【解決手段】収穫した穀粒を貯留する穀粒タンク8を機体に備えたコンバイン1は、穀粒タンク8の貯留空間Qを形成し、側面部に開口部分Pを有するタンク本体30と、開口部分Pの状態を全閉状態と全開状態との間で変更可能な側壁部50と、開口部分Pの少なくとも一部が開いている状態である非閉状態を検出するセンサ20と、を備える。
  前記センサは、前記側壁部による前記開口部分の前記全閉状態への移行に応じて押圧される腕部、及び前記腕部の押圧に応じて回動する本体部を有するレバー式センサである請求項1から5のいずれか一項に記載のコンバイン。
  前記センサは、前記腕部の下側に前記ロータが入り混んでから前記腕部を押し上げて前記本体部が回動し、前記腕部の先端部、前記腕部における前記ロータが当接する当接部、前記腕部の基端部の順に並ぶように構成される請求項7から9のいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  特許文献1に記載のコンバインが備える穀粒タンクは、穀粒を貯留する空間が天面部材、底面部材、及び側面部材で囲まれて形成されており、穀粒タンク内のメンテナンス作業を容易に行うようにすることまで想定されていなかった。
【0006】
  そこで、メンテナンス作業を適切に行うことが可能な穀粒タンクを備えたコンバインが求められる。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本発明に係るコンバインの特徴構成は、収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクを機体に備えたコンバインであって、前記穀粒タンクの貯留空間を形成し、側面部に開口部分を有するタンク本体と、前記開口部分の状態を全閉状態と全開状態との間で変更可能な側壁部と、前記開口部分の少なくとも一部が開いている状態である非閉状態を検出するセンサと、を備えている点にある。
【0008】
  このような特徴構成とすれば、穀粒タンクの側面部に開口部分を形成し、当該開口部分を必要に応じて全開状態及び全閉状態にすることができる側壁部を設けるので、作業者が穀粒タンクの内部にアクセスし易くなる。したがって、メンテナンス作業を容易に行うことが可能となる。また、センサにより開口部分の非閉状態を検出できるので、メンテナンス作業終了後の側壁部の閉め忘れを検出することが可能となる。
【0009】
  また、前記センサは、前記タンク本体の外部に取り付けられていると好適である。
【0010】
  このような構成とすれば、センサを穀粒タンクの外側に設けるので、センサが穀粒タンク内の塵埃に晒されることを防止できる。したがって、塵埃によるセンサの故障を防止できる。
【0011】
  また、前記センサは、前記開口部分に対する前記側壁部の位置を検出すると好適である。
【0012】
  このような構成とすれば、例えば機体における位置が変更可能な部位にセンサを取り付けた場合であっても、開口部分に対するセンサの位置が変わらないようにセンサを取り付けることで、開口部分の非閉状態を適切に検出することが可能となる。また、コンバインの作業に応じて機体が振動する場合であっても、センサは開口部分に対する側壁部の位置を検出するので、誤検出を防止できる。
【0013】
  また、前記穀粒タンクは、前記機体の後方側において前記機体の上下方向に設定された軸心を基準に回動可能に設けられ、前記センサは、前記タンク本体における前記機体の前方側の前壁部に取り付けられていると好適である。
【0014】
  このような構成とすれば、センサの取付位置の自由度を高くできる。また、センサをタンク本体側に取り付けるので、側壁部の厚さを薄くすることができる。
【0015】
  また、前記センサは、前記開口部分における前記機体の上下方向上側部の前記非閉状態を検出すると好適である。
【0016】
  このような構成とすれば、穀粒により側壁部が撓んだ場合であっても、撓み量が少ない位置で非閉状態を検出することが可能となる。したがって、適切に開口部分が非閉状態であるか否かを検出できる。
【0017】
  また、前記センサは、前記側壁部による前記開口部分の前記全閉状態への移行に応じて押圧される腕部、及び前記腕部の押圧に応じて回動する本体部を有するレバー式センサであると好適である。
【0018】
  このような構成とすれば、例えば腕部の長さを長く設定することで、側壁部により押圧される部分を大きく設定できる。したがって、センサの検出レンジが広くなり、側壁部が撓んだ場合であっても、誤検出をすることなく、適切に開口部分の非閉状態を検出することが可能となる。
【0019】
  また、前記本体部の回動軸と平行な軸心周りに回転可能なロータが前記側壁部に設けられていると好適である。
【0020】
  このような構成とすれば、ロータがセンサを押圧する際に、センサに対してロータを
滑らせることができるので、センサとロータとが互いに当接する部位の摩耗を抑制できる。
【0021】
  また、前記側壁部は、前記機体の上下方向の軸心周りに揺動して前記開口部分の状態を前記全閉状態と前記全開状態との間で変更し、前記ロータは、前記開口部分が前記全閉状態となった場合において、前記ロータの軸心方向視で、前記側壁部における前記側壁部を前記全開状態から前記全閉方向に移行する際の閉じ方向の奥側端部よりも、前記ロータにおける前記閉じ方向の奥側端部の方が前記閉じ方向の奥側に位置するように取り付けられていると好適である。
【0022】
  このような構成とすれば、ロータにおけるセンサを押圧する部分を側壁部に対して閉じ方向奥側に突出させることができる。また、側壁部が撓んでいない場合に、センサの押圧量を大きく設定できる。したがって、側壁部の揺動に応じてロータがセンサを確実に押圧できるので、誤検出を減らすことが可能となる。
【0023】
  また、前記側壁部は、複数のフレームが設けられ、前記ロータは、前記側壁部を前記機体の前後方向に見て、前記複数のフレームのうちの前記前後方向に沿ったフレームの1つと隣接するように設けられていると好適である。
【0024】
  このような構成とすれば、複数のフレームにより側壁部の強度が補強されているので、側壁部を撓み難くすることができる。また、このような撓み難い部分に設けたロータでセンサを押圧することができるので、側壁部の撓みに起因した誤検出を防止することが可能となる。
【0025】
  また、前記センサは、前記腕部の下側に前記ロータが入り混んでから前記腕部を押し上げて前記本体部が回動し、前記腕部の先端部、前記腕部における前記ロータが当接する当接部、前記腕部の基端部の順に並ぶように構成されると好適である。
【0026】
  このような構成とすれば、ロータが腕部を確実に押し上げることができる。したがって、腕部の押し上げに応じて本体部を回動させることが可能となる。また、腕部の揺動範囲を大きく設定できる。したがって、側壁部が撓んだ場合であっても確実にロータが腕部を押圧することが可能となる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0028】
  本発明に係るコンバインは、機体に収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクを備え、メンテナンス作業を容易に行うことができるように構成される。以下、本実施形態のコンバイン1について自脱型コンバインを例に挙げて説明する。
 
