特開 2019-214720 冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】特開2019-214720(P2019-214720A)

(43)【公開日】2019年12月19日

(54)【発明の名称】冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステム

(51)【国際特許分類】

   C09K 5/04 20060101AFI20191122BHJP

   F25B 1/00 20060101ALI20191122BHJP

【ＦＩ】

   C09K5/04 EZAB

   C09K5/04 F

   F25B1/00 396D

   F25B1/00 396U

   F25B1/00 396Z

   C09K5/04 A

【審査請求】有

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

【全頁数】23

(21)【出願番号】特願2019-109827(P2019-109827)

(22)【出願日】2019年6月12日

(31)【優先権主張番号】特願2018-112060(P2018-112060)

(32)【優先日】2018年6月12日

(33)【優先権主張国】JP

(71)【出願人】

【識別番号】000002853

【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000796

【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】板野 充司

(72)【発明者】

【氏名】黒木 眸

(72)【発明者】

【氏名】高橋 一博

(57)【要約】

【課題】Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）と冷凍能力（Ｃａｐ）とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備える冷媒（混合冷媒）を含有する組成物を提供する。
【解決手段】
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する組成物を提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】

【請求項1】

冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する、組成物。

【請求項2】

冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、ＨＦＣ−３２、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する、組成物。

【請求項3】

冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）及びＨＦＣ−３２を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上である、組成物。

【請求項4】

前記冷媒が、更に、テトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂを含有する、請求項１〜３のいずれかに記載の組成物。

【請求項5】

前記冷媒が、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ₃Ｉ及び前記ＣＯ₂の合計量を０．１〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜９９．９質量％含有する、請求項１に記載の組成物。

【請求項6】

前記冷媒が、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂、前記ＨＦＣ−３２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記ＨＦＣ−３２の合計量を０．１〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜９９．９質量％含有する、請求項２に記載の組成物。

【請求項7】

Ｒ４１０Ａの代替冷媒として用いられる、請求項１〜６のいずれかに記載の組成物。

【請求項8】

更に、冷凍機油を含有し、冷凍機用作動流体として用いられる、請求項１〜７のいずれかに記載の組成物。

【請求項9】

請求項１〜８のいずれかに記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。

【請求項10】

請求項１〜８のいずれかに記載の組成物を含む、熱移動媒体。

【請求項11】

請求項１０に記載の熱移動媒体を用いた熱サイクルシステム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、冷媒を含有する組成物、熱移動媒体及び熱サイクルシステムに関する。

【背景技術】

【0002】

家庭用エアコン等の空調用冷媒として現在、Ｒ４１０Ａが用いられている。Ｒ４１０Ａは、ジフルオロメタン（ＣＨ₂Ｆ₂；Ｒ３２）とペンタフルオロエタン（Ｃ₂ＨＦ₅；Ｒ１２５）との２成分混合冷媒であり、擬似共沸組成物である。

【0003】

しかし、Ｒ４１０Ａの地球温暖化係数（ＧＷＰ）は２０８８であり、地球温暖化への懸念の高まりからＧＷＰが６７５のＲ３２がより多く使用されつつある。このため、Ｒ４１０Ａに代替可能な低ＧＷＰ混合冷媒が種々提案されている（特許文献１）。

【0004】

また、本開示に関連する先行文献として、特許文献２、３等には、トリフルオロヨードメタン（ＣＦ₃Ｉ）を含む冷媒組成物が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】国際公開第２０１５／１４１６７８号

