カチオン硬化成分と、アルミニウムキレートを保持する多孔質粒子と、光分解によりシラノール基を生成する光分解性ケイ素化合物とを含有するカチオン硬化性組成物である。
前記光分解性ケイ素化合物が、ペルオキシシリル基、ケイ原子に直接結合するo−ニトロベンジルオキシ基、及びα−ケトシリル基の少なくともいずれかを有する請求項1に記載のカチオン硬化性組成物。
請求項1から10のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物に光を照射し、前記光分解性ケイ素化合物を光分解し、シラノール基を生成させた後に、加熱することを含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(カチオン硬化性組成物)
本発明のカチオン硬化性組成物は、カチオン硬化成分と、多孔質粒子と、光分解性ケイ素化合物とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記カチオン硬化性組成物は、光照射によりシラノール基を生成し、熱により硬化するカチオン硬化性組成物である。
【0012】
<カチオン硬化成分>
前記カチオン硬化成分としては、カチオン硬化する有機材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、ビニルエーテル樹脂などが挙げられる。
【0013】
<<エポキシ樹脂>>
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0014】
前記脂環式エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンモノ乃至ジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、エポキシ−[エポキシ−オキサスピロC
8−15アルキル]−シクロC
5−12アルカン(例えば、3,4−エポキシ−1−[8,9−エポキシ−2,4−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3−イル]−シクロヘキサン等)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボレート、エポキシC
5−12シクロアルキルC
1−3アルキル−エポキシC
5−12シクロアルカンカルボキシレート(例えば、4,5−エポキシシクロオクチルメチル−4’,5’−エポキシシクロオクタンカルボキシレート等)、ビス(C
1−3アルキルエポキシC
5−12シクロアルキルC
1−3アルキル)ジカルボキシレート(例えば、ビス(2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等)などが挙げられる。
【0015】
なお、脂環式エポキシ樹脂としては、市販品として入手容易である点から、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔(株)ダイセル製、商品名:セロキサイド♯2021P;エポキシ当量 128〜140〕が好ましく用いられる。
【0016】
なお、上記例示中において、C
8−15、C
5−12、C
1−3との記載は、それぞれ、炭素数が8〜15、炭素数が5〜12、炭素数が1〜3、であることを意味し、化合物の構造の幅があることを示している。
【0017】
前記脂環式エポキシ樹脂の一例の構造式を、以下に示す。
【化1】
【0018】
前記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、樹脂特性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく使用できる。また、これらのエポキシ樹脂にはモノマーやオリゴマーも含まれる。
【0019】
<<オキセタン化合物>>
前記カチオン硬化性組成物において、前記エポキシ樹脂に前記オキセタン化合物を併用することで、発熱ピークをシャープにすることができる。
【0020】
前記オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸 ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)]メチルエステル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。
【0021】
前記カチオン硬化性組成物における前記カチオン硬化成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%以上99質量%以下が好ましく、50質量%以上98質量%以下がより好ましく、70質量%以上97質量%以下が特に好ましい。
なお、前記含有量は、前記カチオン硬化性組成物の不揮発分における含有量である。以下においても同様である。
【0022】
前記カチオン硬化成分における前記エポキシ樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、80質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよい。
【0023】
前記カチオン硬化成分における前記オキセタン化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0質量%超であって、20質量%以下であってもよいし、15質量%以下であってもよいし、10質量%以下であってもよい。
【0024】
<多孔質粒子>
前記多孔質粒子は、アルミニウムキレートを保持する。
前記多孔質粒子は、多くの細孔を有する粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機樹脂で構成される多孔質有機樹脂粒子などが挙げられる。
前記多孔質粒子は、例えば、その細孔内に前記アルミニウムキレートを保持する。言い換えれば、多孔質粒子マトリックス中に存在する微細な孔に、アルミニウムキレートが取り込まれて保持されている。
【0025】
前記多孔質粒子の細孔の平均細孔直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜300nmが好ましく、5nm〜150nmがより好ましい。
【0026】
<<多孔質有機樹脂粒子>>
前記多孔質有機樹脂粒子としては、有機樹脂で構成される多孔質粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
前記有機樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリウレア樹脂が好ましい。即ち、前記多孔質有機樹脂粒子は、少なくともポリウレア樹脂で構成されることが好ましい。
前記多孔質有機樹脂粒子は、更に、ビニル樹脂を構成成分に含んでいてもよい。
【0028】
<<<ポリウレア樹脂>>>
前記ポリウレア樹脂とは、その樹脂中にウレア結合を有する樹脂である。
前記多孔質有機樹脂粒子を構成する前記ポリウレア樹脂は、例えば、多官能イソシアネート化合物を乳化液中で重合させることにより得られる。前記ポリウレア樹脂は、樹脂中に、イソシアネート基に由来する結合であって、ウレア結合以外の結合、例えば、ウレタン結合などを有していてもよい。
前記ポリウレア樹脂から構成される多孔質粒子は、前記多孔質粒子がシリカなどの多孔質無機粒子から構成される場合と比べて、熱応答性に優れる。
【0029】
<<<ビニル樹脂>>>
前記ビニル樹脂とは、ラジカル重合性ビニル化合物を重合して得られる樹脂である。
前記ビニル樹脂は、前記多孔質粒子の機械的性質を改善する。これにより、カチオン硬化成分の硬化時の熱応答性、特に低温領域でシャープな熱応答性を実現することができる。
【0030】
