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特開2019-214750耐環境コーティング、それを備える耐環境部品、及び耐環境コーティングの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214750(P2019-214750A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】耐環境コーティング、それを備える耐環境部品、及び耐環境コーティングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/11 20160101AFI20191122BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20191122BHJP
   B32B 5/10 20060101ALI20191122BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   C23C4/11
   C23C26/00 C
   C23C26/00 L
   B32B5/10
   B32B18/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-111582(P2018-111582)
(22)【出願日】2018年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 峰明
(72)【発明者】
【氏名】栗村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】水流 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】谷川 秀次
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 芳史
【テーマコード(参考)】
4F100
4K031
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AA16A
4F100AA27B
4F100AA27C
4F100AD03B
4F100AD03C
4F100AD03D
4F100AD08A
4F100AD09B
4F100AD11A
4F100AH06B
4F100AH06D
4F100AK52B
4F100AK52D
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100DG01A
4F100DH02A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100EH56B
4F100EH56C
4F100EH56D
4F100GB51
4F100JA02B
4F100JA02D
4F100JJ03
4K031AB03
4K031AB04
4K031AB05
4K031AB08
4K031AB09
4K031CB42
4K031DA00
4K044AA13
4K044BA12
4K044BB03
4K044BB04
4K044BB05
4K044BC01
4K044BC02
4K044BC07
4K044BC11
4K044CA11
4K044CA13
4K044CA53
4K044CA62
(57)【要約】
【課題】良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティングを提供する。
【解決手段】セラミックス基複合材料を主成分として含む基材1上に形成され、最表層2と、基材1と最表層2との間に配置された少なくとも1つの中間層2とを含む耐環境コーティング10であって、最表層2は、希土類安定化ジルコニアにより構成され、イッテルビア安定化ジルコニアを95質量%以上含み、最表層2に接触する第1中間層3aは、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含み、第1中間層3aにおけるイッテルビウムの含有量が、第1中間層3a中の希土類全体に対して90モル%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基複合材料を主成分として含む基材上に形成され、最表層と、前記基材と前記最表層との間に配置された少なくとも1つの中間層とを含む耐環境コーティングであって、
前記最表層は、希土類安定化ジルコニアにより構成され、イッテルビア安定化ジルコニアを95質量%以上含み、
前記最表層に接触する第1中間層は、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含み、
前記第1中間層におけるイッテルビウムの含有量が、前記第1中間層中の希土類全体に対して90モル%以上である
ことを特徴とする、耐環境コーティング。
【請求項2】
前記第1中間層は、少なくとも希土類安定化ジルコニアを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の耐環境コーティング。
【請求項3】
前記第1中間層の熱膨張係数は、8×10−6/K以上10×10−6/K以下である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐環境コーティング。