【特許文献2】特開２００９−２４１５２号公報

【特許文献3】特開平８−２７７３８９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本発明者らは、独自の検討により、従来技術においては、Ｒ４１０Ａの代替冷媒となり得る、Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数［Coefficient of Performance（ＣＯＰ）］と冷凍能力［Refrigeration Capacity（Cooling Capacity、Capacity（Ｃａｐ）と表記されることもある）］とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備える冷媒組成物（混合冷媒）の開発には至っていないと着想するに至った。本開示はかかる独自の課題を解決することを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
１．冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する、組成物。
２．冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、ＨＦＣ−３２、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する、組成物。
３．冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）及びＨＦＣ−３２を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上である、組成物。
４．前記冷媒が、更に、テトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂを含有する、上記項１〜３のいずれかに記載の組成物。
５．前記冷媒が、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ₃Ｉ及び前記ＣＯ₂の合計量を０．１〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜９９．９質量％含有する、上記項１に記載の組成物。
６．前記冷媒が、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂、前記ＨＦＣ−３２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記ＨＦＣ−３２の合計量を０．１〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜９９．９質量％含有する、上記項２に記載の組成物。
７．Ｒ４１０Ａの代替冷媒として用いられる、上記項１〜６のいずれかに記載の組成物。
８．更に、冷凍機油を含有し、冷凍機用作動流体として用いられる、上記項１〜７のいずれかに記載の組成物。
９．上記項１〜８のいずれかに記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
１０．上記項１〜８のいずれかに記載の組成物を含む、熱移動媒体。
１１．上記項１０に記載の熱移動媒体を用いた熱サイクルシステム。

【発明の効果】

【0008】

本開示の冷媒（混合冷媒）は、Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）と冷凍能力（Ｃａｐ）とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備えており、本開示の冷媒を含む組成物は、例えば冷凍機用作動流体として好適である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）を含有する特定組成の冷媒（混合冷媒）が上記性能を有しており、当該冷媒を含有する組成物が、例えば冷凍機用作動流体に好適であることを見出した。

【0010】

本開示は、かかる知見に基づき、更に研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。

【0011】

＜用語の定義＞
本明細書において用語「冷媒」には、ＩＳＯ８１７（国際標準化機構）で定められた、冷媒の種類を表すＲで始まる冷媒番号（ＡＳＨＲＡＥ番号）が付された化合物が少なくとも含まれ、更に冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。

【0012】

冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン（ＣＦＣ）、ハイドロクロロフルオロカーボン（ＨＣＦＣ）及びハイドロフルオロカーボン（ＨＦＣ）が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン（Ｒ２９０）、プロピレン（Ｒ１２７０）、ブタン（Ｒ６００）、イソブタン（Ｒ６００ａ）、二酸化炭素（Ｒ７４４）及びアンモニア（Ｒ７１７）等が挙げられる。

【0013】

本明細書において、用語「冷媒を含有する組成物」には、（１）冷媒そのもの（冷媒の混合物を含む）と、（２）その他の成分を更に含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、（３）冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。

【0014】

本明細書においては、これらの三態様のうち、（２）の組成物のことを、冷媒そのもの（冷媒の混合物を含む）と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、（３）の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。

【0015】

本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品（冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種）の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン（drop in）代替」、「ニアリー・ドロップイン（nealy drop in）代替」及び「レトロフィット（retrofit）」があり得る。

【0016】

第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。

【0017】

本明細書において用語「冷凍機（refrigerating machine）」とは、物又は空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。

【0018】

本明細書において温度グライド（temperature glide）とは、熱サイクルシステムの構成要素内における、本開示の冷媒を含有する組成物の相変化過程の開始温度と終了温度との差の絶対値と言い換えることができる。

【0019】

１．冷媒
１−１．冷媒成分
本開示の冷媒は、実施形態ごとに大別すると、実施形態１〜３（それぞれ冷媒１〜３ともいう）に分けることができる。冷媒１〜３は、いずれもＲ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）と冷凍能力（Ｃａｐ）とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備えており、それらの冷媒を含む組成物は、例えば冷凍機用作動流体として好適である。以下、冷媒１〜３について説明する。

【0020】

なお、本開示において、Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）は、Ｒ４１０Ａに対するＣＯＰ比が９５％以上（好ましくは１００％以上）であることを意味し、Ｒ４１０Ａと同等以上の冷凍能力（Ｃａｐ）は、Ｒ４１０Ａに対する冷凍能力比が７５％以上（好ましくは９０％以上、より好ましくは９５％以上、最も好ましくは１００％以上）であることを意味する。また、ＧＷＰが十分に小さいとは、ＧＷＰが７５０以下、好ましくは６５０以下、より好ましくは４００以下、更に好ましくは１５０以下、最も好ましくは１以下であることを意味する。