前記ビニル樹脂は、例えば、多官能イソシアネート化合物を含有する乳化油相に、ラジカル重合性ビニル化合物を含有させておき、前記乳化油相中で前記多官能イソシアネート化合物を重合させる際に、同時に前記ラジカル重合性ビニル化合物をラジカル重合させることにより得ることができる。
【0031】
前記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、1μm以上5μm以下が特に好ましい。
【0032】
<<アルミニウムキレート>>
前記アルミニウムキレートとしては、例えば、下記一般式(A)で表される、3つのβ−ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物が挙げられる。ここで、アルミニウムにはアルコキシ基は直接結合していない。直接結合していると加水分解し易く、前記多孔質粒子を作製する際の乳化処理に適さないからである。
【0034】
前記一般式(A)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アルキル基又はアルコキシル基を表す。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、オレイルオキシ基などが挙げられる。
【0035】
前記一般式(A)で表される錯体化合物としては、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(オレイルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0036】
前記多孔質粒子における前記アルミニウムキレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
<<多孔質粒子の表面>>
前記多孔質粒子は、潜在性をより高める点で、表面にアルコキシシランカップリング剤の反応生成物を有していてもよい。
前記反応生成物は、アルコキシシランカップリング剤が反応して得られる。
前記反応生成物は、前記多孔質粒子の表面に存在する。
【0038】
前記多孔質粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カチオン硬化成分に対して、20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0039】
前記カチオン硬化性組成物における前記多孔質粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0040】
<<多孔質粒子の製造方法>>
アルミニウムキレートを保持する前記多孔質粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
アルミニウムキレートを保持する前記多孔質無機粒子の製造方法としては、例えば、アルミニウムキレートを含む液に多孔質無機粒子を含浸させ、前記多孔質無機粒子の細孔に前記アルミニウムキレートを充填する方法が挙げられる。
アルミニウムキレートを保持する前記多孔質有機樹脂粒子の製造方法としては、例えば、以下の製造方法などが挙げられる。
【0041】
<<<多孔質有機樹脂粒子の製造方法>>>
前記多孔質有機樹脂粒子の製造方法は、例えば、多孔質粒子作製工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、不活性化工程などのその他の工程を含む。
【0042】
−多孔質粒子作製工程−
前記多孔質粒子作製工程は、乳化液作製処理と、重合処理とを少なくとも含み、好ましくは、追加充填処理を含み、更に必要に応じて、その他の処理を含む。
【0043】
−−乳化液作製処理−−
前記乳化液作製処理は、アルミニウムキレートと、多官能イソシアネート化合物と、好ましくは有機溶剤とを混合して得られる液を乳化処理して乳化液を得る処理であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホモジナイザーを用いて行うことができる。
前記多孔質粒子を構成する樹脂が、ポリウレア樹脂のみではなく、更にビニル樹脂を含む場合、前記液は、更に、ラジカル重合性ビニル化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0044】
前記アルミニウムキレートとしては、本発明の前記多孔質粒子の説明における前記アルミニウムキレートが挙げられる。
【0045】
前記乳化液における油滴の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上100μm以下が好ましい。
【0046】
−−−多官能イソシアネート化合物−−−
前記多官能イソシアネート化合物は、一分子中に2個以上のイソシアネート基、好ましくは3個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
前記多官能イソシアネート化合物としては、例えば、2官能イソシアネート化合物、3官能イソシアネート化合物が挙げられる。
【0047】
3官能イソシアネート化合物の好ましい例としては、トリメチロールプロパン1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた下記一般式(2)のTMPアダクト体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させた下記一般式(3)のイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モルのうちの2モルから得られるジイソシアネートウレアに残りの1モルのジイソシアネートが縮合した下記一般式(4)のビュウレット体が挙げられる。
【0049】
前記一般式(2)〜(4)中、置換基Rは、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた部分である。このようなジイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
2官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメレチンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネン・ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、ジクロロビフェニルジイソシアナート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0051】
前記アルミニウムキレートと前記多官能イソシアネート化合物との配合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウムキレートの配合量が、少なすぎると、硬化させるべきカチオン硬化成分の硬化性が低下し、多すぎると、得られる潜在性硬化剤の潜在性が低下する。その点において、前記多官能イソシアネート化合物100質量部に対して、前記アルミニウムキレート10質量部以上500質量部以下が好ましく、10質量部以上300質量部以下がより好ましい。
【0052】
−−−有機溶剤−−−
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、揮発性有機溶剤が好ましい。
前記有機溶剤は、前記アルミニウムキレート、前記多官能イソシアネート化合物、前記ラジカル重合性ビニル化合物、及び前記ラジカル重合開始剤のそれぞれの良溶媒(それぞれの溶解度が好ましくは0.1g/ml(有機溶剤)以上)であって、水に対しては実質的に溶解せず(水の溶解度が0.5g/ml(有機溶剤)以下)、大気圧下での沸点が100℃以下のものが好ましい。このような揮発性有機溶剤の具体例としては、アルコール類、酢酸エステル類、ケトン類などが挙げられる。中でも、高極性、低沸点、貧水溶性の点で酢酸エチルが好ましい。
