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特開2019-214745マスターバッチ、樹脂組成物、及び樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214745(P2019-214745A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】マスターバッチ、樹脂組成物、及び樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20191122BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   C08J3/22
   C08J5/00CFD
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-181176(P2019-181176)
(22)【出願日】2019年10月1日
(62)【分割の表示】特願2017-93654(P2017-93654)の分割
【原出願日】2017年5月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】野中 篤
(72)【発明者】
【氏名】山下 正芳
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB11
4F070AB22
4F070AB23
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB04
4F070FC06
4F071AA45
4F071AA46
4F071AA81
4F071AA84
4F071AF15Y
4F071AF21Y
4F071BA01
4F071BB05
(57)【要約】
【課題】樹脂本来の物理的強度を保持しつつ、柔軟性が付与された樹脂成形品を製造することが可能なマスターバッチを提供する。
【解決手段】柔軟性が付与された樹脂成形品を製造するために用いるマスターバッチである。2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(A−1)、及び2種のアルキレンジオールに由来する構成単位(A−2)を有するポリエステル樹脂(A)と、1種又は2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B−1)、及び1種のアルキレンジオールに由来する構成単位(B−2)を有するポリエステル樹脂(B)とを含有し、ポリエステル樹脂(A)の融点が、70〜120℃である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性が付与された樹脂成形品を製造するために用いるマスターバッチであって、
2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(A−1)、及び2種のアルキレンジオールに由来する構成単位(A−2)を有するポリエステル樹脂(A)と、
1種又は2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B−1)、及び1種のアルキレンジオールに由来する構成単位(B−2)を有するポリエステル樹脂(B)と、
を含有し、
前記ポリエステル樹脂(A)の融点が、70〜120℃であるマスターバッチ。
【請求項2】
前記構成単位(A−2)を構成する前記2種のアルキレンジオールが、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールのうちの2種である請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
以下に示す条件1を満たす請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
[条件1]:
前記マスターバッチとポリエチレンテレフタレートとを、前記ポリエステル樹脂(A)の含有量が5質量%、7.5質量%、又は10質量%となるようにそれぞれ混合した後、溶融混錬し、以下に示す条件2で成形して得られる樹脂成形品の、引張試験機を使用し、JIS K 7161:1994に準拠して、引張速度:50mm/min、試験間距離:115mmの条件で測定される引張破壊応力(MPa)が53.5〜57.3MPaであり、かつ、引張破壊呼びひずみ(%)が6.4〜8.5%である。
[条件2]:
・ノズル温度:280℃
・金型温度:60℃
・スクリュー回転数:60rpm
・射出時間:15秒
・冷却時間:35秒
【請求項4】
前記構成単位(A−1)を構成する前記2種の芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸及びイソフタル酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項5】
前記構成単位(B−2)を構成する前記1種のアルキレンジオールが、下記一般式(2)で表される請求項1〜4のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
HO−R−OH ・・・(2)
(前記一般式(2)中、Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す)
【請求項6】
前記構成単位(B−1)を構成する前記1種又は2種の芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸及びイソフタル酸の少なくともいずれかである請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレートである請求項1〜6のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の質量比が、(A):(B)=5:95〜50:50である請求項1〜7のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂(B)の融点が、210〜280℃である請求項1〜8のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項10】
有機顔料、有機染料、及び無機顔料からなる群より選択される少なくともいずれかの着色成分をさらに含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項11】