【0021】

＜実施形態１：冷媒１＞
冷媒１は、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＣＦ₃Ｃ≡ＣＨ；ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する混合冷媒であることを特徴とする。つまり、冷媒１は、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂及び化合物Ａを必須成分とし、化合物Ａとしては上記列挙されたものの中から少なくとも１種が選択される。

【0022】

冷媒１は、このような構成を有することによって、Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）と冷凍能力（Ｃａｐ）とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備えている。

【0023】

本開示の化合物Ａとしては、ＨＦＯ−１１２３、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２、（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２、ＨＦＯ−１１４１及びＴＦＰが挙げられる。これらの化合物Ａは、単独で使用してもよく、また２種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0024】

上記化合物Ａを単独で使用する場合は、上記化合物Ａの中でも、Ｒ４１０Ａと同等のＣＯＰ及び同等程度の冷凍能力を有する観点から、ＨＦＯ−１１２３、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２又はＨＦＯ−１１４１が好ましく、ＨＦＯ−１１２３又は（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２がより好ましい。

【0025】

上記化合物Ａを２種以上組み合わせて使用する場合は、Ｒ４１０Ａと同等のＣＯＰ及び同等程度の冷凍能力を有する観点から、ＨＦＯ−１１２３、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２及びＨＦＯ−１１４１の少なくとも２種の化合物を使用することが好ましい。

【0026】

冷媒１は、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ₃Ｉ及び前記ＣＯ₂の合計量を０．１〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜９９．９質量％含有する混合冷媒であることが好ましい。

【0027】

その中でも、前記ＣＦ₃Ｉ及び前記ＣＯ₂の合計量を４０〜７０質量％含有し、前記化合物Ａを３０〜６０質量％含有する混合冷媒であることがより好ましい。この場合には、冷媒１はＧＷＰが１以下であり、ＣＯＰ比は１００％以上であり、冷凍能力比は７５％以上であり、Ｒ４１０Ａの代替冷媒としてより適した混合冷媒となる。

【0028】

なお、冷媒１には、２０〜６９質量％のＣＦ₃Ｉ、１〜１０質量％のＣＯ₂及び３０〜７０質量％の化合物Ａが含まれていることが好ましい。

【0029】

＜実施形態２：冷媒２＞
冷媒２は、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）、ＨＦＣ−３２、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有する混合冷媒であることを特徴とする。つまり、冷媒２は、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂、ＨＦＣ−３２及び化合物Ａを必須成分とし、化合物Ａとしては上記列挙されたものの中から少なくとも１種が選択される。

【0030】

冷媒２は、このような構成を有することによって、Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）と冷凍能力（Ｃａｐ）とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備えている。

【0031】

本開示の化合物Ａとしては、冷媒１と同様に、ＨＦＯ−１１２３、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２、（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２、ＨＦＯ−１１４１及びＴＦＰが挙げられる。これらの化合物Ａは、単独で使用してもよく、また２種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0032】

上記化合物Ａを単独で使用する場合は、上記化合物Ａの中でも、Ｒ４１０Ａと同等のＣＯＰ及び同等程度の冷凍能力を有する観点から、ＨＦＯ−１１２３、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２又はＨＦＯ−１１４１が好ましく、ＨＦＯ−１１２３又は（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２がより好ましい。

【0033】

上記化合物Ａを２種以上組み合わせて使用する場合は、Ｒ４１０Ａと同等のＣＯＰ及び同等程度の冷凍能力を有する観点から、ＨＦＯ−１１２３、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２及びＨＦＯ−１１４１の少なくとも２種の化合物を使用することが好ましい。

【0034】

冷媒２は、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂、前記ＨＦＣ−３２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記ＨＦＣ−３２の合計量を０．１〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜９９．９質量％含有する混合冷媒であることが好ましい。

【0035】

その中でも、前記ＣＦ₃Ｉ、前記ＣＯ₂及び前記ＨＦＣ−３２の合計量を７０〜９０質量％含有し、前記化合物Ａを１０〜３０質量％含有する混合冷媒であることがより好ましい。この場合には、冷媒２はＧＷＰが１５０以下であり、ＣＯＰ比は９５％以上であり、冷凍能力比は９０％以上であり、Ｒ４１０Ａの代替冷媒としてより適した混合冷媒となる。

