【解決手段】浮体システムは、内部に利用者を収容可能な室を上下方向に複数階層F1〜F3に備えた少なくとも一つの浮体モジュール10と、係留装置30を固定可能な係留装置固定部13と、浮体モジュール10の外周部の少なくとも一部に設けられ、他の浮体モジュール10に連結可能な連結装置と、を備える。
前記連結装置を介して連結された前記浮体モジュール同士の間に、前記浮体モジュールに接岸した船舶の利用者、及び車両の少なくとも一方が通行可能なモジュール間通路が設けられている、
請求項1から4の何れか一項に記載の浮体システム。
前記浮体モジュールは、前記連結装置を介して連結される他の前記浮体モジュール側を向く側面に、配管及び電気配線の接続部が設けられ、前記連結装置を介して連結される前記浮体モジュール同士は、前記接続部の高さ方向の位置が一致する、
請求項1から17の何れか一項に記載の浮体システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る構成では、規模や設備内容が異なる乗降用桟橋を新設するには、新たに設計を行わなければならず、手間やコストがかかる。また、乗降用桟橋が大規模なものとなれば、その製作や設置にも手間やコストがかかる。さらに、大がかりな修繕や改修等が必要となった場合、修繕や改修等の作業を行う間は乗降用桟橋を利用することができない場合もある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、設計、製作、設置に要する手間やコストを抑えるとともに、修繕や改修を容易に行うことができる浮体システム、浮体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、浮体システムは、内部に利用者を収容可能な室を上下方向に複数階層に備えた少なくとも一つの浮体モジュールと、前記浮体モジュールの外周部の少なくとも一部に設けられ、前記浮体モジュールを係留する係留装置を固定可能な係留装置固定部と、前記浮体モジュールの外周部の少なくとも一部に設けられ、他の前記浮体モジュールに連結可能な連結装置と、を備える。
【0007】
このように構成することで、浮体モジュールは、上下方向に複数階層に設けられた室の内部に利用者を収納し、様々な目的に用いることができる。浮体モジュールを、連結装置によって他の浮体モジュールと連結することで、複数の浮体モジュールからなる浮体システムを構成することができる。必要に応じて、連結する浮体モジュールの数を変更することで、浮体システムの大きさ、形状を変えることができる。したがって、様々な大きさ、形状の浮体モジュールを製作するに際し、設計、製作、設置に要する手間やコストが抑えられる。また、修繕や改修を行う場合には、対象となる浮体モジュールの修繕や改修を行う間、代わりとなる他の浮体モジュールと交換すれば、浮体システムの継続利用に与える影響を抑えることができる。
【0008】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る浮体システムは、前記連結装置を介して連結された複数の前記浮体モジュールを備えるようにしてもよい。
このように構成することで、複数の浮体モジュールを連結することで、様々な大きさ、形状の浮体システムを構成することができる。
【0009】
この発明の第三態様によれば、第二態様に係る浮体システムは、前記連結装置を介して連結された複数の前記浮体モジュール間で、前記浮体モジュールの内部の前記室は、利用用途が互いに異なるようにしてもよい。
このように構成することで、様々な利用用途の室を有した複数の浮体モジュールを組み合わせることで、様々な機能を有した浮体システムを構成することができる。また、浮体システムの設置後、新たな機能を有した室を有する浮体モジュールを追加して設置することもできる。これにより、浮体システムとしての機能を必要に応じて後から追加し、浮体システムを発展させていくこともできる。
【0010】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る前記浮体モジュールは、前記浮体モジュールの喫水線よりも上方に、前記連結装置を介して連結される他の前記浮体モジュール側の側面に開口部を有するようにしてもよい。
このように構成することで、連結装置を介して連結される浮体モジュールの間で、利用者や車両等を、開口部を通して行き来させることができる。
【0011】
この発明の第五態様によれば、第一から第四態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記連結装置を介して連結された前記浮体モジュール同士の間に、前記浮体モジュールに接岸した船舶の利用者、及び車両の少なくとも一方が通行可能なモジュール間通路が設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、モジュール間通路を介し、利用者や車両を浮体モジュール間で行き来させることができる。
【0012】
