【解決手段】本発明に係る駆動ユニット10は、懸架装置1に支持されて車輪2近傍に配置される駆動ユニット10であって、駆動力を生成する駆動モータ20と、駆動モータ20の出力軸の回転速度を減速させて車輪に伝達する減速機30と、車輪2に制動力を付与するブレーキユニット50と、を備え、減速機30は、少なくとも一部が車輪2のホイール7内に配置され、駆動モータ20は、減速機30に対し車幅方向内側に固定されてホイール7外に位置し、ブレーキユニット50は、減速機30に対し車幅方向外側に設けられてホイール7内に位置していることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。また、各実施形態では、四輪車両の左後輪を駆動させるための駆動ユニットに適用した例を挙げて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
最初に、車両に設けられた懸架装置1について説明する。
図1に示すように、懸架装置1は、駆動ユニット10を介して車輪2を支持するための装置である。懸架装置1は、互いに上下に離間して配置されるアッパアーム3及びロアアーム4と、アッパアーム3の上方に設けられるスプリング5及びダンパ6とを備えている。
本実施形態では、駆動ユニット10を支持するため、アッパアーム3の左端部に、前後方向中央部が切り欠かれて平面視で凹状の凹部3aが形成されている(
図2A参照)。また、ロアアーム4の上面に、下方に窪む窪み4aが形成されている(
図2B参照)。
【0011】
駆動ユニット10は、装着される車輪2に駆動力を付与して車輪2を駆動させるための装置である。
図1に示すように、駆動ユニット10は、車輪2の駆動力を生成する駆動モータ20(第1駆動モータ21,第2駆動モータ22)と、駆動モータ20の出力軸の回転速度を減速させて車輪2に伝達する減速機30と、車輪2に制動力を付与するブレーキユニット50と、転舵用モータ62を有し減速機30を回動させて車輪2を転舵させる転舵ユニット60とを備えている。
【0012】
減速機30は、箱状の減速機用ハウジング31と、減速機用ハウジング31内に収容された複合型遊星歯車機構38(
図3参照)とを備えている。
【0013】
減速機用ハウジング31は、側面視で円形状に形成されてホイール7の形状に対応している。減速機用ハウジング31は、外径がホイール7のリム7aよりも小さく形成され、ホイール7内に配置可能となっている。
減速機用ハウジング31の上面には、上方に延出する上側連結部32が設けられている。なお、上側連結部32は、減速機用ハウジング31の上面に設置された転舵ユニット60により支持されている。また、減速機用ハウジング31の下面には、下方に延出する下側連結部33が設けられている。
【0014】
図2Aに示すように、上側連結部32の上端には、前後方向に延在する円柱状の連結軸34が形成されている。そして、上側連結部32の上端は、アッパアーム3の凹部3a内に配置され、連結軸34の前端と後端がアッパアーム3に支持されている。このため、上側連結部32は、連結軸34の中心軸回りに回動自在となっている一方で、上側連結部32の中心軸O1回りに回動不能となっている。
【0015】
図2Bに示すように、下側連結部33の下端には、球体35が形成されている。この球体35は、ロアアーム4の窪み4a内に嵌め込まれたブラケット4bに支持されている。よって、減速機30の下側は、ボールジョイント構造(球体35、ブラケット4b)により転動自在に支持されている。なお、球体35の中心は、上側連結部32の中心軸O1上に位置している。
以上から、駆動ユニット10は、アッパアーム3及びロアアーム4の左端側に支持され、車体の車幅方向外側寄りに配置されている。
【0016】
図1に示すように、減速機用ハウジング31の左側面(車幅方向外側面)には、左右方向に延在する出力軸36が設けられている。
出力軸36の左端には、着脱自在にホイール7のハブ7bが連結している。よって、車輪2は、出力軸36と一体になっており、出力軸36の中心軸O2(
図3参照)回りに回転可能に支持されている。
図3に示すように、出力軸36は、減速機用ハウジング31の左側面を貫通するとともに回動自在に減速機用ハウジング31に支持されている。出力軸36の右端には、複合型遊星歯車機構38の後述する第2サンギヤ46が形成されている。
