【解決手段】クランプ治具30による被縫製物Cのクランプ作業を補助するクランプ補助装置50において、クランプユニット40Bの支持機構43Bに連結可能な連結部材73Bと、連結部材を介してクランプ治具のクランプ部材41Bの解放位置とクランプ位置の位置切り替え動作を付与するアクチュエーター71Bと、アクチュエーターを固定支持する基台60と、アクチュエーターから連結部材に位置切り替え動作を伝える伝達機構74Bとを備え、伝達機構は、連結部材の動作方向を調節可能とする支持部75Bと、アクチュエーターと連結部材との間で少なくとも二自由度の動作伝達が可能な動作伝達部79Bとを備えている。
被縫製物をクランプするクランプ部材と当該クランプ部材をクランプ位置と解放位置とに切り替え可能に支持する支持機構とを有するクランプユニットと、前記クランプユニットを位置調節可能に支持するフレームとを備えるクランプ治具による被縫製物のクランプ作業を補助するクランプ補助装置において、
前記クランプユニットの前記支持機構に連結可能な連結部材と、
前記連結部材を介して前記クランプ治具のクランプ部材の解放位置とクランプ位置の位置切り替え動作を付与するアクチュエーターと、
前記アクチュエーターを固定支持する基台と、
前記アクチュエーターから前記連結部材に前記位置切り替え動作を伝える伝達機構とを備え、
前記伝達機構は、
前記連結部材の動作方向を調節可能とする支持部と、
前記アクチュエーターと前記連結部材との間で少なくとも二自由度の動作伝達が可能な動作伝達部とを備えることを特徴とするクランプ補助装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の実施の形態の概略]
以下、本発明の実施の形態であるクランプ治具30及びクランプ補助装置50について図面に基づいて説明する。
上記クランプ補助装置50はクランプ治具30に被縫製物Cを装着する作業を補助する装置である。
【0014】
[クランプ治具:概要]
図1はクランプ治具30の正面図、
図2は斜視図である。なお、
図1は被縫製物Cの解放状態、
図2は被縫製物Cのクランプ状態を示している(被縫製物Cは図示略)。
クランプ治具30は、後述するY軸方向に沿って並んで配置され、被縫製物Cをクランプする三つのクランプユニット40A,40B,40Bと、各クランプユニット40A,40B,40Bを支持するフレーム31とを備えている。
【0015】
なお、中央のクランプユニット40Aの両側に配置されたクランプユニット40B,40Bは、お互いが左右方向について対称構造であるため、同一の符号を用いて説明し、重複する説明は省略する。
また、中央のクランプユニット40Aと両側のクランプユニット40B,40Bは、基本構造が一致するので、基本構造についてはクランプユニット40Aで説明し、クランプユニット40Bについてはクランプユニット40Aと異なる点のみを説明する。
【0016】
なお、クランプユニット40Aに固有の構成については数字のあとにアルファベットの「A」を加えた符号を使用し、クランプユニット40Bに固有の構成については数字のあとにアルファベットの「B」を加えた符号を使用し、クランプユニット40Aとクランプユニット40Bとに共通する構成については数字にアルファベットの「A」と「B」の何れも加えない符号を使用して以下の説明を行う。
また、上記クランプ治具30のフレーム31は、所定形状の平板であり、その平板面に平行であって互いに直交する一の方向をY軸方向、他の方向をZ軸方向とし、Y軸方向の一方を「左」、他方を「右」とし、Z軸方向の一方を「上」、他方を「下」とする。また、フレーム31の平板面に直交する方向をX軸方向とし、その一方(
図1紙面手前側)を「前」、他方(
図1紙面奥側)を「後」とする。
【0017】
[クランプ治具:中央のクランプユニット]
各クランプユニット40A,40B,40Bは、いずれも、フレーム31の前面側に装備されている。
そして、クランプユニット40Aは、被縫製物Cの上側に配置される第一クランプ部材としての上側クランプ部材41Aと、被縫製物Cの下側に配置される左右一対の第二クランプ部材としての下側クランプ部材42A,42Aと、上側クランプ部材41A及び下側クランプ部材42Aをクランプ位置と解放位置とに切り替え可能に支持する支持機構43Aと、支持機構43Aを支持する支持ブロック44Aとを備えている。
【0018】
左右の下側クランプ部材42A,42Aは、左右方向について対称形状であり、いずれも、X軸方向に沿った長尺の板状部材であって、支持ブロック44Aから前方に向かって延出されている。さらに、下側クランプ部材42A,42Aの前端部は、それぞれ左右方向外側に向かって張り出された形状となっている。
【0019】
左右の下側クランプ部材42A,42Aの前端上部のクランプ面421A,421Aは、いずれも、中心軸がX軸方向に平行な円筒形の同一の外周面に沿っている。そして、Y軸方向における両端部に位置する二つのクランプユニット40B,40Bのそれぞれの下側クランプ部材42B,42Bも、上述の円筒形の同一の外周面に沿ったクランプ面421B,421Bを有している。
つまり、これらのクランプユニット40A,40B,40Bの下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bのクランプ面421A,421A,421B,421Bは、全て、同一の外周面に沿って並ぶように配置されている。
【0020】
また、クランプユニット40Aの左右の下側クランプ部材42A,42Aは、その後端部の上面を支持ブロック44Aの下面に当接させた状態で当該支持ブロック44Aにネジ止めされている。
さらに、それぞれの下側クランプ部材42A,42Aは、その前端部のZ軸方向からみた形状が被縫製物Cの前側縁部の形状に近似している。このため、縫製の際には、被縫製物Cの前側縁部に沿った針落ち位置の近傍を保持することができる。
【0021】
