【解決手段】段鼻部材12は、踏板5における踏板基材6上面の前端部に固定されかつ上面に係合凹溝部15を有するベース13と、装着部26の下面に係合凹溝部15に嵌合可能な係合凸条部33を有し、凸条部33の凹溝部15への嵌合によってベース13の上面に取り外し可能に組み付けられる軟質樹脂製のカバー25とを備える。ベース13は、係合凹溝部15が設けられた硬質樹脂からなるベース本体14と、係合凹溝部15を除くベース本体14上面に一体的に固定され、軟質樹脂からなる上側クッション部21との複合体とし、この上側クッション部21により、上側のカバー25に下側に向かう衝撃力が加わってカバー25が変形したときにその衝撃力を緩和するようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の段鼻部材は、階段の施工時の踏板に対する取付作業を容易化でき、施工後に美麗な施工外観を得ることができる効果がある。
【0006】
しかし、その反面、段鼻部材のベースが硬質樹脂製で、その上に組み付けられるカバーが軟質樹脂であると、以外のような問題が生じ、改良の余地がある。
【0007】
すなわち、階段の昇降時に、踏板に取り付けられた段鼻部材を踏んだときに、軟質樹脂製カバーの変形に伴い足裏に硬いベースが感じられるようになる。特に、段鼻部材後側の踏板上面に、遮音等のためにクッション性のある軟らかい表面材が設けられていると、その表面材と段鼻部材のベースとの間の硬さのギャップによって、段鼻部材でベースの硬さが顕著に感じられ、足の裏に違和感や甚だしいときには痛みを感じることが生じる。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、ベースとカバーとを組み合わせた段鼻部材の構造を改良することにより、階段の施工時の踏板に対する段鼻部材の取付作業を容易化しつつ、その段鼻部材のベースの硬さを足裏に感じ難くして踏み感の快適性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的の達成のため、この発明では、ベースとカバーとの間にクッション部を設けることとした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、階段の踏板前端部に取付固定される段鼻部材が対象であり、この段鼻部材は、上記踏板の上面前端部に固定されかつ係合部を有するベースと、上記係合部に係合可能な被係合部を有し、該被係合部の係合部との係合によって上記ベースの上面に取り外し可能に組み付けられる軟質樹脂からなるカバーとを備え、上記ベースは、上記係合部を含む硬質樹脂からなるベース本体を有し、上記係合部を除くベース本体上面とその上側の上記カバーとの間に上側クッション部が設けられていることを特徴とする。本発明では、階段の踏板の奥行方向(上り方向)に向かって手前側を「前」とし、奥側を「後」として定義する。
【0011】
この第1の発明では、段鼻部材のベースは階段の踏板の上面前端部に固定され、このベースに対しカバーが、そのカバーの被係合部をベースの係合部に係合させることによって組み付けられる。そのとき、カバーは軟質樹脂で軟らかいので、このカバーを踏板の形状に合わせて切断する際にカバーを変形させて切断することができ、その切断が硬質樹脂に比べて容易になり、その分、段鼻部材や階段の施工性を高めることができる。
【0012】
また、こうしてカバーの切断が容易になることで、所望の寸法に正確に切断できるようになり、カバーの寸法誤差による段鼻部材と側桁や壁等との間に隙間が生じ難くなり、階段の施工外観を美麗にしてその見映えを向上させることができる。
【0013】
さらに、ベースに組み付けられるカバーが仮に硬質樹脂製であると、そのカバーの被係合部は、運搬時等で他のものとぶつかったり、或いは施工時にベースの係合部にずれた状態で係合されたりすると破損する虞れがある。しかし、本願発明のように軟質樹脂製のカバーでは、それらを防止することができる。
【0014】
また、カバーが軟質樹脂であるので、階段昇降時の足触りがソフトになる。しかも、ベースは、係合部が設けられた硬質樹脂からなるベース本体を有し、その係合部を除くベース本体上面とその上側のカバーとの間に上側クッション部が設けられており、この上側クッション部は、例えば上側のカバーに下側に向かう衝撃力が加わってカバーが変形したときにその衝撃力を緩和する機能を有する。このような上側クッション部の介在によりベースとカバーとの間の硬さの差が実質的に小さくなって、段鼻部材が全体として軟らかくなり、階段の昇降時に踏板前端の段鼻部材を踏んだときに、足裏に硬いベースを感じ難くなって、足裏に違和感や痛みが生じるのを防止することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、カバーのベースへの組付状態で、被係合部周りのカバーとベース本体との間に隙間が形成されており、カバーの被係合部はベースの係合部に上記隙間分だけ上下方向に昇降可能となるように係合されていることを特徴とする。
【0016】
この第2の発明では、被係合部周りのカバーとベース本体との間に隙間が形成され、カバーの被係合部はベースの係合部に係合されていても上下方向に昇降可能となっている。そのため、軟質樹脂からなるカバーを踏んだときに、そのカバーが圧縮変形されるだけでなく、被係合部周りのカバーも隙間の分だけ下方に沈んでクッション効果が得られるようになり、ベースの係合部が硬質樹脂でありながら、その部分での踏み感を軟らかくすることができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記カバーは、ベースの上面に取り外し可能に組み付けられる装着部と、該装着部の前端部に一体に連続し、カバーのベースへの組み付け状態で踏板の前端面を覆う前面部とを有する断面略L字状とされており、上記前面部に前側クッション部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この第3の発明では、カバーは、ベースの上面に組み付けられる装着部と、その装着部の前端部に一体に連続する前面部とを有するので、カバーのベースへの組み付け状態では、この前面部により踏板の前端面を覆うことができ、階段の外観を優れたものにすることができる。
【0019】
また、その前面部に前側クッション部が設けられ、この前側クッション部は、例えば前面部に後側に向かう衝撃力が加わって前面部が変形したときにその衝撃力を緩和する機能を有する。そのため、使用者が階段の昇降時に脛等を踏板前端の段鼻部材にぶつけたとしても、その脛等はカバーの前面部の前側クッション部に当たることとなり、その前側クッション部のクッション効果によって脛等の痛みが生じるのを防ぐことができる。
【0020】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、上側クッション部は、係合部を除くベース本体上面に一体的に固定された軟質樹脂からなり、ベースはベース本体と上側クッション部との複合体からなることを特徴とする。
【0021】
この第4の発明では、ベースが硬質樹脂製のベース本体と軟質樹脂製の上側クッション部との複合体であって、その上側クッション部は係合部以外のベース本体上面に一体的に固定されているので、上側クッション部がベースと別体に設けられる場合に比べて、上側クッション部をベース本体上面とその上側のカバーとの間に容易に配置することができる。また、この上側クッション部は、ベース本体との一体化によりベースに具備されたものになるので、その取り扱いが容易になり、部品点数も低減することができる。
【0022】
第5の発明は、第4の発明において、ベース本体と上側クッション部とは共に押出し成形材からなっていて、互いに熱融着により一体化されていることを特徴とする。こうすると、硬質樹脂製のベース本体と軟質樹脂製の上側クッション部とを同時に押出し成形しながら、その押出し直後に両者を互いに熱融着させて一体化でき、上側クッション部が具備されたベースの製造を容易に行うことができる。
【0023】
第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、上側クッション部は、該上側クッション部の内部又はベース本体との間に少なくとも1つの中空部を有することを特徴とする。このことで、上側クッション部は、中空部を有する中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い上側クッション部が容易に得られる。
【0024】
第7の発明は、第1〜第6の発明のいずれか1つにおいて、ベースの上面には、係合部としてベースの長さ方向に延びる少なくとも1つの凹溝部が形成されている一方、カバーのベースとの対向面には、被係合部としてカバーの長さ方向に延びる少なくとも1つの凸条部が形成されていて、上記凸条部が凹溝部に嵌合することによってカバーがベースに組み付けられるようになっており、上記凸条部には、該凸条部が凹溝部に嵌合されたときに該凹溝部から抜け出るのを阻止する抜け止め部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
この第7の発明では、ベースの上面に形成されている凹溝部に、カバーに形成されている凸条部が嵌合することによって、カバーがベースに装着された状態に組み付けられる。そのとき、この凸条部には抜け止め部が設けられているので、この抜け止め部により凸条部が凹溝部から抜け出るのは阻止される。よって軟質樹脂のカバーを確実にかつスムーズにベースに組み付けることができる。
【0026】
第8の発明は、第3〜第7の発明のいずれか1つにおいて、カバーは押出し成形材であり、前側クッション部は、少なくとも1つの中空部を有することを特徴とする。
【0027】
この第8の発明では、前側クッション部は、中空部を有する中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い前側クッション部が容易に得られる。また、カバーを押出し成形するのと同時に、その前面部内に中空部を形成でき、前側クッション部を容易に形成することができる。
【0028】
第9の発明は、第1〜第8の発明のいずれか1つにおいて、踏板は、踏板基材と、該踏板基材の上面に設けられ、踏板基材よりも軟らかい部分を有する表面材とを備えており、カバーは、ベースへの組み付け状態で上記表面材前部を覆う被覆部を有することを特徴とする。
【0029】
この第9の発明では、カバーのベースへの組み付け状態で踏板上面の表面材前部が被覆部により覆われるので、階段の外観を優れたものにすることができる。
【0030】
また、このように踏板上面の表面材が、遮音等のために下部の踏板基材よりも軟らかい材料の部分を有していても、段鼻部材が上側クッション部によって全体として軟らかくなっているので、表面材と段鼻部材のベースとの間の硬さのギャップは生じ難くなり、昇降時の足裏の違和感等が生じるのを防止できる。
【0031】
第10の発明は階段に係り、この階段は、第1〜第9の発明のいずれか1つの段鼻部材が踏板の前端部に取り付けられていることを特徴とする。この発明でも第1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0032】
第11の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つの段鼻部材を施工する方法であって、ベースを踏板の上面に少なくとも両面テープによる貼着により固定した後、カバーの被係合部をベースの係合部に係合してカバーをベースに組み付けることを特徴とする。
【0033】