【請求項4】
前記少なくとも1つの中間層は、前記第1中間層に接触するとともに前記基材の側に配置された第2中間層を含み、
前記第2中間層の熱膨張係数は、前記第1中間層の熱膨張係数よりも小さい
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の耐環境コーティング。
【請求項5】
前記第2中間層の熱膨張係数は、5×10−6/K以上7×10−6/K以下である
ことを特徴とする、請求項4に記載の耐環境コーティング。
【請求項6】
前記第2中間層は、イッテルビアシリケート及びイットリアシリケートを含み、
前記第2中間層におけるイットリウムの濃度が、前記第1中間層におけるイットリウムの濃度よりも大きい
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の耐環境コーティング。
【請求項7】
前記第1中間層は、前記希土類化合物を95質量%以上含む
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の耐環境コーティング。
【請求項8】
前記セラミックス基複合材料は、炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素材料(SiC−SiC)又は炭素繊維強化炭化ケイ素材料(C−SiC)のうちの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の耐環境コーティング。
【請求項9】
セラミックス基複合材料を主成分として含む基材と、
請求項1〜8の何れか1項に記載の耐環境コーティングであって前記基材上に形成された耐環境コーティングとを備える
ことを特徴とする、耐環境部品。
【請求項10】
セラミックス基複合材料を主成分として含む基材上に、最表層と、前記基材と前記最表層との間に配置された少なくとも1つの中間層とを含む耐環境コーティングを製造する方法であって、
前記最表層に接触する第1中間層であって、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含み、イッテルビウムの含有量が、前記第1中間層中の希土類全体に対して90モル%以上である前記第1中間層を製造する第1中間層製造工程と、
希土類安定化ジルコニアにより構成され、イッテルビア安定化ジルコニアを95質量%以上含む前記最表層を製造する最表層製造工程と、を含む
ことを特徴とする、耐環境コーティングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐環境コーティング、それを備える耐環境部品、及び耐環境コーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス基複合材料(炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素材料(SiC−SiC)、炭素繊維強化炭化ケイ素材料(C−SiC)等)は軽量で、高温での機械的特性が良好である。そのため、セラミックス基複合材料は、航空機エンジン、産業用ガスタービン等の高温部材として有望な材料である。しかし、水蒸気が存在する高温高圧水蒸気酸化環境下では、酸化とともに水蒸気による腐食減肉が生じる。このため、特にガスタービン燃焼環境では、高温高圧水蒸気酸化により耐久性が著しく低下する。そこで、ガスタービン燃焼環境での実用化のためには、高温高圧水蒸気への耐久性(耐環境性能)のある耐環境コーティングの適用が好ましい。そのため、耐環境コーティングの材料として、希土類シリケート(YSi、YSi等)を被覆した材料が開発されつつある。
【0003】
しかしながら、希土類シリケートを用いた場合でも、水蒸気とSiOとの反応によりケイ素が揮発し、耐環境コーティングの減肉が無視できない。また、希土類シリケートは高温でのエロージョン特性が十分ではない。そこで、減肉抑制及びエロージョン特性の改善のため、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1には、セラミックス基複合材料で構成された基材上に形成された耐環境コーティングが記載されている。この耐環境コーティングは、イッテルビア安定化ジルコニアを含む最表層と、最表層と基材との間に形成される中間層であって希土類シリケートを含む中間層とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/129588号(特に実施例を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イッテルビア安定化ジルコニウムは、高温での機械的特性に優れる。また、イッテルビア安定化ジルコニウムは水蒸気とほとんど反応せず、揮発しにくい。そのため、水蒸気存在下でも減肉抑制が期待できる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の耐環境コーティングにおいて、耐環境コーティングが繰り返し高熱に晒されると、最表層のイッテルビウムが中間層に熱拡散する。この結果、最表層でのイッテルビウムの濃度が低下し、最表層の相安定性が低下する。これにより、例えば1300℃を超える領域で相変態が起き易く、耐環境コーティングが劣化し易くなる。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティング、それを備える耐環境部品、及び耐環境コーティングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一実施形態に係る耐環境コーティングは、