【0036】

なお、冷媒２には、３８〜６９質量％のＣＦ₃Ｉ、１〜１０質量％のＣＯ₂、１５〜２２質量％のＨＦＣ−３２及び１５〜３０質量％の化合物Ａが含まれていることが好ましい。

【0037】

＜実施形態３：冷媒３＞
冷媒３は、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂（Ｒ７４４）及びＨＦＣ−３２を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上である混合冷媒であることを特徴とする。つまり、冷媒３は、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂及びＨＦＣ−３２を含む混合冷媒であって、冷媒中の前記ＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上であることを必須とする。

【0038】

冷媒３は、冷媒中のＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上であればよいが、その中でも４０質量％以上がより好ましい。なお、冷媒中のＨＦＣ−３２の含有量の上限は６０質量％程度である。

【0039】

＜実施形態１〜３（冷媒１〜３）に追加し得る化合物Ｂ＞
冷媒１〜３は、上記した各成分に加えて、更にテトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂを含有していてもよい。この場合には、化合物Ｂは、冷媒１〜３の、Ｒ４１０Ａと同等以上の成績係数（ＣＯＰ）と冷凍能力（Ｃａｐ）とを有し、ＧＷＰが十分に小さいという三種の性能を兼ね備えるという効果を損なわない範囲で含有する。

【0040】

本開示の化合物Ｂとしては、ＦＣ−１４、ＨＦＣ−２３、ＨＦＣ−１２５、ＨＦＣ−１３４ａ、ＨＦＣ−１３４、ＨＦＣ−１５２ａ、ＨＦＣ−１５２、ＨＦＣ−１４３ａ、ＨＦＣ−１４３、ＨＦＣ−２２７ｅａ、ＨＦＯ−１２３４ｙｆ、（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ、ＨＦＯ−１２２５ｙｅ、ＨＦＯ−１２４３ｚｆ及びＨＦＯ−１２５２が挙げられる。化合物Ｂは、単独で使用してもよく、また２種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0041】

上記化合物Ｂを使用する場合は、上記化合物Ｂの中でも、ＧＷＰ、ＣＯＰ及び冷凍能力の観点から、ＨＦＣ−１２５、ＨＦＯ−１２３４ｙｆ及び（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅの少なくとも１種が好ましい。また、不燃化の観点からは、ＨＦＣ−１２５（沸点−４８．１℃）はＨＦＣ−３２（沸点−５２℃）と沸点が近い不燃冷媒であるため、ＨＦＣ−１２５がより好ましい。

【0042】

本開示の冷媒１〜３は、化合物Ｂを含有する場合には、ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂、ＨＦＣ−３２、上記化合物Ａ及び上記化合物Ｂの合計量を１００質量％とした場合、それぞれ以下の（１）〜（３）に示される混合冷媒であることが好ましい。
（１）（冷媒１の場合）ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂、上記化合物Ａ及び上記化合物Ｂの合計量を１００質量％として、ＣＦ₃ＩとＣＯ₂を２５〜６５質量％含有し、上記化合物Ａとして、（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２及び／又はＨＦＯ−１１２３を３０〜６０質量％含有し、上記化合物Ｂとして、ＨＦＯ−１２３４ｙｆ及び／又は（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅを５〜１５含有する混合冷媒。
（２）（冷媒２の場合）ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂、ＨＦＣ−３２、上記化合物Ａ及び上記化合物Ｂの合計量を１００質量％として、ＣＦ３ＩとＣＯ２を３０〜４５質量％含有し、ＨＦＣ−３２を３０〜５０質量％含有し、上記化合物Ｂとして、ＨＦＣ−１２５を０〜１２．５含有し、且つ残部がＲ１２３４ｙｆである混合冷媒。
（３）（冷媒３の場合）ＣＦ₃Ｉ、ＣＯ₂、３０質量％以上のＨＦＣ−３２及び上記化合物Ｂの合計量を１００質量％として、ＣＦ₃ＩとＣＯ₂を３０〜４５質量％含有し、ＨＦＣ−３２を３０〜５０質量％含有し、上記化合物Ｂとして、ＨＦＣ−１２５を０〜１２．５含有し、且つ残部がＨＦＯ−１２３４ｙｆ及び／又は（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅである混合冷媒。