この第11の発明では、段鼻部材のベースが踏板の上面に両面テープによる貼着により固定され、次いで、このベースに対しカバーがそれぞれ被係合部と係合部との係合により組み付けられる。このように被係合部及び係合部の係合と両面テープによる固定とが併用されて段鼻部材が施工されるので、その施工性が優れるとともに、段鼻部材を踏板に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、踏板の上面前端部に固定されるベースと、このベースの上面に係合構造により取り外し可能に組み付けられる軟質樹脂製のカバーとを備えた段鼻部材において、ベースは係合部が設けられた硬質樹脂製のベース本体を有するものとし、その係合部を除くベース本体上面とその上側のカバーとの間にクッション部を設けたことにより、段鼻部材や階段の施工性を高め、階段の施工外観の見映えを向上させつつ、クッション部によりベースとカバーとの間の硬さの差を実質的に小さくして段鼻部材を全体として軟らかくでき、階段の昇降時に足裏に違和感や痛みが生じるのを防止して、踏み感の快適性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0037】
図7は本発明の実施形態に係る階段Sを示し、この階段Sは直階段を構成している。本実施形態では、階段Sの奥行方向(上り方向)に向かって手前側を「前」とし、奥側を「後」とし、左側を「左」とし、右側を「右」として説明する。
【0038】
すなわち、階段Sは、例えば下地壁面Wに左右に対向するように配置されて固定された左右の側桁1,1(左側のみを示す)と、それら側桁1,1間に掛け渡された複数の踏板5,5,…と、上側の踏板5下面の前端部及び下側の踏板5上面の後側部の間に設けられた複数の蹴込板10,10,…とを有する側桁階段である。
【0039】
上記左右の側桁1,1の対向面には、各踏板5の左右端部(長さ方向の端部)を嵌合するための水平前後方向に延びる踏板嵌合溝2,2,…と、各蹴込板10の左右端部(長さ方向の端部)を嵌合するための上下方向に延びる蹴込板嵌合溝3,3,…とが交互に連続するように形成されている。
【0040】
上記各踏板5は、
図6に示すように、所定の強度を備えた踏板基材6と、この踏板基材6の上面に一体的に貼着された表面材7とを有する。踏板基材6は、所定の厚さ(例えば36mm)を有する板材からなる。その材料は特に限定されず、一般の階段に用いられる踏板と同じ材料のものが用いられ、例えば合板、パーティクルボード、複合合板、集成材、無垢材等である。踏板基材6の下面の前端部には、蹴込板10の上端部を嵌合するための嵌合溝6aが形成されている。
【0041】
上記表面材7は、踏板5下部の踏板基材6よりも軟らかい部分を有する所定厚さ(例えば7.5mm)の薄板状のもので、例えば化粧材7aと、その裏面に貼着され、制振材及びクッション材の少なくとも一方からなる緩衝層7bとを有する。化粧材7aとしては、MDFやハードボード等の木質基材、これらに樹脂を含浸させたもの等が用いられる。制振材としては、PVCマット、ゴムマット、アスファルトマット、インシュレーションボード等が用いられる。クッション材としては、不織布、ウレタン等の樹脂発泡体等が用いられる。尚、表面材7はこれらに限らず、単体材料でも複合材料でもよく、樹脂化粧シートや樹脂基材、木質基材等を使用できる。表面材7は、例えば遮音等のために踏板基材6よりも軟らかい材料が緩衝層7bとして用いられる。
【0042】
また、表面材7を踏板基材6に貼着するための手段は限定されないが、特に踏板5の更新性を求める場合には、リフォームする際に踏板基材6から表面材7がきれいに剥がれるような接着剤や両面テープを用いるのが望ましい。接着剤としては、低粘着性接着剤や弾性接着剤が好ましく、例えばシリル化ウレタン接着剤、特殊シリコン樹脂接着剤、変性シリコン樹脂接着剤が用いられ、適宜接着剥離強度を調整したものを用いてもよい。両面テープとしては、片面が低粘着性とされたテープ等が用いられる。
【0043】
また、踏板基材6と表面材7とは前後方向(階段奥行方向)の幅も互いに異なり、表面材7の幅が踏板基材6の幅よりも後述する段鼻部材12におけるベース13の前後の幅寸法(例えば26mm)だけ短くなっている。
【0044】
上記蹴込板10は、一般の階段に用いられる蹴込板と同じ材料のものが用いられ、例えば合板、パーティクルボード、MDF、複合合板、集成材等である。
【0045】
そして、上記左右の側桁1,1の対応する踏板嵌合溝2,2には各踏板5の左右端部が嵌め込まれ、この踏板5はクサビ(図示せず)により側桁1,1に固定されている。すなわち、各踏板嵌合溝2は、その下側の溝側面が後下がりに傾斜していて、溝幅が後側に向かって大きくなっており、踏板嵌合溝2に踏板5を嵌め込んだときに、その踏板5の下面後端部と踏板嵌合溝部2の下側溝側面との間に隙間を生じさせ、その隙間にクサビを打ち込むことで踏板5を固定するようにしている。
【0046】
また、左右の側桁1,1の対応する蹴込板嵌合溝3,3に各蹴込板10の左右端部が嵌合され、その蹴込板10の上端部は、上側の踏板基材6下面の嵌合溝6aに嵌合され、下端部は下側の踏板5の後端部に固定されている。
【0047】
図6に示すように、上記各踏板5の前端部(段鼻部)には、階段Sを昇降する人が踏板5上で滑らないようにするための本発明の実施形態に係る段鼻部材12(ノンスリップ材)が取付固定されており、この段鼻部材12よりも後側(奥側)の範囲の踏板基材6上面、すなわち踏板基材6上面の前端部を除く領域に上記表面材7が貼着されている。
【0048】
上記段鼻部材12は、
図1に示すように、踏板5における踏板基材6の上面前端部に固定されるベース13と、このベース13に取り外し可能に組み付けられるカバー25とを備えている。
【0049】
図2及び
図3にも示すように、上記ベース13は、下面が踏板基材6の上面前端部に固定される略平板状のベース本体14を備えている。このベース本体14は、例えば硬質PVC、ABS、PP、PS等の硬質樹脂の押出し成形材からなり、その下面の前後中間部には両面テープTが貼着されるようになっており、この両面テープTによりベース本体14(ベース13)が踏板5の上面前端部に固定される。
【0050】
ベース本体14の上面には、その幅方向の一端側である後端部(
図2で右端部)にベース13の長さ方向に延びる係合部としての断面矩形状の係合凹溝部15がベース13の長さ方向の全体に亘って一体に形成されている。また、この係合凹溝部15の前側に隣接する位置には、ベース部13の長さ方向に延びる断面矩形状の位置決め凹溝部16がベース13の長さ方向の全体に亘って係合凹溝部15とベース部13の幅方向に前後に並ぶように平行に形成されている。この位置決め凹溝部16は、ベース本体14における係合凹溝部15の前側壁部と、後述する上側クッション部21の後端部とをそれぞれ溝側壁とする溝構造となっている。この位置決め凹溝部16は本発明でいう係合部を構成していない。
【0051】
係合凹溝部15の開口部の前後両側には、それぞれ開口部中央に向かって突出する板状の突出部18,18が係合凹溝部15の長さ方向全体に亘って一体に形成されており、この開口部で両突出部18,18が突出していることで、係合凹溝部15は、その開口部の溝幅が溝深さ方向の中間部よりも狭くなっていて中拡がりの溝に形成されている。
【0052】
また、位置決め凹溝部16は係合凹溝部15とは異なり、その開口部の前後両側に係合凹溝部15のような突出部18,18が形成されておらず、断面矩形状の溝である。そして、後側の係合凹溝部15と前側の位置決め凹溝部16とは開口部を含んだ溝幅で異なり、位置決め凹溝部16の溝幅は係合凹溝部15よりも大きくなっている。
【0053】
また、ベース本体14の下面前端部には、下方に延びる厚さの薄い位置決め片19がベース13の長さ方向の全体に亘り一体に突設されている。
【0054】
これに対し、上記カバー25も樹脂の押出し成形材からなっているが、このカバー25は例えば軟質PVC樹脂等の軟質樹脂からなる。この軟質樹脂製のカバー25は、例えばPVC基材であってアニール処理が施されており、温度による伸縮を抑えるため、押出し成形後に加熱処理を加えて強制的に収縮させている。軟質樹脂製のカバー25は、押出し成形の原料としての軟質材料に100度未満の硬度のものが好適に使用され、例えば90度のものが使用されている。尚、カバー25は、軟質PVC樹脂の他に例えばTPE(例えばTPO、TPU)等の軟質樹脂を用いてもよい。
【0055】
図4及び
図5に示すように、カバー25は、下面(ベース13との対向面)において上記ベース13の上面に取り外し可能に組み付けられる平板状の装着部26と、この装着部26の前端部(幅方向の一端)に連続して一体に形成され、装着部26と直交する方向の下方に延びる平板状の前面部27とを有し、この前面部27と装着部26とによりカバー25は断面略L字状とされている。そして、前面部27裏面の上下中間部には両面テープTが貼着されるようになっており、
図6に示すように、段鼻部材12が階段Sの踏板5に取り付けられ、そのベース13が踏板5上面の前端部に固定され、ベース13にカバー25が後述の係合凸条部33と係合凹溝部15との嵌合によって組み付けられた組み付け状態では、カバー25の前面部27が踏板5の踏板基材6前端面を覆い、その状態で前面部27が踏板基材6前端面に両面テープTにより固定されるようになっている。
【0056】
上記前面部27の下端部には、後側に向かって延びる係止部28が一体に形成されている。この係止部28は、段鼻部材12が踏板5に取り付けられていないフリー状態では後側に向かって上側に向かうように後上がりに傾斜しており、
図6に示すように、段鼻部材12が踏板5に取り付けられ、カバー25の前面部27が踏板5の踏板基材6前端面を覆うと、その下端部の係止部28が弾性によって踏板基材6の下面に圧接して係止されるようになっている。
【0057】
また、前面部27後面(裏面)の上部には、ベース13の前端部とそれから下方に延びる上記位置決め片19とを収容するための凹陥部29が形成されており、この凹陥部29の深さは、凹陥部29にベース13の前端部と位置決め片19とが収容された状態で位置決め片19の後面が凹陥部29以外の前面部27の後面と面一になるように設定されており、踏板基材6に固定されたベース13にカバー25を組み付けたときに、カバー25の前面部27後面と踏板基材6の前端面との間に、上記両面テープTの接着が阻害される程度の大きな隙間が生じないようにしている。
【0058】
さらに、上記装着部26の上面には、その長さ方向に互いに平行に延びる複数(図示例では3つ)の滑り止め用凹溝30,30,…が幅方向に前後に並んで形成されている。装着部26の幅方向の他端である後端部(
図4で右端部)には、先端に向かって厚さが薄くなる被覆部31が装着部26の長さ方向の全体に亘り一体に形成されている。この被覆部31は、段鼻部材12が踏板5に取り付けられていないフリー状態では先端部が下方に向かって湾曲しており、
図6に示すように、段鼻部材12が踏板5に取り付けられると、弾性により先端部が踏板5の表面材7上面に圧接して該前部を覆うようになっている。
【0059】
上記装着部26の下面には、前面部27と反対側の後端寄り部に、カバー25(装着部26)の長さ方向にその全体に亘って延びる被係合部としての板状の係合凸条部33が下方に向かって突出するように一体に形成されている。また、この係合凸条部33前側の装着部26の下面には、カバー25(装着部26)の長さ方向にその全体に亘って延びる位置決め凸条部35が下方に向かって突出するように一体に形成されており、これら凸条部33,35は、装着部26の長さ方向の全体に亘ってカバー25の幅方向に前後に並ぶように設けられている。すなわち、係合凸条部33は位置決め凸条部35よりも後側に配置されている。位置決め凸条部35は本発明でいう被係合部を構成していない。