【0053】
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
−−−ラジカル重合性ビニル化合物−−−
前記ラジカル重合性ビニル化合物は、分子内にラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である。
前記ラジカル重合性ビニル化合物は、いわゆる単官能ラジカル重合性化合物、多官能ラジカル重合性化合物を包含する。
前記ラジカル重合性ビニル化合物は、多官能ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。これは、多官能ラジカル重合性化合物を使用することにより、低温領域でシャープな熱応答性を実現することがより容易になるからである。この意味からも、前記ラジカル重合性ビニル化合物は、多官能ラジカル重合性化合物を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましい。
【0055】
前記単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、単官能ビニル系化合物(例えば、スチレン、メチルスチレン等)、単官能(メタ)アクリレート系化合物(例えば、ブチルアクリレートなど)など挙げられる。
前記多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能ビニル系化合物(例えば、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル等)、多官能(メタ)アクリレート系化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等)などが挙げられる。前記ポリエチレングリコールジアクリレートとしては、例えば、下記一般式(B)で表されるポリエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
CH
2=CH−C(=O)−O−(CH
2CH
2O)
n−C(=O)−CH=CH
2
・・・一般式(B)
ただし、前記一般式(B)中、nは、2〜10の整数を表す。
これらの中でも、潜在性及び熱応答性の点から、多官能ビニル系化合物、特にジビニルベンゼンを好ましく使用することができる。
また、これらの中でも、架橋点間距離が長くなることで前記追加充填処理において、前記アルミニウムキレートを前記多孔質粒子に追加で充填しやすく、前記多孔質粒子に、前記アルミニウムキレートを高充填できる点、すなわち硬化開始温度を低温化できる点において、前記ポリエチレングリコールジアクリレートを好ましく使用することができ、前記一般式(B)で表されるポリエチレングリコールジアクリレートをより好ましく使用することができる。
【0056】
なお、多官能ラジカル重合性化合物は、多官能ビニル系化合物と多官能(メタ)アクリレート系化合物とから構成されていてもよい。このように併用することにより、熱応答性を変化させたり、反応性官能基を導入できたりといった効果が得られる。
【0057】
前記ラジカル重合性ビニル化合物の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多官能イソシアネート化合物100質量部に対して、1質量部以上80質量部以下が好ましく、10質量部以上60質量部以下がより好ましい。
【0058】
−−−ラジカル重合開始剤−−−
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤などが挙げられる。
【0059】
前記ラジカル重合開始剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ラジカル重合性ビニル化合物100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。
【0060】
−−重合処理−−
前記重合処理としては、前記乳化液中で前記多官能イソシアネート化合物を重合させて多孔質粒子を得る処理であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0061】
前記多孔質粒子は、前記アルミニウムキレートを保持する。
【0062】
前記重合処理においては、前記多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が加水分解を受けてアミノ基となり、そのアミノ基と前記多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応してウレア結合を生成して、ポリウレア樹脂が得られる。ここで、前記多官能イソシアネート化合物が、ウレタン結合を有する場合には、得られるポリウレア樹脂は、ウレタン結合も有しており、その点において生成されるポリウレア樹脂は、ポリウレアウレタン樹脂と称することもできる。
【0063】
また、前記乳化液が、前記ラジカル重合性ビニル化合物と、前記ラジカル重合開始剤とを含有する場合、前記重合処理においては、前記多官能イソシアネート化合物を重合させると同時に、前記ラジカル重合開始剤の存在下で前記ラジカル重合性ビニル化合物がラジカル重合を生じる。
そのため、得られる前記多孔質粒子は、構成する樹脂として、ポリウレア樹脂とビニル樹脂とを含有する。
【0064】
前記重合処理における重合時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以上30時間以下が好ましく、2時間以上10時間以下がより好ましい。
前記重合処理における重合温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
【0065】
−−追加充填処理−−
前記追加充填処理としては、前記重合処理により得られた前記多孔質粒子にアルミニウムキレートを追加で充填する処理であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウムキレートを有機溶剤に溶解して得られる溶液に、前記多孔質粒子を浸漬させた後に、前記溶液から前記有機溶剤を除去する方法などが挙げられる。
【0066】
前記追加充填処理を行うことにより、前記多孔質粒子に保持されるアルミニウムキレートの量が増加する。なお、アルミニウムキレートが追加充填された前記多孔質粒子は、必要に応じてろ別し洗浄し乾燥した後、公知の解砕装置で一次粒子に解砕することができる。
【0067】
前記追加充填処理において追加で充填されるアルミニウムキレートは、前記乳化液となる前記液に配合される前記アルミニウムキレートと同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、前記追加充填処理においては水を使用しないため、前記追加充填処理に使用するアルミニウムキレートは、アルミニウムにアルコキシ基が結合したアルミニウムキレートであってもよい。そのようなアルミニウムキレートとしては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0068】
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記乳化液作製処理の説明において例示した前記有機溶剤などが挙げられる。好ましい態様も同じである。
【0069】
前記溶液から前記有機溶剤を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記溶液を前記有機溶剤の沸点以上に加熱する方法、前記溶液を減圧させる方法などが挙げられる。
【0070】
前記アルミニウムキレートを前記有機溶剤に溶解して得られる前記溶液における前記アルミニウムキレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0071】
