【解決手段】保持対象201の上面部を保持して持ち上げる保持システム100であって、保持対象201を保持する保持手段110と、保持手段110を上下移動自在に案内する案内手段120と、保持手段110と共に案内手段120を移動させる移動手段130と、案内手段120の下端部において垂れ下がった状態で保持された保持手段110の下端が保持対象201の上面より高くなるように案内手段120を移動させ、案内手段120を下降させて保持対象201を保持させる制御手段140とを備える保持システム100。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、保持対象の上面の高さ位置を正確に測定するためには高精度なセンサが必要になるが、高精度なセンサは振動などに対して弱く、高速度で移動する保持手段に適用することが困難な場合もある。また、正確に保持手段を下降させるためには高度な制御が必要となり、保持対象を保持するまでの時間が長くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、保持対象の上面の高さ位置が異なる場合でも、簡易的な制御により安全、確実に保持対象を保持することのできる保持システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つである保持システムは、保持対象の上面部を保持して持ち上げる保持システムであって、保持対象を保持する保持手段と、前記保持手段を上下移動自在に案内する案内手段と、前記保持手段と共に前記案内手段を移動させる移動手段と、前記案内手段の下端部において垂れ下がった状態で前記案内手段に保持された前記保持手段の下端が保持対象の上面より高くなるように前記移動手段が前記案内手段を移動させ、前記案内手段を下降させて前記保持手段に前記保持対象を保持させる制御手段とを備える。
【0008】
これにより、保持手段を上下移動自在で垂れ下がった状態とすることで、保持手段を正確な高さ位置に正確に移動させることなく保持対象を保持することができる。本明細書、および特許請求の範囲において、「垂れ下がる」とは、部材の上端部が保持され、保持された部分から鉛直下方に向かって延在している状態を意味するものとして使用している。
【0009】
また、保持対象の上面までの距離を非接触で検出するセンサを備え、前記制御手段は、複数の保持対象を順次保持するに際し、先に保持した保持対象に対する前記案内手段の高さ位置と次に保持する保持対象に対する前記案内手段の高さ位置とが同じになるように前記センサからの信号に基づき前記移動手段を制御して前記案内手段を下降させる制御をしてもよい。
【0010】
これによれば、精度の低いセンサを用いても、上面の高さ位置が異なる保持対象を順次保持していく場合でも移動手段の無駄な動きを減らすことができ、さらに簡易な制御で保持対象を安全に保持することが可能となる。
【0011】
また、前記制御手段は、複数の保持対象を個別に保持する際に、保持対象の高さにかかわらず、前記案内手段が同じ高さ位置となるように前記移動手段を制御して前記案内手段を下降させる制御をしてもよい。
【0012】
これによれば、上下方向において、保持対象の高さ位置の相違が保持手段の可動範囲以内であれば、センサを用いることなく簡易な制御で安全に保持対象を保持することが可能となる。
【0013】
また、前記案内手段は、前記移動手段に接続される基礎部材と、前記保持手段の外側の複数か所に垂れ下がった状態で前記基礎部材に取り付けられる鉛直部材とを備えてもよく、前記保持手段は、保持対象を保持する保持本体と、複数の前記鉛直部材に摺動可能に取り付けられ、固定された前記保持本体を前記鉛直部材に沿って案内する摺動部材とを備えてもよい。
【0014】
これによれば、垂れ下がった複数本の鉛直部材により保持手段がぶれることなく上下に案内されるとともに、保持手段をコンパクト化でき、小型の保持対象に対しても簡易な制御で安全に保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の保持システムによれば、簡易な制御で安全、確実に保持対象を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る保持システムの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明に係る保持システムの一例を示したものに過ぎない。従って本発明は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0018】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1は、保持システムを示す斜視図である。