セラミックス基複合材料を主成分として含む基材上に形成され、最表層と、前記基材と前記最表層との間に配置された少なくとも1つの中間層とを含む耐環境コーティングであって、
前記最表層は、希土類安定化ジルコニアにより構成され、イッテルビア安定化ジルコニアを95質量%以上含み、
前記最表層に接触する第1中間層は、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含み、
前記第1中間層におけるイッテルビウムの含有量が、前記第1中間層中の希土類全体に対して90モル%以上である
ことを特徴とする。
【0009】
上記(1)の構成によれば、最表層から第1中間層へのイッテルビウムの熱拡散を抑制でき、最表層の相安定性を高い状態で維持できる。これにより、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティングを提供できる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第1中間層は、少なくとも希土類安定化ジルコニアを含む
ことを特徴とする。
【0011】
上記(2)の構成によれば、第1中間層での希土類シリケートの含有量を減らすことができ、水蒸気とシリケートとの反応に起因する第1中間層の劣化を抑制できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記第1中間層の熱膨張係数は、8×10−6/K以上10×10−6/K以下である
ことを特徴とする。
【0013】
上記(3)の構成によれば、第1中間層の熱膨張係数を最表層の熱膨張係数よりも小さくでき、熱応力を緩和できる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか1の構成において、
前記少なくとも1つの中間層は、前記第1中間層に接触する第2中間層であって前記基材の側に配置された第2中間層を含み、
前記第2中間層の熱膨張係数は、前記第1中間層の熱膨張係数よりも小さい
ことを特徴とする。
【0015】
上記(4)の構成によれば、第2中間層の熱膨張係数を最表層及び第1中間層の熱膨張係数よりも小さくでき、熱応力を緩和できる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記第2中間層の熱膨張係数は、5×10−6/K以上7×10−6/K以下である
ことを特徴とする。
【0017】
上記(5)の構成によれば、第2中間層の熱膨張係数を最表層及び第1中間層の熱膨張係数よりも小さくでき、熱応力を緩和できる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の構成において、
前記第2中間層は、イッテルビアシリケート及びイットリアシリケートを含み、
前記第2中間層におけるイットリウムの濃度が、前記第1中間層におけるイットリウムの濃度よりも大きい
ことを特徴とする。
【0019】
上記(6)の構成によれば、第2中間層は最表層に接触しないので、第2中間層中のイットリウムの最表層への熱拡散を抑制できる。これにより、最表層の相安定性を高いまま維持できる。さらには、第2中間層の全体をイッテルビウムで構成する場合と比較して、比較的安価なイットリウムを含むことで、耐環境コーティングの製造コストを削減できる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れか1の構成において、
前記第1中間層は、前記希土類化合物を95質量%以上含む
ことを特徴とする。
【0021】
上記(7)の構成によれば、耐環境性能を高めることができる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか1の構成において、
前記セラミックス基複合材料は、炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素材料又は炭素繊維強化炭化ケイ素材料のうちの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする。
【0023】
上記(8)の構成によれば、基材の強度を向上できる。
【0024】
(9)本発明の一実施形態に係る耐環境部品は、
セラミックス基複合材料を主成分として含む基材と、
上記(1)〜(8)の何れか1つに記載の耐環境コーティングであって前記基材上に形成された耐環境コーティングとを備える
ことを特徴とする。
【0025】
上記(9)の構成によれば、最表層から第1中間層へのイッテルビウムの熱拡散を抑制でき、最表層の相安定性を高い状態で維持できる。これにより、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境部品を提供できる。
【0026】
(10)本発明の一実施形態に係る耐環境コーティングの製造方法は、
セラミックス基複合材料を主成分として含む基材上に、最表層と、前記基材と前記最表層との間に配置された少なくとも1つの中間層とを含む耐環境コーティングを製造する方法であって、