−不活性化工程−
前記不活性化工程としては、前記多孔質粒子の表面に、アルコキシシランカップリング剤の反応生成物を付与する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコキシシランカップリング剤と有機溶剤とを含有する溶液に前記多孔質粒子を浸漬し、前記アルコキシシランカップリング剤を反応させることにより行われることが好ましい。
【0072】
前記多孔質粒子は、その構造上、その内部だけでなく表面にもアルミニウムキレートが存在することになると思われる。しかし、界面重合の際に重合系内に存在する水により表面のアルミニウムキレートの多くが不活性化する。そのため、前記多孔質粒子は、前記不活性化工程を要さずに(即ち、その表面がアルコキシシランカップリング剤の反応生成物を有していなくても)、潜在性を獲得できる。
ところが、エポキシ樹脂として高い反応性を有する脂環式エポキシ樹脂を使用する場合には、通常は、前記不活性化工程を経ていない潜在性硬化剤を用いるカチオン硬化性組成物は経時的に大きく増粘する。そのことから、前記多孔質粒子の表面のアルミニウムキレートの一部は不活性化せず、活性を維持していると考えられる。
しかし、本発明の前記カチオン硬化性組成物では、光を照射しないと光分解性ケイ素化合物がシラノール基を生成しないために、前記不活性化工程を経ていない多孔質粒子(潜在性硬化剤)を用いても、経時的なカチオン硬化成分のカチオン硬化を抑制することができる。
【0073】
−−アルコキシシランカップリング剤−−
前記アルコキシシランカップリング剤は、以下に説明するように二つのタイプに分類される。
【0074】
第一のタイプは、前記多孔質粒子の表面の活性なアルミニウムキレートと反応してアルミニウムキレート−シラノール反応物を生成し、それによりアルミニウム原子に隣接する酸素の電子密度を小さくすること(言い換えれば、酸素に結合している水素の酸性度を低下させること、更に言い換えれば、酸素と水素との間の分極率を低下させること)で活性を低下させるタイプのシランカップリング剤である。このタイプのシランカップリング剤としては、電子供与性基がケイ素原子に結合したアルコキシシランカップリング剤、好ましくはアルキル基を有するアルキルアルコキシシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
第二のタイプは、前記多孔質粒子の活性なアルミニウムキレートに、分子内のエポキシ基を反応させて生成したエポキシ重合鎖で表面を被覆して活性を低下させるタイプのシランカップリング剤である。このタイプのシランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303、信越化学工業(株))、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株))等が挙げられる。
【0076】
−−有機溶剤−−
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非極性溶剤が好ましい。前記非極性溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤が挙げられる。前記炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0077】
前記溶液における前記アルコキシシランカップリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0078】
前記不活性化工程における前記溶液の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多孔質粒子の凝集、並びに、前記多孔質粒子からの前記アルミニウムキレートの流出を防止する点で、10℃以上80℃以下が好ましく、20℃以上60℃以下がより好ましい。
前記不活性化工程における浸漬の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以上48時間以下が好ましく、5時間以上30時間以下がより好ましい。
【0079】
前記不活性化工程においては、前記溶液を撹拌することが好ましい。
【0080】
前記不活性化工程を経て得られた前記潜在性硬化剤は、必要に応じてろ別し洗浄し乾燥した後、公知の解砕装置で一次粒子に解砕することができる。
【0081】
<光分解性ケイ素化合物>
前記光分解性ケイ素化合物としては、光照射による光分解によりシラノール基を生成するケイ素化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記光分解性ケイ素化合物は、例えば、光分解によりシラノール基を生成するための基として、ペルオキシシリル基、ケイ原子に直接結合するo−ニトロベンジルオキシ基、α−ケトシリル基などを有する。
【0082】
<<ペルオキシシリル基を有する光分解性ケイ素化合物>>
前記ペルオキシシリル基を有する前記光分解性ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるケイ素化合物が挙げられる。
(R
1)
n−Si(O−O−R
2)
4−n ・・・一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、R
1、及びR
2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の非置換若しくは置換アルキル基、又は非置換若しくは置換アリール基を表わす。nは0〜3の整数を表わす。
【0083】
前記炭素数1〜5の非置換若しくは置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、クロルメチル基などが挙げられる。
前記非置換若しくは置換アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。
【0084】
前記ペルオキシシリル基を有する前記光分解性ケイ素化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
・tert−ブチルペルオキシトリフェニルシラン
・tert−ブチルペルオキシジメチルフェニルシラン
・tert−ブチルペルオキシメチルジフェニルシラン
・tert−ブチルペルオキシメチルビニルフェニルシラン
・tert−ブチルペルオキシジメチルビニルシラン
・ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ジフェニルシラン
・ジ−(tert−ブチルペルオキシ)メチルフェニルシラン
・ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ビニルフェニルシラン
・1,1−ジメチルプロピルペルオキシトリフェニルシラン
・1−メチルエチルペルオキシトリフェニルシラン
・ジ(1−メチルエチルペルオキシ)ジフェニルシラン
・ジ(1,1−ジメチルプロピルペルオキシ)ジフェニルシラン
【0085】
前記ペルオキシシリル基を有する前記光分解性ケイ素化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
<<ケイ原子に直接結合するo−ニトロベンジルオキシ基を有する光分解性ケイ素化合物>>
前記ケイ原子に直接結合するo−ニトロベンジルオキシ基を有する前記光分解性ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(II)で表されるケイ素化合物が挙げられる。
【化4】
ただし、前記一般式(II)中、R
1、R
2、及びR
3は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは置換アルコキシ基、非置換若しくは置換アリール基、置換若しくは置換アリールオキシ基、又はシロキシ基を表わす。R