【0060】
上記係合凸条部33は先端側部の断面が先細りテーパ形状のもので、その前後方向(
図1及び
図4で左右方向)の寸法である厚さは上記ベース13の係合凹溝部15の開口部の溝幅よりも小さく、かつ下方への突出高さは係合凹溝部15の溝深さよりも小さく設定されており、係合凸条部33をベース13の係合凹溝部15の内部にその開口部から嵌合可能となるように構成されている。
【0061】
また、係合凸条部33(被係合部)の先端部には抜け止め部34,34が一体に形成されている。この抜け止め部34,34は、係合凸条部33先端部の前後両側部にそのテーパ面を上側に延長させて突出させるように一体形成された断面三角形状のもので、抜け止め部34,34により係合凸条部33全体の断面形状が矢印状をなしている。抜け止め部34,34での凸条部33の厚さは係合凹溝部15の開口部の溝幅よりも大きく設定されており、係合凸条部33を係合凹溝部15に嵌合したときに、抜け止め部34,34が、その抜け止め部34,34での係合凸条部33の厚さが小さくなるように変形しながら係合凹溝部15の開口部を潜ってその内部に嵌合され、その嵌合状態で抜け止め部34,34が係合凹溝部15の開口部両側の突出部18,18に引っ掛かることにより、係合凸条部33が係合凹溝部15から抜け出るのを阻止するようにしている。
【0062】
一方、位置決め凸条部35は係合凸条部33とは異なり、係合凸条部33の厚さ(前後方向の寸法)よりも厚くかつ係合凸条部33の突出高さよりも低い断面矩形状のもので、係合凸条部33に比べて低い突出高さを有する。位置決め凸条部35の前後方向の厚さは上記ベース部13の位置決め凹溝部16の開口部の溝幅よりも小さく、かつ突出高さは位置決め凹溝部16の溝深さよりも小さく設定されていて、位置決め凸条部35をベース部13の位置決め凹溝部16の内部にその開口部から嵌合して位置決めすることが可能となっている。そして、この位置決め凸条部35を位置決め凹溝部16に嵌合したときに、位置決め凸条部35の厚さ方向の前側面と位置決め凹溝部16の開口部前側縁とは当接するが、位置決め凸条部35の厚さ方向の後側面と位置決め凹溝部16の開口部後側縁との間に大きな隙間が空けられるようになっている。
【0063】
尚、
図1、
図4及び
図6において、37はカバー25の装着部26、前面部27、被覆部31及び係止部28の外表面の全面に亘り一体に形成された化粧被覆層で、この化粧被覆層37はカバー25の押出し成形の際にそれと一体に押し出されて形成され、その表面には例えば木目模様等の模様が描かれている。
【0064】
以上の構造により、上記の如く、ベース13上面の係合凹溝部15が係合部を、またカバー25における装着部26下面の係合凸条部33が当該係合部に係合可能な被係合部をそれぞれ構成しており、カバー25の係合凸条部33がベース13の係合凹溝部15に嵌合すること(被係合部の係合部との係合)によってカバー25がベース13に取り外し可能に組み付けられるようになっている。
【0065】
本発明の特徴として、上記ベース13のベース本体14上面において、前端近傍位置と前後中央よりも後側寄り位置との間には、ベース13の長さ方向の全体に亘って延びる上側クッション部21が一体的に固定されている。この上側クッション部21は、例えば上側のカバー25(その装着部26)に下側に向かう衝撃力が加わってカバー25が変形したときにその衝撃力を緩和するためのもので、カバー25と同じ材料、例えば軟質PVC、TPE(例えばTPO、TPU)等の軟質樹脂の押出し成形材からなる。上側クッション部21は、上記係合凹溝部15(係合部)の両側壁上端の高さ位置よりも高い断面矩形状のもので、その下面には、上側クッション部21の長さ方向の全体に亘って延びる例えば2つの同じ断面矩形状の凹溝22,22が前後に並んで形成されており、このことで上側クッション部21そのものは断面略E字状となっている。上側クッション部21の下面は凹溝22,22の両側部分でベース本体14の上面に一体的に接着されており、このことで、上側クッション部21は、ベース本体14との間に各凹溝22の開口がベース本体14で閉じられた例えば2つの中空部23,23を有する。尚、中空部23は1つでもよく、或いは3つ以上でもよい。
【0066】
また、カバー25がベース13へ組み付けられた組付状態では、カバー25の装着部26における後端寄り部、つまり係合凸条部33の前後両側部(被係合部周りの部分)は、ベース本体14において係合凹溝部15の開口部前後両側の上端面よりも一定高さだけ高い位置にあり、両者の間に例えば1.7mm程度の隙間Gが形成されている。
【0067】
また、カバー25のベース13への組付けによりカバー25の係合凸条部33がベース本体14の係合凹溝部15に係合された状態では、その係合凸条部33の下端部は係合凹溝部15の底部から離れた状態で係合しており、このことで、そのカバー25の係合凸条部33はベース13の係合凹溝部15に上記隙間Gの分だけ上下方向に昇降可能となるように係合されている。
【0068】
一方、上記カバー25の前面部27は中空構造の前側クッション部40を有し、この前側クッション部40により、例えば前面部27に前側から衝撃力が加わって前面部27が変形したときにその衝撃力を緩和するようになっている。具体的には、前面部27全体の厚さは装着部26よりも厚く、その内部にカバー25の長さ方向に延びる複数(図示例では3つ)の断面矩形状の中空部41,41,…が上下に並んで形成されており、前側クッション部40が、これらの中空部41,41,…を有している。この前側クッション部40の中空部41,41,…は、押出し成形材からなるカバー25が押出し成形されるときに同時に前面部27内に形成される。
【0069】
このような構造により、ベース13は、踏板5の上面前端部に固定されかつ後端に係合凹溝部15(係合部)を有する硬質樹脂からなるベース本体14と、この係合凹溝部15を除くベース本体14上面の前部に一体的に固定され、軟質樹脂からなる上側クッション部21との複合体からなっている。そして、ベース13におけるベース本体14と上側クッション部21とはそれぞれ硬質及び軟質樹脂で硬さが異なるが、いずれも押出し成形材からなり、互いに押出し成形時の溶融加熱による熱融着によって一体化されている。
【0070】
次に、上記段鼻部材12を階段Sの踏板5に固定して施工する方法について説明する。階段Sの施工時に各踏板5及び各蹴込板10を側桁1,1に施工する。まず、左右の側桁1,1の各々の対向面に、踏板5が嵌め込まれる複数の踏板嵌合溝2,2,…と、複数の蹴込板嵌合溝3,3,…とを形成しておき、それらの側桁1,1を互いに高さを合わせて下地壁面Wに固定する。次に、その左右の側桁1,1の各踏板嵌合溝2,2に各踏板5の踏板基材6の左右端部を嵌め込み、その踏板基材6と踏板嵌合溝2の下側溝側面との間の隙間にクサビを打ち込んで踏板基材6を固定する。また、この踏板基材6の側桁1への固定と並行して、上下の踏板基材6,6間に蹴込板10を固定し、その蹴込板10の左右端部を側桁1,1の各蹴込板嵌合溝3,3に、また上端部を上側の踏板基材6の嵌合溝6aにそれぞれ嵌め込み、蹴込板10の下端部は下側の踏板基材6の後端部に固定する。そして、このようにして複数の踏板基材6,6,…及び蹴込板10,10,…を側桁1,1に対し固定した後、各踏板基材6の上面に接着剤を塗布し、その踏板基材6上面に前端部を空けて表面材7を貼り付ける。
【0071】
その後、各踏板5に段鼻部材12を施工する。具体的には、まず、踏板5における踏板基材6上面の前端部に段鼻部材12のベース13を載置し、このベース13を踏板基材6上面に両面テープTにより固定する。このとき、ベース13下面の前端部の位置決め片19を踏板基材6の前端面に引っ掛かるように当接させて、ベース13を踏板基材6に位置決めする。こうすることで、その位置決めを容易に行うことができる。また、ステープルやビス等の固定具(図示せず)を併用してベース13をベース本体14の位置決め凹溝部16の底部で踏板基材6上面に固定してもよい。このベース13の位置決め凹溝部16の溝幅は係合凹溝部15よりも広いので、固定具は位置決め凹溝部16の底部を貫通させて固定すればよく、その作業が容易になる。
【0072】
こうしてベース13が踏板5に固定されると、そのベース13にカバー25を装着部26にて組み付ける。具体的には、装着部26下面の係合凸条部33をベース13上面の係合凹溝部15に嵌合し(カバーの被係合部がベースの係合部に係合される)、装着部26下面の位置決め凸条部35をベース13上面の位置決め凹溝部16に嵌合する。また、カバー25における前面部27の凹陥部29内にベース13の前端部と位置決め片19とを収容させながら、その前面部27を踏板5の踏板基材6前端面に両面テープTにより固定する。このことでベース13にカバー25が組み付けられる。
【0073】
この組付状態では、カバー25の前面部27が踏板5の踏板基材6前端面を覆い、その下端部の係止部28が弾性によって踏板基材6下面に圧接して係止される。そのため、前面部27は下端の係止部28で踏板基材6に係止保持された状態となり、両面テープTによる固定構造と相俟って、その前面部27が踏板基材6前端面を覆った状態を安定して保つことができる。
【0074】
また、カバー25の装着部26後端に被覆部31が設けられているので、カバー25のベース13への組付状態では、被覆部31が弾性によって踏板5上面の表面材7前部に圧接してその表面材7前部を覆うようになる。
【0075】
このように段鼻部材12を施工する際、ベース13を踏板5の踏板基材6上面に両面テープTにより貼着した後、カバー25の係合凸条部33及び位置決め凸条部35をそれぞれベース13の係合凹溝部15及び位置決め凹溝部16に嵌合してカバー25をベース13に組み付け、カバー25の前面部27を踏板基材6の前端面に両面テープTにより貼着するので、両凸条部33,35及び両凹溝部15,16の嵌合と両面テープT,Tによる貼着とが併用されて段鼻部材12が施工されることとなり、その施工性が向上し、また段鼻部材12を踏板5に確実に固定することができる。
【0076】
施工された階段Sに対し、そのリフォームのために踏板5の表面材7の交換が必要となった場合には、踏板基材6は側桁1の踏板嵌合溝2に嵌合したままで、その踏板基材6から古い表面材7を剥がし、その後、新しい表面材7を元の踏板基材6の上面に貼着すればよい。
【0077】
また、同様に段鼻部材12の交換が必要となった場合には、そのベース13は踏板5の踏板基材6に固定したままで、カバー25の装着部26下面の係合凸条部33及び位置決め凸条部35をそれぞれベース13の係合凹溝部15及び位置決め凹溝部16から抜き出し、かつ前面部27後面と踏板基材6前端面との間の両面テープTを剥がすことで、カバー25をベース13から取り外し、その後、新しいカバー25を元のベース13に組み付ければよい。そのとき、カバー25が軟質樹脂製であるので、そのベース13からの取り外しを容易に行うことができる。
【0078】
この実施形態では、段鼻部材12のカバー25における装着部26下面の係合凸条部33に抜け止め部34,34が設けられ、位置決め凸条部35は、係合凸条部33に比べて低い突出高さを有することから、以下のような作用効果が得られる。
【0079】