前記最表層に接触する第1中間層であって、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含み、イッテルビウムの含有量が、前記第1中間層中の希土類全体に対して90モル%以上である前記第1中間層を製造する第1中間層製造工程と、
希土類安定化ジルコニアにより構成され、イッテルビア安定化ジルコニアを95質量%以上含む前記最表層を製造する最表層製造工程と、を含む
ことを特徴とする。
【0027】
上記(10)の構成によれば、最表層から第1中間層へのイッテルビウムの熱拡散を抑制でき、最表層の相安定性を高い状態で維持できる。これにより、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティングの製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の少なくとも一実施形態は、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティング、それを備える耐環境部品、及び耐環境コーティングの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る耐環境コーティングの断面図である。
図2】YbSZ及びYbSiOの総体積に対するYbSZの体積割合(横軸)と、熱膨張係数(縦軸)との関係を示すグラフである。
図3】(Y,Yb)SiO及び(Y,Yb)Siの総体積に対する(Y,Yb)Siの体積割合(横軸)と、熱膨張係数(縦軸)との関係を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係る耐環境コーティングの製造方法を示すフローチャーである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、以下に実施形態として記載されている内容又は図面に記載されている内容は、あくまでも例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更して実施することができる。また、各実施形態は、2つ以上を任意に組み合わせて実施することができる。さらに、各実施形態において、共通する部材については同じ符号を付すものとし、説明の簡略化のために重複する説明は省略する。
【0031】
また、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る耐環境コーティング10の断面図である。耐環境コーティング10は、基材1上に形成されるものであり、最表層2と、基材1と最表層2との間に配置された少なくとも1つの中間層3と、ボンドコート4とを含むものである。中間層3は、例えば、最表層2に接触する第1中間層3aと、第1中間層3aに接触する第2中間層3bであって基材1の側に配置された第2中間層3bとを含む。なお、中間層3は1層のみでもよく、3層以上でもよい。また、ボンドコート4が基材1上に配置されることで、耐環境コーティング10が基材1に支持される。
【0033】
基材1は、耐環境コーティング10を支持するためのものである。基材1は、セラミックス基複合材料を主成分として含む。ここでいう主成分は、体積を基準として、基材1の通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上をいう。
【0034】
セラミックス基複合材料(Ceramic Matrix Composites)は、例えば、炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素材料(SiC−SiC)又は炭素繊維強化炭化ケイ素材料(C−SiC)のうちの少なくとも一方を含む。SiC−SiC又はC−SiCのうちの少なくとも一方を含むことで、基材1の強度を向上できる。
【0035】
基材1の熱膨張係数は、後記する耐環境コーティング10を構成する各層の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。具体的には、基材1の熱膨張係数は、例えば3.5×10−6/K以上4.5×10−6/K以下とすることが好ましい。熱膨張係数は、例えば、JIS R 1618:2002に基づいて測定できる。なお、本明細書において「熱膨張係数」とは、室温(25℃)から1200℃まで温度を変化させたときに測定される熱膨張係数のことをいう。
【0036】
基材1の厚さは特に制限されず、耐環境コーティング10が形成される耐環境部品の種類に応じて、適宜決定すればよい。
【0037】
最表層2は、希土類安定化ジルコニアにより構成され、イッテルビア安定化ジルコニア(Yb安定化ZrO、以下、YbSZという)を95質量%以上含むものである。YbSZを95質量%以上の割合で含む希土類安定化ジルコニアで構成されることで、最表層2の信頼性を高めることができる。具体的には、最表層2の相安定性が高められ、例えば1300℃以上の高温領域においても相変態を抑制できる。このため、熱サイクル特性を向上できる。また、水蒸気との反応抑制により減肉を抑制できる。このため、耐水蒸気性を高めることができる。
【0038】
最表層2に含まれるYbSZは、上記のように、イッテルビア(Yb)で安定化されたジルコニア(ZrO)である。YbSZの全質量のうち、Ybの質量は8質量%以上27質量%以下が好ましく、17質量%程度がより好ましい。Ybがこの質量範囲で含まれることで、耐熱衝撃性及び耐エロージョン性に優れるという利点が得られる。
