(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-2139(P2019-2139A)
(43)【公開日】2019年1月10日
(54)【発明の名称】鋼管杭のチャック装置
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20181207BHJP
E02D 13/02 20060101ALI20181207BHJP
E21B 7/20 20060101ALI20181207BHJP
【FI】
E02D7/20
E02D13/02
E21B7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-115099(P2017-115099)
(22)【出願日】2017年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】514024778
【氏名又は名称】株式会社みらい技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】598027847
【氏名又は名称】株式会社設計室ソイル
(71)【出願人】
【識別番号】517206580
【氏名又は名称】ダイオーワールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 清
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅一
【テーマコード(参考)】
2D050
2D129
【Fターム(参考)】
2D050AA07
2D050CB23
2D050DB03
2D050EE04
2D050EE08
2D129AB06
2D129EA02
2D129EB29
(57)【要約】
【課題】簡易な構造のものとすることができ、製造が容易で、コストの低減化が図れる鋼管杭のチャック装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る鋼管杭のチャック装置10は、天板13に透孔14を有する受筒12と、天板13の透孔14を挿通して上下動自在に設けられ、下部に下方に向けてすぼまる錐体部16Bを有する拡開部材16と、拡開部材16のテーパー面17と受筒12内壁面との間に、受筒12の径方向外方に移動可能に配置され、外側面が、チャックすべき鋼管杭18の内壁面に食い込み可能な凹凸面に形成された複数のクサビ部材22と、拡開部材16の下部に設けられ、クサビ部22を下側から保持する保持部材25と、各クサビ部材22を吊り下げ状態に保持すると共に、クサビ部材22の受筒12の径方向への移動をガイドするガイド部材30と、ガイド部材30と受筒12の天板13下面との間に配設された緩衝部材34とを具備することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を有する筒状をなし、前記天板に透孔を有する受筒と、
該受筒の前記天板の透孔を挿通して上下動自在に設けられ、下部に下方に向けてすぼまる錐体部を有し、上部にて、回転・圧入装置に連結可能な拡開部材と、
該拡開部材の前記錐体部の壁面たる各テーパー面と前記受筒内壁面との間に、前記拡開部材が押し下げられた際、前記テーパー面に押圧されることによって前記受筒の径方向外方に移動可能に配置され、外側面が、前記受筒内壁面との間に先端が挿入されるチャックすべき鋼管杭の内壁面に食い込み可能な凹凸面に形成された複数のクサビ部材と、
前記拡開部材の下部に設けられ、前記クサビ部材を下側から保持する保持部材と、
前記各クサビ部材を吊り下げ状態に保持すると共に、前記クサビ部材の前記受筒の径方向への移動をガイドするガイド部材と、
該ガイド部材と前記受筒の天板下面との間に配設された緩衝部材とを具備することを特徴とする鋼管杭のチャック装置。
【請求項2】
前記各クサビ部材に対応する前記錐体部のテーパー面が、前記錐体部の外壁面に溝状に形成されており、前記クサビ部材の内側面が、前記拡開部材のテーパー面に対応するテーパー面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭のチャック装置。
【請求項3】
前記クサビ部材の外側面が、前記内側面のテーパー面よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項2記載の鋼管杭のチャック装置。
【請求項4】