すなわち、仮に、係合凸条部33及び位置決め凸条部35が互いに同じ形状である場合、軟質樹脂の特性によってカバー25に多少の捻れがあると、カバー25の装着部26をベース13に組み付ける際に、係合凸条部33及び位置決め凸条部35がそれぞれベース13の係合凹溝部15及び位置決め凹溝部16に対し位置ずれして同時にスムーズに嵌合し難くなる可能性がある。これに対し、本実施形態のように、位置決め凸条部35の高さが係合凸条部33に比べ低いので、2つの凸条部33,35が多少位置ずれしていても、位置決め凸条部35が優先的に位置決め凹溝部16に嵌合し易くなる。そして、この位置決め凸条部35が位置決め凹溝部16に嵌合することで、ベース13に対するカバー25の位置決めが行われ(具体的には位置決め凸条部35の前端面が位置決め凹溝部16の前側面である上側クッション部21の後面に当接して位置決めされる)、この位置決めにより、高さの高い係合凸条部33も係合凹溝部15に対して容易に嵌合されるようになる。この係合凸条部33は、位置決め凸条部35に比べて細くかつ大きく突出しているので、係合凹溝部15に嵌合しさえすれば位置決め凸条部35よりも抜け難くなる。しかも、この係合凸条部33の先端部には抜け止め部34,34が設けられているので、この抜け止め部34,34により係合凸条部33が係合凹溝部15から抜け出るのは阻止される。これらによって軟質樹脂のカバー25の装着部26を確実にかつスムーズにベース13に組み付けることができる。
【0080】
さらに、カバー25の装着部26下面の係合凸条部33は位置決め凸条部35よりも後側に配置されているので、カバー25をより一層確実にかつスムーズにベース13に組み付けることができる。
【0081】
そして、位置決め凸条部35の前後方向の厚さは係合凸条部33の厚さよりも厚いので、万一、係合凸条部33先端の抜け止め部34,34が強い衝撃の作用によって破断したり、経年変化等によって破損したりして、係合凸条部33の係合凹溝部15に対する係止効果が低下したとしても、厚さの厚い位置決め凸条部35を位置決め凹溝部16内に嵌合保持して係止効果を保つことができ、カバー25がベース13から簡単に脱落することはない。
【0082】
また、段鼻部材12の施工時に、そのカバー25を踏板5の長さ(階段Sの幅)や形状等に応じて切断する必要が生じたときには、その軟質樹脂製のカバー25を切断すればよく、カバー25を変形させて切断することが可能となるために、その切断は硬質樹脂を切断する場合に比べて容易になり、その結果、段鼻部材12や階段Sの施工性を高めることができる。
【0083】
また、こうしてカバー25の切断が容易になることで、所望の寸法に正確に切断できるようになり、カバー25の寸法誤差による段鼻部材12と側桁1,1や壁等との間に隙間が生じ難くなり、階段Sの施工外観を美麗にしてその見映えを向上させることができる。
【0084】
また、仮にベース13に組み付けられるカバー25が硬質樹脂製である場合、そのカバー25の係合凸条部33及び位置決め凸条部35も硬質樹脂となるが、この硬質樹脂製の凸条部33,35は、運搬時等で他のものとぶつかったり、或いは施工時にベース13の硬質樹脂製の凹溝部15,16にずれた状態で係合されたりすると破損する虞れがある。しかし、本実施形態のように軟質樹脂製のカバー25では、そのような破損を有効に防止することができる。
【0085】
また、段鼻部材12のカバー25は、ベース13の上面に取り外し可能に組み付けられる装着部26と、この装着部26の前端部に一体に連続する前面部27とを有する断面略L字状とされているので、カバー25のベース13への組み付け状態では、この前面部27により踏板5の踏板基材6前端面を覆うことができ、階段Sの外観を優れたものにすることができる。
【0086】
また、カバー25は、装着部26の後端部に連続する被覆部31を有するので、カバー25のベース13への組み付け状態で踏板5上面の表面材7前部が被覆部31により覆われることとなり、階段Sの外観を優れたものにすることができる。
【0087】
また、この実施形態においては、段鼻部材12のカバー25が軟質樹脂であるので、階段Sの昇降時の段鼻部材12に対する足触りが硬質樹脂製のものに比べてソフトになる。
【0088】
そして、上記ベース13は、硬質樹脂からなるベース本体14と軟質樹脂からなる上側クッション部21との複合体からなり、その上側クッション部21は、係合凹溝部15(係合部)を除くベース本体14の前側部上面に、その上側のカバー25の装着部26との間に介在されるように設けられているので、このベース13の一部である上側クッション部21が軟質樹脂製のものとなる。上側クッション部21は、例えば上側のカバー25の装着部26に下側に向かう衝撃力が加わってカバー25が変形したときにその衝撃力を緩和する機能を有する。このように上側クッション部21がベース本体14の前側部とカバー25との間に介在されることで、ベース13とカバー25との間の硬さの差が実質的に小さくなる。
【0089】
また、カバー25のベース13への組付状態では、カバー25の装着部26における後側部にある係合凸条部33の前後両側部と、ベース本体14において後端部寄りの係合凹溝部15の開口部前後両側の上端面との間に隙間Gが形成され、そのカバー25の係合凸条部33はベース13の係合凹溝部15に係合された状態で隙間Gの分だけ上下方向に昇降可能となっている。そのため、軟質樹脂からなるカバー25の装着部26の後側部分を踏んだときに、その装着部26が圧縮変形されるだけでなく、装着部26の係合凸条部33の前後両側部分も隙間Gの分だけ下方に沈んでクッション効果が得られるようになり、ベース13後端部寄りの係合凹溝部15の前後両側部が硬質樹脂でありながら、その部分での踏み感を軟らかくすることができる。
【0090】
これらの結果、段鼻部材12は、前側部にあっては上側クッション部21によるクッション効果が得られ、後側部にあってはカバー25の装着部26後側部とベース本体14の係合凹溝部15の開口部前後両側上端面との間の隙間Gによるクッション効果が得られて、全体として軟らかくなり、階段Sの昇降時に踏板5前端の段鼻部材12を踏んだときに、足裏に硬いベース13が感じ難くなり、特に階段Sを上る際に足の土踏まず部分に段鼻部材12が位置したときでも軟らかく感じるようになり、足裏に違和感や痛みが生じるのを防止することができる。
【0091】
しかも、このように段鼻部材12が上側クッション部21によって全体として軟らかくなっているので、その段鼻部材12の後側にある踏板5の表面材7が、遮音等のために下部の踏板基材6よりも軟らかい材料の緩衝層7bを有していても、その表面材7と段鼻部材12のベース13との間の硬さのギャップも生じ難くなる。特に、踏板5の表面材7を踏んでその緩衝層7bが沈むと、それに連動して前側にある段鼻部材12におけるカバー25の装着部26後部も隙間Gの分だけ沈み込むようになり、そのベース13の硬さが足裏に感じ難くなって、昇降時に足裏の違和感等が生じるのを防止できる。
【0092】
また、上側クッション部21は、ベース本体14との間に中空部23,23を有するので、これら中空部23,23によって上側クッション部21が中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い上側クッション部21が容易に得られる。
【0093】
また、ベース13がベース本体14と上側クッション部21との複合体からなり、その上側クッション部21は係合凹溝部15(係合部)以外のベース本体14上面に一体的に固定されているので、上側クッション部21がベース13と別体に設けられる場合に比べて、上側クッション部21をベース本体14上面とその上側のカバー25の装着部26との間に容易に配置することができる。また、この上側クッション部21が、ベース本体14との一体化によりベース13に具備されたものになるので、その取り扱いが容易になり、部品点数も低減することができる。
【0094】
また、ベース本体14と上側クッション部21とは共に押出し成形材で、互いに熱融着により一体化されているので、硬質樹脂製のベース本体14と軟質樹脂製の上側クッション部21とを同時に押出し成形しながら、その押出し直後に両者を互いに熱融着させて一体化でき、上側クッション部21が具備されたベース13の製造を容易に行うことができる。
【0095】
一方、カバー25の前面部27に前側クッション部40が設けられているので、使用者が階段の昇降時に脛等を踏板5前端の段鼻部材12にぶつけたとしても、その脛等はカバー25の前面部27の前側クッション部40に当たることとなり、その前側クッション部40のクッション効果によって脛等の痛みが生じ難くなる。
【0096】
また、この前側クッション部40は、前面部27内に形成された中空部41,41,…によって中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い前側クッション部40が容易に得られる。また、カバー25を押出し成形するのと同時に、その前面部27内に中空部41,41,…を形成することができ、前側クッション部40を容易に形成することができる。
【0097】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、ベース13の上側クッション部21をベース本体14に熱溶着しているが、上側クッション部21はベース本体14に対し熱溶着以外の接着、例えば接着剤による接着によって一体化することもできる。
【0098】
また、上記実施形態では、ベース13をベース本体14と上側クッション部21との複合体としているが、上側クッション部21はベース13とは別部材として、係合凹溝部15を除くベース本体14上面とその上側のカバー25との間に配置するようにしてもよい。その場合、その上側クッション部21はベース13又はカバー25の一方に移動一体に係止するようにするのが好ましい。
【0099】
また、上側クッション部21はベース本体14に対し該ベース本体14との間に中空部23,23を形成するように接着されているが、上側クッション部21の内部に中空部23を形成することもできる。
【0100】
さらに、上側クッション部21及び前側クッション部40は共に中空部23,41を有する中空構造としているが、中空部23,41を設けることは必須でなく、例えば中空発泡材料で構成する等、クッション効果が得られる構造であればよい。
【0101】
また、上記実施形態では、段鼻部材12におけるベース13上面に2つの凹溝部15,16を、またカバー25の装着部26下面に両凹溝部15,16に嵌合する2つの凸条部33,35をそれぞれ設けているが、ベース13上面に1つの係合凹溝部15を、またカバー25の装着部26下面に係合凹溝部15に嵌合する1つの係合凸条部33をそれぞれ設けるだけでもよく、或いは係合凹溝部15及び係合凸条部33を除く凸条部及び凹溝部の数を2つ以上に増やしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、カバー25の装着部26下面に係合凸条部33を、またベース13上面に係合凹溝部15をそれぞれ設けているが、これら凸条部33及び凹溝部15を設ける部材を逆にし、ベース13上面に係合凸条部33を、またカバー25の装着部26下面に係合凹溝部15をそれぞれ設けるようにしてもよい。しかし、その場合、段鼻部材12の施工中に、カバー25が組み付けられる前の硬質部材のベース13が踏板5の踏板基材6に固定されたままになる状態が放置されたときに、そのベース13上面の係合凸条部33が他のものに当たって破損する虞れがあること、軟質樹脂製の係合凸条部33を硬質樹脂製の係合凹溝部15に嵌合する方が逆の場合に比べて施工し易いこと等の理由により、上記実施形態のように構成するのが好ましい。
【0103】
