【課題】トランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(E))とシス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(Z))とを含む組成物から、効率的にHFO−1132の所望の異性体を得る方法を提供する。
【解決手段】(1)触媒を充填した反応器に、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物を供給し、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応を行う工程;
(2)前記工程(1)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(1)触媒を充填した反応器に、トランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(E))及び/又はシス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(Z))を含む組成物を供給し、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応を行う工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)の製造方法。
(a)触媒を充填した反応器R1に、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)並びにフッ化水素を含む組成物を供給して、フッ素化反応を行うことにより、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)を含む反応生成物を得る工程;
(b)触媒を充填した反応器R2に、前記工程(a)で得られた反応生成物を供給して脱フッ化水素反応を行い、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む反応生成物を得る工程;
(c)前記工程(b)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(d)前記工程(c)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器R1にリサイクルして、前記フッ素化反応に供する工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法。
(x)触媒を充填した反応器に、HFC−143と、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物とを供給して、HFC−143の脱フッ化水素反応と、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応とを行うことによりHFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)を含む組成物を得る工程;
(y)前記工程(x)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(z)前記工程(y)で得られた第1又は第2ストリームを前記工程(x)にリサイクルして、前記異性化反応に供する工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法。
前記工程(1)、(1A)、(1B)、(b)及び(x)で用いる触媒が、Al、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも一種の元素の、ハロゲン化物、酸化物及び酸化ハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、HFC−143等のトリハロゲン化エタンを原料として、触媒存在下で脱フッ酸反応を行うことにより、HFO−1132を得る従来の方法においては、異性体であるHFO−1132(E)とHFO−1132(Z)とが併産されるため、いずれかの異性体のみを得たい場合には、他方の異性体が不要となり、コスト面で非効率的となる。また従来の異性化反応では腐食性の高く、昇華点の低いヨウ素を使用するため設備化は難しいという課題を見出した。
【0009】
よって、本開示は、かかる課題を解決する手段を提供することを課題とする。具体的には、トリハロゲン化エタンの脱ハロゲン化水素反応を利用してHFO−1132を得る方法等におけるように、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)とが併産される場合において、より効率的にHFO−1132(E)および/又はHFO−1132(Z)を得る方法を提供することを課題とする。
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、トリハロゲン化エタンの脱ハロゲン化水素反応により得られるHFO−1132を含む反応組成物において、金属触媒存在下で異性化が可能であることを見出した。また異性化反応を行う工程と、所望の異性体を分離する工程とを組み合わせることによって、上記の課題を解決できることを見出した。本開示はかかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を含む。
【0011】
1. 異性化反応
HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応を行う。この異性化反応は、以下の反応式に従う。E−異性体は、Z−異性体よりも熱力学的に安定性が低いため、この平衡はZ−異性体側に傾いている。よって、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物を異性化反応に供することにより、HFO−1132(Z)の含有割合がより高められた組成物が得られる。この含有割合は温度に依存しており、より高温で反応を行うことでHFO−1132(Z)が減少し、HFO−1132(E)が増加する。反応温度は特に限定されず、適宜設定することができるが、収率の観点から、反応温度は180℃〜500℃程度の範囲、好ましくは200℃〜400℃程度の範囲とすればよい。
【0013】
1.1.
HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物
異性化の原料として用いられる、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、上記異性化反応を著しく妨げない限り、特に限定されず、幅広く選択することができる。
【0014】
その他の成分の例として、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物を得る過程で混入した不純物、及び生成した副生成物等が含まれる。混入した不純物には、原料に含まれる不純物等が含まれる。
【0015】
原料として用いられる、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物を得る方法として、例えば、ハロゲン化エタンを脱ハロゲン化水素反応又は脱ハロゲン化反応に供することにより得る方法等が挙げられる。
【0016】
かかる反応において用いられるハロゲン化エタンとしては、特に限定されず、幅広く選択できる。具体例として、以下のハロゲン化エタン等が挙げられる。これらのハロゲン化エタンは、冷媒、溶剤、発泡剤、噴射剤等の用途として広く使用されており、一般に入手可能である。
1,1,2−トリフルオロエタン(CHF
2CH
2F;HFC−143)
1−ブロモ−1,2−ジフルオロエタン(CHFBrCH
2F)
1−クロロ−1,2−ジフルオロエタン(CHClFCH
2F)
1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン(CHClFCHClF)
1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CHF
2CHF
2)
1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CHClFCHF
2)
【0017】
1.2
脱ハロゲン化水素反応
上記脱ハロゲン化水素反応は、触媒存在下で行うことが好ましい。触媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。
【0018】
触媒としては、脱ハロゲン化水素反応に使用できる公知の触媒を用いることができる。例えば、遷移金属、14族元素及び15族元素、並びにMg、Al等のハロゲン化物、酸化物及び酸化ハロゲン化物等を例示できる。遷移元素の具体例としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ta及びW等を挙げることができる。14族元素の具体例としては、Sn及びPb等を挙げることができる。15族元素の具体例としては、Sb及びBi等を挙げることができる。
【0019】
これらの元素のハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物などを挙げることができる。
【0020】
これらのうちで、好ましい触媒の一例としては、SbCl
5、SbCl
3、SbF
5、TaCl
5、SnCl
4、NbCl
5、FeCl
3、CrCl
3、CrF
3、TiCl
4、MoCl
5、Cr
2O
3、CrO
2、CrO
3、CoCl
2、NiCl
2、MgF
2、AlOF(酸化フッ化アルミニウム)、CrOF(酸化フッ化クロム)等を挙げることができる。
【0021】
これらの触媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、担体に担持されていてもよい。担体としては、特に限定的ではないが、例えば、ゼオライトに代表される多孔性アルミナシリケート、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛及びフッ化アルミニウム等が挙げられ、これらのうち一種若しくは二種以上を混合したもの、又は構造上複合化したものも用いることができる。担体に担持された触媒の具体例としては、Cr
2O
3/Al
2O
3、Cr
2O
3/AlF
3、Cr
2O
3/C、CoCl
2/Cr
2O
3/Al
2O
3、NiCl
2/Cr
2O
3/Al
2O
3、CoCl
2/AlF
3、NiCl
2/AlF
3等を例示できる。
【0022】
触媒としては、クロム原子を含有する触媒を用いることが好ましく、特に、酸化クロムが好ましい。酸化クロムとしては、結晶質酸化クロム及びアモルファス酸化クロム等を例示できる。とりわけフッ素化された、上記の酸化クロムがより好ましい。
【0023】
ハロゲン化エタンを脱ハロゲン化水素反応に供することによりHFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物を得る方法の具体例として、原料としてのHFC−143を400℃、接触時間W/F
O(cat./ml・s)=60秒、15mol%O
2雰囲気下、触媒としてフッ化酸化クロムに接触させる方法等が挙げられる。
【0024】
1.3
脱ハロゲン化反応
脱ハロゲン化反応は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、非プロトン性溶媒中で、有機マグネシウム化合物、亜鉛などの金属試薬と反応させることによって、脱ハロゲン化反応を行うことができる。
【0025】
脱ハロゲン化反応の反応温度は、特に限定されず、適宜設定できる。例えば、−20℃〜200℃とすることができ、好ましくは0℃〜80℃である。
【0026】
脱ハロゲン化反応で使用される金属は特に限定されず、適宜設定できる。例えば、亜鉛、マグネシウム及びニッケル等を使用できる。とりわけ亜鉛が好ましい。
【0027】
1.4
異性化反応における触媒