前記受筒および前記クサビ部材が、チャックすべき鋼管杭の直径に合わせて交換可能になっていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の鋼管杭のチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤強化のため、回転・圧入装置にチャックされて地中に打ち込まれる鋼管杭のチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のチャック装置として、特許文献1に示されるチャック装置がある。
このチャック装置は、駆動軸を上面に有しカム軸を下面に有する上部フランジと、該上部フランジに回動可能に連結され上記カム軸の周囲を囲む内筒と鋼管杭の挿入間隙を存して該内筒の外方に設けた外筒を有する下部フランジを具備し、該下部フランジの内筒に窓孔を形成し、上記上部フランジが回転した際上記カム軸のカム面により半径方向に押し出されるよう押圧コマを上記窓孔に挿入した構成が採用されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−169890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される鋼管杭のチャック装置では、上部フランジを回転させるという簡易な操作によって鋼管杭のチャックが行える利点がある。
しかしながら、特許文献1:特開2007−169890号公報のチャック装置では、下部フランジに対して上部フランジを回転させる構成、および下部フランジ下面側に外筒と内筒の二重筒を設ける構成を採用し、さらに、内筒に窓孔を設け、この窓孔内に押圧コマを配置する構成となっているので、構造が複雑となり、その製造が厄介で、コスト高となる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構造のものとすることができ、製造が容易で、コストの低減化が図れる鋼管杭のチャック装置を提供することにある。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る鋼管杭のチャック装置は、天板を有する筒状をなし、前記天板に透孔を有する受筒と、該受筒の前記天板の透孔を挿通して上下動自在に設けられ、下部に下方に向けてすぼまる錐体部を有し、上部にて、回転・圧入装置に連結可能な拡開部材と、該拡開部材の前記錐体部の壁面たるテーパー面と前記受筒内壁面との間に、前記拡開部材が押し下げられた際、前記テーパー面に押圧されることによって前記受筒の径方向外方に移動可能に配置され、外側面が、前記受筒内壁面との間に先端が挿入されるチャックすべき鋼管杭の内壁面に食い込み可能な凹凸面に形成された複数のクサビ部材と、前記拡開部材の下部に設けられ、前記クサビ部材を下側から保持する保持部材と、前記各クサビ部材を吊り下げ状態に保持すると共に、前記クサビ部材の前記受筒の径方向への移動をガイドするガイド部材と、該ガイド部材と前記受筒の天板下面との間に配設された緩衝部材とを具備することを特徴とする。
【0007】
前記各クサビ部材に対応する前記錐体部のテーパー面が、前記錐体部の外壁面に溝状に形成し、前記クサビ部材の内側面を、前記拡開部材のテーパー面に対応するテーパー面に形成すると好適である。
前記クサビ部材の外側面を、前記内側面のテーパー面よりも幅広に形成するとチャック力を増大でき好適である。
前記受筒および前記クサビ部材を、チャックすべき鋼管杭の直径に合わせて交換可能に形成できる。
【0008】
前記緩衝部材をゴム板にすることができる。
前記各クサビ部材の外周に凹溝を形成し、複数の前記クサビ部材の凹溝に亘って、伸縮可能なOリングを掛け渡すようにすると好適である。
前記受筒の天板の透孔を角孔に形成し、該角孔を挿通する前記拡開部材の部位を角柱に形成することができる。
前記クサビ部材を前記ガイド部材に吊り下げボルトを介して保持するようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受筒を一重構造にし、かつ回転カム構造を採用せず、単に拡開部材の上下動によるクサビ構造としたので、全体を簡易な構造のものとすることができ、製造が容易で、コストの低減化が図れる鋼管杭のチャック装置を提供できる。
また、部材を交換することで径の異なる鋼管に対応できるので利便性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】鋼管杭チャック前のチャック装置の断面図である。
【
図2】鋼管杭をチャックした状態のチャック装置の断面図である。
【
図4】角錐部(錐体部)におけるチャック装置の横断面図である。
【
図5】拡開部材の角柱部におけるチャック装置の横断面図である。
【
図10】クサビ部材と緩衝部材の組立説明図である。
【
図12】クサビ部材の集合物を受筒内に組み込んだ状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は本実施の形態における、鋼管杭チャック前のチャック装置10の断面図、
