特開2019-213461(P2019-213461A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019213461-酒造用高精白米の洗米浸漬方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-213461(P2019-213461A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】酒造用高精白米の洗米浸漬方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/02 20190101AFI20191122BHJP
   A23L 7/10 20160101ALN20191122BHJP
【FI】
   C12G3/02 119B
   A23L7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-110879(P2018-110879)
(22)【出願日】2018年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】397038554
【氏名又は名称】石田屋二左衛門株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】特許業務法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑山 浩
【テーマコード(参考)】
4B023
4B115
【Fターム(参考)】
4B023LE02
4B023LP04
4B023LP05
4B115CN14
4B115CN15
(57)【要約】
【課題】原料利用率の低下を招くことなく、微細気泡水Wで高精白米Rを洗浄し適度な水分を吸水させることができる酒造用高精白米の洗米浸漬方法を提供すること。
【解決手段】酒造用の高精白米Rを、水に微細気泡を含ませて成る微細気泡水Wで洗浄し吸水させる酒造用高精白米の洗米浸漬方法において、前記高精白米Rを、前記微細気泡水Wが透過可能な容器3内に収容し、前記容器3内に収容したまま前記高精白米Rを前記微細気泡水Wに浸して洗浄し吸水させるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒造用の高精白米を、水に微細気泡を含ませて成る微細気泡水で洗浄し吸水させる酒造用高精白米の洗米浸漬方法であって、
前記高精白米を、前記微細気泡水が透過可能な容器内に収容し、前記容器内に収容したまま前記高精白米を前記微細気泡水に浸して前記高精白米を洗浄し吸水させることを特徴とした酒造用高精白米の洗米浸漬方法。
【請求項2】
前記容器が袋であることを特徴とした請求項1記載の酒造用高精白米の洗米浸漬方法。
【請求項3】
前記微細気泡の平均直径が50μm以下であることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の酒造用高精白米の洗米浸漬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒造に用いる高精白米の洗米浸漬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清酒製造において、精米した白米の表面から糠などの汚れを除去し、その白米に適度な水分を吸水させる洗米・浸漬工程は、その後の醸造工程に極めて大きな影響を与え、製品の品質を左右する。
【0003】
現在までに、白米の洗米・浸漬工程を自動機械化した洗米機が多数、提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。これら洗米機は、水流を利用して白米を撹拌することにより、基本的に手洗いする場合と同様、米粒同士を互いに衝突させ、擦り合わせて糠等を除去するものであった。
【0004】
また、白米を、微細気泡を含んだ微細気泡水の水流で洗浄する洗米機が提案されている(例えば、下記特許文献3、4参照)。水中の微細気泡は、その直径が100μm程度になると、高浸透性・高洗浄性など、通常のミリオーダーの気泡とは異なる特性を示すようになる。これら洗米機は、微細気泡水の高洗浄性・高浸透性を利用することにより白米の洗浄効率を高め、砕米の発生を抑制しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−82845号公報
【特許文献2】特開平2−157049号公報
【特許文献3】特開2000−189077号公報
【特許文献4】特開2001−259440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、これら微細気泡水を利用した従来の洗米機は、炊飯用白米の洗米には有効であるものの、吟醸酒用の例えば精米歩合50%以下の高精白米を洗米した場合、その原料利用率が大きく低下する問題があった。即ち、米は、醸造に不可欠なでんぷん粒が集中するその中心部ほど、柔らかく、吸水し易い性質を有しており、しかも、吸水すると非常に脆くなり、外部衝撃により簡単に崩壊してしまう。したがって、ほぼ中心部のみ残した高精白米を、微細気泡水の水流を利用して洗米すると、微細気泡水の高浸透性ゆえに、その洗浄効率を高めることができる反面、脆くなった米粒への外部衝撃によるでんぷん粒の損失が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、米粒同士を互いに衝突させ、擦り合わせて糠等の除去を行っていた従来の洗米方法自体を見直すことにより本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、酒造用の高精白米を、水に微細気泡を含ませて成る微細気泡水で洗浄し吸水させる酒造用高精白米の洗米浸漬方法であって、前記高精白米を前記微細気泡水が透過可能な容器内に収容し、前記容器内に収容したまま前記高精白米を前記微細気泡水に浸して洗浄し吸水させることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