【0039】
最表層2の厚さは、例えば、耐環境コーティング10全体の10%以上50%以下にすることが好ましい。このようにすることで、耐水蒸気性及び熱サイクル特性が両立するという利点が得られる。
【0040】
中間層3は、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含むものである。中間層3は、上記最表層2に接触する第1中間層3aと、第1中間層3aに接触する第2中間層3bであって基材1の側に配置された第2中間層3bとを含む。
【0041】
最表層2に接触する第1中間層3aは、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含む。そして、第1中間層3aは、希土類化合物を95質量%以上含むことが好ましい。希土類化合物を95質量%以上含むことで、耐環境性能を高めることができる。
【0042】
希土類安定化ジルコニアとしては、イッテルビア安定化ジルコニア(YbSZ)が挙げられる。また、希土類シリケートとしては、例えば、希土類モノシリケートが挙げられ、具体的には例えば、YSiO、YbSiO、LuSiO等が挙げられる。これらの中でも、YbSiO(イッテルビウムモノシリケート)が好ましい。
【0043】
第1中間層3aは、少なくとも希土類安定化ジルコニアを含むことが好ましい。希土類安定化ジルコニアを含むことで、第1中間層3aでの希土類シリケートの含有量を減らすことができ、水蒸気とシリケートとの反応に起因する第1中間層3aの劣化を抑制できる。
【0044】
また、第1中間層3aは、耐水蒸気性に優れる材料により構成されることが好ましく、具体的には希土類安定化ジルコニア及び希土類シリケートの双方を含む混合相であることが好ましい。具体的には、第1中間層3aは、YbSZ及びYbSiOの混合相であることが特に好ましい。
【0045】
また、第1中間層3aにおけるイッテルビウムの含有量が、第1中間層3a中の希土類全体に対して90モル%以上である。これにより、第1中間層3aのイッテルビウム濃度を、最表層2に含まれるイッテルビウム濃度に近づけることができ、イッテルビウムの熱拡散を抑制できる。
【0046】
第1中間層3aの厚さは、例えば20μm以上300μm以下にすることができる。
【0047】
第1中間層3aの熱膨張係数は、8×10−6/K以上10×10−6/K以下であることが好ましい。熱膨張係数がこの範囲にあることで、第1中間層3aの熱膨張係数を最表層2の熱膨張係数よりも小さくでき、熱応力を緩和できる。第1中間層3aの熱膨張係数について、図2を参照しながら説明する。
【0048】
図2は、YbSZ及びYbSiOの総体積に対するYbSZの体積割合(横軸)と、熱膨張係数(縦軸)との関係を示すグラフである。YbSZの割合が0のときの熱膨張係数、即ちYbSiOの熱膨張係数は7.4×10−6/Kである。そして、YbSZの体積割合が大きくなると、熱膨張係数も線形的に大きくなる。
【0049】
上記のように、第1中間層3aの熱膨張係数は、8×10−6/K以上10×10−6/K以下であることが好ましい。そこで、熱膨張係数が目標領域(8×10−6/K以上10×10−6/K以下)になるように、YbSZの体積割合を0.17以上0.72以下になるようにすることが好ましい。なお、YbSZの割合が0.17のときの第1中間層3aの組成はYb−18.2質量%ZrO−10.3質量%SiOであり、YbSZの割合が0.72のときの第1中間層3aの組成はYb−64.7質量%ZrO−2.9質量%SiOである。
【0050】
第1中間層3aの熱膨張係数は、基材1の熱膨張係数よりも大きく、かつ、最表層2の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。また、第1中間層3aの熱膨張係数と、基材1(後記するボンドコート4を含む)の熱膨張係数との差は4×10−6/K以下とすることが好ましい。具体的には、第1中間層3aの熱膨張係数は、8.6×10−6/K程度がより好ましい。これにより、熱応力を特に緩和できる。なお、このときのYbSZの割合は0.33であり、第1中間層3aの組成はYb−33.5質量%ZrO−7.9質量%SiOである。
【0051】
図1に戻って、第2中間層3bは、上記の中間層3に含まれるものであり、第1中間層3aに接触するものであって基材1の側に配置されたものである。
【0052】
第2中間層3bの構成材料は特に制限されず、希土類シリケート、ムライト(3Al−2SiO。熱膨張係数は6×10−6/K)等が挙げられる。希土類シリケートは、希土類モノシリケート(LnSiO)、希土類ダイシリケート(LnSi)、又は、これらの混合層のいずれでもよい。なお、Lnは希土類元素であり、例えばSc、Lu、Gd、Sm、Eu、Nd、Yb、Y等が挙げられ、中でも、Yが好ましい。従って、LnSiOとしてはYSiOが好ましく、LnSiとしてはYSiが好ましい。
【0053】
希土類シリケートは、Yの一部を希土類(Ln)で置換することで相安定性を向上させたものでよい。中でも、例えば、(Y,Ln)SiOと(Y,Ln)Siとの混合相が好ましい。この混合相において、LnとしてYbを含む材料が好ましい。即ち、第2中間層3bは、イッテルビアシリケート(YbSiO及びYbSi)及びイットリアシリケート(YSiO及びYSi)を含むことが好ましい。