図2は、保持手段の近傍を示す斜視図である。これらの図に示すように、保持システム100は、例えば錠剤の薬が複数個並べて個別に収容されるPTP(press through pack)シートが複数個積み上げられてなる保持対象群200から一つの保持対象201を持ち上げて他の容器202などに移載するピッキング動作を自動的に行う事ができるピッキングシステムである。本実施の形態の場合、保持システム100は、保持手段110と、案内手段120と、移動手段130と、制御手段140とを備えている。
【0020】
保持手段110は、保持対象201の上面部を保持する装置である。保持対象201は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、積み重ねた状態で提供されるPTPシートを例示している。保持手段110は、保持対象201の上面部を保持できる装置であれば特に限定されるものではない。例えば保持手段110としては、非接触式の吸着保持システム、接触式の吸着保持システム、静電気を用いた保持システム、チャック式の保持システムを挙示することができる。本実施の形態の場合、保持手段110は、接触式の吸着保持システムを例示している。
【0021】
具体的には保持手段110は、保持対象201の一平面を吸着保持することのできるノズル111を備えている。ノズル111は、柔軟性を有し伸縮自在な蛇腹状の柔軟部材112を先端に備えた管状の部材である。ノズル111は、可撓性を有するチューブ(図示省略)を介して真空ポンプ(図示省略)に接続されている。保持手段110が備えるノズル111の数は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、保持手段110は、2本のノズル111を備えている。ノズル111の位置関係も特に限定されるものではなく、提供される保持対象201の形状に合わせて配置が決定される。
【0022】
本実施の形態の場合、保持手段110は、保持対象201を保持する保持本体としてのノズル111と、ノズル111を保持する摺動部材113と、真空系に接続されるチューブが取り付けられノズル111と連通している接続部材114とを備えている。
【0023】
摺動部材113は、複数の鉛直部材121に摺動可能に架橋状に取り付けられ、固定された保持本体であるノズル111を鉛直部材121(後述)に沿って案内する部材である。本実施の形態の場合、摺動部材113は、ノズル111、および接続部材114が取り付けられる板状の梁部材115と、鉛直部材121と直接摺動する樹脂製のスリーブ116とを備えている。
【0024】
案内手段120は、保持手段110を上下移動自在に案内する部材である。案内手段120の構造は特に限定されるものではなく、案内手段120の数は単数でも複数でも構わないが、本実施の形態の場合、移動手段130に接続される基礎部材122と、保持手段110の外側の2箇所に垂れ下がった状態で基礎部材122に取り付けられる鉛直部材121とを備えている。
【0025】
基礎部材122は、鉛直部材121と移動手段130とを接続する構造部材である。本実施の形態の場合、基礎部材122は、移動手段130の構成部材としても機能するものであり、六角形の板状の部材である。
【0026】
鉛直部材121は、摺動部材113の上下方向の移動を案内する直動ガイドであり、形状は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、円筒、または丸棒で構成されている。また、下端部には、摺動部材113の移動を規制して鉛直部材121から摺動部材113が抜け落ちるのを防止する規制部材123が取り付けられている。
【0027】
鉛直部材121の最下面の高さ位置は、案内手段120の最上端に保持手段110が位置した場合の、保持手段110の最下面の高さ位置よりも高くなるように設定されている。これにより、保持手段110が保持対象201を保持する前に鉛直部材121が保持対象201の上端面に接触することを防止でき、保持対象201の鉛直部材121による破損を防止することができる。
【0028】
本実施の形態の場合、案内手段120は、駆動源を備えておらず、保持手段110は自重により下降を案内し、保持手段110が保持対象201の上面に当接し移動手段130により案内手段120が下降した場合、案内手段120の上端部に向けて移動する保持手段110を案内する。
【0029】
移動手段130は、案内手段120の上端部を支持し、保持手段110と共に案内手段120を移動させるいわゆるロボットである。移動手段130の種類は特に限定されるものではなく、案内手段120を上下方向にのみ往復動させる装置でもよい。また、移動手段130は、多関節ロボット、パラレルリンクロボットや、複数の直動機構が組み合わされて構成される関節を備えないロボットなどであってもよい。本実施の形態の場合、移動手段130としてパラレルリンクロボットを例示している。なお、本実施の形態の場合、パラレルリンクロボットが先端に備えるリンクの1つであるいわゆるプレートは、案内手段120の基礎部材122として機能している。