【0043】

＜更に他の追加的な冷媒を含有する混合冷媒＞
本開示の冷媒１〜３は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、ＣＯ₂、ＣＦ₃Ｉ、上記化合物Ａ及び上記化合物Ｂに加えて、更に他の追加的な冷媒を含有する混合冷媒であってもよい。この場合、ＣＯ₂、ＣＦ₃Ｉ、上記化合物Ａ及び上記化合物Ｂの合計量が、本開示の冷媒全体に対して、９９．５質量％以上１００質量％未満であることが好ましく、９９．７５質量％以上１００質量％未満であることがより好ましく、９９．９質量％％以上１００質量％未満であることが更に好ましい。

【0044】

上記追加的な冷媒としては、特に限定されず、この分野で広く使用されている公知の冷媒の中から幅広く選択できる。上記混合冷媒は、上記追加的な冷媒を単独で含んでいてもよいし、上記追加的な冷媒を２種以上を含んでいてもよい。

【0045】

１−２．用途
本開示の冷媒は、冷凍機における作動流体として好ましく使用することができる。

【0046】

本開示の冷媒を含有する組成物は、Ｒ４１０Ａ、Ｒ４０７Ｃ、Ｒ４０４Ａ等のＨＦＣ冷媒、及びＲ２２等のＨＣＦＣ冷媒の代替冷媒としての使用に適している。これらの中でも、本開示の冷媒を含有する組成物は、Ｒ４１０Ａの代替冷媒としての使用に特に適している。

【0047】

２．冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。

【0048】

また、本開示の冷媒組成物は、更に少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。

【0049】

本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、更に少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。

【0050】

上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。

【0051】

従って、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは０〜１質量％であり、より好ましくは０〜０．５質量％であり、更に好ましくは０〜０．２５質量％であり、特に好ましくは０〜０．１質量％である。

【0052】

２−１．水
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。

【0053】

冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、０〜０．１質量％であることが好ましく、０〜０．０７５質量％であることがより好ましく、０〜０．０５質量％であることが更に好ましく、０〜０．０２５質量％であることが特に好ましい。

【0054】

冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。水分を含むことによる上記効果を得る観点では、含水割合の下限値は０．００１質量％程度である。例えば、０．００１〜０．１質量％、０．００１〜０．０７５質量％、０．００１〜０．０５質量％、０．００１〜０．０２５質量％の範囲で含水割合を調整することができる。

【0055】

２−２．トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。

【0056】

本開示の冷媒組成物は、上記トレーサーを一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。

【0057】

上記トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。好ましくは、本開示の冷媒に不可避的に混入する不純物とはなり得ない化合物をトレーサーとして選択する。

【0058】

上記トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素（Ｎ₂Ｏ）等が挙げられる。これらの中でも、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが好ましい。