さらに、上記実施形態では、カバー25は装着部26と前面部27とで構成されているが、装着部26のみからなるものであってもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、段鼻部材12を直階段をなす階段Sの踏板5に取り付けているが、本発明に係る段鼻部材12は、廻り階段の踏板にも取り付けることができるのは勿論である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の段鼻部材は、階段の施工時の踏板に対する取付作業を容易化でき、施工後に美麗な施工外観を得ることができる効果がある。
【0006】
しかし、その反面、段鼻部材のベースが硬質樹脂製で、その上に組み付けられるカバーが軟質樹脂であると、以外のような問題が生じ、改良の余地がある。
【0007】
すなわち、階段の昇降時に、踏板に取り付けられた段鼻部材を踏んだときに、軟質樹脂製カバーの変形に伴い足裏に硬いベースが感じられるようになる。特に、段鼻部材後側の踏板上面に、遮音等のためにクッション性のある軟らかい表面材が設けられていると、その表面材と段鼻部材のベースとの間の硬さのギャップによって、段鼻部材でベースの硬さが顕著に感じられ、足の裏に違和感や甚だしいときには痛みを感じることが生じる。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、ベースとカバーとを組み合わせた段鼻部材の構造を改良することにより、階段の施工時の踏板に対する段鼻部材の取付作業を容易化しつつ、その段鼻部材のベースの硬さを足裏に感じ難くして踏み感の快適性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的の達成のため、この発明では、ベースとカバーとの間にクッション部を設けることとした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、階段の踏板前端部に取付固定される段鼻部材が対象であり、この段鼻部材は、上記踏板の上面前端部に固定されかつ係合部を有するベースと、上記係合部に係合可能な被係合部を有し、該被係合部の係合部との係合によって上記ベースの上面に取り外し可能に組み付けられる軟質樹脂からなるカバーとを備え、上記ベースは、上記係合部を含む硬質樹脂からなるベース本体を有し、上記係合部を除くベース本体上面とその上側の上記カバーとの間に上側クッション部が設けられ
、上記上側クッション部は、係合部を除くベース本体上面に一体的に固定された軟質樹脂からなり、ベースは、ベース本体と上側クッション部との複合体からなることを特徴とする。本発明では、階段の踏板の奥行方向(上り方向)に向かって手前側を「前」とし、奥側を「後」として定義する。
【0011】
この第1の発明では、段鼻部材のベースは階段の踏板の上面前端部に固定され、このベースに対しカバーが、そのカバーの被係合部をベースの係合部に係合させることによって組み付けられる。そのとき、カバーは軟質樹脂で軟らかいので、このカバーを踏板の形状に合わせて切断する際にカバーを変形させて切断することができ、その切断が硬質樹脂に比べて容易になり、その分、段鼻部材や階段の施工性を高めることができる。
【0012】
また、こうしてカバーの切断が容易になることで、所望の寸法に正確に切断できるようになり、カバーの寸法誤差による段鼻部材と側桁や壁等との間に隙間が生じ難くなり、階段の施工外観を美麗にしてその見映えを向上させることができる。
【0013】
さらに、ベースに組み付けられるカバーが仮に硬質樹脂製であると、そのカバーの被係合部は、運搬時等で他のものとぶつかったり、或いは施工時にベースの係合部にずれた状態で係合されたりすると破損する虞れがある。しかし、本願発明のように軟質樹脂製のカバーでは、それらを防止することができる。
【0014】
また、カバーが軟質樹脂であるので、階段昇降時の足触りがソフトになる。しかも、ベースは、係合部が設けられた硬質樹脂からなるベース本体を有し、その係合部を除くベース本体上面とその上側のカバーとの間に上側クッション部が設けられており、この上側クッション部は、例えば上側のカバーに下側に向かう衝撃力が加わってカバーが変形したときにその衝撃力を緩和する機能を有する。このような上側クッション部の介在によりベースとカバーとの間の硬さの差が実質的に小さくなって、段鼻部材が全体として軟らかくなり、階段の昇降時に踏板前端の段鼻部材を踏んだときに、足裏に硬いベースを感じ難くなって、足裏に違和感や痛みが生じるのを防止することができる。
【0015】
そして、ベースが硬質樹脂製のベース本体と軟質樹脂製の上側クッション部との複合体であって、その上側クッション部は係合部以外のベース本体上面に一体的に固定されているので、上側クッション部がベースと別体に設けられる場合に比べて、上側クッション部をベース本体上面とその上側のカバーとの間に容易に配置することができる。また、この上側クッション部は、ベース本体との一体化によりベースに具備されたものになるので、その取り扱いが容易になり、部品点数も低減することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、カバーのベースへの組付状態で、被係合部周りのカバーとベース本体との間に隙間が形成されており、カバーの被係合部はベースの係合部に
、該カバーが踏まれて変形したときに被係合部周りのカバーが上記隙間分だけ
下方に沈むように上下方向に昇降可
能に係合されていることを特徴とする。
【0017】
この第2の発明では、被係合部周りのカバーとベース本体との間に隙間が形成され、カバーの被係合部はベースの係合部に係合されていても上下方向に昇降可能となっている。そのため、軟質樹脂からなるカバーを踏んだときに、そのカバーが圧縮変形されるだけでなく、被係合部周りのカバーも隙間の分だけ下方に沈んでクッション効果が得られるようになり、ベースの係合部が硬質樹脂でありながら、その部分での踏み感を軟らかくすることができる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記カバーは、ベースの上面に取り外し可能に組み付けられる装着部と、該装着部の前端部に一体に連続し、カバーのベースへの組み付け状態で踏板の前端面を覆う前面部とを有する断面略L字状とされており、上記前面部に前側クッション部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この第3の発明では、カバーは、ベースの上面に組み付けられる装着部と、その装着部の前端部に一体に連続する前面部とを有するので、カバーのベースへの組み付け状態では、この前面部により踏板の前端面を覆うことができ、階段の外観を優れたものにすることができる。
【0020】
また、その前面部に前側クッション部が設けられ、この前側クッション部は、例えば前面部に後側に向かう衝撃力が加わって前面部が変形したときにその衝撃力を緩和する機能を有する。そのため、使用者が階段の昇降時に脛等を踏板前端の段鼻部材にぶつけたとしても、その脛等はカバーの前面部の前側クッション部に当たることとなり、その前側クッション部のクッション効果によって脛等の痛みが生じるのを防ぐことができる
。
【0021】
第
4の発明は、第
1〜第3の発明
のいずれか1つにおいて、ベース本体と上側クッション部とは共に押出し成形材からなっていて、互いに熱融着により一体化されていることを特徴とする。こうすると、硬質樹脂製のベース本体と軟質樹脂製の上側クッション部とを同時に押出し成形しながら、その押出し直後に両者を互いに熱融着させて一体化でき、上側クッション部が具備されたベースの製造を容易に行うことができる。
【0022】
第
5の発明は、第1〜第
4の発明のいずれか1つにおいて、上側クッション部は、該上側クッション部の内部又はベース本体との間に少なくとも1つの中空部を有することを特徴とする。このことで、上側クッション部は、中空部を有する中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い上側クッション部が容易に得られる。
【0023】
第
6の発明は、第1〜第
5の発明のいずれか1つにおいて、ベースの上面には、係合部としてベースの長さ方向に延びる少なくとも1つの凹溝部が形成されている一方、カバーのベースとの対向面には、被係合部としてカバーの長さ方向に延びる少なくとも1つの凸条部が形成されていて、上記凸条部が凹溝部に嵌合することによってカバーがベースに組み付けられるようになっており、上記凸条部には、該凸条部が凹溝部に嵌合されたときに該凹溝部から抜け出るのを阻止する抜け止め部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
この第
6の発明では、ベースの上面に形成されている凹溝部に、カバーに形成されている凸条部が嵌合することによって、カバーがベースに装着された状態に組み付けられる。そのとき、この凸条部には抜け止め部が設けられているので、この抜け止め部により凸条部が凹溝部から抜け出るのは阻止される。よって軟質樹脂のカバーを確実にかつスムーズにベースに組み付けることができる。
【0025】
第
7の発明は、第3〜第
6の発明のいずれか1つにおいて、カバーは押出し成形材であり、前側クッション部は、少なくとも1つの中空部を有することを特徴とする。
【0026】
この第
7の発明では、前側クッション部は、中空部を有する中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い前側クッション部が容易に得られる。また、カバーを押出し成形するのと同時に、その前面部内に中空部を形成でき、前側クッション部を容易に形成することができる。
【0027】
第
8の発明は、第1〜第
7の発明のいずれか1つにおいて、踏板は、踏板基材と、該踏板基材の上面に設けられ、踏板基材よりも軟らかい部分を有する表面材とを備えており、カバーは、ベースへの組み付け状態で上記表面材前部を覆う被覆部を有することを特徴とする。
【0028】
この第
8の発明では、カバーのベースへの組み付け状態で踏板上面の表面材前部が被覆部により覆われるので、階段の外観を優れたものにすることができる。
【0029】
また、このように踏板上面の表面材が、遮音等のために下部の踏板基材よりも軟らかい材料の部分を有していても、段鼻部材が上側クッション部によって全体として軟らかくなっているので、表面材と段鼻部材のベースとの間の硬さのギャップは生じ難くなり、昇降時の足裏の違和感等が生じるのを防止できる。
【0030】
第
9の発明は階段に係り、この階段は、第1〜第
8の発明のいずれか1つの段鼻部材が踏板の前端部に取り付けられていることを特徴とする。この発明でも第1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0031】
第
10の発明は、第1〜第
8の発明のいずれか1つの段鼻部材を施工する方法であって、ベースを踏板の上面に少なくとも両面テープによる貼着により固定した後、カバーの被係合部をベースの係合部に係合してカバーをベースに組み付けることを特徴とする。
【0032】
この第