【0030】
図3は、制御手段の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御手段140は、移動手段130、および保持手段110に接続され、保持システム100の動作を制御する装置であって、移動制御部141と、保持制御部142とを備えている。制御手段140は、具体的に例えば、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに含まれる命令に従って、プロセッサが動作することにより、各処理を実行する装置、および、各処理を実行するハードウェア回路の少なくとも一方を備えた装置である。また、ハードウェア回路は、デジタル回路、および、アナログ回路の少なくとも一方を備えた回路である。
【0031】
移動制御部141は、案内手段120と共に保持手段110を所定の場所に移動するように移動手段130が備えるモータ等の駆動源を制御する処理部である。
【0032】
保持制御部142は、保持対象201を保持する、または保持している保持対象201を解放する制御を保持手段110に対して実行する処理部である。
【0033】
次に、移動制御部141、および保持制御部142の制御による保持システム100の動作について説明する。
【0034】
図4は、保持システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図5〜
図8は、それぞれ保持システムの動作の各段階を示す図である。まず、ピッキング位置に保持対象群200が搬入される(S101)。搬入方法は特に限定されるものではないが、例えば、コンベアなどにより保持対象群200が搬送されることによりピッキング位置に搬入される。
【0035】
次に、移動制御部141は、
図5に示すように、案内手段120の下端部において規制部材123により下降が規制され、鉛直部材121の下端部からさらに垂れ下がった状態で案内手段120に保持された保持手段110の下端が保持対象201の直上であって、保持対象201の上面より高い位置である第一位置に位置するように移動制御部141は案内手段120を移動させる制御を移動手段130に対して行う。第一位置の第一高さ位置H1は、搬入される保持対象群200の全種類を考慮し、全ての保持対象群200の内の最も高い高さ位置よりも垂れ下がった状態の保持手段110の最下面が上になるように基準高さ位置Bに対して予め定められている。基準高さ位置Bは、保持対象201に依存しない高さ位置であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、
図1に示すように、保持対象201を収容する容器が載置される高さ位置を基準高さ位置Bとしている。
【0036】
次に、移動制御部141は、
図6に示すように、案内手段120を第二高さ位置H2まで下降させる(S103)。第二高さ位置H2は、搬入される保持対象群200の全種類を考慮し、全ての保持対象群200の内の上面の最も高い高さ位置よりも基礎部材122から垂れ下がった状態で取り付けられている鉛直部材121の最下面が僅かに上になるように基準高さ位置Bに対して予め定められている。
【0037】
本実施の形態の場合、案内手段120に対する保持手段110のストロークは、保持対象201がピッキングされていない保持対象群200の初期状態において最上段の保持対象201に保持手段110が当接しても案内手段120の上端部まで到達せず、かつ保持対象201が順次ピッキングされ最後の1つになった場合でも保持手段110の最下面が最後の保持手段110を保持できる長さに設定されている。
【0038】
次に、保持制御部142は、バルブなどを開けて真空系とノズル111とを接続する等により保持手段110に保持対象201を吸着保持させる制御を行う(S104)。
【0039】
次に、移動制御部141は、
図7に示すように、第一高さ位置H1よりも高くなるように案内手段120を上昇させる(S105)。
【0040】
次に移動制御部141は、
図8に示すように、容器202の直上であって、保持対象201が容器202の上面に当接する位置に案内手段120を移動させる(S106)。保持制御部142は、バルブを閉めた後、ノズル111内を大気に解放することにより保持している保持対象201を解放し保持対象201を容器に収容する(S107)。保持対象201を解放する際の鉛直部材121の最下面の高さ位置は、容器202に収容される保持対象201を最大に積み上げた際の高さよりも、保持する物品の下面が上となる高さとなる位置に設定されることが好ましい。このように保持システム100によれば、保持対象201を移載する際にも、簡易な制御により保持対象201を落下させることなく、また、保持対象201を容器202等に押しつけることなく保持対象201を容器202等に載置することができ、また保持対象201を容器202内において積み上げることも可能となる。なお、保持対象201の種類、例えばある程度の高さから落下させても問題が生じないような保持対象201の場合、高さH1などにおいて保持対象201を解放しても構わない。