【0029】
  ここで、理解を容易にするために、本実施形態では前後方向を定義するときは、作業状態におけるコンバイン1の進行方向に沿って定義し、左右方向を定義するときは、コンバイン1の進行方向視で(進行方向前側を見た状態)で左右を定義する。
 
【0030】
  図1にはコンバイン1の全体側面図が示され、
図2にはコンバイン1の全体平面図が示される。
図1及び
図2に示されるように、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2によって自走する走行機体(上記「機体」に相当)3の前部に、植立穀稈を刈り取る刈取部4が備えられている。走行機体3の前部右側に、キャビン5にて周囲が覆われた運転部6が備えられている。運転部6の後方には、刈取部4にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置7と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク8とが、横方向に並ぶ状態で配備されている。穀粒タンク8は機体右側に位置し、脱穀装置7は機体左側に位置している。運転部6における運転座席9の下方にはエンジンEが備えられている。走行機体3の後部であって穀粒タンク8の後方には、穀粒タンク8に貯留された穀粒を機外に排出する穀粒排出装置10が備えられている。
 
【0031】
  穀粒排出装置10は、穀粒タンク8から穀粒排出口11を介して穀粒を排出する排出ユニットに相当する。本実施形態では、この穀粒排出装置10はエンジンEの回転力を動力源とする。したがって、エンジンEは、穀粒排出装置10に動力源を供給する動力供給部に相当する。
 
【0032】
  穀粒タンク8の上部側には、脱穀装置7から搬送された穀粒が導入される穀粒導入口17が設けられる。脱穀装置7において脱穀処理により選別された穀粒は、脱穀装置7から揚穀コンベア16により揚送され、穀粒導入口17を介して穀粒タンク8の内部に搬送される。穀粒タンク8は、脱穀装置7から搬送された穀粒を貯留する。
 
【0033】
  穀粒タンク8の底部には、走行機体3の前後方向に沿った軸心周りで回転して穀粒タンク8に貯留された穀粒を機体後部側に向けて搬送する底部スクリュー12が備えられる。穀粒排出装置10は、底部スクリュー12により搬出される穀粒を受け入れて、当該穀粒を上方に向けて搬送する縦送りスクリューコンベア13と、その縦送りスクリューコンベア13の上端部に連なる基端部から先端部の排出口14まで穀粒を横方向に向けて搬送する横送りスクリューコンベア15とを備えている。この穀粒排出装置10により、穀粒タンク8に貯留された穀粒が、穀粒タンク8の外部に搬出される。
 
