較することにより、FBショート検出信号Sbを生成する。FBショート検出信号Sbは、Vfb<Vscpであるときにハイレベル(=FBショート検出時の論理レベル)となり、Vfb>Vscpであるときにローレベル(=FBショート未検出時の論理レベル)となる。なお、制御部140は、FBショート検出信号Sbに応じて適切なFBショート保護動作を行う。
【0039】
スイッチ電圧監視部180は、出力端子SWが過電圧状態であるか否かを検出するための手段であり、スイッチ出力段110で生成されるスイッチ電圧Vswを監視してSW過電圧検出信号Scを生成しこれを制御部140に出力する。SW過電圧検出信号Scは、スイッチ電圧Vswの平均値(=出力電圧Voutと同様の挙動で変化する疑似出力電圧に相当)が過電圧状態であるときにハイレベル(=SW過電圧検出時の論理レベル)となり、スイッチ電圧Vswの平均値が過電圧状態でないときにローレベル(=SW過電圧未検出時の論理レベル)となる。なお、制御部140は、SW過電圧検出信号Scに応じて適切なSW過電圧保護動作を行う。
【0040】
放電部190は、出力端子SWと接地端との間に接続されており、制御部140から入力される放電制御信号Sdに応じてスイッチ電圧Vswを放電する。
【0041】
<スイッチ電圧監視部>
図2は、スイッチ電圧監視部180の一構成例を示す図である。本構成例のスイッチ電圧監視部180は、平均化部181とコンパレータ182を含む。
【0042】
平均化部181は、出力端子SWから入力されるスイッチ電圧Vswを平均化して平均スイッチ電圧Vaveを生成する。
【0043】
コンパレータ182は、非反転入力端(+)に入力される平均スイッチ電圧Vaveと反転入力端(−)に入力されるSW過電圧検出用の閾値電圧Vthを比較して比較信号を生成し、これをSW過電圧検出信号Scとして出力する。SW過電圧検出信号Scは、Vave>Vthであるときにハイレベル(=SW過電圧検出時の論理レベル)となり、Vave<Vthであるときにローレベル(=SW過電圧未検出時の論理レベル)となる。
【0044】
<平均化部>
図3は、平均化部181の一構成例を示す図である。本構成例の平均化部181は、抵抗181a(抵抗値:R)とキャパシタ181b(容量値:C)を含む。
【0045】
抵抗181aは、スイッチ電圧Vswの入力端と平均スイッチ電圧Vaveの出力端との間に接続されている。キャパシタ181bは、平均スイッチ電圧Vaveの出力端と接地端との間に接続されている。すなわち、平均化部181は、抵抗181aとキャパシタ181bを含むRCローパスフィルタとして構成されている。
【0046】
なお、RCローパスフィルタの時定数τ(=R×C)は、平均スイッチ電圧Vaveの挙動が出力電圧Voutの挙動と一致するように設定しておくことが望ましい。例えば、スイッチ出力段110を形成するキャパシタ114の容量値がμFオーダーである場合には、抵抗181aの抵抗値Rを数百kΩ〜数MΩに設定し、キャパシタ181bの容量値CをpFオーダーに設定するとよい。
【0047】
<放電部>
図4は、放電部190の一構成例を示す図である。本構成例の放電部190は、NMOSFET191と抵抗192を含む。
【0048】
抵抗192の第1端は、スイッチ電圧Vswの出力端(=出力端子SW)に接続されている。抵抗192の第2端は、NMOSFET191のドレインに接続されている。NMOSFET191のソースは、接地端に接続されている。
【0049】
また、NMOSFET192のゲートには、放電制御信号Sdが入力されている。従って、放電制御信号Sdがハイレベルであるときには、NMOSFET192がオンするのでスイッチ電圧Vswの放電経路が導通される。一方、放電制御信号Sdがローレベルであるときには、NMOSFET192がオフするのでスイッチ電圧Vswの放電経路が遮断される。このように、NMOSFET192は、放電制御信号Sdに応じてオン/オフされる放電スイッチとして機能する。
【0050】
<FBオープン時の保護動作>
図5は、FBオープン時における保護動作の一例を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップ#1では、半導体装置100が通常動作状態(=誤差電圧Verrに応じたPWM制御により出力電圧Voutの生成動作が行われる状態)となる。
【0051】
次に、ステップ#2において、FBオープンが生じていない場合(=ステップ#2がNO判定である場合)には、フローがステップ#2からステップ#1に戻され、上記の通常動作状態が継続される。
【0052】
一方、ステップ#2において、FBオープンが生じている場合(=ステップ#2がYES判定である場合)には、FBショートの発生時と同じく、帰還電圧Vfbが接地電圧GND(<Vscp)に低下する。従って、ステップ#3で示すように、FBショート検出信号Sbがハイレベルに立ち上がる。
【0053】
続くステップ#4では、FBショート検出信号Sbのハイレベル期間が所定のマスク期間T1(例えば1ms)に亘って継続したか否かの判定が行われる。ここで、NO判定が下された場合には、フローがステップ#5に進められる。一方、YES判定が下された場合にはフローがステップ#12に進められる。
