特開2019-214126(P2019-214126A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-214126複合成形部材および複合成形部材の製造方法、ならびに電子・電気部品および電子・電気部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214126(P2019-214126A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】複合成形部材および複合成形部材の製造方法、ならびに電子・電気部品および電子・電気部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20191122BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20191122BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20191122BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/26
   B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-203620(P2016-203620)
(22)【出願日】2016年10月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】谷口 義尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦明
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA03
4F202AD03
4F202AD20
4F202AD34
4F202AG03
4F202AR20
4F202CA01
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CQ01
4F206AA03
4F206AD03
4F206AD20
4F206AD34
4F206AG03
4F206AH33
4F206AR20
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】シクロオレフィン系樹脂を含有する成形樹脂部と金属部とを備える複合成形部材を提供する。
【解決手段】金属部20と成形樹脂部30とを備える複合成形部材10であって、金属部20と成形樹脂部30とが接合する接合部分BRを備え、金属部20における接合部分BRに位置する部分は銀を含有し、成形樹脂部30における接合部分BRに位置する部分はシクロオレフィン系樹脂を含有し、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離して、表出させた金属部20の面20Aについて表面分析を行ったときに、硫黄が検出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部と成形樹脂部とを備える複合成形部材であって、
前記金属部と前記成形樹脂部とが接合する接合部分を備え、
前記金属部における前記接合部分に位置する部分は銀を含有し、
前記成形樹脂部における前記接合部分に位置する部分はシクロオレフィン系樹脂を含有し、
前記接合部分に位置する前記金属部と前記成形樹脂部とを分離して、表出させた前記金属部の面について表面分析を行ったときに、硫黄が検出されること
を特徴とする複合成形部材。
【請求項2】
前記金属部における前記接合部分に位置する部分は銀系めっき層を備える、請求項1に記載の複合成形部材。
【請求項3】
前記金属部における前記接合部分に位置する部分以外の部分の面は硫黄含有物質を含む防錆処理層を備える、請求項1または2に記載の複合成形部材。
【請求項4】
前記硫黄含有物質は炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを含む、請求項3に記載の複合成形部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載される複合成形部材の製造方法であって、
前記金属部における前記接合部分となるべき部分の面に炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを供給してアルカンチオール層を形成するチオール処理工程と、
前記チオール処理工程を経た前記金属部を金型内に配置して、シクロオレフィン系樹脂を含む成形材料を前記金型内に供給・成形して前記接合部分を備える前記複合成形部材を得る成形工程と
を備える複合成形部材の製造方法。
【請求項6】
前記チオール処理工程では、前記金属部における前記接合部分となるべき部分の面以外の部分の面にも前記アルカンチオール層を形成し、前記アルカンチオール層を前記金属部の防錆処理層とする、請求項5に記載の複合成形部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載される複合成形部材を備えることを特徴とする電子・電気部品。
【請求項8】