図2は鋼管杭チャック後のチャック装置10の断面図である。
図1、
図2において、12は受筒であり、天板13を有する筒状をなし、天板13には四角形等の角孔からなる透孔14が形成されている。
16は拡開部材であり、角柱状をなし、天板13の透孔14を挿通して上下動自在に設けられている。拡開部材16は、上部は、透孔14を挿通する角柱部16aに形成され、下部に下方に向けてすぼまる角錐部(錐体部)16bを有し、上端部に、チャック装置10にチャックされた鋼管杭18を地中に打ち込むための回転・圧入装置(図示せず)のアダプター20(
図2)に連結される連結部(連結フランジ)16cを有する。
なお、拡開部材16は円柱材を用いても良く、この場合には天板13の透孔14を円形孔とすれば同様である。
【0012】
連結部16cは、円板状をなし、アダプター20のフランジ部に連結ボルト21によって取り付けられる。連結部16cの上面には、
図3に示すように、回転・圧入装置への位置決め用と、同装置からの回転力伝達用の突起16dが設けられている。なお、回転・圧入装置への取付け構造は上記フランジと連結ボルト21に限られないことはもちろんである。
図4、
図5に示すように、拡開部材16における角錐部16は、角柱(四角柱)部材の各壁面を溝状に削ってテーパー面17(17a、17b、17c、17d)に形成することで角錐台状に形成されている。テーパー面17のテーパーの角度は
図3に示すように5〜10°程度が好適である。
【0013】
次に、22(22a、22b、22c、22d)はクサビ部材である。各クサビ部材22は、拡開部材16の角錐部16bの壁面たる各テーパー面17と、対応する受筒12内壁面との間に、拡開部材16が押し下げられた際、各テーパー面17に押圧されることによって受筒12の径方向外方に移動可能に配置されている。各クサビ部材22の、拡開部材16のテーパー面17に対向する基部は、溝状のテーパー面17に嵌り込むようにその幅が設定され、また各基部面(内側面)は、テーパー面17に対応するテーパー面に形成されている。
【0014】
このように、クサビ部材22がその基部において、溝状のテーパー面17に嵌り込むようにされていることで、拡開部材16が押し下げられる際、クサビ部材22と拡開部材16とが横方向にずれることがない。また、拡開部材16が押し下げられることによって、クサビ部材22は、テーパー面17により押動されて受筒12の径方向に移動するが、上記のように各基部面(内側面)が、テーパー面17に対応するテーパー面に形成されていることにより、クサビ部材22の外側面は、受筒12の内壁面と平行状態を保ったまま移動する。
【0015】
クサビ部材22の外側面は、受筒12内壁面との間に先端が挿入されるチャックすべき鋼管杭18の内壁面に沿う円弧面をなすと共に、鋼管杭18の内壁面に食い込み可能な凹凸面23(
図6)に形成されている。
この凹凸面23に形成されたクサビ部材22の外側面を、基部側よりも幅広に形成している。これにより、鋼管杭18の内壁面に広い範囲で食い込むので、鋼管杭18のチャック効果が増大する。
クサビ部材22は、硬質材料(例えばSKD11)を用いて、例えばロストワックス鋳造法により製造するのがコスト的に有利である。
【0016】
クサビ部材22は、拡開部材16の下面にボルトナット24によって固定されたクサビ受け(保持部材)25によって下側から支持され、上記位置に保持されるようになっている。ボルトナット24のナットは、ナットおよびボルトを貫通する止めピン26によって回り止めするようにすると、施工中の衝撃などによって、ナットが回転し、これによりクサビ受け25が外れてしまうのを防止でき、施工中にクサビの落下を防ぐことができるので安全である。
【0017】
また、各クサビ部材22は、円板状をなし、拡開部材16が挿通するガイド部材30によって吊り下げ状態に保持されている。
すなわち、各クサビ部材22上部には、頭部付きボルト31が固定されると共に、この頭部付きボルト31のボルト部が、ガイド部材30の、段付き溝32内を移動自在に案内されることで、各クサビ部材22は、ガイド部材30によって吊り下げ状態に保持されると共に、受筒12の径方向に移動可能とされている。
なお、頭部付きボルト31の頭部は、段付き溝32の段部に支持される。
また、クサビ部材22は頭部付きボルト31と一体化した形状で作成されたものでも良い。
【0018】
また、各クサビ部材22の外周に凹溝36が形成され、複数(4個)のクサビ部材22の凹溝36に亘って、伸縮可能なOリング37が掛け渡されている(
図1、
図2参照)。このOリング37の付勢力によって、常時は、各クサビ部材22は、中央方向(拡開部材方向)に集合するように付勢され、