この発明の第六態様によれば、第一から第五態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記浮体モジュールの内部の前記室の少なくとも一つが、前記室を外国側領域及び内国側領域に区画する仕切り部と、前記仕切り部に形成されて前記外国側領域及び前記内国側領域を連通させる連通路と、前記連通路に設けられた出入国管理部と、前記浮体モジュールの外面に設けられて前記浮体モジュールに接岸した船舶の利用者が船舶と前記外国側領域との間を乗降する乗降部と、を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、浮体モジュールの内部の室の少なくとも一つを、浮体モジュールに接岸した船舶の利用者に対する、税関、出入国管理、検疫等の業務に用いることができる。
【0013】
この発明の第七態様によれば、第一から第六態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記浮体モジュールの内部の前記室の少なくとも一つが、車両を駐車する駐車場部と、前記駐車場部と前記駐車場部が設けられた前記浮体モジュールの外部とを接続する車両通路と、を有するようにしてもよい。
このように構成することで、浮体モジュールの外部から車両通路を介して駐車場部にアクセスした車両を駐車することができる。この車両に、船舶の利用者を載せることで、利用者の送迎を行うことができる。
【0014】
この発明の第八態様によれば、第七態様に係る前記駐車場部を備える前記室は、複数の階層を有した前記浮体モジュールの下部の階層に設けられているようにしてもよい。
このように、駐車場部を、浮体モジュールの下部の階層に設けることで、複数の車両が駐車された状態における浮体モジュールの重心位置を下げることができる。これにより、浮体モジュールの安定性を高めることができる。
【0015】
この発明の第九態様によれば、第一から第八態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記連結装置を介して連結される複数の前記浮体モジュールが、上面視したときの形状及び大きさが同一であるようにしてもよい。
このように構成することで、複数の浮体モジュールの基本的な構成を共通として、その設計、製作を容易かつ低コストで行うことができる。
【0016】
この発明の第十態様によれば、第一から第九態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記浮体モジュールが、上面視多角形状であり、上面視多角形状の全ての辺に、前記連結装置が設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、浮体モジュールの各辺に他の浮体モジュールを接続することができる。したがって、複数の浮体モジュールを様々なレイアウトで接続して浮体システムを構成することが可能となる。
【0017】
この発明の第十一態様によれば、第一から第十態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記室が、前記浮体モジュールの喫水線よりも上方に設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、喫水線よりも下方で浮体モジュールが損傷し、浮体モジュール内に浸水した場合に、利用者が収容される室に影響が及ぶのを抑えることができる。
【0018】
この発明の第十二態様によれば、第一から第十一態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記室を仕切るパーティションを備えるようにしてもよい。
このように構成することで、室をパーティションで複数の区画に仕切ることで、これらの区画を様々な用途に用いることができる。
【0019】
この発明の第十三態様によれば、第一から第十二態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、前記係留装置が、水底から水上まで延びる支柱部と、前記係留装置固定部に固定され、前記支柱部の周囲を囲む枠部と、前記枠部と前記支柱部との間に配置された緩衝部材と、を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、浮体モジュールに設けられた係留装置固定部に固定された枠部の内側に、水底から水上まで延びる支柱部が位置する。これにより、枠部は、支柱部に対して上下方向に相対変位可能となる。したがって、浮体モジュールは、潮位の変化に応じて上下方向に変位しつつ、支柱部を囲む枠部によって、一定以上の水平方向の変位が拘束される。また、浮体モジュールが支柱部に対して水平方向に変位した場合、枠部と支柱部との間に配置された緩衝部材によって、枠部と支柱部が衝突するときの衝撃を抑えることができる。
【0020】
この発明の第十四態様によれば、第一から第十三態様の何れか一つの態様に係る浮体システムは、複数階層のうち、少なくとも一つの階層に設けられた前記室の機能は、前記連結装置を介して連結された他の前記浮体モジュールの同一階層の前記室の機能と同一であるようにしてもよい。
