特開2019-214700(P2019-214700A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-2147003D印刷により作成された熱可塑性ピンを用いた複合材強靱化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214700(P2019-214700A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】3D印刷により作成された熱可塑性ピンを用いた複合材強靱化
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20191122BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20191122BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20191122BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20191122BHJP
   B29C 69/00 20060101ALI20191122BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20191122BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   C08J5/04
   B29C70/06
   B33Y80/00
   B33Y10/00
   B29C69/00
   B29C64/106
   B32B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-72112(P2019-72112)
(22)【出願日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】15/957,086
(32)【優先日】2018年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー.ハウ
(72)【発明者】
【氏名】カリザ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ルイーズ ジー
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン モーリッツ
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4F205
4F213
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD42
4F072AD44
4F072AD45
4F072AD46
4F072AH04
4F072AH12
4F072AH16
4F072AH21
4F072AL02
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AK01
4F100AK46
4F100AK47A
4F100AK47B
4F100AK49
4F100AK54
4F100AK55
4F100AK56
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG04A
4F100DG04B
4F100EC12
4F100EJ42
4F100GB31
4F100JB16A
4F100JB16B
4F205AA36
4F205AB11
4F205AB17
4F205AB18
4F205AB19
4F205AD16
4F205AH31
4F205HA17
4F205HA35
4F205HB01
4F205HC02
4F205HC14
4F205HC16
4F205HC17
4F213AD16
4F213AG03
4F213WA15
4F213WA25
4F213WA43
4F213WA53
4F213WA56
4F213WA72
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複合材接合部の屈曲部分などに生じた亀裂の進展を抑制する、複合材製品の提供。
【解決手段】複合材製品(300a)は、隙間(306)で隔てられた繊維束(304)をそれぞれ含む複数のレイヤ(302)と、少なくとも1つの繊維束の側面に接合されているとともに、レイヤ間の隙間を通るように形成されたピン(308)と、レイヤ及びピンと結合した樹脂と、を含む。ピンは、複合材製品のx−y平面における亀裂の進展を防止、あるいは、軽減する物理的なバリアを構成する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材製品であって、
複数のファイバートウと、複数のピンと、を含み、
前記ピンの各々は、前記ファイバートウで囲まれた別々の隙間を通り、
前記ピンの各々は、前記ファイバートウのうちの少なくとも1つのファイバートウの表面に接合されており、
さらに、前記ファイバートウ及び前記ピンと結合した樹脂を含み、
前記ピンは、前記複合材製品における亀裂の進展を抑制する物理的なバリアを構成する、複合材製品。
【請求項2】
前記ファイバートウは、複数のプライ又はレイヤに配置され、前記隙間は、前記レイヤ又プライのうちのいくつかを貫通し、前記隙間は、複数の異なるレイヤ又はプライにおけるファイバートウに囲まれている、請求項1に記載の複合材製品。
【請求項3】
前記ピンの各々は、前記ファイバートウ間の前記隙間の体積の少なくとも90%を満たす、請求項1又は2に記載の複合材製品。
【請求項4】
前記ファイバートウのうちの少なくとも1つは、ねじれのないファイバートウであり、前記ピンのうちの少なくとも1つは、前記ねじれのないファイバートウの前記表面に接合されている、請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項5】
前記ファイバートウのうちのなくとも1つは、ほつれのないファイバーを含み、前記ピンのうちの少なくとも1つは、前記ほつれのないファイバーの表面に接合されている、請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項6】
前記ピンのうちの少なくとも1つは、プライの間に幅広部分を有する、請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項7】
前記ピンは、前記樹脂及び前記ファイバートウに接合する、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項8】
前記ピンの各々は、前記隙間からアンカーを引き出して形成される、請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項9】
前記ファイバートウは、複数のプライに配置され、前記ピンのうちの少なくとも1つは、前記複数のプライのすべては貫通しない、請求項1〜8のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項10】
前記ファイバートウは、複数のプライに配置され、前記ピンのうちの少なくとも1つは、前記複数のプライのすべてを貫通する、請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項11】
前記プライの両側に堆積させた材料レイヤをさらに含み、前記ピンは、前記プライの両側の前記材料レイヤに連結する、請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載の複合材製品。
【請求項12】
複合材製品の製造方法であって、
(a)複数のファイバートウ、及び、前記ファイバートウで囲まれた複数の隙間を提供することと、
(b)前記隙間のうちの複数の隙間に材料を堆積させて、それぞれが別々の前記隙間を通る複数のピンを形成することと、を含む方法。
【請求項13】
前記ファイバートウが、1つ以上のプライに配置される請求項12に記載の方法であって、
ステップ(a)及び(b)を繰り返し、各プライの積層後、プライ毎に前記材料を前記隙間に堆積させ、その際に、次の前記プライにおいて前記隙間に堆積させた前記材料の少なくとも一部が、先の前記プライにおいて前記隙間に堆積させた前記材料に位置合わせされ、接続されるようにし、これにより、前記プライのうちの複数を貫通する前記ピンが形成されることをさらに含む、方法。
【請求項14】
前記ファイバートウが、1つ以上のプライに配置される請求項12又は13に記載の方法であって、
ステップ(a)を繰り返して、順次積層された複数のプライを得ることと、
前記ステップを繰り返した後に、ステップ(b)を実行して、前記プライのうちの少なくともいくつかを貫通するピンを形成することと、をさらに含む、方法。
【請求項15】
前記ファイバートウが、1つ以上のプライに配置される請求項12〜14のいずれか1つに記載の方法であって、前記ピンを形成した後の後処理ステップにおいて、前記ピン及び前記プライを加熱して、前記ファイバートウに対する前記ピンの接合強度を高めることをさらに含む、方法。
【請求項16】
付加製造技術を用いて前記材料を堆積させることをさらに含み、前記付加製造技術を用いて前記材料を堆積させる間に、前記ピンが前記ファイバートウに接合する、請求項12〜15のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1つに記載の方法であって、