4は、水素原子、炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルキル基、又は置換若しくは置換フェニル基を表わす。R
5、R
6、R
7、及びR
8は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アセチル基、アリル基、炭素数1〜5の非置換若しくは置換アルキル基、炭素数1〜5の非置換若しくは置換アルコキシ基、非置換若しくは置換アリール基、又は非置換若しくは置換アリールオキシ基を表わす。p、q、及びrは、0≦p≦3、0≦q≦3、0≦r≦3、及び1≦p+q+r≦3の条件を満たす整数を表わす。
【0087】
前記炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、フルオロメチル基、シアノメチル基などが挙げられる。
前記炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基などが挙げられる。
前記非置換若しくは置換アリール基としては、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。
【0088】
前記ケイ原子に直接結合するo−ニトロベンジルオキシ基を有する前記光分解性ケイ素化合物としては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
・p−トリフルオロメチルフェニルビニルメチルフェニル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・t−ブチルメチルフェニル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリエチル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリ(2−クロロエチル)−o−ニトロベンジルオキシシラン
・トリ(p−トリフルオロメチルフェニル)−o−ニトロベンジルオキシシラン
・トリメチル[α−(o−ニトロフェニル)−o−ニトロベンジルオキシ]シラン
・ジメチルフェニル[α−(o−ニトロフェニル)−o−ニトロベンジルオキシ]シラン
・メチルフェニルジ[α−(o−ニトロフェニル)−o−ニトロベンジルオキシ]シラン
・トリフェニル(α−エチル−o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリメチル(3−メチル−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジメチルフェニル(3,4,5−トリメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリフェニル(4,5,6−トリメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルメチル(5−メチル−4−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリフェニル(4,5−ジメチル−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ビニルメチルフェニル(4,5−ジクロロ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリフェニル(2,6−ジニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルメチル(2,4−ニトロベンジルオキシ)シラン
・トリフェニル(3−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ビニルメチルフェニル(3,4−ジメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジメチルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・メチルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ビニルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・t−ブチルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジエチルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・2−クロロエチルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルジ(3−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルジ(3,4−ジメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルジ(2,6−ジニトロベンジルオキシ)シラン
・ジフェニルジ(2,4−ジニトロベンジルオキシ)シラン
・メチルトリ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・フェニルトリ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン
・p−ビス(o−ニトロベンジルオキシジメチルシリル)ベンゼン
・1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ(o−ニトロベンジルオキシ)シロキサン
・1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニル−1,5−ジ(o−ニトロベンジルオキシ)シロキサン
【0089】
前記ケイ原子に直接結合するo−ニトロベンジルオキシ基を有する前記光分解性ケイ素化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開昭58−174389号公報に記載の方法を参照することができる。
【0090】
<<α−ケトシリル基を有する光分解性ケイ素化合物>>
前記α−ケトシリル基を有する前記光分解性ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(III)で表されるケイ素化合物などが挙げられる。
【化5】
ただし、前記一般式(III)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルキル基、非置換若しくは置換アリール基、アリル基、ビニル基、非置換若しくは置換アリールオキシ基、又は炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルコキシ基を表わす。p、q、及びrは、0≦p≦3、0≦q≦3、0≦r≦3、及び1≦p+q+r≦3の条件を満たす整数を表わす。
【0091】
前記炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、フルオロメチル基、シアノメチル基などが挙げられる。
前記非置換若しくは置換アリール基としては、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。
前記炭素数1〜10の非置換若しくは置換アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基などが挙げられる。
【0092】
前記α−ケトシリル基を有する前記光分解性ケイ素化合物としては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
・ベンゾイルトリフェニルシラン