金属触媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。理論に束縛されないが、触媒Cは、フリーラジカルを発生させることにより、炭素炭素間二重結合を単結合的にさせ、二重結合の部位における回転運動を可能にする結果、異性化を引き起こすと考えられる。
【0028】
1.2.1
異性化反応における金属触媒としては、脱ハロゲン化水素反応等に使用する1.2「脱ハロゲン化水素反応」に例示したルイス酸触媒を用いることができる。
【0029】
触媒としては、クロム原子を含有する触媒を用いることが好ましく、特に、酸化クロムが好ましい。酸化クロムとしては、結晶質酸化クロム及びアモルファス酸化クロム等を例示できる。
【0030】
酸化クロムとしては、特に限定的されず、例えば、組成式:CrO
mにおいて、1.5<m<3、より好ましくは2<m<2.75、さらに好ましくは2<m<2.3である酸化クロムが好ましい。酸化クロム触媒は、反応に適していれば、粉末状及びペレット状等のいかなる形状のものも使用できる。とりわけペレット状のものが好ましい。上記した酸化クロム触媒は、例えば、特開平5−146680号に記載された方法によって調製できる。
【0031】
触媒としては、フッ素化された、上記の酸化クロムがより好ましい。フッ素化された酸化クロムは、特開平5−146680号公報に記載された方法によって調製できる。例えば、上記した方法で得られる酸化クロムをフッ化水素によりフッ素化(HF処理)することによって得ることができる。フッ素化の温度は、例えば100〜460℃程度とすればよい。
【0032】
以下、酸化クロムの調製法とフッ素化された酸化クロム触媒の調製法の一例を示す。まず、クロム塩の水溶液(硝酸クロム、塩化クロム、クロムみょうばん、硫酸クロム等)とアンモニア水とを混合することよって水酸化クロムの沈殿を得る。例えば、硝酸クロムの5.7%水溶液に10%のアンモニア水を等当量から等当量の1.2倍滴下することができる。この時の沈澱反応の反応速度により水酸化クロムの物性を制御することができる。反応速度は、速いことが好ましい。反応速度は反応溶液温度、アンモニア水混合方法(混合速度)、撹拌状態により左右される。
【0033】
この沈澱を濾過洗浄後、乾燥する。乾燥は、例えば、空気中、70〜200℃、特に好ましい具体例としては120℃で、1〜100時間、特に好ましい具体例としては12時間行う。この段階の触媒を水酸化クロムの状態と呼ぶ。この触媒を解砕する。解砕品(粒径は1000μm以下、46〜1000μmの粒径品が95%)の粉体密度が0.6〜1.1g/ml、好ましくは0.6〜1.0g/mlになるように沈澱反応速度を調整する。粉体密度が0.6g/ml以上であれば、ペレットの強度として好ましい。1.1g/ml以下であれば、触媒の活性が十分高く、ペレットが割れにくくなる。粉体の比表面積(BET法による比表面積)は200℃、80分の脱気条件で、100m
2/g以上、より好ましくは120m
2/g以上であることが好ましい。
【0034】
この水酸化クロムの粉体に、要すればグラファイトを3重量%以下混合し、打錠機によりペレットを形成する。ペレットは、例えば、直径3.0mm、高さ3.0mmである。このペレットの圧潰強度(ペレット強度)は210±40Kg/cm
2であることが好ましい。この値が大きすぎると、ガスの接触効率が低下し触媒活性が低下するとともにペレットが割れ易くなる。一方小さすぎる場合は、ペレットが粉化しやすくなり取扱いが困難になる。
【0035】
成形された触媒を不活性ガス雰囲気中、例えば窒素気流中焼成し、非晶質の酸化クロムにする。この焼成温度は360℃以上であることが好ましいが、高くし過ぎると結晶化するためそれを回避できる範囲でより高温にすることが望まれる。焼成は、例えば、380〜460℃、特に400℃で、1〜5時間、特に好ましい具体例として2時間行う。焼成された触媒の比表面積(BET法による比表面積)は、170m
2/g以上、好ましくは180m
2/g以上、より好ましくは220m
2/g以上である。比表面積の上限は、例えば、240m
2/g程度である。比表面積が170m
2/g以上であれば、触媒の活性が十分に高くなる。
【0036】
次いで、酸化クロムをフッ化水素によりフッ素化(HF処理)することによってフッ素化された酸化クロムを得ることができる。フッ素化の温度は、生成する水が凝縮しない温度(例えば、1気圧において150℃)とすればよく、反応熱により触媒が結晶化しない温度を上限とすればよい。フッ素化時の圧力に制限はないが、触媒反応に供される時の圧力で行なうことが好ましい。フッ素化の温度は、例えば100〜460℃である。
【0037】
本開示では、特に、フッ素含有量の多い高フッ素化−酸化クロム触媒を用いることが好ましい。高フッ素化−酸化クロム触媒は、酸化クロムを通常より高温で、長時間フッ素化することにより得られる。
【0038】
高フッ素化−酸化クロム触媒は、30重量%以上のフッ素含有量であることが好ましく、30〜45重量%のフッ素含有量であることがより好ましい。フッ素含有量は、触媒の重量変化もしくは一般的なクロム酸化物の定量分析法により測定することができる。高フッ素化−酸化クロム触媒の比表面積(BET法による)は、通常、25〜130m
2/g程度、好ましくは40〜100m
2/g程度であるが、これに限定されるものではない。
【0039】
フッ素化処理により触媒の表面積は低下するが、一般に高比表面積である程活性が高くなる。フッ素化された段階での比表面積は、25〜130m
2/g程度であることが好ましく、40〜100m
2/g程度であることがより好ましいが、この範囲に限定されるものではない。本開示では、比表面積はBET法によって測定した値である。
【0040】
1.5
反応条件
反応温度は特に限定されず、適宜設定することができる。反応温度は180℃〜500℃程度の範囲とすることができ、好ましくは200℃〜400℃程度の範囲とすればよい。
【0041】