前記材料を堆積させることは、
(i)吐出口とベースレイヤを互いに対して相対的に、先ずx−y平面内で移動させ、次いでz方向に移動させ、この移動の間に、前記材料を前記吐出口から前記ベースレイヤと前記隙間のうちの1つに堆積させて、前記ベースレイヤ上にアンカーを形成することと、
(ii)前記吐出口から前記材料を吐出させない状態で、前記吐出口と前記ベースレイヤを互いに対して相対的に移動させ、これにより前記アンカーの一部を延伸させて前記ピンを形成することと、
(iii)前記ピンを前記吐出口から切り離し、前記吐出口と前記ベースレイヤを互いに対して相対的に移動させて、前記吐出口を次の前記隙間の上方に位置させることと、
(iv)上記(i)〜(iii)のステップを繰り返して、前記複数のピンを形成することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記ファイバートウは、1つ以上のプライに配置され、
前記ファイバートウの各々は、直径が少なくとも2mmであり、少なくとも1000本のファイバーを含み、前記ファイバーは、熱可塑性材料、ガラス繊維、ケブラー、及び、炭素のうちから選択された少なくとも1つの材料を含み、
各隙間の直径は、少なくとも2mmであり、
各プライの厚みは、2〜10mmの範囲であり、
各ピンは、厚みが2〜5mmの範囲であり、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及び、ポリフェニルスルホン、並びに、その混成物のうちから選択された少なくとも1つの熱可塑性材料を含み、
各ピンの長さは、1〜3mmの範囲であり、
前記複合材製品の全体の厚みは、10mm〜1メートルの範囲であり、
前記ファイバートウは、ガラス繊維、ケブラー、及び、炭素のうちから選択された少なくとも1つの材料を含む、
請求項12〜17のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規な複合構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、軽量で、相対強度が高く、より複雑な形状に成形可能であるため、金属に代わる構造材料として用いられている。しかしながら、従来の複合構造体は、応力を受けると亀裂(特に、層間剥離)が生じる可能性がある。層間レイヤ(例えば、熱可塑性ベールや粒子)によって複合材を強靭化する従来技術があるが、高応力集中領域における欠陥の抑制効果は限定的である。多くの場合、要求される板厚方向靭性(through thickness toughness properties)を達成するには、強靭化フィルム接着剤が必要になる。加えて、機械的な留め具が、許容可能な設計において標準的に使用される。このことは、航空機用の一体構造体(integrated aircraft structure)では、特に懸念される。一体構造体では、接合部における屈曲部分(joint radius)(図1を参照)に見られるように、高応力領域(100)が構造体の厚さ全体に亘って発生する。このため、接合部の屈曲部分に生じた亀裂(102)が、強靭化されていない層に進展するだけで脆性破壊が発生する可能性がある。板厚方向の強靭化技術を用いれば、そのような亀裂を抑制することが可能である。ただし、従来の板厚方向技術(たとえば、接着フィルムなど)は、液状材成形による構造体(liquid molded structure)においては、注入時の樹脂の流路を阻害して、ボイド、ポロシティ(porosity)、及び、ドライスポットなどの欠陥を発生させることになるため、採用されない。このような欠陥があると、複合積層構造の面内特性(in-plane properties)が著しく低下する。
【0003】
以下に、板厚方向技術と、その制約事項の例を列挙する。
・Zピン:積層した強化材に対して用いるが、挿入プロセスにおいて重大な微細構造欠陥が発生(また、これにより、複合材の面内特性が低下)するため、現在は使用されていない。
・スティッチング:ドライファイバーのプリフォームに対して用いるが、挿入プロセスにおいて重大な微細構造欠陥が発生する(また、これにより、複合材の面内特性が低下する)ため、現在は使用されていない。
・三次元(3D)織物/3Dニット状(knitted)/3Dブレード状(braided)のプリフォーム。通常は、液状材成形法において適用される。ただし、製造プロセスにおいて3Dプリフォーム内で繊維の配列に乱れ(fiber misalignment)が生じるため、これらのプリフォームは、特定の幾何形状に限定されおり、航空機用の一体構造体に適用することは難しい。
【0004】
図2は、従来のベール(veil)、スティッチング、zピンのそれぞれで強化された複合材の特性を示すアシュビー・チャート(Ashby plot)であり、面内特性を、モードI層間破壊靭性(Gic)の関数としての有孔圧縮(OHC)強度として測定した場合のギャップをハイライトして示している。図2に示すように、板厚方向技術によれば、ベールに比較して、モードI層間破壊靭性を大幅に向上させることができ、zピンを用いる場合には、1400%まで向上させることが可能である。ただし、板厚方向の強化材では、その製造プロセスにおいて生じる微細構造欠陥のために、OHC強度における損傷許容度やその他の面内特性が低下する。一方、ベールを層間レイヤとして用いる場合は、繊維プリフォームにベールを適用する段階で生じる繊維破壊が少ないので、OHCの低下は小さい。ただし、Gicの改善効果は乏しい。したがって、従来は達成できていなかった性能を表す上記のギャップは、損傷許容度及び面内特性の低下を伴うことなく、高いモードI層間破壊靭性を得ることであり、板厚方向に連続する強化材を用いて達成することができる。
【0005】
したがって、複合材全体を通じて連続し、面内特性を損なわない板厚方向技術が必要とされている。本発明は、この必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0006】
本開示に記載の複合材製品(300a、300b、300c、300d)は、ファイバートウ(304)、及び、前記ファイバートウ(304)と結合した複数のピン(308)を含む。前記ピン(308)のうちの複数のピンは、前記ファイバートウ(304)の間の異なる1つの隙間(306)を通り、前記ピン(308)のうちの1つ以上は、前記ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つのファイバートウの表面(310)に接合されている。前記ピン(308)は、前記複合材製品(300a、300b、300c、300d)における亀裂の進展を抑制する物理的なバリアを構成する。通常、前記ファイバートウ(302)及び前記ピン(308)は、樹脂と結合している。
【0007】
前記複合材製品は、様々な態様で具現化が可能である。実施例には、限定するものではないが、以下の実施例の1つ、あるいは、その組み合わせが含まれる。
【0008】
1. 複合材製品(300e)であって、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)が、複数のプライ(336a、336b、336c、336d)又はレイヤ(338a、338b、338c、338d)に配置されており、隙間(342)が、複数のレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)を貫通し、隙間(342)は、異なる複数のレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)に含まれるファイバートウ(340a、340b、340c、340d)によって、仕切られている、複合材製品。
【0009】
2. ピン(308)が、互いに異なる機械的特性を有する、複合材製品(300a、300b、300c、300d)。
【0010】
3. 各ピン(308)が、ファイバートウ(304)の間の隙間(306)の体積の少なくとも90%を満たす、複合材製品(300a、300b、300c、300d)。
【0011】
4. ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つが、ねじれのないファイバートウ(612)であり、ピン(308)のうちの少なくとも1つが、ねじれのないファイバートウ(612)の表面(616)に接合されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d)。
【0012】
5. ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つが、ほつれのないファイバー(614)を含み、ピン(308)のうちの少なくとも1つが、ほつれのないファイバー(614)の表面(618)に接合されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d)。
【0013】
6. ピンのうちの少なくとも1つ(308c)が、円柱状である、複合材製品(300c)。
【0014】
7. ピンのうちの少なくとも1つ(308b)が、その長さLに沿って一様でない、あるいは、規則的でない断面形状(330)を有する、複合材製品(300b)。
【0015】
8. ピンのうちの少なくとも1つ(308b)が、プライとプライの間に幅広部分を有する、複合材製品(300b)。
【0016】
9. ピン(308)のうちの1つ以上が、樹脂及びファイバートウに接合する、複合材製品。
【0017】