なお、複合型遊星歯車機構38の詳細については後述する。
【0017】
図1に示すように、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22は、減速機用ハウジング31の右側面(車幅方向内側面)に固定され、減速機30の右方に配置されている。また、第1駆動モータ21の出力軸21a及び第2駆動モータ22の出力軸22bは、減速機用ハウジング31の右側面を貫通して先端が減速機用ハウジング31内に位置している(
図3参照)。
【0018】
図1に示すように、ブレーキユニット50は、出力軸36に固定されたブレーキディスク51と、減速機用ハウジング31の左側面に固定されたブレーキキャリパ52と、を備えており、減速機用ハウジング31の左側面の左方に配置されている。
【0019】
また、駆動ユニット10は、車輪2との関係において、ブレーキユニット50と減速機30の左部がホイール7内に配置されている。よって、減速機30の右部と駆動モータ20(第1駆動モータ21,第2駆動モータ22)は、ホイール7に対して車幅方向内側に位置し、ホイール7外に配置されている。
【0020】
図3に示すように、複合型遊星歯車機構38は、車輪2に伝達される駆動トルクを高めるための機構である。複合型遊星歯車機構38は、減速機用ハウジング31内において右寄りに配置された第1遊星歯車機構40と、第1遊星歯車機構40の左側に配置された第2遊星歯車機構45と、第1遊星歯車機構40及び第2遊星歯車機構45の間に介在する中間円形板39とを備えている。
【0021】
第1遊星歯車機構40は、駆動モータ20の回転軸の回転数を低減してトルクを高めるためのものである。
第1遊星歯車機構40は、出力軸36と同軸上に配置された第1サンギヤ41と、中間円形板39の右側に固定された第1インタナルギヤ42と、第1サンギヤ41と第1インタナルギヤ42との間に介在する複数の第1プラネタリギヤ43とを備えている。
第1サンギヤ41の右面には、右方に延出する延出部41aと、第1駆動ギヤ23と噛合する第1伝達用ギヤ44が設けられている。各第1プラネタリギヤ43は、後述する伝達板26の図示しないピンに軸支され、中心軸P1回りに回転自在となっている。
【0022】
第2遊星歯車機構45は、中間円形板39の回転数を増速し、車輪2に伝達するトルクを調整するためのものである。
第2遊星歯車機構45は、出力軸36の右端に一体に形成された第2サンギヤ46と、減速機用ハウジング31に固定された第2インタナルギヤ47と、第2サンギヤ46と第2インタナルギヤ47との間に介在する複数の第2プラネタリギヤ48とを備えている。
各第2プラネタリギヤ48は、中間円形板39に設けられた図示しないピン(
図3においてピンの中心軸P2のみ図示)に軸支され、中心軸P2回りに回転自在となっている。
【0023】
また、減速機用ハウジング31内には、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22の駆動力を第1遊星歯車機構40に伝達するための構成が設けられている。具体的には、第1駆動モータ21の出力軸21aに連結する第1駆動ギヤ23と、第2駆動モータ22の出力軸22aに連結する第2駆動ギヤ24と、第2駆動ギヤ24に噛合する伝達ギヤ25と、伝達ギヤ25と一体に回転する環状の伝達板26と、が減速機用ハウジング31内に設けられている。なお、伝達板26には、左方に突出するピン(
図3においてピンを図示せずにピンの中心軸P1のみ図示。)が設けられている。
【0024】
図4に示すように、転舵ユニット60は、減速機30の上方に固定された箱状の転舵用ハウジング61と、転舵用モータ62と、ウォームギヤ63と、転舵用遊星歯車機構65と、を備えている。
【0025】
転舵用ハウジング61は、上壁に貫通孔61aが形成され、その貫通孔61a内に上側連結部32の下部が挿入されている。転舵用モータ62は、転舵用ハウジング61の右側面に固定されている。このため、転舵用モータ62は、ホイール7に対し車幅方向内側に位置し、ホイール7外に位置している(
図1参照)。
【0026】
ウォームギヤ63は、転舵用モータ62の出力軸62aと連結するウォーム63aと、ウォーム63aと噛合するウォームホィール63bとを備え、転舵用モータ62の出力軸62aの回転数を低減させる減速機である。