反応時間は特に限定されず、適宜設定することができる。接触時間を長くすれば転化率を上げることができるが、触媒使用量が多くなって設備が大きくなり、非効率となるため、適当な接触時間を設定することができる。通常は、触媒充填量W(g)と、反応系に流す原料ガスの流量Fo(0℃、1気圧での流量:cc/sec)との比率:W/Foで表される接触時間を10〜80g・sec/cc程度、好ましくは20〜60g・sec/cc程度の範囲とすればよい。
【0042】
反応器の圧力は特に限定されず、適宜設定することができるが、圧力が高いとタールなどの重合物の生成が促進されるため、適当な圧力を設定することができる。通常は常圧〜0.2MPa、好ましくは常圧〜0.1MPa程度の範囲とすればよい。
【0043】
異性化反応は、脱フッ化水素反応を、希釈ガス存在下で行うことが好ましい。これにより、触媒寿命が延長される。理論に束縛されないが、重合物及び/又はタールの生成が抑制されるためと考えられる。希釈ガスとしては、酸素、N
2ガス、ヘリウムガス、HFガス、アルゴンガス等を用いることができ、特にコストの点で、N
2ガスが好ましい。
【0044】
希釈ガス存在下で異性化反応を行うためには、反応器に希釈ガスを供給すればよい。供給量は、適宜設定することができる。特に、HFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)の合計量に対して、モル比が0.01〜3.0となるように供給することが好ましく、モル比が0.1〜2.0となるように供給することがより好ましく、モル比が0.2〜1.0となるように供給することがさらに好ましい。
【0045】
反応器出口ガスには、目的物であるHFO−1132(E)及び(Z)の他に、副生成物としてHFO−1132aが含まれうる。反応器出口ガスには、さらに、未反応のHFC−143、及び/又は原料の転移反応により生成したHFC−143aが含まれうる。
【0046】
2.1
本開示の第一の製造プロセスの態様
本開示の第一の製造プロセス態様は、
(1)触媒を充填した反応器に、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物を供給し、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応を行う工程;
(2)前記工程(1)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(3)前記工程(2)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器にリサイクルして、前記異性化反応に供する工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法である。
【0047】
本態様の方法においては、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応における平衡関係を利用することにより、いずれかの化合物の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。例えば、工程(3)において、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームをリサイクルすることによって、リサイクル後の工程(1)において、HFO−1132(E)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。また、工程(3)において、HFO−1132(E)を主成分とする第2ストリームをリサイクルすることによって、リサイクル後の工程(1)において、HFO−1132(Z)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。
【0048】
2.2
工程(1)
工程(1)については上記1.4〜1.5に示したような異性化反応が適用できる。
2.3
工程(2)
工程(2)では、工程(1)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する。例えば、具体的には、工程(1)の異性化反応により生成した反応器出口ガスを、冷却して液化させた後、蒸留して、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する。
【0049】
第1ストリームには、目的物であるHFO−1132(E)の他に、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の原料として用いたHFC−143の転移反応により生成したHFC−143a等が含まれうる。この場合、さらに別途蒸留などの手段によりHFO−1132(E)を分離することができる。
【0050】
2.4
工程(3)
工程(3)では、工程(2)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器にリサイクルして、前記異性化反応に供する。
【0051】
本態様の方法においては、HFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)のいずれかの含有割合がより高められた組成物を回収するために、前記工程(2)で得られた第1及び第2ストリームのうち、前記工程(3)でリサイクルされるストリームとは異なるストリームを回収する工程をさらに含んでいることが好ましい。
【0052】
3.1
本開示の第二の製造プロセスの態様
本開示の第二の製造プロセスの態様は、
(i)ハロゲン化エタンを脱ハロゲン化水素反応又は脱ハロゲン化反応に供することによりHFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)を含む組成物を得る工程;及び