このように構成することで、連結装置を介して連結された浮体モジュール間で、同一階層の室同士を同一の機能として連続的に使用することができる。
【0021】
この発明の第十五態様によれば、第一から第十四態様の何れか一つの態様に係る前記連結装置を介して連結された前記浮体モジュール同士は、各階層の高さが同一であるようにしてもよい。
このように構成することで、連結装置を介して連結された浮体モジュール同士で、各階層間の行き来等が容易となる。
【0022】
この発明の第十六態様によれば、第一から第十五態様の何れか一つの態様に係る前記浮体モジュールは、各階層に柱が設けられ、前記柱の水平面での位置が複数の階層間で一致しているようにしてもよい。
このように構成することで、複数の階層にわたって上下方向に連続するように柱が設けられる。これにより、浮体モジュールを強固なものとすることが可能となる。
【0023】
この発明の第十七態様によれば、第一から第十六態様の何れか一つの態様に係る前記浮体モジュールの一つの階層、または前記浮体モジュールの屋上は、前記浮体モジュールに接岸した船舶のタラップと高さ方向で一致するようにしてもよい。
このように構成することで、浮体モジュールに接岸した船舶の利用者は、浮体モジュールの階層又は屋上に対し、容易に乗降することができる。
【0024】
この発明の第十八態様によれば、第一から第十七態様の何れか一つの態様に係る浮体モジュールは、前記連結装置を介して連結される他の前記浮体モジュール側を向く側面に、配管及び電気配線の接続部が設けられ、前記連結装置を介して連結される前記浮体モジュール同士は、前記接続部の高さ方向の位置が一致するようにしてもよい。
このように構成することで、連結装置を介して連結される浮体モジュール同士で、配線や電気配線を容易に接続することができる。
【0025】
この発明の第十九態様によれば、第一から第十八態様の何れか一つの態様に係る前記浮体モジュールは、水に浮かぶ浮力を有する浮体本体と、前記浮体本体上に設けられ、前記室を上下方向に複数階層に備える建屋と、を備える。前記浮体本体の平面積と前記建屋の各階層の平面積とは、同一であるようにしてもよい。
このように構成することで、建屋の平面積を最大限に確保することができる。
【0026】
この発明の第二十態様によれば、第一から第十九態様の何れか一つの態様に係る前記連結装置は、水平方向外側に延びる溶接フランジ部、及びジョイントピンが挿入されるピン挿入部の少なくとも一方を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、浮体モジュール同士は、溶接フランジ部同士の溶接接合、ジョイントピンを介したピン挿入部同士のピン接合により、確実に連結することができる。
【0027】
この発明の第二十一態様によれば、第一から第十九態様の何れか一つの態様に係る前記連結装置は、複数の前記浮体モジュール同士を跨いで連結するようにしてもよい。
このように構成することで、複数の浮体モジュール同士を跨ぐ連結装置によって、浮体モジュール同士を連結することができる。さらに、連結装置上を、利用者や車両の通路として用いることも可能となる。
【0028】
この発明の第二十二態様によれば、浮体モジュールは、水に浮かぶ浮力を有する浮体本体と、前記浮体本体上に設けられ、内部に利用者を収容可能な室を上下方向に複数階層に備える建屋と、係留装置を固定可能な係留装置固定部と、他の浮体モジュールに連結可能な連結装置と、を備える。
このように構成することで、浮体モジュールは、上下方向に複数階層に設けられた室の内部に利用者を収納し、様々な目的に用いることができる。浮体モジュールを、連結装置によって他の浮体モジュールと連結することで、複数連結された浮体モジュールからなる浮体システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
上記浮体システム、浮体モジュールによれば、設計、製作、設置に要する手間やコストを抑えるとともに、修繕や改修を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の一実施形態における浮体システム、浮体モジュールを図面に基づき説明する。
図1は、この発明の一実施形態における浮体システムを示す側面図である。
図2は、上記浮体システムの平面図である。
図3は、上記浮体システムの側断面図である。
図4は、上記浮体システムを構成する浮体モジュールの断面図である。
図5は、上記浮体モジュールの外観を示す斜視図である。
図6は、上記浮体モジュールに設けられた係留装置を示す斜視図である。
図7は、上記係留装置の平面図である。
図8は、上記浮体モジュール同士の連結部を示す側断面図である。
図9は、上記浮体モジュールの最上部の階層に設けられた室の一例を示す平面図である。
図10は、上記浮体モジュールと船との位置関係を示す断面図である。
図11は、上記浮体モジュールの最下部の階層に設けられた駐車場部の一例を示す平面図である。