10の発明では、段鼻部材のベースが踏板の上面に両面テープによる貼着により固定され、次いで、このベースに対しカバーがそれぞれ被係合部と係合部との係合により組み付けられる。このように被係合部及び係合部の係合と両面テープによる固定とが併用されて段鼻部材が施工されるので、その施工性が優れるとともに、段鼻部材を踏板に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、踏板の上面前端部に固定されるベースと、このベースの上面に係合構造により取り外し可能に組み付けられる軟質樹脂製のカバーとを備えた段鼻部材において、ベースは係合部が設けられた硬質樹脂製のベース本体を有するものとし、その係合部を除くベース本体上面とその上側のカバーとの間にクッション部を設けたことにより、段鼻部材や階段の施工性を高め、階段の施工外観の見映えを向上させつつ、クッション部によりベースとカバーとの間の硬さの差を実質的に小さくして段鼻部材を全体として軟らかくでき、階段の昇降時に足裏に違和感や痛みが生じるのを防止して、踏み感の快適性の向上を図ることができる。
また、ベースは硬質樹脂製のベース本体と軟質樹脂製の上側クッション部との複合体として、その上側クッション部を係合部以外のベース本体上面に一体的に固定したことにより、上側クッション部がベースと別体に設けられる場合に比べて、上側クッション部をベース本体上面とその上側のカバーとの間に容易に配置することができるとともに、上側クッション部のベース本体との一体化によって取り扱いが容易になり、部品点数も低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0036】
図7は本発明の実施形態に係る階段Sを示し、この階段Sは直階段を構成している。本実施形態では、階段Sの奥行方向(上り方向)に向かって手前側を「前」とし、奥側を「後」とし、左側を「左」とし、右側を「右」として説明する。
【0037】
すなわち、階段Sは、例えば下地壁面Wに左右に対向するように配置されて固定された左右の側桁1,1(左側のみを示す)と、それら側桁1,1間に掛け渡された複数の踏板5,5,…と、上側の踏板5下面の前端部及び下側の踏板5上面の後側部の間に設けられた複数の蹴込板10,10,…とを有する側桁階段である。
【0038】
上記左右の側桁1,1の対向面には、各踏板5の左右端部(長さ方向の端部)を嵌合するための水平前後方向に延びる踏板嵌合溝2,2,…と、各蹴込板10の左右端部(長さ方向の端部)を嵌合するための上下方向に延びる蹴込板嵌合溝3,3,…とが交互に連続するように形成されている。
【0039】
上記各踏板5は、
図6に示すように、所定の強度を備えた踏板基材6と、この踏板基材6の上面に一体的に貼着された表面材7とを有する。踏板基材6は、所定の厚さ(例えば36mm)を有する板材からなる。その材料は特に限定されず、一般の階段に用いられる踏板と同じ材料のものが用いられ、例えば合板、パーティクルボード、複合合板、集成材、無垢材等である。踏板基材6の下面の前端部には、蹴込板10の上端部を嵌合するための嵌合溝6aが形成されている。
【0040】
上記表面材7は、踏板5下部の踏板基材6よりも軟らかい部分を有する所定厚さ(例えば7.5mm)の薄板状のもので、例えば化粧材7aと、その裏面に貼着され、制振材及びクッション材の少なくとも一方からなる緩衝層7bとを有する。化粧材7aとしては、MDFやハードボード等の木質基材、これらに樹脂を含浸させたもの等が用いられる。制振材としては、PVCマット、ゴムマット、アスファルトマット、インシュレーションボード等が用いられる。クッション材としては、不織布、ウレタン等の樹脂発泡体等が用いられる。尚、表面材7はこれらに限らず、単体材料でも複合材料でもよく、樹脂化粧シートや樹脂基材、木質基材等を使用できる。表面材7は、例えば遮音等のために踏板基材6よりも軟らかい材料が緩衝層7bとして用いられる。
【0041】
また、表面材7を踏板基材6に貼着するための手段は限定されないが、特に踏板5の更新性を求める場合には、リフォームする際に踏板基材6から表面材7がきれいに剥がれるような接着剤や両面テープを用いるのが望ましい。接着剤としては、低粘着性接着剤や弾性接着剤が好ましく、例えばシリル化ウレタン接着剤、特殊シリコン樹脂接着剤、変性シリコン樹脂接着剤が用いられ、適宜接着剥離強度を調整したものを用いてもよい。両面テープとしては、片面が低粘着性とされたテープ等が用いられる。
【0042】
また、踏板基材6と表面材7とは前後方向(階段奥行方向)の幅も互いに異なり、表面材7の幅が踏板基材6の幅よりも後述する段鼻部材12におけるベース13の前後の幅寸法(例えば26mm)だけ短くなっている。
【0043】
上記蹴込板10は、一般の階段に用いられる蹴込板と同じ材料のものが用いられ、例えば合板、パーティクルボード、MDF、複合合板、集成材等である。
【0044】
そして、上記左右の側桁1,1の対応する踏板嵌合溝2,2には各踏板5の左右端部が嵌め込まれ、この踏板5はクサビ(図示せず)により側桁1,1に固定されている。すなわち、各踏板嵌合溝2は、その下側の溝側面が後下がりに傾斜していて、溝幅が後側に向かって大きくなっており、踏板嵌合溝2に踏板5を嵌め込んだときに、その踏板5の下面後端部と踏板嵌合溝部2の下側溝側面との間に隙間を生じさせ、その隙間にクサビを打ち込むことで踏板5を固定するようにしている。
【0045】
また、左右の側桁1,1の対応する蹴込板嵌合溝3,3に各蹴込板10の左右端部が嵌合され、その蹴込板10の上端部は、上側の踏板基材6下面の嵌合溝6aに嵌合され、下端部は下側の踏板5の後端部に固定されている。
【0046】
図6に示すように、上記各踏板5の前端部(段鼻部)には、階段Sを昇降する人が踏板5上で滑らないようにするための本発明の実施形態に係る段鼻部材12(ノンスリップ材)が取付固定されており、この段鼻部材12よりも後側(奥側)の範囲の踏板基材6上面、すなわち踏板基材6上面の前端部を除く領域に上記表面材7が貼着されている。
【0047】
上記段鼻部材12は、
図1に示すように、踏板5における踏板基材6の上面前端部に固定されるベース13と、このベース13に取り外し可能に組み付けられるカバー25とを備えている。
【0048】
図2及び
図3にも示すように、上記ベース13は、下面が踏板基材6の上面前端部に固定される略平板状のベース本体14を備えている。このベース本体14は、例えば硬質PVC、ABS、PP、PS等の硬質樹脂の押出し成形材からなり、その下面の前後中間部には両面テープTが貼着されるようになっており、この両面テープTによりベース本体14(ベース13)が踏板5の上面前端部に固定される。
【0049】
ベース本体14の上面には、その幅方向の一端側である後端部(
図2で右端部)にベース13の長さ方向に延びる係合部としての断面矩形状の係合凹溝部15がベース13の長さ方向の全体に亘って一体に形成されている。また、この係合凹溝部15の前側に隣接する位置には、ベース部13の長さ方向に延びる断面矩形状の位置決め凹溝部16がベース13の長さ方向の全体に亘って係合凹溝部15とベース部13の幅方向に前後に並ぶように平行に形成されている。この位置決め凹溝部16は、ベース本体14における係合凹溝部15の前側壁部と、後述する上側クッション部21の後端部とをそれぞれ溝側壁とする溝構造となっている。この位置決め凹溝部16は本発明でいう係合部を構成していない。
【0050】
係合凹溝部15の開口部の前後両側には、それぞれ開口部中央に向かって突出する板状の突出部18,18が係合凹溝部15の長さ方向全体に亘って一体に形成されており、この開口部で両突出部18,18が突出していることで、係合凹溝部15は、その開口部の溝幅が溝深さ方向の中間部よりも狭くなっていて中拡がりの溝に形成されている。
【0051】
また、位置決め凹溝部16は係合凹溝部15とは異なり、その開口部の前後両側に係合凹溝部15のような突出部18,18が形成されておらず、断面矩形状の溝である。そして、後側の係合凹溝部15と前側の位置決め凹溝部16とは開口部を含んだ溝幅で異なり、位置決め凹溝部16の溝幅は係合凹溝部15よりも大きくなっている。
【0052】
また、ベース本体14の下面前端部には、下方に延びる厚さの薄い位置決め片19がベース13の長さ方向の全体に亘り一体に突設されている。
【0053】
これに対し、上記カバー25も樹脂の押出し成形材からなっているが、このカバー25は例えば軟質PVC樹脂等の軟質樹脂からなる。この軟質樹脂製のカバー25は、例えばPVC基材であってアニール処理が施されており、温度による伸縮を抑えるため、押出し成形後に加熱処理を加えて強制的に収縮させている。軟質樹脂製のカバー25は、押出し成形の原料としての軟質材料に100度未満の硬度のものが好適に使用され、例えば90度のものが使用されている。尚、カバー25は、軟質PVC樹脂の他に例えばTPE(例えばTPO、TPU)等の軟質樹脂を用いてもよい。
【0054】
図4及び
図5に示すように、カバー25は、下面(ベース13との対向面)において上記ベース13の上面に取り外し可能に組み付けられる平板状の装着部26と、この装着部26の前端部(幅方向の一端)に連続して一体に形成され、装着部26と直交する方向の下方に延びる平板状の前面部27とを有し、この前面部27と装着部26とによりカバー25は断面略L字状とされている。そして、前面部27裏面の上下中間部には両面テープTが貼着されるようになっており、
図6に示すように、段鼻部材12が階段Sの踏板5に取り付けられ、そのベース13が踏板5上面の前端部に固定され、ベース13にカバー25が後述の係合凸条部33と係合凹溝部15との嵌合によって組み付けられた組み付け状態では、カバー25の前面部27が踏板5の踏板基材6前端面を覆い、その状態で前面部27が踏板基材6前端面に両面テープTにより固定されるようになっている。
【0055】
上記前面部27の下端部には、後側に向かって延びる係止部28が一体に形成されている。この係止部28は、段鼻部材12が踏板5に取り付けられていないフリー状態では後側に向かって上側に向かうように後上がりに傾斜しており、
図6に示すように、段鼻部材12が踏板5に取り付けられ、カバー25の前面部27が踏板5の踏板基材6前端面を覆うと、その下端部の係止部28が弾性によって踏板基材6の下面に圧接して係止されるようになっている。
【0056】
また、前面部27後面(裏面)の上部には、ベース13の前端部とそれから下方に延びる上記位置決め片19とを収容するための凹陥部29が形成されており、この凹陥部29の深さは、凹陥部29にベース13の前端部と位置決め片19とが収容された状態で位置決め片19の後面が凹陥部29以外の前面部27の後面と面一になるように設定されており、踏板基材6に固定されたベース13にカバー25を組み付けたときに、カバー25の前面部27後面と踏板基材6の前端面との間に、上記両面テープTの接着が阻害される程度の大きな隙間が生じないようにしている。
【0057】
さらに、上記装着部26の上面には、その長さ方向に互いに平行に延びる複数(図示例では3つ)の滑り止め用凹溝30,30,…が幅方向に前後に並んで形成されている。装着部26の幅方向の他端である後端部(
図4で右端部)には、先端に向かって厚さが薄くなる被覆部31が装着部26の長さ方向の全体に亘り一体に形成されている。この被覆部31は、段鼻部材12が踏板5に取り付けられていないフリー状態では先端部が下方に向かって湾曲しており、
図6に示すように、段鼻部材12が踏板5に取り付けられると、弾性により先端部が踏板5の表面材7上面に圧接して該前部を覆うようになっている。
【0058】
上記装着部26の下面には、前面部27と反対側の後端寄り部に、カバー25(装着部26)の長さ方向にその全体に亘って延びる被係合部としての板状の係合凸条部33が下方に向かって突出するように一体に形成されている。また、この係合凸条部33前側の装着部26の下面には、カバー25(装着部26)の長さ方向にその全体に亘って延びる位置決め凸条部35が下方に向かって突出するように一体に形成されており、これら凸条部33,35は、装着部26の長さ方向の全体に亘ってカバー25の幅方向に前後に並ぶように設けられている。すなわち、係合凸条部33は位置決め凸条部35よりも後側に配置されている。位置決め凸条部35は本発明でいう被係合部を構成していない。