(ii)金属触媒を充填した反応器に、前記工程(i)で得られた、HFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)を含む組成物を供給し、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応を行う工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法である。
【0053】
本態様の方法においては、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応における平衡関係を利用することにより、HFO−1132(E)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。工程(i)において、HFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)を含む組成物であって、HFO−1132(Z)のHFO−1132(E)に対する比率が、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応における平衡関係に従う比率よりも高い組成物が得られる。その後、工程(ii)において異性化反応を行うことにより、平衡関係に従い、異性化反応前よりもHFO−1132(E)の比率がより高められた組成物が得られる。
【0054】
3.2
工程(i)
工程(i)の諸条件は、1.1〜1.3に例示した、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法におけるものと同様とすることができる。
【0055】
3.3
工程(ii)
工程(ii)の諸条件は、第一の製造プロセス態様における工程(1)と同様とすることができる。
【0056】
工程(ii)において、脱フッ化水素反応を、希釈ガス存在下で行うことが好ましい。これにより、触媒寿命が延長される。理論に束縛されないが、重合物及び/又はタールの生成が抑制されるためと考えられる。希釈ガスとしては、酸素、N
2ガス、ヘリウムガス、HFガス、アルゴンガス等を用いることができ、特にコストの点で、N
2ガスが好ましい。
【0057】
希釈ガス存在下で異性化反応を行うためには、反応器に希釈ガスを供給すればよい。供給量は、適宜設定することができる。特に、HFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)の合計量に対して、モル比が0.01〜3.0となるように供給することが好ましく、モル比が0.1〜2.0となるように供給することがより好ましく、モル比が0.2〜1.0となるように供給することがさらに好ましい。
【0058】
本態様の方法においては、第一の製造プロセスの態様と同様に、さらに、
(iii)前記工程(ii)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(iv)前記工程(iii)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器にリサイクルして、前記異性化反応に供する工程
を含んでいてもよい。これにより第一の態様におけるのと同じ効果が得られる。
【0059】
工程(iii)及び(iv)の諸条件は、第一の態様における工程(2)及び(3)と同様とすることができる。
【0060】
4.1
本開示の第三の製造プロセスの態様
本開示の第三の製造プロセスの態様は、
(a)触媒を充填した反応器R1に、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)並びにフッ化水素を含む組成物を供給して、フッ素化反応を行うことにより、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)を含む反応生成物を得る工程;
(b)触媒を充填した反応器R2に、前記工程(a)で得られた反応生成物を供給して脱フッ化水素反応を行い、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む反応生成物を得る工程;
(c)前記工程(b)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(d)前記工程(c)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器R1にリサイクルして、前記フッ素化反応に供する工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法である。
【0061】
本態様の方法においては、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応における平衡関係を利用することにより、いずれかの化合物の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。例えば、工程(c)において、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームをリサイクルすることによって、リサイクル後の工程(b)において、HFO−1132(E)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。また、工程(c)において、HFO−1132(E)を主成分とする第2ストリームをリサイクルすることによって、リサイクル後の工程(b)において、HFO−1132(Z)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。
【0062】
4.2
工程(a)
4.2.1フッ素化反応