【0034】
  図3には穀粒タンク8の斜視図が示される。
図3に示されるように、穀粒タンク8は、タンク本体30と側壁部50とを有する。タンク本体30は、機体前部側に位置する前側面40、機体後部側に位置する後側面41、機体左側に位置する左側面42の夫々により周囲が囲まれている。また、上部側は天面43により覆われ、下部側は底面44により覆われている。タンク本体30は、これらの前側面40、後側面41、左側面42、天面43、及び底面44は互いに隣接する端部同士が連結され、穀粒タンク8の貯留空間Qを形成する。
 
【0035】
  タンク本体30には、上述したように穀粒導入口17が設けられる。本実施形態では、穀粒導入口17は左側面42における上部側に設けられる。したがって、穀粒導入口17から貯留空間Qに導入された穀粒は、重力に応じて貯留空間Qに堆積するように貯留される。
 
【0036】
  また、穀粒タンク8の底部には、上述したように底部スクリュー12が設けられ、当該底部スクリュー12により穀粒排出装置10に搬送される。この底部スクリュー12で搬送される穀粒は、貯留空間Qから穀粒排出口11を介して排出される。本実施形態では、穀粒排出口11は後側面41における下部側に設けられる。したがって、貯留空間Qに堆積するように貯留された穀粒は、底に堆積された穀粒から順次、貯留空間Qから排出される。
 
【0037】
  タンク本体30は、側面部に開口部分Pを有する。この開口部分Pは、穀粒排出口11及び穀粒導入口17とは異なるものである。本実施形態では、開口部分Pは穀粒タンク8における右側面部、すなわちタンク本体30の左側面42に対向する側面部が開口して設けられる。
 
【0038】
  側壁部50は、開口部分Pの状態を全閉状態と全開状態との間で変更可能に構成されている。すなわち、側壁部50は開口部分Pに蓋をすることで全閉状態にし、開口部分Pに蓋をしないようにすることで全開状態にする。側壁部50により開口部分Pが全閉状態にされると貯留空間Qが閉塞され、穀粒の貯留が可能となる貯留状態となり、開口部分Pが全開状態にされると貯留空間Qを外部に開放し、貯留空間Qへの作業者のアクセスが可能となるメンテナンス状態となる。穀粒タンク8は、側壁部50の姿勢により貯留空間Qを貯留状態とメンテナンス状態とに切り替え可能に構成される。
 
【0039】
  ここで、タンク本体30の右側部には、
図3に示されるように開口部分Pを囲うように枠状部分31が設けられる。枠状部分31は他の側面に連結して構成される。側壁部50により開口部分Pの状態が全閉状態になる時には、側壁部50が枠状部分31(本実施形態では、少なくとも開口部分Pの上側に位置する枠状部分31)に対向する姿勢となり、貯留空間Qが閉塞される。
 
【0040】
  本実施形態では、側壁部50は、走行機体3の上下方向の軸心周りに揺動して開口部分Pの状態を全閉状態と全開状態との間で変更する。具体的には、側壁部50は、穀粒タンク8の上下方向に間隔をあけて設けられた2つの回動支持構造Aを介して、上下方向に沿って設定された軸心Y1周りに回動可能な状態で、タンク本体30に支持される。これにより、側壁部50がタンク本体30に対して軸心Y1周りで揺動開閉可能にタンク本体30に支持される。
 
【0041】
  タンク本体30の各面は、金属製の板材を用いて板金加工により構成される。そこで、タンク本体30には、強度を補強すべく、走行機体3の前後方向に亘ってフレーム52が設けられる。フレーム52は、前側面40と後側面41とに亘って上下中間部に位置する状態で設けられる。また、更に強度を補強すべく、フレーム52と左側面42とに亘って複数の補助フレーム体53も設けられる。
 
【0042】
  側壁部50も、また、金属製の板材を用いて板金加工により構成される。このため、側壁部50にも、強度を補強すべく、上下方向及び前後方向に沿って複数のフレームが設けられる。本実施形態では、前後方向の複数のフレームのうち、上側に上部側補強部材(本願「フレーム」の一例)61と下部側補強部材62とが設けられる。側壁部50のタンク内側には、上部側補強部材61と下部側補強部材62とに亘って、上下方向に第1の縦向き支持板63、第2の縦向き支持板64、第3の縦向き支持板65が連結される。
 