図12は、上記浮体モジュールの中間部の階層に設けられた乗降場室の一例を示す平面図である。
【0032】
図1〜
図3に示すように、この実施形態の浮体システム1は、一以上の浮体モジュール10を備える。この実施形態では、浮体システム1は、3つの浮体モジュール10を連結して形成されている。各浮体モジュール10は、推進力を発生する推進機構を有しておらず、自力航行不能である。
【0033】
図4に示すように、各浮体モジュール10は、浮体本体11と、建屋12とを備える。
浮体本体11は、上面視矩形状に形成されている。浮体本体11は、その内部に複数のボイド(図示無し)を備えている。浮体本体11は、複数のボイドによって、浮体モジュール10を水上に浮かべる浮力の発生に寄与する。
【0034】
建屋12は、浮体本体11上に設けられている。建屋12は、上面視矩形状である。建屋12は、四隅に設けられた柱部材12cと、互いに隣り合う柱部材12c間に架設された梁部材12bと、を少なくとも備える。梁部材12bは、上下方向に間隔をあけて複数設けられている。また、建屋12の内部には、内壁(図示せず)が設けられている。各梁部材12b上には、床12fが形成されている。
建屋12の最上部には、屋根部12tが設けられている。屋根部12tは、水勾配を有している。
建屋12は、上下方向に複数の階層Fを備えている。この実施形態において、建屋12は、上下方向に3つの階層F1〜F3を有している。建屋12の各階層Fは、浮体本体11の平面積と、同一の平面積を有している。すなわち、浮体モジュール10は、外観視ほぼ直方体状をなしている。
【0035】
建屋12の内部には、複数本の中柱12pが設けられている。各中柱12pは、各階層Fにおいて上方に位置する梁部材12bと、下方に位置する梁部材12b又は床12fとの間に設けられている。各階層Fに設けられた中柱12pは、水平面内での位置が一致している。これにより、複数の階層Fの中柱12pは、上下方向に連続するよう設けられている。中柱12pは、各階層Fの荷重を浮体本体11に伝達し、浮体モジュール10を強固なものとしている。なお、上述した建屋12の構造は、一例であって、必要な強度が得られる構造であれば如何なる構造であってもよい。
【0036】
図5、
図6に示すように、建屋12の四方の各側面12sは、直立して設けられている。建屋12の四方の側面12sのうち少なくとも一つの側面12sには、係留装置固定部13が少なくとも1か所設けられている。係留装置固定部13には、係留装置30が固定可能となっている。
【0037】
図6、
図7に示すように、係留装置30は、浮体モジュール10を水底Bに係留する。係留装置30は、支柱部31と、枠部32と、緩衝部材33とを備える。
支柱部31は、水底Bから水上まで鉛直上方に向かって延びている。支柱部31の外周部には、補強ケージ35が設けられている。
【0038】
枠部32は、浮体モジュール10の側面12sに設けられた係留装置固定部13に、ボルト、溶接等により固定されている。枠部32は、上面視U字状である。枠部32と、浮体モジュール10の側面12s(係留装置固定部13)とによって、支柱部31を取り囲んでいる。枠部32及び係留装置固定部13と、支柱部31との間には、水平方向に隙間が設けられている。これにより、水底Bに固定された支柱部31と、浮体モジュール10に固定された枠部32とは、潮位の変動等に応じて上下方向に相対変位可能となっている。緩衝部材33は、枠部32と支柱部31との間に設けられている。緩衝部材33は、枠部32と支柱部31とが水平方向に相対変位したときに、枠部32と支柱部31との直接的な干渉を抑える。緩衝部材33は、バネやゴム等の弾性部材を用いることができる。なお、一つの係留装置30に対して四つ(四方向)の緩衝部材33を設ける場合を例示したが、緩衝部材33は、四つ(四方向)に限られない。また、上面視U字状の枠部32は、例えば、複数の部品を接続して上面視U字状に構成された分割式の枠部32を用いてもよい。この場合、側面12sから張り出す二つの張り出し部と、これら張り出し部の先端同士を接続するビーム部とを備えるようにしてもよい。さらに、ビーム部を張り出し部に対して着脱可能としてもよい。
【0039】
図8に示すように、浮体モジュール10は、連結装置40を備える。連結装置40は、浮体モジュール10の建屋12の各側面12sに、それぞれ設けられている。連結装置40は、浮体モジュール10を他の浮体モジュール10に連結可能とする。連結装置40は、側面12sから水平方向外側に向かって延びる溶接フランジ部41を備える。溶接フランジ部41は、他の浮体モジュール10の側面12sに設けられた連結装置40の溶接フランジ部41と、溶接接合される。これにより、互いに隣り合う浮体モジュール10同士は、剛接合される。なお、
図8で示す連結装置40は一例であって、例えば、上下方向に延びる溶接フランジを有した連結装置であってもよい。
【0040】
図5、
図8に示すように、建屋12の各側面12sには、開口部15が形成されている。開口部15は、利用者や車両が通行可能な大きさを有している。開口部15は、浮体モジュール10の喫水線WL(