ウォームホィール63bの上面には、後述する転舵用サンギヤ66を支持する円形状の支持板64が固定されている。この支持板64の上面には、特に図示しないが上方に突出する複数のピン(
図4においてピンの中心軸P3のみ図示)が設けられている。
【0027】
転舵用遊星歯車機構65は、上側連結部32の下端に一体に形成された転舵用サンギヤ66と、転舵用ハウジング61の内面61bに固定された転舵用インタナルギヤ67と、転舵用サンギヤ66と転舵用インタナルギヤ67との間に介在する複数の転舵用プラネタリギヤ68とを備えている。各転舵用プラネタリギヤ68は、支持板64に設けられたピン(不図示)に軸支され、中心軸P3回りに回転自在となっている。
【0028】
つぎに、駆動モータ20の作動時の動作を説明する。
車両の高速走行時、第1駆動モータ21のみが作動するように構成されている。これによれば、第1サンギヤ41が回転し、各第1プラネタリギヤ43が図示しないピンの中心軸P1回りに回転(自転)し、第1インタナルギヤ42(中間円形板39)が回転する。そして、中間円形板39が回転すると、各第2プラネタリギヤ48は、出力軸36の中心軸O2回りに移動(公転)するとともに、図示しないピンの中心軸P2回りに回転(自転)し、第2サンギヤ46及び出力軸36が回転する。これにより、出力軸36と一体な車輪2が転動し、車両が前進する。
【0029】
一方で、車両の低速走行時、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22の両方が作動するように構成されている。これによれば、第1サンギヤ41が回転するとともに、各第1プラネタリギヤ43が出力軸36の中心軸O2回りに移動(公転)しながら、図示しないピンの中心軸P1回りに回転(自転)し、第1インタナルギヤ42(中間円形板39)が回転する。よって、車両の高速走行時よりも車輪2に伝達されるトルク値が大きくなり、車輪2が確実に駆動する。
【0030】
次に転舵用モータ62の作動時の動作を説明する。
転舵用モータ62が作動すると、ウォームギヤ63により減速されて支持板64が回転する。これにより、複数の転舵用プラネタリギヤ68は、上側連結部32の中心軸O1回りに移動(公転)しながら、図示しないピンの中心軸P3回りに回転(自転)する。ここで、転舵用サンギヤ66は、上側連結部32と一体に形成されて中心軸O1回りに回転しないため、転舵用インタナルギヤ67及び転舵用ハウジング61が中心軸O1回りに回動する。これに伴い、転舵用ハウジング61と一体となっている減速機30(駆動ユニット10)が中心軸O1回りに回動し車輪2が転舵する。
【0031】
以上、第1実施形態の駆動ユニット10によれば、駆動モータ20(第1駆動モータ21,第2駆動モータ22)がホイール7外に配置されるため、駆動モータ20として利用されるモータは、ホイール7内に収容可能な大きさのものに限定されない。よって、汎用されるモータを駆動モータ20として利用できる。
また、ホイール7内に駆動モータ20を配置しないため、スペースが形成されるところ、本実施形態において、そのスペースに汎用品であるブレーキユニットを配置している。よって、第1実施形態の駆動ユニット10によれば、汎用品のブレーキユニットも利用でき、コストが低減される。
また、本実施形態の減速機30は、2つの第1駆動モータ21,第2駆動モータ22を備え、車両の走行状態に応じて車輪2を駆動させるトルクを調整することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。
図5に示すように、第2実施形態の懸架装置101は、互いに上下に離間して配置されるアッパアーム103及びロアアーム104と、スプリング105が一体に設けられたダンパ106とを備えている。
図6に示すように、アッパアーム103は、互いに前後方向に離間した一対のアーム103a,103aにより構成されている。そして、一対のアーム103a,103aの間であって左端側には、後述する転舵ユニット160が配置されている。
図5に示すように、ダンパ106は、一対のアーム103a,103aの間を通過してアッパアーム103よりも下方に延出している。そして、ダンパ106の下端は、ボールジョイント108を介して後述する減速機用ハウジング131の上面と連結している。
【0033】