請求項5または6に記載される複合成形部材の製造方法により製造された複合成形部材を備えて形成されることを特徴とする電子・電気部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形部材および複合成形部材の製造方法、ならびに上記の複合成形部材を備える電子・電気部品および上記の複合成形部材の製造方法により製造された複合成形部材を備えて形成される電子・電気部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出して電気的接続部を形成する金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法であって、予め金属端子の板幅側の端部に樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状を少なくとも1箇所設け、該溝形状が前記金属端子の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状を少なくとも1つ有する形態とし、溶融樹脂が凝固する際の体積変化の現象を利用して前記金属端子と前記樹脂とを前記溝形状の内部で部分的に密着させて気密性を向上させる、金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−101394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、金属部と成形樹脂部とを備える複合成形部材は、金属部と樹脂成型部とを適切に接合させることが容易でなく、複雑な構造とすることが求められる場合がある。特に、成形樹脂部がシクロオレフィン系樹脂を含有する場合には、シクロオレフィン系樹脂が金属部を構成する金属と相互作用が生じにくいため、金属部と成形樹脂部とが適切に接合した複合成形部材を形成することは特に困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、シクロオレフィン系樹脂を含有する成形樹脂部と金属部とを備える複合成形部材を提供することを目的とする。本発明は、上記の複合成形部材の製造方法、上記の複合成形部材を備える電子・電気部品、および上記の複合成形部材を備えて形成される電子・電気部品の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために提供される本発明は、一態様において、金属部と成形樹脂部とを備える複合成形部材であって、前記金属部と前記成形樹脂部とが接合する接合部分を備え、前記金属部における前記接合部分に位置する部分は銀を含有し、前記成形樹脂部における前記接合部分に位置する部分はシクロオレフィン系樹脂を含有し、前記接合部分に位置する前記金属部と前記成形樹脂部とを分離して、表出させた前記金属部の面について表面分析を行ったときに、硫黄が検出されることを特徴とする複合成形部材である。
【0007】
成形樹脂部がシクロオレフィン系樹脂を含有する場合であっても、金属部における接合部分に位置する部分に銀を含有させて、その銀との相互作用しやすい硫黄を含む物質を接合部分に存在させることにより、接合部分の接合強度を高めることができる。
【0008】
前記金属部における前記接合部分に位置する部分は銀系めっき層を備えていてもよい。この場合には、金属部を構成する基材が銀を含有しない場合(例えば銅系材料から成る場合が例示される。)であっても、接合部分の接合強度を高めることが可能となる。
【0009】
前記金属部における前記接合部分に位置する部分以外の部分の面は硫黄含有物質を含む防錆処理層を備えていてもよい。この防錆処理層は、接合部分に位置する硫黄を含有する物質を与える物質と同時に形成することが可能である。
【0010】
前記硫黄含有物質は炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを含んでいてもよい。炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールに基づく物質は、接合部分において金属部と成形樹脂部との接合を担う物質として機能することができる。また、炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールに基づく物質は防錆処理層としても機能することができる。
【0011】
本発明は、他の一態様として、上記の炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを用いる複合成形部材の製造方法であって、前記金属部における前記接合部分となるべき部分の面に炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを供給してアルカンチオール層を形成するチオール処理工程と、前記チオール処理工程を経た前記金属部を金型内に配置して、シクロオレフィン系樹脂を含む成形材料を前記金型内に供給・成形して前記接合部分を備える前記複合成形部材を得る成形工程とを備える複合成形部材の製造方法を提供する。
【0012】
このような製造方法を採用することにより、上記の本発明の一態様に係る複合成形部材を効率的に製造することができる。
【0013】
前記チオール処理工程では、前記金属部における前記接合部分となるべき部分の面以外の部分の面にも前記アルカンチオール層を形成し、前記アルカンチオール層を前記金属部の防錆処理層とすることが、接合部分の接続強度を高めつつ金属部の耐食性を高める観点から好ましい。
【0014】