図1参照)よりも上方に設けられている。開口部15は、連結装置40を介して連結される他の浮体モジュール10に設けられた開口部15と互いに連通する。なお、他の浮体モジュール10と対向しない他の側面12sに設けられた開口部15は、閉塞部材(図示せず)によって閉塞されている。
【0041】
図8に示すように、互いに連結される浮体モジュール10の建屋12同士の間に隙間が存在する場合、開口部15の周囲で隙間を塞ぐように、シール部材17を設けることもできる。シール部材17は、双方の開口部15の周囲を取り囲むように筒状に設けられている。シール部材17は、例えば蛇腹状、また、柔軟性を有したゴム系材料等からなる。シール部材17は、双方の開口部15の上方のみを覆うようにしてもよい。
【0042】
連結装置40によって連結される浮体モジュール10の建屋12同士の間に隙間が存在する場合、一方の浮体モジュール10の開口部15と、他方の浮体モジュール10の開口部15との間に、モジュール間通路18を設けることもできる。モジュール間通路18は、一方の浮体モジュール10の開口部15と他方の浮体モジュール10の開口部15との間で利用者や車両の通行を可能とする。
【0043】
図5に示すように、浮体モジュール10の側面12sには、浮体モジュール10内に設けられる各種の配管、電気配線の端部が接続された接続部19が設けられている。複数の浮体モジュール10間で、接続部19は、上下方向で同一高さに設けられている。連結装置40によって連結される浮体モジュール10同士で、一方の浮体モジュール10の接続部19と他方の浮体モジュール10の接続部19とは、互いに向き合って配置されている。これら向かい合って配置された接続部19同士は、連結用の配管や連結用の電気配線によって接続することができる。
【0044】
浮体システム1は、連結装置40を介して複数の浮体モジュール10を連結することで構成されている。
図1〜
図3に示すように、この実施形態では、複数の浮体モジュール10は、直列状に連結されている。このような浮体システム1には、船舶Sが接岸される。
【0045】
浮体システム1は、複数の浮体モジュール10間で、それぞれの浮体モジュール10の建屋12の各階層F(F1〜F3)は、それぞれ同一の高さに設けられている。
【0046】
図3に示すように、各浮体モジュール10の建屋12の各階層Fには、各種の室100が設けられている。この実施形態において、浮体システム1を構成する複数の浮体モジュール10のうち、少なくとも一つの浮体モジュール10の建屋12には、室100として、通関室110と、乗降場室120と、駐車場室130とが設けられている。
【0047】
通関室110は、建屋12の最上部の階層F3に設けられている。通関室110は、浮体システム1に接岸した船舶Sの利用者が収容可能とされている。通関室110では、船舶Sの利用者の出入国管理、税関、検疫等の業務が行われる。
図9に示すように、通関室110には、仕切部113が設けられている。仕切部113は、通関室110内を、外国側領域111と内国側領域112とに区画する。仕切部113には、外国側領域111と内国側領域112とを連通させる連通路114が設けられている。連通路114には、出入国管理部115が設けられている。出入国管理部115は、利用者のパスポートチェック、税関手続、検疫等の業務を行うカウンター等が設けられている。
【0048】
通関室110が設けられた浮体モジュール10には、乗降部116が設けられている。乗降部116は、建屋12の側面12sまたは建屋12の屋根部12tに設けられている。
図10に示すように、この実施形態において、乗降部116は、建屋12の側面12sにおいて、最上部の階層F3に設けられた通関室110に連通するよう設けられている。乗降部116は、浮体モジュール10の側面12sから側方に突出するよう設けられ、その内側に利用者が行き来する乗降通路116tを有している。船舶Sと乗降部116の乗降通路116tとの間には、船舶SのタラップTが架け渡される。この乗降部116を利用し、浮体モジュール10に接岸した船舶Sの利用者が、船舶Sと浮体モジュール10との間で乗降を行う。また、この実施形態において、乗降部116は、浮体モジュール10の幅方向両側にそれぞれ設けられている。これにより、船舶Sは、浮体モジュール10の幅方向両側に接岸可能となっている。
なお、上記の乗降部116は、浮体モジュール10の側面12sから突出するように設けたが、船舶Sが接岸したときに船舶Sとの緩衝を避けるため、その突出量は最小限に抑えるのが好ましい。また、乗降部116は、浮体モジュール10の側面12sから突出させずに設けてもよい。
【0049】
通関室110は、浮体モジュール10の喫水線WLよりも上方の階層F3に設けられている。
なお、通関室110は、外国から到着した船舶Sの利用者の入国手続、利用者が船舶Sに搭乗して出国する場合の出国手続の少なくとも一方を行う。すなわち、一つの通関室110で、入国手続と出国手続の双方を行うようにしてもよい。また、浮体モジュール10内に、入国手続専用の通関室110と、出国手続専用の通関室110と、別々に設けてもよい。