上側クランプ部材41Aは、X軸方向に沿った長尺の板状部材であって、支持機構43Aの可動ブロック45Aから前方に向かって延出されている。さらに、また、上側クランプ部材41Aの前端部は、左右方向外側に向かって張り出された形状となっている。これにより、上側クランプ部材41Aの前端部は、上から見て、二つの下側クランプ部材42A,42Aの前端部に重ね合わせることができる。
【0022】
上側クランプ部材41Aは、その下面のクランプ面を下側クランプ部材42A,42Aの上面のクランプ面に接近又は当接させたクランプ位置と上方に離隔した解放位置とに切り替え可能となるように、支持機構43Aを介して支持ブロック44Aに支持されている。
上側クランプ部材41Aの下面のクランプ面411Aは、中心軸がX軸方向に平行な円筒形の内周面に沿っている。そして、Y軸方向における両端部に位置する二つのクランプユニット40B,40Bのそれぞれの上側クランプ部材41B,41Bも、上述の円筒形の内周面に沿ったクランプ面411B,411Bを有している。
つまり、これらのクランプユニット40A,40B,40Bの上側クランプ部材41A,41B,41Bのクランプ面411A,411B,411Bは、全て、同一の内周面に沿って並ぶように配置されている。
【0023】
さらに、クランプユニット40A,40B,40Bの上側クランプ部材41A,41B,41Bのクランプ面411A,411B,411Bの内周面と、対向する下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bのクランプ面421A,421A,421B,421Bの外周面とは、径が等しく、個別に対向し且つ平行となっており、各上側クランプ部材41A,41B,41Bと各下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bとによって挟持した被縫製物Cを、前述した内周面及び外周面に沿った円周面に沿った状態で保持することができる。
【0024】
また、クランプユニット40Aの上側クランプ部材41Aは、その上面を支持機構43Aの可動ブロック45Aの下面に当接させた状態で当該可動ブロック45Aにネジ止めされている。
さらに、上側クランプ部材41Aは、その前端部のZ軸方向からみた形状が被縫製物Cの前側縁部の形状に近似している。このため、縫製の際には、被縫製物Cの前側縁部に沿った針落ち位置の近傍を保持することができる。
【0025】
図3は支持機構の側面図である。
支持機構43Aは、
図2及び
図3に示すように、上側クランプ部材41Aを保持する可動ブロック45Aと、支持ブロック44Aの上面に固定装備された基部432と、回動操作により上側クランプ部材41Aを下側クランプ部材42Aと対向するクランプ位置と下側クランプ部材42Aから離間した解放位置とに切り替える操作レバー433と、可動ブロック45A及び支柱431,431を介して上側クランプ部材41Aを支持する回動腕434と、基部432と操作レバー433とを連結するリンク部材435と、クランプ補助装置50からの操作レバー433に対する切り替え操作の推力を入力する操作部材としての伝達体46とを備えている。
なお、上記「クランプ位置」とは下側クランプ部材42Aに対して上側クランプ部材41Aが被縫製物Cを挟持できる程度に近接した状態又はクランプ面411A、421A同士が接した状態をいい、「解放位置」とは下側クランプ部材42Aに対して上側クランプ部材41Aが離隔して被縫製物Cを解放可能な状態(本実施形態では90°近くまで開いた状態)を言うものとする。
【0026】
基部432は、その前端部において回動腕434の後端の下部をY軸回りに回動可能に支持し、基部432の後端部においてリンク部材435の一端部をY軸回りに回動可能に支持している。
操作レバー433は、その前端部が回動腕434の後端の上部とY軸回りに回動可能に連結され、後端部はクランプ位置と解放位置との切り替えを行うための入力部となっている。具体的には、操作レバー433の後端部には、Y軸方向に貫通し、X軸方向に沿った長穴433aが形成されている。
さらに、操作レバー433の前端部より幾分後方となる位置において、リンク部材435の他端部とY軸回りに回動可能に連結されている。
【0027】
これにより、基部432と操作レバー433と回動腕434とリンク部材435とが四節リンク機構を構成している。
この構成において、操作レバー433の入力部を下方に回動させると、操作レバー433と回動腕434との連結点aとリンク部材435と基部432との連結点bを結ぶ直線よりも、操作レバー433とリンク部材435との連結点cが下側となる。かかる状態で上側クランプ部材41Aと下側クランプ部材42Aとの間に被縫製物Cをクランプしてその復元力で操作レバー433が押し戻されても、連結点cがより下方に移動する方向に力が加わり、操作レバー433と基部432とが当接して上側クランプ部材41Aと下側クランプ部材42Aの開きが阻止され、クランプ状態を維持することができる。
つまり、操作レバー433の入力部の下方回動により、上側クランプ部材41Aと下側クランプ部材42Aとが被縫製物Cを挟んで保持するクランプ位置に切り替えることができる。
【0028】
また、クランプ位置にある状態から操作レバー433の入力部を上方に回動させると、操作レバー433と回動腕434との連結点aとリンク部材435と基部432との連結点bを結ぶ直線よりも下側に位置していた操作レバー433とリンク部材435との連結点cが当該直線よりも上方に移動する。これにより、上側クランプ部材41Aと下側クランプ部材42Aの開きが阻止されなくなり、操作レバー433の入力部をさらに上方に回動させると、操作レバー433と回動腕434との連結点aがリンク部材435と基部432との連結点b側に引き寄せられて、上側クランプ部材41Aが上方に回動して解放位置となる。