駆動ユニット110は、車輪102の駆動力を生成する駆動モータ120(第1駆動モータ121,第2駆動モータ122)と、駆動モータ120の出力軸の回転速度を減速させて車輪2に伝達する減速機130と、車輪102に制動力を付与するブレーキユニット150と、転舵用モータ162を有し減速機130を回動させて車輪102を転舵させる転舵ユニット60とを備えている。
【0034】
減速機130は、箱状の減速機用ハウジング131と、減速機用ハウジング131内に収容される複合型遊星歯車機構(
図7参照)138とを備えている。
【0035】
減速機用ハウジング131は、側面視で円形状に形成されてホイール107の形状に対応している。減速機用ハウジング131は、外径がホイール107のリム107aよりも小さく形成されてホイール107内に配置可能となっている。
【0036】
減速機用ハウジング131の上面には、上方に延出する上側連結部132が設けられており、上側連結部132の上端が転舵ユニット160に支持されている。なお、上側連結部132の詳細については転舵ユニット160と併せて説明する。また、減速機用ハウジング131の上面には、ボールジョイント108が設置されている。
【0037】
減速機用ハウジング131の下面には、下方に延出する下側連結部133が設けられている。下側連結部133の下端には、球体135が形成されている。この球体135は、ロアアーム104に設けられた図示しないブラケットに支持されている。よって、減速機130の下側は、ボールジョイント構造(球体135、ブラケット)により転動自在に支持されている。
以上から、駆動ユニット10は、アッパアーム103及びロアアーム104の左端側に支持され、車体の車幅方向外側寄りに配置されている。
【0038】
図5に示すように、減速機用ハウジング131の左側面(車幅方向外側面)には、左右方向に延在する出力軸136が設けられている。
出力軸136の左端には、着脱自在にホイール107のハブ107bが連結している。よって、車輪102は、出力軸136と一体になっており、出力軸136の中心軸O12(
図7参照)回りに回転可能に支持されている。
図7に示すように、出力軸136は、減速機用ハウジング131の左側面を貫通するとともに、回動自在に減速機用ハウジング131に支持されている。出力軸136の右端には、複合型遊星歯車機構138の後述する第2サンギヤ146が形成されている。
【0039】
第1駆動モータ121及び第2駆動モータ122は、減速機用ハウジング131の右側面(車幅方向内側面)に固定され、減速機130の右方に配置されている。
ブレーキユニット150は、出力軸136に固定されたブレーキディスク151と、減速機用ハウジング131の左側面に固定されたブレーキキャリパ152と、を備えており、減速機用ハウジング131の左側面の左方に配置されている。
【0040】
また、駆動ユニット110は、車輪102との関係において、ブレーキユニット150と減速機130の左部がホイール107内に配置されている。よって、減速機130の右部と駆動モータ120(第1駆動モータ121,第2駆動モータ122)は、ホイール107に対して車幅方向内側に位置し、ホイール107外に配置されている。
【0041】
図7に示すように、複合型遊星歯車機構138は、減速機用ハウジング131内において右寄りに配置された第1遊星歯車機構140と、第1遊星歯車機構140の左側に配置された第2遊星歯車機構145と、第1遊星歯車機構140及び第2遊星歯車機構145の間に介在する中間円形板139とを備えている。
なお、第2遊星歯車機構145は、第1実施形態で説明した第2遊星歯車機構45と同一構成のため詳細な説明を省略する。
【0042】
第1遊星歯車機構140は、出力軸136と同軸上に配置された第1サンギヤ141と、後述する伝達板126に固定された第1インタナルギヤ142と、第1サンギヤ141と第1インタナルギヤ142との間に介在する複数の第1プラネタリギヤ143とを備えている。
第1サンギヤ141の右面には、右方に延出する延出部141aと、第1駆動ギヤ123と噛合する第1伝達用ギヤ144が設けられている。各第1プラネタリギヤ143は、中間円形板139の図示しないピンに軸支され、中心軸P11回りに回転自在となっている。
【0043】
中間円形板139の右面には、右方に突出する図示しないピン(
図7においてピンの中心軸P11のみ図示)が設けられている。また、中間円形板139の左面には、左方に突出して、第2プラネタリギヤ148を軸支する図示しないピン(