フッ素化反応には触媒を用いた液相又は気相のフッ素化反応が適応できる。連続式で反応できるため生産効率が良好であるという観点から気相フッ素化が好ましい。液相フッ素化反応の態様としてはHF中でアンチモン触媒を用いてフッ素化反応を行う態様などが挙げられる。
4.2.2 触媒
気相フッ素化の触媒としては、酸化フッ化クロム、酸化フッ化アルミニウム、金属フッ化物等が好ましい。触媒としては、とりわけ、酸化フッ化クロム触媒が好ましい。
【0063】
4.2.3 反応器R1
触媒を充填した反応器は、上述の触媒が充填された固定床、流動床などの形式の反応器で、ペレット状、粉体状、粒状などに整形された触媒を用いることができる。工程(c)で分離されたHFO−1132(E)を主成分とする第1ストリーム、又はHFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームは、反応器R1に供給され、フッ素化反応(HF付加反応)によりHFC−143を生成する。
【0064】
4.2.4 反応条件
反応温度は200℃〜400℃程度の範囲とすることができ、好ましくは250℃〜350℃程度、の範囲とすればよい。
【0065】
反応時間については適宜設定することができ、特に限定されない。接触時間を長くすれば転化率を上げることができるが、触媒量が多くなって設備が大きくなり、非効率であるため、適当な接触時間を選択する必要がある。通常は、触媒充填量W(g)と、反応系に流す原料ガスの流量Fo(0℃、1気圧での流量:cc/sec)との比率:W/Foで表される接触時間を10〜80g・sec/cc程度、好ましくは20〜60g・sec/cc程度の範囲とすればよい。もう一方の原料であるフッ化水素は化学量論量以上あればHFO−1132(E)又はHFO−1132(Z)を効率よくHFC−143に添加することができるが、触媒劣化の抑制などを考慮してHFO−1132(E)又はHFO−1132(Z)の化学量論量よりも過剰に添加することができる。フッ化水素の、HFO−1132(E)又はHFO−1132(Z)に対する比率は通常0.5〜20程度であり、1〜10程度が好ましい。
【0067】
4.3.1 触媒
触媒としては、「1.2 脱ハロゲン化水素反応」で例示したようなものが使用できる。
【0068】
4.3.2 反応器R2
触媒を充填した反応器R2は、上述の触媒が充填された固定床、流動床などの形式の反応器で、ペレット状、粉体状、粒状などに整形された触媒を用いることができる。
【0069】
4.3.3 反応条件
脱フッ化水素反応の行われる反応温度は200℃〜500℃程度の範囲とすることができ、好ましくは300℃〜450℃程度とすればよい。
【0070】
反応時間については適宜設定することができ、特に限定されない。接触時間を長くすれば転化率を上げることができるが、触媒量が多くなって設備が大きくなり、非効率であるため、適当な接触時間を選択する必要がある。通常は、触媒充填量W(g)と、反応系に流す原料ガスの流量Fo(0℃、1気圧での流量:cc/sec)との比率:W/Foで表される接触時間を10〜80g・sec/cc程度、好ましくは20〜60g・sec/cc程度の範囲とすればよい。
【0071】
触媒の劣化防止のために酸化剤を添加することができ、代表的なものとして酸素、塩素などがあげられる。酸素の添加量は、HFC−143に対して0.1モル%〜20モル%とすることができる。
【0072】
工程(b)において、脱フッ化水素反応を、希釈ガス存在下で行うことが好ましい。これにより、触媒寿命が延長される。理論に束縛されないが、重合物及び/又はタールの生成が抑制されるためと考えられる。希釈ガスとしては、酸素、N
2ガス、ヘリウムガス、HFガス、アルゴンガス等を用いることができ、特にコストの点で、N
2ガスが好ましい。
【0073】
希釈ガス存在下で脱フッ化水素反応を行うためには、反応器に不活性ガスを供給すればよい。供給量は、適宜設定することができる。特に、HFC−143に対して、モル比が0.01〜3.0となるように供給することが好ましく、モル比が0.1〜2.0となるように供給することがより好ましく、モル比が0.2〜1.0となるように供給することがさらに好ましい。
【0074】
4.4
工程(c)
工程(c)では、工程(b)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する。例えば、具体的には、工程(b)の脱フッ化水素反応により生成した反応器出口ガスを、冷却して液化させた後、蒸留して、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する。
【0075】
第1ストリームには、目的物であるHFO−1132(E)の他に、工程(a)で得られたHFC−143の転移反応により生成したHFC−143a等が含まれうる。この場合、さらに別途蒸留などの手段によりHFO−1132(E)を分離することができる。
【0076】
一方、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームには、脱フッ化水素反応により生成したHFが含まれることがある。これについてはHFの除去処理を行った後、必要に応じて、モレキュラーシーブ等の乾燥剤で乾燥して、異性化反応工程、もしくはHF付加反応工程で用いた反応器に再度供給する。
【0077】
4.5
工程(d)
工程(d)では、工程(c)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器R1にリサイクルして、前記フッ素化反応に供する。
【0078】
5.1
本開示の第四の製造プロセスの態様
本開示の第四の製造プロセスの態様は、
(x)触媒を充填した反応器に、HFC−143と、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物とを供給して、HFC−143の脱フッ化水素反応と、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応とを行うことによりHFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)を含む組成物を得る工程;