つまり、操作レバー433の入力部の上方回動により、上側クランプ部材41Aを被縫製物Cの解放位置に切り替えることができる。
これらにより、支持機構43Aは、いわゆるトグル機構を構成している。
【0029】
伝達体46は、平板状の支持ブロック44Aにより上下動可能に支持されており、U字状の枠部461と、枠部461の底部に固定装備された丸棒状の直動軸462と、枠部461の内側に設けられた連結軸463と、直動軸462を通じて枠部461を下方に押圧する弾性体としてのコイル状のバネ464とを備えている。
【0030】
枠部461の内側には、Y軸方向に平行な連結軸463が固定装備されている。そして、前述した支持機構43Aの操作レバー433の入力部の長穴433aに連結軸463が挿入されている。
直動軸462は、支持ブロック44Aの平板面の中心より幾分後方となる位置を貫通して設けられた図示しない滑り軸受けにより、その長手方向に沿って往動可能に支持されている。
支持ブロック44Aの平板面は、X−Y平面に平行であり、直動軸462はZ軸方向に沿って往動可能となっている。
【0031】
直動軸462は、その一端部(上端部)が枠部461に固定連結され、他端部(下端部)は、支持ブロック44Aの下側において、後述するクランプ補助装置50の連結部材73Aに連結可能となっている。即ち、直動軸462の下端部の外周面には、当該外周面を一周する溝によってくびれた形状の被係止部462aが形成されている。
連結部材73Aは、一端部が開放された凹状の切り欠きからなる係止部734Aを備えており、当該係止部734Aの内側に被係止部462aを挿入することにより直動軸462との連結を可能としている。そして、当該連結状態において、クランプ補助装置50側からの直動軸462の上方への移動動作の入力を可能としている。
【0032】
コイル状のバネ464は、直動軸462を内側に通したバネであり、支持ブロック44Aの下側で直動軸462を下方に押圧している。これにより、直動軸462,枠部461を介して操作レバー433の入力部が下方に引き寄せられ、上側クランプ部材41Aが常にクランプ位置側に付勢されている。
【0033】
つまり、外力を加えてコイル状のバネ464に抗して直動軸462を上方移動させることにより、枠部461の連結軸463が操作レバー433を上方に押し上げ、外力を加えることをやめてコイル状のバネ464のバネ圧に従って直動軸462を下方移動させることにより、枠部461の連結軸463が操作レバー433の入力部を下方に押し下げることができる。
これにより、伝達体46を介して、クランプ補助装置50側からの上側クランプ部材41A及び下側クランプ部材42Aのクランプ位置と解放位置との切り替え操作を可能としている。
【0034】
支持ブロック44Aは、前述したようにX−Y平面に沿った矩形の平板であり、その上面側で支持機構43Aを介して上側クランプ部材41Aを支持し、下面側で下側クランプ部材42Aを支持している。
さらに、この支持ブロック44Aは、後端部にフレーム31の前面に当接する端面部を有しており、当該端面部を密接させた状態でフレーム31にネジ止めによって支持されている。
【0035】
[クランプ治具:左右のクランプユニット]
図4は上側クランプ部材41Bがクランプ位置にあるときのクランプユニット40Bの側面図、
図5は解放位置にあるときの側面図である。
なお、
図4及び
図5はクランプユニット40Bの傾斜をなくした状態(伝達体46の直動軸462がZ軸方向に平行な状態)で図示している。
左右のクランプユニット40B,40Bについて説明する。前述したように、左右のクランプユニット40B,40Bは左右方向ついて対称構造なので、ここでは左側のクランプユニット40Bのみについて説明し、右側のクランプユニット40Bについては説明を省略する。また、クランプユニット40Bについて、既に説明した中央のクランプユニット40Aと異なる点のみについて説明する。
【0036】
各クランプユニット40A,40B,40Bの支持ブロック44A,44B,44Bは、前述した上側クランプ部材41A,41B,41B及び下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bのクランプ面に倣う周面に対して外接する向きでフレーム31に支持されている。従って、Y軸方向の中央に位置する支持ブロック44Aは、X−Y平面に平行な向きとなり、左右両側に位置する各支持ブロック44B,44Bは、何れもX−Y平面に対してX軸回りに傾斜した向きとなっている。
従って、左右のクランプユニット40B,40Bは、その全ての構成が支持ブロック44B,44Bと同様に傾斜した向きとなっている。
【0037】
また、クランプユニット40Bは、上側クランプ部材41B、下側クランプ部材42B及び支持機構43Bを備えている。
また、クランプユニット40Bの支持ブロック44Bは下側クランプ部材42Bを支持している。
クランプユニット40Bの支持機構43Bは、前述した支持機構43Aとほぼ同一の構成であり、可動ブロック45Aがなく、支柱431,431が上側クランプ部材41Bの上面に直接連結されている点が支持機構43Aと異なっている。
【0038】
また、上側クランプ部材41B及び下側クランプ部材42Bの前端部は、被縫製物Cの形状に倣った形状となっていることから、上側クランプ部材41A及び下側クランプ部材42Aとは異なる形状となっている。
【0039】
[クランプ治具:フレーム]
フレーム31は、
図1及び
図2に示すように、Y軸方向に長尺な矩形の本体部32と、本体部32のY軸方向の両端部からそれぞれ左斜め下方と右斜め下方とに延出された二本の腕部33,33とを有し、これらがY−Z平面に沿った一体的な平板状をなしている。
【0040】
また、フレーム31の本体部32の上部後面側には、左右一対の治具把持機構35,35が設けられている。
クランプ治具30は、クランプ補助装置50が有する、後側支持板63(
図11参照)に、本体部32の中央部の後面を接するように装着される。