【0059】

上記トレーサーとしては、具体的には、以下の化合物（以下、トレーサー化合物とも称する）がより好ましい。
ＨＣＣ−４０（クロロメタン、ＣＨ₃Ｃｌ）
ＨＦＣ−４１（フルオロメタン、ＣＨ₃Ｆ）
ＨＦＣ−１６１（フルオロエタン、ＣＨ₃ＣＨ₂Ｆ）
ＨＦＣ−２４５ｆａ（１，１，１，３，３−ペンタフルオロプロパン、ＣＦ₃ＣＨ₂ＣＨＦ₂）
ＨＦＣ−２３６ｆａ（１，１，１，３，３，３−ヘキサフルオロプロパン、ＣＦ₃ＣＨ₂ＣＦ₃）
ＨＦＣ−２３６ｅａ（１，１，１，２，３，３−ヘキサフルオロプロパン、ＣＦ₃ＣＨＦＣＨＦ₂）
ＨＣＦＣ−２２（クロロジフルオロメタン、ＣＨＣｌＦ₂）
ＨＣＦＣ−３１（クロロフルオロメタン、ＣＨ₂ＣｌＦ）
ＣＦＣ−１１１３（クロロトリフルオロエチレン、ＣＦ₂＝ＣＣｌＦ）
ＨＦＥ−１２５（トリフルオロメチル−ジフルオロメチルエーテル、ＣＦ₃ＯＣＨＦ₂）ＨＦＥ−１３４ａ（トリフルオロメチル−フルオロメチルエーテル、ＣＦ₃ＯＣＨ₂Ｆ）ＨＦＥ−１４３ａ（トリフルオロメチル−メチルエーテル、ＣＦ₃ＯＣＨ₃）
ＨＦＥ−２２７ｅａ（トリフルオロメチル−テトラフルオロエチルエーテル、ＣＦ₃ＯＣＨＦＣＦ₃）
ＨＦＥ−２３６ｆａ（トリフルオロメチル−トリフルオロエチルエーテル、ＣＦ₃ＯＣＨ₂ＣＦ₃）

【0060】

上記トレーサー化合物は、１０重量百万分率（ｐｐｍ）〜１０００ｐｐｍの合計濃度で冷媒組成物中に存在し得る。上記トレーサー化合物は３０ｐｐｍ〜５００ｐｐｍの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが好ましく、５０ｐｐｍ〜３００ｐｐｍの合計濃度で冷媒組成物中に存在することがより好ましく、７５ｐｐｍ〜２５０ｐｐｍの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが更に好ましく、１００ｐｐｍ〜２００ｐｐｍの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが特に好ましい。

【0061】

２−３．紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。

【0062】

上記紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。

【0063】

上記紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ナフタルイミド及びクマリンが好ましい。

【0064】

２−４．安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。

【0065】

上記安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。

【0066】

上記安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類、アミン類等が挙げられる。

【0067】

ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、及びニトロベンゼン、ニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。

【0068】

エーテル類としては、例えば、１，４−ジオキサン等が挙げられる。

【0069】

アミン類としては、例えば、２，２，３，３，３−ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。

【0070】

上記安定剤としては、上記ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類以外にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。

【0071】

上記安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、０．０１〜５質量％であり、０．０５〜３質量％が好ましく、０．１〜２質量％がより好ましく、０．２５〜１．５質量％が更に好ましく、０．５〜１質量％が特に好ましい。

【0072】

なお、本開示の冷媒組成物の安定性の評価方法は、特に限定されず、一般的に用いられる手法で評価することができる。そのような手法の一例として、ＡＳＨＲＡＥ標準９７−２００７にしたがって遊離フッ素イオンの量を指標として評価する方法等が挙げられる。その他にも、全酸価（total acid number）を指標として評価する方法等も挙げられる。この方法は、例えば、ＡＳＴＭ Ｄ ９７４−０６にしたがって行うことができる。

【0073】

２−５．重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。

【0074】

上記重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。

【0075】

上記重合禁止剤としては、例えば、４−メトキシ−１−ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル−ｔ−ブチルフェノール、２，６−ジ−ｔｅｒｔ−ブチル−ｐ−クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。

【0076】

上記重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、０．０１〜５質量％であり、０．０５〜３質量％が好ましく、０．１〜２質量％がより好ましく、０．２５〜１．５質量％が更に好ましく、０．５〜１質量％が特に好ましい。

【0077】

３．冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。

【0078】

上記冷凍機油の含有割合は、特に限定されず、冷凍機油含有作動流体全体に対して、通常、１０〜５０質量％であり、１２．５〜４５質量％が好ましく、１５〜４０質量％がより好ましく、１７．５〜３５質量％が更に好ましく、２０〜３０質量％が特に好ましい。

【0079】

３−１．冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。

【0080】

上記冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、本開示の冷媒の混合物（本開示の混合冷媒）との相溶性（ｍｉｓｃｉｂｉｌｉｔｙ）及び本開示の混合冷媒の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。

【0081】

上記冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール（ＰＡＧ）、ポリオールエステル（ＰＯＥ）及びポリビニルエーテル（ＰＶＥ）からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。