前記着色成分の含有量が、0.5〜60質量%である請求項10に記載のマスターバッチ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスターバッチと、熱可塑性樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスターバッチからなる樹脂成形品。
【請求項14】
請求項12に記載の樹脂組成物からなる樹脂成形品。
【請求項15】
繊維又は不織布である請求項13又は14に記載の樹脂成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性が付与された樹脂成形品を製造するために用いるマスターバッチ、樹脂組成物、及び樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂は、化学的及び物理的に優れた性質を有するため、従来、フィルム、シート等の成形品を製造するための工業材料として広く利用されている。また、ポリエステル樹脂からなる繊維(ポリエステル繊維)は衣料用途に広く使用されており、種々の研究がなされている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−208919号公報
【特許文献2】特開2013−087153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のポリエステル繊維は風合いが硬いため、一般的なポリエステル繊維を用いて作製した衣料品は手触りがザラザラとして固く、肌に接触した際の感触がさほど心地良いものではなかった。
【0005】
これに対し、ポリエステル樹脂に特定の化合物等を添加して風合いを改善することや、ポリエステルエラストマーとして得られる樹脂成形品に柔軟性を付与する試みがなされてきた。しかしながら、特定の化合物等を添加すると、樹脂本来の物理的強度が低下しやすくなるといった新たな課題が生ずることがわかった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、樹脂本来の物理的強度を保持しつつ、柔軟性が付与された樹脂成形品を製造することが可能なマスターバッチを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記のマスターバッチを用いて得られる樹脂組成物、及び樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示すマスターバッチが提供される。
[1]柔軟性が付与された樹脂成形品を製造するために用いるマスターバッチであって、2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(A−1)、及び2種のアルキレンジオールに由来する構成単位(A−2)を有するポリエステル樹脂(A)と、1種又は2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B−1)、及び1種のアルキレンジオールに由来する構成単位(B−2)を有するポリエステル樹脂(B)と、を含有するマスターバッチ。
[2]前記構成単位(A−2)を構成する前記2種のアルキレンジオールが、下記一般式(1)で表される前記[1]に記載のマスターバッチ。
HO−R−OH ・・・(1)
(前記一般式(1)中、Rは、炭素数4〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す)
[3]前記構成単位(A−1)を構成する前記2種の芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸及びイソフタル酸である前記[1]又は[2]に記載のマスターバッチ。
[4]前記構成単位(B−2)を構成する前記1種のアルキレンジオールが、下記一般式(2)で表される前記[1]〜[3]のいずれかに記載のマスターバッチ。
HO−R−OH ・・・(2)
(前記一般式(2)中、Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す)
[5]前記構成単位(B−1)を構成する前記1種又は2種の芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸及びイソフタル酸の少なくともいずれかである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のマスターバッチ。
[6]前記ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレートである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のマスターバッチ。
[7]前記ポリエステル樹脂(B)が、前記ポリエステル樹脂(B)全体を基準として、5〜10モル%のイソフタル酸単位を含むイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のマスターバッチ。
[8]前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の質量比が、(A):(B)=5:95〜50:50である前記[1]〜[7]のいずれかに記載のマスターバッチ。
[9]前記ポリエステル樹脂(A)の融点が、70〜180℃であり、前記ポリエステル樹脂(B)の融点が、210〜280℃である前記[1]〜[8]のいずれかに記載のマスターバッチ。
[10]有機顔料、有機染料、及び無機顔料からなる群より選択される少なくともいずれかの着色成分をさらに含有する前記[1]〜[9]のいずれかに記載のマスターバッチ。
[11]前記着色成分の含有量が、0.5〜60質量%である前記[10]に記載のマスターバッチ。
【0008】
また、本発明によれば、以下に示す樹脂組成物が提供される。
[12]前記[1]〜[11]のいずれかに記載のマスターバッチと、熱可塑性樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【0009】
さらに、本発明によれば、以下に示す樹脂成形品が提供される。
[13]前記[1]〜[11]のいずれかに記載のマスターバッチからなる樹脂成形品(以下、「第一の樹脂成形品」とも記す)。
[14]前記[12]に記載の樹脂組成物からなる樹脂成形品(以下、「第二の樹脂成形品」とも記す)。