左右一対の治具把持機構35,35は、上記後側支持板63の上端部の後面を前方に押圧することにより、当該治具把持機構35,35とフレーム31の後面との間で把持することにより、後側支持板63に対するクランプ治具30の固定を図るものである。
【0041】
治具把持機構35は、
図2及び
図3に示すように、クランプ補助装置50の後側支持板63を把持する弾性部材からなる把持パッド351と、フレーム31の後面に固定装備された基部352と、回動操作により把持パッド351を後側支持板63を把持する把持位置と後側支持板63から離間した解放位置とに切り替える操作レバー353と、把持パッド351を支持する回動腕354と、基部352と操作レバー353とを連結する図示しないリンク部材とを備えている。
【0042】
この治具把持機構35は、クランプユニット40A、40Bの支持機構43A,43Bとほぼ同一の構造を有しており、トグル機構を用いて把持パッド351による後側支持板63の把持状態と解放状態とを切り替える。
つまり、操作レバー353の入力操作部を前方に回動させると、操作レバー353と回動腕354との連結点とリンク部材と基部352との連結点を結ぶ直線よりも、操作レバー353とリンク部材との連結点が前側となる。かかる状態で把持パッド351が後側支持板63を前方に押圧してフレーム31との間で把持した状態(把持位置)となる。
また、把持位置にある状態から操作レバー353の入力操作部を後方に回動させると、操作レバー353と回動腕354との連結点とリンク部材と基部352との連結点を結ぶ直線よりも前方に位置していた操作レバー353とリンク部材との連結点が当該直線よりも後方に移動する。これにより、把持パッド351が後方に移動し、後側支持板63を解放した状態(解放位置)となる。
これにより、クランプ治具30を、クランプ補助装置50の後側支持板63に対して着脱可能としている。
【0043】
[クランプ治具:治具側調節機構]
図6はクランプユニット40Bの取り付け位置におけるフレーム31の断面図である。
上記フレーム31とクランプユニット40Bとの間には、フレーム31に対する二つのクランプユニット40Bの配置を調節する治具側調節機構47が設けられている。なお、中央のクランプユニット40Aは、フレーム31に固定的に装備され、位置調節は行われない。
【0044】
治具側調節機構47として、フレーム31の各腕部33,33には、
図1に示すように、左右のクランプユニット40B,40Bを個々に取り付けるために、湾曲した曲線としての円弧に沿った複数の直線からなる折れ線状の長穴である上側取付穴471と下側取付穴472とが上下に並んで貫通形成されている。
なお、左右の腕部33,33及び各腕部33,33に設けられた上側取付穴471と下側取付穴472は、左右方向について対称となる形状なので、主に、左側の腕部33及び上側取付穴471と下側取付穴472について説明を行う。
【0045】
上側取付穴471は、三つの直線部からなる折れ線状であり、下側取付穴472は二つの直線部からなる折れ線状である。
そして、上側取付穴471の直線部は、フレーム31の下方に中心位置が設定された共通の円弧に沿って形成されている。
また、下側取付穴472の直線部は、フレーム31の下方に中心位置が設定された共通の円弧に沿って形成されている。
また、下側取付穴472の円弧は上側取付穴471の円弧と同心であって下側取付穴472の円弧は上側取付穴471の円弧よりも小径に設定されている。さらに、これらの円弧の中心は、前述したクランプユニット40A,40B,40Bの上側クランプ部材41A,41B,41Bのクランプ面411A,411B,411B及び下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bのクランプ面421A,421A,421B,421Bがなす周面の中心線上に位置している(以下、この周面の中心線を「クランプ面の中心線」という)。
なお、上記上側取付穴471及び下側取付穴472は、複数の直線部からではなく、いずれか一方の円弧に沿った一つの円弧状に形成しても良い。
【0046】
図6に示すように、治具側調節機構47は、上記上側取付穴471及び下側取付穴472に加えて、クランプユニット40Bの支持ブロック44Bの後端面から後方に突出した二本のボス473,473と、支持ブロック44Bをフレーム31に締結固定する手回しハンドルを有するネジ474とを備えている。
【0047】
二本のボス473,473は、上側取付穴471の円弧に沿うように並んで配置されており、これらのボス473、473は上側取付穴471に挿入される。
ネジ474は、支持ブロック44Bの後端面における下側取付穴472の円弧の線上となる位置に形成されたネジ穴476に対して、フレーム31の後面側から下側取付穴472に通されて座金475を介して螺入されている。
従って、クランプユニット40Bの位置調節の際には、手回しハンドルを回してネジ474を緩め、当該ネジ474とボス473,473により上側取付穴471及び下側取付穴472に沿って支持ブロック44Bを移動させることにより、前述した二つの円弧に沿って任意に位置を調節することができる。そして、位置を決めると、再び、手回しハンドルを回してネジ474を締結し、その位置にクランプユニット40Bを固定することができる。
【0048】
また、治具側調節機構47は、クランプユニット40Bの位置調節を一定の位置変化量の単位で行わせる間欠移動機構48を備えている。この間欠移動機構48は、前述した円弧と同心の円弧に沿って一定の間隔でフレーム31の前面側に形成された複数の位置決め穴481(
図6では一つのみ図示)と、支持ブロック44Bの後端面に形成された有底穴482内において進退可能に格納された球体483と、球体483を有底穴482から突出させる方向に加圧する弾性体としてのコイル状のバネ484とを備えている。