【0082】

上記冷凍機油は、上記基油に加えて、更に添加剤を含んでいてもよい。

【0083】

上記添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。

【0084】

上記冷凍機油としては、潤滑の点から、４０℃における動粘度が５〜４００ｃＳｔであるものが好ましい。

【0085】

本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、更に少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。

【0086】

３−２．相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。

【0087】

上記相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。

【0088】

上記相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、１，１，１−トリフルオロアルカン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが好ましい。

【0089】

４．冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。

【0090】

具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を含む組成物を作動流体として冷凍機において循環させる工程を含む。

【0091】

５．熱移動媒体及びそれを用いた熱サイクルシステム
本開示の熱移動媒体は、本開示の冷媒を含む組成物を含有する。

【0092】

本開示の熱移動媒体は、各種の熱サイクルシステムに好適に使用することができる。熱サイクルシステムは、本開示の熱移動媒体を備えることで、冷却能力の高い熱サイクルシステムとなり得る。

【0093】

また、本開示の冷媒は、ＧＷＰが十分に低いため、既存の冷媒を使用した場合に比べて、本開示の熱移動媒体を備えることで、高い安全性を熱サイクルシステムに付与することができる。

【0094】

しかも、本開示の熱移動媒体は、温度クライドも低いので、安定性の高い熱サイクルシステムを提供することができる。

【0095】

熱サイクルシステムの種類は特に限定されない。熱サイクルシステムの例としては、ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、一以上の室内機及び室外機を冷媒配管で接続したセパレート型エアコン、ウインドウ型エアコン、ポータブル型エアコン、ダクトで冷温風を搬送するルーフトップ型又はセントラル型エアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍冷蔵庫、製氷機、一体型冷凍機、自動販売機、カーエアコン、海上輸送等のコンテナ又は冷蔵庫を冷却するための冷凍機、チラーユニット、ターボ冷凍機、もしくは、暖房サイクル専用機を挙げることができる。当該暖房サイクル専用機とは、例えば、給湯装置、床暖房装置、融雪装置等が挙げられる。

【0096】

上記例示列挙した熱サイクルシステムは、本開示の熱移動媒体を備える限り、その他の構成については、特に限定されず、例えば、公知の熱サイクルシステムと同様の構成とすることができる。

【実施例】

【0097】

以下に、実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。

【0098】

実施例１〜２０及び比較例１〜１３
各実施例及び比較例に示される混合冷媒のＧＷＰ、並びに、Ｒ４１０Ａ（Ｒ３２＝５０％／Ｒ１２５＝５０％）のＧＷＰは、ＩＰＣＣ（Intergovernmental Panel on Climate Change）第４次報告書の値に基づいて評価した。

【0099】

また、各実施例及び比較例に示される混合冷媒のＣＯＰ及び冷凍能力、並びに、Ｒ４１０ＡのＣＯＰ及び冷凍能力は、National Institute of Science and Technology(NIST)、Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
蒸発温度 ４５℃
凝縮温度 ５℃
過熱温度 ５Ｋ
過冷却温度 ５Ｋ
圧縮機効率 ７０％

【0100】

また、これらの結果をもとに算出したＧＷＰ、ＣＯＰ及び冷凍能力を表１〜６に示す。なお、ＣＯＰ比及び冷凍能力比については、Ｒ４１０Ａに対する割合（％）を示す。

【0101】

成績係数（ＣＯＰ）は、次式により求めた。
ＣＯＰ＝（冷凍能力又は暖房能力）／消費電力量

【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【手続補正書】

【提出日】2019年9月5日

【手続補正1】

【補正対象書類名】特許請求の範囲

【補正対象項目名】全文

【補正方法】変更

【補正の内容】

【特許請求の範囲】

【請求項1】

冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ_３Ｉ、ＣＯ_２（Ｒ７４４）、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有し、
前記ＣＦ_３Ｉ、前記ＣＯ_２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ_３Ｉを２０〜６９質量％含有し、前記ＣＯ_２を１〜１０質量％含有する、組成物。