[15]繊維又は不織布である前記[13]又は[14]に記載の樹脂成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂本来の物理的強度を保持しつつ、柔軟性が付与された樹脂成形品を製造することが可能なマスターバッチを提供することができる。また、本発明によれば、上記のマスターバッチを用いて得られる樹脂組成物、及び樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<マスターバッチ>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のマスターバッチは、柔軟性が付与された樹脂成形品を製造するために用いるものであり、ポリエステル樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)とを含有する。以下、本発明のマスターバッチの詳細について説明する。
【0012】
(ポリエステル樹脂(A))
ポリエステル樹脂(A)は、2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(A−1)、及び2種のアルキレンジオールに由来する構成単位(A−2)を有する。2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(A−1)を有するポリエステル樹脂(A)を用いることで、樹脂本来の強度が保持された樹脂成形品を製造可能なマスターバッチとすることができる。2種の芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸及びテレフタル酸が好ましい。
【0013】
構成単位(A−2)を構成する2種のアルキレンジオールは、下記一般式(1)で表されるアルキレンジオールであることが好ましい。
HO−R−OH ・・・(1)
(前記一般式(1)中、Rは、炭素数4〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す)
【0014】
一般式(1)中、Rで表されるアルキレン基の炭素数は4〜6であることが好ましい。すなわち、2種のアルキレンジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールのうちの2種が好ましく、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールがさらに好ましい。
【0015】
ポリエステル樹脂(A)の融点は、70〜180℃であることが好ましく、70〜120℃であることがさらに好ましい。例えば、1種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位を有する一般的なポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))の融点が200℃前後又はそれ以上の温度であるのに対し、より低い融点のポリエステル樹脂(A)を用いることで、より柔軟性に優れた樹脂成形品を製造することが可能なマスターバッチとすることができる。なお、ポリエステル樹脂(A)を含む樹脂の融点は、示差熱分析装置(例えば、商品名「Thermo Plus TG8110」(リガク社製)など)を使用し、室温(25℃)から昇温速度10℃/minで加熱する条件により測定することができる。
【0016】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリエステル樹脂(A)のポリスチレン換算の数平均分子量は、15,000〜35,000であることが好ましく、20,000〜30,000であることがさらに好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)は、従来公知の方法にしたがって製造することができる。具体的には、必要に応じて用いられるエステル化触媒や酸化防止剤の存在下、2種の芳香族ジカルボン酸と2種のアルキレンジオールとを重縮合反応させることによって製造することができる。エステル化触媒や酸化防止剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0018】
(ポリエステル樹脂(B))
ポリエステル樹脂(B)は、1種又は2種の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B−1)、及び1種のアルキレンジオールに由来する構成単位(B−2)を有する。ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を組み合わせることで、得られる樹脂成形品の柔軟性と物理的強度のバランスを良好な状態に保つことができる。
【0019】
1種又は2種の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸及びイソフタル酸の少なくともいずれかを用いることができる。なかでも、テレフタル酸を芳香族ジカルボン酸として用いることが好ましい。
【0020】
構成単位(B−2)を構成する1種のアルキレンジオールは、下記一般式(2)で表されるアルキレンジオールであることが好ましい。
HO−R−OH ・・・(2)
(前記一般式(2)中、Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す)
【0021】
一般式(2)中、Rで表されるアルキレン基の炭素数は2又は3であることが好ましい。すなわち、1種のアルキレンジオールとしては、エチレングリコール又はプロピレングリコールが好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。
【0022】
構成単位(B−1)がテレフタル酸に由来する構成単位であるとともに、構成単位(B−2)がエチレングリコールに由来する構成単位である構成単位であることが好ましい。すなわち、ポリエステル樹脂(B)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)全体を基準として5〜10モル%のイソフタル酸単位を含むイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸変性PET)であることも好ましい。なお、ポリエステル樹脂(B)の融点は、210〜280℃であることが好ましく、230〜270℃であることがさらに好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂(B)は、従来公知の方法にしたがって製造することができる。具体的には、1種又は2種の芳香族ジカルボン酸のエステル化物(例えば、テレフタル酸ジメチル等)と、1種のアルキレンジオール(例えば、エチレングリコール等)とをエステル交換反応させた後に重縮合する、エステル交換反応方法などの従来公知の方法にしたがって製造することができる。