【0050】
図3、
図11に示すように、駐車場室130は、浮体モジュール10の最下部の階層F1に設けられている。
図11に示すように、駐車場室130には、利用者を送迎するためのバス、タクシー、自家用車等の車両Mが複数台駐車可能となっている。浮体システム1を構成する複数の浮体モジュール10において、バス専用、タクシー専用、自家用車専用の駐車場室130を、それぞれ別々に設けてもよい。
【0051】
図3、
図10に示すように、乗降場室120は、浮体モジュール10の上下方向中間部の階層F2に設けられている。
図12に示すように、乗降場室120は、利用者が、バス、タクシー、自家用車等の車両Mに乗降するエリアを形成する。上述した開口部15は、乗降場室120が設けられた階層F2に形成されている。車両Mは、乗降場室120に設けられた階層F2の開口部15を通して、他の浮体モジュール10の階層F2に移動可能となっている。この実施形態において、浮体システム1を構成する複数の浮体モジュール10の中間部の階層F2には、車両Mが走行移動可能な車両走行路122が連続して設けられている。
【0052】
また、各浮体モジュール10において、乗降場室120が設けられた階層F2と、駐車場室130が設けられた階層F1との間には、車両Mが自走して階層F1、F2間を昇降する傾斜路125が設けられている。また、
図9、
図12に示すように、通関室110が設けられた階層F3と、乗降場室120が設けられた階層F2との間には、利用者が階層F3と階層F2との間を昇降する階段126が設けられている。なお、階段126を有する場合について説明したが、浮体モジュール10は、階層間を移動する手段として、スロープ、エスカレーター、エレベーター等を有していてもよい。
【0053】
図3に示すように、浮体システム1を構成する複数の浮体モジュール10において、最上部の階層F3には、通関室110以外の用途の室100を設けることもできる。例えば、このような室100は、乗用車用の駐車場室としてもよい。また、室100に、レストラン等の飲食施設、各種の物品を販売する販売施設、その他各種のサービスと提供するサービス施設等を設けることができる。また、
図13に示すように、室100は、パーティション105によって、複数の区画106を形成するようにしてもよい。各区画106には、上記したような各種の施設を配置することができる。
【0054】
図1に示すように、上記したような、複数の浮体モジュール10を連結することで形成される浮体システム1と、岸壁Gとの間には、車両Mや利用者が通行する連絡橋200を設けることができる。また、浮体システム1と岸壁Gとの間は、小型の連絡船等によって、利用者を搬送することもできる。
【0055】
図14に示すように、浮体システム1は、例えば当初は、例えば3つの浮体モジュール10で構成され、その後、新たな浮体モジュール10nを追加して接続することもできる。これにより、利用者の増加、浮体システム1が備える施設(機能)の増加等に対応し、浮体システム1を発展(拡張)していくことができる。
【0056】
また、
図15に示すように、浮体システム1を構成する一部の浮体モジュール10の補修や改修が必要となった場合には、補修や改修の対象となる浮体モジュール10mの代替となる浮体モジュール10sを予め用意しておく。対象となる浮体モジュール10mを補修、改修するときには、この浮体モジュール10mを浮体システム1から切り離す。代わりに、代替となる浮体モジュール10sを浮体システム1に接続する。補修や改修が完了した後、代替となる浮体モジュール10sを浮体システム1から切り離し、代わりに補修や改修がなされた浮体モジュール10を浮体システム1に接続する。
また、新たに製作した浮体モジュール10nを、従来から浮体システム1に接続されている浮体モジュール10cと交換して接続することもできる。
【0057】
上述したように、浮体システム1の浮体モジュール10は、複数の階層Fに設けられた室100の内部に利用者を収納し、様々な目的に用いることができる。浮体モジュール10を連結装置40によって他の浮体モジュール10と連結することで、複数連結された浮体モジュール10からなる浮体システム1を構成することができる。浮体システム1は、必要に応じて、連結する浮体モジュール10の数や接続位置を変更することで、浮体システム1の大きさ、形状を変えることができる。したがって、様々な大きさ、形状の浮体モジュール10を製作するに際し、設計、製作、設置に要する手間やコストが抑えられる。また、修繕や改修を行う場合には、対象となる浮体モジュール10mの修繕や改修を行う間、代わりとなる他の浮体モジュール10sと交換すれば、浮体システム1の継続利用に与える影響を抑えることができる。
したがって、上記浮体システム1によれば、設計、製作、設置に要する手間やコストを抑えるとともに、修繕や改修を容易に行うことが可能となる。
【0058】