【0041】
搬入された保持対象201の移載が所定数に到達していない場合(S108No)、移動制御部141は、案内手段120を
図5に示す保持対象201の直上の第一高さ位置H1まで移動させ(S102)、案内手段120を
図6に示す第二高さ位置H2まで下降させる(S103)。
【0042】
次に、第一の種類の保持対象201の移載が終了した場合(S108Yes)であって、全ての移載作業が終了していない場合は(S109No)、新たな保持対象群200が搬入され(S101)、保持対象201の移載が繰り返される。一方、全ての作業が終了した場合は(S109Yes)制御手段140の制御は終了する。
【0043】
以上のように、保持対象群200の最上段から保持対象201を順次ピッキングすると、保持対象群200の高さが段階的に低くなっていくが、移動制御部141は、第一高さ位置H1、および第二高さ位置H2の2つの値を用いるだけで保持対象201を順次保持し、容器202等に移載することが可能となる。つまり、複数の保持対象201を個別に保持する際に、保持対象201の高さにかかわらず、案内手段120が同じ高さ位置である第二高さ位置H2となるように移動手段130を制御して案内手段120を下降させる制御をするだけで、保持対象201を順次移載できる。また、異なる種類の保持対象群200が搬入された場合も同様である。以上のように、簡易的な制御により保持対象201を安全かつ正確にピッキングすることが可能であるといえる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0045】
例えば、保持システム100は、保持対象の上面までの距離を非接触で検出するセンサ150を備え、制御手段140は、複数の保持対象を順次保持するに際し、先に保持した保持対象201に対する案内手段120の高さ位置と次に保持する保持対象201に対する案内手段120の高さ位置とが同じになるようにセンサ150からの信号に基づき移動手段を制御して案内手段120を下降させてもよい。
【0046】
具体的には、移動制御部141は、
図9に示すように、梁部材115の下面に取り付けたセンサ150から保持手段110の保持対象201上面までの距離を取得し、保持対象201の上面に対し第三高さ位置H3になるように案内手段120を下降させる制御を行う。なお、センサ150からの信号に基づき保持手段110が保持対象201と干渉すると判断された場合は、案内手段120をH1またはそれ以上に高くなるように制御した後案内手段120を下降させる。
【0047】
ここで、保持手段110が保持対象201に当接した状態において、第三高さ位置H3を、梁部材115が鉛直部材121の中間位置になるように、つまり保持手段110が保持対象201に当接していない状態で、鉛直部材121の下端部で垂れ下がっている状態において、基礎部材122の下端から保持手段110の下端までの距離の半分程度に設定されている。第三高さ位置H3をこのように設定することで、センサ150の精度が悪く、実際の距離よりも大幅に差が発生した場合でも、案内手段120に対する保持手段110の摺動によって発生した差をカバーして安全かつ確実に保持対象201を保持することができる。また、保持対象201の種類が変わることにより、センサ150の測定状態に差が生じた場合でも同様にいずれの種類の保持対象201も安全かつ確実に保持対象201を保持することが可能となる。
【0048】
また、案内手段120に対する保持手段110のストロークが、保持対象201が積み上げられた保持対象群200の高さより短い場合などにおいて、案内手段120が同じ高さ位置となるように移動手段130を制御して案内手段120を下降させ、保持対象群200の最上段から少なくとも一部であって前記ストロークが許容する範囲内の保持対象201を順次保持する。次に前記高さ位置よりも低い高さ位置に案内手段120を下降させ、保持対象群200の次の一部の保持対象201を順次保持するように制御手段140が制御してもかまわない。また、案内手段120を下降させる高さ位置は、基準高さ位置Bに対して決定してもよく、センサを用いて保持対象群200の最上段との距離に基づき決定してもよい。
【0049】
また、案内手段120は、鉛直部材121の規制部材123側に向かって保持手段110を付勢する付勢部材を備えても構わない。これにより、移動手段130により案内手段120が高速で移動する際に案内手段120に対して保持手段110が不本意に上下動することを抑制できる。