本発明は、別の一態様として、上記の本発明の一態様に係る複合成形部材を備えることを特徴とする電子・電気部品を提供する。本発明は、また別の一態様として、上記の本発明の一態様に係る複合成形部材の製造方法により製造された複合成形部材を備えて形成されることを特徴とする電子・電気部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シクロオレフィン系樹脂を含有する成形樹脂部と金属部とを備える複合成形部材が提供される。また、本発明により、上記の複合成形部材の製造方法も提供される。さらに、本発明により、上記の複合成形部材を備える電子・電気部品、および上記の複合成形部材を備えて形成される電子・電気部品の製造方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る複合成形部材を模式的に示す部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る複合成形部材において、接合部分に位置する金属部と成形樹脂部とを分離させた状態を模式的に示す部分断面図である。
図3】接合部分に位置する金属部と成形樹脂部とを分離して、表出した金属部の面について表面分析(ワイドスキャン)を行った結果を示す図である。
図4】接合部分に位置する金属部と成形樹脂部とを分離して、表出した金属部の面について表面分析(ナロースキャン)を行った結果を示す図である。
図5】接合部分に位置する金属部と成形樹脂部とを分離して、表出した成形樹脂部の面について表面分析(ワイドスキャン)を行った結果を示す図である。
図6】接合部分に位置する金属部と成形樹脂部とを分離して、表出した成形樹脂部の面について表面分析(ナロースキャン)を行った結果を示す図である。
図7】成形樹脂部の面について表面分析を行った結果(ワイドスキャン)を示す図である。
図8】成形樹脂部の面について表面分析を行った結果(ナロースキャン)を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る複合成形部材の製造方法を説明するための図であって、チオール処理工程が実施される前の状態を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る複合成形部材の製造方法を説明するための図であって、チオール処理工程が実施された後の状態を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る複合成形部材の製造方法を説明するための図であって、成形工程の途中の状態(成形材料供給前)を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係る複合成形部材の製造方法を説明するための図であって、成形工程の途中の状態(成形材料供給後)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合成形部材を模式的に示す部分断面図である。
【0019】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る複合成形部材10は、金属部20と成形樹脂部30とを備える複合成形部材であって、金属部20と成形樹脂部30とが接合する接合部分BRを備える。
【0020】
金属部20は、例えば銅系材料などの導電性材料からなる基材21と、基材21の上に設けられた銀系めっき層22と、銀系めっき層22の上に設けられた防錆処理層23とを備える。なお、図1に示される各構成要素の厚さは、各構成要素の現実の厚さとは異なり、薄い層を厚く示している。限定されない例示として、銀系めっき層22の厚さは数μmであり、防錆処理層23の厚さは数nmである。
【0021】
成形樹脂部30は、シクロオレフィン系樹脂からなる。シクロオレフィン系樹脂とは、シクロオレフィンをモノマーの少なくとも一種として含む重合体を主成分とする材料である。上記の重合体は、単独重合体(開環重合体)であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体である場合においてシクロオレフィン以外のオレフィンは限定されない。エチレン、プロピレンなど任意のオレフィンを用いてもよい。上記の重合体に関する製品の具体例は次のとおりである。ノルボルネン誘導体の水素化開環メタセシス重合型の製品として、日本ゼオン社製「ZEONEX(登録商標)」、同社製「ZEONOR(登録商標)」、JSR社製「ARTON(登録商標)」などが例示される。ノルボルネン誘導体のエチレンとの付加共重合型の製品として、三井化学株式会社製「APEL(登録商標)」、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(登録商標)」などが例示される。シクロオレフィン系樹脂は上記の重合体以外の重合体を含有してもよい。また、シリカフィラーのような重合体以外の成分を含有していてもよい。
【0022】
図2に示されるように、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離して、表出させた金属部20の面20Aについて表面分析を行ったときに、硫黄(S)が検出される。表面分析として、例えばX線光電子分光法(XPS)による分析が挙げられる。この硫黄(S)は、金属部20を構成する金属系材料(銀系めっき層22)に由来するものでなく、また、成形樹脂部30を構成するシクロオレフィン系樹脂に由来するものでもない。
【0023】
図3は、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離して、表出させた金属部20の面20Aについて表面分析(ワイドスキャン)を行った結果を示す図であり、図4は、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離して、表出させた金属部20の面20Aについて表面分析(ナロースキャン)を行った結果を示す図である。
【0024】