(y)前記工程(x)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する工程;及び
(z)前記工程(y)で得られた第1又は第2ストリームを前記工程(x)にリサイクルして、前記異性化反応に供する工程
を含む、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の製造方法である。
【0079】
本態様の方法においては、HFO−1132(E)とHFO−1132(Z)との間の異性化反応における平衡関係を利用することにより、いずれかの化合物の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。例えば、工程(z)において、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームをリサイクルすることによって、リサイクル後の工程(1)において、HFO−1132(E)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。また、工程(3)において、HFO−1132(E)を主成分とする第2ストリームをリサイクルすることによって、リサイクル後の工程(x)において、HFO−1132(Z)の含有割合がより高められた組成物を得ることができる。また本様態ではHFO−143の脱フッ素化反応とHFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)の異性化反応がフッ化酸化クロムを触媒として反応することが可能であることを利用し、同一の反応器を使用することで設備コストを抑えることができる。
【0081】
5.2.1 触媒
触媒としては、「1.2 脱ハロゲン化水素反応」で例示したような異性化反応で用いられる触媒が利用できる。特にフッ素化された酸化クロムが好ましい。
5.2.2 反応器R2
触媒を充填した反応器は、上述の触媒が充填された固定床、流動床などの形式の反応器で、ペレット状、粉体状、粒状などに整形された触媒を用いることができる。
【0082】
5.2.3 反応条件
脱フッ化水素反応、異性化反応の行われる反応温度は200℃〜500℃程度の範囲とすることができ、好ましくは300℃〜450℃程度とすればよい。
【0083】
反応時間については適宜設定することができ、特に限定されない。接触時間を長くすれば転化率を上げることができるが、触媒量が多くなって設備が大きくなり、非効率であるため、適当な接触時間を選択する必要がある。通常は、触媒充填量W(g)と、反応系に流す原料ガスの流量Fo(0℃、1気圧での流量:cc/sec)との比率:W/Foで表される接触時間を10〜80g・sec/cc程度、好ましくは20〜60g・sec/cc程度の範囲とすればよい。
【0084】
触媒の劣化防止のために酸化剤を添加することができ、代表的なものとして酸素、塩素などがあげられる。酸素の添加量は、HFC−143に対して0.1モル%〜10モル%とすることができる。
【0085】
工程(x)において、脱フッ化水素反応を、希釈ガス存在下で行うことが好ましい。これにより、触媒寿命が延長される。理論に束縛されないが、重合物及び/又はタールの生成が抑制されるためと考えられる。希釈ガスとしては、酸素、N
2ガス、ヘリウムガス、HFガス、アルゴンガス等を用いることができ、特にコストの点で、N
2ガスが好ましい。
【0086】
希釈ガス存在下で脱フッ化水素反応を行うためには、反応器に希釈ガスを供給すればよい。供給量は、適宜設定することができる。特に、HFC−143に対して、モル比が0.01〜3.0となるように供給することが好ましく、モル比が0.1〜2.0となるように供給することがより好ましく、モル比が0.2〜1.0となるように供給することがさらに好ましい。
【0087】
5.3
工程(y)
工程(y)では、工程(x)で得られた反応生成物を、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する。例えば、具体的には、工程(x)の異性化反応により生成した反応器出口ガスを、冷却して液化させた後、蒸留して、HFO−1132(E)を主成分とする第1ストリームと、HFO−1132(Z)を主成分とする第2ストリームとに分離する。
【0088】
第1ストリームには、目的物であるHFO−1132(E)の他に、HFO−1132(E)及び/又はHFO−1132(Z)を含む組成物の原料として用いたHFC−143の転移反応により生成したHFC−143a等が含まれうる。この場合、さらに別途蒸留などの手段によりHFO−1132(E)を分離することができる。
【0089】
5.4
工程(z)
工程(z)では、工程(y)で得られた第1又は第2ストリームを、前記反応器にリサイクルして、前記異性化反応に供する。
【0090】
本態様の方法においては、HFO−1132(E)及びHFO−1132(Z)のいずれかの含有割合がより高められた組成物を回収するために、前記工程(y)で得られた第1及び第2ストリームのうち、前記工程(z)でリサイクルされるストリームとは異なるストリームを回収する工程をさらに含んでいることが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0092】
<実施例1>
(1)trans-1,2-ジフルオロエチレン及び/またはcis-1,2-ジフルオロエチレンの異性化反応
trans-1,2-ジフルオロエチレン及び/またはcis-1,2-ジフルオロエチレンを下記の方法で調製した酸化フッ化クロム触媒を用いて異性化反応を行い、どちらか一方の異性体濃度が供給したtrans-1,2-ジフルオロエチレン及び/またはcis-1,2-ジフルオロエチレンからなる原料組成物よりも上昇した反応組成物を得た。