10. ピン(308)のうちの1つ以上が、隙間(306)からアンカー(602)を引き出して形成される、複合材製品。
【0018】
11. ピンのうちの少なくとも1つ(308a)が、すべてのプライ(302)は貫通しない、複合材製品(300a)。
【0019】
12. ピンのうちの少なくとも1つ(308c)が、すべてのプライ(302)を貫通する、複合材製品(300b)。
【0020】
13. 複合材製品(300a、300b、300c、300d)であって、各ファイバートウ(304)は、直径が少なくとも2mmであり、少なくとも1000本のファイバーを含み、及び/又は、各隙間(306)は、直径が少なくとも2mmであり、及び/又は、各プライ(302)は、厚みが2〜10mmの範囲であり、及び/又は、各ピン(308)は、厚みが2〜5mmの範囲であり、及び/又は、各ピン(308)は、長さが1〜3mmの範囲であり、及び/又は、複合材製品(300a、300b、300c、300d)は、全体の厚みが10mm〜1メートルの範囲である、複合材製品。
【0021】
14. 前記複合材製品(300a、300b、300c、300d)を含む結合部。
【0022】
さらに、本開示による航空機用一体構造体(1200)は、外皮(1004)、スティフナ(1006)、及び、前記外皮(1004)と前記スティフナ(1006)との間の界面領域(1008)を含む。前記界面領域(1208)は、複合材製品(300a、300b、300c、300d)を含み、この複合材製品は、それぞれがファイバートウ(304)を含む複数のプライ(302)と、複数のピン(308)と、を含む。
【0023】
さらに、本開示は、複合材製品(300a、300b、300c、300d)の製造方法を示す。前記方法は、(a)複数のファイバートウ(304)(複数のプライに配置可能)、及び、前記ファイバートウ(304)の間の、あるいは、前記ファイバートウで囲まれた複数の隙間(306)を提供することと、(b)前記隙間(306)のうちの複数の隙間に材料(322)を堆積させて、それぞれが別々の隙間(306)を通る複数のピン(308)を形成することと、を含む。一実施形態において、前記方法は、(i)吐出口(450)とベースレイヤを互いに対して相対的に、先ずx−y平面内で移動させ、次いでz方向に移動させ、この移動の間に、前記材料(322)を前記吐出口(450)から前記ベースレイヤと前記隙間(306)に堆積させて、前記ベースレイヤ上にアンカー(602)を形成することと、(ii)前記吐出口(450)から材料(322)を吐出させない状態で、前記吐出口(450)と前記ベースレイヤを互いに対して相対的に移動させ、これにより前記アンカー(602)の一部を延伸させて前記ピン(308)を形成することと、(iii)前記ピン(308)を前記吐出口(450)から切り離し、前記吐出口(450)と前記ベースレイヤを互いに対して相対的に移動させて、前記吐出口(450)を次の隙間(306)の上方に位置させることと、(iv)上記(i)〜(iii)のステップを繰り返して、複数のピン(308)を形成することと、を含む。
【0024】
1つ以上の実施例において、前記方法は、さらに、ステップ(a)及び(b)を繰り返し、各プライ(302)の積層後、プライ(302)毎に前記材料(322)を前記隙間(306)に堆積させ、その際に、次のプライ(302)において前記隙間(306)に堆積させた材料(322)の少なくとも一部が、先のプライ(302)において前記隙間(306)に堆積させた材料(322)に位置を合わせられ、かつ接続されるようにし、これにより、複数のプライ(302)を貫通するピン(308)が形成されることを含む。
【0025】
1つ以上の実施例において、前記方法は、さらに、ステップ(a)を繰り返して、複数のプライ(302)を順次積層することと、前記ステップを繰り返した後に、ステップ(b)を実行して、前記プライ(302)のうちの少なくともいくつかを貫通するピン(308)を形成することと、を含む。
【0026】
さらに別の実施例において、前記方法は、さらに、前記ピン(308)を形成した後の後処理ステップにおいて、前記ピン(308)及び前記プライ(302)を加熱して、前記ファイバートウ(304)に対する前記ピン(308)の接合強度を高めることを含む。あるいは、他の実施例においては、前記方法は、付加製造技術を用いて前記材料(322)を堆積させることをさらに含み、前記付加製造技術を用いて前記材料(322)を堆積させる間に、前記ピン(308)が前記ファイバートウ(304)に接合する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
次に図面を参照する。図面全体にわたって、同様の参照符号は、対応する部品を表している。
【0028】
図1】T型接合部において高応力集中領域を示す図である。
図2】従来の構造では達成できない性能(破壊靭性の達成、及び、面内特性の維持に関する性能)を表すギャップを示す図である。
図3A-3I】付加製造により作製されたzピンを有する例示的な複合材製品の断面を示す模式図である。図3Aは、すべてのレイヤは貫通していないピンの実施形態を示す。図3Bは、レイヤ間で断面積が大きくなるピンの実施形態を示す。図3Cは、均一な幅を有するピン(滑らかな壁)を含む複合材製品の実施形態を示す。図3Dは、垂直軸方向に沿って直径が変化し、幅広部分を主にレイヤ間に有するピンを含む複合材製品の実施形態を示す。図3Eは、本明細書に記載の複合材製品に使用可能な、連続zピンの形態を示す。図3Fは、異なる複数のレイヤに含まれるファイバートウによって隙間が画成された実施形態を示す。図3Gは、図3Fの上面図である。図3Hは、複合材と結合した樹脂を示す。図3Iは、ピンに結合されたレイヤをプライ間に含む実施形態を示す。
図4】本明細書に記載の複合材製品の製造に用いられる例示的な3Dプリンタを示す図である。
図5】本明細書に記載のzピンを含む例示的な複合材製品の作製方法を示すフローチャートである。
図6A】本明細書に記載の1つ以上の実施例による、プライに含まれる不連続zピンの形態を示す図である。
図6B-6C】本明細書に記載の例示的な実施形態による、平織りのドライファイバーに設けられた、1つのピンレイヤと、アンカーから延伸させた複数のピンと、を示す図であり、図6Cは、図6Bを拡大したものである。
図7A】本明細書に記載のピンを作製するように3Dプリンタを制御するためのコンピュータ支援設計(CAD)の入力を示す図である。
図7B-7C】図7AのCADファイルを用いて、それぞれ230℃と260℃のノズル温度で印刷して作製されたピンを示す図である。
図7D図7B及び7Cに示したピンの作製後の寸法を示す表である。
図8A】例示的な3D印刷法を用いて、様々な印刷設定(ノズルの材料供給速度、mm/秒)で印刷した熱可塑性フィラメントの引張強度の変化を示す図である。
図8B】例示的な3D印刷法を用いて、様々な印刷設定(ノズルの材料供給速度)で印刷した熱可塑性フィラメントの工学ひずみの変化を示す図である。
図9A】1つ以上の実施例による連続zピンを作製するための処理パラメータを示す表である。
図9B】1つ以上の実施例による不連続zピンを作製するための処理パラメータを示す表である。
図10】本明細書に記載の複合材製品を含む、航空機用一体構造体を示す図である。
図11】本開示の実施形態によるピンを含む複合材製品を作製するようにプリンタを制御するためのコンピュータハードウェア環境の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の詳細な説明において添付図面を参照するが、これらの図面は、本開示の一部を構成するものであり、いくつかの実施形態を例示的に表している。なお、他の実施形態を用いることも可能であり、本開示の範囲から逸脱することなく構造的変更を加えることもできる。
<技術内容>
<例示的な構造>
【0030】
図3A、3B、3C及び3Dは、複数のプライ(302)又はレイヤ(302a)を含む複合材製品(300a、300b、300c、300d)を示しており、各プライ又はレイヤは、隙間(space)(306)(例えば、孔306a)で隔てられたファイバートウ(fiber tow)(304)を含む。複合材製品(300a、300b、300c、300d)は、1つ以上のピン(308)をさらに含む。各ピン(308)は、ファイバートウ(304)の間のそれぞれ別の隙間(306)通る。各ピン(308)は、ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つのファイバートウの表面(310)(x−y方向、又は、z方向のいずれの側でもよい)に接合されている。ピン(308)は、ファイバートウ(304)の間の隙間(306)を通って、各レイヤ又はプライ(302)の先まで延びており、これにより、複合材製品(300)内の剥離亀裂(delamination crack)(102)(例えば、層間亀裂、層内亀裂、及び/又は、層横断亀裂)の進展を、複合材製品(300)の任意の方向について防止あるいは抑制するピラー、即ち、物理的なバリア(312)を構成している。
【0031】
図3Aは、複合材製品(300a、300b、300c、300d)の実施形態を示し、この複合材製品のピン(308)は、ファイバートウ(304)を含むレイヤ(301)又はプライ(302)の高さを超えて、その上方まで延出するとともに、隙間(306)の幅とほぼ同じ、均一の幅を有する。この例示的な実施形態では、ピン(308)は、全てのレイヤ(302a)又はプライ(302)全体の厚みを貫通するのではなく、一部のレイヤ又はプライのみに位置する。この形態のピン(308)は、プライ(302)に配置された不連続ピン(308a)と言うことができる。不連続ピンによれば、最小限の重量で、複合材の靭性を調整する(例えば、靭性を高める必要がある箇所にのみピンを配置する)ことが可能になる。