また、有底穴482の開口部はかしめられており、球体483は、ある程度外部に突出するが、脱落しないようになっている。
【0049】
上記球体483の外径は、位置決め穴481の内径よりも大きく、球体483の一部が有底穴482から突出した場合に位置決め穴481に嵌合する。これにより、クランプユニット40Bの位置調節の際に、支持ブロック44Bを上側取付穴471及び下側取付穴472に沿って移動させると、球体483が進退移動を行いながら複数並んだ位置決め穴481に順番に嵌合し、その都度、支持ブロック44Bを位置決めすることができる。
【0050】
なお、位置決め穴481は、前面側が開口していれば良く、
図6のように前後に貫通してなくとも良い。
また、位置決め穴481に嵌合する部材は、球体483である場合に限らず、支持ブロック44Bの移動を許容する先端が丸みを帯びた突起でも良い。
また、複数の位置決め穴481を支持ブロック44Bの後端面に設け、有底穴482をフレーム31の前面側に設け、球体483とコイル状のバネ484を格納する構成としても良い。
【0051】
[クランプ補助装置:概要]
図7はクランプ治具30を装着した状態のクランプ補助装置50の正面図、
図8はクランプ治具30を装着していない状態のクランプ補助装置50の正面図、
図9は斜視図、
図10は前側支持板62の図示を省略した状態の斜視図、
図11はその正面図、
図12はその背面図である。
【0052】
クランプ補助装置50は、クランプ治具30のフレーム31を支持する基台60と、クランプ治具30のクランプユニット40A,40B,40Bに対応して個別に設けられ、各クランプユニット40A,40B,40Bの上側クランプ部材41A,41B,41Bのクランプ位置と解放位置との切り替え動作の動力を付与する駆動ユニット70A,70B,70Bとを備えている。
【0053】
なお、中央の駆動ユニット70Aの両側に配置された駆動ユニット70B,70Bは、互いに対称構造であるため、同一の符号を用いて説明し、重複する説明は省略する。
また、駆動ユニット70Aに固有の構成については数字に「A」を付し、駆動ユニット70Bに固有の構成については数字に「B」を付し、共通する構成は何れも付さない。
また、クランプ補助装置50の各図におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向については、クランプ補助装置50にクランプ治具30を装着した場合のクランプ治具30に定めたX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を適用する。
【0054】
[クランプ補助装置:基台]
基台60は、X−Y平面に沿った矩形平板状の底板61と、底板61の上面の前端部に立設された前側支持板62と、底板61の上面の後端部に立設された後側支持板63とを備えている。
【0055】
前側支持板62及び後側支持板63は、何れも、底板61にネジ止めされる下部を除いて全体がY−Z平面に沿った平板である。前側支持板62と後側支持板63は、X軸方向について一定の距離を空けて対向配置されている。そして、前側支持板62と後側支持板63の間の領域に、各駆動ユニット70A,70B,70Bを配置している。
また、基台60の底板61の上面におけるY軸方向中央部と両端部には、駆動ユニット70A,70B,70Bの後述するエアシリンダー71A,71B,71Bが、プランジャーを上方に向けた状態で固定支持されている。
また、後側支持板63の上端部のY軸方向の両端部には、
図10に示すように、クランプ治具30の31を載置する載置台631,631が設けられている。
【0056】
[クランプ補助装置:中央の駆動ユニット]
図7〜
図12に示すように、基台60においてY軸方向における中央に配置された駆動ユニット70Aは、クランプ治具30のクランプユニット40Aの上側クランプ部材41Aのクランプ位置と解放位置との切り替え動作を入力するための駆動源となるアクチュエーターとしてのエアシリンダー71Aと、エアシリンダー71Aのプランジャーを上方に向けた状態で支持する支持フレーム72Aと、エアシリンダー71Aのプランジャーに装備された連結部材73Aとを備えている。
【0057】
支持フレーム72Aは、逆さU字状であり、二本の足となる下端部は基台60の底板61の上面にネジ止めにより固定装備されている。
そして、支持フレーム72Aの内側にエアシリンダー71Aが格納保持され、支持フレーム72Aの上端面に穿設された開口部からプランジャーが上方に向かって突出している。
【0058】
連結部材73Aは、エアシリンダー71Aのプランジャーに連結された底面部とその前端部から上方に立設されたとその上端部から後方に屈曲形成された上面部とからなり、これらは一体的に形成されている。
そして、その底面部は、エアシリンダー71Aのプランジャーに固定され、上面部は、その後端部にクランプユニット40Aの直動軸462の被係止部462aを係止する係止部734Aが設けられている。
係止部734Aは、後方に向かって開口した凹状の切り欠きからなる。係止部734Aが上記構造であることにより、クランプユニット40Aの直動軸462の下端部に形成された被係止部462aを係止部734Aに対して相対的に前方に移動させることにより、被係止部462aが係止部734Aの内側に嵌合して直動軸462と連結部材73Aとの連結状態を簡単に形成することができる。
【0059】
[クランプ補助装置:左右の駆動ユニット]
図13は駆動ユニット70Bの斜視図、
図14は一部の構成の図示を省略した斜視図である。
左右の駆動ユニット70B,70Bは左右対称構造なので、ここでは右側の駆動ユニット70Bについて説明し、左側の駆動ユニット70Bについては説明を省略する。
図7〜