【0043】
  タンク本体30に対する側壁部50の連結は、操作レバー80の操作に応じてフレーム52に係止部材71が係止することで行われる。詳しくは、操作レバー80の操作に応じて切換操作機構72により、係止部材71がフレーム52に引っ掛かり係止する係止状態と、フレーム52に対する係止部材71の係止を解除する解除状態とに切り換えられる。また、側壁部50のタンク内側には、ロッド81が上下方向に設けられており、ロッド81は操作レバー80の操作に応じて上下方向に移動する。
 
【0044】
  タンク本体30の枠状部分31には、ロッド81が上下方向にスライド移動する箇所に、複数の係合部材82が備えられている。詳細は省略するが、側壁部50が開口部分Pを全閉状態にする時には、ロッド81が係合部材82と係合するように構成される。これにより、側壁部50にて貯留空間Qの貯留状態を維持することが可能となる。また、枠状部分31には、タンク本体30をメンテナンス状態にするときに、一端が側壁部50側に支持された開度保持棒83の他端が係止することで、側壁部50がメンテナンス中に揺動しないようにする固定部84も備えられている。
 
【0045】
  本実施形態では、穀粒タンク8は、走行機体3の後方側において走行機体3の上下方向に設定された軸心Y2(
図1参照)を基準に回動可能に設けられる。上述したように穀粒タンク8に貯留された穀粒は、底部スクリュー12により穀粒排出装置10に搬出されるが、本実施形態では穀粒排出装置10における縦送りスクリューコンベア13を軸心Y2として穀粒タンク8が回動可能とされる。このように穀粒タンク8を回動することで、作業者が、エンジンEや、クローラ走行装置2や、脱穀装置7のメンテナンスを行う際にアクセス可能となる。
 
【0046】
  センサ20は、開口部分Pの少なくとも一部が開いている状態である非閉状態を検出する。開口部分Pの少なくとも一部が開いている状態とは、開口部分Pが側壁部50により閉塞されていない状態、すなわち、開口部分Pが閉じられていない状態をいう。センサ20は、このような開口部分Pが閉じられていない状態(開口部分Pが閉じられていないこと)を検出する。
 
【0047】
  図4には穀粒タンク8の正面図(ただし下側部は断面図である)が示され、
図5には穀粒タンク8の上面図が示される。
図4及び
図5に示されるように、センサ20はタンク本体30の外部に取り付けられる。タンク本体30の内部には、穀粒の貯留空間Qが形成され、当該貯留空間Qには穀粒の貯留に伴い塵埃が浮遊する。この塵埃に晒される状態となることを避けるべく、センサ20は貯留空間Q外に取り付けられる。これにより、塵埃に起因したセンサ20の誤検出や故障を防止できる。特に本実施形態では、センサ20は、タンク本体30における走行機体3の前方側の前壁部である前側面40に取り付けられる。
 
【0048】
  ここで、上述したように側壁部50は軸心Y1を基準に回動して開口部分Pの状態を変更するが、この軸心Y1はタンク本体30に対しては固定軸となる。したがって、側壁部50はタンク本体30に対して姿勢を変更し、側壁部50における軸心Y1から離れた側の端部の位置が変更することになる。そこで、センサ20は開口部分Pに対する側壁部50の位置を検出することになる。
 
【0049】
  上述したように、穀粒タンク8内に穀粒導入口17から導入された穀粒は重力にしたがって貯留空間Qの底側から堆積されるように貯留される。側壁部50は複数のフレームにより強度補強がされているが、貯留された穀粒の量によっては側壁部50がタンク本体30から離れる側に向かう力が側壁部50に作用し、タンク本体30と側壁部50との間の間隔が、上記力が作用する前に比べて大きくなる可能性がある。上述したように穀粒は貯留空間Qにおいて下側から貯留されるため、当該力は貯留空間Qの下側ほど大きく作用し、上側よりも下側の方が上記間隔が大きくなることが想定される。そこで、本実施形態ではセンサ20は、開口部分Pにおける走行機体3の上下方向上側部の非閉状態を検出するように構成される。
 
【0050】
  ここで、
図6には、開口部分Pが非閉状態であるときのセンサ20の平面図が示され、
図7には、開口部分Pが非閉状態であるときのセンサ20の正面図が示される。また、
図8には、開口部分Pが全閉状態であるときのセンサ20の平面図が示され、
図9には、開口部分Pが全閉状態であるときのセンサ20の正面図が示される。
 