【0032】
図3Bは、複合材製品(300b)の実施形態を示し、この複合材製品のピン(308)は、主にプライ(302)間又はレイヤ(301)間に位置する幅広部分(thickened portion)(314)(例えば、穂軸付きのとうもろこしのような形状)を有する。1つ以上の実施形態において、滑らかな円筒形の壁とは異なり、凹凸のある(roughened)、あるいは、「穂軸付きのトウモロコシ」状の表面構造を用いることができ、これにより優れた機械的係合を得ることができる。図3Bの実施形態では、ピン(308)は、個々のプライ(302)の高さ方向の上にも下にも届くように延びており、これにより、複数のファイバーレイヤを厚さ方向に完全に貫通する板厚方向ピンを構成している。この形態では、ピン308は、当該プライ(302)に配置された連続ピン(308b)と言うことができる。
【0033】
図3Cは、複合材製品(300c)の実施形態を示し、この複合材製品のピン(308)は、均一な幅(滑らかな壁)を有するとともに、個々のプライ(302)又はレイヤ(301)の高さ方向の上にも下にも届くように延びており、複数のレイヤ(301)又はプライ(302)を厚さ方向に完全に貫通する板厚方向ピン(308c)を構成している。
【0034】
図3Dは、複合材製品(300d)の実施形態を示し、この複合材製品のピン(308)は、主にレイヤ(301)間又はプライ(302)間に、垂直軸(318)に沿って直径が変化する幅広部分(316)を有する。このピン(308)は、全てのレイヤ(301)又はプライ(302)の全体を厚さ方向に貫通するのではなく、一部のレイヤ又はプライのみに存在する。
【0035】
図3Eは、ピン(308)の高さH、平均直径D、及び、表面(330)の一様性など、ピン(308)の形成に際して制御可能な幾何学的な特徴を示す。1つ以上の実施例において、表面(330)は、波形(corrugated)表面(320)、又は不規則(non-uniform/irregular)表面(332)を有する。他の実施例においては、表面(330)は、滑らかな表面(334)である。図示はしていないが、各ピンの曳糸性(stringiness)(例えば、粘度、及び/又は、直径)も制御可能である。
【0036】
図3F及び3Gに示す実施例においては、複合材製品(300e)のプライ(302)又はレイヤ(301)は、複数のプライ(336a、336b、336c、336d)又はレイヤ(338a、338b、338c、338d)、あるいは、その積層体(360)を含み、各プライ又はレイヤにおけるファイバートウ(340a、340b、340c、340d)の配向(370)(例えば、一方向)が、プライ又はレイヤごとにそれぞれ異なる。この場合、複数のレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)をまたがって隙間(342)又は孔(344)が形成されており、これらの隙間(342)又は孔(344)は、異なる複数のプライ(336a、336b、336c、336d)、又は異なる複数のレイヤ(338a、338b、338c、338d)におけるファイバートウ(340a、340b、340c、340d)によって、囲まれ、画成され、仕切られている。
【0037】
異なる平面(346)に位置するプライ(336a、336b、336c、336d)では、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)が互いに異なる角度に整列又は配向されており、これにより、孔(344)又は隙間(342)が形成される。一実施例において、プライ(302)は、(例えば、図6Bに示すように)マット(600)を構成し、各レイヤ(301)又はプライ(302)に含まれるファイバートウ(304)が互いに90度の角度を成すように織り合されている。ただし、他の実施例において、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)は、互いに任意の角度(例えば45度)を成すように配向することができる。1つ以上の実施例において、ピンの高さHは、孔(344)又は隙間(342)の壁を構成するレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)の数の関数である。1つ以上の実施例において、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)の隙間(342)は、ファイバートウ(340a、340c)の間に設けられた中間レイヤ(338b)内に存在する。
【0038】
図3Hは、プライ(302)及びピン(308)と結合した(combined)樹脂(348)を含む複合材製品(300f)を示しており、1つ以上のピン(308)が最外層のファイバーレイヤ(301d)又は最外層のプライ(302e)の上にも下にも延出して、樹脂348の表面に到達している様子を示している。
【0039】
図3Iは、材料を堆積させたレイヤ(350)をプライ(302)又はレイヤ(301)の両側に有する複合材製品(300g)を示しており、ピン(308)は、プライ(302)又はファイバーレイヤ(301)の両側に形成された材料レイヤ(350)にも連結する。1つ以上の実施例において、このレイヤ(350)は、ピン(308)の作製に用いるものと同じ材料(322)(例えば、熱可塑性材料)で構成することができる。1つ以上の実施例において、このレイヤ(350)は、1つ以上のアンカー(anchor)(602)、即ち、より厚く堆積させた部分を構成する。アンカー、即ち、厚い堆積部分は、ピン(308)の基材、土台、及び/又は、ソースと定義され、ピン(308)の材料(322)を供給し、及び/又は、ピン(308)が形成された後は、ピン(308)に接着させる材料を供給する。1つ以上の別の実施例においては、レイヤ(350)は、材料(322)のフィラメントから成るネットワーク又はウェブを構成する。
<製造方法の実施例>
【0040】
図4は、例示的な3Dプリンタ400を示しており、このプリンタは、ファイバートウの間の孔又は隙間(306)に材料(322)を供給して、z方向に沿ってピン(zピン)を作製するための押出ノズル(402)、供給部(404)、溶融部(406)を有する。また、ピン(308)の成形中に、プライ(302)又はベースレイヤ(408)を支持するためのプラットフォーム(410)(例えば、プリントベッド、あるいは、プリント台)を有する。プリンタ400の例には、限定するものではないが、デスクトップ型の熱溶解積層法(「FDM」)3Dプリンタが含まれる。1つ以上の実施例において、3Dプリンタは、ソフトウェアを用いて制御される。プラットフォーム(410)及び/又はノズル(402)を移動させて、ノズル(402)と、プライ(302)又はベースレイヤ(408)とを、x−y平面(412)内で相対移動させ、また、z方向(414)に上下方向に相対移動させることができる。1つ以上の別の実施例においては、プリンタは、2つのエンドエフェクタ(又は、1つのデュアル・エンドエフェクタ)を備えるロボットヘッドを有する。一方のエンドエフェクタは、ファイバートウ(304)(又は、レイヤ301の表面のレイアップ)を含むレイヤ(301)又はプライ(302)の積層に使用され、他方のエンドエフェクタは、ピン(308)を形成するための材料(322)の粒子(bead)の堆積に使用される。
【0041】
図5は、堆積方式の付加製造(additive manufacturing deposition)を用いて複合材製品(300a、300b、300c、300d)を製造する処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
ブロック500は、隙間(306)(例えば、孔)で隔てられたファイバートウ(304)を含むレイヤ(301)(例えば、繊維層(fiber bed)、又は、織物層、又は、繊維状部分)又はプライ(302)を積層又は形成するステップを表す。1つ以上の実施例において、プライ(302)又はレイヤ(301)は、堆積方式の付加製造技術を用いて積層される。例示的な実施形態において、ファイバートウ(304)は、繊維束である。1つ以上の実施例において、ファイバーは、ガラス繊維、ケブラー(kevlar)(登録商標)、炭素、及び、熱可塑性材料から選択された少なくとも1つの材料を含む。
【0043】
ブロック502は、複数の隙間(306)に材料(322)を堆積させて、それぞれ別々の隙間(306)を通る複数のピン(308)を形成するステップを表す。1つ以上の実施例にでは、材料(322)を各隙間(306)に、堆積方式の付加製造技術を用いて堆積させて、当該隙間を通るピン(308)を形成する。1つ以上の実施例において、ピン(308)は、図6Bに示すように、隙間(306)からアンカー(602)を引き出すことで形成される。1つ以上の実施例において、アンカー(602)は、ピン(308)の基材、土台、及び/又は、ソースと定義され、ピン(308)となる材料(322)を供給し、及び/又は、ピン(308)が形成された後は、ピン(308)に接着するものを供給する。
【0044】