【0054】
なお、ステップ#4でNO判定が下されている限り、FBショート保護動作(#12)は行われない。従って、FBオープンに伴う帰還電圧Vfbの低下により、誤差電圧Verrが出力電圧Voutとは無関係に上昇していく(ステップ#5)。
【0055】
その結果、ステップ#6で示すように、スイッチ出力段110がフルオン状態(=オンデューティDonが最大値まで振り切った状態)となるので、出力電圧Voutが目標値から外れて上昇する。また、このとき、スイッチ電圧Vswを平均化した平均スイッチ電圧Vaveも出力電圧Voutと同様の挙動で上昇する。
【0056】
ただし、平均スイッチ電圧Vaveが閾値電圧Vthに達していない場合(ステップ#7がNO判定である場合)には、フローがステップ#2に戻される。従って、Vave>Vthとなるまで、ステップ#2〜#7が繰り返される。
【0057】
一方、スイッチ出力段110のフルオン状態が続き、平均スイッチ電圧Vaveが閾値電圧Vthよりも高くなった場合(ステップ#7がYES判定である場合)には、ステップ#8で示すように、SW過電圧検出信号Scがハイレベルに立ち上がる。
【0058】
このとき、制御部140では、ステップ#9で示したように、SW過電圧保護動作が行われる。具体的には、出力トランジスタ111と同期整流トランジスタ112がいずれもオフされると共に、放電部190によるスイッチ電圧Vswの放電が行われる。
【0059】
このように、制御部140は、Sc=H(すなわちVave>Vth)となったとき、SW過電圧保護動作としてスイッチ出力段110を強制停止させる。特に、本フローチャートでは、Sb=H(すなわちVfb<Vscp)、かつ、Sc=H(すなわちVave>Vth)であるときに、ステップ#9のSW過電圧保護動作に至り、スイッチ出力段110が強制停止される。
【0060】
その結果、ステップ#10で示したように、出力電圧Voutが低下に転じるので、スイッチング電源1の後段に接続される負荷を保護することが可能となる。また、平均スイッチ電圧Vaveも出力電圧Voutと同様の挙動で低下していく。
【0061】
そして、平均スイッチ電圧Vaveが閾値電圧Vthよりも低くなった場合(ステップ#11がYES判定である場合)には、フローがステップ#1に戻されて、半導体装置100が先述の通常動作状態に復帰される。ただし、FBオープンが解消されない限り、ステップ#1〜#11が繰り返されることになる。
【0062】
一方、先述のステップ#4において、YES判定が下された場合には、フローがステップ#12に進められ、FBショート保護動作が行われる。なお、ステップ#12のFBショート保護動作では、ステップ#9でのSW過電圧保護動作と異なり、半導体装置100全体(ステップ#13での自己復帰に必要な回路部を除く)がシャットダウンされる。すなわち、スイッチ出力段110だけを強制停止させるのではなく、半導体装置100全体がその動作を停止する。
【0063】
その後、ステップ#13では、半導体装置100全体のシャットダウンから所定のクールダウン期間T2(例えば14ms)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、NO判定が下された場合には、フローがステップ#13に戻されて、クールダウン期間T2の計時が継続される。一方、YES判定が下された場合には、フローがステップ#1に戻されて、半導体装置100が通常動作状態に復帰される。その際、半導体装置100は、初回起動時と同じく、ソフトスタート動作を伴う起動シーケンスで立ち上がる。
【0064】
このように、半導体装置100は、帰還電圧VfbがFBショート検出用の閾値電圧Vscpよりも低い状態(Sb=H)が所定のマスク期間T1に亘って継続したときに、半導体装置100全体をシャットダウンする機能(ステップ#3、#4、#12を参照)を備えている。従って、出力帰還端子FBにGNDショートが生じたときでも、半導体装置100やこれに繋がる負荷を適切に保護することが可能となる。
【0065】
図6は、FBオープン時における保護動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、イネーブル信号EN、スイッチ電圧Vsw、出力電圧Vout、帰還電圧Vfb、誤差電圧Verr、平均スイッチ電圧Vsw、FBショート検出信号Sb、並びに、SW過電圧検出信号Scが描写されている。
【0066】
なお、イネーブル信号ENは、半導体装置100全体の動作可否を制御するための論理信号である。本図に即して具体的に述べると、半導体装置100は、EN=Hであるときに動作状態(=イネーブル状態)となり、EN=Lであるときに非動作状態(=ディセーブル状態)となる。
【0067】
また、スイッチ電圧Vsw及び出力電圧Voutにおいて、実線はSW過電圧保護動作が行われる場合の挙動を示しており、破線はSW過電圧保護動作が行われない場合の挙動を比較参照用に示している。
【0068】