【0054】
また、第2中間層3bにおけるイットリウムの濃度は、第1中間層3aにおけるイットリウムの濃度よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、第2中間層3bは最表層2に接触しないので、第2中間層3b中のイットリウムの最表層2への熱拡散を抑制できる。これにより、最表層2の相安定性を高いまま維持できる。さらには、第2中間層3bの全体をイッテルビウムで構成する場合と比較して、比較的安価なイットリウムを含むことで、耐環境コーティング10の製造コストを削減できる。
【0055】
第2中間層3bの厚さは、例えば20μm以上400μm以下にすることができる。
【0056】
第2中間層3bの熱膨張係数は、第1中間層3aの熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。具体的には例えば、第2中間層3bの熱膨張係数は、5×10−6/K以上7×10−6/K以下であることが好ましい。これにより、第2中間層3bの熱膨張係数を最表層2及び第1中間層3aの熱膨張係数よりも小さくでき、熱応力を緩和できる。
【0057】
第2中間層3bの熱膨張係数について、図3を参照しながら説明する。
図3は、(Y,Yb)SiO及び(Y,Yb)Siの総体積に対する(Y,Yb)Siの体積割合(横軸)と、熱膨張係数(縦軸)との関係を示すグラフである。なお、このグラフは、(Y0.8Yb0.2SiOと(Y0.8Yb0.2Siとの混合相において、(Y0.8Yb0.2Siの体積割合を変えたときの熱膨張係数の変化を示すものである。このグラフに示すように、(Y0.8Yb0.2Siの体積割合が大きくなると、熱膨張係数は線形的に小さくなる。
【0058】
上記のように、第2中間層3bの熱膨張係数は、5×10−6/K以上7×10−6/K以下であることが好ましい。そこで、熱膨張係数が目標領域(5×10−6/K以上7×10−6/K以下)になるように、(Y0.8Yb0.2Siの体積割合を0.1以上0.65以下になるようにすることが好ましい。なお、(Y0.8Yb0.2Siの割合が0.1のときの第2中間層3bの組成はY−22.2質量%Yb−26.8質量%SiOであり、(Y0.8Yb0.2Siの割合が0.65のときの第2中間層3bの組成はY−24.3質量%Yb−20.0質量%SiOである。
【0059】
また、第2中間層3bの熱膨張係数と、第1中間層3aの熱膨張係数との差は4×10−6/K以下とすることが好ましい。さらには、第2中間層3bの熱膨張係数と、第2中間層3bに接触する最表層2の熱膨張係数との差も4×10−6/K以下とすることが好ましい。そこで、第2中間層3bの熱膨張係数は、6.3×10−6/K程度がより好ましい。これにより、基材1(ボンドコート4)と第1中間層3aと、第1中間層3aと第2中間層3bと、第2中間層3bと最表層2との各層間での熱膨張係数差を同程度にし易くでき、熱応力を特に緩和できる。なお、このときの(Y0.8Yb0.2Siの割合は0.3であり、第2中間層3bの組成はY−23.6質量%Yb−22.4質量%SiOである。
【0060】
図1に戻って、ボンドコート4は、第1中間層3aを基材1に支持するためのものであり、耐環境コーティング10の一部を構成するものである。ボンドコート4は、例えば、ケイ素、各種シリサイド、ムライト、BSAS(バリウムストロンチウムアルミノシリケート)等の1種又は2種以上を任意に組み合わせて形成できる。
【0061】
ボンドコート4の厚さは、例えば20μm以上200μm以下にすることができる。
【0062】
また、ボンドコート4の熱膨張係数は、基材1の熱膨張係数と同程度であることが好ましい。具体的には、ボンドコート4の熱膨張係数と基材1の熱膨張係数との差は、基材1の熱膨張係数の例えば10%以下であることが好ましい。このようにすることで、ボンドコート4と基材1との熱応力を緩和できる。
【0063】
以上の各層を備える耐環境コーティング10の全体の厚さは、上記各層の厚さにより決定されるため一概にはいえないが、例えば、通常200μm以上、また、その上限は、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下である。耐環境コーティング10の厚さをこの範囲にすることで、耐水蒸気性と熱サイクル特性とが両立するという利点が得られる。
【0064】
以上の耐環境コーティング10によれば、最表層2から第1中間層3aへのイッテルビウムの熱拡散を抑制でき、最表層2の相安定性を高い状態で維持できる。これにより、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティング10を提供できる。
【0065】
また、基材1から最表層2に向かって、熱膨張係数が徐々に大きくなっている。即ち、基材1及びボンドコート4の熱膨張係数よりも第2中間層3bの熱膨張係数が大きく、第2中間層3bの熱膨張係数よりも第1中間層3aの熱膨張係数が大きく、第1中間層3aの熱膨張係数よりも最表層2の熱膨張係数が大きい。このようにすることで、耐環境コーティング10が高温下に晒されたときに耐環境コーティング10に発生する熱応力を緩和できる。これにより、YbSZを含むため基材1の熱膨張係数とは大きく異なる熱膨張係数の最表層2であっても、基材1に対して配置できる。そして、例えば最表層2によって、高い耐水蒸気性能及び高温耐久性を向上でき、耐環境性を向上できる。