例えば、材料(322)の堆積は、以下のステップを含む。(i)吐出口(450)(例えばノズル(402))とベースレイヤ(408)とを、先ずx−y平面内(412)で相対移動させ、次いでz方向(414)に相対移動させ、この移動の間に、材料(322)を吐出口(450)からベースレイヤ(408)に供給して、隙間(306)のうちの1つに入り込ませる。これにより、ベースレイヤ上にアンカー(602)が形成される。(ii)吐出口(450)から材料(322)を吐出させない状態で、吐出口(450)とベースレイヤ(408)を相対移動させる。これにより、アンカー(602)の一部を延伸させて、ピン308を形成する。(iii)ピン(308)、即ち、延伸された材料を吐出口(450)から切り離し、吐出口(450)とベースレイヤ(408)を相対移動させて、吐出口(450)を次の隙間(306)の上方に位置させる。(iv)上記(i)〜(iii)のステップを繰り返して、複数のピン(308)を作製する。様々な実施例において、ベースレイヤは、材料(322)のプライ(302)又はレイヤである。
【0045】
ピン(308)を構成する材料(322)の例には、付加製造を用いた堆積に適した少なくとも1つの材料、例えば、ポリマーが含まれる。限定するものではないが、ポリマーの例には、ポリアミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ウルテム(登録商標)、あるいは、上述した熱可塑性物質に、改質剤、及び/又は、カーボンナノチューブ、グラフェン、クレー改質剤(clay modifier)、不連続繊維、界面活性剤、安定剤、粉末や微粒子などの含有物を組み合わせた混成物(hybrid)が含まれる。
【0046】
1つ以上の実施例において、ピン(308)(例えばzピン)のパターンは、図6Aに示すように、孔の間隔と、レイヤ(301)又はプライ(302)の領域と、に対応するように印刷される。図6Aは、繊維(例えば、炭素)織物のマット(600)を構成するプライ(302)を示し、このマットは、間隔(650)を開けて配置された不連続なzピン(308a)と、隙間(306)(例えば、孔(306b))と、を有する。マット(600)は、図6Bに示すように、互いに直交するように織り合された(例えば、炭素の)ファイバートウ(650、652)から成る。また、レイヤ(301)又はプライ(302)は、ピン(308)が孔を通るように、ピン(308)のパターンを介して慎重に配置されるので、ファイバートウ(304)の繊維に与える損傷を最小限に留めることができる。いくつかの実施形態では、ピン(308)の挿入時にファイバートウ(304)の繊維(604)が損傷するが、繊維の損傷の程度は、プリプレグプライの積層体に堅いピンのアレイを挿入する従来の製造方法よりも低減される。
【0047】
ピン直径D及び間隔を制御して様々なパターンを構成すれば、任意の断面形状を有するピン(308)を作製することができる。ノズル(402)の直径が0.4mm以上であれば、ピン直径Dは、通常、0.7mmより大きい。表1に、製造可能な様々なピンパターン又は構成の例を示す。

【表1】
【0048】
いくつかの実施形態において、ピンの断面は、レイヤ(301)又はプライ(302)に含まれる孔の平均面積と同等の大きさである。ピン(308)は、例えば、隙間(306)の体積の少なくとも90%を満たす。他の実施例においては、ピン(308)の断面は、隙間(306)の相補形状を有し、これにより、例えば、ファイバー(604)で形成される側壁(606)との接触が大きくなり、ピン(308)との面積接触を大きくすることができる。例えば、隙間(306)が四角形であれば、ピン(308)の断面も四角形として、ピン(308)とファイバー(604)との接触面積を最大にすることができる。1つ以上の例示的な用途として、孔空間(306)の形状は、透湿性(プリフォームにおいて樹脂が浸透する時間に影響するパラメータ)、及び、微細欠陥(microcracking)のリスクに関して決定的である(孔又は隙間(306)が大きいほど、微細欠陥のリスクが高まる)。このような場合、所望の透湿性を担保するとともに、複合材全体における微細欠陥を抑制するように、ピン(308)の断面を適合化することができる。さらに他の実施例においては、ピン(308)の断面形状を調整して表面形状を不均一にすることで、亀裂の進展経路が蛇行するように構成して(強制して)、複合材の強度を高めることができる。
【0049】
図6B及び図6Cは、堆積方式の付加製造のプロセスの一部として/プロセスの間にピン(308)が堆積されるのに伴って、ピン(308)がファイバートウ(304)に接合される実施形態を示す。ピン(308)は、堆積時に液状あるいは粘着状態でファイバー(604)に接着し、これにより、ピン(308)の一部(608)が繊維表面(610)の欠陥に入り込んで、ファイバー(604)と接合される。例えば、ピン(308)がファイバー(604)に接合する強度は、堆積させた材料(322)の表面張力、及び、ピン(308)における材料(322)の溶融温度を条件として、様々なレベルに制御することができる。1つ以上の実施例において、ピン(308)とファイバートウ(304)の側壁(606)との接続は、ファイバートウ(304)に沿って進展する亀裂に対する「障害物」として機能する必要がある。
【0050】
詳細については後述するが、3D印刷のパラメータ(例えば、材料(322)の供給速度、流速、及び、ノズル(402)温度)は、各ピン(308)の堆積時に入念に調節可能であるので、ピン(308)の材料特性を局所的に制御することが可能になる。
【0051】
ピン(308)の材料(322)は、様々な形状に堆積させることができ、例えば、材料(322)は、一連の液滴あるいは粒子として堆積させることが可能である。
【0052】
ブロック502を実行する前に、ブロック500を繰り返し実行して、複数のレイヤ(301)又はプライ(302)を順に形成、積層することができる。これにより、複数のレイヤ(301)又はプライ(302)がすべて積層された状態において、隙間(306)を通って、すべてのプライ(302)又はレイヤ(301)のうちの少なくともいくつか/複数を貫通するピン(308)を形成することができる。
【0053】
ブロック504では、任意の処理として、ブロック500〜502を繰り返して、複数のレイヤ(301)又はプライ(302)を積層する。各々のプライ(302)又はレイヤ(301)を積層後、一度につきファイバートウ(304)のレイヤ(301)又はプライ(302)の一層に各ピン(308)の材料(322)を堆積させる。この際、次のレイヤ(301)又はプライ(302)における隙間(306)に堆積された材料(322)の少なくとも一部が、前のレイヤ(301)又はプライ(302)における隙間(306)に堆積された材料(322)に位置合わせされ、かつ接続される。これにより、複数のレイヤ(301)又はプライ(302)を貫通するピン(308)が形成される。
【0054】
図3Bに示す例示的な一実施形態では、以下のように処理を進める。第1の材料(322a)(例えば、熱可塑性材料)の堆積を、ファイバートウ(304a)のプライ(302a)又はレイヤ(301a)におけるファイバートウ(304a)の間の隙間(306c)又は間隙に位置するように選択的に配置する。先に配置されたファイバートウ(304a)のプライ(302a)又はレイヤ(301a)の上に、新たなファイバートウ(304b)のプライ(302b)又はレイヤ(301b)を配置する。次いで、第2の材料(322b)の堆積を、新たに配置したファイバートウ(304b)のプライ(302b)において、ファイバートウ(304b)の間の隙間(306d)に位置するように選択的に配置し、第1の材料(322a)の堆積と位置を合わせる。これにより、第1の材料(322a)の堆積が第2の材料(322b)の堆積と接続される。このプロセスを繰り返し実行してプリフォームを形成する。各プライ(302a、302b)の間で材料(322a、322b)が繋がることで、第1の材料(322a)の堆積及び第2の材料(322b)の堆積から成るピン(308)又はピラーが形成される。場合によっては、ピン(308a)は、1つ又はいくつかのレイヤ(301)のみに延在するもの、つまり、プリフォームの厚さ全体においては不連続な形態であってもよい。他の場合には、ピン(308b)は、プリフォーム全体にわたって接続されて、厚さ全体に連続する形態であってもよい。本実施例は、図3Bを参照して説明したが、本実施例の技術事項は、多くの実施例(例えば、図3A図3C図3D図3F図3H、及び、図3Iに示すもの)にも適用することができる。また、本実施例においては、1つのプライ(302a、302b)に含まれるファイバートウ(304a、304b)によって画成され又は囲まれた孔空間(306c、306d)について説明したが、図3F及び図3Gに示すように、隙間(342)が異なるレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)に含まれるファイバートウ(340a、340b、340c、340d)によって画成される実施形態においては、第1の材料(322a)の堆積と第2の材料(322b)の堆積を、異なるプライ(336a、336b、336c、336d)に存在させてもよい。
【0055】
ブロック506は、ブロック500〜504における堆積方式の付加製造技術のステップの後に行う任意の後処理ステップを表す。いくつかの実施形態では、後処理として、ピン(308)及びプライ(302)(並びに、プライに含まれるファイバートウ(304))を(例えば、ヒートガンやオーブンで)加熱することを含む。加熱によって、ピン(308)が溶融又は軟化して、ファイバートウ(例えば、3次元)に対するピン(308)の接合が促進されるとともに、ピン(308)による孔又は隙間(306)の充填が促進される。