図3および図4に示されるように、表出させた金属部の面20Aには、SOの状態にあると推測される硫黄(S)が検出される。また、金属部20が銀系めっき層22を備えることから、銀(Ag)も検出される。銀系めっき層22が含む銀(Ag)は硫黄(S)と相互作用しやすいため、金属部20の表面に存在する銀(Ag)と硫黄(S)とが相互作用することに基づき、金属部20と成形樹脂部30との接合強度が高まるものと推測される。
【0025】
参考のため、以下に、表出させた金属部20の面20A以外の部分を表面分析した結果についても示す。図5は、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離して、表出させた成形樹脂部30の面30Aについて表面分析(ワイドスキャン)を行った結果を示す図である。図6は、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離して、表出させた成形樹脂部30の面30Aについて表面分析(ワイドスキャン)を行った結果を示す図である。図5および図6に示されるように、表出させた成形樹脂部30の面30Aには、硫黄(S)はごくわずかに検出されるだけである。したがって、接合部分BRに位置する金属部20と成形樹脂部30とを分離したときに、多くの硫黄(S)は金属部20側に残り、成形樹脂部30に付着した硫黄(S)はわずかであったことが理解される。
【0026】
なお、図7および図8に示されるように、成形樹脂部30における接合部分BRに位置する部分以外の部分の面、例えば、図2に示される接成形樹脂部30における金属部20に対向する側とは反対側の面30Bを表面分析しても、硫黄(S)は検出されない。すなわち、成形樹脂部30を構成するシクロオレフィン系樹脂は、硫黄(S)を実質的に含有しない。接成形樹脂部30における金属部20に対向する側とは反対側の面30Bの表面分析において検出されるケイ素(Si)は、成形樹脂部30を形成する際に用いられた離型剤に由来する。
【0027】
金属部20における接合部分BRに位置する部分以外の部分の面は硫黄含有物質を含む防錆処理層23を備える。防錆処理層23は、銀系めっき層22を酸化などに由来する変色や腐食から保護することができる。防錆処理層23は、好ましい一例として、炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを含む。上記のn−アルカンチオールのチオール基は、銀系めっき層22の銀(Ag)と相互作用しやすいため、上記のn−アルカンチオールは比較的強固に銀系めっき層22に付着することができる。そして、上記のn−アルカンチオールのアルキル基は、疎水性を有するため、銀系めっき層22を構成する金属系材料と水分との接触を抑制することができる。したがって、上記のn−アルカンチオールは、銀系めっき層22の防錆処理層23を構成する材料の一種として好ましい。
【0028】
また、上記のn−アルカンチオールのアルキル基は、成形樹脂部30を構成するシクロオレフィン系樹脂との親和性に優れるため、上記のn−アルカンチオールまたはこれに基づく物質が接合部分BRに位置することにより、チオール基に由来する部分が銀系めっき層22の銀(Ag)と相互作用し、アルキル基に由来する部分が成形樹脂部30のシクロオレフィン系樹脂と相互作用して、接合部分BRに位置する銀系めっき層22と成形樹脂部30との接合を積極的に支援している、あるいは担っている可能性がある。
【0029】
それゆえ、後述するように、複合成形部材10を製造する際に、銀系めっき層22における接合部分BRとなるべき部分にも上記のn−アルカンチオールを含む層を設けておいて、その層が設けられている銀系めっき層22の上に成形樹脂部30を形成することにより、接合部分BRに位置する銀系めっき層22と成形樹脂部30との接合強度が高い複合成形部材10を得ることが容易となる。防錆処理層23を構成する材料としての適合性および銀系めっき層22における接合部分BRとなるべき部分に設けられる層を構成する材料としての適合性の双方に優れる観点から、上記のn−アルカンチオールの炭素数は、10以上22以下であることが好ましい場合があり、12以上20以下であることがより好ましい場合があり、14以上18以下であることが特に好ましい場合がある。
【0030】
上記の本発明の一実施形態に係る複合成形部材10の製造方法は限定されない。次に説明する方法により製造すれば、複合成形部材10を効率的に製造することが可能である。
【0031】
図9は、本発明の一実施形態に係る複合成形部材10の製造方法を説明するための図であって、チオール処理工程が実施される前の状態を示す図である。図10は、本発明の一実施形態に係る複合成形部材10の製造方法を説明するための図であって、チオール処理工程が実施された後の状態を示す図である。図11は、本発明の一実施形態に係る複合成形部材10の製造方法を説明するための図であって、成形工程の途中の状態(成形材料30R供給前)を示す図である。図12は、本発明の一実施形態に係る複合成形部材10の製造方法を説明するための図であって、成形工程の途中の状態(成形材料30R供給後)を示す図である。
【0032】
本発明の一実施形態に係る複合成形部材10の製造方法は、前述の炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを用いるチオール処理工程と、シクロオレフィン系樹脂を含む成形材料を用いる成形工程とを備える。
【0033】
まず、金属部20を用意する(図9)。金属部20は、少なくとも接合部分BRとなる部分については、銀を含有する材料からなる。図9に示される金属部20は、表面が銀系めっき層22の面からなる。金属部20全体が銀含有材料から構成されていてもよいが、機械特性や供給安定性を高める観点から、金属部20は、前述のように、銅系材料などからなる基材21と銀系めっき層22とを備えることが好ましい。