・ベンゾイルメチルジフェニルシラン
・ベンゾイルジメチルフェニルシラン
・アセチルトリフェニルシラン
・プロピオニルトリフェニルシラン
・アセチルメチルジフェニルシラン
・ベンゾイルトリメチルシラン
・ベンゾイルメトキシジフェニルシラン
【0093】
前記α−ケトシリル基を有する前記光分解性ケイ素化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0094】
前記カチオン硬化性組成物における前記光分解性ケイ素化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上25質量%以下がより好ましく、3質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
【0095】
前記カチオン硬化性組成物は、水銀キセノンランプによる50mW/cm
2で1分間の光照射後の示差走査熱量測定による発熱量(H
0)と、前記光照射後48時間経過後の示差走査熱量測定による発熱量(H
48)とが、以下の式(1)を満たすことが、光照射後の可使時間がより優れる点で、好ましい。
−30≦〔(H
0−H
48)/H
0〕×100≦30・・・式(1)
前記示差走査熱量測定は、例えば、昇温条件を10℃/minとして行われる。
前記発熱量(H
0)の測定は、前記光照射後直ぐ(例えば、1時間以内)に行われる。
前記発熱量(H
48)の測定は、前記光照射後、25℃環境下(例えば、湿度65%RH)で48時間放置した後に行われる。
【0096】
前記カチオン硬化性組成物は、水銀キセノンランプによる50mW/cm
2で1分間の光照射後の示差走査熱量測定における発熱開始温度が、低温硬化性の点で、45℃以上80℃以下であることが好ましい。
前記カチオン硬化性組成物は、水銀キセノンランプによる50mW/cm
2で1分間の光照射後の示差走査熱量測定における発熱ピーク温度が、低温硬化性の点で、60℃以上130℃以下であることが好ましい。
前記示差走査熱量測定は、例えば、昇温条件を10℃/minとして行われる。
前記示差走査熱量測定は、例えば、光照射後直ぐ(例えば、1時間以内)に行われる。
【0097】
前記カチオン硬化性組成物は、硬化後の腐食や電気絶縁性の点で、硬化物のアニオンの含有量が、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることが特に好ましい。
前記アニオンとしては、例えば、炭酸イオン、水酸化物イオン、ハロゲンイオンなどが挙げられる。
前記ハロゲンイオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンなどが挙げられる。
硬化物中の前記アニオンの含有量は、硬化物を用いてのイオンクロマトグラフ法や前記アニオンの対イオンであるカチオンを定量することにより求めることができる。
前記カチオンの定量は、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)分析法、原子吸光分析法、イオンクロマトグラフ法などにより行うことができる。
前記ICP分析は、例えば、以下の条件で行う。
分析法:誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS法)
溶媒:NMP(N−メチル−2−ピロリドン)
【0098】
(硬化物の製造方法)
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の前記カチオン硬化性組成物に光を照射し、前記光分解性ケイ素化合物を光分解し、シラノール基を生成させた後に、加熱することを含む。
【0099】
前記光としては、紫外線を含む光が好ましい。そのような光の光源としては、例えば、水銀キセノンランプなどが挙げられる。
前記光を照射する際の照射強度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1mW/cm
2以上200mW/cm
2以下であってもよいし、10mW/cm
2以上100mW/cm
2以下であってもよい。
前記光を照射する際の照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1秒間以上10分間以下であってもよいし、30秒間以上5分間以下であってもよい。
【0100】
前記加熱する際には、60℃以上180℃以下に加熱することが、十分に硬化を行うことができる点で好ましい。
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1分間以上10時間以下であってもよいし、10分間以上5時間以下であってもよいし、30分間以上2時間以下であってもよい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0102】
(製造例1)
<カプセル型触媒1(アルミニウムキレートを保持する多孔質粒子)の製造>
<<重合粒子の作製>>
蒸留水800質量部と、界面活性剤(ニューレックスR−T、日油(株))0.05質量部と、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA−205、(株)クラレ)4質量部とを、温度計を備えた3リットルの界面重合容器に入れ、均一に混合し水相を調製した。
【0103】
この水相に、更に、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24質量%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))100質量部と、多官能イソシアネート化合物としてメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D−109、三井化学(株))70質量部と、ラジカル重合性化合物としてジビニルベンゼン(メルク(株))30質量部と、ラジカル重合開始剤(パーロイルL、日油(株))をラジカル重合性化合物の1質量%相当量(0.3質量部)とを、酢酸エチル100質量部に溶解した油相を投入し、ホモジナイザー(10000rpm/5分:T−50、IKAジャパン(株))で乳化混合後、80℃で6時間、界面重合とラジカル重合を行った。反応終了後、重合反応液を室温まで放冷し、重合粒子を濾過により濾別した。
【0104】
<<含浸液の作製>>
アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24質量%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))15質量部、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)(ALCH−TR、川研ファインケミカル(株))25質量部、及びエチルアルコール60質量部を混合し、含浸液を作製した。
【0105】
<<含浸>>
得られた前記重合粒子を、前記含浸液に添加し、撹拌速度200rpm、30℃で6時間撹拌処理した後、ろ過した。その後、自然乾燥により固体の触媒粒子を得た。なお、乾燥後はAO−JET MILL((株)セイシン企業)にて解砕し、1次粒子の状態とし、カプセル型触媒1を得た。
【0106】
(製造例2)
<カプセル型触媒2(アルミニウムキレートを保持する多孔質粒子)の製造>