【0024】
本発明のマスターバッチには、着色成分を含有させることができる。着色成分としては、従来公知の有機顔料、有機染料、及び無機顔料などを用いることができる。これらの着色成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、マスターバッチ中の着色成分の含有量は、0.5〜60質量%であることが好ましい。
【0025】
有機顔料には、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料などがある。黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー−74、83、93、94、95、97、109、110、120、128、138、139、147、150、151、154、155、166、175、180、181、183、185、191などを挙げることができる。橙色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ−43、61、64、68、71、73などを挙げることができる。赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド−4、5、23、48:2、48:4、57:1、112、122、144、146、147、149、150、166、170、177、184、185、194、202、207、214、220、221、242、250、254、255、264、272などを挙げることができる。青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー−15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17:1、60、80、アルミニウムフタロシアニンブルーなどを挙げることができる。緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン−7、36、58、ポリ(13−16)ブロムフタロシアニンなどを挙げることができる。紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット−19、PV−23、PV−37などを挙げることができる。黒色顔料としては、アニリンブラック顔料などを挙げることができる。
【0026】
有機染料としては、アゾ系染料、ジオキサジン系染料、ナフトキノン系染料、キナクリドン系染料、有機蛍光染料アゾ染料、金属フタロシアニン染料、フタロシアニン系染料、レーキ系染料、シアニン系染料、カルバゾール系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、イソインドリン系染料などを挙げることができる。また、無機顔料としては、カーボンブラック顔料、酸化チタンブラック顔料などの黒色無機顔料等を挙げることができる。上記の有機顔料、有機染料、及び無機顔料は、それぞれ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
(その他の成分)
本発明のマスターバッチには、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)以外のその他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、離型剤、潤滑剤、染料、及び顔料などを挙げることができる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
(マスターバッチの製造方法)
本発明のマスターバッチは、例えば、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを溶融混練して製造することができる。溶融混練の方法は特に限定されず、従来公知の溶融混練方法を採用することができる。具体的には、ヘンシェルミキサー等の高速ミキサーやタンブラーなどの各種混合機を使用して各成分を予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、及びニーダーなどの混練装置で溶融混練する方法を挙げることができる。なかでも、押出機を使用して各成分を溶融混練することが、生産効率を高めることができるために好ましい。また、押出機としては二軸押出機を用いることが好ましい。押出機などの混練装置を使用して各成分を溶融混練するとともに、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出された混練物をペレット状やフレーク状等の所望とする形態に加工することができる。溶融混練時の温度は200〜300℃とすることが好ましく、260〜280℃とすることがさらに好ましい。
【0029】
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比は、(A):(B)=5:95〜50:50であることが好ましく、(A):(B)=10:90〜45:55であることがさらに好ましく、(A):(B)=15:85〜40:60であることが特に好ましい。ポリエステル樹脂(A)の質量比が50%超であると、マスターバッチの製造の際にブロッキングが発生しやすくなり、マスターバッチ化が困難になる傾向にある。一方、ポリエステル樹脂(A)の質量比が5%未満であると、ポリエステル樹脂(A)が少なすぎるため、製造される樹脂成形品に柔軟性を付与することが困難になる傾向にある。
【0030】
JIS K 7390:2003に準拠し、測定温度:25℃、溶液濃度:0.5g/dLの条件で測定されるポリエステル樹脂(A)単独の固有粘度(IV値)及びポリエステル樹脂(B)単独の固有粘度(IV値)は、それぞれ0.5〜0.7程度である。これに対して、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有する本発明のマスターバッチのIV値は、0.8〜1.3程度にまで上昇する。このことから、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を溶融混練してマスターバッチ化することで、樹脂どうしの間でエステル交換反応等の何らかの相互作用が生じ、ポリエステル樹脂自体の分子量が増加する等の現象が生じていることが示唆される。