図7においてピンの中心軸P12のみ図示)が設けられている。
【0044】
そのほか、減速機用ハウジング131内には、第1駆動モータ121の出力軸121aに連結する第1駆動ギヤ123と、第2駆動モータ122の出力軸122aに連結する第2駆動ギヤ124と、第2駆動ギヤ124に噛合する伝達ギヤ125と、伝達ギヤ125と一体に回転する環状の伝達板126と、が設けられている。伝達ギヤ125と伝達板126は、出力軸136と同軸上に配置され、減速機用ハウジング131に回転自在に支持されている。
【0045】
次に転舵ユニット160について説明する。
図6に示すように、転舵ユニット160は、一対のアーム103a,103aの間に配置された箱状の転舵用ハウジング161と、転舵用モータ162(
図5参照)と、ウォームギヤ163と、転舵用遊星歯車機構165と、を備えている。
【0046】
転舵用ハウジング161の前面及び後面には、前後方向に延在する連結軸134,134が形成されている。連結軸134,134は、一対のアーム103a,103aに回動自在に支持されている。
転舵用ハウジング161は、下壁に貫通孔161aが形成され、その貫通孔161a内に上側連結部132の上部が挿入されている。転舵用モータ162は、転舵用ハウジング161の左側面に固定されている(
図5参照)。
【0047】
ウォームギヤ163は、転舵用モータ162の出力軸(不図示)と連結するウォーム163aと、ウォーム163aと噛合するウォームホィール163bとを備え、転舵用モータ162の出力軸の回転数を低減させる減速機である。
ウォームホィール163bの下面には、後述する転舵用サンギヤ166を支持する円形状の支持板164が固定されている。この支持板164の下面には、特に図示しないが下方に突出する図示しないピン(
図6において中心軸P13のみ図示)が設けられている。
【0048】
転舵用遊星歯車機構165は、上側連結部132の上端に一体に形成された転舵用サンギヤ166と、転舵用ハウジング161の内面161bに固定された転舵用インタナルギヤ167と、転舵用サンギヤ166と転舵用インタナルギヤ167との間に介在する複数の転舵用プラネタリギヤ168とを備えている。
【0049】
転舵用サンギヤ166及び転舵用インタナルギヤ167は、ウォームホィール163bと同軸(中心軸O11)上に配置されている。また、各転舵用プラネタリギヤ168は、支持板164に設けられたピン(不図示)に軸支され、中心軸P13回りに回転自在となっている。
【0050】
図5に示すように、上側連結部132は、下方に向うにつれて左方に位置し、傾斜している。つまり、上側連結部132は、ウォームホィール163bの中心軸O11に沿って延在していない。
一方で、ボールジョイント108の図示しない球体の中心と、球体135の中心は、ウォームホィール163bの中心軸O11上に位置している。
【0051】
つぎに、駆動モータ120の作動時の動作を説明する。
車両の高速走行時、第1駆動モータ121のみが作動するように構成されている。これによれば、第1サンギヤ141が回転し、各第1プラネタリギヤ143は、図示しないピンの中心軸P11回りに回転(自転)しながら中心軸O12回りに移動(公転)し、中間円形板139が回転する。そして、中間円形板139が回転すると、各第2プラネタリギヤ148は、出力軸136の中心軸O12回りに移動(公転)するとともに、図示しないピンの中心軸P12回りに回転(自転)し、第2サンギヤ146及び出力軸136が回転する。これにより、出力軸136と一体な車輪102が転動し、車両が前進する。
【0052】
一方で、車両の低速走行時、第1駆動モータ121及び第2駆動モータ122の両方が作動するように構成されている。これによれば、第1サンギヤ141と第1インタナルギヤ142とが回転し、各第1プラネタリギヤ143が出力軸136の中心軸O2回りに移動(公転)しながら、図示しないピンの中心軸P11回りに回転(自転)し、中間円形板139が回転する。よって、車両の高速走行時よりも車輪102に伝達されるトルク値が大きくなる。
【0053】
次に転舵用モータ162の作動時の動作について説明する。