【0059】
上記係合凸条部33は先端側部の断面が先細りテーパ形状のもので、その前後方向(
図1及び
図4で左右方向)の寸法である厚さは上記ベース13の係合凹溝部15の開口部の溝幅よりも小さく、かつ下方への突出高さは係合凹溝部15の溝深さよりも小さく設定されており、係合凸条部33をベース13の係合凹溝部15の内部にその開口部から嵌合可能となるように構成されている。
【0060】
また、係合凸条部33(被係合部)の先端部には抜け止め部34,34が一体に形成されている。この抜け止め部34,34は、係合凸条部33先端部の前後両側部にそのテーパ面を上側に延長させて突出させるように一体形成された断面三角形状のもので、抜け止め部34,34により係合凸条部33全体の断面形状が矢印状をなしている。抜け止め部34,34での凸条部33の厚さは係合凹溝部15の開口部の溝幅よりも大きく設定されており、係合凸条部33を係合凹溝部15に嵌合したときに、抜け止め部34,34が、その抜け止め部34,34での係合凸条部33の厚さが小さくなるように変形しながら係合凹溝部15の開口部を潜ってその内部に嵌合され、その嵌合状態で抜け止め部34,34が係合凹溝部15の開口部両側の突出部18,18に引っ掛かることにより、係合凸条部33が係合凹溝部15から抜け出るのを阻止するようにしている。
【0061】
一方、位置決め凸条部35は係合凸条部33とは異なり、係合凸条部33の厚さ(前後方向の寸法)よりも厚くかつ係合凸条部33の突出高さよりも低い断面矩形状のもので、係合凸条部33に比べて低い突出高さを有する。位置決め凸条部35の前後方向の厚さは上記ベース部13の位置決め凹溝部16の開口部の溝幅よりも小さく、かつ突出高さは位置決め凹溝部16の溝深さよりも小さく設定されていて、位置決め凸条部35をベース部13の位置決め凹溝部16の内部にその開口部から嵌合して位置決めすることが可能となっている。そして、この位置決め凸条部35を位置決め凹溝部16に嵌合したときに、位置決め凸条部35の厚さ方向の前側面と位置決め凹溝部16の開口部前側縁とは当接するが、位置決め凸条部35の厚さ方向の後側面と位置決め凹溝部16の開口部後側縁との間に大きな隙間が空けられるようになっている。
【0062】
尚、
図1、
図4及び
図6において、37はカバー25の装着部26、前面部27、被覆部31及び係止部28の外表面の全面に亘り一体に形成された化粧被覆層で、この化粧被覆層37はカバー25の押出し成形の際にそれと一体に押し出されて形成され、その表面には例えば木目模様等の模様が描かれている。
【0063】
以上の構造により、上記の如く、ベース13上面の係合凹溝部15が係合部を、またカバー25における装着部26下面の係合凸条部33が当該係合部に係合可能な被係合部をそれぞれ構成しており、カバー25の係合凸条部33がベース13の係合凹溝部15に嵌合すること(被係合部の係合部との係合)によってカバー25がベース13に取り外し可能に組み付けられるようになっている。
【0064】
本発明の特徴として、上記ベース13のベース本体14上面において、前端近傍位置と前後中央よりも後側寄り位置との間には、ベース13の長さ方向の全体に亘って延びる上側クッション部21が一体的に固定されている。この上側クッション部21は、例えば上側のカバー25(その装着部26)に下側に向かう衝撃力が加わってカバー25が変形したときにその衝撃力を緩和するためのもので、カバー25と同じ材料、例えば軟質PVC、TPE(例えばTPO、TPU)等の軟質樹脂の押出し成形材からなる。上側クッション部21は、上記係合凹溝部15(係合部)の両側壁上端の高さ位置よりも高い断面矩形状のもので、その下面には、上側クッション部21の長さ方向の全体に亘って延びる例えば2つの同じ断面矩形状の凹溝22,22が前後に並んで形成されており、このことで上側クッション部21そのものは断面略E字状となっている。上側クッション部21の下面は凹溝22,22の両側部分でベース本体14の上面に一体的に接着されており、このことで、上側クッション部21は、ベース本体14との間に各凹溝22の開口がベース本体14で閉じられた例えば2つの中空部23,23を有する。尚、中空部23は1つでもよく、或いは3つ以上でもよい。
【0065】
また、カバー25がベース13へ組み付けられた組付状態では、カバー25の装着部26における後端寄り部、つまり係合凸条部33の前後両側部(被係合部周りの部分)は、ベース本体14において係合凹溝部15の開口部前後両側の上端面よりも一定高さだけ高い位置にあり、両者の間に例えば1.7mm程度の隙間Gが形成されている。
【0066】
また、カバー25のベース13への組付けによりカバー25の係合凸条部33がベース本体14の係合凹溝部15に係合された状態では、その係合凸条部33の下端部は係合凹溝部15の底部から離れた状態で係合しており、このことで、そのカバー25の係合凸条部33はベース13の係合凹溝部15に上記隙間Gの分だけ上下方向に昇降可能となるように係合されている。
【0067】
一方、上記カバー25の前面部27は中空構造の前側クッション部40を有し、この前側クッション部40により、例えば前面部27に前側から衝撃力が加わって前面部27が変形したときにその衝撃力を緩和するようになっている。具体的には、前面部27全体の厚さは装着部26よりも厚く、その内部にカバー25の長さ方向に延びる複数(図示例では3つ)の断面矩形状の中空部41,41,…が上下に並んで形成されており、前側クッション部40が、これらの中空部41,41,…を有している。この前側クッション部40の中空部41,41,…は、押出し成形材からなるカバー25が押出し成形されるときに同時に前面部27内に形成される。
【0068】
このような構造により、ベース13は、踏板5の上面前端部に固定されかつ後端に係合凹溝部15(係合部)を有する硬質樹脂からなるベース本体14と、この係合凹溝部15を除くベース本体14上面の前部に一体的に固定され、軟質樹脂からなる上側クッション部21との複合体からなっている。そして、ベース13におけるベース本体14と上側クッション部21とはそれぞれ硬質及び軟質樹脂で硬さが異なるが、いずれも押出し成形材からなり、互いに押出し成形時の溶融加熱による熱融着によって一体化されている。
【0069】
次に、上記段鼻部材12を階段Sの踏板5に固定して施工する方法について説明する。階段Sの施工時に各踏板5及び各蹴込板10を側桁1,1に施工する。まず、左右の側桁1,1の各々の対向面に、踏板5が嵌め込まれる複数の踏板嵌合溝2,2,…と、複数の蹴込板嵌合溝3,3,…とを形成しておき、それらの側桁1,1を互いに高さを合わせて下地壁面Wに固定する。次に、その左右の側桁1,1の各踏板嵌合溝2,2に各踏板5の踏板基材6の左右端部を嵌め込み、その踏板基材6と踏板嵌合溝2の下側溝側面との間の隙間にクサビを打ち込んで踏板基材6を固定する。また、この踏板基材6の側桁1への固定と並行して、上下の踏板基材6,6間に蹴込板10を固定し、その蹴込板10の左右端部を側桁1,1の各蹴込板嵌合溝3,3に、また上端部を上側の踏板基材6の嵌合溝6aにそれぞれ嵌め込み、蹴込板10の下端部は下側の踏板基材6の後端部に固定する。そして、このようにして複数の踏板基材6,6,…及び蹴込板10,10,…を側桁1,1に対し固定した後、各踏板基材6の上面に接着剤を塗布し、その踏板基材6上面に前端部を空けて表面材7を貼り付ける。
【0070】
その後、各踏板5に段鼻部材12を施工する。具体的には、まず、踏板5における踏板基材6上面の前端部に段鼻部材12のベース13を載置し、このベース13を踏板基材6上面に両面テープTにより固定する。このとき、ベース13下面の前端部の位置決め片19を踏板基材6の前端面に引っ掛かるように当接させて、ベース13を踏板基材6に位置決めする。こうすることで、その位置決めを容易に行うことができる。また、ステープルやビス等の固定具(図示せず)を併用してベース13をベース本体14の位置決め凹溝部16の底部で踏板基材6上面に固定してもよい。このベース13の位置決め凹溝部16の溝幅は係合凹溝部15よりも広いので、固定具は位置決め凹溝部16の底部を貫通させて固定すればよく、その作業が容易になる。
【0071】
こうしてベース13が踏板5に固定されると、そのベース13にカバー25を装着部26にて組み付ける。具体的には、装着部26下面の係合凸条部33をベース13上面の係合凹溝部15に嵌合し(カバーの被係合部がベースの係合部に係合される)、装着部26下面の位置決め凸条部35をベース13上面の位置決め凹溝部16に嵌合する。また、カバー25における前面部27の凹陥部29内にベース13の前端部と位置決め片19とを収容させながら、その前面部27を踏板5の踏板基材6前端面に両面テープTにより固定する。このことでベース13にカバー25が組み付けられる。
【0072】
この組付状態では、カバー25の前面部27が踏板5の踏板基材6前端面を覆い、その下端部の係止部28が弾性によって踏板基材6下面に圧接して係止される。そのため、前面部27は下端の係止部28で踏板基材6に係止保持された状態となり、両面テープTによる固定構造と相俟って、その前面部27が踏板基材6前端面を覆った状態を安定して保つことができる。
【0073】
また、カバー25の装着部26後端に被覆部31が設けられているので、カバー25のベース13への組付状態では、被覆部31が弾性によって踏板5上面の表面材7前部に圧接してその表面材7前部を覆うようになる。
【0074】
このように段鼻部材12を施工する際、ベース13を踏板5の踏板基材6上面に両面テープTにより貼着した後、カバー25の係合凸条部33及び位置決め凸条部35をそれぞれベース13の係合凹溝部15及び位置決め凹溝部16に嵌合してカバー25をベース13に組み付け、カバー25の前面部27を踏板基材6の前端面に両面テープTにより貼着するので、両凸条部33,35及び両凹溝部15,16の嵌合と両面テープT,Tによる貼着とが併用されて段鼻部材12が施工されることとなり、その施工性が向上し、また段鼻部材12を踏板5に確実に固定することができる。
【0075】
施工された階段Sに対し、そのリフォームのために踏板5の表面材7の交換が必要となった場合には、踏板基材6は側桁1の踏板嵌合溝2に嵌合したままで、その踏板基材6から古い表面材7を剥がし、その後、新しい表面材7を元の踏板基材6の上面に貼着すればよい。
【0076】
また、同様に段鼻部材12の交換が必要となった場合には、そのベース13は踏板5の踏板基材6に固定したままで、カバー25の装着部26下面の係合凸条部33及び位置決め凸条部35をそれぞれベース13の係合凹溝部15及び位置決め凹溝部16から抜き出し、かつ前面部27後面と踏板基材6前端面との間の両面テープTを剥がすことで、カバー25をベース13から取り外し、その後、新しいカバー25を元のベース13に組み付ければよい。そのとき、カバー25が軟質樹脂製であるので、そのベース13からの取り外しを容易に行うことができる。
【0077】
この実施形態では、段鼻部材12のカバー25における装着部26下面の係合凸条部33に抜け止め部34,34が設けられ、位置決め凸条部35は、係合凸条部33に比べて低い突出高さを有することから、以下のような作用効果が得られる。
【0078】