【0051】
  図6−
図9に示されるように、本実施形態では、センサ20はレバー部21と支持部22とを有するレバー式センサで構成される。レバー部21は腕部23及び本体部24を有する。腕部23は、側壁部50による開口部分Pの全閉状態への移行に応じて押圧される。
図6及び
図7では、側壁部50が開口部分Pを全閉状態に移行する際、側壁部50が矢印Kに沿って紙面左側から右側に向かって移動する。
 
【0052】
  側壁部50には、ロータ35が腕部23と対向するように設けられる。ロータ35は、側壁部50の全閉方向への移動(揺動)に応じて腕部23に当接し、当該腕部23を押圧するように構成される。
 
【0053】
  腕部23と本体部24とは一体的に構成される。また、本体部24には回転軸部材25が設けられ、当該回転軸部材25を回転自在に支持部22が支持する。支持部22は、固定部材26にボルト27で締結固定され、固定部材26はボルト28によりタンク本体30に締結固定される。固定部材26は、ボルト27による締結面とボルト28による締結面とが互いに直交するように、ボルト27及びボルト28の双方に直交する方向視が、L字状に構成される。
 
【0054】
  したがって、腕部23がロータ35により押圧されると、押圧力が本体部24にも作用し、本体部24が当該押圧力により回転軸部材25を軸心として回動する。図示はしないが、支持部22にはこの回転軸部材25の回転角度を検出するポテンショメータが設けられている。このポテンショメータの検出結果により、センサ20は側壁部50の開口部分Pに対する位置を特定し、開口部分Pの非閉状態を検出する。
 
【0055】
  ロータ35は、開口部分Pが全閉状態となった時に本体部24の回動軸と平行な軸心周りで回転可能に側壁部50に設けられる。ロータ35は、回転部材36、軸部材37、ピン部材38を有して構成される。回転部材36が軸部材37に対して回転自在に支持され、軸部材37から回転部材36が抜けないようにピン部材38が軸部材37に装着される。これにより、ロータ35が腕部23を押圧する際に、レバー部21の回動に伴い回転部材36が回転し、ロータ35及び腕部23の摩耗を防止することが可能となる。
 
【0056】
  ロータ35は、開口部分Pが全閉状態となった場合において、ロータ35の軸方向視で、側壁部50における当該側壁部50を全開状態から全閉方向に移行する際の閉じ方向の奥側端部よりも、ロータ35における閉じ方向の奥側端部の方が閉じ方向の奥側に位置するように取り付けられている。
 
【0057】
  「開口部分Pが全閉状態になった場合」とは、開口部分Pが側壁部50で蓋をされ、貯留空間Qが閉塞された状態である。「ロータ35の軸方向視」とは、ロータ35の軸部材37の軸心に沿ってロータ35を見た場合をいう。「全開状態から全閉方向に移行する際の閉じ方向」とは、開口部分Pが全開状態にある場合において、当該開口部分Pを全閉状態に移行する際に、側壁部50が移動する方向であり、
図6及び
図7の状態では矢印Kが指す方向が相当する。
 
【0058】
  したがって、「側壁部50における当該側壁部50を全開状態から全閉方向に移行する際の閉じ方向の奥側端部」とは、側壁部50が全閉状態に移動する方向における最も奥側の端部である符号50Aを付した部分が相当する。同様に、「ロータ35における閉じ方向の奥側端部」とは、ロータ35が側壁部50と共に全閉状態に移動する方向における、ロータ35の最も奥側の端部である符号35Aを付した部分が相当する。本実施形態では、ロータ35における閉じ方向の奥側端部35Aが、側壁部50における閉じ方向の奥側端部50Aよりも閉じ方向の奥側に位置するように構成される。
 
【0059】
  上記のように構成することで、ロータ35が腕部23を押圧する際に、開口部分Pが側壁部50により全閉状態とされるまで確実にロータ35が腕部23を押圧することが可能となる。
 
【0060】
  更に、
図7及び
図9に示されるように、ロータ35は、側壁部50を走行機体3の前後方向に見て、側壁部50に設けられた複数のフレームのうち、走行機体3の前後方向に沿ったフレームの一つ(上部側補強部材61)と隣接するように設けられる。「側壁部50を走行機体3の前後方向に見て」とは、本実施形態では
図7及び
図9のような軸部材37の軸方向に沿って見ることをいう。ここで、上述したように、上部側補強部材61は、側壁部50において前後方向に亘って設けられた補強部材である。ロータ35は、軸部材37の軸方向に沿って見た場合に、上部側補強部材61に隣接するように設けられる。
 