【0056】
ブロック508は、ピン(308)をファイバートウのプライ(302)又はレイヤ(301)と樹脂で結合させる任意のステップを表す。いくつかの実施形態では、図3Hに示すように、ピン(308)は、最外層のファイバーレイヤ(301d)又はプライ(302)の上にも下にも延出し、場合によっては、樹脂表面(348b)に到達する。
【0057】
ブロック510は、最終成果物としての複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)を表す。この複複合材製品は、複数のファイバートウ(304)と、1つ以上のピン(308)(例えば、ピン(308)のアレイ)を含む。1つ以上のピン(308)は、ファイバートウ(304)の間に形成され/ファイバートウ(304)に囲まれた別々の隙間(306)をそれぞれ通る。
【0058】
方法ステップ500〜510を実行することで、多くの態様の複合材製品を具現化することができる。限定するものではないが、その実施例は、下記の実施例の1つ、又は、任意の組み合わせを含む。
【0059】
1. ファイバートウ(304)が複数のプライ(302)又はレイヤ(301)に配置されており、1つ以上ピン(308)が、1つのプライ(302)又はレイヤ(301)におけるファイバートウ(304)の隙間(306)の内の異なる1つを通る、複合材製品(300a−d)。
【0060】
2. 複合材製品(300e)であって、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)が、複数のプライ(336a、336b、336c、336d)又はレイヤ(338a、338b、338c、338d)に配置されており、隙間(342)が、複数のレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)を貫通し、隙間(342)は、例えば図3F及び図3Gに示すように、異なる複数のレイヤ(338a、338b、338c、338d)又はプライ(336a、336b、336c、336d)に含まれるファイバートウ(340a、340b、340c、340d)によって、囲まれ、仕切られ、又は、画成されており、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)の配向(370)が異なるので、ファイバートウ(340a、340b、340c、340d)の間に隙間(342)が形成される、複合材製品。
【0061】
3. ファイバートウ(304)が、例えば、図6Bに示すようなファイバーマット又は織物を形成するように、織り合されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0062】
4. ファイバートウ(304)が、ブレード(例えば、縫合、又は、編組した生地)を形成するように配置されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0063】
5. ファイバートウ(304)が、糸条(yarn)のブレードを含むか、当該ブレード内に配置され、ピン(308)が、糸条又はファイバートウ(304)の間の隙間(306)を通り、糸条が、プライ(302)に含まれる隙間(306)の間の空間を通る、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0064】
6. ファイバートウ(304)が、ひだ付けしていない織物(non-crimp fabric)を形成するように配置される、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0065】
7. ファイバートウ(304)が、規則的なスリットを有する単方向テープに配置される(相互間に空隙を有する平行なファイバートウ(304)を含む)ように配置される、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0066】
8. ファイバートウ(304)が、多軸強化材を形成するように配置される、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0067】
9. 各レイヤ(301)又はプライ(302)において、あるいは、異なる複数のレイヤ(301a、301b)又はプライ(302a、302b)においてz方向に延びるピン(308)が、機械的特性(例えば、ピン(308)が複合材を連結する位置など)に関して互いに異なる、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0068】
10. 1つ以上のピン(308)が、ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つの表面(310)に接合されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0069】
11. 各ピン(308)が、ファイバートウ(304)の間の隙間(306)の体積の少なくとも90%、少なくとも95%、又は、少なくとも98%を満たす、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0070】
12. zピン308aは、図6Aに示すように、ナイロンストリングなどのストリング(620)によって、接続されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0071】
13. ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つが、ねじれのない(undistorted)ファイバートウ(612)である、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。1つ以上の実施例において、少なくとも1つのピン(308)は、図6Cに示すように、ねじれのないファイバートウ(612)の表面(616)に接合されている。1つ以上の実施例において、ねじれがないとは、プライにおけるファイバートウの隙間以外の領域にピンを押し込む際に発生するねじれを含まない状態を指す。1つ以上の実施例において、ねじれがないとは、孔空間にピンを配置する前のファイバートウに比べて、ねじれが増えていない状態を指す。
【0072】
14. ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つが、ほつれのない(unfrayed)ファイバー(614)を含み、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。様々な実施例において、ピン(308)のうちの少なくとも1つは、ほつれのないファイバー(614)の表面(618)に接合されている。1つ以上の実施例において、ほつれがないとは、プライにおけるファイバートウの隙間以外の領域にピンの押し込む際に発生するほつれを含まない状態を指す。1つ以上の実施例において、ほつれがないとは、孔空間にピンを配置する前のファイバートウに比べて、ほつれが増えていない状態を指す。
【0073】
15. ピンのうちの少なくとも1つ(308c)が、円柱状である、複合材製品(300c)。
【0074】
16. ピンのうちの少なくとも1つ(308b)は、その長さLに沿って一様でない、あるいは、規則的でない断面形状(330)を有する、複合材製品(300b)。
【0075】
17. ピンのうちの少なくとも1つ(308b)が、プライとプライの間に幅広部分を有する、複合材製品(300b)。
【0076】
18. 各ピンのいかなる高さにおいても、ピンの壁が一対のファイバーのみで画成されているために断面形状が一様ではない、複合材製品。つまり、ピンが一断面においては砂時計形状を呈するが、その砂時計形状の断面から90度の角度にある断面では、一般に楕円状、又は、円形である場合もありうる。
【0077】
19. ピン(308)のうちの1つ以上が、最外層のファイバーレイヤ(301d)又はプライ(302e)の上にも下にも延出して、樹脂表面(348b)に到達している、複合材製品(300f)。
【0078】
20. ピン(308)のうちの1つ以上が、樹脂(348)及びファイバートウ(304)に接合する、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0079】
21. ピン(308)のうちの1つ以上が、隙間(306)からアンカー(602)を引き出して形成される、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f)。
【0080】
22. 材料を堆積させたレイヤ(350)が、プライ(302)又はレイヤ(301)のいずれの側にも形成されており、ピン(308)が、プライ(302)又はファイバーレイヤ(301)の両側に形成された材料レイヤ(350)に連結する、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0081】