また、複数の浮体モジュール10を連結することで、様々な大きさ、形状の浮体システム1を構成することができる。
【0059】
浮体システム1は、連結装置40を介して連結された複数の浮体モジュール10間で、室100の利用用途を互いに異にする。このように、様々な利用用途の室100を備えた浮体モジュール10を組み合わせることで、様々な機能を有した浮体システム1を構成することができる。また、浮体システム1の設置後、新たな機能を有した室100を有する浮体モジュール10を追加して設置することもできる。これにより、浮体システム1としての機能を必要に応じて後から追加し、浮体システム1を発展させていくこともできる。
【0060】
浮体モジュール10は、連結装置40を介して連結される他の浮体モジュール10側の側面12sに開口部15を有する。このように構成することで、連結装置40を介して連結される浮体モジュール10の間で、利用者や車両M等を、開口部15を通して行き来させることができる。
【0061】
浮体システム1は、連結装置40を介して連結された浮体モジュール10同士の間に、浮体モジュール10に接岸した船舶Sの利用者、及び車両Mの少なくとも一方が通行可能なモジュール間通路18が設けられている。これにより、モジュール間通路18を介し、利用者や車両Mが複数の浮体モジュール10間で行き来することが可能となる。
【0062】
浮体モジュール10の内部の室100の少なくとも一つを通関室110とすることで、浮体モジュール10に接岸した船舶Sの利用者に対する、出入国管理、税関、検疫等の業務に用いることができる。
【0063】
浮体モジュール10は、駐車場室130と、駐車場室130が設けられた浮体モジュール10の外部とを接続するモジュール間通路18と、を有する。このように構成することで、浮体モジュール10の外部からモジュール間通路18を介して駐車場室130にアクセスした車両Mを駐車することができる。この車両Mに、船舶Sの利用者を載せることで、利用者の送迎を行うことができる。
【0064】
駐車場室130を、浮体モジュール10の下部の階層F1に設けることで、上の階層に駐車場室130を設ける場合と比較して、複数の車両Mが駐車された状態における浮体モジュール10の重心位置を下げることができる。これにより、上の階層に駐車場室130を設ける場合と比較して、浮体モジュール10の安定性を高めることができる。
【0065】
複数の浮体モジュール10は、上面視したときの形状及び大きさが同一である。このように構成することで、複数の浮体モジュール10の基本的な構成を共通として、その設計、製作を容易かつ低コストで行うことができる。
【0066】
浮体システム1は、浮体モジュール10は、上面視多角形状であり、上面視多角形状の全ての辺に、連結装置40が設けられている。このように構成することで、浮体モジュール10の各辺に他の浮体モジュール10を接続することができ、浮体システム1を構成する複数の浮体モジュール10を様々なレイアウトで接続することが可能となる。
【0067】
通関室110および乗降場室120(室100)は、浮体モジュール10の喫水線WLよりも上方に設けられている。このように構成することで、喫水線WLよりも下方で浮体モジュール10が損傷し、浮体モジュール10内に浸水した場合であっても、乗降場室120(室100)は浸水しない位置に配置されている。
【0068】
室100をパーティション105で複数の区画106に仕切ることで、これらの区画106を様々な用途に用いることができる。
【0069】
係留装置30は、支柱部31と、枠部32と、緩衝部材33と、を備える。このように構成することで、係留装置固定部13に固定された枠部32の内側に、水底Bから水上まで延びる支柱部31が位置する。枠部32は、支柱部31に対して上下方向に相対変位可能となる。これにより、潮位の変化に応じて、浮体モジュール10は、上下方向に変位しつつ、支柱部31を囲む枠部32によって、一定以上の水平方向の変位が拘束される。また、浮体モジュール10が支柱部31に対して水平方向に変位した場合、枠部32と支柱部31との間に配置された緩衝部材33によって、枠部32と支柱部31が衝突して生じる衝撃を抑えることができる。
【0070】
浮体システム1において、少なくとも一つの階層F1、F2に設けられた駐車場室130、乗降場室120の機能は、連結装置40を介して連結された他の浮体モジュール10の同一階層F1、F2と同一である。このように構成することで、連結装置40を介して連結された浮体モジュール10間で、同一階層F1、F2の室100同士を同一の機能として一体的に使用することができる。
【0071】
浮体モジュール10同士は、各階層Fの高さが同一である。このように構成することで、複数の浮体モジュール10同士で、各階層F間の行き来等が容易となる。
【0072】
浮体モジュール10は、各階層Fに中柱12pが設けられ、中柱12pの水平面での位置が複数の階層F間で一致している。このように構成することで、中柱12pが複数の階層Fにわたって上下方向に連続するように設けることができる。これにより、浮体モジュール10を強固なものとすることが可能となる。