時刻t1以前には、FBオープンが生じておらず、出力帰還端子FBには、出力電圧Voutが正しく帰還入力されている。従って、半導体装置100では、帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefと一致するように誤差電圧Verrが生成され、出力電圧Voutが所望の目標値に維持される。このとき、帰還電圧Vfbは、FBショート検出用の閾値電圧Vscpよりも高い電圧値に維持される。従って、FBショート検出信号Sbは、ローレベル(=FBショート未検出時の論理レベル)となる。また、このとき、スイッチ電圧Vswを平均化した平均スイッチ電圧Vaveは、SW過電圧検出用の閾値電圧Vthよりも低い電圧値に維持される。従って、SW過電圧検出信号Scもローレベル(=SW過電圧未検出時の論理レベル)となる。なお、時刻t1以前の動作状態は、
図5のステップ#1〜#2が繰り返されている状態(#2=NO)に相当する。
【0069】
時刻t1において、FBオープンが生じると、帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefを下回ったままとなる。従って、誤差電圧Verrが平衡値から上昇してしまい、スイッチ出力段110がフルオンし続けるので、出力電圧Voutが目標値を外れて上昇し始める。なお、FBオープン時には、Vfb<Vscpとなるので、FBショート検出信号Sbがハイレベルに立ち上がる。また、スイッチ出力段110におけるオンデューティDonの増大(=スイッチ電圧Vswのハイレベル期間伸長)に伴い、平均スイッチ電圧Vaveも出力電圧Voutと同様の挙動で上昇し始める。ただし、この時点では、Vave<Vthなので、SW過電圧検出信号Scは、ローレベルに維持される。なお、時刻t1〜t2の動作状態は、
図5のステップ#2〜#7が繰り返されている状態(#2=YES、#7=NO)に相当する。
【0070】
時刻t1以降、平均スイッチ電圧Vaveが上昇し続け、時刻t2において、Vave>Vthになると、SW過電圧検出信号Scがハイレベルに立ち上がる。その結果、SW過電圧保護動作により、スイッチ出力段110が強制停止されるので、出力電圧Voutが上昇から低下に転じる。また、スイッチ電圧Vswの放電に伴い、平均スイッチ電圧Vaveも出力電圧Voutと同様の挙動で低下していく。なお、時刻t2〜t3の動作状態は、
図5のステップ#7〜#11によりスイッチ出力段110の強制停止が継続されている状態(#7=YES、#11=NO)に相当する。
【0071】
時刻t2以降、平均スイッチ電圧Vaveが低下し続け、時刻t3において、Vave<Vthになると、SW過電圧検出信号Scがローレベルに立ち下がる。その結果、SW過電圧保護動作が解除されるので、スイッチ出力段110のスイッチング動作が復帰される。ただし、FBオープンが解消されない限り、スイッチ出力段110が再びフルオンするので、時刻t1〜t2と同様、平均スイッチ電圧Vaveが再上昇に転じて、先と同様のSW過電圧保護動作が繰り返される(時刻t4を参照)。
【0072】
なお、本図では明示していないが、時刻t4以降もFBオープンが解消されずに、FBショート検出信号Sbのハイレベル期間が所定のマスク期間T1に亘って継続した場合には、FBショート保護動作(
図5のステップ#12)により、半導体装置100全体がシャットダウンされる。
【0073】
<車両への適用>
図7は、車両Xの一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、不図示のバッテリから電源電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11〜X18と、を搭載している。なお、
図7における電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0074】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0075】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0076】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0077】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0078】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0079】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0080】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0081】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0082】
なお、先に説明した半導体装置100(及びこれを用いたスイッチング電源1)は、電子機器X11〜X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0083】
<その他の変形例>
また、上記実施形態では、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。