【0061】
  更に、本実施形態では、
図7の状態から
図9の状態に移行する際に、センサ20は、腕部23の上下方向下側にロータ35が入り混んでから腕部23を押し上げて本体部24が回動するように構成される。本実施形態では、腕部23が本体部24に対して斜め上方側に延出するように構成され、当該腕部23に対して横方向から腕部23に当接するように構成される。したがって、本実施形態では、腕部23の先端部91、腕部23におけるロータ35が当接する当接部92、腕部23の基端部93の順に並ぶように構成される。このように構成することにより、レバー部21が支持部22に対して時計回りに回動することが可能となる。
 
【0062】
  本コンバイン1は、センサ20の検出結果に基づきエンジンEの運転を制御するように構成される。
図10は、エンジンEの制御に係る機能部を示すブロック図である。
図10に示されるように、センサ20の検出結果は制御部90に伝達される。制御部90は、開口部分Pが非閉状態である場合に、エンジンE(動力供給部の一例)を停止状態にするように構成する。ここで、上述したように、本実施形態ではエンジンEは穀粒排出装置10に動力源を供給する。「停止状態にする」とは、運転状態である場合には運転を停止することをいい、停止状態である場合には始動できないようにすることをいう。したがって、制御部90は開口部分Pが非閉状態である場合において、エンジンEが運転状態にある時はエンジンEを停止させるように制御し、エンジンEが停止状態にある時はエンジンEを始動させないように制御する。このような制御部90は、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築することが可能である。
 
【0063】
  センサ20は、エンジンEの始動指示があった場合において、エンジンEの始動前に開口部分Pの非閉状態を検出するように構成すると好適である。「エンジンEの始動指示があった場合において、エンジンEの始動前」とは、エンジンEの停止中において、エンジンEに対して始動指示があった際に、実際にエンジンEを始動する前の状態をいう。例えば、エンジンEがイグニションキーを回して始動される場合にあっては、イグニションキーのエンジン停止位置から始動位置に至るまでの間に設けられるアクセサリーON位置にイグニションキーが達したときをいう。あるいは、エンジンEがスタートボタンの押下により始動する場合にあっては、当該スタートボタンが押下されてからエンジンEが始動するまでの間をいう。したがって、センサ20は、エンジンEの停止中において、エンジンEに対して始動指示があった際に、当該始動指示がなされてから実際にエンジンEを始動するまでの間に開口部分Pが非閉状態であるか否かを検出し、センサ20の検出結果が開口部分Pが非閉状態であることを示すものである場合に、制御部90はエンジンEを始動できないようにすることが可能となる。
 
【0064】
  また、センサ20は、エンジンEの運転中は開口部分Pの非閉状態を継続して検出するように構成すると好適である。これにより、エンジンEが運転状態である場合において、仮に開口部分Pが非閉状態となった時は制御部90がエンジンEを停止状態にすることが可能となる。
 
【0065】
  ここで、コンバイン1は、穀粒排出装置10に対して動力源が入力される入力状態と穀粒排出装置10に対して動力源が遮断される遮断状態とに亘って切り替え可能なクラッチ機構18(
図1参照)を備えると好適である。係る場合、制御部90は、クラッチ機構18において動力源が遮断状態にある場合はエンジンEを停止状態にさせないように構成しても良い。このような構成とすると、開口部分Pが非閉状態である場合には底部スクリュー12を停止することができる。
 
【0066】
  あるいは、制御部90は、開口部分Pが非閉状態である場合には、クラッチ機構18を遮断状態にするように構成しても良い。係る場合には、開口部分Pが非閉状態になったときには底部スクリュー12を停止することができる。
 
【0067】
  なお、クラッチ機構18を備えていても、制御部90により入力状態や遮断状態に切り替えることができない場合(バイワイヤにより構成されていない場合)には、作業者に対してクラッチ機構18を遮断状態に切り替えるように明示するように構成すると良い。
 
【0068】
  ここで、タンク本体30には穀粒の貯留レベルを検出するレベルセンサ101−104が設けられている。本実施形態では、レベルセンサ101−104は、
図3及び
図4に示されるように、穀粒タンク8の上下方向に沿って設けられる。最下段のレベルセンサ101は後側面41におけるタンク本体30の内面側に設けられ、その他のレベルセンサ102−104は前側面40におけるタンク本体30の内面側に設けられる。
 