23. 複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)であって、材料を堆積させたレイヤ(350)が、プライ(302)又はレイヤ(301)のいずれの側にも形成されており、ピン(308)が、プライ(302)又はファイバーレイヤ(301)の両側に形成された材料レイヤ(350)に連結し、当該レイヤ(350)は、1つ以上アンカー(602)を構成し、このアンカーからピン(308)が延伸する複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。アンカーは、ピン(308)の基材、土台、及び/又は、ソースと定義され、ピン(308)となる材料(322)を供給し、及び/又は、ピン(308)が形成された後は、ピン(308)を接着させるものを供給する。
【0082】
24. 少なくとも1つのピン(308a)が、すべてのプライ(302)は貫通しない、複合材製品(300a)。
【0083】
25. 少なくとも1つのピン(308c)は、すべてのプライ(302)を貫通する、複合材製品(300a)。
【0084】
26. 複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)であって、ピン(308)が、当該複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)全体に均一に分布している、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0085】
27. ピン(308)が、不均一に配置されている、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。例えば、ピン(308)は、一部の領域では、他の領域よりも高い密度で配置されていてもよい(例えば、接合界面が存在する場所では、より高い密度で、界面から離れた場所では、より低い密度で配置されていてもよい)。
【0086】
28. 各ファイバートウ(304)が、直径D1が少なくとも2mmであり、少なくとも1000本のファイバーを含む、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)(図3C図3D図3E図3Hを参照)。
【0087】
29. 各隙間(306)が、直径、又は、幅D2が少なくとも2mmである、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)(図3C図3D図3E図3Hを参照)。
【0088】
30. 各プライ(302)が、2〜10mmの範囲の厚みTを有する、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)(図3C図3D図3E図3Hを参照)。
【0089】
31. 各ピン(308)が、2〜5mmの範囲の厚み又は直径Dを有する、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)(図3C図3D図3E図3Hを参照)。
【0090】
32. 各ピン(308)が、1〜3mmの範囲の長さ又は高さHを有する、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)(図3C図3D図3E図3Hを参照)。
【0091】
33. 全体の厚みT3が10mm〜1メートルの範囲である、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)(図3C図3D図3E図3Hを参照)。
【0092】
34. ピン(308)が、「粒子」状の熱可塑性材料が堆積されて成り、当該熱可塑性材料の表面張力によって、その外表面の分子がコアに向かって内側に引っ張られる、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0093】
35. ピン(308)が、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及び、ポリフェニルスルホンのうちから選択された少なくとも1つの熱可塑性材料から成る、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0094】
36. ピン(308)が、上記の熱可塑性材料の混成物から成る、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0095】
37. 複合材製品を含む航空機用一体構造体(1000)又は接合部であって、上記接合部又は構造部は、外皮(1004)、スティフナ(1006)、及び、この外皮(1004)とスティフナ(1006)との間の界面領域(1008)を含む、航空機用一体構造体(1000)又は接合部。界面領域(1008)は、複合材製品(300a、300b、300c、300d)を含み、この複合材製品は、ファイバートウ(304)と、複数のピン(308)と、樹脂(1010)と、を含む。各ピン(308)は、ファイバートウ(304)同士の間の隙間(306)を通る。各ピン(308)は、少なくとも1つのファイバートウ(304)の表面(310)に接合されている。樹脂は、プライ(302)及びピン(308)と結合されている。ピン(308)は、複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)における亀裂(102)の進展を抑制する物理的なバリア(312)を構成する。界面領域(1008)は、外皮(1004)の一部、スティフナ(1006)の一部、及び/又は、外皮(1004)とスティフナ(1006)の間のレイヤを含む。
<事例研究>
【0096】
図7A図7Dに、3D印刷により形成されたピン(308)の実施例を示す。この実施例におけるピン(308)は、230°Cと260°Cの印刷温度で作製された。延伸により成形されたピン(308)の直径Dは0.9mm、ピン間隔(650)は3.0mm、ピン長さLは5.0mmであった。他の実施例においては、作製されたピン(308)の直径Dは1.1mm前後、ピン間隔(650)は2.8mm前後、ピン長さLは4.9mm前後であった。ただし、例えば上述したように、その他の寸法も可能である。
<材料特性の制御>
【0097】
1つ以上の実施例において、付加製造され、あるいは印刷されたzピン(308)の材料特性は、本明細書に記載の付加製造方法を用いれば、制御、及び/又は、調整することが可能である。
【0098】
図8A及び図8Bは、付加製造の堆積条件(ノズル温度)によって、zピン(308)に用いた材料の材料特性がどのように変化するか示している。例として、引張強度及び工学ひずみの変化を示しているが、付加製造プロセスにおいて、供給速度、熱可塑性材料の流速、及び、ノズル温度など、影響するプリンタ入力を制御すれば、他の材料特性についても制御可能である。
【0099】
図9Aは、連続的なzピン(308b)(少なくとも1つのピン(308)は、すべてのプライを貫通する)を作製するための例示的な処理パラメータを示す表であり、本明細書に記載の実施形態のうち、連続的なzピン(308c)を用いる任意の実施形態に適用される。
【0100】
図9Bは、不連続なzピン(308a)(少なくとも1つのピン(308)は、すべてのプライは貫通しない)を作製するための例示的な処理パラメータを示す表であり、本明細書に記載の実施形態のうち、不連続なzピン(308a)を用いる任意の実施形態に適用される。
【0101】
様々な実施例において、複合材製品(300a、300b、300c、300d)は、以下の任意の組み合わせを含む。
【0102】
印刷パラメータを制御することによって、特定のシステム用途に合わせて特性を適合させた複合材料の積層体を含む高性能の層間レイヤを作製する技術が促進される。従来のアセンブリ技術では、構造体全体に対して1つの設定でしか処理を行うことができないので、本明細書に記載の例示的な実施形態で実現されるように、場所ごとに材料特性を変化させることは、不可能である。
<例示的な用途>
【0103】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載のzピンのネットワークは、航空機において用いられる複合材、特に、例えば、航空機の一体構造体(IAS)にみられるように、モードI又はモードIIの層間荷重が生じる、高応力集中領域において用いられる複合材の靭性を高めるために用いられる。現行の航空機の一体構造体は、留め具を用いて接合されており、これにより構造の冗長性を担保して、複合材の破壊靭性が低く、そのために脆性なエポキシであっても、予測可能な欠陥が発生しやすいようになっている。しかしながら、留め具を用いる場合の大きな問題は、留め具孔により生じる高応力集中に対処すべく、必要以上に部品の厚みを大きくする場合が多いため、重量の増加が懸念されるということである。加えて、ボルトや留め具によって複合材に生じる欠陥は、孔を始点として局所的に発生するが、発生後、板厚方向に進展する傾向がある。本明細書に記載の複合材製品を用いれば、破壊靭性を高めて、より予測しやすい欠陥とする手段を提供することにより、IASをより効果的に接合することが可能になる。より具体的には、本明細書に記載の例示的な実施形態によれば、複合部品の接続に用いる留め具の数を少なくすること、あるいは、機械的に接続される部品の厚みに適用される安全率(safety factor)を最小化することのいずれかを実現することで、モードI及びモードIIの破壊靭性を向上させ、対処すべき複合材欠陥に対処する方策を提供することができる。
【0104】