【0093】
硝酸クロムの5.7%水溶液765gに、10%のアンモニア水114gを加え、得られた沈殿を濾過洗浄後、空気中で120℃で12時間乾燥して、水酸化クロムを得た。これを直径3.0mm、高さ3.0mmのペレットに成形し、窒素気流中400℃で2時間焼成した。得られた酸化クロムは、Cr量の定量及び元素分析の結果、CrO
2.0と特定された。このペレット状の酸化クロムをハステロイC製反応管に充填し、フッ化水素を窒素にて
20 vol%に希釈し、200〜360
℃まで段階的に温度を上げながら加熱し、360℃に到達した後、100%HFにより220時間フッ素化して、フッ素化された酸化クロム触媒を得た。
【0094】
上記の方法で得られた触媒を外径12.7mm、長さ700mmの反応器に10g充填し、異性化反応を行った。cis-1,2-ジフルオロエチレン93mol%、1,1,1,2-テトラフルオロエタン1.2mol%、1,1,2-トリフルオロエタン3.8mol%からなる原料ガスを10Nml/minの速度で反応器に供給し、250〜300℃で異性化反応を行った。なお、原料ガスには触媒の劣化防止のために酸素または窒素を同伴させた。反応の結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
(2)異性化反応組成物の分離
上記異性化反応で得られた反応器出口組成物を蒸留してtrans-1,2-ジフルオロエチレンとcis-1,2-ジフルオロエチレンそれぞれを主成分とする組成物に分離した。蒸留塔として、内径25mm、高さ2mの塔に充填物としてヘリパックS-1を用いた蒸留塔を用いて分離を行った。結果を以下に示す。
【0097】
(3)反応プロセス
上記反応結果、及び蒸留結果を用いた、各ストリームにおける各成分の流量(kg/hr)を表2に示す。目的生成物はHFO-1132(E)である。また、プロセスの概略図を
図2に示す。
【0098】
【表2】
目的とするHFO-1132(E)のみを効率よく製造するプロセスが構築できた。
【0099】
<実施例2>
目的とする生成物をHFO-1132(Z)としたこと以外は実施例1と同じ方法で異性化反応および分離を行った。結果を表3に示す。プロセスの概略図を
図2に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
<実施例3>
cis-1,2-ジフルオロエチレンの気相フッ素化を行い、HFC-143とした後、これを脱フッ化水素反応してtrans-1,2-ジフルオロエチレンとcis-1,2-ジフルオロエチレンからなる組成物を得、これを分離工程へ送ってtrans-1,2-ジフルオロエチレン及びcis-1,2-ジフルオロエチレンそれぞれを主成分とするストリームに分離し、cis-1,2-ジフルオロエチレンをフッ素化反応器にリサイクルするプロセスを構築した。
【0102】
(1)HF付加反応
cis-1,2-ジフルオロエチレンを実施例1と同様の方法で得た触媒10g充填された外径12.7mm、長さ700mmの反応器に供給してフッ素化反応を行った。cis-1,2-ジフルオロエチレン93mol%、1,1,1,2-テトラフルオロエタン1.2mol%、1,1,2-トリフルオロエタン3.8mol%からなる原料ガスをトータル60Nml/minの速度で反応器に供給し、フッ素化反応を行った。反応の結果を以下に示す。
【表4】
【0103】
(2)脱フッ化水素反応
上記の反応により得られたHFC-143を以下の条件で脱フッ化水素反応に供給し、trans-1,2-ジフルオロエチレンとcis-1,2-ジフルオロエチレンからなる組成物を得た。外径12.7mm、長さ700mmの反応器に実施例1と同様の方法で得た触媒を10g充填し、350~400℃で脱フッ化水素反応を行った。なお、原料ガスには触媒の劣化防止のために酸素を同伴させた。反応の結果を以下に示す。
【0104】
【表5】
【0105】
(3)反応プロセス
上記反応結果、及び蒸留結果を用いた各ストリームにおける各成分の流量(kg/hr)を下記表1に示す。目的生成物はHFO-1132(E)である。また、ストリーム中に含まれるHFは次の工程に送る際に脱酸装置により除去されて送られるが、脱酸は吸着、蒸留、水洗などいずれの方法でも行うことができる。プロセスの概略図を
図3に示す。
【0106】
【表6】
【0107】
<実施例4>
HFC−143とcis-1,2-ジフルオロエチレンを脱フッ化水素、異性化反応してtrans-1,2-ジフルオロエチレンとcis-1,2-ジフルオロエチレンからなる組成物を得、これを分離工程へ送ってtrans-1,2-ジフルオロエチレン及びcis-1,2-ジフルオロエチレンそれぞれを主成分とするストリームに分離し、cis-1,2-ジフルオロエチレンを脱フッ素化、異性化反応器にリサイクルするプロセスを構築した。
【0108】
(1)脱フッ化水素、異性化反応
HFC-143とcis-1,2-ジフルオロエチレンを以下の条件で脱フッ化水素、異性化反応に供給し、trans-1,2-ジフルオロエチレンとcis-1,2-ジフルオロエチレンからなる組成物を得た。外径12.7mm、長さ700mmの反応器に実施例1と同様の方法で得た触媒を10g充填し、350℃で脱フッ化水素反応を行った。反応の結果を以下に示す。
【表7】
【0109】
(2)反応プロセス
上記反応結果、及び蒸留結果を用いた、各ストリームにおける各成分の流量(kg/hr)を下記表8に示す。目的生成物はHFO-1132(E)である。また、ストリーム中に含まれるHFは次の工程に送る際に脱酸装置により除去されて送られるが、脱酸は吸着、蒸留、水洗などいずれの方法でも行うことができる。プロセスの概略図を
図4に示す。
【表8】