転舵用モータ162が作動すると、ウォームギヤ163により減速されて支持板164が回転する。これにより、各転舵用プラネタリギヤ168は、ウォームホィール163bの中心軸O11回りに移動(公転)しながら、図示しないピンの中心軸P13回りに回転(自転)する。この結果、転舵用サンギヤ166が中心軸O11回りに回動する。そして、上側連結部132を介して転舵用サンギヤ166と連結する減速機130(駆動ユニット110)は、転舵軸(中心軸O11)回りに回動し、車輪102が転舵する(
図8A,
図8B参照)。
【0054】
なお、仮にダンパ106の下端と接続するボールジョイント108の図示しない球体の中心が転舵軸(中心軸O11)上に位置していない場合(
図8Aの仮想線L1参照)、車輪102が転舵するとボールジョイント108の図示しない球体が中心軸O11回りに移動する(
図8Bの仮想線L2参照)。これに伴い、ダンパ106のストロークが伸長してダンパ106が作動してしまう。よって、車輪102の円滑な転舵が妨げられる可能性がある。
【0055】
一方で、
図8A,
図8Bに示すように、本実施形態のボールジョイント108の図示しない球体の中心は、転舵軸(中心軸O11)上に位置しているため、車輪102が転舵しても中心軸O11上に位置し続ける。このため、ダンパ106のストロークが変化せず、ダンパ106が作動しない。よって、車輪102の円滑な転舵が確保されている。
【0056】
以上、第2実施形態の駆動ユニット110によっても、駆動モータ120(第1駆動モータ121,第2駆動モータ122)がホイール107外に配置されるため、汎用されるモータを駆動モータ120として利用できる。
また、ホイール107内に駆動モータ120を配置しないため、汎用品のブレーキユニット150を利用できるスペースが確保され、コストが低減される。
また、本実施形態の減速機130は、2つの第1駆動モータ121,第2駆動モータ122を備え、車両の走行状態に応じて車輪102を駆動させるトルクを調整することができる。よって、高トルクを出力でき、車輪102を安定して駆動させることができる。
また、上記したように車輪102を円滑な転舵させることが可能である。
【0057】
以上、各実施形態の駆動ユニット10,110について説明したが、本発明は、実施形態で説明した例に限定されない。
各実施形態の減速機30,130は、左部のみがホイール7,107内に収容されるように配置されているが、減速機30,130の全てがホイール7,107内に配置されていてもよい。
また、各実施形態の駆動モータ20,120や転舵用モータ62,162を覆うカバーを備えてもよい。
また、本発明の減速機は、駆動モータのトルクを高めることができればよく、実施形態で説明した遊星歯車機構を利用した減速機30,130に限定されない。
【0058】
本発明の減速機30,130は、2つの遊星歯車機構を利用した複合型遊星歯車機構38,138を利用しているが、例えば、複合型遊星歯車機構38のうち第1遊星歯車機構40のみから構成されたり、又は複合型遊星歯車機構138のうち第1遊星歯車機構140のみから構成されたりなど、単一の遊星歯車機構から構成されていてもよい。
【0059】
また、各実施形態の複合型遊星歯車機構38,138において、第2遊星歯車機構45,145は回転速度が増速するように構成されているが、
図9に示すように、第2遊星歯車機構245が回転速度を減速するようにしてもよい。
なお、
図9に示す第2遊星歯車機構245は、中間円形板239と一体に形成された第2サンギヤ246と、減速機用ハウジング231に固定された第2インタナルギヤ247と、第2サンギヤ246と第2インタナルギヤ247との間に介在する複数の第2プラネタリギヤ248と、を備えている。
各第2プラネタリギヤ248は、出力軸236の右端に一体に形成された伝達板237に設けられた図示しない複数のピン(
図9において中心軸P21のみ図示)に軸支されている。この第2遊星歯車機構245によれば、中間円形板239の回転速度をさらに減速できる。
【0060】
また、本発明の駆動ユニット10,110は、駆動モータ20,120を2つ備えているが単一の駆動モータから構成されていてもよい。
また、実施形態の転舵ユニット60,160は、単一の転舵用モータ62,162から構成されているが、転舵ユニット60,160の転舵用遊星歯車機構65,165に代えて、複合型遊星歯車機構38,138を適用し、さらに2つの転舵用モータを備えるように構成してもよい。
このような変形例によれば、車輪2,102の転舵させるトルクを可変とすることができ望ましい。