【0069】
  レベルセンサ101−104は、夫々が設けられた位置(高さ)において穀粒が検出された時にハイ信号を出力し、穀粒が検出されない時にはロー信号を出力するように構成すると良い。もちろん、穀粒が検出された時にロー信号を出力し、穀粒が検出されない時にハイ信号を出力するように構成することも可能である。このようなレベルセンサ101−104は、例えば公知の押圧センサや容量センサを用いて構成することが可能である。
 
【0070】
  これらのレベルセンサ101−104のうち、少なくともいずれか1つが穀粒があることを示す信号を出力している場合には、当該信号を出力したレベルセンサの高さまで穀粒が貯留されていることから、側壁部50が撓んで変形している可能性がある。係る場合、センサ20が側壁部50の撓みに起因して開口部分Pが全閉状態でないと検出することが想定される。そこで、センサ20が開口部分Pが全閉状態でないという検出結果を示す場合であって、レベルセンサ101−104のうち、少なくともいずれか1つが穀粒があることを示す信号を出力している場合には、センサ20の検出結果と共に、センサ20の検出結果が誤検出の可能性があることを明示すると好適である。
 
【0071】
  また、レベルセンサ101−104の全てが、穀粒がないことを示す信号を出力している場合には、穀粒タンク8内に穀粒が貯留されていない、或いは、レベルセンサ101の高さ未満であるため、側壁部50が撓んでいない(変形していない)可能性が高い。係る場合、センサ20による開口部分Pが全閉状態でないとする検出結果は側壁部50の撓みに起因したものでない可能性が高い。そこで、センサ20が開口部分Pが全閉状態でないという検出結果を示す場合であって、全てのレベルセンサ101−104が穀粒がないことを示す信号を出力している場合には、センサ20の検出結果と共に、センサ20の検出結果が誤検出でない可能性が高いことを明示すると好適である。
 
【0072】
  以上のように、レベルセンサ101−104の検出結果と、センサ20の検出結果とを併用することで、センサ20の誤検出を防止できると共に、作業者に注意喚起することが可能となる。
 
【0073】
  次に、制御部90による処理について
図11のフローチャートを用いて説明する。なお、以下ではコンバイン1がイグニションキーによりエンジンEが始動され、クラッチ機構18を備えている場合の例を挙げて説明する。
 
【0074】
  図11に示されるように、制御部90はエンジンEを始動させるイグニションキーがエンジン始動位置でない場合には(ステップ#1:No)には待機状態であって、イグニションキーがエンジン始動位置である場合(ステップ#1:Yes)に処理を開始する。
 
【0075】
  イグニションキーがエンジン始動位置とされると(ステップ#1:Yes)、センサ20による開口部分Pの非閉状態の検出が開始される(開口部分Pが非閉状態であるか否かの検出が開始される)。センサ20の検出結果は制御部90に伝達される。
 
【0076】
  開口部分Pが非閉状態である場合には(ステップ#2:Yes)、制御部90はエンジンEの始動を禁止し(ステップ#3)、開口部分Pが非閉状態でなくなるまで(ステップ#2:No)処理を保留する。開口部分Pが非閉状態でない場合には(ステップ#2:No)、制御部90はエンジンEの始動を指示する(ステップ#4)。これにより、コンバイン1が作業を行うことが可能となる。センサ20は、コンバイン1の作業中も継続して開口部分Pが非閉状態であるか否かの検出を行う。
 
【0077】
  コンバイン1の作業中において、開口部分Pが非閉状態になると(ステップ#5:Yes)、クラッチ機構18が入力状態であるか遮断状態であるかの確認が行われる。クラッチ機構18が遮断状態である場合には(ステップ#6:No)、ステップ#5に戻り処理が継続される。
 
【0078】
  一方、クラッチ機構18が入力状態である場合には(ステップ#6:Yes)、制御部90はクラッチ機構18が遮断状態になるように制御する(ステップ#7)。この時、制御部90がクラッチ機構18の制御が行えない場合には、クラッチ機構18あるいはクラッチ機構18の制御を行う機能部に対し、クラッチ機構18を遮断状態にさせる指示を行うように構成すると良い。更には、このような機能を備えていない場合には、クラッチ機構18を遮断状態にするように作業者に対して、例えば音や光を用いて明示するように構成しても良い。この時、制御部90は、更にエンジンEを停止させるように制御しても良い(ステップ#8)。
 
【0079】
  また、制御部90は、開口部分Pが非閉状態であることから側壁部50の点検を促すように明示すると良い(ステップ#9)。この明示は、例えば音や光を用いて行うと好適である。係る場合、制御部90は処理を一旦、終了し、再度、イグニションキーが始動位置になった場合に(ステップ#1:Yes)、処理を行うと良い。
 
