【0015】
なお、この数平均粒子径は、電子顕微鏡の画像処理計算により算出した値を用いる。以下に詳しくその具体的な方法を述べる。
疎水性のゴム(A)中に分散した親水性の重合体(B)の粒子を走査電子顕微鏡(SEM)(例えば、日本電子株式会社製 FESEM JEOL JSM−6335F Field Emission Scanning Electron Microscope、加速電圧15kV)を用いて画像を取り込み、その画像処理により粒子の数平均粒子径を計算する。
その準備として、本発明のタイヤ用ゴム組成物のフィルム(厚み50〜200μm)から、ウルトラミクロトームを用いて厚さ300nmの超薄切片を切り出した試料をSEM試料台に載せて、試料を染色剤として四酸化オスミウムを用いた蒸着器を用いて染色を行う。
走査電子顕微鏡に染色された試料を入れ、10μA、15kV、10,000倍に拡大して、疎水性のゴム(A)中に分散した親水性の重合体(B)の粒子の観察を行い、その中から粒子を任意に100個選び、各々の長径を測定し、その数平均値を計算して、本発明の数平均粒子径とする。電子顕微鏡の画像に附属した画像解析装置で長径の数平均粒子径を計算させてもいいし、画像から直接粒子の長径を100個測定し、その数平均値を求めることもできる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0021】
製造例1 <ゴム組成物(C−1)の製造>
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、スチレンブタジエンゴム(旭化成製:タフデン4850)(A−1)200部および1,4−ジオキサン800部を仕込み、スチレンブタジエンゴムを溶解した。
続いて、N−イソプロピルアクリルアミド(b−1)50部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.500部を混合した。得られた混合液をフラスコ内に窒素を吹き込みながら、70℃に昇温しラジカル重合を5時間行い、樹脂濃度24重量%のポリN−イソプロピルアクリルアミド(B−1)が分散したゴム組成物(C−1)の1,4−ジオキサン溶液を得た。
【0022】
製造例2 <ゴム組成物(C−2)の製造>
製造例1において、N−イソプロピルアクリルアミド50部を2−ヒドロキシエチルアクリレート(b−2)50部とした以外は、同様な操作を行い、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート(B−2)が分散したゴム組成物(C−2)の樹脂溶液を得た。
【0023】
製造例3 <ゴム組成物(C−3)の製造>
製造例1において、N−イソプロピルアクリルアミド50部をビニルピロリドン(b−3)50部とした以外は、同様な操作を行い、ポリビニルピロリドン(B−3)が分散したゴム組成物(C−3)の樹脂溶液を得た。
【0024】
製造例4 <ゴム組成物(C−4)の製造>
製造例1において、N−イソプロピルアクリルアミド50部をメタクリル酸(b−4)50部とした以外は、同様な操作を行い、ポリメタクリル酸(B−4)が分散したゴム組成物(C−4)の樹脂溶液を得た。
【0025】
製造例5 <ゴム組成物(C−5)の製造>
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、スチレンブタジエンゴム200部および1,4−ジオキサン800部を仕込み、スチレンブタジエンゴムを溶解した。
続いて、酢酸ビニル(b−5)50部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.500部を混合した。得られた混合液をフラスコ内に窒素を吹き込みながら、70℃に昇温しラジカル重合を5時間行った。次いで2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.100部を1,4−ジオキサン5.0部に溶解させた開始剤溶液を加えて85℃に昇温しさらに3時間反応を継続した。
次に10%水酸化ナトリウム水溶液5部を加え、70℃で1時間加水分解を行い、鹸化度81%のポリビニルアルコール(B−5)が分散したゴム組成物(C−5)の溶液を得た。なお、鹸化度の測定は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
【0026】
比較製造例1 <ゴム組成物(C’−1)の製造 >
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、N−イソプロピルアクリルアミド100部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.010部および1,4−ジオキサン400部を仕込んだ。
得られた混合液をフラスコ内に窒素を吹き込みながら、70℃に昇温しラジカル重合を5時間行い、樹脂濃度20重量%の重合体(B’−1)溶液を得た。
次に、別途作成した20重量%スチレンブタジエンゴムの1,4−ジオキサン溶液100部を、上記で得られた重合体(B’−1)溶液40部を加え、(C’−1)の樹脂溶液を得た。
【0027】
実施例1
ガラス基板をスピンコーターに取り付け、製造例1で得られたゴム組成物(C−1)の樹脂溶液500μLを滴下し、スピンコート(1000rpmで1分間回転)を行い、物性測定と性能評価するために、膜厚200μmの(C−1)の樹脂フィルムを得た。
この樹脂フィルムをオスミウム染色して電子顕微鏡(FE−SEM、(株)日立ハイテクマニファクチャ&サービス製)で観察したところ、樹脂フォルムのスチレンブタジエンゴム中にポリN−イソプロピルアクリルアミド(B−1)の重合体粒子が分散していることが確認された。
【0028】
実施例2〜5と比較例1
ゴム組成物(C−2)〜(C−5)と(C’−1)の樹脂溶液を、実施例1と同様な操作を行い、樹脂フィルムを得た。
得られたゴム組成物(C−2)〜(C−5)と(C’−1)の樹脂フィルムのスチレンブタジエンゴム中にそれぞれ(B−1)〜(B−5)と(B’−1)の重合体粒子が分散していることが確認された。
【0029】
【表1】
【0030】
<コム組成物(C)中の重合体(B)の分散粒子の数平均粒子径の測定>
前述したように、樹脂フォルムを予め染色して超薄切片を切り出した試料をSEMで観察し、ゴム中に分散した重合体の粒子を任意に100個選び、各々の長径を測定し数平均値を計算することで数平均粒子径を求めた。
【0031】
<樹脂フィルム表面の接触角の測定>
協和電子科学(株)製のCA?A型接触角計を用いて、樹脂フォルムの表面の接触角(°)を1/2θ法で測定した。
なお、タイヤとしてのウェットグリップ性能を発揮するためには、この条件で測定したゴム組成物の樹脂表面の接触角は、一般には50°以下が好ましい。
【0032】
<ウェットグリップ性能の評価(ウェット摩擦係数の測定)>
ウェットグリップ性能は、JIS K 7125に準じて、水平試験テーブルとして水で濡らした表面が平滑なコンクリート板を用い、その上に厚み約0.5mmの樹脂フォルムを約8.0cm×20.0cmにカットした試料を載置し、試料の上に縦6.3cm×横6.3cm(面積40cm
2)である200gの滑り片を載せ、その上に錘を載せ、100mm/分で錘を引っ張って移動させた際に、ロードセルが示した初期ピーク値より最大静止摩擦係数を求めた。
なお、タイヤとしてのウェットグリップ性能を発揮するためには、この条件で測定した最大静止摩擦係数は、一般には0.60以上が好ましい。
【0033】
分散した重合体の数平均粒子径が1μm以下である本発明の実施例1〜5のゴム組成物(C−1)〜(C−5)はいずれも接触角が50°以下であり、ウェット摩擦係数が0.60以上であった。
一方、重合体の数平均粒子径が1μmを超える比較例1のゴム組成物(C’−1)の接触角は81 °と大きく、ウェット摩擦係数は0.38と低かった。