【0066】
また、耐環境コーティング10は、例えば耐環境部品(図示しない)に適用可能である。即ち、本発明の一実施形態に係る耐環境部品は、セラミックス基複合材料を主成分として含む基材1と、上記の耐環境コーティング10であって基材1上に形成された耐環境コーティング10とを備えるものである。耐環境部品としては、例えば、航空機エンジン、産業用ガスタービン等に備えられる例えば翼、分割環等が挙げられる。
【0067】
このような耐環境部品によれば、最表層2から第1中間層3aへのイッテルビウムの熱拡散を抑制でき、最表層2の相安定性を高い状態で維持できる。これにより、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境部品を提供できる。
【0068】
図4は、本発明の一実施形態に係る耐環境コーティング10の製造方法を示すフローチャートである。図4に示す製造方法は、セラミックス基複合材料を主成分として含む基材1上に、最表層2と、基材1と最表層2との間に配置された少なくとも1つの中間層3(第1中間層3a及び第2中間層3b)とを含む耐環境コーティング10(図1参照)を製造する方法である。
【0069】
耐環境コーティング10は、例えば、基材1の表面に、ボンドコート4、第2中間層3b、第1中間層3a及び最表層2をこの順で製造(形成)することで、製造することができる。そこで、まず、基材1上に、ボンドコート4が形成される(ステップS1)。具体的には例えば、ボンドコート4の構成材料(例えばケイ素等)を基材1の表面に例えば溶射することで、ボンドコート4を製造できる。製造条件(例えば時間、温度等)は任意であるが、ボンドコート4が緻密に形成されるように製造条件を決定することが好ましい。
【0070】
次いで、第2中間層3bが、ボンドコート4の表面に形成される(ステップS2)。具体的には例えば、第2中間層3bの構成材料をボンドコート4の表面に配置することで、第2中間層3bを製造できる。第2中間層3bの構成材料は、例えば、上記のように(Y0.8Yb0.2SiOと(Y0.8Yb0.2Siとの混合粉末である。また、構成材料の配置は、例えば、スラリー塗布法、ディップリング法、溶射法、電子ビーム物理蒸着法(EB−PVD法)等の方法により行うことができる。第2中間層3bの製造条件(例えば時間、温度等)は任意であるが、第2中間層3bが緻密に形成されるように製造条件を決定することが好ましい。
【0071】
さらに、第1中間層3aが、第2中間層3bの表面に形成される(ステップS3、第1中間層製造工程)。具体的には例えば、第1中間層3aの構成材料を第2中間層3bの表面に配置することで、第1中間層3aを製造できる。第1中間層3aの構成材料は、例えば、第1中間層3aが、希土類安定化ジルコニア又は希土類シリケートのうちの少なくとも一方である希土類化合物を含み、イッテルビウムの含有量が、前記第1中間層中の希土類全体に対して90モル%以上となるような材料である。より具体的には例えば、上記のようにYbSZ及びYbSiOの混合粉末である。
【0072】
第1中間層3aの構成材料の配置は、例えば、原料スラリー(例えば上記混合粉末を含むスラリー)を塗布後焼結する方法、原料スラリー(例えば上記混合粉末を含むスラリー)に浸漬した後に焼結する方法、溶射法、電子ビーム物理蒸着法(EB−PVD法)等の方法により行うことができる。第1中間層3aの製造条件(例えば時間、温度等)は任意であるが、第1中間層3aが緻密に形成されるように製造条件を決定することが好ましい。
【0073】
最後に、最表層2が、第1中間層3aの表面に形成される(ステップS4、最表層製造工程)。具体的には例えば、具体的には例えば、最表層2の構成材料を第1中間層3aの表面に配置することで、最表層2を製造できる。最表層2の構成材料は、例えば、上記のように、希土類安定化ジルコニアにより構成され、YbSZを95質量%以上含むものである。
【0074】
最表層2の構成材料の配置は、例えば、原料スラリー(例えば上記YbSZを含むスラリー)を塗布後焼結する方法、原料スラリー(例えば上記YbSZを含むスラリー)に浸漬した後に焼結する方法、溶射法、電子ビーム物理蒸着法(EB−PVD法)等の方法により行うことができる。最表層2の製造条件(例えば時間、温度等)は任意であるが、最表層2が緻密に形成されるように製造条件を決定することが好ましい。
【0075】
以上の製造方法によれば、最表層2から第1中間層3aへのイッテルビウムの熱拡散を抑制でき、最表層2の相安定性を高い状態で維持できる。これにより、良好な耐環境性能を長期間維持可能な耐環境コーティング10の製造方法を提供できる。
【実施例】
【0076】
以下、具体例を挙げて、本発明の一実施形態をさらに具体的に説明する。
【0077】
<層ごとの熱膨張係数の評価>
最表層2の材料として、ZrO−17質量%Yb粉末を用意し、スプレードライ法によって直径約50μmの造粒粉を得た。
【0078】
第1中間層3aの材料として、YbSZとYbSiOとの混合粉末(組成:Yb−34質量%ZrO−8質量%SiO。YbSZの体積割合は0.17以上0.72以下)を用意し、スプレードライ法によって直径約50μmの造粒粉を得た。なお、第1中間層3aは、希土類としてYbのみを含むので、第1中間層3aにおけるYbの含有量は第1中間層3a中の希土類全体に対して90モル%以上(具体的には100モル%)である。