すなわち、仮に、係合凸条部33及び位置決め凸条部35が互いに同じ形状である場合、軟質樹脂の特性によってカバー25に多少の捻れがあると、カバー25の装着部26をベース13に組み付ける際に、係合凸条部33及び位置決め凸条部35がそれぞれベース13の係合凹溝部15及び位置決め凹溝部16に対し位置ずれして同時にスムーズに嵌合し難くなる可能性がある。これに対し、本実施形態のように、位置決め凸条部35の高さが係合凸条部33に比べ低いので、2つの凸条部33,35が多少位置ずれしていても、位置決め凸条部35が優先的に位置決め凹溝部16に嵌合し易くなる。そして、この位置決め凸条部35が位置決め凹溝部16に嵌合することで、ベース13に対するカバー25の位置決めが行われ(具体的には位置決め凸条部35の前端面が位置決め凹溝部16の前側面である上側クッション部21の後面に当接して位置決めされる)、この位置決めにより、高さの高い係合凸条部33も係合凹溝部15に対して容易に嵌合されるようになる。この係合凸条部33は、位置決め凸条部35に比べて細くかつ大きく突出しているので、係合凹溝部15に嵌合しさえすれば位置決め凸条部35よりも抜け難くなる。しかも、この係合凸条部33の先端部には抜け止め部34,34が設けられているので、この抜け止め部34,34により係合凸条部33が係合凹溝部15から抜け出るのは阻止される。これらによって軟質樹脂のカバー25の装着部26を確実にかつスムーズにベース13に組み付けることができる。
【0079】
さらに、カバー25の装着部26下面の係合凸条部33は位置決め凸条部35よりも後側に配置されているので、カバー25をより一層確実にかつスムーズにベース13に組み付けることができる。
【0080】
そして、位置決め凸条部35の前後方向の厚さは係合凸条部33の厚さよりも厚いので、万一、係合凸条部33先端の抜け止め部34,34が強い衝撃の作用によって破断したり、経年変化等によって破損したりして、係合凸条部33の係合凹溝部15に対する係止効果が低下したとしても、厚さの厚い位置決め凸条部35を位置決め凹溝部16内に嵌合保持して係止効果を保つことができ、カバー25がベース13から簡単に脱落することはない。
【0081】
また、段鼻部材12の施工時に、そのカバー25を踏板5の長さ(階段Sの幅)や形状等に応じて切断する必要が生じたときには、その軟質樹脂製のカバー25を切断すればよく、カバー25を変形させて切断することが可能となるために、その切断は硬質樹脂を切断する場合に比べて容易になり、その結果、段鼻部材12や階段Sの施工性を高めることができる。
【0082】
また、こうしてカバー25の切断が容易になることで、所望の寸法に正確に切断できるようになり、カバー25の寸法誤差による段鼻部材12と側桁1,1や壁等との間に隙間が生じ難くなり、階段Sの施工外観を美麗にしてその見映えを向上させることができる。
【0083】
また、仮にベース13に組み付けられるカバー25が硬質樹脂製である場合、そのカバー25の係合凸条部33及び位置決め凸条部35も硬質樹脂となるが、この硬質樹脂製の凸条部33,35は、運搬時等で他のものとぶつかったり、或いは施工時にベース13の硬質樹脂製の凹溝部15,16にずれた状態で係合されたりすると破損する虞れがある。しかし、本実施形態のように軟質樹脂製のカバー25では、そのような破損を有効に防止することができる。
【0084】
また、段鼻部材12のカバー25は、ベース13の上面に取り外し可能に組み付けられる装着部26と、この装着部26の前端部に一体に連続する前面部27とを有する断面略L字状とされているので、カバー25のベース13への組み付け状態では、この前面部27により踏板5の踏板基材6前端面を覆うことができ、階段Sの外観を優れたものにすることができる。
【0085】
また、カバー25は、装着部26の後端部に連続する被覆部31を有するので、カバー25のベース13への組み付け状態で踏板5上面の表面材7前部が被覆部31により覆われることとなり、階段Sの外観を優れたものにすることができる。
【0086】
また、この実施形態においては、段鼻部材12のカバー25が軟質樹脂であるので、階段Sの昇降時の段鼻部材12に対する足触りが硬質樹脂製のものに比べてソフトになる。
【0087】
そして、上記ベース13は、硬質樹脂からなるベース本体14と軟質樹脂からなる上側クッション部21との複合体からなり、その上側クッション部21は、係合凹溝部15(係合部)を除くベース本体14の前側部上面に、その上側のカバー25の装着部26との間に介在されるように設けられているので、このベース13の一部である上側クッション部21が軟質樹脂製のものとなる。上側クッション部21は、例えば上側のカバー25の装着部26に下側に向かう衝撃力が加わってカバー25が変形したときにその衝撃力を緩和する機能を有する。このように上側クッション部21がベース本体14の前側部とカバー25との間に介在されることで、ベース13とカバー25との間の硬さの差が実質的に小さくなる。
【0088】
また、カバー25のベース13への組付状態では、カバー25の装着部26における後側部にある係合凸条部33の前後両側部と、ベース本体14において後端部寄りの係合凹溝部15の開口部前後両側の上端面との間に隙間Gが形成され、そのカバー25の係合凸条部33はベース13の係合凹溝部15に係合された状態で隙間Gの分だけ上下方向に昇降可能となっている。そのため、軟質樹脂からなるカバー25の装着部26の後側部分を踏んだときに、その装着部26が圧縮変形されるだけでなく、装着部26の係合凸条部33の前後両側部分も隙間Gの分だけ下方に沈んでクッション効果が得られるようになり、ベース13後端部寄りの係合凹溝部15の前後両側部が硬質樹脂でありながら、その部分での踏み感を軟らかくすることができる。
【0089】
これらの結果、段鼻部材12は、前側部にあっては上側クッション部21によるクッション効果が得られ、後側部にあってはカバー25の装着部26後側部とベース本体14の係合凹溝部15の開口部前後両側上端面との間の隙間Gによるクッション効果が得られて、全体として軟らかくなり、階段Sの昇降時に踏板5前端の段鼻部材12を踏んだときに、足裏に硬いベース13が感じ難くなり、特に階段Sを上る際に足の土踏まず部分に段鼻部材12が位置したときでも軟らかく感じるようになり、足裏に違和感や痛みが生じるのを防止することができる。
【0090】
しかも、このように段鼻部材12が上側クッション部21によって全体として軟らかくなっているので、その段鼻部材12の後側にある踏板5の表面材7が、遮音等のために下部の踏板基材6よりも軟らかい材料の緩衝層7bを有していても、その表面材7と段鼻部材12のベース13との間の硬さのギャップも生じ難くなる。特に、踏板5の表面材7を踏んでその緩衝層7bが沈むと、それに連動して前側にある段鼻部材12におけるカバー25の装着部26後部も隙間Gの分だけ沈み込むようになり、そのベース13の硬さが足裏に感じ難くなって、昇降時に足裏の違和感等が生じるのを防止できる。
【0091】
また、上側クッション部21は、ベース本体14との間に中空部23,23を有するので、これら中空部23,23によって上側クッション部21が中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い上側クッション部21が容易に得られる。
【0092】
また、ベース13がベース本体14と上側クッション部21との複合体からなり、その上側クッション部21は係合凹溝部15(係合部)以外のベース本体14上面に一体的に固定されているので、上側クッション部21がベース13と別体に設けられる場合に比べて、上側クッション部21をベース本体14上面とその上側のカバー25の装着部26との間に容易に配置することができる。また、この上側クッション部21が、ベース本体14との一体化によりベース13に具備されたものになるので、その取り扱いが容易になり、部品点数も低減することができる。
【0093】
また、ベース本体14と上側クッション部21とは共に押出し成形材で、互いに熱融着により一体化されているので、硬質樹脂製のベース本体14と軟質樹脂製の上側クッション部21とを同時に押出し成形しながら、その押出し直後に両者を互いに熱融着させて一体化でき、上側クッション部21が具備されたベース13の製造を容易に行うことができる。
【0094】
一方、カバー25の前面部27に前側クッション部40が設けられているので、使用者が階段の昇降時に脛等を踏板5前端の段鼻部材12にぶつけたとしても、その脛等はカバー25の前面部27の前側クッション部40に当たることとなり、その前側クッション部40のクッション効果によって脛等の痛みが生じ難くなる。
【0095】
また、この前側クッション部40は、前面部27内に形成された中空部41,41,…によって中空構造となって衝撃力を緩和する性能が大きくなり、クッション効果の高い前側クッション部40が容易に得られる。また、カバー25を押出し成形するのと同時に、その前面部27内に中空部41,41,…を形成することができ、前側クッション部40を容易に形成することができる。
【0096】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、ベース13の上側クッション部21をベース本体14に熱溶着しているが、上側クッション部21はベース本体14に対し熱溶着以外の接着、例えば接着剤による接着によって一体化することもできる
。
【0097】
また、上側クッション部21はベース本体14に対し該ベース本体14との間に中空部23,23を形成するように接着されているが、上側クッション部21の内部に中空部23を形成することもできる。
【0098】
さらに、上側クッション部21及び前側クッション部40は共に中空部23,41を有する中空構造としているが、中空部23,41を設けることは必須でなく、例えば中空発泡材料で構成する等、クッション効果が得られる構造であればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、段鼻部材12におけるベース13上面に2つの凹溝部15,16を、またカバー25の装着部26下面に両凹溝部15,16に嵌合する2つの凸条部33,35をそれぞれ設けているが、ベース13上面に1つの係合凹溝部15を、またカバー25の装着部26下面に係合凹溝部15に嵌合する1つの係合凸条部33をそれぞれ設けるだけでもよく、或いは係合凹溝部15及び係合凸条部33を除く凸条部及び凹溝部の数を2つ以上に増やしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、カバー25の装着部26下面に係合凸条部33を、またベース13上面に係合凹溝部15をそれぞれ設けているが、これら凸条部33及び凹溝部15を設ける部材を逆にし、ベース13上面に係合凸条部33を、またカバー25の装着部26下面に係合凹溝部15をそれぞれ設けるようにしてもよい。しかし、その場合、段鼻部材12の施工中に、カバー25が組み付けられる前の硬質部材のベース13が踏板5の踏板基材6に固定されたままになる状態が放置されたときに、そのベース13上面の係合凸条部33が他のものに当たって破損する虞れがあること、軟質樹脂製の係合凸条部33を硬質樹脂製の係合凹溝部15に嵌合する方が逆の場合に比べて施工し易いこと等の理由により、上記実施形態のように構成するのが好ましい。
【0101】
さらに、上記実施形態では、カバー25は装着部26と前面部27とで構成されているが、装着部26のみからなるものであってもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、段鼻部材12を直階段をなす階段Sの踏板5に取り付けているが、本発明に係る段鼻部材12は、廻り階段の踏板にも取り付けることができるのは勿論である。