図10は、航空機の一体構造体1000(T型接合部1002)を示し、これは、外皮(1004)、スティフナ1006(例えば、ブレードスティフナ、又は、上部がハット型のスティフナ)、及び、外皮(1004)とスティフナ(1006)の間の界面領域1008を有する。界面領域(1008)は、本明細書に記載の複合材製品(300a、300b、300c、300d)を含み、この複合材製品は、ファイバートウ(304)を含む複数のプライ(302)、及び、複数のピン(308)を含む。各ピン(308)は、ファイバートウ(304)の間の隙間(306)の内の異なる1つを挿通し、各ピン(308)は、ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つの表面(310)に接合されている。ピン(308)は、複合材製品(300a、300b、300c、300d)における亀裂の進展を抑制する物理的なバリアを構成する。様々な実施例において、複合材製品(300a、300b、300c、300d)は、さらに、プライ(302)及びピン(308)と結合した樹脂(1010)を含み、これにより、ピン(308)は、孔空間(306)を通るように形成され、樹脂(1010)及びファイバートウ(304)の表面に接合し、アンカー(602)に固定される。
【0105】
界面領域(1008)は、外皮(1004)の一部、スティフナ(1006)の一部、及び/又は、外皮(1004)とスティフナ(1006)の間のレイヤを含む。様々な実施例において、ピン(308)は、支持部材が複合材と接触する箇所にのみ設けられている。複合材製品を採用可能なその他の構造体には、限定するものではないが、パネルがある。いくつかの実施形態において、ピン(308)は、縁部強度を向上させるべくパネルの端縁のみに設けられている。ピン(308)を選択的に配置(例えば、界面領域や縁部のみに配置)すれば、強靭化が必要な部分に限定してピンを設けることで、軽量化が可能になる。1つ以上の実施例において、ピン(308)において外皮(1002)に最も近い部分である上部T5(図3Eを参照)は、外皮(1002)とスティフナ(1006)との間の界面1052または縁部から、最大で10cmまでの距離1050に配置されている。
【0106】
ただし、本発明の実施形態によるzピン構造は、複合材の損傷許容度の改善が必要なあらゆる用途(例えば、構造部材や準構造部材)に利用可能である。
<利点及び改善点>
【0107】
従来の技術では、液状材成形により作製された複合材の靭性を高めるために、熱可塑性ベールを用いることを含んでいた。しかしながら、熱可塑性ベールは、レイヤに限定され、板厚方向の強靭化技術に比較すると、改善の度合いは限定的である。加えて、従来の強靭化技術は、製造上の制約のため、及び/又は、製造プロセスにおいて微細欠陥が発生するため、採用されない場合がある。
【0108】
本明細書に記載の例示的な強靭化方法は、zピンを作製する新規な方法、及び、多孔性の平織り繊維マットから液状材成形により作製された複合材にzピンを用いる新規な方法を含む。本明細書に記載の新規な製造方法は、微細欠陥を極力少なくすることを課題の1つとする。従来の方法では、微細欠陥の抑制を主な目的として、厚板方向に連続する強靭化構造を炭素トウの周辺に配置することで最終的な複合材の面内特性を維持することは、行われていない。加えて、従来の金属性のzピンは、別途作製された後に、ドライファイバーのマット/プリプレグプライの積層体に物理的に押し込まれる(例えば、刺入される)。つまり、本明細書に記載の例示的な実施例を用いて実現可能なように、印刷により孔と孔の間にピンを作製して、繊維の損傷を最小限にすることを可能にするものではない。加えて、本願発明者らの知る限り、従来のzピンは、炭素繊維/BMI製、又は、金属製であり、本明細書に記載の例示的なプロセスによって利用可能な熱可塑性材料や延性の高い材料から成るものではない。
<処理環境>
【0109】
図11は、本明細書に記載の3Dプリンタ(400)の制御に必要な処理要素を実現するために利用される例示的なシステム1100を示す。
【0110】
コンピュータ1102は、プロセッサ1104(汎用プロセッサ1104A、及び、専用プロセッサ1104B)、及び、ランダムアクセスメモリ(RAM)1106などのメモリを含む。概して、コンピュータ1102は、メモリ1106に格納されたオペレーティングシステム1108の制御下で動作し、ユーザ/他のコンピュータとの対話を介して、入力やコマンド(例えば、アナログ信号又はデジタル信号)を受け付け、また、入力/出力(I/O)モジュール1110を介して結果を提供する。コンピュータプログラムアプリケーション1112は、コンピュータ1102のメモリ1106に格納されたデータにアクセスして、これを処理する。オペレーティングシステム1108及びコンピュータプログラム1112は、命令によって構成されており、これら命令は、コンピュータ1102によって読み出され実行されると、コンピュータ1102に本明細書に記載した処理を実行させる。一実施形態において、オペレーティングシステム1108及びコンピュータプログラム1112を実行する命令は、メモリ1106に物理的に実装されており、これにより、本明細書に記載の印刷方法(例えば、図5に示した方法)を実行可能な1つ以上コンピュータプログラム製品又は製造物を実現することができる。このように、本明細書で用いられる「製造物」、「プログラム記憶装置」、及び「コンピュータプログラム製品」なる用語は、任意のコンピュータ可読装置又は媒体によってアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することを意図している。
【0111】
本開示の範囲から逸脱することなく、本構成に様々な変形が適用可能であることが当業者には認識されるであろう。例えば、上記の部材の任意の組み合わせ、あるいは、任意の数の異なる部材、周辺機器、及び他の装置が使用可能であることが当業者には認識されるであろう。
【0112】
付記1. 複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)であって、
複数のファイバートウ(304)と、複数のピン(308)とを含み、
前記ピン(308)の各々は、前記ファイバートウ(304)で囲まれた別々の隙間(306)を通り、
前記ピン(308)の各々は、前記ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つのファイバートウの表面(310)に接合されており、
さらに、前記プライ(302)及び前記ピン(308)と結合した樹脂(1010)を含み、
前記ピン(308)は、前記複合材製品(300a、300b、300c、300d)における亀裂(102)の進展を抑制する物理的なバリア(312)を構成する、複合材製品。
【0113】
付記2. 前記ピン(308)は、互いに異なる機械的特性を有する、付記1に記載の複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0114】
付記3. 前記ピンのうちの少なくとも1つ(308c)は、円柱状である、付記1又は2に記載の複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0115】
付記4. 前記ピンの内の少なくとも1つ(308b)は、その長さLに沿って、一様でない、あるいは、規則的でない断面形状(330)を有する、付記1〜3に記載の複合材製品(300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g)。
【0116】
付記5. 外皮(1004)、スティフナ(1006)、及び、前記外皮(1004)と前記スティフナ(1006)との間の界面領域(1008)と、を含む航空機用の一体構造体(1000)であって、
前記界面領域(1008)は、複合材製品(300a、300b、300c、300d)を含み、前記複合材製品は、
ファイバートウ(304)と、
複数のピン(308)と、を含み、
前記ピン(308)の各々は、前記ファイバートウ(304)の間の隙間(306)を通り、
前記ピン(308)の各々は、前記ファイバートウ(304)のうちの少なくとも1つのファイバートウの表面(310)に接合されており、
前記複合材製品は、さらに、前記プライ(302)及び前記ピン(308)と結合した樹脂(1010)を含み、
前記ピン(308)は、前記複合材製品(300a、300b、300c、300d)における亀裂(102)の進展を抑制する物理的なバリア(312)を構成し、
前記界面領域(1008)は、前記外皮(1004)の一部、前記スティフナ(1006)の一部、及び/又は、前記外皮(1004)と前記スティフナ(1006)の間のレイヤを含む、航空機用の一体構造体。
<結び>
【0117】
以上で、本開示の好ましい実施形態の説明を終える。上記の好ましい実施形態の記載は、例示及び説明を目的として提示したものであり、全てを網羅することや、開示された形態そのものに本開示を限定することを意図するものではない。上述の開示を踏まえて、様々な改変及び変形が可能である。権利範囲は、詳細な説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって規定されることを意図している。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A-7D】
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
【外国語明細書】
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