【請求項2】

冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ_３Ｉ、ＣＯ_２（Ｒ７４４）、ＨＦＣ−３２、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有し、
前記ＣＦ_３Ｉ、前記ＣＯ_２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ_３Ｉを３８〜６９質量％含有し、前記ＣＯ_２を１〜１０質量％含有する、組成物。

【請求項3】

冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ_３Ｉ、ＣＯ_２（Ｒ７４４）及びＨＦＣ−３２を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上であり、
更に、テトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂのうち、少なくとも前記ＨＦＣ−１２５を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−１２５の含有量が１０．０〜１２．５質量％である、組成物。

【請求項4】

前記冷媒が、更に、テトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂを含有する、請求項１又は２に記載の組成物。

【請求項5】

Ｒ４１０Ａの代替冷媒として用いられる、請求項１〜４のいずれかに記載の組成物。

【請求項6】

更に、冷凍機油を含有し、冷凍機用作動流体として用いられる、請求項１〜５のいずれかに記載の組成物。

【請求項7】

請求項１〜６のいずれかに記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。

【請求項8】

請求項１〜６のいずれかに記載の組成物を含む、熱移動媒体。

【請求項9】

請求項８に記載の熱移動媒体を用いた熱サイクルシステム。

【手続補正2】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００７

【補正方法】変更

【補正の内容】

【0007】

本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
１．冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ_３Ｉ、ＣＯ_２（Ｒ７４４）、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有し、
前記ＣＦ_３Ｉ、前記ＣＯ_２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ_３Ｉを２０〜６９質量％含有し、前記ＣＯ_２を１〜１０質量％含有する、組成物。
２．冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ_３Ｉ、ＣＯ_２（Ｒ７４４）、ＨＦＣ−３２、並びに、トリフルオロエチレン（ＨＦＯ−１１２３）、トランス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１１３２］、シス−１，２−ジフルオロエチレン［（Ｚ）−ＨＦＯ−１１３２］、フルオロエチレン（ＨＦＯ−１１４１）及び３，３，３−トリフルオロプロピン（ＴＦＰ）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ａを含有し、
前記ＣＦ_３Ｉ、前記ＣＯ_２及び前記化合物Ａの合計量を１００質量％として、前記ＣＦ_３Ｉを３８〜６９質量％含有し、前記ＣＯ_２を１〜１０質量％含有する、組成物。
３．冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、ＣＦ_３Ｉ、ＣＯ_２（Ｒ７４４）及びＨＦＣ−３２を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−３２の含有量が３０質量％以上であり、
更に、テトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂのうち、少なくとも前記ＨＦＣ−１２５を含有し、前記冷媒中の前記ＨＦＣ−１２５の含有量が１０．０〜１２．５質量％である、組成物。
４．前記冷媒が、更に、テトラフルオロメタン（ＦＣ−１４）、トリフルオロメタン（ＨＦＣ−２３）、ペンタフルオロエタン（ＨＦＣ−１２５）、１，１，１，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４ａ）、１，１，２，２−テトラフルオロエタン（ＨＦＣ−１３４）、１，１−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２ａ）、１，２−ジフルオロエタン（ＨＦＣ−１５２）、１，１，１−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３ａ）、１，１，２−トリフルオロエタン（ＨＦＣ−１４３）、１，１，１，２，３，３，３−ヘプタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２２７ｅａ）、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２３４ｙｆ）、トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン［（Ｅ）−ＨＦＯ−１２３４ｚｅ］、１，２，３，３，３−ペンタフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２２５ｙｅ）、３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２４３ｚｆ）及びジフルオロプロペン（ＨＦＯ−１２５２）からなる群より選択される少なくとも１種の化合物Ｂを含有する、上記項１又は２に記載の組成物。
５．Ｒ４１０Ａの代替冷媒として用いられる、上記項１〜４のいずれかに記載の組成物。
６．更に、冷凍機油を含有し、冷凍機用作動流体として用いられる、上記項１〜５のいずれかに記載の組成物。
７．上記項１〜６のいずれかに記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
８．上記項１〜６のいずれかに記載の組成物を含む、熱移動媒体。
９．上記項８に記載の熱移動媒体を用いた熱サイクルシステム。