【0079】
第2中間層3bの材料として、(Y0.8Yb0.2SiOと(Y0.8Yb0.2Siとの混合粉末(組成:Y−24質量%Yb−22質量%SiO。(Y0.8Yb0.2Siの体積割合は0.1以上0.65以下)を用意し、スプレードライ法によって直径約50μmの造粒粉を得た。
【0080】
第2中間層3bの別の材料として、ムライト(3Al−2SiO)を用意し、スプレードライ法によって直径約50μmの造粒粉を得た。
【0081】
ボンドコート4の材料として、市販のSi溶射粉末を用意した。
【0082】
以上の各粉末を不活性の基材1上に溶射することで厚さ約2mmの溶射被膜(5種類)を作製し、5種類の模擬層を形成した。即ち、各基材1上に1つの模擬層が形成される。そして、5種類の模擬層のそれぞれについて、室温(25℃)から1200℃までの熱膨張係数を測定した。熱膨張係数の測定はJIS R 1618:2002に準じて行った。測定結果を以下の表1に纏めた。
【0083】
なお、表1には、参考として、基材1を模した炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素材料(SiC−SiC)の熱膨張係数も示している。また、表1において、「第2中間層3b(混合粉末)」は(Y0.8Yb0.2SiOと(Y0.8Yb0.2Siとの混合粉末を用いた結果である。さらに、表1において、「第2中間層3b(ムライト)」はムライト粉末を用いた結果である。また、「好適範囲」とは、上記各層の説明において説明した好適範囲のことをいう。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、最表層2、第1中間層3a、第2中間層3b(混合粉末、ムライトのそれぞれ)、及びボンドコート4のそれぞれの熱膨張係数は、いずれも、好適範囲に含まれることが確認された。また、第2中間層3b(混合粉末、ムライトのそれぞれ)、第1中間層3a、及び最表層2は、この順で熱膨張係数が大きくなることが確認された。
【0086】
<耐環境コーティングの耐環境性能評価>
実施例として、上記の各材料を用い、上記の図4に示すフローに沿って、耐環境コーティング10を製造した。なお、第2中間層3bとして上記混合粉末を用いた耐環境コーティング10、及び、第2中間層3bとしてムライトを用いた耐環境コーティング10をそれぞれ作製した。作製した耐環境コーティング10は、100μmの最表層2と、100μmの第1中間層3aと、100μmの第2中間層3bとをこの順で備えるものであり、図1に示した構造と同じものである。そして、第2中間層3bと、炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素材料(SiC−SiC)製の基材1(厚さ3mm)とを、100μmのボンドコート4により接合した。
【0087】
作製した2つの耐環境コーティング10について、表面温度が1200℃になる熱サイクル試験を行った。具体的には、表面温度(最表層2の表面)が1200℃、裏面温度(基材1の表面)が1000℃となるように表面を加熱して裏面を冷却し、5分後に加熱を中止して耐環境コーティング10の全体を100℃以下まで冷却するサイクルを1000サイクル繰り返した。この結果、いずれの耐環境コーティング10においても、剥離は目視で確認できなかった。そのため、本発明の一実施形態に係る耐環境コーティング10は、高温下に繰り返し晒された場合であっても剥離を生じず、耐環境性能に優れることが確認された。
【0088】
これは、最表層2及び第1中間層3aのいずれにも、同等程度のイッテルビウムが含まれるためと考えられる。このため、熱サイクルが繰り返し行われても、最表層2と第1中間層3aとの間でのイッテルビウムの熱拡散が抑制され、良好な耐環境性能が長時間維持されたと考えられる。
【0089】
また、比較例1として、最表層2に含まれるYbSZ濃度が90質量%であること以外は上記実施例と同様にして、2種類の耐環境コーティングを作製した。また、比較例2として、第1中間層3aが希土類シリケートのみで構成される(YbSZを含まない)こと以外は上記実施例と同様にして、2種類の耐環境コーティングを作製した。従って、比較例1及び2により、4種類の耐環境コーティングが作製された。
【0090】
作製した4種類の耐環境コーティングのそれぞれについて、上記実施例1と同様にして熱サイクル試験を行ったところ、いずれも、600〜700サイクル経過時に剥離が目視で確認された。従って、比較例1及び2では、耐環境性能が低いことが確認された。これは、比較例1については、最表層2に含まれる希土類安定化ジルコニアのうちのYbSZ濃度が低く、相安定性が高くない結果、熱サイクル試験に起因する相変態が起こり、剥離が生じたと考えられる。また、比較例2については、第1中間層3aがYbSZを含まないため、最表層2と第2中間層3bとの熱膨張係数差が大きくなりすぎ、熱サイクル試験に起因する熱応力が緩和できず、早期に剥離が生じたと考えられる。
【符号の説明】
【0091】
1 基材
2 最表層
3 中間層
3a 第1中間層
3b 第2中間層
4 ボンドコート
10 耐環境コーティング
図1
図2
図3
図4