図14に示すように、基台60において駆動ユニット70Aの右側に配置された駆動ユニット70Bは、クランプ治具30の右側のクランプユニット40Bの直動軸462と連結可能な連結部材73Bと、連結部材73Bを介して右側のクランプユニット40Bの上側クランプ部材41Bの解放位置とクランプ位置の位置切り替え動作を付与するアクチュエーターとしてのエアシリンダー71Bと、エアシリンダー71Bから連結部材73Bに位置切り替え動作を伝える伝達機構74Bとを備えている。
【0060】
連結部材73Bは、伝達機構74Bに支持される立板部と立板部の上端部から後方に屈曲形成された上面部とからなり、これらは一体的に形成されている。
連結部材73Bの上面は、X−Y平面をX軸回りに傾斜させた平面に平行な平板状であり、その後側の側縁部には、クランプユニット40Bの直動軸462の被係止部462aを係止する係止部734Bを備えている。係止部734Bは、後方に向かって開口した凹状の切り欠きからなる。係止部734Bが上記構造であることにより、クランプユニット40Bの直動軸462の下端部に形成された被係止部462aを係止部734Bに対して相対的に前方に移動させることにより、被係止部462aが係止部734Bの内側に嵌合して直動軸462と連結部材73Bとの連結状態を簡単に形成することができる。
【0061】
伝達機構74Bは、連結部材73Bの動作方向のX軸回りの傾斜角度を調節可能とする支持部75Bと、エアシリンダー71Bと連結部材73Bとの間で複数自由度の動作伝達が可能な動作伝達部79Bとを備えている。
図15は支持部75Bと動作伝達部79Bの背面図、
図16は一部の構成の図示を省略した背面図である。
【0062】
上記支持部75Bは、
図13〜
図16に示すように、前側支持板62によりX軸回りに回動可能に支持されたガイドとしてのスライドレール76Bと、連結部材73Bを保持するスライドブロック77Bと、スライドレール76Bの傾斜角度の調節を行う調節部としての手回しハンドル78Bとを備えている。
【0063】
スライドレール76Bは、直線状であって前側支持板62の後面中央部において段ネジ761Bにより一端部が回動可能に支持されている。
スライドレール76Bは、その長手方向に沿ってスライドブロック77Bを滑動可能に支持している。
段ネジ761Bの中心線は、クランプ補助装置50にクランプ治具30が装着された状態において、当該クランプ治具30の上側クランプ部材41A,41B,41Bのクランプ面411A,411B,411B及び下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bのクランプ面421A,421A,421B,421Bがなす周面の中心線Pと一致する配置となっている。
【0064】
クランプ治具30の左右のクランプユニット40B,40Bの直動軸462はその中心線が周面の中心線Pに直交し、左右のクランプユニット40B,40Bは治具側調節機構47,47により、上述の周面の中心線P回りに回動して位置調節が行われる。
従って、スライドレール76Bは、上記段ネジ761Bを中心に回動可能に支持されているので、スライドブロック77Bに保持された連結部材73Bを、治具側調節機構47による位置調節によって移動する直動軸462の被係止部462aの移動軌跡に追従して移動させることができる。
【0065】
また、スライドレール76Bは、他端部が右斜め上側に向けられており、途中に設けられた手回しハンドル78BによりX軸回りの傾斜角度を任意に調節することができる。
手回しハンドル78Bは、前側支持板62に形成された円弧状のガイド穴621(
図7及び
図8参照)に挿通された軸部781Bを有している。
前側支持板62のガイド穴621は、周面の中心線Pを中心とする円弧状である。
【0066】
また、手回しハンドル78Bは、前側支持板62の外側において軸部781Bの先端部に対して当該軸部781Bの長手方向に直交する方向を回動軸として回動可能に連結されている。
そして、この手回しハンドル78Bの回動支点側の端部にはカムが設けられており、手回しハンドル78Bを、前側支持板62の平板面に沿うように倒した状態ではカムが軸部781Bを締結してガイド穴621に沿った移動を規制する。
また、手回しハンドル78Bを、前側支持板62の平板面にほぼ垂直となるように立てた状態ではカムが軸部781Bの締結状態を解除して、ガイド穴621に沿った移動を可能とする。
【0067】
従って、手回しハンドル78Bの固定と解除を容易に切り替えることが可能である。
さらに、軸部781Bがガイド穴621に沿って移動するように手回しハンドル78Bを操作することにより、スライドレール76Bに回動動作を付与し、連結部材73Bを周面の中心線P回りに沿って一定の姿勢を維持した状態で位置調節することができる。
なお、クランプユニット40Bと駆動ユニット70Bは、周面の中心線P回りのそれぞれの傾斜角度が一致するように調節が行われる。
【0068】
支持部75Bの調節作業により、連結部材73Bの往復動作方向のX軸回りの傾斜角度が任意に調節される。
これに対して、エアシリンダー71Bは基台60に対してプランジャーを上方に向けた状態で固定されているので、動作伝達部79Bは、プランジャーの動作方向である上下方向に沿った推力を動作方向の角度が変化する連結部材73Bに伝達する必要がある。
このため、動作伝達部79Bは、エアシリンダー71Bのプランジャーに連結されたリンク部材80Bと、カムとしてのカム板81Bと、カム板81Bを右斜め上方向に沿って滑動可能に支持する滑り軸受82Bと、カム板81Bに係合するカムフォロアとしてのコロ83Bと、コロ83Bを回転可能に支持する支持板84Bとを備えている。
【0069】
リンク部材80Bは、いわゆるベルクランクであり、その中央部が後側支持板63によりX軸回りに回動可能に支持されている。そして、中央部から延出された一方の腕部は段ネジ801Bを介してエアシリンダー71Bのプランジャーに連結され、中央部から延出された他方の腕部は段ネジ802Bを介してカム板81Bに連結されている。
【0070】