図1に示すように、受筒12内壁面と各クサビ部材22の外側面との間に、鋼管杭18の先端部を挿入可能な空間Sが形成される。
【0019】
なお、Oリング37は径方向に拡縮性のあるC型リング(図示せず)などを用いても良く、また、必ずしも設けることを要しない。
この場合、例えば、各クサビ部材22の下部外周部にテーパー部(図示せず)を形成して、鋼管杭18先端がこのテーパー部に当接してクサビ部材22を内方に押動することによって、鋼管杭18を受筒12内に挿入可能なようにしてもよい。
次に、34は緩衝部材たるコイルスプリングであり、ガイド部材30と受筒12の天板13下面との間に配設されている。緩衝部材34は、施工中に回転・圧入装置から衝撃力が加わった場合に、ガイド部材、頭部付きボルト31への衝撃力を軽減する作用をし、これら部材の破損を防止している。なお、緩衝部材は、ゴム板(図示せず)等の弾性部材を用いることができる。
【0020】
鋼管杭18は、現在、外径が、89.1mm、101.6mm、114.3mm、139.8mm、165.2mm等の5種類ほどの大きさのものが用意されている。
本実施の形態に係るチャック装置10では、鋼管杭18の大きさに合わせて、受筒12および各クサビ部材22を5種類用意することで、対応する鋼管杭18用のチャック装置10を容易に組み立てて使用することが可能である。
【0021】
すなわち、まず
図9に示すように、用いるクサビ部材22として所要大きさのクサビ部材22を選択し、このクサビ部材22に頭部付きボルト31を螺着し、この頭部付きボルト31をガイド部材30の段付き溝32に挿入する。
次に、
図10に示すように、4つのクサビ部材22の凹溝36にOリング37を掛け渡して、4つのクサビ部材22の集合物を形成する。
一方、
図11に示すように、用いる受筒12として所要大きさの受筒12を選択し、この受筒12に、拡開部材16を挿通する。
【0022】
次いで、
図12に示すように、クサビ部材22の集合物を緩衝部材34と共に、受筒12の内壁と拡開部材16外壁との間の空間に組み込む。
そして、
図13に示すように、拡開部材16の下部に保持部材25をボルトナット24等の固定部材によって取り付けることでチャック装置10に組み立てることができる。
【0023】
本実施の形態に係るチャック装置10は上記のように構成されている。
このチャック装置10により鋼管杭18をチャックするには、まず、チャック装置10をボルト21等の固定具によって、アダプター20を介して回転・圧入装置に取り付ける。
次いで、
図2に示すように、受筒12内壁面とクサビ部材22の外側面との間の間隙Sに、鋼管杭18の先端がガイド部材30に当接するまで挿入する。
次に、回転・圧入装置の油圧機構(図示せず)によって拡開部材16を押し下げる。このときガイド部材30と鋼管杭18の先端とが当接しているので、クサビ部材の位置が保持されるので拡開部材16だけが押し込まれることとになり、各テーパー面17によって、各クサビ部材22がガイド部材30によって吊り下げられた状態のまま、受筒12の径方向外方に押動され、その外側面の凹凸面が鋼管杭18の内壁面に食い込み、また鋼管杭18はその状態で受筒12の内壁面に押圧されることから、鋼管杭18はチャック装置10によりチャックされることになる。
【0024】
なお、拡開部材16が下降されることにより、クサビ部材22が若干下降するが、直ちにその外側面が鋼管杭18の内壁面に当接するからその下降が停止され、さらに拡開部材16が下降することによって、外方に移動し、その外側面の凹凸面が鋼管杭18の内壁面に食い込み、鋼管杭18がチャックされることになる。受筒12は、クサビ部材22と共に鋼管杭18を挟圧すると共に、鋼管杭18のふくらみを防止する。
【0025】
上記のように、鋼管杭18をチャック装置10によってチャックした後、打撃・回転装置により、チャック装置10を介して回転力及び圧入力を鋼管杭18に加えることにより、鋼管杭18を地中に打ち込むことができる。
作業終了後、鋼管杭18のチャックを外すには、回転・圧入装置により拡開部材16を上昇させればよい。これにより、
図1に示すように、拡開部材16からのクサビ部材22への押動力が解除され、保持部材25によってクサビ部材22が受けられ、緩衝部材34、受筒12を含むチャック装置10全体が鋼管杭18から外れることになる。
【符号の説明】
【0026】
10 チャック装置、12 受筒、13 天板、14 透孔、16 拡開部材、17 テーパー面、18 鋼管杭、21 ボルト、22 クサビ部材、24 ボルトナット、25 保持部材、26 止めピン、30 ガイド部材、31 頭部付きボルト、32 段付き溝、34 緩衝部材、36 凹溝、37 Oリング