【0034】
チオール処理工程では、金属部20における接合部分BRとなるべき部分の面(銀系めっき層22の面からなる。)に、前述の炭素数が6以上26以下のn−アルカンチオールを供給してアルカンチオール層を形成する(図10)。上記のn−アルカンチオールを銀系めっき層22の面に供給する方法は任意である。上記のn−アルカンチオールを含有する液体を用意し、金属部20全体をその液体に浸漬させてもよいし、金属部20の所望の面に上記の液体を塗布してもよい。上記のn−アルカンチオールの蒸気を含む雰囲気に金属部20の所望の面を曝してもよい。こうして上記のn−アルカンチオールが供給された銀系めっき層22の面では、上記のn−アルカンチオールにおけるチオール基と、銀系めっき層22の面に位置する銀(Ag)との相互作用が生じて、アルカンチオール層が形成される。アルカンチオール層は、実質的に単分子層となる場合もある。上記のn−アルカンチオールを銀系めっき層22の面に供給した後、必要に応じて上記のn−アルカンチオールが供給された銀系めっき層22の面を加熱して、上記のn−アルカンチオールにおけるチオール基と、銀系めっき層22の面に位置する銀(Ag)との相互作用を促進して、アルカンチオール層をより確実に銀系めっき層22の面に形成してもよい。
【0035】
このチオール処理工程では、金属部20における接合部分BRとなるべき部分の面以外の部分の面にも上記のアルカンチオール層を形成し、アルカンチオール層を金属部20の防錆処理層23としてもよい(図10)。
【0036】
成形工程では、まず、上記のチオール処理工程を経た金属部20を金型40内に配置する(図11)。金型40内には、金属部20が配置された状態においても、キャビティ40Cが存在する。図11に示されるように、キャビティ40Cの一部は、金属部20の面によって画成される。このキャビティ40Cを画成する金属部20の面が、複合成形部材10における金属部20の接合部分BRに位置する部分の面となる。この金型40のキャビティ40C内に、流動性が高まった状態にあるシクロオレフィン系樹脂を含む成形材料30Rを供給し(図12)、その後、成形材料30Rの流動性を低下させることによりこれを成形して、キャビティ40C内に成形樹脂部30を形成する。通常、成形材料30Rの流動性の制御は、成形材料30Rの温度を変化させることによって行われる。こうして、金属部20と成形樹脂部30との接合部分BRを備える複合成形部材10が得られる(図1)。
【0037】
本発明の一実施形態に係る電子・電気部品は、上記の製造方法により製造された複合成形部材10を備える。複合成形部材10は、前述のように、金属部20と成形樹脂部30との接合部分BRの接合強度が高いため、成形樹脂部30を構成するシクロオレフィン系樹脂の透明性や水蒸気バリア性を電子・電気部品に活かすことができる。例えば、発光素子や受光素子を備えた電子・電気部品について、これらの素子を露出させることなくシクロオレフィン系樹脂により保護された状態で配置することが可能である。また、金属部20と成形樹脂部30とによって画成される閉空間に素子を配置したり、金属部20上に設けられた素子を封止するように成形樹脂部30を配置したりすることにより、電気・電子部品に防湿性や防水性を付与することも可能である。
【0038】
上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0040】
金属部(表面処理が施されているものを含む。)を構成する部材として下記の複数種類の部材を用意し、成形材料として下記の複数種類の材料を用意した。
【0041】
(金属部)
部材1:銀めっき層を備える導電部材であって、銀めっき層の上には、1−ヘキサデカンチオールによる表面処理層が形成されている部材
部材2:銀めっき層を備える導電部材であって、銀めっき層の上に、エキシマUVランプによる照射処理を行った後、1−ヘキサデカンによる表面処理層が形成されている部材
部材3:銀めっき層を備える導電部材であって、銀めっき層の上には、ベンゾトリアゾールによる表面処理層が形成されている部材
部材4:黄銅からなる部材
部材5:アルミニウム合金からなる部材
【0042】
(成形材料)
樹脂1:液晶ポリマー(LCP)
樹脂2:ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
樹脂3:ポリフェニレンサルファイド(PPS)
樹脂4:ポリブチレンテレフタレート(PBT)
樹脂5:芳香族ポリアミド(PA6T・PA9T)
樹脂6:シクロオレフィン系樹脂(COP・COC)
【0043】
上記の部材を金型内に配置して、成形材料の射出成形を行って、複合成形部材が得られるか否かについて確認した。その結果を表1に示す。表1内の「A」は、複合成形部材が得られたことを意味し、「B」は、各部材からなる金属部と成形樹脂部とが適切に接合せず、複合成形部材が得られなかったことを意味する。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示されるように、部材1からなる金属部とおよび樹脂6を用いたときのみ成形樹脂部とを備える複合成形部材が適切に得られた。
【符号の説明】
【0046】
10 複合成形部材
BR 接合部分
20 金属部
21 基材
22 銀系めっき層
23 防錆処理層
20A 表出させた金属部20の面
30 成形樹脂部
30A 表出させた成形樹脂部30の面
30B 接成形樹脂部30における金属部20に対向する側とは反対側の面
30R 成形材料
40 金型
40C キャビティ
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