【0073】
浮体システム1は、浮体モジュール10の一つの階層F3は、浮体モジュール10に接岸した船舶SのタラップTと接続することができる。このように構成することで、浮体モジュール10に接岸した船舶Sの利用者は、浮体モジュール10の階層F3に対し、容易に乗降することができる。
【0074】
連結装置40を介して連結される浮体モジュール10同士は、接続部19の高さ方向の位置が一致する。このように構成することで、連結装置40を介して連結される浮体モジュール10同士で、配線や電気配線を容易に接続することができる。
【0075】
浮体本体11の平面積と建屋12の各階層Fの平面積とは、同一である。このように構成することで、建屋12の平面積を最大限に確保することができる。
【0076】
連結装置40は、水平方向外側に延びる溶接フランジ部41を備える。このように構成することで、浮体モジュール10同士は、溶接フランジ部41同士の溶接接合により、確実に連結することができる。
【0077】
浮体モジュール10は、浮体本体11と、複数の階層Fに備える建屋12と、係留装置30を固定可能な係留装置固定部13と、他の浮体モジュール10に連結可能な連結装置40と、を備える。このように構成することで、浮体モジュール10は、上下方向に複数の階層Fに設けられた室100の内部に利用者を収納し、様々な目的に用いることができる。浮体モジュール10を、連結装置40によって他の浮体モジュール10と連結することで、複数連結された浮体モジュール10からなる浮体システム1を構成することができる。
したがって、上記浮体モジュール10によれば、設計、製作、設置に要する手間やコストを抑えるとともに、修繕や改修を容易に行うことが可能となる。
【0078】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、通関室110は、互いに異なる階層F、又は互いに異なる浮体モジュール10の複数の室100に設けてもよい。
【0079】
また、浮体システム1において、浮体モジュール10の配列形状については何ら限定するものではない。例えば、複数の浮体モジュール10を接続することで、例えば、
図16に示すような上面視T字状、
図17に示すようなH字状の浮体システム1を構成することができる。さらに、浮体システム1は、上面視矩形状等、様々な平面形状とすることができる。
【0080】
上記したような浮体システム1の用途は、船舶Sの利用者の入国手続や出国手続に限るものではない。例えば、水上に設けるショッピングモール等の商用施設、カジノ、オフィス、倉庫、駐車場等、各種の用途に浮体システム1を用いることができる。
また、
図18に示すように、浮体システム1には、例えば燃料として用いるLNG等を、運搬船S2から直接供給することもできる。この場合、運搬船S2を浮体システム1に接岸させ、一つの浮体モジュール10に設けられた貯蔵タンクに移し替える。貯蔵タンクに貯蔵されたLNGは、浮体システム1を構成する他の浮体モジュール10に、配管(図示無し)を通して供給される。他の浮体モジュール10に供給されたLNGは、燃料として用いられる。
【0081】
また、連結装置40として、溶接フランジ部41を設けるようにしたが、これに限らない。例えば、
図19に示すように、連結装置40としてピン挿入部43を備えることもできる。ピン挿入部43は、側面12sから水平方向外側に延びて設けられている。ピン挿入部43は、ジョイントピン44が挿入されるピン挿通孔を有している。ピン挿入部43と、他の浮体モジュール10に設けられたピン挿入部43とに、それぞれジョイントピン44を挿入する。これによって、浮体モジュール10同士がピン接合される。なお、浮体モジュール10同士をピン結合する構造は、
図19に例示した構造に限られない。
【0082】
また、
図20に示すように、上述した連結装置40を省略して、複数の浮体モジュール10を跨ぐように連続する渡り通路部材45を設けることもできる。このように構成することで、隣り合う浮体モジュール10の高さが異なる場合であっても、渡り通路部材45によって、浮体モジュール10の間を渡って行き来することができる。ここで、
図20で例示する浮体モジュール10は、それぞれ片側(
図20における下側)に係留装置30を二つずつ備えている。しかし、上記渡り通路部材45が、浮体モジュール10同士を連結する連結装置40の機能を有する場合、
図19で例示した浮体モジュール10と同様に、一つの浮体モジュール10に対して係留装置30を一つだけ設けるようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態及び各変形例では、浮体モジュール同士10を、連結装置40を介して接合するようにしたが、これに限らない。
図21に示すように、浮体モジュール10同士を、溶接、あるいはボルト締結等によって剛接合するようにしてもよい。
【0084】
また、浮体モジュール10(建屋12及び浮体本体11)の上面視形状は、矩形状に限らず、長方形状、多角形状、円形等であってもよい。