製造例1で調製した水相に、更に、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24質量%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))100質量部と、多官能イソシアネート化合物としてメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D−109、三井化学(株))70質量部と、ラジカル重合性化合物としてPEG200#ジアクリレート(ライトアクリレート4EG−A(共栄社化学(株)))30質量部と、ラジカル重合開始剤(パーロイルL、日油(株))をラジカル重合性化合物の1質量%相当量(0.3質量部)とを、酢酸エチル100質量部に溶解した油相を投入し、ホモジナイザー(10000rpm/5分:T−50、IKAジャパン(株))で乳化混合後、80℃で6時間、界面重合とラジカル重合を行った。反応終了後、重合反応液を室温まで放冷し、重合粒子を濾過により濾別した。
【0107】
<<含浸>>
得られた前記重合粒子を、製造例1で調製した前記含浸液に添加し、撹拌速度200rpm、80℃で6時間撹拌処理した後、ろ過した。その後、自然乾燥により固体の触媒粒子を得た。なお、乾燥後はAO−JET MILL((株)セイシン企業)にて解砕し、1次粒子の状態とし、カプセル型触媒2を得た。
【0108】
(製造例3)
<光分解性ケイ素化合物(TBP−TPS:t−Butylperoxytriphenylsilane)の製造>
トリフェニルクロロシランと、t-ブチルヒドロペルオキシドとを用い、以下の文献に記載の方法でTBP−TPSを合成した。
文献:V. N. Dibrivnyi, Yu. P. Pavlovskii, Yu. Ya. Van−Chin−Syan, Formation Enthalpies of Peroxy−Substituted Silanes, Russian Journal of Physical Chemistry A 84, pp.778−783, 2010.
TBP−TPSの構造を以下に示す。
【化6】
【0109】
(製造例4)
<光分解性ケイ素化合物(3M2NBO−TPS: (3−methyl−2−nitro benzyloxy)triphenylsilane)の製造>
水素化アルミニウムリチウムを用いて3−メチル−2−ニトロ安息香酸を還元して得られる生成物をトリフェニルクロロシランと反応させて3M2NBO−TPSを合成した。
3M2NBO−TPSの構造を以下に示す。
【化7】
【0110】
(比較例1)
<カチオン硬化性組成物(配合1)>
カチオン硬化成分(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、CEL2021P、株式会社ダイセル社製)92質量部、光分解性ケイ素化合物(製造例3で得たTBP−TPS)6質量部、及びアルミキレート触媒(アルミキレートDOL、川研ファインケミカル(株))2質量部を混合し、カチオン硬化性組成物(配合1)を得た。
なお、UV照射後の暴走反応を避けるため、アルミキレートとして、長鎖アルキル型のアルミニウムキレートを選択した。
【0111】
(比較例2)
<カチオン硬化性組成物(配合2)>
カチオン硬化成分(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、CEL2021P、株式会社ダイセル社製)92質量部、光分解性ケイ素化合物(製造例4で得た3M2NBO−TPS)6質量部、及びアルミキレート触媒(アルミキレートDOL、川研ファインケミカル(株))2質量部を混合し、カチオン硬化性組成物(配合2)を得た。
【0112】
(実施例1)
<カチオン硬化性組成物(配合3)>
カチオン硬化成分(CEL2021P、株式会社ダイセル社製)92質量部、光分解性ケイ素化合物(製造例3で得たTBP−TPS)6質量部、及びカプセル型触媒(製造例1で得たカプセル型触媒1)2質量部を混合し、カチオン硬化性組成物(配合3)を得た。
【0113】
(実施例2)
<カチオン硬化性組成物(配合4)>
カチオン硬化成分(CEL2021P、株式会社ダイセル社製)92質量部、光分解性ケイ素化合物(製造例4で得た3M2NBO−TPS)6質量部、及びカプセル型触媒(製造例1で得たカプセル型触媒1)2質量部を混合し、カチオン硬化性組成物(配合4)を得た。
【0114】
(実施例3)
<カチオン硬化性組成物(配合5)>
カチオン硬化成分(CEL2021P、株式会社ダイセル社製)92質量部、光分解性ケイ素化合物(製造例4で得た3M2NBO−TPS)6質量部、及びカプセル型触媒(製造例2で得たカプセル型触媒2)2質量部を混合し、カチオン硬化性組成物(配合5)を得た。
【0115】
(実施例4)
<カチオン硬化性組成物(配合6)>
カチオン硬化成分(グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、EP828、三菱ケミカル株式会社製)76質量部、光分解性ケイ素化合物(製造例4で得た3M2NBO−TPS)18質量部、及びカプセル型触媒(製造例1で得たカプセル型触媒1)6質量部を混合し、カチオン硬化性組成物(配合6)を得た。
【0116】
(実施例5)
<カチオン硬化性組成物(配合7)>
下記表1に示す配合のカチオン硬化性組成物(配合7)を調製した。
【0117】
(実施例6)
<カチオン硬化性組成物(配合8)>
下記表1に示す配合のカチオン硬化性組成物(配合8)を調製した。
【0118】
(実施例7)
<カチオン硬化性組成物(配合9)>
下記表1に示す配合のカチオン硬化性組成物(配合9)を調製した。
なお、オキセタン化合物としては、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(OXT−221、東亜合成株式会社製)を用いた。
【0119】
(比較例3)
<カチオン硬化性組成物(配合10)>
下記表1に示す配合のカチオン硬化性組成物(配合10)を調製した。
【0120】
(比較例4)
<カチオン硬化性組成物(配合11)>
下記表1に示す配合のカチオン硬化性組成物(配合11)を調製した。
【0121】
比較例1〜4、及び実施例1〜7の配合を表1にまとめた。
【0122】
【表1】
表1中の数値の単位は、質量部である。
PI2074は、ローディア社製の光酸発生剤〔4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〕である。KAYACURE DETX−Sは、日本化薬社製の増感剤(2,4−ジエチルチオキサン)である。
【0123】
(評価)
<DSC測定>
以下の条件でDSC測定(示差走査熱量測定)を行った。
装置:Photo−DSC〔DSC6200((株)日立ハイテクサイエンス)〕
評価量:10mg
UV照射条件:
・水銀−キセノンランプ UXM−200YA(ウシオライティング(株))
・温度:25℃
・照射時間:1分間
・照射量:50mW/cm
2
熱硬化条件:
・昇温速度:10℃/min
【0124】
<<配合1及び配合2>>
まずは、光分解性ケイ素化合物とアルミニウムキレートによる硬化性確認のため、アルミニウムキレートを直接配合した系(配合1及び配合2)の硬化性評価を実施した。
【0125】
−TBP−TPS系での結果−
表2及び
図1に、配合1(比較例1)のカチオン硬化性組成物の硬化性の結果を示す。
【0126】
【表2】
【0127】
図1のチャート(1)は、UV照射後に10℃/minで昇温測定した場合あり、
図1のチャート(2)は、UV照射なしで、直接昇温測定した場合である。これらのチャートから、熱のみでも高温であれば、光分解性ケイ素化合物は分解し、アルミニウムキレートとカチオン活性種を形成してエポキシ樹脂(カチオン硬化成分)を硬化することが可能であることがわかった。しかし、測定前にUV照射することで発熱開始温度は約80℃程度低温化することができる。
【0128】
−3M2NBO−TPS系での結果−
続いて、3M2NBO−TPS系での結果を示す。
表3及び
図2に、配合2(比較例2)のカチオン硬化性組成物の硬化性の結果を示す。
【0129】
【表3】
【0130】
3M2NBO−TPSの方がTBP−TPS系よりも低温硬化性を示した。UV照射後、昇温時の発熱開始温度は測定開始と同時であった。
【0131】
<<配合3〜配合6>>