一方の腕部は、右斜め上に向かって延出され、その延出端部にはその長手方向に沿った長穴803Bが形成されている。そして、この長穴803Bに前述の段ネジ801Bが挿通されてエアシリンダー71Bのプランジャーに連結されている。エアシリンダー71BのプランジャーはZ軸方向に沿って直動動作を行い、リンク部材80Bの一方の腕部は回動によりY軸方向にも変位を生じるが、段ネジ801Bが長穴803Bに挿通されているので、一方の腕部は円滑に回動を行うことができる。
【0071】
他方の腕部は、左斜め上に向かって延出され、その延出端部にはその長手方向に沿った長穴804Bが形成されている。そして、この長穴804Bに前述の段ネジ802Bが挿通されてカム板81Bに連結されている。
リンク部材80Bの他方の腕部は左斜め上に延出されているので、回動時には、その延出端部は右斜め上に沿った方向に回動を行う。一方、カム板81Bは、滑り軸受82Bによって右斜め上に沿った方向に滑動可能だが、リンク部材80Bの他方の腕部とカム板81Bの移動方向は完全には一致していない。
しかし、段ネジ802Bが長穴804Bに挿通されているので、リンク部材80Bの他方の腕部の回動により、カム板81Bを滑り軸受82Bによる滑動方向に沿って滑動させることができる。
【0072】
カム板81Bは、Y−Z平面に沿った平板状の溝カムであり、コロ83Bが係合するカム溝811Bが貫通形成されている。
このカム溝811Bは、エアシリンダー71Bのプランジャーがストロークエンド(例えば、プランジャーが最も下降した退避位置)に位置する場合のカム板81Bの位置において、周面の中心線Pを中心とする円弧状に形成されている。
従って、エアシリンダー71Bのプランジャーがストロークエンドに位置する状態で、手回しハンドル78Bによるスライドレール76Bの傾斜角度調節を行った場合には、カム板81Bは位置変化を生じない。このため、連結部材73Bがスライドレール76Bに沿って位置変化を生じない状態で、往復動作方向の調節作業を行うことができる。
【0073】
また、カム板81Bは、二本のガイドシャフト812Bを支持するブラケット813Bがその後面上端部に立設されている(
図14及び
図16では図示略)。
二本のガイドシャフト812Bは、右斜め上方向に沿って配置され、後側支持板63に固定支持された滑り軸受82Bによって、その長手方向に沿って滑動可能に支持されている。
このため、カム板81Bは、エアシリンダー71Bの作動により、ガイドシャフト812Bの長手方向(右斜め上に沿った方向)に沿って往復動作が可能だが、当該往復動作方向は固定されている。
【0074】
コロ83Bは、支持板84BによってX軸回りに回転可能に支持された円柱状の回転体である。その外径は、カム板81Bのカム溝811Bの溝幅にほぼ等しいか僅かに小さく、カム溝811Bに沿って円滑に移動することができる。
支持板84Bは、Y−Z平面に沿った平板状であり、連結部材73B及びスライドブロック77Bに固定的に連結されている。
【0075】
支持板84Bは、連結部材73Bと共に支持部75Bのスライドレール76Bに沿って右斜め上方向に沿って移動可能であり、カム板81Bは、ガイドシャフト812Bに沿って右斜め上方向に沿って移動可能だが、スライドレール76Bの傾斜角度は調節可能であることから、支持板84Bとカム板81Bの移動方向は一致しない場合が多い。
しかしながら、支持板84Bとカム板81Bは、コロ83Bとカム溝811Bで連結されており、カム溝811Bは支持板84Bの移動方向とカム板81Bの移動方向の双方に対して交差する方向に沿って形成されている。
これにより、移動方向のズレが許容されながら、支持板84Bの移動力をカム板81Bに伝達することができる。
従って、支持部75Bにより連結部材73Bの移動方向が調節され変化する場合であっても、動作伝達部79Bは、エアシリンダー71Bの往復の移動力を連結部材73Bに付与することができる。
【0076】
即ち、動作伝達部79Bは、リンク部材80Bによる回動動作の伝達とカム溝811B−コロ83Bによる滑動動作の伝達とにより、エアシリンダー71Bから連結部材73Bの間で少なくとも二自由度の動作伝達を行っている。
【0077】
なお、左側の駆動ユニット70Bについては、スライドレール76Bが左斜め上側に傾斜しており、連結部材73Bの移動方向とカム板81Bの移動方向も左斜め上側に沿った方向となっている。
【0078】
[クランプ補助装置の動作]
クランプ補助装置50を用いたクランプ治具30に対する被縫製物Cの装着作業について説明する。
まず、
図6に示すように、被縫製物Cのサイズに応じて、クランプ治具30の治具側調節機構47により、ネジ474を緩めて上側取付穴471及び下側取付穴472に沿って、左右のクランプユニット40B,40Bの位置調節が行われる。
そして、クランプ補助装置50の基台60の左右の載置台631上にクランプ治具30のフレーム31を載置し(
図10参照)、
図2及び
図3に示すように、治具把持機構35により、基台60の後側支持板63に対してクランプ治具30を固定する。
【0079】
次に、
図9及び
図10に示すように、クランプ補助装置50の左右の駆動ユニット70B、70Bにおいて、伝達機構74Bの手回しハンドル78Bを操作して、スライドレール76Bを周面の中心線P回りに回動させて角度調節を行い、対応するクランプユニット40Bの直動軸462の被係止部462aと連結部材73Bの係止部734Bとの位置及び向きを一致させる。
【0080】
そして、クランプユニット40Bの直動軸462の被係止部462aと連結部材73Bの係止部734Bとを連結したら、クランプ治具30の各クランプユニット40A,40B,40Bの下側クランプ部材42A,42A,42B,42Bの上に被縫製物Cを配置して、各駆動ユニット70A,70B,70Bのエアシリンダーを作動させる。
【0081】
このとき、
図15及び