【0031】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、前述のマスターバッチと、熱可塑性樹脂とを含有する。このため、従来公知の方法にしたがって本発明の樹脂組成物を所望とする形状に成形等すれば、樹脂本来の物理的強度を保持しつつ、柔軟性が付与された樹脂成形品を製造することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、一般的な樹脂成形品を製造するために用いられる従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリスチレン;ABS;ポリアミド;ポリメチルメタクリレート;ポリウレタン;ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、熱可塑性樹脂とポリエステル樹脂(B)は、同一のものであってもよい。
【0033】
樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)の含有量は、4〜9質量%であることが好ましく、5〜8質量%であることがさらに好ましい。すなわち、樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)の含有量が、好ましくは4〜9質量%、さらに好ましくは5〜8質量%となるように、熱可塑性樹脂とマスターバッチを混合(溶融混練)することが好ましい。樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)の含有量が4質量%未満又は9質量%超であると、得られる樹脂成形品の柔軟性と物理的強度のバランスを良好な状態に保つことが困難になる傾向にある。
【0034】
なお、樹脂組成物を製造するに際し、ポリエステル樹脂(A)を熱可塑性樹脂で希釈すると、溶融混練時の分散性が低下し、ムラが発生しやすくなる。このため、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有する前述のマスターバッチを熱可塑性樹脂で希釈することで、ムラが発生しにくく、均一な樹脂組成物を得やすくなるために好ましい。
【0035】
<樹脂成形品>
本発明の第一の樹脂成形品は、前述のマスターバッチからなるものである。また、本発明の第二の樹脂成形品は、前述の樹脂組成物からなるものである。本発明の樹脂成形品は、ポリエステル樹脂(A)を含有するマスターバッチ、又はこのマスターバッチを熱可塑性物で希釈して得られる樹脂組成物によって形成されているため、樹脂本来の物理的強度が保持されているとともに、柔軟性が付与されている。
【0036】
本発明の樹脂成形品は、例えば、従来公知の成形方法にしたがって前述のマスターバッチ又は樹脂組成物を所望とする形状に成形することで製造することができる。樹脂成形品としては、例えば、繊維など、物理的強度だけではなく、柔軟性や皮膚への触感が重視される用途に好適である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0038】
<マスターバッチの製造>
(実施例1〜4、比較例1、2)
表1に示す組成のポリエステル樹脂(A)30部と、表1に示す組成のポリエステル樹脂(B)70部とを、ヘンシェルミキサーを使用して十分に混合して混合物を得た。得られた混合物を、二軸押出機を使用して260〜280℃で混練し、ペレット状のマスターバッチを得た。
【0039】
【0040】
<樹脂組成物及び樹脂成形品の製造>
(ポリエステル樹脂(A)の含有量について)
実施例2のマスターバッチと、PET樹脂(商品名「ユニチカポリエステル MA−2103」、ユニチカ社製)とを、ポリエステル樹脂(A)の含有量が0%(PET樹脂のみ)、5%、7.5%、及び10%となるようにそれぞれ混合した。次いで、溶融混練装置(型式「AN75」、新潟製鋼所)を使用して溶融混練し、以下に示す条件で成形して樹脂組成物の試験片(樹脂成形品)を作製した。
・ノズル温度:280℃
・金型温度:60℃
・スクリュー回転数:60rpm
・射出時間:15秒
・冷却時間:35秒
【0041】
以下に示す手順にしたがって、作製した試験片の「引張破壊応力(MPa)」及び「引張破壊呼びひずみ(%)」を測定するとともに、表面の「手触り」を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
[引張破壊応力、引張破壊呼びひずみ]
引張試験機(型式「TGE−10KN」、Minebea社製)を使用し、JIS K 7161:1994に準拠して、引張速度:50mm/min、試験間距離:115mmの条件で、作製した樹脂組成物の試験片の「引張破壊応力(MPa)」及び「引張破壊呼びひずみ(%)」を測定した。
【0043】
[手触り]
以下に示す評価基準にしたがって、作製した樹脂組成物の試験片の表面の「手触り」を評価した。
○:滑らかな手触りであった。
×:ザラザラとした手触りであった。
【0044】
【0045】
(ポリエステル樹脂(B)の種類について)
実施例1〜4及び比較例1、2のマスターバッチと、PET樹脂(商品名「ユニチカポリエステル MA−2103」、ユニチカ社製)とを、ポリエステル樹脂(A)の含有量が7.5%となるようにそれぞれ混合した。次いで、溶融混練装置(型式「AN75」、新潟製鋼所)を使用して溶融混練し、以下に示す条件で成形して樹脂組成物の試験片(樹脂成形品1〜7)を作製した。
・ノズル温度:280℃
・金型温度:60℃
・スクリュー回転数:60rpm
・射出時間:15秒
・冷却時間:35秒
【0046】
作製した試験片について、前述と同様の手順にしたがって「引張破壊応力(MPa)」及び「引張破壊呼びひずみ(%)」を測定するとともに、表面の「手触り」を評価した。結果を表3に示す。
【0047】
【0048】
(樹脂成形品(モノフィラー))
実施例2のマスターバッチとPET樹脂(商品名「ユニチカポリエステル MA−2103」、ユニチカ社製)とを、ポリエステル樹脂(A)の含有量が0%(PET樹脂のみ)、5%、及び7.5%となるように混合した。次いで、30mm単軸押出機を使用し、加工温度270℃の条件で成形して、太さ約1.2mmの繊維(モノフィラー1〜3)を作製した。そして、作製した繊維(モノフィラー)の「最大点荷重(N)」及び「最大点伸度(%)」を測定した。結果を表4に示す
【0049】
[最大点荷重、最大点伸度]
引張圧縮試験機(型式「RTF−1250」、エー・アンド・ディー社製)を使用し、引張速度:500mm/min、試験間距離:250mmの条件で作製したモノフィラーの「最大点荷重(N)」及び「最大点伸度(%)」を測定した。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のマスターバッチは、例えば、樹脂本来の物理的強度を保持しつつ、柔軟性が付与された、繊維などの樹脂成形品を製造するための材料として好適である。