記容器が袋であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記微細気泡の平均直径が50μm以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る酒造用高精白米の洗米浸漬方法によれば、高精白米を水中で容器により緩やかに保持した状態で洗浄することができるので、従来の洗米方法のように洗浄時に高精白米同士が衝突するようなこともなく、高精白米のでんぷん粒の損失を抑え、原料利用率の低下を招くことなく高精白米を洗浄し、適度な水分を吸水させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の高精白米の洗米浸漬方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の酒造用高精白米の洗米浸漬方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1中、符号1で指示するものは、上部が開放された洗米浸漬槽であり、この洗米浸漬槽1には、水に多数の微細気泡を含ませて成る微細気泡水Wが満たされている。洗米浸漬槽1の開口縁部には、微細気泡水Wをオーバーフローさせる排出口11が設けられており、後述する洗浄工程により白米から除去されて水面に浮く糠等の汚れを排出口11から排出する。
【0015】
図1中、符号2で指示するものは、洗米浸漬槽1の底部付近に接続され、洗米浸漬槽1内へ多数の微細気泡を供給する微細気泡発生器である。この微細気泡発生器2は、給水経路21から供給された水と、給気経路22から供給された空気とを加圧混合することにより、水に空気を溶解させた空気溶解加圧水を生成し、この空気溶解加圧水を吐出口23から洗米浸漬槽1内へ吐出する。洗米浸漬槽1内へ吐出された空気溶解加圧水は、大気開放されて多数の微細気泡が発生し、洗米浸漬槽1が微細気泡水Wにより満たされる。
【0016】
なお、微細気泡発生器2へ水を供給する給水経路21を洗米浸漬槽1に接続し、洗米浸漬槽1内の微細気泡水Wを微細気泡発生器2へ循環供給してもよい。また、微細気泡を発生させる方法として、本実施形態の加圧溶解式の微細気泡発生器を用いるほか、多数の微細孔を持つパイプへ気体を圧入する微細孔式、水に超音波を照射する超音波式、気液二相流体を遠心分離して剪断する気液混合剪断式の発生装置を採用してもよい。
【0017】
図1中、符号3で指示するものは、微細気泡水Wが透過可能な袋から成る容器であり、容器3内に所定量の高精白米Rが収容される。この容器3として、天然繊維又は合成繊維製の編布、織布、不織布から製袋された袋のほか、例えば、かご、ざる等を使用してもよい。高精白米Rを内部に保持することができ、高精白米Rから除去した糠等の汚れが微細気泡水Wと共に透過可能であれば、種々の容器を採用することができる。
【0018】
次に、本実施形態の酒造用高精白米の洗米浸漬作業について説明する。
【0019】
まず、微細気泡発生器2を作動させて予め洗米浸漬槽1内を微細気泡水Wで満たしておく。
【0020】
次に、計量した高精白米Rを容器3内に収容し、容器3の袋口を紐等で縛って閉じておく。
【0021】
そして、図1に示すように、高精白米Rを容器3内に収容したまま、洗米浸漬槽1の微細気泡水Wに浸す。微細気泡水Wに浸された高精白米Rには、容器3の壁部を透過した微細気泡水Wが接触し、その微細気泡が個々の高精白米Rの表面の糠等の汚れに吸着し、白米表面から除去する。こうして高精白米Rが洗浄され、同時に、微細気泡水Wの高浸透性により個々の高精白米Rに水分が吸収される。
【0022】
高精白米Rを所定時間、微細気泡水Wに浸した後、容器3内に収容したまま高精白米Rを洗米浸漬槽1から引き上げる。洗米浸漬槽1から引き上げた際、容器3内の微細気泡水Wは糠等の汚れと共に容器3の壁材を透過して容器外部に排出される。その後、洗米浸漬された高精白米Rは、容器3に収容されたまま、次の水切り工程へ移される。
【0023】
このように本実施形態の酒造用高精白米の洗米浸漬方法によれば、高精白米Rを容器3内に収容したまま、微細気泡水W内に浸すようにしているので、個々の高精白米Rは、水中で容器3により緩やかに保持された状態で殆ど移動することなく洗浄される。したがって、従来の洗米方法のように洗浄時に高精白米R同士が衝突することもなく、高精白米Rのでんぷん粒の損失を抑えることができ、原料利用率の低下を招くことなく高精白米Rを洗浄することができる。
【0024】
また、本実施形態の酒造用高精白米の洗米浸漬方法によれば、高精白米Rを容器3内に収容しているので、高精白米Rをまとめて、微細気泡水Wに浸し、そして、引き上げることができる。したがって、高精白米Rの浸漬開始・終了時間を的確に調整することができ、しかも、個々の高精白米Rの吸水率のばらつきも抑えることができる。
【0025】
さらに、本実施形態の酒造用高精白米の洗米浸漬方法によれば、高精白米Rを容器3内に収容したまま、次工程等へ移送することも可能である。したがって、従来の洗米浸漬装置のように、白米の移送設備が大がかりになることもなく、極めて簡素な設備で実施することができる。また、少量処理にも柔軟に対応することができる。
【実施例】
【0026】
精米歩合35%の高精白米(銘柄;山田錦)10kgを、ポリプロピレン製メッシュ袋に収容し、洗米浸漬槽に予め貯留した約1100Lの微細気泡水(平均直径40μmの微細気泡を約100L/分供給)内に、所定時間(4分間、5分間、7分間)浸して、高精白米の洗米浸漬を行った。
【0027】
いずれの洗米浸漬時間の場合も、高精白米の表面に糠等の異物は認められず、十分な洗浄が行われた。そして、高精白米の吸水率は、4分間の場合125%、5分間の場合127%、7分間の場合132%であった。
【0028】
以上、本実施形態の酒造用高精白米の洗米浸漬方法について説明したが、本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 洗米浸漬槽
2 微細気泡発生器
3 容器
R 高精白米
W 微細気泡水
図1