図16に示すように、各駆動ユニット70Bのエアシリンダー71Bのプランジャーが突出位置から退避位置に下降し、動作伝達部79Bのリンク部材80Bが回動して、カム板81Bを斜め下方に移動させる。
そして、カム板81Bのカム溝811B内のコロ83Bを通じて支持板84Bも斜め下方に追従移動する。その際、カム板81Bと支持板84Bは、傾斜角度が異なっている場合でも、コロ83Bがカム溝811B内で相対的に移動して移動方向のズレを許容しながら、カム板81Bから支持板84Bへの動作伝達を行うことができる。
これにより、連結部材73Bが斜め下側に移動し、クランプユニット40Bの直動軸462を斜め下方に引き下げ、下側クランプ部材42Bを解放位置からクランプ位置に切り替える。
また、駆動ユニット70Aのエアシリンダー71Aもプランジャーが突出位置から退避位置に下降し、連結部材73Aを介して、クランプユニット40Aの直動軸462を下方に引き下げ、下側クランプ部材42Aを解放位置からクランプ位置に切り替える。
従って、被縫製物Cは、各クランプユニット40A,40B,40Bによりクランプされる。
なお、クランプ治具30から被縫製物Cを取り外す際には、上記と逆の動作が行われる。
【0082】
その後、クランプ治具30の治具把持機構35を操作して、クランプ補助装置50の後側支持板63から取り外し、クランプ治具30をミシンにセットする。
ミシンは、例えば、クランプ治具30を周面の中心線Pを中心として任意の回動角度に回動させると共に、周面の中心線Pに沿った方向に任意に移動位置決め可能な移動機構を備え、クランプ治具30にクランプされた被縫製物Cに対して任意に針落ちを行うことが可能である。
これにより、予め定められた縫製パターンに従って被縫製物Cに対して縫製が行われる。
【0083】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記クランプ補助装置50では、左右の駆動ユニット70Bの伝達機構74Bが、連結部材73Bの動作方向を調節可能とする支持部75Bと、エアシリンダー71Bと連結部材73Bとの間で少なくとも二自由度の動作伝達が可能な動作伝達部79Bとを備えている。
このため、支持部75Bの連結部材73Bの動作方向とエアシリンダー71Bのプランジャーの動作方向とが異なる場合であっても、動作伝達部79Bがエアシリンダー71Bの出力を連結部材73Bに伝達することができ、クランプ治具30の上側クランプ部材41Bのクランプ位置と解放位置との切り替え動作を円滑に行うことが可能となる。
また、これにより、エアシリンダー71Bの配置の自由度が高くなり、基台60に固定装備することができるので、連結部材73Bの動作方向を調節する際にエアシリンダー71Bも移動させる必要がなくなり、調節作業の作業性が向上し、作業負担の軽減を図ることが可能となる。
さらに、エアシリンダー71Bの配置の自由度が高くなり、基台60に固定装備することができるので、装置の上方に配置する必要がなくなり、装置全体の小型化を図ることができる。また、調節作業時にエアシリンダー71Bは移動しないので、装置の設置スペースも広く確保する必要がなくなり、設置スペースの縮小化を図ることが可能となる。
【0084】
また、上記動作伝達部79Bは、溝カムとしてのカム板81Bとカムフォロアとしてのコロ83Bを有しているので、エアシリンダー71Bから連結部材73Bへの動作伝達をより円滑に行うことが可能となる。
【0085】
さらに、左右の駆動ユニット70Bの支持部75Bは、連結部材73Bを直動可能に支持するスライドレール76Bと、スライドレール76Bの回動により連結部材73Bの動作方向を調節する手回しハンドル78Bとを備え、カム板81Bは、エアシリンダー71Bの停止位置であるストロークエンドにおいて、スライドレール76Bの回動中心となる中心線Pと同心の円弧に沿ったカム溝811Bを有している。
このため、エアシリンダー71Bの停止させた状態で、スライドレール76Bの回動により連結部材73Bの動作方向を調節した場合に、連結部材73Bのスライドレール76Bに沿った移動が生じないことから、調節作業を容易且つ正確に行うことが可能となり、作業性の向上を図ることができる。
【0086】
[その他]
クランプ補助装置50の駆動ユニットの個体数は複数であれば、クランプ治具30のクランプユニットの個体数に応じて増減可能である。
また、両端に位置するクランプユニットは、その両方が連結部材73Bの位置調節を可能としているが、例えば、片側のみ調節可能としてもよい。
【0087】
また、駆動ユニット70Bにおいて、支持板84Bにコロ83Bを設け、カム板81Bにカム溝811Bを形成しているが、支持板84Bにカム溝811Bを形成し、カム板81Bにコロ83Bを設けてもよい。
さらには、エアシリンダー71Bと連結部材73Bとの間で動作伝達を行う動作伝達部は、二自由度以上の動作伝達が可能であれば、カムとカムフォロア以外の構成を使用しても良い。
例えば、動作伝達部は、回転動作と直線又は曲線軌跡に沿った移動動作の二自由度の動作伝達を行えることが望ましい。具体的には、カム板81Bと支持板84Bの間を、コロ83Bとカム板81B及び支持板84Bの移動方向のいずれにも交差する方向に沿ってコロ83Bを移動可能にガイドするスライドレール等で動作伝達しても良い。
【0088】
また、エアシリンダー71Bのプランジャーの移動方向やカム板81Bの移動方向は例示した方向に限定されない。
例えば、エアシリンダー71Bのプランジャーとカム板81Bとの間にはリンク部材80Bにより動作伝達を行う構成を例示しているが、エアシリンダー71Bのプランジャーをカム板81Bに固定的に連結し、Z軸方向に沿って往復移動するカム板81Bから支持板84Bへの動作伝達を行うことも可能である。
また、エアシリンダー71Bのプランジャーの移動方向をカム板81Bの移動方向に一致するように配置し、エアシリンダー71Bのプランジャーとカム板81Bを固定的に連結してもよい。