続いて、触媒含浸処理により調製したカプセル型触媒1及び2を用いた場合の結果を以下に示す。
【0132】
−TBP−TPS系での結果−
表4及び
図3に、配合3(実施例1)のカチオン硬化性組成物の硬化性の結果を示す。
【0133】
【表4】
【0134】
潜在性カプセル型触媒は、高活性なトリス(エチルアセトアセテート)型アルミニウムキレートの含浸により調製したためか、アルミキレートDOL(アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(アルキルアセテート)と同等の開始温度となった。また、二種類のアルミニウムキレートを含浸したためか、2つの発熱ピークを示した。
【0135】
−3M2NBO−TPS系での結果−
続いて、3M2NBO−TPS系の結果を示す。
【0136】
−−カプセル型触媒1の場合−−
表5及び
図4に、配合4(実施例2)のカチオン硬化性組成物の硬化性の結果を示す。
【0137】
【表5】
【0138】
3M2NBO−TPS系では、非常にシャープな硬化発熱性を示した。UV照射品を昇温硬化させた場合の発熱ピーク温度は約90℃程度で発熱ピーク強度は65mWに達しており、低温性および短時間硬化性に非常に優れていることがわかる。続いて、触媒の含浸処理時に含浸液を高温処理することで調製したカプセル型触媒2を用いた場合の結果を以下に示す。
【0139】
−−カプセル型触媒2の場合−−
表6及び
図5に、配合5(実施例3)のカチオン硬化性組成物の硬化性の結果を示す。
【0140】
【表6】
【0141】
カプセル型触媒2を用いた場合のUV照射→昇温時の発熱開始温度は54℃、発熱ピーク温度は71℃と低温硬化性を示した。この場合の発熱ピーク強度も30mW以上と短時間硬化性を示した。
【0142】
−−カチオン硬化成分がグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の場合−−
表7及び
図6に、配合6(実施例4)のカチオン硬化性組成物の硬化性の結果を示す。
【0143】
【表7】
【0144】
汎用エポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂においても、本硬化系は良好な低温短時間硬化性を示した。
【0145】
表8及び
図7に、配合7〜9(実施例5〜7)のカチオン硬化性組成物の硬化性評価結果を示す。
【0146】
【表8】
【0147】
配合7(実施例5)から潜在性カプセル型触媒の配合量を減らした場合でも良好な低温短時間硬化性を示すことを確認した。また、配合8(実施例6)から光分解性ケイ素化合物に対する潜在性カプセル型触媒の配合量を等量とすることで発熱開始温度および発熱ピーク温度を低温化できることを確認した。また、配合9(実施例7)からカチオン硬化性組成物としてオキセタン化合物を配合することでも発熱開始温度および発熱ピーク温度を低温化できることを確認した。
【0148】
以上、潜在性カプセル型触媒と光分解性ケイ素化合物を用いることで、UV照射後、エポキシ樹脂を特定の温度で短時間硬化することが可能となることを確認した。続いて、液ライフ評価を以下に示す。
【0149】
<液ライフ評価1>
<<UV照射前>>
各原材料を配合してカチオン硬化性組成物を得た後であって、UV照射がない場合の可使時間について評価した。評価は以下のようにして行った。結果を表9に示した。
〔評価方法〕
<DSC測定>
以下の条件でDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、室温保管48h後の総発熱量の保持率から液ライフの評価を行った。
装置:DSC6200((株)日立ハイテクサイエンス)
評価量:10mg
・保管温度:25℃(室温)
・昇温速度:10℃/min
【0150】
【表9】
【0151】
いずれの実施例においても室温下での液ライフは良好で、室温48h放置後の総発熱量の保持率は95%以上を示した。しかしながら、光分解性ケイ素化合物ではなくシラノール化合物を直接配合した比較例3においては室温48hの放置でカチオン硬化性組成物の硬化が生じた。
【0152】
<<UV照射後>>
各原材料を配合してカチオン硬化性組成物を得た後に、更にUV照射をした場合の可使時間について評価した。評価はUV照射前と同様のDSC測定を用いた可使時間評価法を用いて行った。UV照射条件を以下に示す。結果を表10に示した。
〔評価方法〕
UV照射条件:
・水銀−キセノンランプ UXM−200YA(ウシオライティング(株))
・温度:25℃
・照射時間:1分間
・照射強度:50mW/cm
2
【0153】
【表10】
【0154】
潜在性カプセル型触媒を配合した実施例1〜7は、UV照射後も良好な液ライフ性を示した。いずれの実施例においても室温保管48h後の総発熱量の保持率は80%以上であった。これに対して、アルミニウムキレートを直接配合した比較例1及び2の場合は、室温48h後の総発熱量の保持率は40%未満であった。
【0155】
<液ライフ評価2>
以下の条件で、UV照射、及びDSC測定(示差走査熱量測定)を行った。
装置:Photo−DSC〔DSC6200((株)日立ハイテクサイエンス)〕
評価量:10mg
UV照射条件:
・水銀−キセノンランプ UXM−200YA(ウシオライティング(株))
・温度:25℃
・照射時間:1分間
・照射強度:50mW/cm
2
熱硬化条件:
・昇温速度:10℃/min
【0156】
<<配合4>>
配合4(実施例2)について、以下の条件でDSC測定(示差走査熱量測定)を行った。結果を表11に示した。
(i)UV照射後直ぐ(1時間以内)にDSC測定
(ii)UV照射後48時間(25℃、65%RH)放置した後にDSC測定
(iii)室温(25℃、65%RH)で1週間保管後に、UV照射し、その後直ぐにDSC測定
【0157】
【表11】
【0158】
ここで、配合4に関しては、表11より、「〔(H
0−H
48)/H
0〕×100」は、0.7となる。
【0159】
潜在性のカプセル型触媒を用いているため、UV照射後48h放置後も放置前品と比較して総発熱量の低下は見られなかった。また、光分解性ケイ素化合物はUV照射しない限り、トリフェニルシラノールを生成しないため、室温1week放置した場合でも放置前品と同等の硬化性を示した(総発熱量低下なし)。
【0160】
<<配合5>>
続いて、低温硬化性を示すカプセル型触媒2配合系での結果を示す。
配合5(実施例3)について、以下の条件でDSC測定(示差走査熱量測定)を行った。結果を表11に示した。
(i)UV照射後直ぐ(1時間以内)にDSC測定
(ii)UV照射後48時間(25℃、65%RH)放置した後にDSC測定
(iii)室温(25℃、65%RH)で1週間保管後に、UV照射し、その後直ぐにDSC測定
【0161】
【表12】
【0162】
ここで、配合5に関しては、表12より、「〔(H
0−H
48)/H
0〕×100」は、9.2となる。
【0163】
UV照射48h後は低温硬化性であるためか、若干の総発熱量低下が見られたが、低温活性型のカプセル型触媒を用いた場合でも同様に良好な液ライフ性を示した。UV未照射品の放置に関しては、系内にトリフェニルシラノールが存在しない状態での保管となるため、総発熱量の低下は、ほぼ見られなかった。
【0164】
<アニオン含有量>
配合11(比較例4)のカチオン硬化性組成物の硬化物中のアニオン含有量を以下の方法により測定した。
〔評価方法〕
アニオン分析:
・イオンクロマトグラフィー ICS−3000(日本ダイオネクス(株))
・硬化条件:200℃/10min
・抽出条件:超純水中20wt%濃度で100℃10時間抽出
【0165】
配合11に関しては100ppmを超える各種アニオンや多くの有機酸が検出された。
なお、配合3〜9に関しても同様にアニオン含有量を測定したところ、検出された各種アニオン量は1ppm以下であった。