【0080】
  ステップ#5において、コンバイン1の作業中に開口部分Pが非閉状態となっていない場合であって(ステップ#5:No)、エンジンEが停止されていない場合(ステップ#10:No)、ステップ#5に戻り、コンバイン1は作業を継続する。一方、エンジンEが停止された場合(ステップ#10:Yes)、処理を終了する。制御部90は、このようなフローに沿って処理を行う。
 
【0081】
〔その他の実施形態〕
  上記実施形態では、側壁部50は軸心Y1周りに回動可能な状態でタンク本体30に支持されるとして説明したが、側壁部50はタンク本体30に対して前後方向にスライドするスライドドアであっても良い。
 
【0082】
  上記実施形態では、自脱型コンバインを例に挙げて説明したが、普通型コンバインに適用することも可能である。
 
【0083】
  上記実施形態では、センサ20はタンク本体30の外部に取り付けられているとして説明したが、センサ20はタンク本体30の内部に取り付けることも可能である。係る場合、センサ20を塵埃から保護するために、耐塵埃性に優れたセンサを用いたり、あるいはセンサをカバー部材で覆うと好適である。
 
【0084】
  上記実施形態では、センサ20は、開口部分Pに対する側壁部50の位置を検出するとして説明したが、センサ20は側壁部50に対する開口部分Pの位置を検出するように構成することも可能である。
 
【0085】
  上記実施形態では、穀粒タンク8は、走行機体3の後方側において走行機体3の上下方向に設定された軸心Y2を基準に回動可能に設けられるとして説明したが、穀粒タンク8は、走行機体3の前方側において走行機体3の上下方向に設定された軸心を基準に回動可能に設けることも可能であるし、あるいは、穀粒タンク8は回動しないように設けることも可能である。
 
【0086】
  上記実施形態では、センサ20は、開口部分Pにおける走行機体3の上下方向上側部の非閉状態を検出するとして説明したが、センサ20は、開口部分Pにおける走行機体3の上下方向上側部とは異なる部位の非閉状態を検出するように構成することも可能である。
 
【0087】
  上記実施形態では、センサ20はレバー式センサであるとして説明したが、レバー式センサとは異なるセンサ(例えばプッシュ式センサ等)を用いることも可能である。また、センサ20はレーザ式センサであっても良いし、側壁部50の位置を検出する距離画像センサであっても良い。更には、カメラで開口部分Pを撮像し、撮像して取得した撮像画像に対して画像認識処理を行って開口部分Pが非閉状態であるか否かを検出するような構成であっても良い。係る場合、カメラがセンサ20に相当する。なお、このようなカメラはコンバイン1の周囲の情景を撮像するカメラを併用することが可能である。
 
【0088】
  上記実施形態では、本体部24の回動軸と平行な軸心周りに回転可能なロータ35が側壁部50に設けられているとして説明したが、側壁部50にロータ35を設けずに構成することも可能であるし、ロータ35が回転しないように構成することも可能である。
 
【0089】
  上記実施形態では、ロータ35は、開口部分Pが全閉状態となった場合において、ロータ35の軸心方向視で、側壁部50における奥側端部50Aよりも、ロータ35における閉じ方向の奥側端部35Aの方が閉じ方向の奥側に位置するように取り付けられているとして説明したが、ロータ35における閉じ方向の奥側端部35Aよりも、側壁部50における閉じ方向の奥側端部50Aの方が閉じ方向の奥側に位置するように構成することも可能である。
 
【0090】
  上記実施形態では、側壁部50は複数のフレームが設けられるとして説明したが、側壁部50は複数のフレームを設けないように構成することも可能である。
 
【0091】
  上記実施形態では、ロータ35は、側壁部50を走行機体3の前後方向に見て、上部側補強部材61と隣接するように設けられているとして説明したが、ロータ35は、側壁部50を走行機体3の前後方向に見て、上部側補強部材61と離間して設けることも可能である。
 
【0092】
  上記実施形態では、センサ20は、腕部23の下側にロータ35が入り混んでから腕部23を押し上げて本体部24が回動するとして説明したが、センサ20は、腕部23を押し下げて本体部24が回動するように構成することも可能である。
 
【0093】
  上記実施形態では、センサ20は、腕部23の先端部91、腕部23におけるロータ35が当接する当接部92、腕部23の基端部93の順に並ぶように構成されるとして説明したが、当該順とは異なる順に並ぶように構成することも可能である。